特許第6050497号(P6050497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050497ガスタービンエンジンにおける燃焼器シェル空気再循環システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050497
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンにおける燃焼器シェル空気再循環システム
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20161212BHJP
   F23R 3/26 20060101ALI20161212BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 9/52 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 9/18 20060101ALI20161212BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F02C7/18 B
   F23R3/26 B
   F23R3/00 A
   F02C9/52
   F02C9/18
   F01D25/12 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-531111(P2015-531111)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公表番号】特表2015-529300(P2015-529300A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】US2013056379
(87)【国際公開番号】WO2014039288
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】13/603,699
(32)【優先日】2012年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン・リー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・シー・ランドラム
(72)【発明者】
【氏名】ジピン・ジャン
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0073010(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0228723(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0065274(US,A1)
【文献】 特開平09−049630(JP,A)
【文献】 特開昭50−139212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 21/00
F01D 25/26
F02C 7/18
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの軸方向を決定する長手軸を含むガスタービンエンジンであって、該エンジンは、
前記エンジンに引き込まれた空気が圧縮される圧縮機セクション;
燃料が前記圧縮機セクションからの圧縮空気の少なくとも一部と混合されて燃焼し、高温の燃焼ガスが生成される、複数の燃焼装置を含む燃焼セクション;
前記燃焼セクションからの前記高温の燃焼ガスが膨張し、前記燃焼ガスからエネルギーが抽出されるタービンセクション;
前記燃焼セクションの周囲に配置されたケーシング部分を有するケーシングであって、前記ケーシング部分は、上死点を形成した上壁部と、左側壁部及び右側壁部と、下死点を形成した下壁部と、を有するケーシング壁を含んでおり、前記ケーシング部分はさらに、前記燃焼装置と前記圧縮機セクションによって圧縮された空気とが位置している内部容積を決定しているケーシング;及び、
シェル空気再循環システムであって、
前記ケーシング壁の前記下壁部に配置された少なくとも1つの排気ポートと、
前記ケーシング壁の前記上壁部に配置された第1の吸気ポート及び第2の吸気ポートであって、円周上において互いに離間しており、全体的に同じ軸方向位置に配置されている、第1の吸気ポート及び第2の吸気ポートと、
少なくとも1つの前記排気ポートと前第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートとの間の流体接続を供給する配管系と、
前記ケーシング部分の前記内部容積から少なくとも1つの前記排気ポートを通じて空気を抽出し、抽出された前記空気を前第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートに運ぶための送風機と、
空気が前記配管系を通過することを選択的に許容及び防止する弁機構と、
を含んでおり、
エンジン運転の第1のモードの間、前記ケーシング部分の前記内部容積内の空気の少なくとも一部は、燃料と共に燃焼させて高温の燃焼ガスを生成するために前記燃焼装置に導入され、前記弁機構は、空気が前記配管系を通過することを防止し、
エンジン運転の第2のモードの間、前記弁機構は、空気が前記配管系を通過することを許容するので、前記ケーシング部分の前記内部容積内の空気の少なくとも一部が、前記送風機によって少なくとも1つの前記排気ポートから抽出され、前記ケーシング壁の前記上壁部に噴射するために、前記送風機によって前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートに運ばれるシェル空気再循環システム、を含み、
前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートが、前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートによって噴射された空気が円周方向において速度成分を含むように構成されており、
前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートが、空気を少なくとも部分的に互いに向かって、及び、円周方向において前記第1の吸気ポートと前記第2の吸気ポートとの間に配置された前記ケーシング壁の前記上死点に向かって噴射するように構成されているガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記エンジン運転の第1のモードが全負荷運転である、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記エンジン運転の第2のモードが全負荷運転未満である、請求項2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートが、前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートによって噴射された空気が、前記ケーシング壁の前記上壁部から、前記ケーシング壁の前記下壁部に向かって、前記ケーシング壁の前記左側壁部及び前記右側壁部を流れ落ちるように構成されている、請求項に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートが、前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートによって噴射された空気が軸方向において速度成分を含むように構成されている請求項に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
少なくとも1つの前記排気ポートと、前記第1の吸気ポート及び前記第2の吸気ポートと、もまた、蒸気増加管として機能し、運転の前記第1のモードの間に、前記ケーシング部分の前記内部容積に高圧蒸気を導入する、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記燃焼セクションが缶型の環状燃焼セクションを含み、複数の前記燃焼装置が燃焼装置の環状アレイを含んでいる、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンにおける燃焼器シェル空気再循環システムに関する。当該再循環システムは、全負荷運転未満の間に稼働可能であり、それによって、燃焼器シェル内部において、空気のより均一な温度分布がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの運転中、空気は圧縮機セクションにおいて加圧された後、燃料と混合され、燃焼セクションにおいて燃焼し、高温の燃焼ガスが生成される。缶型の環状ガスタービンエンジンにおいて、燃焼セクションは、「缶」又は「燃焼器」と呼ばれることもある燃焼装置の環状アレイを含んでおり、当該燃焼装置はそれぞれ、エンジンのタービンセクションに高温の燃焼ガスを供給する。タービンセクションでは、高温の燃焼ガスが膨張し、そこからエネルギーが抽出され、出力が供給され、当該出力は電気を生み出すために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって、エンジンの軸方向を決定する長手軸を含むガスタービンエンジンが提供される。当該エンジンは、エンジンに引き入れられた空気が圧縮される圧縮機セクションと、燃料が圧縮機セクションからの圧縮空気の少なくとも一部と混合されて燃焼し、高温の燃焼ガスが生成される、複数の燃焼装置を含んだ燃焼セクションと、燃焼セクションからの高温の燃焼ガスが膨張し、そこからエネルギーが抽出されるタービンセクションと、を含んでいる。当該エンジンはさらに、燃焼セクションの周囲に配置された部分を有するケーシングを含んでいる。ケーシング部分は、ケーシング壁を含んでおり、ケーシング壁は、上死点を形成した上壁部と、左側壁部及び右側壁部と、下死点を決定する下壁部と、を有している。ケーシング部分はさらに、内部容積を決定する。当該内部容積には、燃焼装置と圧縮機セクションによって圧縮された空気とが位置している。エンジンは付加的に、シェル空気再循環システムを含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の実施態様によると、シェル空気再循環システムは、ケーシング壁の下壁部に配置された少なくとも1つの排気ポートと、ケーシング壁の上壁部に配置された第1の吸気ポート及び第2の吸気ポートとを含んでいる。これらの吸気ポートは、円周方向において互いに離間しており、全体的に同じ軸方向位置に配置されている。シェル空気再循環システムはさらに、少なくとも1つの排気ポートと複数の吸気ポートとの間の流体接続を供給する配管系と、ケーシング部分の内部容積から少なくとも1つの排気ポートを通じて空気を抽出し、抽出された空気を複数の吸気ポートに運ぶための送風機と、空気が配管系を通過することを選択的に許容及び防止する弁機構と、を含んでいる。エンジン運転の第1のモードの間、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部は、燃料と共に燃焼させて高温の燃焼ガスを生成するために燃焼装置に導入され、弁機構は実質的に、空気が配管系を通過することを防止する。エンジン運転の第2のモードの間、弁機構は、空気が配管系を通過することを許容するので、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部が、送風機によって少なくとも1つの排気ポートから抽出され、ケーシング壁の上壁部に噴射するために、送風機によって吸気ポートに運ばれる。
【0005】
本発明の第2の実施態様によると、シェル空気再循環システムは、ケーシング壁の下壁部に配置された少なくとも1つの排気ポートと、ケーシング壁の上壁部に配置された少なくとも1つの吸気ポートとを含んでいる。シェル空気再循環システムはさらに、少なくとも1つの排気ポートと少なくとも1つの吸気ポートとの間の流体接続を供給する配管系と、ケーシング部分の内部容積から少なくとも1つの排気ポートを通じて空気を抽出し、抽出された空気を少なくとも1つの吸気ポートに運ぶための送風機と、空気が配管系を通過することを選択的に許容及び防止する弁機構と、を含んでいる。エンジン運転の第1のモードの間、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部は、燃料と共に燃焼させて高温の燃焼ガスを生成するために燃焼装置に導入され、弁機構は実質的に、空気が配管系を通過することを防止する。エンジン運転の第2のモードの間、弁機構は、空気が配管系を通過することを許容するので、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部が、送風機によって少なくとも1つの排気ポートから抽出され、送風機によって少なくとも1つの吸気ポートに運ばれる。この少なくとも1つの吸気ポートは、当該吸気ポートによって噴射された空気が、ケーシング壁の上壁部から、ケーシング壁の下壁部に向かって、ケーシング壁の左側壁部及び右側壁部を流れ落ちるように構成されている。
【0006】
本発明の第3の実施態様によると、燃焼セクションは、燃焼装置の環状アレイを含む、缶型の環状燃焼セクションを含んでいる。本実施態様に係るシェル空気再循環システムは、ケーシング壁の下壁部に配置された少なくとも1つの排気ポートと、ケーシング壁の上壁部に配置された少なくとも1つの吸気ポートとを含んでいる。複数の排気ポート及び吸気ポートの内少なくとも1つもまた、蒸気増加管として機能し、運転の第1のモードの間に、ケーシング部分の内部容積に高圧蒸気を導入する。シェル空気再循環システムはさらに、少なくとも1つの排気ポートと少なくとも1つの吸気ポートとの間の流体接続を供給する配管系と、ケーシング部分の内部容積から少なくとも1つの排気ポートを通じて空気を抽出し、抽出された空気を少なくとも1つの吸気ポートに運ぶための送風機と、空気が配管系を通過することを選択的に許容及び防止する弁機構と、を含んでいる。エンジン運転の第1のモードの間、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部は、燃料と共に燃焼させて高温の燃焼ガスを生成するために燃焼装置に導入され、弁機構は実質的に、空気が配管系を通過することを防止する。エンジン運転の第2のモードの間、弁機構は、空気が配管系を通過することを許容するので、ケーシング部分の内部容積内の空気の少なくとも一部が、送風機によって少なくとも1つの排気ポートから抽出され、ケーシング壁の上壁部に噴射するために、送風機によって少なくとも1つの吸気ポートに運ばれる。
【0007】
本明細書は、特に本発明を指摘し、明確に主張している請求項で締めくくられるが、本発明は、添付の図面を用いた以下の説明から、より良好に理解されるであろうと思われる。これらの図面において、類似した参照符号は、類似した要素を特定している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施態様に係る燃焼器シェル空気再循環システムを含むガスタービンエンジンの側面を、部分的に断面で示した図である。
図2図1に示された燃焼器シェル空気再循環システムの概略図である。
図3】本発明の別の実施態様に係る燃焼器シェル空気再循環システムの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の好ましい実施態様の詳細な説明において、その一部を成す添付の図面について言及される。当該図面では、限定ではなく説明の目的で、具体的な好ましい、本発明を実行できる実施態様が示される。他の実施態様を利用して良いこと、及び、本発明の精神及び範囲を離れることなく変更を行って良いことが理解されるべきである。
【0010】
図1には、本発明にしたがって構成されたガスタービンエンジン10が図示されている。エンジン10は、圧縮機セクション12と、ここでは「燃焼装置」とも呼ばれる、複数の燃焼器16を含んだ燃焼セクション14と、タービンセクション18と、を含んでいる。見やすくするために、図1では1つの燃焼器16のみが図示されているが、本発明に係るエンジン10は、好ましくは、エンジン10内の軸方向を決定するエンジン10の長手軸Lの周囲に配置された燃焼器16の環状アレイを含んでいることが指摘される。このような構成は一般的に、「缶型環状燃焼システム」と呼ばれている。
【0011】
圧縮機セクション12は、流入空気を誘導かつ加圧する。流入空気の少なくとも一部は、燃焼器シェル20に向けられ、燃焼器16へ供給される。燃焼器シェル20内の空気は以下、「シェル空気」と称される。加圧された空気の残りの部分を、エンジン10内の様々な部材を冷却するために、燃焼セクション12から抽出して良い。
【0012】
燃焼器16に流入すると、圧縮機セクション12からの圧縮空気は、燃料と混合されて点火され、高温の燃焼ガスを生成する。当該燃焼ガスは、乱流のように、各燃焼器16内を高速で流れている。各燃焼器16内の燃焼ガスは、次に、各移行ダクト22を通過してタービンセクション18に流れる。タービンセクション18では、燃焼ガスが膨張し、そこからエネルギーが抽出される。燃焼ガスから抽出されたエネルギーは、タービンロータ24を回転させるために用いられる。タービンロータ24は、エンジン10を通って軸方向に延在する回転可能なシャフト26に対して平行に延在している。
【0013】
図1に示したように、エンジンケーシング30は、各エンジンセクション12、14、18を取り囲むために設けられる。燃焼セクション14の周囲に配置されたケーシング30の部分30Aは、燃焼器シェル20を画定したケーシング壁32を含んでいる。すなわち、燃焼器シェル20は、ケーシング部分30A内の内部容積を決定する。図2を参照すると、ケーシング壁32は、上壁部32Aと、左側壁部32B及び右側壁部32Cと、下壁部32Dと、を含んでいる。上壁部32Aは、ケーシング部分30Aの最上部領域を含むケーシング壁32の上死点34を決定し、下壁部32Dは、ケーシング部分30Aの最下部領域を含むケーシング壁32の下死点36を決定する。
【0014】
本発明の一実施態様に係るシェル空気再循環システム40を、以下に説明する。図2を参照すると、図示された実施態様におけるシェル空気再循環システム40は、ケーシング壁32の下壁部32Dに配置された第1の排気ポート42A及び第2の排気ポート42Bを含んでいる。本実施態様に係るシェル空気再循環システム40は、第1の排気ポート42A及び第2の排気ポート42Bを含んでいるものの、供給される排気ポートの数は、適切であれば、1つを含めていくつでも良い。
【0015】
図2に示したように、排気ポート42A、42Bは、円周方向において離間しており、全体的に同じ軸方向位置に配置されている。ケーシング壁32の下死点36は、排気ポート42Aと排気ポート42Bとの間に配置されている。本発明の一実施態様によると、排気ポート42A、42Bの内少なくとも1つもまた、蒸気増加管として機能し、高圧蒸気を燃焼器シェル20に誘導し、すなわち、タービンセクション18を通る燃焼ガス流量の増大をもたらすことによって、エンジン10の出力の増大をもたらすことが可能である。
【0016】
シェル空気再循環システム40は、配管系44をさらに含んでおり、当該配管系は、燃焼器シェル20から排気ポート42A、42Bを通じて抽出されたシェル空気を、ケーシング壁32の上壁部32Aに配置された第1の吸気ポート46A及び第2の吸気ポート46Bに運ぶために設けられている。本実施態様に係るシェル空気再循環システム40は、第1の吸気ポート46A及び第2の吸気ポート46Bを含んでいるものの、供給される吸気ポートの数は、適切であれば、1つを含めていくつでも良い。
【0017】
図2に示したように、吸気ポート46A、46Bは、円周方向において離間しており、全体的に同じ軸方向位置に配置されている。第1の吸気ポート46Aは、ケーシング壁32の左側壁部32Bの近傍に配置されており、第2の吸気ポート46Bは、ケーシング壁32の右側壁部32Cの近傍に配置されている。本発明の一実施態様によると、吸気ポート46A、46Bの内少なくとも1つもまた、蒸気増加管として機能し、付加的な高圧蒸気を燃焼器シェル20に誘導することが可能である。
【0018】
シェル空気再循環システム40は、図示された実施態様において第1の弁48A及び第2の弁48Bを含む弁機構48と送風機50とをさらに含んでいる。弁機構48及び送風機50は、制御装置52によって制御され、以下に詳細に記載するように、シェル空気が、配管系44を通って排気ポート42A、42Bから吸気ポート46A、46Bに流れることを選択的に許容又は防止する。送風機50は、シェル空気を燃焼器シェル20から排気ポート42A、42Bを通じて抽出するため、及び、抽出されたシェル空気を弁機構48が開放している場合に吸気ポート46A、46Bに運ぶために設けられている。
【0019】
以下に、シェル空気再循環システム40の使用方法について記載する。全負荷運転又は基本負荷運転としても知られており、本明細書ではエンジン運転の第1のモードとも呼ばれているエンジン10の定常運転の間、第1の弁48A及び第2の弁48Bは閉止し、送風機50は停止するか、又は、さもなければ運転不能である。それゆえに、弁機構48は、シェル空気が配管系44を通過することを実質的に防止する。当該シェル空気の少なくとも一部は、燃焼器16に供給され、上述したように燃料と共に燃焼する。当該シェル空気の付加的な部分を、当業者に明らかであるように、エンジン10内部の様々な部材を冷却するために用いて良い。
【0020】
エンジン10をシャットダウン状態又はターニングギヤ状態に移行させるために行われるターンダウン運転が開始すると、燃焼器16に供給される燃料及びシェル空気は徐々に失われていくので、燃焼器16における高温の燃焼ガスの生成は、エンジン10がシャットダウン状態又はターニングギヤ状態に移行すると、徐々にゼロにまで減少する。燃焼ガスが燃焼器16内で生成されなくなると、タービンロータ24の回転を、燃焼ガスによっては引き起こすことができなくなる。このような状況では、タービンロータ24の低速回転を、ここではターニングギヤ状態と呼ばれている運転状態において、作動モータ(start-up motor)のような外部電源(図示せず)によって生じさせても良い。代替的に、タービンロータ24の回転を、ここではシャットダウン状態と呼ばれている運転状態において、完全に停止させても良い。一般的なエンジン10では、このようなターンダウン運転は、エンジン10をターニングギヤ状態に完全に移行させるために少なくとも約10分〜15分を要する可能性がある。この時間の間、徐々に低下していくレベルの燃焼は、燃焼器16内で、高温の燃焼ガスを生成し続ける。当該ガスは、タービンロータ24を回転させるために、タービンセクション18に運ばれる。本明細書では、エンジン運転の第2のモードは、エンジン10のターンダウン運転、ターニングギヤ状態、又は、シャットダウン状態を含むように意図されている。
【0021】
本発明の一実施態様によると、エンジン10をターニングギヤ状態又はシャットダウン状態に移行させるためのターンダウン運転が開始すると、制御装置52は第1の弁48A及び第2の弁48Bを開放し、それによって弁機構48は、空気が配管系44を通過することを許容している。送風機50は、運転の第2のモードの間に、制御装置52によって作動し、シェル空気をケーシング壁32の下壁部32Dから排気ポート42A、42Bを通じて抽出する。送風機50は、抽出されたシェル空気を配管系44を通るように運ぶ、すなわち、ポンプで流すので、抽出されたシェル空気は、吸気ポート46A、46Bを通じて、ケーシング壁32の上壁部32Aに噴射される。
【0022】
本発明の別の実施態様によると、ターンダウン運転を、エンジン10を全負荷運転からターニングギヤ状態に移行させるために行って良い。ターニングギヤ状態は、所定の時間の間、又は、1つ若しくは複数の選択されたエンジン部材が、エンジン10がシャットダウン状態に移行する可能性がある所定の温度に達するまで続き得る。この設定では、ターニングギヤ状態の間、弁48A、48Bは開放位置に保持されており、送風機50の運転は、シェル空気をケーシング壁32の下壁部32Dから排気ポート42A、42Bを通じて抽出するため、抽出されたシェル空気を配管系44を通じて運ぶため、及び、抽出されたシェル空気をケーシング壁32の上壁部32Aに吸気ポート46A、46Bを通じて噴射するために続けられる。しかしながら、エンジン10がシャットダウン状態に入ると、すなわち、ターニングギヤ状態が完了した後、送風機50はオフにされるか、又は、そうでなければ、シェル空気を配管系44にポンプで流すことを中止するために停止させられる。シャットダウン状態の間、弁48A、弁48Bは開放したままでいるか、又は、制御装置52はこれらの弁を閉止して良いが、当該弁は、エンジンの作動プロセスが開始すると、制御装置52によって閉止される。
【0023】
図2に示したように、吸気ポート46A、46Bによって燃焼器シェル20内に噴射された空気は、ケーシング壁32の上壁部32Aから、それぞれ左側壁部32B、右側壁部32Cを流れ落ち、下壁部32Dへ向かう。したがって、シェル空気再循環システム40は、全負荷運転に満たない間、燃焼器シェル20内部のシェル空気を循環させる働きをする。それによって、燃焼器シェル20内部に、シェル空気のより均一な温度分布が形成される。そうでなければ、より高温のシェル空気は上壁部32Aに移動する傾向があるので、上壁部32Aでは下壁部32Dよりも温度が高くなる。さらに、排気ポート42A、42Bを通じて送風機50によって抽出され、吸気ポート46A、46Bを通じて噴射された、下壁部32Dに向かうシェル空気は、全体的に、上壁部32Aに向かうシェル空気よりも低温であるので、燃焼器シェル20内部でのシェル空気の温度分布がさらに一層均一になる。
【0024】
シェル空気再循環システム40によってもたらされる燃焼器シェル20内部におけるより均一なシェル空気の温度分布は、燃焼器シェル20の内部及び周囲の部材から生じるであろう、熱的に様々な速度で増大する、エンジンケーシング30の変形及び/又はタービンセクション18内のタービンブレード端Tのケーシング30に対する摩擦といった問題を軽減又は回避し、したがって、これらの部材の寿命を延長し、ブレード端の密な間隔を全負荷運転の間、タービン効率を改善するために維持していると思われる。本発明に係るシェル空気再循環システム40は、下壁部32Dから送風機50によって排気ポート42A、42Bを通じて抽出されたシェル空気のみを燃焼器シェル20内に噴射するので、シェル空気再循環システム40の費用及び複雑性は、燃焼器シェル20内に高圧空気を噴射するために排出装置等の構造を使用するシステムと比較して減少することが指摘される。
【0025】
上述したように、排気ポート42A、42B及び吸気ポート46A、46Bの内1つ又は複数もまた、蒸気増加管として機能し、高圧蒸気を燃焼器シェル20内に誘導し、エンジン10の出力を増大させることが可能である。このような蒸気の導入は、一般的に、全負荷運転の間にのみ行われる。排気ポート42A、42B及び吸気ポート46A、46Bの内いずれかもまた、蒸気増加管として機能する場合、図1及び図2に示すように、これらのポート42A、42B、46A、46Bは、好ましくはケーシング壁32内へ一直線に延在し、燃焼器シェル20内にわずかに入り込んで終端する。蒸気増加管として排気ポート42A、42B及び吸気ポート46A、46Bを用いることは、シェル空気再循環システム40が既存のエンジン10に、つまり改造設計で設けられる場合に特に有利であり得る。なぜなら、ケーシング壁32を通って延在する付加的な管が不要であり、したがって、既存のエンジン10にシェル空気再循環システム40を取り付ける際の複雑性が減少するからである。
【0026】
排気ポート42A、42B及び吸気ポート46A、46Bが蒸気増加管として機能しない場合、これらのポート42A、42B、46A、46Bの内1つ又は複数は、シェル空気の燃焼器シェル20からの抽出及び/又はシェル空気の燃焼器シェル20内への噴射を修正するための、特別に構成された端部を有し得る。例えば、図3には、本発明の別の実施態様にしたがって構成されたシェル空気再循環システム140が示されており、図1及び図2に関して上述した構造と類似の構造は、同じ参照符号に100を加えた参照符号を付されている。さらに、図1及び図2に関して上述した実施態様とは異なる構造のみ、以下に図3を用いて説明する。基準点として、図3に示されたシェル空気再循環システム140の図は、図1の線3‐3に沿って切り取られたものであり、見やすくするために、選択されたエンジン110とシェル空気再循環システム140の部材とは、図3から除かれている。
【0027】
当該実施態様では、排気ポート142A、142Bは、円錐形の端部142A、142Bを有しており、それによって、当該排気ポートによって抽出され得るシェル空気の量が増大する。
【0028】
さらに、本実施態様に係る吸気ポート146A、146Bは、端部146A、146Bを有しており、当該端部は、円周方向において互いに向けて角度付けられており、軸方向においては、圧縮機セクション(当該実施態様では図示されていない)に向けた方向で、タービンセクション(当該実施態様では図示されていない)からは離れるように角度付けられている。したがって、本実施態様に係る吸気ポート146A、146Bは、当該吸気ポートが、シェル空気を少なくとも部分的に円周方向において互いに向かって、及び、図3に示すように、円周方向において第1の吸気ポート146Aと第2の吸気ポート146Bとの間に配置されたケーシング壁132の上死点134に向かって噴射するように構成されている。すなわち、吸気ポート146A、146Bによって噴射されたシェル空気は、円周方向において速度成分を含んでいる。
【0029】
ケーシング壁132の上死点134に流れた後、吸気ポート146A、146Bによって噴射された空気は、ケーシング壁132の上壁部132Aから、下壁部132Dに向けて、それぞれ左側壁部132B及び右側壁部132Cを流れ落ちる。本実施態様に係る吸気ポート146A、146Bによって噴射された空気は、ケーシング壁132の上死点134に向かって流れるので、燃焼器シェル120内部で最も高温のシェル空気であろうケーシング壁132の上死点134のシェル空気が、残存しているシェル空気と共に循環させられることが確実化されると思われる。さらに、本実施態様に係る吸気ポート146A、146Bによって噴射されたシェル空気は、軸方向において、エンジン110の圧縮機セクションに向かって流れる、すなわち、吸気ポート146A、146Bによって噴射されたシェル空気は、軸流速度成分を含んでいるので、燃焼器シェル120内のより多くの量のシェル空気が循環させられることが確実化されると思われる。
【0030】
本明細書に記載された排気ポート及び吸気ポートは、図1から図3に示した位置とは異なる、ケーシング部分内の軸方向位置に配置され得ることが指摘される。さらに燃焼器シェル内部でのシェル空気の循環を改善するために、複数列の排気ポート及び吸気ポートを用いても良い。
【0031】
上述の実施態様における第1の吸気ポート及び第2の吸気ポートの使用とは対照的に、単一の吸気ポートのみが用いられる場合、ケーシング壁の左側壁部及び右側壁部の下方へ空気を噴射するように、単一の吸気ポートを構成できることも指摘される。このような吸気ポートの例は、端部を2つ有する吸気ポートを含んでおり、第1の端部が左側壁部に向けられ、第2の端部が右側壁部に向けられているか、又は、吸気ポートが、所望の方向に空気を噴射するために設けられたルーバー若しくはフィンを有していて良い。さらに、このような単一の吸気ポートは、ケーシング壁の上死点に配置され、燃焼器シェル内部により効果的な空気循環を提供することが可能である。さらに、このような単一の吸気ポートを、当該吸気ポートによって噴射されたシェル空気が軸流速度成分を含むように構成することもできる。
【0032】
本発明の特定の実施態様を図示かつ説明してきたが、本発明の精神及び範囲から離れることなく、様々なその他の変更及び修正を行うことが可能であることが、当業者には明らかであろう。したがって、添付の請求項では、本発明の範囲内のそのような全ての変更及び修正を対象とすることが意図されている。
【符号の説明】
【0033】
10 エンジン
12 圧縮機セクション
14 燃焼セクション
16 燃焼器
18 タービンセクション
20 燃焼器シェル
22 移行ダクト
24 タービンロータ
26 シャフト
30 ケーシング
30A ケーシング部分
32 ケーシング壁
32A 上壁部
32B 左側壁部
32C 右側壁部
32D 下壁部
34 上死点
36 下死点
40 シェル空気再循環システム
42A 第1の排気ポート
42B 第2の排気ポート
44 配管系
46A 第1の吸気ポート
46B 第2の吸気ポート
48 弁機構
48A 第1の弁
48B 第2の弁
50 送風機
52 制御装置
110 エンジン
120 燃焼器シェル
132 ケーシング壁
132A 上壁部
132B 左側壁部
132C 右側壁部
132D 下壁部
134 上死点
140 シェル空気再循環システム
142A、142B 排気ポート
142A、142B 端部
146A、146B 吸気ポート
146A、146B 端部
長手軸
タービンブレード端
図1
図2
図3