(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記統計変数の現行値が、前記統計変数と前記追加のプロセス変数との観察された関係とは著しく異なることを判断するために、1つ以上の統計プロセス制御(SPC)ルールが用いられる請求項11の方法。
プロセス変数の値、通風測定値の統計値、およびプロセス変数の値と通風測定値の統計値との関係を表すパラメータを受信する火炎安定性計算機を含み、火炎の安定性を示す安定性値を生成する火炎安定性計算機を含む装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、通信リンク15を介してワークステーション14に連結されているプロセスコントローラ12を含む例示的なプロセスプラント制御診断ネットワーク10のブロック図である。通信リンク15は、例えば、イーサーネット(登録商標)通信接続、またはあらゆる他の種類の有線、光学もしくは無線の通信接続を具備することができる。さらに、通信リンク15は連続的または断続的なリンクとすることができる。コントローラ12は、入出力(I/O)デバイス(図示せず)および通信ラインのセットまたはバス18を介して、プロセスプラント内の機器または設備にも連結されている。
図1の実施例では、コントローラ12はヒータユニット16に関連する機器および設備(例えば、原油ヒータ、流体ヒータ、精製ヒータ、石油化学用ヒータ、石油ヒータ、ボイラ、リボイラーヒータ、ガスヒータ、チャージヒータ、フィードヒータ、真空ヒータ、液体ヒータ、カラムヒータ、パイプラインヒータ、蓄熱加熱システム等)に連結されている。単なる例としてエマソン・プロセス・マネジメント・インクが販売するDeltaV(商標)コントローラとしてもよいコントローラ12は、プロセスプラント全体に分散するフィールド機器およびフィールド機器内の機能ブロックなどの制御要素と通信して、1つ以上のプロセス制御ルーチンを実行することによって、ヒータユニット16の所望の制御を実施することができる。これらのプロセス制御ルーチンは、連続プロセス制御ルーチンもしくは手順であっても、またはバッチプロセス制御ルーチンもしくは手順であってもよい。ワークステーション14(これは、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ等を具備することができる)は、1人以上の技術者またはオペレータがコントローラ12によって実行するべきプロセス制御ルーチンを設計し、当該プロセス制御ルーチンをダウンロードできるようにコントローラ12と通信し、プロセスプラントの運転中にヒータユニット16に係る情報を受信して表示し、コントローラ12が実行するプロセス制御ルーチンとその他対話するために使用することができる。
【0010】
ワークステーション14は、構成設計アプリケーション、メンテナンスアプリケーション、ユーザインターフェースアプリケーション、診断アプリケーション等などのアプリケーションを格納し、ヒータユニット16の構成に係る構成データ、メンテナンスデータ、診断データ等などのデータを格納するためのメモリ(図示せず)を含む。ワークステーション14は、特に、ユーザがプロセス制御ルーチンを設計して、そのプロセス制御ルーチンをコントローラ12にダウンロードできるように、アプリケーションを実行するプロセッサ(図示せず)も含む。同様に、コントローラ12はヒータユニット16を制御するために使用するべき構成データおよびプロセス制御ルーチンを格納するメモリ(図示せず)を含むとともに、プロセス制御戦略を実施するためにプロセス制御ルーチンを実行するプロセッサ(図示せず)を含む。コントローラ12がDeltaV(商標)であれば、ワークステーション14によって実装される1つ以上のアプリケーションと連動して、コントローラ12内のプロセス制御ルーチンのグラフィカル表示をユーザに提供することができ、プロセス制御ルーチン内の制御要素と、ヒータユニット16の制御をするためのこれら制御要素の構成の方法とを示す。
【0011】
図1に図示する例示的なプロセスプラント制御診断ネットワーク10では、コントローラ12はバス18を介してヒータユニット16に通信可能に連結されている。ヒータユニット16は、プロセス流体が通過して炉20によって加熱される炉20と、煙突22とを含む。煙突22のダンパ装置24が空気流量および/または通風圧を調節し、燃料弁26が炉への燃料を調節する。
図1には自然通風炉を示すが、以下の実施形態は強制通風炉、平衡通風炉、および誘引通風炉でも同様に実施することができる。ヒータユニット16は燃料流量に関連したセンサ機器、プロセス流体流量に関連したセンサ機器、燃料のBTU含有量に関連したセンサ機器、炉に関連したセンサ機器、および煙突に関連したセンサ機器など、多数のセンサ機器も含むことができる。例示的なヒータユニット16では、燃料の圧力を感知するために圧力感知器32を使用することができ、弁26から下流の燃料流量を感知するために流量感知器33を使用することができ、燃料のBTU含有量をリアルタイムで測定するためにBTU測定器70を使用することができる。BTU測定器70および流量感知器33を組み合わせて、ヒータの燃焼率または熱消費率を供給する単一の機器にすることができる。
【0012】
温度を感知するために温度感知器34を使用することができ、炉20から出るプロセス流体の流量を感知するために流量感知器35を使用することができる。
図1ではプロセス流体が炉20を1回だけ通過することを示しているが、典型的なヒータユニットでは、プロセス流体は炉を何回も通過することができ、温度感知器(図示せず)および/または流量感知器(図示せず)は各通過後のプロセス流体の温度および/または流量を感知することができる。CO感知器36、通風圧感知器37、O
2感知器38および温度感知器40を含め、炉内の状態を感知するために1つ以上の感知器を使用することもできる。通風圧測定器37は炉または火室の内部と外部の雰囲気との圧力差を測定し、それによって炉に入る空気流量の測度を提供する。同様に、温度感知器42、圧力感知器44、O
2感知器46および空気流量感知器48を含め、煙突内部の状態を感知するために1以上の感知器を使用することもできる。特定の実施態様はこれらの感知器のうち1つ以上を省略してもよい。例えば、
図1にはO
2感知器38およびO
2感知器46の両方が示されているが、典型的なヒータユニットはO
2感知器のうち煙突または炉のいずれかに関連する一方のみを有することができる。
【0013】
図1に図示するように、コントローラ12はバス18を介してダンパ装置24、弁機器26ならびに感知器32〜38、40、42、44、46、48および70に通信可能に連結されて、これら要素の動作を制御し、および/またはこれら要素からデータを受信する。当然、コントローラ12は追加のバス、4−20maライン、HART通信ライン等など専用の通信ラインを介して、ヒータユニット16の要素に連結することもできるであろう。
【0014】
図1に図示する弁、センサおよび他の機器は、例えば、フィールドバスフィールド機器、標準4−20maフィールド機器、HARTフィールド機器等を含め、あらゆる所望の種類または対応の機器にすることができ、フィールドバスプロトコル、HARTプロトコル、4−20maアナログプロトコル等など、あらゆる周知のまたは所望の通信プロトコルを使用してコントローラ12と通信することができる。さらに、他の種類の機器をあらゆる所望の態様でコントローラ12に接続して、コントローラ12によって制御することもできる。また、例えば通信リンク15を介して、他のコントローラをコントローラ12および/またはワークステーション14に接続して、プロセスプラントに関連する他の機器またはエリアを制御することもでき、当該追加のコントローラの動作は
図1に図示するコントローラ12の動作とあらゆる所望のまたは周知の態様で連係することができる。
【0015】
炉20に関しては、例えば、CO感知器36、圧力感知器37、O
2感知器38および温度感知器40に加えて、またはそれらの代わりに、1つ以上の他の感知器を使用することもできるであろう。煙突22に関しては、例えば、温度感知器42、圧力感知器44、O
2感知器46および空気流量センサ48に加えて、またはそれらの代わりに、1つ以上の他の感知器を使用することができるであろう。例えば、
図1に図示する機器に加えて、またはそれらの機器のうちの1つ以上の代わりに、煙突22に関連するCO感知器を使用することができるであろう。
【0016】
感知器32〜38、40、42、44、46、48および70のうちの1つ以上の各々は、感知器が感知する1つ以上のプロセス変数に係る統計データの生成および収集を実施するためのルーチンなどのルーチンを格納するメモリ(図示せず)を含むことができる。感知器32〜38、40、42、44、46、48および70のうちの1つ以上の各々は、統計データの生成および収集を実施するためのルーチンなどのルーチンを実行するプロセッサ(図示せず)も含むことができる。感知器によって格納および実装されるルーチンは、感知器に関連する統計データを生成、収集および/または処理する1つ以上のブロックを含むことができる。このようなブロックは、例えば、フィールドバス機器に追加してフィールドバス機器内の統計データを生成、収集および処理することができる周知のFoundationフィールドバス機能ブロックである高度診断ブロック(ADB)を具備することができるであろう。機器のデータを生成および収集して、そのデータの1つ以上の統計測度またはパラメータを計算、判定および/または処理するために、他のタイプのブロックまたはモジュールも使用することができるであろう。また、感知器はフィールドバス機器を具備しなくてもよい。さらに、統計データ生成、収集および/または処理ブロックは、感知器内のソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェアのあらゆる組み合わせによって実装することができる。
【0017】
実施例として、ヒータ10の通風圧を測定する圧力感知器37は、圧力感知器37が感知してサンプリングする通風圧に係る統計データの生成および収集を実施するためのルーチンなどのルーチンを格納するメモリ(図示せず)を含むことができる。圧力感知器37は統計データの生成、収集および通信を実施するためのルーチンなどのルーチンを実行するプロセッサ(
図2に図示)も含むことができる。圧力感知器37によって格納および実装されるルーチンは、圧力感知器37に関連する統計データを生成、収集および/または処理する1つ以上のブロックを含むことができる。統計値を提供するブロックは統計プロセスモニタリングブロックと呼ばれる。例えば、ブロックはADBまたはある他のタイプの統計データ収集ブロックを具備することができるであろう。しかし、圧力感知器37はフィールドバス機器を具備しなくてもよい。
【0018】
統計プロセスモニタリング(SPM)ブロックという用語は、本明細書において、少なくとも1つのプロセス変数または他のプロセスパラメータに関する統計プロセスモニタリングを行い、機器によりもしくは機器内に実装され、またはさらにデータを収集する機器の外部に実装されるあらゆる所望のソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアにより行うことができる機能性を記述するために用いられる。SPMは一般に機器のデータが収集される機器によって、またはその一部として実装されるので、SPMは量的により多くかつ質的により正確なプロセス変数データを取得することができることは理解されるであろう。そのため、SPMブロックは一般に収集されるプロセス変数データに関し、プロセス変数データが収集される機器の外部に実装されるブロックよりもよりよい統計計算を求めることができる。
【0019】
SPMブロックは本明細書においてADBの部分要素として記述されているが、代わりに機器内部に配置される独立型のブロックにすることもできる。また、本明細書に述べられるSPMブロックは周知のFoundationフィールドバスSPMブロックとすることができるが、統計プロセスモニタリング(SPM)ブロックという用語は、本明細書において、プロセス変数データなどのデータを収集し、このデータに関して何らかの統計処理を行って、平均、標準偏差等などの統計測度を求めるあらゆるタイプのブロックまたは要素をいうために用いられる。そのため、この用語は、それらの要素が機能ブロックの形態であるか、または他のタイプのブロック、プログラム、ルーチンもしくは要素であるかを問わず、またそれらの要素がFoundationフィールドバスプロトコル、またはプロフィバス、HART、CAN等のプロトコルなどの何か他のプロトコルに適合しているかどうかを問わず、この機能を行うソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアおよび/もしくは他の要素に適用されることが意図されている。
【0020】
SPMブロックの一部または全部が収集および生成するデータは、コントローラ12および通信リンク15を介して、ワークステーション14などの外部クライアントに利用させることができる。追加で、または代わりに、SPMブロックの一部または全部が収集および生成するデータは、例えば通信サーバ60を介して、ワークステーション14に利用させることができる。通信サーバ60は、例えば、プロセス制御用(OPC)オブジェクトのリンクと埋め込み(OLE)サーバ、Ovation(登録商標)通信ネットワークで動作するように構成されているサーバ、ウェブサーバ等を具備することもできる。通信サーバ60は、無線接続、有線接続、断続接続(1以上の携帯機器を使用するものなど)、またはあらゆる所望のもしくは適切な通信プロトコルを使用するあらゆる他の所望の通信接続などの通信リンクを介して、SPMブロックの一部または全部により収集および生成されたデータを受信することができる。当然、本明細書に記述する通信接続のいずれも、OPC通信サーバを使用して異なるタイプの機器から受信したデータを共通フォーマットまたは矛盾のないフォーマットに統合することができる。
【0021】
その上さらに、圧力データ、温度データ、O
2データ等などの生データを収集または生成するフィールド機器の外部で統計プロセスモニタリングを行うために、ワークステーション、サーバ、パーソナルコンピュータ等、またはフィールド機器とは別の他のフィールド機器にSPMブロックを実装することが可能である。そのため、例えば、1つ以上のSPMブロックはワークステーション14によって実装することができるであろう。これらのSPMブロックは、例えば、コントローラ12または通信サーバ60を介して、生の圧力データを収集することができ、その圧力データに関して、平均、標準偏差等などの何らかの統計測度またはパラメータを計算することができるであろう。これらのSPMブロックはデータを収集するフィールド機器には配置されておらず、そのためこのデータの通信要件のために統計計算を行えるだけの圧力データを収集することは一般にできないかもしれないが、これらのブロックはSPM機能を有していないまたはサポートしていない機器の統計パラメータを求めるのに役立つ。そのため、以下の説明において、SPMブロックが生成すると述べられている統計測定値またはパラメータは、フィールド機器または他の機器によって実装されるSPMブロックで生成できることは理解されるであろう。
【0022】
動作時、コントローラ12は弁26を介して炉に流れる燃料流量を制御することができる。温度感知器34は炉20から出るプロセス流体の温度を示すデータを提供することができる。加えて、コントローラ12はダンパ装置24を介して空気流量および/または通風圧を制御することができる。
【0023】
SPMブロックはフィールド機器が生成するプロセス信号を受信して、プロセス信号の統計パラメータを計算する。これらの統計パラメータは、例えば、標準偏差、平均、標本分散、二乗平均平方根(RMS)、範囲(ΔR)、プロセス信号の変化率(ROC)、プロセス信号の最大値、プロセス信号の最小値のうちの1以上を含むことができる。これらのパラメータを生成する式の例には以下のものが含まれる。
【0029】
上記式において、Nはサンプル期間におけるデータポイントの総数、x
iおよびx
i−1は連続する2つのプロセス信号の値、Tは2つの値の時間間隔である。また、X
MAXおよびX
MINは、サンプリングまたはトレーニング期間におけるそれぞれプロセス信号の最大値と最小値である。これらの統計パラメータは別の式またはアルゴリズムを用いても同様に計算することができる。プロセス変数が通風圧のとき、x
iは1つの通風圧の測定値を表す。
【0030】
図2は、
図1のフィールド機器200およびワークステーション14の回路図を示す。フィールド機器200は、通風圧測定器37、燃料流量測定器33、燃料圧力測定器32およびBTU測定器70などのフィールド機器に存在する回路コンポーネントを提供するフィールド機器の総称的表現である。機器200はセンサモジュール232および回路モジュール234を含むように示されている。本実施形態によると、センサモジュール232はセンサ246と、アナログ電子機器と、センサプロセッサ電子機器とを含む。機器回路モジュール234は出力電子機器を含む。センサモジュール232内のアナログ電子機器はコンディショニング回路252と、コンバータ回路254と、白金抵抗温度計(PRT)256とを含む。センサプロセッサ電子機器はセンサマイクロプロセッサ258と、メモリ260と、クロック262とを含む。出力電子機器は出力マイクロプロセッサ264と、メモリ266と、通信回路268とを含む。ワークステーション14はマイクロプロセッサ270と、入力272と、出力274と、メモリ276と、周辺機器278と、通信インターフェース280とを含む。電源222は電力をワークステーション14に供給するとともに、ワークステーション14から機器200にも供給する。
【0031】
センサ246は、例えば、静圧、差圧、温度およびBTU含有量などのプロセス変数を感知する。単純にするために1つのセンサしか示していないが、機器200は複数の異なるセンサを有することもできる。この実施形態では、センサ246からのアナログ出力がコンディショニング回路252に伝送されて、そこで信号を増幅して調整(例えば、フィルタリング)する。コンバータ回路254はセンサ246が生成するアナログ信号をマイクロプロセッサ258が利用できるデジタル信号に変換する。
図2に図示するように、コンバータ回路は電圧/デジタル(V/D)および容量/デジタル(C/D)の両方を含む。PRT256はコンバータ回路254にセンサ246付近の温度を示す温度信号を供給して、センサ信号の温度変動を補償できるようにしている。マイクロプロセッサ258は、PRT256からのデジタル化された温度信号を含め、コンバータ回路254からデジタル化されて調整されたセンサ信号を受信する。マイクロプロセッサ258はメモリ260に格納されている補正定数を使用して、センサ信号のセンサ固有の誤差および非線形性を補償して、線形化する。クロック262はマイクロプロセッサ258にクロック信号を供給する。デジタル化され、補償され、補正されたセンサ信号はさらにマイクロプロセッサ264に伝送される。
【0032】
マイクロプロセッサ264はセンサ信号を分析して、プロセス状態を判断する。特に、メモリ(これは不揮発性ランダムアクセスメモリ266(NVRM)にすることができる)は、通風圧、質量流量、BTU含有量、および/または燃焼率などのプロセス状態の特定の値を、感知したプロセス変数の大きさに基づいて求めるために使用されるアルゴリズム係数を格納するルックアップテーブルを含む。さらに、流体を運ぶパイプの種類と内径、および流体の粘度と密度などのハードウェアパラメータおよび流体パラメータが、制御ループ218からメモリ266にアップロードされる。他の実施形態では、ハードウェアパラメータおよび流体パラメータに関係するデータは、ユーザインターフェース(
図2には図示せず)からトランスミッタ264に直接入力される。また、流体パラメータは、様々な流体パラメータがルックアップテーブルに格納されて、他の流体パラメータおよび感知されたプロセス変数に基づいて選択されるように、プロセス変数の関数とすることができる。
【0033】
ハードウェアパラメータ、流体パラメータ、感知したプロセス変数、およびアルゴリズム係数を使用して、マイクロプロセッサ264はランタイム計算を行う。ランタイム計算はプロセス条件式を評価して、プロセス条件またはプロセス状態を判断する。計算したプロセス条件を表すプロセス条件信号およびセンサ信号は、通信回路268を用いて制御ループ218でワークステーション14に伝送される。通信回路268は電圧レギュレータ268Aと、モジュレータ回路268Bと、ループ電流コントローラ268Cと、トランスミッタ回路モジュール234をワークステーション14の通信インターフェース280と通信できるようにする4−20mA HART(登録商標)受信機などのプロトコル受信機またはトランシーバ268Dとを含んでいる。
【0034】
NVRAM266は統計プロセスモニタリング(SPM)の命令も内蔵する。これらの命令はプロセス状態を生成するために使用される命令と並列して実行される。SPM命令は、センサ信号のうちの1つ以上の平均/中央値、標準偏差等など、センサ信号からの統計値を計算する。例えば、通風圧の標準偏差を求めることができる。
【0035】
この実施形態によると、マイクロプロセッサ264が生成する統計値は通信回路268からワークステーション14に送信される。ワークステーション14はメモリ276に統計値を格納することができ、ヒストリカル統計値を出力モニタ274に表示することができる。ワークステーション14のマイクロプロセッサ270は統計値を使用して、バーナが以下に詳しく述べるような異常な態様で動作しているかどうかを判断することもできる。
【0036】
ワークステーション14は、通例、工業プロセスのプロセス変数およびプロセス条件をモニタリングして調節するために、工業プロセス付近に設置されるポータブルコンピュータなどのパーソナルコンピュータを具備する。ワークステーション14は、オペレータがプロセス制御入力をメモリ276に入力できるキーボード、マウスまたは他のユーザインターフェースなどの入力272を含む。ワークステーション14は、データの閲覧を可能にするモニタなどの出力274も含む。プリンタまたはその他一般に使用される機器などの周辺機器278もワークステーション14に接続して、マイクロプロセッサ270からデータを入力し、抽出することができる。ワークステーション14は通信インターフェース280を含み、これがマイクロプロセッサ264にデータを送受信する。ワークステーション14は、モジュール234の能力およびセンサ246が生成するセンサ信号を完全に評価して分析するように構成されている。
【0037】
図2に図示する回路要素から、ワークステーション14は通風圧の標準偏差およびバーナ/ヒータの条件を記述する少なくとも1つのプロセス変数を受信することができる。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのプロセス変数はバーナ/ヒータの燃焼率であり、これは選択された時間単位あたりにバーナが放出する熱量の測度である。例えば、燃焼率は1時間あたりに放出されるBTUの数として表すことができる。BTUセンサが利用できない場合、燃焼率は燃料流量または燃料圧力だけから推定することができる。
【0038】
通風圧の標準偏差は、火炎が安定しているときでも変動することがある。
図3は、火炎が安定した状態である期間の通風圧の標準偏差のグラフを示す。
図3では、通風圧の標準偏差は縦軸300に示しており、時間は横軸302に示す。
図3のグラフでは、通風圧の標準偏差は306の時点で上昇しているように示されており、308の領域で低下しているように示されている。通風圧の標準偏差の情報または低下のいずれも火炎の不安定性を示すものではない。代わりに、本発明者らは通風圧の標準偏差の変化がバーナの燃焼率の変化と一致することを発見した。
図4は、
図3に図示する燃焼試験について、時間の関数として燃焼率を表すグラフを示す。
図4では、燃焼率は縦軸400に示し、時間は横軸402に示しており、横軸402の時間間隔は
図3の横軸302の時間間隔に一致する。
【0039】
図4に図示するように、燃焼率は、通風圧の標準偏差が306の時点で上昇するのと同じ時点の406で上昇する。同様に、燃焼率が408で低下するとき、通風圧の標準偏差も308の領域で低下する。このように、燃焼率の変化は通風圧の標準偏差の変化を生じさせるようである。このことは、燃焼率が上昇すると通風圧の偏差が上昇し、燃焼率が低下すると通風圧の偏差が低下することを示す。この変化は火炎が安定した状態にあるときでも生じることに留意する。
【0040】
図5は、火炎が安定しているときの正常な動作中の燃焼率の関数として通風圧の標準偏差を表すグラフを示す。
図5では、通風圧の標準偏差は縦軸500に示し、燃焼率は横軸502に示す。
図5の各点は、バーナの試験中に火炎が安定していた時点を表す。
図5で線形に示されている最良適合曲線506は、燃焼率と通風圧の標準偏差との大体の関係を示す。
【0041】
図6は燃焼率の関数として通風圧の標準偏差を表す第2のグラフを示しており、安定した火炎のデータポイントと不安定な火炎のデータポイントとの関係を示す。
図6では、通風圧の標準偏差は縦軸600に示し、燃焼率は横軸602に示す。
図6の丸点は火炎が安定しているときの正常な動作中の通風圧の標準偏差と燃焼率のデータポイントを表す。線604は通風圧の標準偏差と燃焼率との大体の関係を示す。星印のデータポイント606は、火炎が不安定なときの異常な動作中の通風圧の標準偏差と燃焼率の値を示す。
図6に図示するように、データポイント606は線604から大きく外れており、火炎が不安定なときの燃焼率と通風圧の標準偏差との組み合わせが、正常な動作中の燃焼率と通風圧の標準偏差との組み合わせとは大幅に異なることが分かる。
【0042】
図7および
図8は、安定した火炎と不安定な火炎の両方を含む燃焼試験について、それぞれ通風圧の標準偏差と燃焼率のグラフを示す。
図7では、時間は横軸702に示しており、
図8では時間は横軸802に示しており、各グラフの同じ時間が垂直に揃えられている。
図7では通風圧の標準偏差は縦軸700に示されており、
図8では燃焼率が縦軸800に示されている。
【0043】
第1試験804の間、火室内の1つのバーナ用の燃料が徐々に遮断され、「勢いのない」火炎になる。この勢いのない火炎はまだ安定していると考えられる。囲み枠「L」806で示すように、低燃料圧力試験804の間、バーナの燃焼率は低い。低燃料圧力試験中の火炎は安定しているため、
図7の囲み枠「L」706で示すように通風圧の標準偏差も低い。
【0044】
第2試験808の間、火室内に過剰酸素があるようにバーナに供給される燃料および酸素レベルを上昇させることにより、バーナの燃焼率は上昇する。囲み枠「M」810で示すように、燃料および酸素レベルを上昇させる結果、燃焼率は中レベルになり、
図7の囲み枠「M」710で示すように、通風圧の標準偏差が中レベルになる。
【0045】
第3試験812の間、試験ステップ808から燃料比を下げて、バーナを低過剰酸素状態にするために、バーナに供給される酸素レベルを低下させる。
図8に示すように、この結果、燃焼率814は低く、対応して通風圧の標準偏差714が低くなる。ステップ812の間、火炎はバーナ内で安定したままであることが観察された。
【0046】
第4試験816の間、低酸素環境を維持しながら、バーナに供給する燃料の量を増やす。囲み枠「H」818で示すように、この結果燃焼率は高くなり、囲み枠「H」718で示すように、対応して通風圧の標準偏差が高くなっている。ステップ816のこの初期段階中、バーナは安定していることが観察された。
【0047】
ステップ820で、火室内の1つのバーナが準化学量論的燃焼に入った結果、燃焼率が中範囲822に低下した。当初、通風圧の標準偏差は中くらいの値722に低下した。しかし、火炎の準化学量論的燃焼が続くと、通風圧の標準偏差は高い値724に上昇した。さらにバーナへの燃料が減少したことから、燃焼率は低レベル826に低下し、それによりバーナは準化学量論的燃焼から抜け出し、
図7のポイント726で通風圧の標準偏差が低くなった。
【0048】
図6、
図7および
図8に図示するように、燃焼率と通風圧の標準偏差との関係は、準化学量論的燃焼または火炎の不安定性が長引かない限り、火室内のいくつかの異なる条件において変わらない。しかし、準化学量論的燃焼または火炎の不安定性が長引くと、通風圧の標準偏差と燃焼率との関係は著しく異なってくる。
【0049】
図9および
図10は、通風圧の標準偏差および燃焼率に基づいてバーナが異常な態様で動作しているときを特定するために使用される要素とステップのブロック図およびフロー図を示す。
【0050】
図10のステップ1000で、プロセス変数を選択して通風測定値を正規化する。いくつかの実施形態によると、プロセス変数は火室内のバーナの燃焼率である。しかし、他の実施形態では、燃料圧力、BTU含有量、燃料流量、プロセスフロー、または炉の温度など、他のプロセス変数を使用することができる。ステップ1002で、バーナの複数の安定動作条件について、安定動作の試験データ902を表すSPM通風測定データ904およびプロセス変数データ906を収集する。これらの安定動作条件は1つ以上のバーナでの低燃料圧力、過剰酸素状態での高燃料圧力、および低O
2圧力を含むことができる。これらの安定動作条件のそれぞれにおいて、バーナが生成する火炎は安定していることが観察され、このように、準化学量論的燃焼、失火寸前または失火状態を経験していない。ある実施形態によると、SPM通風測定データは圧力測定器37から収集され、燃焼率データは、燃料流量測定器33によって供給される燃料流量データおよびBTU測定器70からのBTUデータから燃焼率データを計算することによって収集される。具体的には、BTU測定器70からのBTUデータは熱量を燃料ガスの容積で示し、燃料流量測定器33は1秒あたりにバーナに流れるガスの容積を示す。他の実施形態によると、燃焼率は、燃料の流量と燃料のBTU含有量の両方を判定する燃焼率測定器から直接供給される。
【0051】
ステップ1004で、曲線フィッティングアルゴリズム908を使用してSPM通風測定値/プロセス変数データに曲線をあてはめて、曲線パラメータ910を出す。
図5および
図6に図示するように、ある実施形態によると、線形曲線がSPM通風測定/プロセス変数データにあてはまる。しかし、当業者は二次曲線および三次曲線を含め、より複雑な曲線がデータにあてはまりうることは認識するであろう。例えば、曲線は以下のように記述することができる。
【0055】
上記式において、σは通風圧の標準偏差であり、Fは燃焼率であり、a、b、c、x、yは曲線を記述するパラメータである。曲線フィッティングモジュール908によって求められるパラメータは曲線パラメータ910としてメモリに格納される。曲線は通風圧の標準偏差と燃焼率との観察された関係を定義する。
【0056】
ステップ1006で、火炎安定性計算機916は、現行プロセス変数値912と通風測定値から計算された統計変数914とを受信する。現行プロセス変数値912は、バーナ/ヒータの動作に関係するプロセス変数である。いくつかの実施形態によると、統計変数914は通風圧の値の標準偏差である。前述したように、いくつかの実施形態によると、統計変数914は圧力測定器37などのフィールド機器内で生成される。
【0057】
ステップ1008で、火炎安定性計算機916は曲線パラメータ910を使用して、プロセス変数912および通風圧の標準偏差値914から安定性値を求める。ある実施形態によると、安定性値は以下のように計算される。
【0060】
上記式において、Sは安定性値であり、他の値は上記式6および7から取得される。
【0061】
ある特定の実施形態において、
図5および
図6に示すように燃焼率と通風圧の標準偏差とに線形関係がある場合、式9は以下のようになる。
【0062】
【数10】
上記式において、曲線パラメータxは
図5および
図6に示す線の勾配の逆数である。
【0063】
代替実施形態において、SPM通風圧力データおよびプロセス変数データを収集して、そのデータに曲線をあてはめる代わりに、通風圧の標準偏差と燃焼率との関係が線形であると想定して、式10のxの値を以下のように設定する。
【0065】
上記式において、F
designは設計燃焼率であり、σ
baseは火室が設計過剰酸素状態の設計燃焼率における通風圧の標準偏差の値である。
【0066】
安定した火炎の場合、安定性値Sは約1になるはずである。しかし、バーナの火炎に不安定性がある場合または低過剰酸素、準化学量論的燃焼、失火寸前もしくは失火などの他の異常条件がバーナにある場合、Sの値は、上記式7および式9を使用する実施形態では著しく高くなり、または上記式6および式8を使用する実施形態では著しく低くなる。
【0067】
ステップ1010で、火炎安定性計算機916が生成する安定性値918を異常状況検出器920が使用して、バーナがステップ1012の不安定な火炎、低過剰酸素、準化学量論的燃焼、失火寸前または失火などの異常条件であるかどうかを判断する。ある実施形態によると、異常状況検出器920はバーナが異常条件であるかどうかを判断するのに、1つ以上の統計プロセス制御(SPC)ルールを適用して、通風圧の標準偏差の値が、安定条件中に観察される通風圧の標準偏差とプロセス変数との関係と統計的に異なるかどうかを判断して行う。バーナが不安定な状態にない場合、プロセスはステップ1006に戻って、新たなSPM通風測定データおよびプロセス変数データを受信する。ステップ1012で異常条件が検出されるまで、ステップ1006、1008、1010および1012は無限に繰り返される。異常な状況が検出されると、ステップ1014で異常状況検出器920によって異常状況インジケータ922が利用される。この異常状況インジケータ922はワークステーション14に提示されるアラーム、または制御室もしくは携帯電話もしくはタブレット機器などの携帯機器に提示されるアラームにすることができる。
【0068】
いくつかの実施形態により、
図10の方法を実施する
図9の要素はワークステーション14に実装される。具体的には、
図2のマイクロプロセッサ270は、メモリ276に格納されて、曲線フィッティング演算908を行い、火炎安定性計算機916および異常条件検出器920として機能する命令を実行することができる。プロセス変数および通風圧の標準偏差は通信インターフェース280から受信でき、安定性値曲線パラメータおよび異常状況インジケータはメモリ276に格納することもできる。
【0069】
図11は、初日に
図7および
図8のバーナ試験を含む30日間の通風圧の標準偏差、燃焼率および安定性値の関係を示すグラフを示す。
図11(a)(b)(c)では、時間は横軸1102、1202および1302に示し、各グラフの同じ時間はグラフ間で垂直に揃えている。
図11(a)では、縦軸1100は通風圧の標準偏差を示す。
図11(b)では、縦軸1200はバーナの燃焼率を示す。
図11(c)では、縦軸1300は安定性値の値を示す。
図11(c)に示すように、
図7および
図8のバーナ試験中に出た最も高い安定性値1304は、燃焼率1204および通風圧の標準偏差1104と一致する。このように、安定性値はバーナ試験中に火炎が不安定になったことを示す。
図11(a)(b)(c)のバーナの運転の残りの期間中、バーナの火炎は安定したままである。期間1310中、通風圧の標準偏差は値1106で示すように上昇した。しかし、通風圧の標準偏差のこの上昇は、1206での燃焼率の上昇に関連しているようである。そのため、安定性値1306は健全な燃焼を示す1.1未満のままである。
【0070】
図12(a)(b)(c)は、バーナの試験セットについて、それぞれ通風圧の標準偏差、燃焼率および安定性値のグラフを示す。軸1402、1502および1602は時間を示し、各グラフで同じ時間はグラフ間で垂直に揃えている。縦軸1400は通風圧の標準偏差を示し、縦軸1500は燃焼率を示し、縦軸1600は安定性値を示す。ポイント1406、1506および1606で、バーナに供給する燃料の量を増やす高燃料圧力試験を行う。この試験中、通風圧の標準偏差は、ポイント1406で示されるように上昇していることが示されている。この上昇はポイント1506で示される燃焼率の上昇に一致する。通風圧の標準偏差の上昇が燃焼率の上昇に一致するため、安定性値1606は安定した火炎を示す1.1未満のままである。
【0071】
ポイント1408、1508および1608で、酸素の量を低レベルに維持しながらバーナに供給する燃料の量を増やす低酸素試験を行う。ポイント1408で示されるように、通風圧の標準偏差は、燃焼率が1508で上昇するとともに上昇する。この試験中に火炎の不安定性は観察されなかったが、安定性値はポイント1608で1.1を超えて上昇しており、準化学量論的燃焼、低O
2、火炎不安定性または失火などの燃焼の何らかの異常を示している。
【0072】
ポイント1510で燃焼率は急低下するが、対応するポイント1410で通風圧の標準偏差は依然高いままである。そのため、この期間中の安定性値1610は高く、火炎が不安定であること、低過剰酸素であること、準化学量論的燃焼、失火寸前または失火があることを示している。
【0073】
ある実施形態によると、
図12(a)及び
図12(b)のグラフはリアルタイムでワークステーション14のモニタに表示して、オペレータに現在の通風圧の標準偏差および現在の燃焼率を提示することができる。別の実施形態によると、
図12(c)のグラフもワークステーション14のモニタに表示して、オペレータに現在のバーナの安定性を提示する。このように、
図12(a)(b)(c)は、バーナ/ヒータを制御するオペレータを支援し、それによってバーナ/ヒータの失火状態を避けるために、オペレータに提供されるユーザインターフェースを表す。
【0074】
上記の説明は燃焼率について述べているが、代替実施形態では、燃焼率の代わりに、毎時立方フィートあたりのBTUの測度である容積燃焼率が使用される。
【0075】
ヒータを参照して実施形態を上記述べているが、当業者は、プロセス材料を加熱せずに廃ガスを燃焼するために使用されるバーナを含め、あらゆるバーナのアプリケーションで実施形態を実施できることは認識するであろう。
【0076】
本発明は好適な実施形態を参照して説明してきたが、当業者は本発明の精神および範囲を逸脱せずに形態および細部に変更を行えることは認識するであろう。