(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
義歯、義歯床等の歯科補綴物の形状を研磨や研削により微調整する場合、発生する削り屑等の粉塵が飛散しないように所定の容量の集塵機能を有した集塵ボックスを用いる。この集塵ボックスにはその左右に手の挿入口が設けられ、挿入口にラバー材を取り付けて、集塵ボックス内で発生した削り屑等の粉塵が外部に飛散しないように構成されている。
【0003】
このような集塵ボックスは発生した粉塵を吸引することにより確実に粉塵の飛散の防止をすることができる。しかしながら、このような集塵まで行える装置は、技工所等に設置されて使用されるものであって、持ち運びが必要な訪問診療等においては使用ができないという問題があった。近年、高齢化社会にともない訪問診療の要請が多く、訪問先で歯科補綴物の微調整を完了する必要性が高まっている。
【0004】
訪問診療等のために持ち運びが容易な集塵ボックスとして、特許文献1に記載のような折り畳み式集塵ケースが提案されている。これは、上ケース及び下ケースを有し、下ケースの縁部から前面板、左右の壁板を立設して上ケースの縁部に渡すことで所定の作業空間を形成するものである。この集塵ケースでは左右の壁板に手の挿入口が設けられている。
【0005】
また、特許文献2には、一枚の透明なプラスチックシートを折り曲げる及び端部同士を係合する等して組み立てることができる組み立て式防塵ボックスが開示されている。これによれば、軽量且つコンパクトで、組み立てが容易にでき、製造も容易であるとともに安価なものを提供できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の折り畳み式集塵ケースは、ある程度の携行性は有しているものの重量が大きく、持ち運ぶには必ずしも十分であるとは言えなかった。また当該集塵ケースは使い捨てるほどに簡易な構成ではないので、使い回しをすることになり、衛生上好ましくない。
【0008】
これに対して特許文献2に記載の組み立て式防塵ボックスは、このような不具合を解消することができる。しかしながら、実際の訪問診療において都度組み立てを行うことは手間がかかり、さらに簡易な手段が求められていた。また、使い捨てとするにはまだコストがかかる構造であった。
【0009】
そこで本発明は上記問題を鑑み、持ち運びが容易で、使用するときの準備も簡単である歯科用防塵袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。ここでは分かり易さのため、図面に付した参照符号を括弧書きで併せて記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明は、袋状に形成されており、該袋状を構成する部位として、底部(11)、底部の一端部に配置される背部(12)、背部のうち底部が配置される側とは反対側の端部と底部の他端部とを渡して配置され、少なくとも一部に光透過性を有する部材を具備してなる天部(13)、及び、底部と背部と天部とに囲まれる開口部分を塞ぐように配置される側部(14)、を有し、側部には袋状の内外を通じる挿入口(14a)が設けられ、底部、背部、天部及び側部は着脱が規制されて接続されており、底部、背部、天部及び側部の少なくとも1つは、底部と天部とが重なるように任意の位置で折り畳み可能に可撓性を有している、歯科用防塵袋(10)である。
【0012】
上記の歯科用防塵袋(10)において、底部(11)、背部(12)、天部(13)及び側部(14)の全部が光を透過可能な材料で形成されていてもよい。
【0013】
上記の歯科用防塵袋(10)において、底部(11)、背部(12)、天部(13)及び側部(14)の全部が任意の位置で折り曲げ可能に可撓性を有していてもよい。
【0014】
上記の歯科用防塵袋(10)において、挿入口(14a)は底部(11)と天部(13)との接続部側に寄せられて設けられていてもよい。
【0015】
上記の歯科用防塵袋(10)において、袋状の内側にはシート(15)が内包されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歯科用防塵袋によれば、底部と天部とが重なるように薄く折り畳めるので持ち運びが容易であるとともに、袋状を維持しているので折り畳み及び展開において組み立てる等の手間がなく準備が簡単である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は1つの形態にかかる歯科用防塵袋10が展開された姿勢における斜視図である。
図2(a)は
図1に矢印IIaで示した方向から見た歯科用防塵袋10の側面図、
図2(b)は
図1にIIbで示した方向から見た歯科用防塵袋10の平面図である。
図1、
図2には表されている方向を明確にするために参照用のx、y、zの座標軸を表した。また、
図1、
図2では、ある部位の奥側に配置される部位は破線で表示している。
【0020】
歯科用防塵袋10は折り畳み可能で薄く小さくすることができるが、初めに展開した姿勢の歯科用防塵袋10について説明し、後に折り畳んで縮小させることについて説明する。
【0021】
歯科用防塵袋10は、底部11、背部12、天部13、側部14、及びシート15を有して構成されている。歯科用防塵袋10は袋状に形成されており、底部11、背部12、天部13、及び側部14はシート状であり、手を挿入する部位である挿入口14a以外の部位において隣接する部位同士は一体又は接合されている。従って、作業者は通常の使用方法で歯科用防塵袋10を使うに際して組み立てや分離をする必要がなく、接続部が着脱できないように規制された構造とされている。詳しくは次の通りである。
【0022】
歯科用防塵袋10は、
図1、
図2からわかるように、矩形の底部11を有している。底部11のうち1つの辺となる部位からは、立設するように背部12が設けられている。背部12は、天部13、側部14を持ち上げた状態で保持し、袋状である歯科用防塵袋10の内側に空間を形成する。従って、背部12は当該空間を形成するために必要な大きさ(z方向大きさ)を有している。
本形態では背部12は、底部11との接続部が延びる方向(y方向)に延長するように拡張部12aが設けられている。これにより展開の姿勢で歯科用防塵袋10の内側の空間をより広く確保することができる。
【0023】
背部12のうち底部11と接続した側とは反対側となる辺と、底部11のうち背部12と接続した側とは反対側となる辺と、を渡すように矩形の天部13が配置されている。天部13は作業者がここを通して歯科用防塵袋10内を観察しつつ作業をする部位である。
【0024】
これにより底部11、背部12、及び天部13により環状とされており、その側方に形成される2つの開口のそれぞれに、該開口を塞ぐように側部14が配置されている。従って側部14は、底部11、背部12のうち拡張部12a、及び天部13にその周囲が接続されている。
【0025】
また、側部14には、背部12とは反対側で、底部11と天部13との接続部側に切り欠きが設けられ、ここに挿入口14aが形成されている。後で説明するように作業者はここから手を挿入し、歯科用防塵袋10の内側に配置された歯科補綴物の調整をすることができる。
【0026】
挿入口14aは本形態では側部14に設けられているがこれに限定されることはなく、可能であれば他の部位に配置されてもよい。ただし、底部11では落ちた粉塵が外部に流出しやすく、背部12では手の挿入が困難となる。また天部13では観察面が小さくなってしまう。かかる観点から挿入口14aは側部14に設けられることが好ましい。
また、側部14における挿入口14aの位置も特に限定されることはないが、作業者の作業の姿勢と腕の位置との関係を鑑みると挿入口14aは側部14のうち底部11と天部13との接続部に近い部位に設けられていることが好ましい。
【0027】
本形態では、底部11、背部12、天部13及び側部14はいずれもその全部が光透過性を有する樹脂製のシート状部材により形成されている。これにより歯科用防塵袋10の内側に光が十分差し込むとともに、内側の視認性にも優れるので作業性のよいものとなる。
また、歯科用防塵袋10は、後で具体的に説明するように折り畳み及び展開を行えるように構成されている。従って底部11、背部12、天部13及び側部14の少なくとも1つは、後述するように底部11と天部13とが重なって折り畳むことができるように可撓性を有する材料であることが好ましい。
以上のように機能できる材料であれば特に限定されることはないが、例えば、CPP(無延伸ポリプロピレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、L−LDPE(リニヤ―低密度ポリエチレン)、メタロセンポリマー(メタロセンポリエチレン)を用いることができる。またこれらを基材として、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、PT(セロハン)、ON(延伸ナイロン)、PET(ポリエステル)等を積層した積層体シートを用いてもよい。この中でも、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)とCPP(無延伸ポリプロピレン)を貼り合わせたシートが好ましい。これによれば透明性及び光沢性が高く、防湿性にも優れたものとなる。またこれにより低いコストで歯科用防塵袋10を作製することができる。
【0028】
シート15は、歯科用防塵袋10の内側のうち、底部11に載置された光の透過率が低いシート状の部材である。本形態では上記のように底部11が光を透過するので、歯科用防塵袋10の内側に配置した歯科補綴物が背景とのコントラストの関係で見え難くなる虞がある。これに対して、シート15の上に歯科補綴物を載置して作業することでコントラストがよくなり見易くなる。
シート15の大きさは特に限定されることはないが、後に示す折り畳みの姿勢でもシート15は折り畳まれないような大きさとされることが好ましい。
【0029】
以上のような歯科用防塵袋10によれば、底部11、背部12、天部13、及び側部14で囲まれた袋状である内側に作業のための空間が形成される。側部14には手や歯科補綴物を挿入するための挿入口が設けられて空間の内外が通じているが、それ以外の部分は一体又は接合により接続して袋状とされており、通常に用いる態様においては、底部11、背部12、天部13、及び側部14の接続された各辺が分離することはない。従ってここから削り屑等の粉塵が外部に流出することがない。かかる観点から防塵袋としての高い基本的機能を発揮することができる。
【0030】
また、
図2(a)からわかるように、歯科用防塵袋10は側面視で略三角形となるように構成されている。すなわち、底部11を接地したとき背部12により、歯科用防塵袋10内に形成される空間の高さ方向(z方向)大きさを確保するとともに、天部13は背部12の側から該背部12から離れるにつれて底部11に近づくように傾斜している。これにより作業者の視線が天部13の法線方向に近くなり、歯科用防塵袋10の内側の見易さの向上が図られる。
【0031】
一方、
図2(b)からわかるように、拡張部12aを設けることにより側部14がy方向の両側に突き出るように形成され、y方向における歯科用防塵袋10の内側に形成される空間が拡張している。
【0032】
そしてこのような歯科用防塵袋10は袋状に形成されるので、袋状にすること自体は公知の技術を用いることが可能であることから、低いコストで作製することができる。
【0033】
より具体的に歯科用防塵袋10は例えば次のように用いることができる。
図3、及び
図4に説明のための図を示した。
図3は
図1と同じ視点、
図4(a)は
図2(a)、
図4(b)は
図2(b)と同じ視点による図である。
【0034】
図3、
図4(a)、
図4(b)からわかるように、展開されている歯科用防塵袋10の内側に形成された空間に挿入口14aから歯科補綴物1が入れられ、シート15の上に置かれる。これに対して作業者は
図3、
図4(a)、
図4(b)に矢印Aで示したように挿入口14aから適宜必要な器具とともに手を入れて歯科補綴物1を研磨、研削することができる。
このとき、上記したように作業者が歯科補綴物1を見る際には天部13を通すので、天部13が
図4(a)に表れているように傾斜していることで、天部13の法線と作業者の視線の方向とが平行に近くなり、歯科補綴物1を見やすい。
その他、当該作業において上記したような効果に基づいて作業者の利便性が高められている。
【0035】
次に歯科用防塵袋10の折り畳み及び展開について説明する。初めに折り畳みについて説明する。
図5〜
図7に説明のための図を示した。
図5(a)は
図2(a)、
図5(b)は
図2(b)と同じ視点による図である。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)は折り畳みの動作の一部を順を追って表しており、
図5(a)と同じ視点による。
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)は折り畳みの動作の他の一部を順を追って表しており、
図5(b)と同じ視点による。
また、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)〜
図6(d)、
図7(a)〜
図7(c)では、折り畳みの際に折り目となる部位に一点鎖線を付した。当該折り目はこの部位を中心に折り畳まれるということを意味し、明確に線状に表れてもよく、特に折り目として明確に線状に表れていなくてもよい。
【0036】
図5(a)、
図5(b)からわかるように、背部12には2つの側部14の間を渡すように折り目16が存在する。また、側部14、底部11、及び天部13には、挿入部14aのうち背部12に近い側の端部間を渡すように折り目17が存在する。
【0037】
図5(a)、
図6(a)に示された展開の姿勢から、
図6(a)に矢印Bで示したように背部12の折り目16を谷として背部12を歯科用防塵袋10の内側に向けて押圧する。すると
図6(b)に示したように背部12は折り目16を谷として折り曲がり、これに伴って
図6(b)に矢印Cで表したように天部13が底部11に近づくように移動(回動)する。
これにより
図6(c)、
図6(d)のように天部13と底部11とが重なり、背部12は折り目16を挟んで重なる。
以上により歯科用防塵袋10は平坦につぶされて薄くなる。
【0038】
図6(d)に示した姿勢の歯科用防塵袋10を平面視すると
図7(a)のように見える。なお、この姿勢のときには折り目17の他、天部13及び底部11と、側部14との境界に折り目18が存在する。この折り目18は歯科用防塵袋10の展開の姿勢では1つの縁部を形成していた部位である。
【0039】
図7(a)に示した姿勢から、折り目18を谷として矢印Dに示したように側部14を天部13に重ねるように折り曲げ、
図7(b)に示したように変形させる。さらに
図7(b)に矢印Eで示したように折り目17を谷として天部11が折り目17を境に重なるように折り曲げる。これにより
図7(c)に示したように平面視でも小さく折り畳まれる。
【0040】
以上からわかるように、歯科用防塵袋10は非常に薄く、小さく折り畳むことが可能である。従って携行性に優れる。そして折り畳む際には袋状である底部11、背部12、天部13、及び側部14の接続状態は展開のときと同じであり、これを離したり分解したりする必要がない。これにより、作業が終了した後に粉塵が歯科用防塵袋10の内部に残存していても粉塵を内包したまま折り畳むことができる。
【0041】
歯科用防塵袋10は、その構造の観点からコストを低く抑えて作製することもできるので、用いる材料等を含めて低コストで構成したときには使い捨てとしても十分見合うものとなる。このときには、袋状であることから折り畳んでも粉塵を内包したまま捨てることができ、粉塵にこれ以上触れる必要がなく衛生的である。
【0042】
一方、作業前等に折り畳んだ姿勢から展開するときには、予め
図7(c)のように折り畳んだ姿勢から、上記した順を遡ればよい。このときには挿入口14aから手を入れて歯科用防塵袋10の内側から内面を指で押圧する等して広げて形を整えることができる。
このように展開についても非常に容易に行うことができる。
【0043】
ここでは折り畳みの形態の1つの例を説明したが、これに限らず他の折り畳みの形態であってもよい。従って底部11と天部13とが重なるように折り畳まれれば薄くすることができ、底部11、背部12、天部13及び側部14はその少なくとも1つにおいてこれが可能であるように任意の位置で折り畳めるように可撓性を有していればよい。
【0044】
図8には他の形態にかかる歯科用防塵袋20の外観斜視図を示した。
図8は
図1に相当する図である。歯科用防塵袋20は、底部21、背部22、天部23、側部24、及び不図示のシート15を備えている。シート15は上記した歯科用防塵袋10と同様である。
また、側部24には側部14と同様の挿入口24aが設けられている。
【0045】
本形態の歯科用防塵袋20に含まれる底部21、背部22、天部23、及び側部24はその形状及び配置については底部11、背部12、天部13、及び側部14と同様である。これに対して本形態では底部21、背部22、及び側部24はその全部が不織布又は紙により形成されている。一方、天部23はその一部が不織布又は紙により形成され、残部に光透過性を有するシートからなる透過部23aが設けられている。
【0046】
このように天部の少なくとも一部が透光性を有していれば歯科用防塵袋内を視認することができる。従って透過部以外の部位は透明であっても不透明であってもよく限定されない。ただし上記のように歯科用防塵袋内を明るくする観点から、多くの部位において透明な材料が適用されることが好ましい。