(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のポリアミド及び前記第2のポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、及びそれらの組み合わせからなる群から独立して選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、19重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
前記難燃剤は、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、6〜13重量%の金属ジアルキルホスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、所望の難燃性、メルトフロー、耐熱性、及び機械的特性を示す、金属ジアルキルフォスフィン酸塩の含量が低減された、ガラス入りポリアミド組成物を確認した。この組成物は、特定のポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを用いてコンパウンドする方法により調整可能である。この組成物は、扱いにくいポリ(フェニレンエーテル)粉末の使用を避けつつ、ポリ(フェニレンエーテル)の難燃性共力剤の効果を得ることができる。
【0010】
燃焼特性について、ポリアミド組成物は、Underwriter's Laboratory社の要綱94「プラスチック材料の燃焼試験、UL94」の20mm垂直燃焼炎試験において、0.8mmのサンプル厚で、V−0又はV−1の評価を示す。
【0011】
メルトフロー特性について、ポリアミド組成物は、282℃の温度、毎秒1500のせん断速度を用いたISO11443:2005による測定で、251パスカル秒以下の溶融温度を示す。ある実施の形態において、溶融粘度は、100〜250パスカル秒、具体的には100〜160パスカル秒である。
【0012】
硬度特性について、ポリアミド組成物は、80mm×10mm×4mmの断面寸法の試験片、64mmの支点間距離、組成物につき3つの試料を用いた、23℃でのISO178:2010による測定で、少なくとも7200MPaの曲げ弾性率を示す。ある実施の形態において、曲げ弾性率は、7200〜9000MPa、具体的には7900〜9000MPaである。
【0013】
柔軟特性について、ポリアミド組成物は、タイプAの半径、ノッチ角は45°、ノッチ下の材料の深さは8mm、ハンマーエネルギーは2.75J、試験片の断面寸法は10mm×4mm、組成物につき10個の試料を用いた、ISO180:2000による測定で、少なくとも8.3kJ/m
2のノッチ付きアイゾット衝撃強度を示す。ある実施の形態において、ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、8.3〜10kJ/m
2、具体的には8.5〜10kJ/m
2である。
【0014】
耐熱特性について、ポリアミド組成物は、ISO306:2004のB−120法、読み取り時の針の侵入深さ1mm、前負荷時間5分、及び組成物につき3つの試料を用いた測定で、少なくとも200℃のビカット軟化温度を示す。ある実施の形態において、ビカット軟化温度は、200〜250℃、具体的には240〜250℃である。
【0015】
ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、UL94の評価がV−0、溶融粘度が100〜160パスカル秒、曲げ弾性率が7900〜9000MPa、ノッチ付きアイゾット衝撃強度が8.5〜10kJ/m
2、及びビカット軟化温度が240〜250℃である。
【0016】
1つの実施の形態は、ポリアミド組成物を生成する方法であって、ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜30重量%と、第1のポリアミドを35〜70重量%と、ガラス繊維を15〜40重量%と、金属ジアルキルフォスフィネートを含む難燃剤を10〜20重量と、を含む成分を溶融混練してポリアミド組成物を生成するステップを備え、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜97重量%と、第2のポリアミドを3〜65重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であることを特徴とする方法である。
【0017】
溶融混練は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチとポリアミド組成物の双方を生成するために用いられる。溶融混練(溶融混合としても知られる)は、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、一軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、コ・ニーダー(co-kneader)など、一般的な機器を用いて実行することができる。ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの生成は、例えば、二軸押出機中、230〜310℃、具体的には240〜300℃の温度で、ポリ(フェニレンエーテル)、第2のポリアミド、及び任意のオプションの成分を溶融混練することにより実行することができる。ポリアミド組成物の生成は、例えば、230〜290℃、具体的には250〜270℃の温度で、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチ、第1のポリアミド、ガラス繊維、及び難燃剤を溶融混練することにより実行することができる。
【0018】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)を含む。ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の式を有する繰り返し構造単位を含む。
【化1】
ここで、それぞれの繰り返し単位において、Z
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、置換又は無置換の三級ヒドロカルビル基ではないC
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、又は少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基であり、Z
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の三級ヒドロカルビル基ではないC
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、又は少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基である。本明細書において用いられる「ヒドロカルビル基」という用語は、それ自体で用いられる場合も、接頭辞、接尾辞、又は別の用語のフラグメントとして用いられる場合も、炭素及び水素のみを含む残基を指す。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環式、分岐鎖、飽和、又は不飽和であってもよい。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環式、分岐鎖、飽和、及び不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでもよい。しかし、炭化水素残基が置換されて記載される場合、炭化水素残基は、オプションで、置換された残基の炭素及び水素原子上にヘテロ原子を含んでもよい。したがって、とくに置換されて記載される場合、炭化水素残基は、1以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含んでもよく、また、炭化水素残基の骨格の中にヘテロ原子を含んでもよい。1つの例として、Z
1は、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応により生成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であってもよい。
【0019】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)が副生成物として存在する2,6−ジメチルフェノールを含有する反応混合物から典型的に得られるTMDQ末端基が存在することも多い。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、又はブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせの形で存在し得る。
【0020】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。本明細書において用いられる「ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー」という用語は、少なくとも1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと少なくとも1つのポリシロキサンブロックを含むブロックコポリマーを指す。
【0021】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、酸化共重合法により調整される。この方法において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、1価フェノール及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含むモノマー混合物を酸化共重合させるステップを含むプロセスの生成物である。ある実施の形態において、モノマー混合物は、1価フェノール及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの総重量を基準として、70〜99重量部の1価フェノールと、1〜30重量部のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含む。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、下記の構造を有する複数の繰り返し単位と、
【化2】
ここで、式中のR
8は、それぞれ個々に、水素原子、C
1−C
12のヒドロカルビル基、又はC
1−C
12のハロヒドロカルビル基であり、下記の構造を有する2つの末端単位とを含む。
【化3】
ここで、Yは、水素原子、C
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、又はハロゲン原子であり、R
9は、それぞれ個々に、水素原子、C
1−C
12のヒドロカルビル基、又はC
1−C
12のハロヒドロカルビル基である。特定の実施の形態において、それぞれのR
8及びR
9はメチル基であり、Yはメトキシ基である。
【0022】
ある実施の形態において、1価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールを含み、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、下記の構造を有する。
【化4】
ここで、nは、平均して、5〜100、具体的には30〜60である。
【0023】
酸化共重合方法は、目的生成物としてポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを生成し、副生成物として(導入されたポリシロキサンブロックがない)ポリ(フェニレンエーテル)ホモコポリマーを生成する。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーからポリ(フェニレンエーテル)を分離する必要はない。したがって、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)とポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの双方を含む「反応生成物」として使用可能である。イソプロパノールからの沈殿などの特定の分離方法により、反応生成物が、実質的にヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発物質の残基を含まないようにすることができる。言い換えれば、これらの分離方法は、反応生成物の含有ポリシロキサンが、実質的に全てポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの形であることを確実にする。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを生成するための方法の詳細は、Carrilloらによる米国特許第8,017,697号、及びCarrilloらによる米国特許出願番号第13/169,137号(2011年6月27日出願)に記載されている。
【0024】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃でのウベローデ(Ubbelohde)粘度計による測定で、0.25〜1dl/gの固有粘度を有する。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、0.3〜0.65dl/g、具体的には0.35〜0.5dl/g、より具体的には0.4〜0.5dl/gであってもよい。
【0025】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含む。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。これらの実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、例えば、0.05〜2重量%、具体的には0.1〜1重量%、より具体的には0.2〜0.8重量%のシロキサン基をポリアミド組成物にもたらしてもよい。
【0026】
ポリ(フェニレンエーテル)の量は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、35〜97重量%である。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の量は、50〜97重量%、具体的には75〜96.5重量%、より具体的には85〜95重量%であってもよい。
【0027】
ポリ(フェニレンエーテル)の量は、ポリアミド組成物の重量を基準として、1.75〜29.1重量%である。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の量は、3〜20重量%、具体的には5〜15重量%、より具体的には3〜13重量%であってもよい。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、19重量%以下、具体的には17重量%以下、より具体的には15重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含む。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、13重量%以下、具体的には11重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含む。
【0028】
ポリアミド組成物は、同一又は異なる第1のポリアミド及び第2のポリアミドを含む。ナイロンとしても知られるポリアミドは、複数のアミド基(−C(O)NH−)の存在により特徴付けられ、Gallucciによる米国特許第4,970,272号に記述される。本方法において第1のポリアミド又は第2のポリアミドとして使用するのに好適なポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,12、ポリアミド−6/6,6、ポリアミド−6/6,12、ポリアミドMXD,6、ポリアミド−6,T、ポリアミド−6,I、ポリアミド−6/6,T、ポリアミド−6/6,I、ポリアミド−6,6/6,T、ポリアミド−6,6/6,I、ポリアミド−6/6,T/6,I、ポリアミド−6,6/6,T/6,I、ポリアミド−6/12/6,T、ポリアミド−6,6/12/6,T、ポリアミド−6/12/6,I、ポリアミド−6,6/12/6,I、及びそれらの組み合わせを含む。ある実施の形態において、第1のポリアミド及び/又は第2のポリアミドは、ポリアミド−6を含む。ある実施の形態において、第1のポリアミド及び/又は第2のポリアミドは、ポリアミド−6,6を含む。ある実施の形態において、第1のポリアミドはポリアミド−6,6を含み、第2のポリアミドはポリアミド−6を含む。ある実施の形態において、第1のポリアミド及び第2のポリアミドは、ポリアミド−6,6を含む。
【0029】
ポリアミドは、多数の既知のプロセスにより調整可能である。また、ポリアミドは、様々な入手元から商業的に入手可能である。
【0030】
第2のポリアミドの量は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、3〜65重量%である。この範囲内で、第2のポリアミドの量は、3〜40重量%、具体的には3〜20重量%、より具体的には3〜10重量%であってもよい。
【0031】
第2のポリアミドの量は、ポリアミド組成物の重量を基準として、0.15〜19.5重量%である。この範囲内で、第2のポリアミドの量は、0.2〜5重量%、具体的には0.2〜2重量%、より具体的には0.2〜1重量%であってもよい。
【0032】
第1のポリアミドの量は、ポリアミド組成物の重量を基準として、35〜70重量%である。この範囲内で、第1のポリアミドの量は、40〜65重量%、具体的には45〜55重量%であってもよい。
【0033】
ポリアミドの総量(すなわち、第1のポリアミドの量と第2のポリアミドの量の和)は、ポリアミド組成物の重量を基準として、35.15〜
89.5重量%である。この範囲内で、ポリアミドの総量は、40〜60重量%、具体的には45〜55重量%であってもよい。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、第1のポリアミド及び第2のポリアミドを合わせて52重量%以下、具体的には50重量%以下含む。
【0034】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)及び第2のポリアミドのための相溶化剤を更に含む。本明細書において用いられる「相溶化剤」という用語は、ポリ(フェニレンエーテル)、第2のポリアミド、又は双方と相互作用する多官能化合物を指す。この相互作用は、化学的(例えば、グラフト化)、及び/又は、物理的(例えば、分散相の表面特性に影響を及ぼす)であってもよい。
【0035】
使用可能な相溶化剤の例は、液状ジエン系ポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン、有機シラン化合物、多官能化合物、及びそれらの組み合わせを含む。相溶化剤は、Gallucciによる米国特許第5,132,365号、Koevoetsらによる米国特許6,593,411号及び米国特許第7,226,963号に更に記載されている。
【0036】
ある実施の形態において、相溶化剤は、多官能化合物を含む。相溶化剤として使用しうる多官能性化合物には概して3つのタイプがある。第一のタイプの多官能化合物は、分子内に、(a)炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合と、(b)少なくとも1つのカルボン酸基、酸無水物基、アミド基、エステル基、イミド基、アミノ基、エポキシ基、オルトエステル基又はヒドロキシ基の双方を有する。このような多官能化合物の例は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸グリシジル、イタコン酸、アコニット酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、ジアミンと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などとから得られる反応生成物、ジクロロマレイン酸無水物、マレイン酸アミド、不飽和ジカルボン酸(例えば、アクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸など)、これらの不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド又は無水物、不飽和アルコール(例えば、アルカノール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、及び式C
nH
2n−5OH、C
nH
2n−7OH、及びC
nH
2n−9OHのアルコール(式中、nは10〜30の正の整数である)、上記の不飽和アルコールの−OH基を−NH
2基で置換して得られる不飽和アミン、官能化されたジエン系ポリマー及びコポリマー、及びこれらの1以上を含む組み合わせを含む。ある実施の形態において、相溶化剤は、無水マレイン酸、及び/又は、フマル酸を含む。
【0037】
多官能相溶化剤の第二のタイプは、(a)式(OR)で表される基(式中、Rは水素、又はアルキル基、アリル基、アシル基、又はカルボニルジオキシ基である)と、(b)カルボン酸、酸ハロゲン化物、酸無水物、酸ハロゲン化物無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ、及びこれらの各種の塩から選択される2以上の基(同一でも異なるものでもよい)との双方を有する。このグループの相溶化剤の典型例は、次式で表される脂肪族ポリカルボン酸、酸エステル、及び酸アミドである。
【化5】
ここで、R'は、2〜20、より具体的には2〜10の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素であり、R
Iは、水素、又は、1〜10、より具体的には1〜6、さらに具体的には1〜4の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、アシル基、又はカルボニルジオキシ基であり、R
IIは、それぞれ個々に、水素、又は、1〜20、具体的には1〜10の炭素原子を有するアルキル基又はアリル基であり、R
III及びR
IVは、それぞれ個々に、水素、又は、1〜10、より具体的には1〜6、さらに具体的には1〜4の炭素原子を有するアルキル基又はアリル基であり、mは1に等しく、(n+s)は2以上、より具体的には2又は3に等しく、n及びsはそれぞれ0以上であり、(OR
I)は、カルボニル基に対してα又はβであり、少なくとも2つのカルボニル基は、2〜6個の炭素原子により隔てられている。当然ながら、R
I、R
II、R
III、及びR
IVは、それぞれの置換基の炭素原子数が6未満である場合はアリル基とはなり得ない。
【0038】
好適なポリカルボン酸は、例えば、酸無水物及び酸水和物などの各種の市販形態のものを含むクエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸、及び上記の1以上の組み合わせを含む。ある実施の形態において、相溶化剤はクエン酸を含む。本明細書において使用可能なエステルの例は、例えば、クエン酸アセチル、クエン酸モノステアリル、及び/又はクエン酸ジステアリルなどを含む。本明細書において使用可能な好適なアミドは、例えば、N,N′−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N,N′−ジドデシルクエン酸アミド、及びN−ドデシルリンゴ酸アミドを含む。誘導体は、アミンとの塩、及びアルカリ及びアルカリ金属塩を含む、これらの塩を含む。好適な塩の例は、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カリウム、及びクエン酸カリウムを含む。
【0039】
多官能相溶化剤の第三のタイプは、分子内に、(a)酸ハロゲン化物基と、(b)少なくとも1つのカルボン酸基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オルトエステル基、又はアミド基、好ましくはカルボン酸基又は酸無水物基との双方を有する。このグループに属する相溶化剤の例は、無水トリメリット酸クロリド、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロアセチルコハク酸無水物、クロロアセチルコハク酸、トリメリット酸クロリド、及びクロロアセチルグルタル酸を含む。ある実施の形態において、相溶化剤は、無水トリメリット酸クロリドを含む。
【0040】
上記の相溶化剤は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの他の成分に直接追加されてもよいし、ポリ(フェニレンエーテル)と予め反応させてもよい。上記の相溶化剤の多く、とくに多官能化合物において、少なくとも一部の相溶化剤がポリ(フェニレンエーテル)の全て又は一部と予め反応された場合に、相溶性の向上が見られる。このような予備反応は、相溶化剤をポリ(フェニレンエーテル)と反応させ、その結果、官能化させるであろうと考えられる。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)をクエン酸又は無水マレイン酸と予め反応させ、官能化されていないポリ(フェニレンエーテル)に比べて第1及び第2のポリアミドとの相溶性が向上した酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)を生成することができる。
【0041】
相溶化されたポリアミド・ポリ(フェニレンエーテル)ブレンドの調整において相溶化剤が使用される場合、使用される量は、選択された特定の相溶化剤、及び、相溶化剤が追加される特定のポリ(フェニレンエーテル)及び第2のポリアミドに依存するであろう。ある実施の形態において、相溶化剤の量は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、0.2〜5重量%、具体的には0.5〜4重量%、より具体的には1〜3重量%である。
【0042】
下記の実施例において説明されるように、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、結果として生成されるポリアミド組成物の特性を過度に劣化させないように、相溶化剤を用いずに調整されてもよい。
【0043】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、オプションで、熱可塑性樹脂の分野で既知の1以上の添加剤を更に含んでもよい。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、オプションで、安定剤、滑剤、加工助剤、ドリップ防止剤、核剤、紫外線ブロッカー、染料、顔料、抗酸化剤、帯電防止剤、金属不活性剤、アンチブロッキング剤など、及びそれらの組み合わせから選択された添加剤を更に備えてもよい。このような添加剤は、使用する場合、典型的には、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、総量で5重量%以下、具体的には2重量%以下、より具体的には1重量%以下の量が用いられる。
【0044】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリアミド組成物の重量を基準として、5〜30重量%の量が用いられる。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの量は、5〜25重量%、具体的には5〜15重量%であってもよい。ポリアミド組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチ及び第1のポリアミドに加えて、ガラス繊維を含む。好適なガラス繊維は、E、A、C、ECR、R、S、D、及びNEガラスだけでなく、石英をベースとしたものを含む。ある実施の形態において、ガラス繊維は、2〜30μm、具体的には5〜25μm、より具体的には8〜15μmの直径を有する。ある実施の形態において、混合前のガラス繊維の長さは、2〜7mm、具体的には3〜5mmである。ガラス繊維は、ポリ(フェニレンエーテル)及びポリスチレンとの適合性を向上させるために、オプションで、いわゆる接着促進剤を含む。接着促進剤は、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、アルミン酸ジルコニウム、プロピレン無水マレイン酸コポリマー、反応性セルロースエステルなどを含む。好適なガラス繊維は、例えば、オーウェンス・コーニング、日本電気硝子、PPG、及びジョンズ・マンビルなどの供給元から商業的に入手可能である。
【0045】
ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の重量を基準として、15〜40重量%の量のガラス繊維を含む。この範囲内で、ガラス繊維の量は、18〜35重量%、具体的には20〜30重量%であってもよい。
【0046】
ポリアミド組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチ、第1のポリアミド、及びガラス繊維に加えて、難燃剤を含む。難燃剤は、金属ジアルキルフォスフィン酸塩を含む。本明細書において用いられる「金属ジアルキルフォスフィン酸塩」という用語は、少なくとも1つの金属陽イオンと少なくとも1つのジアルキルフォスフィン酸陰イオンを含む塩を指す。ある実施の形態において、金属ジアルキルフォスフィン酸塩は、下記の式を有する。
【化6】
ここで、R
a及びR
bは、それぞれ個々に、C
1−C
6のアルキル基であり、Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛であり、dは、2又は3である。R
a及びR
bの例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、及びフェニル基を含む。ある実施の形態において、R
a及びR
bはエチル基であり、Mはアルミニウムであり、dは3である(すなわち、金属ジアルキルホスフィン酸塩は、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムである)。
【0047】
ある実施の形態において、金属ジアルキルフォスフィン酸は、特定の形態である。金属ジアルキルフォスフィン酸塩の粒子は、40μm以下のメディアン径(D50)、又は、より具体的には30μm以下のD50、更に具体的には25μm以下のD50を有してもよい。
【0048】
難燃剤の量は、ポリアミド組成物の重量を基準として、10〜20重量%である。この範囲内で、難燃剤の量は、12〜18重量%、具体的には13〜17重量%であってもよい。金属ジアルキルフォスフィン酸塩の量は、ポリアミド組成物の重量を基準として、5〜20重量%であってもよい。この範囲内で、金属ジアルキルフォスフィン酸塩の量は、6〜15重量%、具体的には7〜13重量%であってもよい。金属ジアルキルフォスフィン酸塩の量が10%未満である場合、難燃剤の総量が少なくとも10重量%となるように、別の難燃剤があわせて用いられる。
【0049】
ある実施の形態において、難燃剤は、ポリリン酸メラミンを更に含む。ある実施の形態において、難燃剤は、ホウ酸亜鉛を更に含む。ある実施の形態において、難燃剤は、ポリリン酸メラミン及びホウ酸亜鉛を更に含む。ある実施の形態において、難燃剤は、難燃剤の総重量を基準として、50〜76重量%、具体的には55〜70重量%の金属ジアルキルフォスフィン酸塩と、22〜49重量%、具体的には25〜40重量%のポリリン酸メラミンと、2〜8重量%、具体的には3〜7重量%のホウ酸亜鉛とを含む。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の重量を基準として、6〜13重量%の金属ジアルキルフォスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含む。
【0050】
ポリアミド組成物は、オプションで、ポリ(フェニレンエーテル)及び第1のポリアミドのための相溶化剤を更に含んでもよい。この相溶化剤は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの調整において用いられた任意の相溶化剤と同じでもよいし、異なってもよい。ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの説明において上述した相溶化剤は、ポリ(フェニレンエーテル)及び第1のポリアミドの相溶化に好適である。ある実施の形態において、第1のポリアミドとポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの溶融混練において用いられる相溶化剤は、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、又は上記の少なくとも2つの組み合わせを含む。第1のポリアミドとポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの溶融混練において用いられる相溶化剤は、使用される場合、ポリアミド組成物の重量を基準として、0.1〜5重量%、具体的には0.2〜3重量%の量で使用されてもよい。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチに含まれるもの以外の相溶化剤を全く含まない。ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、相溶化剤を全く含まない。
【0051】
ポリアミド組成物は、オプションで、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチに含められた任意の添加剤に加えて、1以上の添加剤を更に含んでもよい。例えば、ポリアミド組成物は、オプションで、安定剤、離型剤、滑剤、加工助剤、ドリップ防止剤、核剤、紫外線ブロッカー、染料、顔料、抗酸化剤、帯電防止剤、鉱油、金属不活性剤、アンチブロッキング剤など、及びそれらの組み合わせから選択された添加剤を更に備えてもよい。このような添加剤は、使用する場合、典型的には、ポリアミド組成物の総重量を基準として、総量で5重量%以下、具体的には2重量%以下、更に具体的には1重量%以下の量が用いられる。ステアリン酸アルミニウムは、とくに好適な潤滑剤である。
【0052】
ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、導電性の充填材を含まない。例えば、多くの電気的及び電子的応用のために、ポリアミド組成物は最小限の導電性を示すことが望ましい。
【0053】
ある実施の形態において、ポリアミド組成物は、衝撃強度改質剤を含まない。例えば、多くの製品の応用のために、ポリアミド組成物の柔軟性は、衝撃強度改質剤を用いなくても十分である。
【0054】
ポリアミド組成物を生成する特定の方法において、この方法は、ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜14重量%と、ポリアミド−6,6を含む第1のポリアミドを45〜55重量%と、ガラス繊維を20〜30重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩、ポリリン酸メラミン、及びホウ酸亜鉛を含む難燃剤を12〜18重量%と、を含む成分を溶融混練してポリアミド組成物を生成するステップを備え、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含むポリ(フェニレンエーテル)を75〜96.5重量%と、ポリアミド−6,6を含む第2のポリアミドを3〜24.5重量%と、ポリ(フェニレンエーテル)及び第2のポリアミドのための相溶化剤を0.5〜4重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であり、ポリアミド組成物は、組成物の総重量を基準として、13重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含み、ポリアミド組成物は、導電性の充填材及び衝撃強度改質剤を含まない。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを更に含む。
【0055】
本発明は、上記の方法の全てのバリエーションにより生成されたポリアミド組成物を含む。
【0056】
別の実施の形態は、重量%は全てポリアミド組成物の総重量を基準として、ポリアミドを40〜60重量%と、ポリ(フェニレンエーテル)を3〜13重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩、ポリリン酸メラミン、及びホウ酸亜鉛を含む難燃剤を12〜18重量%と、ポリアミド及びポリ(フェニレンエーテル)のための相溶化剤を0.1〜2重量%と、ガラス繊維を20〜40重量%と、を溶融混練した生成物を含むポリアミド組成物である。このような組成物は、上記の方法により生成されてもよい。ポリアミド及びポリ(フェニレンエーテル)は、方法の文脈において上述された任意のポリアミド及びポリ(フェニレンエーテル)から選択されてもよい。
【0057】
ポリアミド組成物の特定の実施の形態において、ポリアミドは、ポリアミド−6,6を含み、ポリアミド組成物は、45〜55重量%のポリアミドを含み、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含み、ポリアミド組成物は、6〜12重量%のポリ(フェニレンエーテル)を含み、難燃剤は、6〜13重量%の金属ジアルキルフォスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含み、組成物は、20〜30重量%のガラス繊維を含む。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを更に含む。
【0058】
別の実施の形態は、本明細書に記載されたポリアミド組成物のいずれかを含む物品である。ポリアミド組成物は、電気的及び電子的構成要素、とくに、回路ブレーカー(ミニ回路ブレーカーを含む)、残留回路装置、スイッチ、ソケット、工業用プラグ、電気コネクタ(自動車、遠距離通信、データ通信、コンピュータ、及び電子機器産業のためのコネクタを含む)、自動車、コンピュータ、遠距離通信、及び携帯電話産業のためのスイッチギヤ、加熱、換気、及び冷却システムのための部品、機械部品、及び消費者向け及び工業的商品のための部品を形成するために好適である。このような物品を形成するために好適な方法は、単層及び多層押出し、射出成形、ブロー成形、フィルム押出し、異形押出し、引抜成形、圧縮成形、加熱成形、加圧成形、ハイドロフォーミング、真空成形などを含む。上記の物品製造方法の組み合わせが用いられてもよい。
【0059】
物品の特定の実施の形態において、ポリアミドは、ポリアミド−6,6を含み、ポリアミド組成物は、45〜55重量%のポリアミドを含み、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含み、ポリアミド組成物は、6〜12重量%のポリ(フェニレンエーテル)を含み、難燃剤は、6〜13重量%の金属ジアルキルフォスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含み、組成物は、20〜30重量%のガラス繊維を含む。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを更に含む。
【0060】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチ
も開示される。したがって、1つの実施の形態は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)を92〜97重量%と、ポリアミドを3〜4.8重量%と、ポリ(フェニレンエーテル)及びポリアミドのための相溶化剤をオプションで0.1〜5重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物を含むポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチである。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、0.5〜3重量%の相溶化剤を含む。この段落で特定された成分の量以外に、上記のポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの全ての組成のバリエーションが、この段落のポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチに適用される。例えば、このマスターバッチのポリアミドは、上述した第2のポリアミドに対応する。ある実施の形態において、溶融混練される成分は、更に、抗酸化剤、安定化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された添加剤を0.2〜0.5重量%含む。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)と、ポリアミドと、オプションで相溶化剤と、オプションで抗酸化剤、安定化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された添加剤を0.2〜0.5重量%とからなる
【0061】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの特定の実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含み、溶融混練される成分は、92〜95重量%のポリ(フェニレンエーテル)を含み、ポリアミドは、ポリアミド−6,6を含み、溶融混練される成分は、4〜4.8重量%のポリアミドを含み、相溶化剤は、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、溶融混練される成分は、0.5〜3重量%の相溶化剤を含む。この実施の形態において、溶融混練される成分は、オプションで、更に、抗酸化剤、安定化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された添加剤を0.2〜0.5重量%含んでもよい。
【0062】
本
開示は、難燃性のポリアミド組成物の金属ジアルキルフォスフィン酸塩含量を低減させるために、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを使用することを含む。とくに、1つの実施の形態は、難燃性のポリアミド組成物の金属ジアルキルフォスフィン酸塩含量を低減させる方法であって、ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜30重量%と、第1のポリアミドを35〜70重量%と、ガラス繊維を15〜40重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩を含む難燃剤を10〜20重量%と、を含む成分を溶融混練してポリアミド組成物を生成するステップを備え、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜97重量%と、第2のポリアミドを3〜65重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であることを特徴とする方法である。ポリアミド組成物を生成する方法の説明において上述した全てのバリエーションは、難燃性のポリアミド組成物の金属ジアルキルフォスフィン酸塩含量を低減させる方法にも適用可能である。
【0063】
本発明は、少なくとも以下の実施の形態を含む。
【0064】
実施の形態1:ポリアミド組成物を生成する方法であって、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜30重量%と、第1のポリアミドを35〜70重量%と、ガラス繊維を15〜40重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩を含む難燃剤を10〜20重量%と、を含む成分を溶融混練して前記ポリアミド組成物を生成するステップを備え、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜97重量%と、第2のポリアミドを3〜65重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であることを特徴とする方法。
【0065】
実施の形態2:前記第1のポリアミド及び前記第2のポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,12、ポリアミド−6/6,6、ポリアミド−6/6,12、ポリアミドMXD,6、ポリアミド−6,T、ポリアミド−6,I、ポリアミド−6/6,T、ポリアミド−6/6,I、ポリアミド−6,6/6,T、ポリアミド−6,6/6,I、ポリアミド−6/6,T/6,I、ポリアミド−6,6/6,T/6,I、ポリアミド−6/12/6,T、ポリアミド−6,6/12/6,T、ポリアミド−6/12/6,I、ポリアミド−6,6/12/6,I、及びそれらの組み合わせからなる群から独立して選択されることを特徴とする実施の形態1に記載の方法。
【0066】
実施の形態3:前記第1のポリアミド及び前記第2のポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、及びそれらの組み合わせからなる群から独立して選択されることを特徴とする実施の形態1に記載の方法。
【0067】
実施の形態4:前記第1のポリアミド及び前記第2のポリアミドは、ポリアミド−6,6を含むことを特徴とする実施の形態1に記載の方法。
【0068】
実施の形態5:前記ポリアミド組成物は、合わせて52重量%以下の前記第1のポリアミド及び前記第2のポリアミドを含むことを特徴とする実施の形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0069】
実施の形態6:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態1から5のいずれかに記載の組成物。
【0070】
実施の形態7:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0071】
実施の形態8:前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、19重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含むことを特徴とする実施の形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0072】
実施の形態9:前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、13重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含むことを特徴とする実施の形態1から8のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施の形態10:前記難燃剤は、ポリリン酸メラミンを更に含むことを特徴とする実施の形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施の形態11:前記難燃剤は、ホウ酸亜鉛を更に含むことを特徴とする実施の形態1から10のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施の形態12:前記難燃剤は、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、6〜13重量%の金属ジアルキルホスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含むことを特徴とする実施の形態1から11のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施の形態13:前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、更に、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、前記ポリ(フェニレンエーテル)及び前記第2のポリアミドのための相溶化剤を0.2〜5重量%含むことを特徴とする実施の形態1から12のいずれかに記載の方法。
【0077】
実施の形態14:前記ポリアミド組成物は、導電性の充填材を含まないことを特徴とする実施の形態1から13のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施の形態15:前記ポリアミド組成物は、衝撃強度改質剤を含まないことを特徴とする実施の形態1から14のいずれかに記載の方法。
【0079】
実施の形態16:前記ポリアミド組成物を生成するために溶融混練された成分は、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜14重量%、前記第1のポリアミドを45〜55重量%、前記ガラス繊維を20〜30重量%、前記難燃剤を12〜18重量%、含み、前記難燃剤は、ポリリン酸メラミン及びホウ酸亜鉛を更に含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを生成するために溶融混練された成分は、前記ポリ(フェニレンエーテル)を75〜96.5重量%、前記第2のポリアミドを3〜24.5重量%、含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含み、前記第2のポリアミドは、ポリアミド−6,6を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを生成するために溶融混練された成分は、更に、前記ポリ(フェニレンエーテル)及び前記第2のポリアミドのための相溶化剤を0.5〜4重量%含み、前記ポリアミド組成物は、前記組成物の総重量を基準として、13重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含み、前記ポリアミド組成物は、導電性の充填材及び衝撃強度改質剤を含まないことを特徴とする実施の形態1に記載の方法。
【0080】
実施の形態16a:ポリアミド組成物を生成する方法であって、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜14重量%と、ポリアミド−6,6を含む第1のポリアミドを45〜55重量%と、ガラス繊維を20〜30重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩、ポリリン酸メラミン、及びホウ酸亜鉛を含む難燃剤を12〜18重量%と、を含む成分を溶融混練して前記ポリアミド組成物を生成するステップを備え、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含むポリ(フェニレンエーテル)を75〜96.5重量%と、ポリアミド−6,6を含む第2のポリアミドを3〜24.5重量%と、前記ポリ(フェニレンエーテル)及び前記第2のポリアミドのための相溶化剤を0.5〜4重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であり、前記ポリアミド組成物は、前記組成物の総重量を基準として、13重量%以下のポリ(フェニレンエーテル)を含み、前記ポリアミド組成物は、導電性の充填材及び衝撃強度改質剤を含まないことを特徴とする方法。
【0081】
実施の形態17:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを更に含むことを特徴とする実施の形態16に記載の方法。
【0082】
実施の形態18:実施の形態1から17のいずれかに記載の方法により調整されたポリアミド組成物。
【0083】
実施の形態19:ポリアミド組成物であって、重量%は全て前記ポリアミド組成物の総重量を基準として、ポリアミドを40〜60重量%と、ポリ(フェニレンエーテル)を3〜13重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩、ポリリン酸メラミン、及びホウ酸亜鉛を含む難燃剤を12〜18重量%と、前記ポリアミド及び前記ポリ(フェニレンエーテル)のための相溶化剤を0.1〜2重量%と、ガラス繊維を20〜40重量%と、を溶融混練した生成物を含むポリアミド組成物。
【0084】
実施の形態20:前記ポリアミドは、ポリアミド−6,6を含み、前記ポリアミド組成物は、45〜55重量%の前記ポリアミドを含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたモノマーのホモポリマー又はコポリマーを含み、前記ポリアミド組成物は、6〜12重量%の前記ポリ(フェニレンエーテル)を含み、前記難燃剤は、6〜13重量%の金属ジアルキルフォスフィン酸塩と、3〜7重量%のポリリン酸メラミンと、0.2〜2重量%のホウ酸亜鉛とを含み、前記組成物は、20〜30重量%のガラス繊維を含むことを特徴とする実施の形態19に記載のポリアミド組成物。
【0085】
実施の形態21:前記ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを更に含むことを特徴とする実施の形態20に記載のポリアミド組成物。
【0086】
実施の形態22:重量%は全てポリアミド組成物の総重量を基準として、ポリアミドを40〜60重量%と、ポリ(フェニレンエーテル)を3〜13重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩、ポリリン酸メラミン、及びホウ酸亜鉛を含む難燃剤を12〜18重量%と、前記ポリアミド及び前記ポリ(フェニレンエーテル)のための相溶化剤を0.1〜2重量%と、ガラス繊維を20〜40重量%と、を溶融混練した生成物を含む組成物を含む物品。
【0087】
実施の形態23:難燃性のポリアミド組成物の金属ジアルキルフォスフィン酸塩含量を低減させる方法であって、前記ポリアミド組成物の重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチを5〜30重量%と、第1のポリアミドを35〜70重量%と、ガラス繊維を15〜40重量%と、金属ジアルキルフォスフィン酸塩を含む難燃剤を10〜20重量%と、を含む成分を溶融混練して前記ポリアミド組成物を生成するステップを備え、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、前記ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチの重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜97重量%と、第2のポリアミドを3〜65重量%と、を含む成分を溶融混練した生成物であることを特徴とする方法
。
【0088】
本明細書において開示される全ての範囲は端点を含み、端点はそれぞれ独立して組み合わせ可能である。本明細書において開示されるそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある任意の点又はサブ範囲の開示を構成する。
【0089】
本発明は、以下の限定的でない実施例により更に説明される。
【0090】
[調整実施例1〜12]
これらの実施例は、マスターバッチの調整を例証する。
【0091】
マスターバッチと、下記の実施例において説明する組成物を生成するために用いられる成分を表1に要約する。
【0093】
ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチは、内径28mmのZSK二軸押出機を用いて、240〜300度の溶融温度、毎時15kgのスループットで調整された。PPE又はPPE−Siは、粉末の形で、抗酸化剤、安定化剤、及びクエン酸とドライブレンドされ、生成されたドライブレンドが押出機の供給口の第1の供給機に導入され、PA66又はPA6は、下流の第2の供給機から供給された。マスターバッチ組成物を表2に要約する。表2において、成分の量は、重量部で表現される。
【表2A】
【表2B】
【0094】
[実施例1〜8、比較実施例1〜5]
これらの実施例は、ポリアミド−6,6を含むポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチにより調整された組成物を例証する。実施例は、扱いにくいポリ(フェニレンエーテル)の粉末を使用することなく、難燃性添加剤の濃度が低減された難燃性ポリアミドを調整可能であることを示す。
【0095】
ポリアミド組成物は、250〜270度の溶融温度、毎時15kgのスループットで動作する、内径28mmのZSK二軸押出機を用いて調整された。マスターバッチは、安定化剤及びクエン酸とともに袋の中に入れて手で振ることにより混合され、生成されたドライブレンドが押出機の供給口の第1の供給機に導入された。PA66は、第1の供給口の下流の第2の供給機から押出機に供給され、ガラス繊維は、第2の供給口の下流の第3の供給口から導入された。
【0096】
物理的試験のための試験物品は、250〜290℃のバレル温度、及び80〜100℃の金型温度を用いて射出成形された。
【0097】
溶融粘度試験は、温度282℃で、様々なせん断速度で溶融粘度が測定される多点法を用いて、ISO11443:2005に準拠して実行された。表2において、溶融粘度(パスカル秒)の値は、毎秒1500のせん断速度で測定された。
【0098】
引張弾性率(MPa)及び引張破断ひずみ(%)は、ISO527−1:2012に準拠し、温度23℃、80mm×10mm×4mmの寸法を有するタイプ1A棒、ゲージ長50mm、グリップ間隔115mm、試験速度1mm/分、1組成物当たり5本のサンプルを用いて測定した。
【0099】
曲げ弾性率及び曲げ強度(MPa)は、ISO178:2010に準拠し、温度23℃、横断面寸法が80mm×10mm×4mmの棒、支点間距離64mm、1組成物当たり3本の試料を用いて測定した。
【0100】
アイゾットノッチ付き衝撃強度(kJ/m
2)は、ISO180:2000に準拠し、温度23℃、タイプA半径、ノッチ角45°、ノッチ下の材料の深さ8mm、ハンマーエネルギー2.75J、横断面寸法が10mm×4mmの棒、1組成物当たり10本のサンプルを用いて測定した。
【0101】
ビカット軟化温度(℃)は、ISO306:2004に準拠し、B−120、1mmの針侵入で読み取り、前負荷時間5分、1組成物当たり3本の試験片を用いて測定した。
【0102】
射出成形されたフレイムバーの難燃性は、米国保険業者安全試験所規格94「プラスチック材料の燃焼性試験(UL94)」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定した。試験前に、0.8mm厚の燃焼棒を温度23℃、相対湿度50%で、少なくとも48時間状態調節した。試験は、通常の5本ではなく10本の燃焼棒セットを用いるように変更した。それぞれの棒に対して炎を印加して除去し、棒の自己消炎に要する時間(第1残炎時間、t1)を記録した。その後、再び炎を印加、除去して、棒の自己消炎に要する時間(第2残炎時間、t2)と、火炎後赤熱時間(残赤熱時間、t3)を記録した。V−0の評価を達成するためには、10本の独立した試験片のうち少なくとも9本の残炎時間t1及びt2が10秒以下でなければならず(表2において、10本の独立した試験片のうちの1本が10秒以上の残炎時間を有した組成物の評価に注を付けている);10本の試験片全ての残炎時間の合計(10本の試験片全てのt1+t2)が100秒以下でなければならず;独立した試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が30秒以下でなければならず;いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱せず;また、燃焼粒子又は液滴によって綿指標が点火されてはならない。V−1の評価を達成するためには、独立した試験片それぞれの残炎時間t1及びt2が30秒以下でなければならず;10本の試験片全ての残炎時間の合計(10本の試験片全てのt2+t1)が500秒以下でなければならず;独立した試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が60秒以下でなければならず;いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱せず;また、燃焼粒子又は液滴によって綿指標が点火されてはならない。V−2の評価を達成するためには、独立した試験片それぞれの残炎時間t1及びt2が30秒以下でなければならず;10本の試験片全ての残炎時間の合計(10本の試験片全てのt2+t1)が250秒以内でなければならず;独立した試験片それぞれの第2残炎時間+残赤熱時間(t2+t3)が60秒以内でなければならず;また、いずれの試験片も保持クランプまで燃焼あるいは赤熱してはならないが、綿指標は、燃焼粒子または液滴によって点火されてもよい。V−2の基準を満たさない組成物は不合格とみなされる。表3において、「UL94 TFT(秒)」は、10本の試験片全てのt1値の合計である。
【0103】
比較トラッキング指数(CTI)(V)は、国際電気標準会議(IEC)の標準IEC−60112第3版(1979)に準拠し、厚み3.2mm、径10cmの試験サンプル、1組成物当たり5本のサンプルを用いて測定した。報告値は、塩化アンモニウム溶液50滴を材料表面に滴下後にトラッキングを生じる電圧である。
【0104】
比較実施例1及び2、及び実施例1〜3及び7は、粉末(比較実施例2)又はマスターバッチ(実施例1〜3及び7)として添加されたポリ(フェニレンエーテル)の効果を例証する。ポリ(フェニレンエーテル)の添加により、UL94燃焼試験において望ましいV−0又はV−1の評価を維持しつつ、難燃剤の量を約29%(21重量%から15重量%に)減少させることができる。クエン酸の相溶化剤及び高い含量のポリ(フェニレンエーテル)を含むマスターバッチを使用した実施例2及び3は、V−0の評価であった。機械的特性も、比較実施例1及び2に比べて良好に維持される。また、実施例1〜3及び7においては、マスターバッチの使用により、ポリ(フェニレンエーテル)粉末に関する取り扱いの困難が避けられる。
【0105】
比較実施例4及び実施例3は、ポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチにポリアミドが含まれることの効果を例証する。マスターバッチにポリアミドを含む実施例3は、マスターバッチにポリアミドを含まない比較実施例4に比べて、優れた難燃性及びメルトフローを示す。
【0106】
比較実施例1及び3、及び実施例4〜6及び8は、粉末(比較実施例3)又はマスターバッチ(実施例4〜6及び8)としてのポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の効果を例証する。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の添加により、UL94燃焼試験において望ましいV−0又はV−1の評価を維持しつつ、難燃剤の量を約29%(21重量%から15重量%に)減少させることができる。相溶化剤又はポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の含量に関する明確な傾向はないが、実施例4、6、及び8は、全てV−0の評価であった。機械的特性も、比較実施例1及び3に比べて良好に維持される。また、実施例4〜6及び8においては、マスターバッチの使用により、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の粉末に関する取り扱いの困難が避けられる。
【0107】
実施例1及び4は、相溶化剤が用いられない場合であっても、本発明の利益が得られることを例証する。
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【0108】
[実施例11〜18、比較実施例4〜5]
これらの実施例は、ポリアミド−6を含むポリ(フェニレンエーテル)マスターバッチにより調整された組成物を例証する。実施例は、難燃性添加剤の量が低減された難燃性ポリアミド組成物が、扱いにくいポリ(フェニレンエーテル)粉末を使用することなく調整可能であることを示す。
【0109】
メルトボリュームフローレート(cm
3/10分)は、ISO1133−2005に準拠し、手順B(変位測定、自動方式)、試験温度300℃、荷重5kg、キャピラリ径2.0955mm、キャピラリ長8.0mm、試験片形状ペレット、試験前に試験片を120℃に5.5時間調節、1組成物当たり1測定で5回の読み取りで測定した。
【0110】
ノッチなしアイゾット衝撃強度(kJ/m
2)は、試料がノッチされないこと以外はノッチ付きアイゾット値と同様にして、23℃で測定した。
【0111】
UL94の評価は、0.8mm及び1.5mmの双方の厚さで測定した。
【0112】
表4の結果は、ポリアミド−6を含むマスターバッチ及びポリ(フェニレンエーテル)又はポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリアミド−6,6組成物(実施例11〜14)及びポリアミド−6組成物(実施例15〜18)に有効であり、少ない難燃剤の量で、UL94のV−0又はV−1の評価をもたらすことを示す。実施例15〜18のポリアミド−6組成物に対するV−0又はV−1の評価は、ポリ(フェニレンエーテル)粉末及びポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー粉末をそれぞれ用いた対応する比較実施例4及び5に対するV−2の評価よりも良好であった。0.8mmの厚さでのV−0の評価は、実施例13及び17(ポリ(フェニレンエーテル)を含むマスターバッチを20重量%含む)、及び実施例18(ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含むマスターバッチを20重量%含む)により示された。マスターバッチにより作製されたブレンドの機械的特性は、粉末により作製されたブレンドの機械的特性と類似するが、マスターバッチの使用により、ポリ(フェニレンエーテル)粉末の取り扱いに関する困難が避けられる。
【表4A】
【表4B】