【実施例】
【0056】
(実施例1)
例えば、
図1は、複数のLED111を含むLEDアレイ110を含む、様々な実施形態による能動型温度補償用に構成されたシステム100の、一部を断面で示した側面図である。特定の実施形態によると、単一のLEDを使用してもよく、この場合、要素110は単一のLEDとなる。複数のLED111が存在する場合、それらは共通の型(すなわち、共通のスペクトル特性)であってもそうでなくてもよく、例えば、同時に、順次に、またはそれらの組み合わせで動作され得る。システムはまた、焦点レンズ106を含んでもよい。焦点レンズ106は、LEDアレイ110により放出された励起光の焦点を合わせ得る。LEDアレイ110は、基板112に物理的および/または熱的接触し得る。LEDアレイ110は、個々のLEDの1つ以上の行またはパターンを含み得る。基板112は、プリント回路基板(すなわち、PCB)であり得、基板全体に熱を分配し得る1つ以上の高度熱伝導層を含み得る。高度熱伝導層は、PCBボードの銅の接地面層であってもよいし、例えばアルミニウムまたは鋼を含むさらなる層であってもよい。高度熱伝導層は、考えられる例として、それに付着されている熱素子(例えば、LEDアレイ110)に直接接触している表面層であってもよいし、多層基板の中間層であってもよい。加熱装置116、例えば抵抗発熱体は、LEDアレイ110に熱的接触して設けられてよい。加熱装置116は、基板112の中、上、または中と上に含まれてよい。システム100は、LEDアレイ110に熱的接触している温度センサ118を含み得る。温度センサは、LEDアレイ110に対して中央に位置してよい。温度センサ118は、基板112上に含まれてよい。温度センサ118から信号を受信し得る温度調整器または温度調整システム122が提供され得る。温度センサ118および温度調整システム122は、統合され得、および/または一体構造であり得る。温度調整システム122は、加熱装置116を制御し得る。温度調整システム122は、ファン114を制御し得る。温度調整システム122は、ファン114および加熱装置116を制御し得る。例えば、温度調整システム122は、加熱装置116を制御して、公称動作温度に到達またはそれを維持するために使用され得、一方でファン114は動作温度が高くなりすぎるのを防止する。この最適化は、例えばLEDアレイ110が連続的でない場合に使用され得る。例えば、加熱装置116は、LEDアレイ110における複数のLED111のうちいくつかまたはすべてがオンでない場合に、さらなる熱を提供し得る。ファン114は、1つ以上の冷却フィン104上に気流を方向付け得る。冷却フィン104は、LEDアレイ110、基板112、またはその両方に熱的接触し得る。温度調整システム122は、温度センサ118、加熱装置116、および/またはファン114に信号を送信し、かつ/またはそれらから信号を受信し得る。温度調整システム122は、ワイヤ120を使用して、または様々な構成要素と統合されたかもしくは関連付けられたワイヤレスコントローラを介して、信号を送信および受信し得る。励起光は、LEDアレイ110から放出され、サンプル基板上の1つ以上の反応領域108に方向付けられ得る。反応領域108は、サンプル107を含み得る。反応領域は、例えば、マイクロタイタートレイ上のウェルであり得る。サンプル107からの1つ以上の光信号を、検出器130およびレンズ144などのさらなる光学構成要素の有無にかかわらず、検出器で監視し得る。検出器130と反応領域108との間の軸はLEDアレイ110と反応領域108との間の軸にほぼ垂直であるが、特定の実施形態によると、同軸構成など、その他の構成を使用してもよい。
【0057】
(実施例2)
図2は、例えば複数のLED211を含むことによって、LEDアレイ210用の能動型温度安定化装置を含む、様々な実施形態によるシステム200の側断面図である。個々のLED211のそれぞれから放出された励起光の焦点を合わせるために、焦点レンズ206が含まれてよい。LEDアレイ210は、基板212に物理的および/または熱的接触し得る。システム200は、LEDアレイ210に熱的接触している温度センサ218、基板212、またはその両方を含み得る。温度センサ218は、基板212の中または上に含まれてよい。温度調整システム222は、温度センサ218から信号を受信し得る。温度調整システム222は、熱電素子214、例えばペルチェ素子を制御し得る。熱電素子214は、LEDアレイ210、基板212、またはその両方に熱的接触し得る。熱電素子214は、大気環境からLEDアレイ210へ熱エネルギーを伝達し得る。熱電素子214は、LEDアレイ210から大気環境へ熱エネルギーを伝達し得る。熱電素子214は、温度センサを含み得る。複数の冷却フィン204は、LEDアレイ210および/または熱電素子214に熱的接触し得る。温度調整システム222は、例えばワイヤ220を経由して、温度センサ218および/または熱電素子214へ信号を送信し、それらから信号を受信し得る。励起光は、LEDアレイ210から放出され、例えばサーマルサイクリングブロック230内に保持された複数の反応領域208に方向付けられ得る。熱電素子214を使用して、動作条件下で他の方法で実現し得るより低温を維持し得る。これにより、LEDアレイ210が、より高い総出力磁束でより効率的に動作するのを可能にし得る。熱電素子214は、例えばLEDアレイ210がオンでない場合、温度に到達またはそれを維持するために、加熱モードで使用され得る。熱電素子214は、LEDアレイ210のデューティサイクルが冷却を必要とするに十分なほど高い場合、冷却モードで使用され得る。特定の実施形態によると、図示するように、LED211の数と反応領域208の数との間は一対一の対応であり得る。その他の実施形態によると、例えば
図1に示すように、LEDは反応領域よりも多数であり得る。また他の実施形態によると、LEDは反応領域よりも少数であり得る。単なる一例として、それぞれが個々の異なる光学特性を有し、単一の反応領域を照射するように構成された、3つのLEDが存在し得る。別の例として、それぞれが個々の異なる光学特性を有し、6つ以上などの多数の反応領域を照射するように構成された、3つのLEDが存在し得る。
【0058】
熱補償はLEDの温度依存スペクトル出力を一定に維持するために使用され得るが、制御された温度変動は、例えば分光分析を実行するために、LEDの温度依存スペクトル出力を制御するのに使用され得る。例えば、摂氏1度につき4.0nm/℃のスペクトル変化の係数を有するLEDの場合、1度の温度変化はLED出力スペクトルを4.0nm変化させることになる。したがって、ランピングまたはステップ変化などでLEDの温度を変化させることにより、LEDは、複数の光学的に異なる範囲の励起光を提供するために使用され得、したがって、例えば吸収スペクトル分析などのスペクトル依存計測を行うために使用され得る。そのような熱制御されたスペクトル分析は、さらなる水準のスペクトル分析および識別を提供するために、独立して使用してもよいし、熱補償されたシステムまたは方法と連動して使用してもよい。例えば、LED温度は励起光の光学的に異なる2つの範囲を提供するために2つの異なる温度の間で段階的であり得、収集された発光はその温度と、したがって光学的に異なる範囲と相関しており、例えば2つの重複する光タグを識別し得る。別の例として、例えばバックグラウンドノイズを再度識別するために、LED温度を振動させることが可能であり得、放射光をこの周波数に基づいて分析し得る。LED温度振動の位相からのシフトを計測し、放射光についてさらなる水準の分析を提供するために、放射光について位相解析を行ってもよい。LEDの温度は、機能的に熱を加え得るかまたは除去し得るその他任意の要素に加えて、温度補償に使用するための、本明細書で述べられている同じ要素(例えば、加熱素子および冷却素子)で制御され得る。
【0059】
(実施例3)
図3aは、様々な実施形態による、複数の個々のLED311を含むLEDアレイ310に温度安定化を提供し得る、システム300の側断面図である。個々のLED311のそれぞれから放出された励起光の焦点を合わせるために、焦点またはコリメートレンズ306が含まれてよい。コリメートレンズは、フレネルレンズであり得る。ビームスプリッタ307は、図示するような単一の要素であっても複数の要素であってもよく、励起光を放射ビームから分離するために含まれてよい。ビームスプリッタ307は、例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、2003年12月12日出願の米国特許出願第10/735,339号に記載されているように、フィルタまたはビームスプリッタに置き換えられてよい。LEDアレイ310は、基板312と接触し得る。システム300は、LEDアレイ310に熱的接触している温度センサ318を含み得る。温度センサ318は、基板312の中、上、または中および上に含まれてよい。温度調整システム322は、温度センサ318から信号を受信し得る。温度調整システム322は、ファン314を制御し得る。ファン314は、複数の冷却フィン304上に気流を方向付け得る。冷却フィン304は、LEDアレイ310に物理的および/または熱的接触し得る。温度調整システム322は、ワイヤ320を経由して、温度センサ318および/またはファンと連絡し得る。励起光は、LEDアレイ310から放出され、基板309の中、上、または中および上に形成または配置された反応領域308に方向付けられ得る。反応領域は、キャピラリーアレイのキャピラリー330を含み得る。キャピラリー330は、検出ゾーン356を通過する部分をそれぞれ有し得る。
【0060】
様々な実施形態によると、温度制御システムは、加熱器を含み得る。システムは、冷却器を含み得る。システムは、加熱器および冷却器の両方を含み得る。冷却速度および加熱速度は、必要に応じて複数の加熱器および/または冷却器を使用することによって増加し得る。加熱器が提供される場合、当該加熱器は複数の異なる種類の加熱装置を備え得る。冷却器が提供される場合、当該冷却器は複数の異なる種類の冷却装置を備え得る。
【0061】
図3bは、
図3aに示すキャピラリー330のアレイおよび検出ゾーン356の部分上平面図である。キャピラリーは検出ゾーン356を横断し得、ここにLEDアレイ310(
図3a)からの励起光を方向付け得る。例えば、励起光は、キャピラリー電気泳動装置のキャピラリー内における分析物の蛍光検出に使用され得る。DNA配列決定法および断片長分析アプリケーションの場合も同様であり得る。
【0062】
(能動型温度調整システムおよび方法)
様々な実施形態によると、温度補償システムによるTDUの動作温度の能動型調整は、所望の温度値または範囲を維持するために、制御信号に応答してTDUからの熱エネルギーを追加または回収し得る、いかなる形態であってもよい。例えば、温度補償システムは、加熱器、冷却器、またはファンなど、TDUと熱的接触しており、熱制御信号によって(直接的または間接的に)作動または制御される要素を含み得る。温度制御システムは、加熱器を含み得る。システムは、冷却器を含み得る。システムは、加熱器および冷却器の両方を含み得る。冷却速度および加熱速度は、必要に応じて複数の加熱器および/または冷却器を使用することによって増加し得る。加熱器が提供される場合、当該加熱器は複数の異なる種類の加熱装置を備え得る。冷却器が提供される場合、当該冷却器は複数の異なる種類の冷却装置を備え得る。
【0063】
一例として、温度補償システムは、加熱素子と、温度センサによってTDUを周囲温度と比較して高い温度に維持するように構成された制御電子機器とを備え得る。したがって、この例で周囲温度が20℃であると仮定すると、温度補償システムは、TDUを、ある特定の精度まで、25℃の運転温度に維持するように構成され得る。温度センサで計測する際にTDU温度が設定点を下回って下降し始めた場合、加熱器出力は、熱制御信号を介して、TDU温度を上げる(または下降を止める)ために作動または増大される。同様に、TDU温度が設定点を上回って上昇し始めた場合、加熱器出力は、熱制御信号を介して、TDU温度を下げる(または上昇を止める)ために作動を停止または低減される。
【0064】
能動型温度補償システムは、様々な実施形態によると、少なくとも1つの温度依存特性および任意で少なくとも1つの非温度依存特性に基づいて、TDUの動作温度を調整するように構成され得る。
【0065】
非温度依存特性は、例えば、少なくとも1つの光学構成要素の年数、電気部品の経年劣化、電源変動、レンズおよびフィルタなどの光学構成要素の透過または反射における変化、より高い標高またはより低い周囲圧力で熱伝達に使用される空気の熱容量が低くなるなどの高度および空気密度の影響、予測温度変化、TDUの熱容量、温度調整遅延時間、およびシステム内の物質の熱伝導率から選ばれた少なくとも1つの特性を含み得る。この文脈における年数は、実際の年数(すなわち、構築または最初に動作されてからの月数)または実用時間という意味での年数のいずれであってもよい。
【0066】
例えばLED発光強度は、年数により温度とは無関係に減少し得るため、光学構成要素年数は適切な特性であり得る。年数による強度損失およびその他の非温度依存の影響が適切に把握されていないと、特定のシステムにおいて、温度効果によりこれらの影響が不正に生じ得、したがって不適切に補償される。
【0067】
予測温度変化は、特定の実施形態によると、適切な特性であり得る。例えば、熱生成構成要素(変性、アニーリング、および伸長ステップのための熱を伴い得る、PCR中に使用される熱サイクルなど)が作動される(または作動を停止される)と予測される場合、この事象の前にTDU温度を低下(または上昇)させ始めることが望ましくあり得る。同様に、熱安定性を維持するために熱を追加する必要がある場合、熱生成事象の前に、提供する熱を減らすことが望ましくあり得る。
【0068】
TDUの熱容量(熱質量)は、特定の実施形態によると、温度調整にスケーリング因子またはマグニチュードを提供するのに適切であり得る。同様に、熱抵抗は、特定の実施形態によると、温度依存調整にスケーリング因子またはマグニチュードを提供するのに適切であり得る。したがって、例えば、比較的大きいTDU熱容量および/または熱抵抗では、能動型温度補償のマグニチュードは相対的にまたは比例的に大きくなり得る。さらに、熱容量および熱抵抗は、様々な実施形態によると、能動型温度補償の時間的プロファイルを調節するために使用され得る。例えば、大きい電気抵抗容量(Resistive−Capacitive;RC)時定数の熱当量により、能動型温度補償のマグニチュードは、制御サイクルの始めは相対的にまたは比例的に大きく、後に低くなり得る。
【0069】
同様に、温度補償の効果ついて、既知であるか、期待されるか、または実験的に決定された遅延時間が存在する場合、この遅延時間は、特定の実施形態によると、TDUの過熱または過冷却を回避するために考慮され得る。遅延時間は、例えば、加熱素子または冷却素子からの加熱または冷却を提供または停止するために必要な有限時間によるものであり得る。
【0070】
特定の実施形態によると、TDU動作温度の調整は、少なくとも1つの温度依存特性の計測された値とこの少なくとも1つの温度依存特性の所望の値との間の差異に少なくとも基づくフィードバック制御を含み得る。例として、特定の実施形態によると、温度センサは、少なくとも1つの温度依存特性における変化速度を監視し、変化速度の関数として熱制御信号を生成するように構成され得る。
【0071】
例えば、所望の温度がある所望の精度まで20℃である場合、30℃の計測温度に応答する温度調整の度数または量は、比例フィードバックシステムにおいて計測値25℃のときよりも大きくなり得る。比例温度調整を表す1つの一般方程式の例として、温度調整の度数または量(「調整強度」または「RI」)は方程式RI=X(T
D−T
m)
nによって定義され得、ここでXは比例定数、T
Dは所望の温度、T
mは計測温度、nは1、2、または3(非整数を含む任意の適切な値であり得る)などの指数である。別の例として、比例積分微分(Proportional Integral Differential;PID)フィードバック制御を使用してもよい。また別の例として、ファジー論理フィードバックシステムを使用してもよい。フィードバック方程式は、例えば上述したように、温度調整素子(例えば、加熱器)のスタートアップまたはクールダウン時間など、様々な事項をさらに考慮し得る。
【0072】
様々な実施形態によると、能動型温度補償システムは、例えば約15℃、約5℃、約1℃、または約0.5℃隔てられた最低温度および最高温度を含む動作温度範囲内に動作温度を維持するように構成され得る。動作温度範囲は、公称温度(例えば、20℃)および許容可能な偏差値または範囲(例えば、±1℃または±0.5℃)として特定されてもよい。
【0073】
様々な実施形態によると、能動型温度補償システムは、最低温度および最高温度を含む動作温度範囲、または所望の温度および温度範囲を維持するようにプログラム可能なユーザ入力装置を含み得る。当該システムは、システムの動作温度を表示し得るディスプレイを含み得る。
【0074】
様々な実施形態によると、温度補償システムは、温度が最高温度を超える、最低温度に満たない、または期待される速度で応答しないなど、動作温度が設定点を超過する場合に、警報を信号で伝え得るエラー信号伝達装置を含み得る。
【0075】
様々な実施形態によると、温度センサは、サーミスタ、熱電対、抵抗温度検出器(Resistance Temperature Detector;RTD)、非接触温度センサ、バンドギャップ半導体抵抗温度検出器、白金抵抗温度検出器、バイメタル温度検出器、またはそれらの組み合わせなどを含み得る。機能的に、温度センサは、少なくとも温度依存特性を監視するように構成される。
【0076】
様々な実施形態によると、システムおよび方法はLEDの発光強度およびスペクトル安定性の維持を提供する。前記方法は、LEDを備えるシステムを提供するステップと、LEDで励起光を生成するステップと、LEDの動作温度を(直接的または間接的に)計測するステップと、動作温度を調整するステップとを含み得る。調整は、例えばLEDの温度、発光強度、および/またはスペクトル安定性を維持するために、動作温度に基づいて、LEDから熱を伝達することおよびLEDへ熱を伝達することのうち少なくとも一方によるものであり得る。調整は、LEDの発光強度およびスペクトル安定性が維持される所望の動作温度または温度範囲に相当する調節データを、メモリソースから検索するステップを含み得る。
【0077】
照射システムおよび方法
LED照射システムは、一貫した照射を提供し得、軽量であり得、必要な冷却および/または加熱は最小限ですむ。重要な事項ではない因子の場合、または、LEDによって満たすことができないスペクトルまたは強度需要など、その他の対抗する事項がある場合には、LEDの代わりに、またはLEDに加えて、その他の光源を使用し得る。例えば、本明細書の他の部分でも述べているような照明源が走査されないシステムにおいては、特定の実施形態によると、重量は重要な事項ではなく、非LED源を使用してもよい。
【0078】
「LED」または「発光ダイオード」という用語は、本明細書においては、従来の発光ダイオード、すなわち、印加された電気エネルギーを光に変換する無機半導体ダイオードに言及するために使用される。該当する従来のLEDとしては、例えば、概して赤色光および赤外線光を発するアルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)と、概して緑色光を発するリン化アルミニウムガリウムと、概して赤色、橙赤色、橙色、および黄色光を発するガリウム砒素リン(GaAsP)と、概して緑色、純緑色(または鮮緑色)、および青色光を発する窒化ガリウムと、概して赤色、黄色、および緑色光を発するリン化ガリウム(GaP)と、概して青色光を発するセレン化亜鉛(ZnSe)と、概して青緑色および青色光を発するインジウム窒化ガリウム(InGaN)と、概して橙赤色、橙色、黄色、および緑色光を発するリン化アルミニウムインジウムガリウムと、概して青色光を発する炭化ケイ素(SiC)と、概して紫外線光を発するダイヤモンドと、開発中であるシリコン(Si)とが挙げられる。LEDは、狭帯域または単色光LEDに限定されるものでなく、LEDは、広帯域LED、多重帯域LED、およびほぼ白色のLEDを含んでもよい。
【0079】
LEDという用語は、本明細書においては、高分子ベースであっても(有機または無機)低分子ベースであってもよい有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)、エッジ放出ダイオード(Edge Emitting Diode;ELED)、薄膜エレクトロルミネセント素子(Thin Film Electroluminescent Device;TFELD)、量子ドットベースの無機「有機LED」およびリン光OLED(Phosphorescent OLED;PHOLED)に言及するためにも使用される。本明細書において使用する場合、「励起源」「照射源」および「光源」という用語は、ほぼ同義で使用される。
【0080】
したがって、特定の実施形態によると、LEDは、標準的な半導体素子、有機LED、または無機LEDであり得る。有機LEDの例は、QDOTベースのLEDSおよびナノチューブベースのLEDである。LEDは、多層の有機LEDまたは多層の有機LED層など、多層のLEDであり得る。LED照射システムは、一貫した照射を提供し得、軽重量で、必要な冷却および/または加熱を最小限にし得る。
【0081】
様々な実施形態によると、LED放射源は、1つのLEDまたは個々のLEDのアレイを含み得る。例えば、超高輝度LEDを使用し、光アレイに並べ得る。様々な実施形態によると、別々のLED、またはLEDのパッケージセットをアレイで使用し得る。様々な実施形態によると、各LEDは、約1mW以上の励起エネルギーを放出し得る高出力LEDであり得る。様々な実施形態において、少なくとも約5mWの励起エネルギーを放出し得る高出力LEDを使用し得る。様々な実施形態において、LEDまたはLEDのアレイは例えば少なくとも50mWの励起エネルギーを放出し得、ヒートシンクまたはファンなどであるがこれらに限定されない冷却装置をLEDとともに使用され得る。例えば、約10ワットを超えるエネルギー、約10ワット以下のエネルギー、約5ワット以下のエネルギー、約3ワット以下のエネルギーを引き出す個々の高出力LEDまたは高出力LEDのアレイを使用し得る。典型的な個々のLEDおよびLEDアレイ源は、例えば、Stocker Yale社(ニューハンプシャー州セーレム)から商標名LED AREALIGHTSのもの、またLumileds Lighting,LLC社(カリフォルニア州サンノゼ)から商標名Luxeon Starのものが入手可能である。様々な実施形態によると、LED光源は、それぞれ、またはアレイで使用する際には集合的に、例えば約5mW、約25mW、約50mW、約1W、約5W、約50W、または約100W以上など、約1マイクロワット(μW)以上の電力を使用し得る。
【0082】
別の例として、ワンピースパッケージの高出力赤色、青色、および緑色エミッタは、既製品として多数の販売源から入手可能であり、その他の色はオーダーメイドパッケージで可能である。LEDパッケージ中の高出力LEDは、必要な光出力を生成するために必要とされる個々のまたは物理的に分離したエミッタの数を最小化する。多素子パッケージ中の各色は別々に点滅させられ得るため、励起光源としてそのような多素子パッケージを使用することにより、励起光の広範囲のフィルタを使用することなく、波長選択性を提供し得る。特定の実施形態によると、多素子パッケージの出力を広帯域源の出力と一致させるため、および/または照射均一性を向上するために、光形成光学部品および光均一化光学部品を使用し得る。
【0083】
様々な実施形態によると、光源は、第1の比較的短い波長の(例えば、UV青色)LEDおよび第2の「より赤い」またはより長い波長のLEDを有するなどの、2個、3個またはそれより多くのLED、レーザーダイオードなどの組み合わせを含み得る。例えば、光源は、約475nmの放射線を放出し得るLED、約539nmの放射線を放出し得るLED、および約593nmの放射線を放出し得るLEDを含み得る。
【0084】
LEDは、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、高分子ベースであっても(有機または無機)低分子ベースであってもよい無機発光ダイオード、エッジ放出ダイオード(ELED)、薄膜エレクトロルミネセント素子(TFELD)、または量子ドットベースの無機「有機LED」であり得る。LEDは、リン光OLED(PHOLED)を含み得る。超高輝度LEDを使用し得、光アレイに並べ得る。様々な実施形態によると、別々のLED、またはLEDのパッケージセットをアレイで使用してもよい。光源のスペクトル放射は、光源の動作温度によって影響され得る。本明細書の教示から、当業者にはその他の適合する光源が明らかである。OLEDは、単一の部品として設計されているが、アレイとして使用され得る。本明細書において使用する場合、「励起源」「照射源」および「光源」という用語は、ほぼ同義で使用される。
【0085】
様々な実施形態によると、光源から放出される励起光は、ある分岐角度で光源から分岐し得る。分岐角度は、例えば約5°から約75°以上であり得る。分岐角度は、例えば45°超など、実質的に幅広くてよく、さらに、集束レンズ106(
図1)、206(
図2)、および306(
図3)などのレンズを使用して効率的に焦点を合わせられ得る。レンズは、コリメートレンズ、例えばフレネルレンズであり得る。
【0086】
様々な実施形態によると、量子ドットLEDなどの有機LED(OLED)を使用し得る。例えば、いずれも参考として援用される、Boegeによる米国特許出願第10/440,920号(2003年5月19日出願)およびKingによる第10/440,852号(2003年5月19日出願)を参照のこと。量子ドットもまた、サンプルアッセイにおいて光タグまたはマーカーとして使用され得る。
【0087】
様々な実施形態によると、量子ドットは、ルミネッセンス源として、および蛍光マーカーとして使用してよい。量子ドットは、両方のために使用してよい。量子ドットベースのLEDは、例えば、半値全幅約10nm以下、約20nm以下、または約50nm以下を含む発光バンドパスなど、より狭窮な発光バンドパスで光を放出するように合わせられ得る。
【0088】
量子ドットベースのLEDは、通常のLEDの発光帯域より、例えば約50%または約25%狭い発光帯域で光を放出し得る。量子ドットの発光帯域は、量子ドットの粒度分布の関数であり得、したがって理論上は極めて狭くあり得る。例えば量子ドットベースのLEDは、例えば半値全幅(FWHM)約10nm以下、約20nm以下、または約50nm以下を含む発光バンドパスなど、比較的狭窮な発光バンドパスで光を放出するように合わせられ得る。サイズもしくは組成、またはその両方に範囲がある、またはそれらが混ざっている量子ドットもまた、例えば、ほぼ白色の光または多数の特定の波長もしくは波長範囲の光を提供するために使用され得る。
【0089】
量子ドットベースのLEDは、システムの効率を高め得る。量子ドットベースのLEDの効率は、理論上は従来のLEDの効率よりも高く、潜在的に約90%以上、例えば、標準的なLEDに一般的な、現在の20%の効率とは対照的に、各膜が各量子ドットに直接的に触れている2つの導電膜の間に直接挟まれた場合などは、100%近くになり得る。量子ドットベースのLEDは、量子ドットのスラリーを利用して作られ得、電流は光子として放出される前に平均的にいくつかの量子ドットを通って流れる。このいくつかの量子ドットを通る伝導は、効率における抵抗損失を引き起こし得る。量子ドットは、従来のLEDよりもはるかに多くの色を提供し得る。
【0090】
例えば量子ドットベースのLEDを含むOLED膜は、サーマルブロックの動作に干渉することなく、蛍光システムにおいてサンプルを加熱および冷却するために使用されるサーマルブロックに適用され得る。様々な実施形態によると、OLEDは、フレシキブル基板、光学的に透明な基板、異常形状の基板、またはそれらの組み合わせにおいて使用および/または産生され得る。基板上で複数のOLEDを組み合わせ得、複数のOLEDは異なる波長で光を放出し得る。単一の基板または複数の隣接する基板上の複数のOLEDは、様々な波長の光のインタレースまたは非インタレースパターンを形成し得る。パターンは、例えばサンプル容器配置またはアレイに相当するものであり得る。1つ以上のOLEDは、例えば、サンプル容器、一連のサンプル容器、複数のサンプル容器のアレイ、またはサンプル流路を包囲する形状を形成し得る。サンプル流路は、例えば、チャネル、キャピラリー、またはマイクロキャピラリーであり得る。サンプル流路を辿るために、1つ以上のOLEDを形成してよい。1つ以上のOLEDを、基板または基板の一部の形状で形成してよい。例えば、OLEDは、曲線状、円形、楕円形、長方形、正方形、三角形、環状、またはその他任意の幾何学的に規則正しい形状であり得る。OLEDは、不規則な幾何学的形状として形成され得る。OLEDは1つ以上のサンプル容器を照射し得、例えば、OLEDは1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のサンプル容器を同時にまたは順に照射し得る。OLEDは、例えば相当するマルチウェルアレイのすべてのウェルを照射するように設計され得る。
【0091】
様々な実施形態によると、OLEDを使用し得、OLEDは1つ以上の安定した有機材料から形成され得る。OLEDは、有機材料にわたって電圧が印加される際に光を放出することが可能であり得る。OLEDは、電圧路を提供するため、有機材料に電気的接触している、異なる導電性膜または層を使用し得る。OLEDは1つ以上の炭素ベース薄膜を含み得、OLEDは、1つ以上の炭素ベースの薄膜全体に電圧が印加される際に様々な色の光を放出することが可能であり得る。導電性膜のうち少なくとも1つは光学的に透明であり得、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、およびカーボンナノチューブベースの層から選ばれてよい。
【0092】
特定の実施形態によると、光学系は、同時または順次に使用され得る、いくつかの異なる波長を発し得る2つ以上のLEDを含み得る。複数の異なる励起波長の使用により、様々な色素の蛍光発光を区別するために使用される較正マトリクスの使用および精度を向上させ得る。
【0093】
例えば、光学系は、サンプル基板に励起光を提供するように構成された第1および第2両方のLEDを含み得る。例えば、単一のLEDと比較して高められた強度または均一性を提供するために、複数のLEDは同様または同一であり得る。複数のLEDは、サンプル基板の異なるエリアに励起光を提供するために方向付けられてもよい。
【0094】
複数のLEDは、例えばそれぞれ異なる波長範囲の励起光を提供するように構成されているなど、異なったものであってもよい。異なる波長範囲の使用は、例えば異なる光吸収特性を有する(または潜在的に有する)サンプルにおいて異なるタグを調べるために使用され得る。例えば、第1のLEDはサンプル中の第1の蛍光プローブの吸収スペクトルに適合する発光スペクトルを有し得、第2のLEDはサンプル中の第2の蛍光プローブの吸収スペクトルに相当する、または適合する、異なる発光スペクトルを有し得る。
【0095】
複数のLEDは、用途に応じて同時に、順次に、または両方で動作され得る。例えば、複数のLEDは、サンプル基板の複数のエリアの高められた強度または照射を提供するために、同時に動作され得る。複数のLEDは、複数の励起波長を提供するために同時に動作され得、例えば、複数の標的プローブに励起光を提供するために同時に動作され得る。
【0096】
特定の実施形態によると、例えば複数の標的プローブおよび/またはサンプルエリアを調べるために、複数のLEDの順次動作を使用し得る。順次動作は、したがって、わずか1つの光学検出器で複数の光学符号定数の間での検出および区別を行うために使用され得る。例えば、特定の実施形態によると、単一の光学検出器からの検出データは、LEDの順次動作と同期し得る。例えば、LED#1が作動されると、単一の光学検出器からの検出データは、LED#1が照射するように構成されたプローブおよびエリアに相当し、そしてLED#2が作動され(かつLED#1が作動を停止され)ると、同じ単一の光学検出器からの検出データは、LED#2が照射するように構成されたプローブおよびエリアに相当する。
【0097】
複数のLEDを持つものなど、複数の異なる励起波長を使用することで、未知のサンプルを計測する前に光学系を較正するのに使用される較正マトリクスで使用する場合に、強化を提供し得る。これについては、複数のLEDをともに使用してもよいし、システムの光学的較正を実行せずに使用するように構成してもよい。例えば、較正は、多数の異なる光波長範囲を有する複数のLEDからの励起光をサンプル基板に方向付けること、および、様々な色素の較正マトリクスを有するサンプル基板など、サンプル基板からの光応答を計測することを伴い得る。較正は、第1の光学検出器および第2の光学検出器によりサンプル基板からの光応答を計測すること、および、計測された光応答に少なくとも部分的に基づいてシステムを較正することをさらに伴い得る。較正は、例えば、異なる光応答の比率に加え、各計測された光応答の絶対強度を考慮に入れてよい。計測された光応答に基づいて、較正は、例えば、それらのそれぞれの強度を、サンプル較正マトリクスを使用して決定されたものとして見なすために、異なる励起波長のスケーリング因子を含み得る。較正は、異なる励起のスケーリング因子および/またはサンプル基板上の異なるエリアの検出強度もしくは効率を、さらに、または代替的に、含み得る。較正は、光学検出器のうち1つ以上の光応答における変動または変化を把握するために、スケーリング因子を、さらに、または代替的に、含み得る。較正用のスケーリング因子としては、例えば、定数項、一次強度補正、および/または任意の高次補正もしくはスケーリング因子が挙げられ得る。
【0098】
(受動型熱制御システムおよび方法)
特定の実施形態によると、TDUの動作温度を受動的に制御するように構成された受動型熱制御システムが存在する。受動型熱制御システムは、絶縁炉および熱伝導基板のうち少なくとも1つを備え得る。受動型熱制御システムおよび方法は、本明細書の他の部分でも述べているように、能動型熱制御システムおよび方法を含んでもよい。
【0099】
受動型熱制御システムの一部としての絶縁炉は、少なくとも部分的にTDUを収容し、ある程度の断熱をTDUに提供するように構成される。すなわち、絶縁炉は、感熱装置または素子の周囲に断熱を提供するように構成され得る。一実施形態において、絶縁エリアは感熱装置または素子を包囲する、または部分的に包囲する断熱箱であり得る。絶縁体としては、例えば、ポリイソシアネート、ポリウレタン、ポリスチレン、発泡ポリマー、空気またはその他の低熱伝導ガスを含むギャップ、および真空ギャップが挙げられ得る。
【0100】
特定の実施形態によると、温度変化を緩和し得る絶縁体が使用され得る。例えば、絶縁材は、例えば20℃の相転移を有する物質を含み得る。位相を例えば固体から液体へ変化せるのに必要なさらなるエネルギーにより、この物質はこの相変化温度における温度変化を効果的に緩和することになる。換言すると、20℃においてこの物質が2つの位相の間で平衡状態にある場合、さらなる熱を追加または除去しても、その物質が2つの位相のうち1つに完全に転移するまで物質の温度は変化しない。これらの物質は、「相変化絶縁体」、または「相変化物質」を含有する絶縁体として知られている。鎖長および架橋結合などの特性を制御することによって相変化温度を合わせ得る場合、高分子材料がこの種の緩衝に適合し得る。これらの緩衝材は、さらにそれらの熱特性を制御し、それらの取り扱い性を強化するために、マイクロスフェア内などにカプセル化されてもよい。
【0101】
相変化物質に基づく絶縁体は、本明細書中に参考として援用される、Aldermanによる米国特許第5,626,936号および第6,645,598号におけるものなど、構築アプリケーションにおいて使用され、使用が提唱されてきた。相変化物質に基づくその他の相熱緩衝物質は、これも本明細書中に参考として援用される、Colvinによる米国特許第5,290,904号、Davisによる第6,703,127号、およびPauseによる第6,217,993号において記載されている。本発明の特定の実施形態によると、断熱を提供するために、これらの物質およびシステム、ならびに、相変化物質に基づく絶縁体を提供し得るその他のものを使用し得る。相変化絶縁は、本明細書において開示されているように、温度補償型光学系の一部として使用されてきていないと考えられる。
【0102】
受動型熱補償システムは、それに熱的接触している装置から熱エネルギーを伝導するように設計された熱伝導基板を含んでもよい。例えば、受動型熱制御システムの一部としての熱伝導基板は、TDUに熱的接触しており、温度依存性ユニットと熱伝導基板との間で熱エネルギーを伝導するように構成される。
【0103】
熱伝導基板はまた、それに熱的接触している複数の装置または素子に、より均一な熱環境を提供し得る。熱伝導基板とそれに熱的接触している素子の熱質量(すなわち、総熱容量)に応じて、熱伝導基板は、接触している装置または素子用の熱緩衝になるものとして作用し得る。そのような場合、大きい熱質量により、熱エネルギーの追加または除去による温度の変化を最小化し、それに熱的接触している装置の温度の変動を最小化する。熱伝導基板は、熱を放散し、接触している装置および素子のためにより安定した熱環境を維持するため、冷却フィンなどの冷却素子を含んでもよく、またはそれらに関連付けられてもよい。
【0104】
受動型熱制御システムは、特定の実施形態によると、任意のその他の構成要素に加え、絶縁炉および熱伝導基板を備え得る。また、例えば、熱制御システムによって作動されない、加熱器、冷却器、またはファンなどのさらなる構成要素を備えてもよい。例えば、受動型熱制御システムは、TDUに熱的接触している冷却フィンを持つヒートシンクと、ヒートシンクの冷却フィンに方向付けられた冷却ファンとを備え得、ここで冷却ファンは、TDU温度にかかわらず、システムの動作中は作動している。さらに、本明細書の他の部分でも述べているように、受動型システムは、温度変化に基づいて作動または作動を停止されるファンなどの能動型システムと組み合わせてもよい。
【0105】
またさらなる例として、冷却システムは、例えば、TDUに熱的接触している実質的に平面の台とその台から延びるフィンとを備えるヒートシンクアセンブリを備え得る。様々な局面によると、冷却システムは、ヒートシンク温度を制御するように構成されたファンおよび/または少なくとも1つの冷却部材を含み得る。ファンおよび/または冷却部材は、例えば、能動的に制御され得るか、または定常状態(例えば、オン)で維持され得る。いくつかの局面によると、ファンおよび/または冷却部材は、所望の温度またはその付近でヒートシンクを能動的に保持するように動作し得る。
【0106】
特定の局面によると、さらなる冷却部材は、ファンによってヒートシンクに向けて方向付けられている大気の温度を下げるように構成され得る。冷却部材は、例えばCO
2(液化または乾燥)、液体窒素、圧縮空気などの冷却流体をファンの気流路に出力することによって大気温度を下げ得る。
【0107】
さらなる例として、冷却部材は、EXAIR(登録商標)が販売するものなど、1つ以上のCold Gun Aircoolant System
TMを備え得る。Cold Gunは、圧縮空気の供給を2つの低圧流―片方は熱く、片方は冷たい―に変換するために、EXAIR(登録商標)が販売するものなどの渦管を使用する。冷気流は、消音され、ユースポイント、例えば、ファンから例えばヒートシンクなどの加熱された表面への気流の経路内に冷気流を方向付け得る、例えばフレキシブルホースを通って排出され得る。一方、熱気流は、消音され、熱気排気管を介して排出され得る。
【0108】
冷却部材は、例えば、高熱半導体で使用される、Cooligy社(カリフォルニア州マウンテンビュー)が販売するものなど、1つ以上のマイクロチャネル冷却ループを備えてもよい。典型的な冷却ループは、例えばシリコンの小片に刻まれた、例えば各20〜100ミクロン幅のファインチャネルにより規定される集熱器を備え得る。いくつかの実施形態において、チャネルは、例えばヒートシンクなどの加熱された表面によって生成された熱を吸収する流体を搬送するように構成され得る。いくつかの実施形態において、冷却ループは、ファンからの気流の経路内の大気から熱を吸収するように構成され得る。流体はラジエータを通過し、当該ラジエータは流体からの熱を空気に伝達し、これにより流体を冷却する。冷却された流体はその後、ポンプ、例えば界面動電ポンプに戻り、密閉ループに投入されて集熱器に戻る。
【0109】
様々な局面によると、冷却部材は、Cool Chips plc.が販売するものなど、1つ以上のCool Chip
TMを備え得る。Cool Chip
TMは、熱を真空ダイオードの片側から別の側へ搬送するために電子を使用する。したがって、Cool Chip
TMは、ファンなどの受動型冷却構成要素を組み込み得る、能動型冷却技術である。Cool Chip
TM層は、加熱システムとヒートシンクとの間にギャップを導入するために、加熱システムとヒートシンクとの間に配置され得る。電圧バイアスを追加することにより、電子は、例えば加熱システムからヒートシンクなど、所望の方向に移動するように促され得、一方、ギャップによってそれらが加熱システムに戻ることを阻止される。したがって、ヒートシンクは加熱システムを損傷することなく熱くなり得る。いくつかの局面において、大気から熱を吸収し、それによってシステムを冷却するために、1つ以上のCool Chip
TMを並べてよい。
【0110】
特定の実施形態によると、受動型制御システムは、熱伝導基板と、LEDと、光学検出器とを備え得る。これらの実施形態によると、少なくともLEDと光学検出器はTDUの構成要素であり、熱伝導基板に熱的接触している。熱伝導基板は、(i)LEDおよび光学検出器の両方と(ii)熱伝導基板との間で熱エネルギーを伝導するように構成される。
【0111】
LEDおよび光学検出器が共通の熱伝導基板に熱的接触している実施形態の利点は、システムの熱質量の増大である。この熱質量の増大は、それに熱的接触している素子に、熱安定性または補償の程度の増大を提供し得る。能動型および受動型両方の熱補償を有する実施形態において、能動型熱補償は、LEDおよび光学検出器など、熱伝導基板に熱的接触しているすべての素子に能動型温度制御を提供するために、熱伝導基板に熱的接触し得る。
【0112】
様々な実施形態によると、熱界面材料(Thermal Interface Material;TIM)は、2つの表面間、例えば、LED支持と基板との間、および/またはLED筐体と熱電素子との間に、十分な熱的接触を提供し得る。TIMは、シリコーンベースのグリース、エラストマーパッド、熱伝導テープ、熱伝導接着剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。酸化亜鉛シリコーンをTIMとして使用し得る。
【0113】
熱対応パッドTIMは、その全体が本明細書中に参考として援用される、Bergersonによる米国特許第5,679,457号において記載されている。市販されている熱対応パッドの例としては、GAP PAD VO ULTRA SOFT材料など、Berquist Co.(ミネソタ州チャンハッセン)のSIL−PAD(登録商標)およびGAP−PAD製品を含む、製品が挙げられる。熱対応パッドは、熱界面材料として使用され得る。
【0114】
様々な実施形態によると、TIMは、熱伝達装置とLEDとの間に配置され得る。特定の実施形態によると、TIMまたは熱対応パッドは、0.08〜5W/m・Kの範囲で熱伝導率を有し得、または、別の例として、種類に応じて、TIMは、Berquist Co.(ミネソタ州チャンハッセン)から入手可能なものなど、0.08〜0.37W/m・K、0.33〜0.82W/m・K、または0.9〜3W/m・Kの範囲の熱伝導率を有し得る。
【0115】
例えば、特定の実施形態によると、受動型制御システムは、熱対応パッドを含む、またはそれに熱的接触している、熱伝導基板を含む。熱対応パッドもTDUに熱的接触しており、TDUと熱伝導基板との間で熱エネルギーを伝導するように構成される。
【0116】
様々な実施形態によると、例えばシステムにおける温度安定性を維持するために、熱伝導接着剤または対応パッドを使用して、ヒートシンクまたは熱源と、その他のシステム構成要素との間で十分な熱伝導率を達成し得る。表面または内部の高度熱伝導(例えば、アルミニウムまたは鋼)層など、例えばPCB接地平面またはその他の熱伝導層に見られるような共通金属または熱伝導層もしくはプレートへの接地経路を使用して、フォトダイオードおよびLEDなど、システム構成要素用の熱交換経路を確立し得る。層またはプレートは、例えばアルミニウム、銅、またはその他の導電性金属などの金属であり得る。それによりシステムは、温度安定性を維持し、様々なシステム構成要素を実質的に同じ温度に保ち得る。熱交換経路は、接地平面またはその他の熱伝導層と熱を交換し得る。その他の熱界面材料、例えば接着剤付き抵抗素子を使用して、システム構成要素との十分な接触を実現し得る。能動型熱補償では、抵抗加熱器は、例えばシステムに含まれるその他の電気回路で共有される共通基板内または上に(例えば、PCBの接地面に付着されて)配置され得る。
【0117】
特定の実施形態によると、熱的に分離された環境にシステム構成要素を囲い込む、または部分的に囲い込むために断熱を使用し得る。エンクロージャは、例えば、LEDからの照射が検出ゾーンを照射することを可能にする開口部を有し得る。絶縁体は、検出ゾーンへの、および/または検出ゾーンからの光伝達を可能にするために光学的に透明であってもよく、例えば、真空またはガスの充填によって分離されたガラスまたはガラスプレートであり得る。熱交換経路は、システムと大気環境との間で熱伝達を可能にするために、エンクロージャ内に配置され得る。熱交換経路は、例えば、エンクロージャの通気孔であり得る。冷却ファンは、エンクロージャによって提供される、熱的に分離された環境を冷却し得る。熱交換経路は、別の例として、エンクロージャに含まれ熱電素子に熱的接触している、高度熱伝導表面を含み得る。システム構成要素は、エンクロージャと温度制御構成要素との間の熱交換率を下げるために、断熱材を使用してエンクロージャから分離され得る。特定の実施形態によると、断熱エンクロージャは、励起源、温度センサ、および/または温度調整システムなどの構成要素を収容し得る。熱伝達の既知の方法としては、伝導、対流、および熱放射が挙げられる。
【0118】
(実施例4)
図4は、システム400の上断面図である。ケーブ(cave)、炉、またはエンクロージャとしても既知である筐体401は、図示するような403および407などの開口部を含み得る。LED413、415は、1つ以上の反応領域(図示せず)を照射するために、個別の開口部(403)を通して放射線照射し得る。開口部407は、反応領域から検出器440への、放射ビームの透過または通過を可能にし得る。1つ以上の温度センサ418は、筐体基板412の中または上に配置され得る。基板412は、加熱装置416を含み得る。温度センサ418は、筐体基板412内のすべてに配置され得る。LED413および415、ならびに検出器440は、筐体基板412の上または中に配置され得る。温度センサ418から信号を受信し得る温度調整器または温度調整システム422は、例えば筐体412内に含まれてもよく、システムの外部にあってもよい。温度調整システム422は、所望のまたは予め設定された温度範囲内に例えばシステム400を維持するために、必要に応じて加熱装置416および/または冷却ファン414を制御し得る。筐体401は、温度調整システム422によって温度調整される、比較的小さい、熱的に分離された体積を提供し得る。LED413、415および検出器440を利用するために必要な制御回路(図示せず)は、筐体401内に格納され得る。励起光は、LED413、415から放出され、1つ以上の反応領域に向けて方向付けられ得る。LED413は、LED415とは異なる波長範囲の励起光を発し得、例えば、LED413は青色光を発し得、LED415は緑色光を発し得る。LED413は、LED415と同時に、または順次に動作し得る。
【0119】
(実施例5)
図5は、様々な実施形態による、システム500の側断面図である。システム500は、基板574上に配置されたフォトダイオード検出器550、552、および554を含み得る。基板574は、第1の表面またはその裏面575に配置された制御回路560、562、564、および566を有し得る。システム500は、高い熱伝導率を有するプレート568に載置されたLED513を含み得る。様々な実施形態において、プレート568は、約0.1w/cm・K以上、例えば、約0.3w/cm・K以上または約0.5w/cm・K以上の熱伝導率を有し得る。例えば、プレート568は、アルミニウムを含み得る。高い熱伝導率を有するエラストマーパッド570は、基板574とプレート568との間に配置され得る。エラストマーパッド570は、電気抵抗加熱器518を基板574から電気的に分離し得る。フォトダイオード検出器550、552、および554は、例えば接着剤572を使用して、基板574に接着、または固着、またははんだ付けされ得る。温度センサ519はシステム500に熱的接触して配置され得、例えば温度センサ519は、プレート568と接触して配置され得る。断熱材576は、システム500を大気環境から熱的に分離するために、基板574の第2の表面つまり裏面575に隣接して配置され得る。システムは、制御回路560、562、564、566、フォトダイオード検出器550、552、554、およびLED511、513を同じ温度に維持し得る。したがって、システム500全体にわたって一定かつ均一な温度が維持され得る。
【0120】
様々な実施形態によると、発光ダイオード(LED)と、LEDに熱的接触しており、LEDの動作温度を計測し、動作温度信号を生成し得る温度センサと、動作温度信号を受信し、動作温度信号に基づいて動作温度を調整し得る温度調整システムとを備え、1つ以上の蛍光色素の励起を制御するように適合されるシステムが提供される。温度センサおよび温度調整システムは、単一のユニットを構成し得る。温度調整システムは、熱伝達装置と、熱伝達装置を制御し得る制御ユニットとを含み得る。
【0121】
様々な実施形態によると、熱伝達装置は、LEDに熱的接触する気流を形成し得るファン、LEDに熱的接触している1つ以上の冷却フィン、LEDに熱的接触している加熱器、および/またはLEDに熱的接触している熱電素子のうち少なくとも1つを備え得る。いくつかの実施形態において、熱伝達装置は、熱電素子に電力を供給し得る可逆電源を備え得る。
【0122】
様々な実施形態によると、温度調整システムは、LEDの動作温度を上昇もしくは低下させること、または上昇および低下の両方が可能であり得る。様々な実施形態において、温度調整システムは、例えば5℃隔てられた最低温度および最高温度、または約1℃隔てられた最低温度および最高温度を含む動作温度範囲内に動作温度を維持することが可能であり得る。
【0123】
様々な実施形態によると、システムは、温度調整システムと連絡し、公称温度および許容可能な偏差値範囲を含む動作温度範囲を入力し得るユーザ入力装置を含み得る。
【0124】
様々な実施形態によると、温度センサは、サーミスタ、熱電対、バンドギャップ半導体抵抗温度検出器、白金抵抗温度検出器、またはバイメタル温度検出器のうち少なくとも1つを含み得る。その他の実施形態において、温度センサは、サーミスタ、またはバンドギャップ半導体抵抗温度検出器のうち少なくとも1つを含み得る。
【0125】
様々な実施形態によると、システムは、(1)動作温度が最高温度を超える、および(2)動作温度が最低温度に満たない、のうち少なくとも1つの状況が満たされる場合に、警報を信号で伝え得るエラー信号伝達装置を備え得る。
【0126】
様々な実施形態によると、システムは、LEDに接触している基板を備え得る。LEDは、複数のLEDを備え得る。基板は、約0.1w/cm・K以上の熱伝導率を有し得る。様々な実施形態において、基板は多層積層板を備えてよく、積層板の少なくとも1つの層は約0.1w/cm・K以上の熱伝導率を有する。その他の実施形態において、基板はプリント回路基板を備え得る。
【0127】
様々な実施形態によると、LEDは、有機LED、量子ドットベースの光源、異なる個別の波長範囲の発光を放出し得る複数の発光ダイオードのうち少なくとも1つを備え得る。複数のLEDは、少なくとも1つの青色LEDおよび少なくとも1つの緑色LEDを備え得る。
【0128】
様々な実施形態によると、システムは反応領域を備え得、LEDは励起ビームを生成し、反応領域に向けて方向付け得る。反応領域は、複数の間隔を空けた反応領域を備え得る。様々な実施形態において、反応領域はそこに配置されたサンプルを備え得、サンプルは少なくとも1つの核酸配列を備える。
【0129】
様々な実施形態によると、システムは、反応領域の少なくとも1つの光学特性を検出し得る検出器を備え得る。反応領域は、少なくとも1つの核酸配列増幅反応試薬および/または少なくとも1つの蛍光レポーター色素を含み得る。
【0130】
様々な実施形態によると、システムは、少なくとも1つの分離領域備え得、LEDは、励起ビームを生成し、この少なくとも1つの分離領域に向けて方向付け得る。LEDは、異なる個別の波長範囲を放射し得る複数の発光ダイオードを備え得る。少なくとも1つの分離範囲は、電気泳動分離媒体を備え得る。
【0131】
様々な実施形態によると、反応領域と、励起ビームを生成し、反応領域に向けて方向付け得る発光ダイオード(LED)と、LEDに熱的接触しており、LEDの動作温度を計測し、動作温度信号を生成し得る温度センサと、反応領域から発光信号を検出するように適合され、検出データを生成し得る検出器と、動作温度信号および検出データを受信し得、動作温度に関連する励起ビーム特性シフトについて検出データを調節し、シフトされた検出データを形成するように適合されるデータ調節ユニット、とを備えるシステムが提供される。
【0132】
様々な実施形態によると、データ調節ユニットは、少なくとも2つの動作温度と、各動作温度に対し少なくとも1つのそれぞれの励起ビーム特性シフトとを保存するように適合されるメモリを備え得る。様々な実施形態において、温度センサは、サーミスタ、熱電対、バンドギャップ半導体抵抗温度検出器、白金抵抗温度検出器、またはバイメタル温度検出器のうち少なくとも1つを備え得る。その他の実施形態において、データ調節ユニットは、少なくとも2つの動作温度と、各動作温度に対し少なくとも1つのそれぞれの励起ビーム特性シフトを保存するように適合されるメモリを備え得、少なくとも1つのそれぞれの励起ビーム特性シフトは、異なる各波長範囲について少なくとも1つのそれぞれの励起ビーム特性シフトを備える。
【0133】
様々な実施形態によると、LEDは、異なる個別の波長範囲を放出し得る複数の発光ダイオード、または少なくとも1つの青色LEDおよび少なくとも1つの緑色LEDを備え得る。
【0134】
様々な実施形態によると、システムは少なくとも1つの分離領域を備え得、LEDは励起ビームを生成し、少なくとも1つの分離領域に向けて方向付け得る。様々な実施形態において、LEDは互いに隣接して配置された複数のLEDを備え得、各LEDは、個別の動作温度および個別の励起ビーム特性シフトを有する。その他の実施形態において、LEDは、励起ビームを反応領域に向けて方向付けるための経路に沿って積層された複数のLEDを備え得、各LEDは、個別の動作温度および個別の励起ビーム特性シフトを有する。
【0135】
様々な実施形態によると、システムは、動作温度信号を受信し、動作温度信号に基づいて動作温度を調整し得る温度調整システムを備え得る。
【0136】
様々な実施形態によると、励起ビーム特性は、生成された励起ビームのスペクトルまたは生成された励起ビームの強度を含み得る。
【0137】
様々な実施形態によると、反応領域に励起ビームを照射するための方法であって、LEDと、反応領域と、反応領域におけるサンプルとを備えるシステムを提供するステップと、LEDで励起ビームを生成するステップと、励起ビームをサンプルに方向付けるステップと、LEDの動作温度を計測するステップと、動作温度に基づいて、LEDから熱を伝達することおよびLEDへ熱を伝達することのうち少なくとも一方によって動作温度を調整するステップとを含む方法が提供される。
【0138】
様々な実施形態によると、動作温度を調整するステップは、約5℃隔てられた最低温度および最高温度、または約1℃隔てられた最低温度および最高温度を含む動作温度範囲内に動作温度を維持するステップを含み得る。動作温度を調整するステップは、前記励起ビームを生成するステップより前に発生し得る。様々な実施形態において、動作温度を調整するステップは、周囲環境温度を超えるように動作温度を設定するステップを含み得る。
【0139】
様々な実施形態によると、サンプルは、核酸配列増幅反応を実行するために必要な試薬を含み得る。
【0140】
様々な実施形態によると、LEDは、異なる個別の波長範囲を放出し得る複数の発光ダイオードを備え得る。
【0141】
様々な実施形態によると、反応領域に励起ビームを照射するための方法であって、LEDと、反応領域と、反応領域におけるサンプルとを備えるシステムを提供するステップと、LEDで励起ビームを生成するステップと、励起ビームをサンプルに方向付けるステップと、検出データを取得するために、サンプルの光学特性を検出するステップと、計測温度を測定するために、発光ダイオードの動作温度を計測するステップと、計測温度に関連する励起ビーム特性シフトの検出データを調節するステップとを含む方法が提供される。
【0142】
様々な実施形態によると、励起ビーム特性は、生成された励起ビームのスペクトルまたは生成された励起ビームの強度を含み得る。様々な実施形態において、サンプルは、核酸配列増幅反応を実行するために必要な試薬を含み得る。
【0143】
様々な実施形態によると、異なる個別の波長範囲を放出し得る複数の発光ダイオードを備え得る。
【0144】
様々な実施形態によると、検出データを調節するステップは、作動されたLEDの位置に基づいて、複数のLEDから励起ビーム特性シフトを選出するステップを含み得る。
【0145】
様々な実施形態によると、LEDは互いに隣接して配置された複数のLEDを備え得、各LEDは、個別の動作温度および個別の励起ビーム特性シフトを有する。その他の実施形態において、LEDは内側LEDおよび外側LEDを備え得、前記方法は、内側LEDのうち1つ以上について、外側LEDのうち1つ以上についての励起ビーム特性シフトの調整と比較して、より大幅な調節を行うステップを含む。様々な実施形態において、LEDは、励起ビームを反応領域に向けて方向付けるための経路に沿って積層された複数のLEDを備え得、各LEDは、個別の動作温度および個別の励起ビーム特性シフトを有する。
【0146】
様々な実施形態によると、検出データを調節するステップは、個別の励起ビーム特性シフトをメモリソースから検索するステップを含み得る。
【0147】
様々な実施形態によると、前記方法は、複数のLEDにおける各LEDの位置に基づいて計算された動作温度を取得するために複数のLEDをプロファイルするステップを含み得る。
【0148】
様々な実施形態によると、LEDの発光強度およびスペクトル安定性を維持するための方法であって、LEDを備えるシステムを提供するステップと、LEDで励起ビームを生成するステップと、LEDの動作温度を計測するステップと、LEDの発光強度およびスペクトル安定性を維持するために、動作温度に基づいて、LEDから熱を伝達することおよびLEDへ熱を伝達することのうち少なくとも一方によって動作温度を調整するステップとを含む方法が提供される。様々な実施形態において、動作温度を調整するステップは、LEDの発光高度およびスペクトル安定性が維持される所望の動作温度または温度範囲に相当する調節データを、メモリソースから検索するステップを含み得る。
【0149】
(光学的構成、調整システムおよび方法)
LED、反応領域、および、光源からの励起光を反応領域に向けて方向付けるために使用され得る介在装置の構成についての様々な実施形態が、例えば、いずれも2003年5月19日に出願されたBoegeなどによる「Optical Instrument Including Excitation Source」と題された同時係属中の米国特許出願第10/440,920号およびKingなどによる「Apparatus And Method For Differentiating Multiple Fluorescence Signals By Excitation Wavelength」と題された同時係属中の米国特許出願第10/440,852号、2003年12月12日に出願された米国特許出願第10/735,339号、米国特許第6,211,989号を含む、2004年10月29日に出願された米国特許第6,211,989号の再審査番号第90/007,275号、ならびに、これと同時に出願された、Kingなどによる「Optical Scanning Configurations,Systems,and Methods」と題された、代理人整理番号第07414.0144−00000号の米国特許出願において見られ、これらの出願はすべて、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0150】
LEDまたはLEDアレイは、基板に載置された複数のLEDを含み得る。LEDは、温度調整システムに熱的接触し得る。温度調整システムは、熱伝達装置および/または温度センサを制御し得る。温度調整システムは、動作温度が目に見えて変化しないようにLEDの動作温度を維持し得る。例えば動作温度は、動作中に10℃を超えて推移しないように、例えば最高5℃を超えて推移しないように、最高1℃を超えて推移しないように、最高0.5℃を超えて推移しないように、または最高0.1℃以下を超えて推移しないように、維持され得る。温度調整システムは、動作温度がプログラムされた温度範囲の限界を超過しないように、LEDの動作温度を維持し得る。様々な実施形態によると、温度調整システムおよび温度センサは、単一のユニットに含まれてもよいし、集積デバイス、例えばカリフォルニア州サニーベールのMaxim Integrated Products,Inc.から入手可能なMAXIM DS1620装置に含まれてもよい。
【0151】
温度センサとLEDは、必ずしも物理的に接触していなくてもよい。温度調整システムは、LEDと温度センサとの間に介在する任意の熱質量を補償し、それによって動作温度を導き出す、計算する、または見積もるために、監視されたLEDの温度を調節し得る。
【0152】
様々な実施形態によると、システムの寿命および照射均一性要件を維持するために、LEDを冷却してよい。様々な実施形態によると、より高い輝度を実現するために、LEDは、冷却された準大気で冷却され得る。様々な実施形態によると、LEDを冷却し、LEDが最高動作温度を超過しないようにするために、強制空冷システムまたは熱電素子、例えばペルチェ素子を使用し得る。様々な実施形態によると、上述のようなさらなる冷却部材を使用してもよい。
【0153】
様々な実施形態によると、LEDの温度は、例えば光学センサを用いて光学的に監視され得、システムの熱的特性およびシステム内に埋め込まれた任意のLEDのスペクトル特性を記録し得る。様々な実施形態において、その他の温度センサを使用し得る。LEDのスペクトル係数を動作温度の関数として理解することにより、スペクトルシフトの効果は、サンプルの光学特性の検出により和らげられ得る。様々な実施形態によると、較正マトリクスまたは検出データに基づくシステム較正は、色素マトリクスまたは検出データが集められた、または検出された条件(例えば、温度)によって修正され得る。そのような較正および補償に基づいて、スペクトルシフトおよび強度変更を含む、LEDによって放出された励起光への熱的効果は、可能な限り、補償、最小化、または排除され得る。
【0154】
様々な実施形態によると、LEDの温度は監視され得、コンピューティング装置は、LEDから放出された励起光のスペクトルシフトおよび/または強度変化を補償するために、検出データを調節し得る。シフティングの補償は波長範囲にわたって変動し得、例えば、異なる波長のLEDには異なる補償が提供され得る。少なくとも2つの動作温度と、各動作温度に対し少なくとも1つの別個の励起ビーム特性シフトとを保存するように適合されるメモリを備えるデータ調節ユニットを含むシステムが提供され得る。複数の個別の励起ビーム特性シフトは、メモリに保存され得る。調節データは、複数の個別の係数の形態であり得る。各係数は、LEDアレイの個別のLEDに相当し得る。典型的な係数の範囲は、例えば、設定動作温度または平均動作温度からの偏差に基づいて、約0.04nm/℃から約4.0nm/℃であり得る。本発明の様々な実施形態によると、より高い、および低い温度係数を有するLEDが使用され得る。
【0155】
係数は、2つ以上のLEDに相当する2つ以上の公称温度係数を含み得る。係数は、LEDアレイ中にある個別のLEDの位置に基づいて決定または指定される。スペクトルシフトおよび温度係数は、異なる温度については異なり得る。スペクトルシフトおよび温度係数は、計算され得るか、実験的に測定され得るか、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。動作中、スペクトルシフトおよび温度係数は、その後、例えばルックアップテーブルから取得され得る。テーブルは、例えば温度によってソートされ得る。テーブルは、例えばコンピュータシステムの長期記憶装置内に設けられ得る。複数の構成要素(例えば、LEDと光学フィルタ)の熱特性は、組み合わせた熱係数を生み出すために組み合わせられ得、次にシステム全体(すなわち、複数の構成要素)の温度効果を補償するために使用され得る。単一の構成要素の温度を監視するために複数の温度センサを使用してもよいが、複数の構成要素の温度を監視するために、複数の温度センサを使用してもよい。
【0156】
様々な実施形態によると、LEDを利用する光学検出機器は、LEDの動作温度を安定化させることにより、極めて安定した強度およびスペクトル特性を取得し得る。照射安定性は、システムにおける信号ノイズを最小化するために重要であり得る。照射安定性は、低濃度色素を検出するために機器の感度を向上させ得る。スペクトル安定性は、色素のセットに関連するデコンボリューションマトリクスの値を維持して、定量化エラーを防止するために使用され得る。同様に、温度変化により生じる強度の変動は、異なる波長のLEDについては異なり得、明らかなスペクトル強度を生じる。
【0157】
様々な実施形態によると、照射安定性は、照明源をウォーミングアップさせることにより向上させられ得る。様々な実施形態によると、シャッターは、ブリーチアウト(フォトブリーチング)を防止するために、励起光がサンプルに到達するのをブロックし得る。例えば、様々な実施形態によると、シャッターは、照明源がウォーミングアップする間、ブリーチアウトを防止するために、励起光がサンプルに到達するのをブロックし得る。照明源は、加熱器および/または冷却器を使用して、照明源を有効にする、またはオンにする前に、所望の温度範囲に提供され得る。照明源を有効にする前に照明源の温度を調整することにより、シャッターの必要性をなくし、かつ/またはウォーミングアップ時間を低減し得る。様々な実施形態によると、サンプルは、例えば核酸配列増幅または配列決定プロセスにおいて温度サイクルされるなど、反応または一連の反応を受け得る。様々な実施形態によると、シャッターは、反応または一連の反応と連携して、例えばサンプルの蛍光検出読み出し中などの適切な時間にデータを検出および収集するために、ブロック解除され得る。
【0158】
様々な実施形態によると、低濃度色素を検出するための機器の感度を使用し得る。LEDは、いくつかの光学計装により維持されている15℃の周囲温度範囲にわたって、例えば5%シフトし得る。様々な実施形態によると、LEDのスペクトルシフトは、LEDの中心波長に応じて変動し得、例えば、青色LEDは赤色LEDよりも少なくシフトし得る。スペクトルシフトは、約0.04nm/℃から約0.4nm/℃であり得る。スペクトルシフトは、異なる温度については異なり得る。スペクトルシフトは、計算され得る。スペクトルシフトは、ルックアップテーブルから取得され得る。テーブルは、例えば温度によってソートされ得る。テーブルは、例えばコンピュータシステムの長期記憶装置内に設けられ得る。様々な実施形態によると、いくつかの光学計装は、約1nm以下の色素シフトに対して敏感であり得る。
【0159】
様々な実施形態によると、より比較的耐久性のある色素マトリクスを利用する実験計装は、熱ベースのスペクトルシフトなど、比較的耐久性がない色素マトリクスを持つシステムよりもLEDのスペクトルシフトの影響を受けにくくあり得る。カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems社から入手可能なAB7500システムは、極めて優れた色素マトリクスを有し得、少なくともほとんどの色素について、スペクトルシフトの影響をほとんど受けずにすむ。
【0160】
様々な実施形態によると、(典型的な温度依存性構成要素としての)LEDの動作温度は、ペルチェ効果熱電素子、ヒートポンプ、電気抵抗加熱素子(ジュール加熱器)、金属ブロック内のチャネルを通過する流体流、異なる温度の流体の容器、空気衝突の緩和、またはそれらの組み合わせなどにより制御され得る。様々な実施形態によると、熱装置は、冷却フィン上の空気流を方向付けるためのファン、または、LEDと、空気などの別の熱質量との間における熱伝達を支援するための冷棒を含み得る。様々な実施形態によると、LEDおよび/またはLEDを支持するプラットフォームの熱伝導率は、周囲の大気環境、例えば周囲空気のものより大きくあり得る。
【0161】
様々な実施形態によると、熱電素子(例えばテキサス州ダラスのMarlow Industries,Inc.から入手可能なXLTモジュールなど)は、熱伝達装置として使用され得る。熱電素子の制御は、調節可能なバイポーラDC出力電源を含み得る。電源は、点制御、偏差警報、および自動/手動動作モードを設定するために、プログラマブルPID制御/ランプを提供し得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応のリアルタイム監視などの反応において、熱電素子は、プログラマブルおよび/または論理制御下において、双方向性またはバイポーラ電源を使用することにより、必要に応じてLEDの加熱および冷却両方を行い得る。プログラマブルおよび論理制御は、汎用コンピュータ、または特注ハードウェア、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array;FPGA)またはマイクロコントローラを使用することによって提供され得る。熱電素子は、特にPCR使用において必要とされる連続的な温度逸脱に耐えるように設計され得る。
【0162】
様々な実施形態によると、熱伝達装置は、蒸気サイクル装置、例えば、フレオンベースの(もしくはその他の冷媒)蒸気圧縮または吸収式冷凍機を含み得る。そのようなユニットにおいては、熱エネルギーを領域から抽出し得、それによってその温度が低下し、次いで、より高温の「ヒートシンク」領域に排出される。蒸気サイクル装置は、可動機械的部品を含み得、加工流体を含み得、一方、熱電素子は、完全に固体の状態であり得る。
【0163】
(実施例6)
特定の実施形態によると、本発明は、サンプル基板と、LEDと、第1の光学検出器および任意で1つ以上のさらなる(例えば、第2の)光学検出器と、励起発光セレクタと、発光セレクタとを備える光学系を提供する。そのようなシステムは、当然ながら、能動型および受動型熱制御システムならびに本明細書の他の部分で述べている構成要素を含み得る。
【0164】
例えば、サンプルウェルなどのサンプル基板に励起光を提供するように構成された少なくとも1つのLEDが存在し得る。励起光は、励起発光セレクタ(例えば、
図8、要素616)によって、または
図1のようにそのような構成要素なしで提供され得る。1つの可能性として、励起発光セレクタは、二色性の受信面の法線軸に対し約45°の角度で励起光を受信するように構成された干渉素子(例えば、二色性)であり得る。干渉素子は、この場合も45°の角度で、励起光をサンプル基板に向けて反射するように構成され得る。励起発光セレクタはビームスプリッタであってもよく、そのようなビームスプリッタは、同様に、約45°角度の入射および反射用に構成され得る。一部の励起光は励起発光セレクタを通過し得、この迷光が、本明細書の他の部分でも述べているようなライトトラップに閉じ込められ得る。例えば、励起光を所望の光路に沿って回転させる、または成形するために、LEDと励起発光セレクタとの間、および/または励起発光セレクタとサンプル基板との間に、ミラーおよびレンズなどのさらなる要素を使用してもよい。
【0165】
励起光の中心波長は、例えば約470nmであり得る。第1の光学検出器および第2の光学検出器は、励起発光セレクタを用いてサンプル基板から放射光を受信し、検出データを生成するように構成され得る。特定の実施形態によると、第3の光学検出器など、さらなる光学検出器がまた含まれ得る。
【0166】
1つの可能性として、LEDから受信した励起光に対して約45°の角度に励起発光セレクタを構成する上記の具体例によると、励起発光セレクタは、約45°の角度でサンプル基板から放射光を受信し、光学検出器に向けて方向付けるようにこの放射光の一部または全部を透過させるように構成され得る。
【0167】
したがって、励起発光セレクタは、(1)LEDから受信した励起光をサンプル基板に向けて方向付ける、および(2)サンプル基板から受信した放射光を光学検出器に向けて方向付ける、という少なくとも2つの機能を提供するように構成され得る。
【0168】
励起発光セレクタから光学検出器への光路において、1つ以上の発光セレクタは、励起発光セレクタから放射光を受信し、(i)放射光の第1の光学的に異なる範囲を第1の光学検出器に、および(ii)放射光の第2の光学的に異なる範囲を第2の光学検出器に、選択的に方向付けるように構成され得る。特定の実施形態によると、放射光の部分範囲をさらに分離し、それらを個別の異なる光学検出器に方向付けるために、さらなる発光セレクタを使用してもよい。特定の実施形態によると、小さい設置面積を取得するためにビームを折り畳むことなどにより、1つ以上の光学検出器への放射光の経路を含む、システム内の光の光路を制御するためにミラーを使用してもよい。
【0169】
例えば、第1の発光セレクタは、その表面の法線に対して45°の照射角度で励起発光セレクタからの放射光を受信し、第1の光学的に異なる範囲を放射光から第1の光学検出器に向けて反射するように構成され得る。発光セレクタは、例えば、第1の光学的に異なる範囲を45°の角度で反射するように構成された干渉素子であり得る。第1の発光セレクタによって反射されなかった(または、例えば吸収により失われた)放射光は、第1の発光セレクタを通過して第2の光学検出器に向かい得る。放射光からその光の第1の光学的に異なる範囲を選択的に除去すると、透過された光は必然的に第2の光学的に異なる範囲となり、当該範囲は、例えばミラーを介して第2の光学的検出器に方向付けられる。放射光をより多くの光学的に異なる範囲へさらに分離するために、さらなる光学的に選択可能な発光フィルタを追加してもよい。
【0170】
その他の構成としては、放射光の複数の部分を分離するためのビームスプリッタの使用が挙げられ、強度については例外もあるが、それぞれ同じ(またはほぼ同じ)光学特性を有し、これらの特性は、使用されるビームスプリッタの種類(例えば、50:50、75:25)で調整され得る。したがって、第1のビームスプリッタは、励起発光セレクタから放射光を受信し、強度のごく一部を(例えば、反射によって)第1の光学検出器に向けて方向付け、残りの強度を(例えば、透過によって)第2の光学検出器など、その他の光学検出器に向けて方向付けるように構成され得る。フィルタは次いで各光学検出器の前で、光学的に異なる範囲の光を各光学検出器に、選択的に方向付ける、または渡すために使用され得る。そのようなフィルタは、選択的発光セレクタが使用される場合であっても、好ましくない範囲の光が検出器に到達するのをさらに防止するために、光学検出器と連動して使用してよい。
【0171】
放射光を検出器に向けて方向付けるために、光学的に選択可能な発光セレクタまたは非選択的な要素が使用される場合、レンズおよびミラーなどのその他の要素がまた使用され得る。例えば、発光セレクタまたはビームスプリッタと光学検出器との間の光路において、光学検出器に向けて放射光の焦点を合わせるために、1つ以上のレンズを使用し得る。別の例として、光路を折り畳むため、またはその方向を変えるために、ミラーがまた使用され得る。
【0172】
本明細書において使用する場合、光の第1および第2の「光学的に異なる範囲」とは、少なくとも1つのスペクトル特性に基づいて、光の互いに異なる2つの範囲をいう。例えば、第1および第2の光学的に異なる範囲は、蛍光プローブFAMおよびVICからの蛍光発光の場合のように、2つの異なる中心波長、例えば520nmと555nmを有し得る。別の例として、第1および第2の光学的に異なる範囲は、蛍光プローブFAMとROXとを区別するために、第1の範囲500〜550nmと第2の範囲590〜630nmなど、半値全幅(FWHM)振幅の点間に2つの異なる範囲を有し得る。しかしながら、光学的に異なる範囲は、部分的に重複するスペクトルなど、いくつかの共通の特徴を有し得る。したがって、一例として、第1の光学スペクトル範囲515〜565nmは、555〜595nmの第2の光学スペクトル範囲とは光学的に異なると見なされ得る。
【0173】
光学系は、光学検出器への光路において、上述した任意のレンズなど、1つ以上のレンズを含んでもよい。別の例として、システムは、サンプル基板に向けて励起光の焦点を合わせるように構成された1つ以上のレンズを含み得る。別の例として、システムは、放射光を実質的にコリメートし、実質的にコリメートされた放射光を励起発光セレクタおよび/または発光セレクタに方向付けるように構成された1つ以上のレンズを含み得る。コリメーションは例えば、より良い波長選択性を干渉フィルタに提供するために望ましくあり得る。
【0174】
さらに別の例として、システムは、サンプル基板に向けて励起光の焦点を合わせ、かつサンプル基板から放射光を収集するように構成された1つ以上のレンズを含み得る。例えば、サンプルに向けて励起の焦点を合わせ、かつサンプルから放射光を収集するために、対物レンズ(1つを超えるレンズを含有し得る)を使用し得る。さらなる例として、当該レンズは、放射光を励起発光セレクタに向けて方向付けながら、コリメートすることもできる。
【0175】
励起および放射光は、光ヘッドとサンプル基板との間のさらなる構成要素を通過し得る。例えば、サンプル基板のウェルを密閉するためにカバープレートを使用し得る。カバープレートは、ウェル内の温度を制御または維持するために加熱され得る。さらに、サンプル基板は、PCRの熱サイクルを制御するなど、反応条件をさらに制御するために、サーマルサイクラーブロックであり得るか、またはそれを含み得る。
【0176】
システムは、特定の実施形態によると、迷励起光が光学検出器に到達するのを防止するための光学フィルタなど、光学フィルタを含んでもよい。例えば、そのようなフィルタは、励起発光セレクタと1つ以上の光学検出器との間の光路に位置する場合がある。一例として、光学フィルタは、470nm励起光を効果的にブロックするがそれでもより長い波長の放射光を渡すために、513nmロングパスフィルタであり得る。上記でも述べたように、光学検出器の付近において、好ましくない光範囲が当該検出器に到達するのを防止するために、光学フィルタが使用され得る。例えば、光学フィルタは、特定の蛍光発光波長範囲に合わせられたか、または設定された、狭帯域通過フィルタであり得る。光学フィルタは、LEDから特定の光の範囲を選択または拒絶するために使用してもよい。
【0177】
LEDおよび光学検出器のうち1つ以上を共通の支えに載置してよい。共通の支えは、熱伝導基板および/またはPCBであり得る。支えは、電力および信号処理用などの制御電子機器を含み得る。制御および処理電子機器は、コンピュータプロセッサ内など、分離したユニット内に位置してもよい。LEDと光学検出器と支えとの間に熱伝導を提供するための熱界面材料(Thermal Interface Material;TIM)が使用され得る。
【0178】
特定の実施形態によると、光学系は、LEDならびに第1の光学検出器および第2の光学検出器のうち少なくとも1つを含むTDUを持つ、熱補償システムを含んでもよい。熱補償システムはまた、能動型温度補償システム、受動型温度制御システム、またはその両方を備え得る。
【0179】
特定の実施形態によると、励起発光セレクタおよび発光セレクタ(集合的に「光セレクタ」)は、選択的であっても非選択的であってもよい。選択的な励起発光セレクタの場合、LEDから受信した励起光をサンプル基板に向けて選択的に方向付け、サンプル基板から受信した放射光を光学検出器に向けて選択的に方向付けるように構成され得る。同様に、選択的な発光セレクタは、放射光の第1の光学的に異なる範囲を第1の光学検出器へ、そして放射光の第2の光学的に異なる範囲を第2の光学検出器へ、選択的に方向付けるように構成され得る。本明細書において、異なる光波長または波長範囲を選択的に方向付ける、または分離するために使用される光学素子に関して使用する場合、「選択的な」および「選択に」は、必ずしも100%の選択性を伴うとは限らず、異なる光波長、波長範囲、またはその他の光学特性(例えば、偏光)の間で優先識別を必要とするだけである。非選択的な励起発光セレクタまたは発光セレクタの例は、ビームスプリッタ(例えば、50:50ビームスプリッタ)である。励起発光セレクタとして使用されるビームスプリッタは、LEDから受信した励起光の少なくとも一部をサンプル基板に向けて方向付け、サンプル基板から受信した放射光の少なくとも一部を光学検出器に向けて方向付けるように構成され得る。発光セレクタとして使用されるビームスプリッタは、受信した放射光の一部を第1の光学検出器に、そして同じスペクトル範囲を有する別の部分を第2の光学検出器に、方向付けるように構成され得る。光セレクタは、それぞれ独立に、干渉(例えば、二色性)光学素子、分散光学素子、ビーム分割光学素子、フィルタリング光学素子、および回折光学素子のうち少なくとも1つを備える。例えば、回折光セレクタは、例えば格子(例えば、透過格子および反射格子)およびホログラム反射板から選択され得る。
【0180】
機能的には、特定の実施形態によると、光セレクタは、ある波長または波長範囲を、より広い範囲または波長の組み合わせから選択するように構成され得る。例えば、励起発光セレクタは、光源(LED)からの励起光をサンプルに向けて方向付けるために、励起光を例えば45°の入射角度で選択的に反射するように構成され得る。干渉フィルタなどの光セレクタは、光セレクタの設計および特性に応じて、その他の角度でも使用され得る。同様に、ビームスプリッタおよび吸収フィルタなど、その他の光セレクタは、より急な、およびより浅い角度の入射の両方を含む、45°以外の角度で使用され得る。励起発光セレクタはまた、サンプルからの放射光を光学検出器に向けて選択的に方向付けるために、放射光波長および波長範囲を選択的に渡すように構成され得る。発光セレクタは、例えば、第1の波長範囲を第1の光学検出器に、そして第2の波長範囲を第2の光学検出器に渡すように構成され得る。
【0181】
特定の実施形態によると、励起発光セレクタは、励起光および放射光のうち一方を選択的に反射し、励起光および放射光のうち他方を選択的に透過させるように構成された、少なくとも1つの干渉(例えば、二色性)光学素子を備え得る。別の例として、発光セレクタは、第1の光学的に異なる発光範囲を選択的に反射し、そして第2の光学的に異なる発光範囲を選択的に透過させるように構成された、少なくとも1つの干渉(例えば、二色性)光学素子を備え得る。
【0182】
発光セレクタなどの光セレクタは、特定の実施形態によると、プリズムまたは格子などの分散素子を含有し得る。例えば、分散素子は、受信した放射光を分散させるように、また、放射光の第1の光学的に異なる部分を第1の光学検出器に向けて選択的に方向付け、そして放射光の第2の光学的に異なる部分を第2の光学検出器に方向付けるように構成され得る。特定の実施形態によると、第1の光学検出器および第2の光学検出器は、共通の多素子アレイ検出器の要素であり得、一方、その他の実施形態によると、第1の光学検出器および第2の光学検出器は、2つのフォトダイオードなど、個々の光学検出器であり得る。
【0183】
特定の実施形態によると、光セレクタは、回転フィルタホイールなどの可変光選択素子、または、複屈折可変フィルタなどのその他の可変フィルタを備え得る。典型的なフィルタホイールは、Heffelfingerによる米国特許第5,784,152号において開示されており、当該特許は本明細書中に参考として援用される。ColorLink,Inc.(コロラド州ボールダー)製のColorSelect(登録商標)は、様々な実施形態における使用に適合する可変フィルタ、特に複屈折可変フィルタの別の例である。
【0184】
特定の実施形態によると、本発明による光学系は、少なくとも2つの光学フィルタを備える回転発光フィルタホイールと、光学フィルタに関連付けられたインデックス特徴と、回転発光フィルタホイールの角度位置を検出するように構成されたインデックス位置センサと、回転発光フィルタホイールを回転させるように構成されたモーターとを含み得る。例えば、少なくとも3つの光学フィルタが存在し得る。別の例として、5つ以上の光学フィルタが存在し得る。例えば、特定の実施形態によると、回転発光フィルタホイールは、サンプル基板から受信した放射光の少なくとも5つの異なる波長範囲を、光学検出器に、選択的にかつ順次に方向付けるように構成され得る。光学フィルタホイールは、10ミリ秒〜0.1秒など、10ミリ秒から2秒の、位置から位置までの時間(修正を含む)のような異なる速度で動作するように構成され得る。
【0185】
特定の実施形態によると、回転フィルタホイールは、発光セレクタとして、多数の異なる発光波長範囲を同時処理するために使用され得る。したがって、例えば第1の光学フィルタは、サンプル基板から受信した放射光の第1の選択された波長範囲を(例えば、反射によって)第1の光学検出器へ選択的に方向付け、そしてサンプル基板から受信した放射光の第2の選択された波長範囲を(例えば、透過によって)第2の光学検出器へ選択的に方向付けるように構成され得る。フィルタホイール上のさらなる光学フィルタも同様に、2つの異なる波長範囲を、一方は例えば反応によって、もう一方は例えば透過によって、同時に方向付けるように構成され得る。
【0186】
特定の実施形態によると、光学系は、LEDとサンプル基板との間に光学的に位置付けられる、可変フィルタまたはモノクロメータなど、所望の波長範囲の励起光をサンプル基板に向けて選択的に方向付けるように構成された、選択的な光学構成要素を含んでもよい。そのような選択的な光学構成要素は、機能的に、好ましくない励起光が検出器に向けて方向付けられないようにするために個別の異なる波長範囲をブロックするかまたは渡すものであるが、そのような構成要素は従来のフィルタ(例えば、ロングパス、バンドパス、ショートパス)に限られるものではなく、所望の機能を提供し得るその他の光学構成要素を含み得る。特定の実施形態によると、例として、回折構成要素および偏光依存性の構成要素を含み得る。
【0187】
構成要素は、第1の構成要素および第2の構成要素の間の光路が問題の光学構成要素を通過する、またはそこから離れる(例えば、反射する)場合、2つの他の光学構成要素(例えば、第1の光学構成要素および第2の光学構成要素)に「光学的に挟まれて」いるといわれる。したがって、光学構成要素は、これらの構成要素に「光学的に挟まれる」ために、その他2つの構成要素に物理的に挟まれている必要はない。
【0188】
特定の実施形態によると、光学系は、サンプル基板に方向付けられていない迷励起光を捕捉するように構成されたライトトラップを含んでもよい。ライトトラップは、例えば、励起発光セレクタを通過する迷励起光を捕捉するように位置付けられ得る。ライトトラップは、光がトラップから逃げるのを防止するために、吸収物質もしくはバッフル、またはその両方を任意で含み得る。
【0189】
ライトトラップは、迷励起光の少なくとも1つの光学特性を監視するように構成された光検出器など、さらなる要素を備えてもよい。例えば、フィルタ(例えば、帯域通過フィルタ)と連結された場合などに、全強度またはある波長の強度もしくはある波長範囲の強度を監視し得る。したがって、特定の実施形態によると、ライトトラップ中(またはビーム経路中の他の場所)の光学検出器は、励起源の温度依存光学特性(例えば、強度またはスペクトル)を監視するための温度センサとして機能し得る。この構成の利点は、サンプル基板に照射するよう意図された光に干渉することなく、またはそれを損ねることなく、励起光強度を監視し得る点である。
【0190】
(低質量走査ヘッドおよび走査方法) 特定の実施形態による光学系は、低質量走査ヘッドを含む。本明細書において使用する場合、「低質量走査ヘッド」は、サンプル基板に対して走査するように構成されたユニットを意味すると理解され、ここでユニットは、走査が比較的速い速度で発生するような低慣性質量を有する。特定の実施形態によると、低質量走査ヘッドは、比較的低い質量を有し、かつ/ならびに比較的高速および/または高加速用に構成された走査ヘッドを伴い得る。「低質量」走査ヘッドはさらに、その質量が比較的低減されるように低減した数の構成要素を含有する走査ヘッドに言及するものであると理解される。さらなる構成要素は、例えば、関連した固定光ヘッドに含まれてよい。
【0191】
例えば、従来の光ヘッドは、光源(LED)および検出器の両方が走査される場合、2,200グラムの質量および3.2m/s
2の加速度を有する。それに対して、同じ構成要素を使用するが、光学検出器は固定ヘッド内にあり、光源(LED)は走査される低質量走査ヘッド内にあり、固定および走査される光ヘッドは光ファイバを介して接続されている、低質量システムでは、低質量走査ヘッド質量は800グラムであり、8.8m/s
2の加速度を有する。さらなる比較として、同じ構成要素を使用するが、光学検出器および光源(LED)がいずれも固定ヘッド内にあり、走査される低質量光ヘッドは光ファイバを介して固定光ヘッドに接続されている、低質量システムでは、低質量走査ヘッド質量は500グラムであり、14m/s
2の加速度を有する。
【0192】
低質量走査ヘッドは、例えば、走査されている低質量に基づく動作中の機器振動の低減、より大きい加速または速度により可能となるより短い走査時間、またはそれらの任意の組み合わせなど、その他の利益または特徴を提供し得る。さらに、低質量走査ヘッドは、より小さいモーターおよびドライブドレインによって作動され得、これらはいずれも機器設置面積全体の縮小および潜在的なコスト削減にも寄与する。
【0193】
特定の実施形態によると、低質量走査ヘッドは、少なくとも1つの光ファイバの近位端を含み得る。低質量走査ヘッドは、サンプル基板に対して走査すること、励起光をサンプル基板に向けて方向付けること、サンプル基板から放射光を収集すること、放射光を近位端に向けて方向付けることを含む1つ以上の機能を提供するように構成され得る。遠位端および近位端を有する光ファイバは、放射光をその近位端から遠位端へ伝導するように構成され得る。
【0194】
特定の実施形態によると、光学系は、固定光ヘッドを含んでもよい。固定光ヘッドは、サンプル基板に対する走査用に構成されている必要はない。したがって、固定光ヘッドは固定位置に維持され得、その質量は関連のいかなる走査速度にも影響を及ぼさない。
【0195】
固定光ヘッドは、例えば、光ファイバの遠位端と、第1の光学検出器および第2の光学検出器などの1つ以上の光学検出器とを含み得る。そのような実施形態によると、機能的に、固定光ヘッドは、放射光を光ファイバの遠位端から光学検出器に向けて方向付けるように構成され得る。
【0196】
複数の走査ヘッドを使用してもよい。例えば、固定および走査光ヘッドの複数の対が存在し得る。各対は、例えば、異なる励起源を有すること、または異なる発光波長を選択するように構成された発光セレクタを有することによって、例えば異なる光学符号定数を検出するように構成され得る。光学走査ヘッドの対は、光学的に互いに同じまたは同様に構成されてもよいし、例えば全体の走査速度を増加させるために、基板上の異なる場所を走査するように構成されてもよい。単一の固定光ヘッドに関連付けられた複数の走査光ヘッドがあってもよく、逆に、単一の走査光ヘッドに関連付けられた複数の固定光ヘッドがあってもよい。
【0197】
(実施例7)
いくつかの実施形態による低質量走査ヘッド構成では、励起源は、低質量走査ヘッドもしくは固定光ヘッドのいずれか、または複数の励起源が使用される場合にはその両方に位置付けられ得る。例えば、低質量走査ヘッドは、LEDを含み得る。低質量走査ヘッドは、励起発光セレクタを含んでもよい。低質量走査ヘッドがLED610と励起発光セレクタ616との両方を含む、典型的な低質量走査ヘッドシステム600を、
図6に示す。
【0198】
システムは、固定光ヘッド(図示せず)および走査光ヘッド660を含む。前記光ヘッドは光ファイバ650を介して光学的に接続されており、単一の光ファイバ、または光ファイバの束であってもよい。放射光は、レンズ646を介して光ファイバ650の近位端へ集束される。光ファイバ650の遠位端から固定光ヘッドへ出現する放射光は、本明細書の他の部分でも述べているように、1つ以上の検出器に方向付けられる前に、例えば1つ以上のレンズを介してコリメートされ得る。前記LED610は、電気的接続652を介して、例えば静止PCBボードまたは制御/読み取り装置に対して電気的に制御され得る。電気的接続652は、もしあれば熱制御システムを動作する、または、もしあれば温度センサから信号を伝送するなど、その他の機能にも使用され得る。固定光ヘッドにおける放射光の選択および検出のための光学は、例えば本明細書において述べているように、励起発光セレクタに続いて、放射光用に構成され得る。
【0199】
動作中、LED610から放出された光は、レンズによってコリメートされ、励起発光セレクタ616への通路上の発光波長を狭めるために、フィルタ636を通過し得る。励起発光セレクタ616は、励起光のうち少なくともいくらかをサンプル基板640の方へと反射させ得、当該励起光は、レンズ642によって焦点を合わせられ、カバープレート612を通過する。サンプル基板640からの放射光は、レンズ642によって収集され、固定光ヘッドへの通路において、光ファイバ650の近位端にレンズ646によって焦点を合わせられる前に、励起発光セレクタ616を通過するように方向付けられる。
【0200】
(実施例8)
特定の実施形態による低質量走査ヘッド構成では、固定光ヘッドは、LEDまたはその他の励起源を含み得る。LEDを含有する固定光ヘッドは、励起光を光ファイバの遠位端に方向付けるように構成され得る。これらの実施形態によると、光ファイバは、励起光をその遠位端からその近位端に方向付けるように構成され得、低質量走査ヘッド(近位端を含む)は、光ファイバ近位端からの励起光をサンプル基板に向けて方向付けるように構成され得る。
【0201】
図7に示すように、固定光ヘッド(図示せず)が、少なくとも1つのLEDおよび光学検出器、ならびにその他任意の構成要素(例えば、光学部品、電子部品、および/または熱部品)を含む、低質量走査ヘッドシステム700が存在し得る。特定の実施形態によると、励起源が固定ヘッド内にある場合、白色光源(例えば、ハロゲンランプ)および狭帯域源(例えば、レーザー)などの、代替の励起源が、LEDの代わりに、またはそれに加えて使用され得る。固定光ヘッドからの励起光は、1つ以上のレンズなどを介して、光ファイバ650の遠位端に焦点を合わせられる。ファイバ650の近位端から抜け出た励起光は、レンズ646によって収集およびコリメートされ、レンズ642によってサンプルに向けて焦点を合わせられる。レンズ642はサンプルからの放射光を収集およびコリメートし得、次いでレンズ646は、固定光ヘッド内の検出器に透過して返すために、光ファイバ650に放射光の焦点を合わせる。
【0202】
(実施例9)
特定の実施形態によると、収集された放射光のスペクトル特性を計測するように構成された分散型分光器を含む検出器アセンブリまたは固定光ヘッドを有する光学系が存在する。そのような分散型分光器は、例えば、収集された放射光のスペクトル構成要素を空間的に分散させるように構成された分散素子を含み得る。分散型分光器は、例えば、スペクトル的に分散された放射光の範囲を一斉に計測するように構成されたアレイ検出器など、1つ以上の検出器を含んでもよい。別の例として、分散型分光器は、分散された放射光の異なるスペクトル構成要素を検出器へ順次に方向付けるため、可動スリットまたはミラーなどの選択素子を含んでもよい。
【0203】
検出器アセンブリ分散分光器の1つの具体的実施形態を
図8において提供する。図示された実施形態は、固定光ヘッドにおける典型的な分散型分光器構成要素880、882、884、および励起源610を示すが、本発明によるシステムおよび方法のすべての実施形態によってこれが必要とされるわけではない。例えば、分散型分光器および励起源はいずれも走査される光ヘッド内に含まれてよい。別の例として、分散型分光器は、走査光ヘッド内に励起源を持つ、固定光ヘッド内にあり得る。
【0204】
光学系800について
図8で図式的に示すように、分散型分光器は、放射光890を受信し、それを複数のスペクトル的に異なる構成要素892、894に分散させるように構成された、透過型回折格子などの分散素子880を含む。特定の実施形態によると、反射格子および屈折素子、例えばプリズムを分散素子として使用してもよい。集束レンズ882は、スペクトル的に分散された放射光892、894の焦点を、多素子光学検出器884の異なる場所に合わせる。
【0205】
(走査構成および方法)
様々な実施形態によると、サンプル基板に対する光学装置の走査は、サンプル基板上において、複数のサンプルウェルなど、複数の場所を順次調査するために実行され得る。特定の実施形態によると、走査は、相対直線XおよびY運動により遂行される。特定の実施形態によると、走査は、相対角運動を伴い得る。特定の実施形態によると、走査は、相対角運動と直線運動の組み合わせを伴い得る。
【0206】
この文脈において、相対運動は、光学装置およびサンプル基板のうち少なくとも1つが、それらの位置が互いに相対して変化するように移動されることを意味すると理解される。例えば、光学装置間の相対運動またはサンプル基板に対する光学装置の走査は、光学装置の動きを伴い得、このときサンプルは光学的に固定された位置のままである。また、サンプルの動きを伴い得、このとき光学装置は光学的に固定された位置のままである。別の例として、光学装置とサンプル両方の運動を組み合わせたものを伴い得る。
【0207】
例えば、特定の実施形態によると、走査は、相対直線運動およびサンプル基板の表面にほぼ垂直な回転軸周囲での相対角運動によって遂行され得る。この文脈において、ほぼ垂直とは、機能的に、回転運動により走査ヘッド光学装置の焦点を再び合わせる必要がないよう、走査ヘッドが表面の平面から十分に等距離のままであることを意味する。したがって、特定の実施形態によると、回転軸はサンプル平面に対し完全に垂直に配列され得るが、特定の実施形態によると、前記走査ヘッド光学装置が依然として所望の機能を提供し得る限り、垂直からのいくらかの偏差が許容されている。
【0208】
特定の実施形態によると、回転軸は、サンプルの第1列を持つ光学系を整列させるために使用され得る。直線軸は、サンプルの第1列上を走査するように移動し得る。直線走査は、例えば、一定速度であり得る。回転軸は、直線動作中は代表的には固定されたままとなるが、サンプルに対する光学装置の光学的配列を最適化するために調節され得る。第1列が完了すると、回転軸はサンプルの次の行に整列し、続いてその位置を保持する。既に述べたように、直線軸は走査され得、そのプロセスはサンプルを完全に調査してしまうまで繰り返される。1つの代替として、表面を走査するために、直線運動と角運動の両方を同時に使用してもよい。
【0209】
走査サイクルは、例えば時刻T
0から始まり、最終時刻T
fで終了する。サイクルが完了するまでの期間は、セット内のウェルの数(例えば96)、セットの各ウェルを検出器の下に置くために必要な時間、各ウェル内のスペクトル的に識別可能な種からの信号を検出および計測するために必要な時間、1つのウェルから次のウェルへ移動するために必要な時間、および、ウェル内の反応が発生するための時間を含むがこれらに限定されない、多くの要因に応じて変動し得る。いくつかの局面によると、反応の実行時間は、スペクトル的に識別可能な種が計測されると同時に各ウェルの温度を較正することによって削減され得る。この温度較正により、データ保全性に影響を及ぼすことなく、反応の実行時間を低減させ得る。
【0210】
特定の実施形態によると、第1のウェルから第2のウェルの信号を計測する間の期間は、約30秒未満、例えば約20秒未満であり得、さらなる例として、約5秒未満であり得る。セットの各ウェルからの信号が計測されると、別のサイクルが開始される。
【0211】
サイクルの経過において、温度は上昇および/または低下し得る。例えば、複数のウェルのセットの各ウェルは、スペクトル的に識別可能な種からの信号が第1のサイクルにおいて計測された際、例えば60℃などの同じ温度を有し得る。各ウェルからの信号が計測された後、温度は、例えば変性温度まで上昇した後、低下し得る。しかしながら、後続の各サイクルについて、セットの各ウェルからの信号は、第1のサイクルと同じ温度で読み出され得る。例えば、第1のサイクル中のすべてのウェルが約60℃であれば、データを損なわないように信号を読み出す際、後続の各サイクルについてすべてのウェルが約60℃であるはずである。
【0212】
あるPCRアプリケーションを含む様々な局面において、例えば、セットのウェル#1は、その信号を計測した際に第1の温度を有し得る。第1の温度は、DNAのアニール温度を超えるか、または等しくてよい。サーマルサイクラーブロック1の温度は、ゆっくりと上昇し、任意で一定時間保持され得、それによりセットのウェル#2は、その信号を計測した際に、ウェル#1よりも高い温度を有する。別の実施形態において、温度は、例えば1つの温度が一定時間保持されないように、長時間にわたって直線関係でゆっくり上昇し得る。いくつかの局面において、サイクルの経過中、温度は約60℃から約95℃の範囲であり得る。例えば、第1のサイクルにおいて、ウェル#1は約60℃の温度を有し得、ウェル#2は約61℃の温度を有し得る。後続の各サイクルについて、サーマルサイクラーブロックの温度は、ここでもウェル#1が約60℃の温度を有し、ウェル#2が約61℃の温度を有するように、較正され得る。後続の各サイクル中、各ウェルの温度が実質的に第1サイクル中のものと同じである限り、各ウェルの特定の温度は、第1のサイクルには重要でない。走査速度における変動は、本明細書中に参考として援用される、Tor
Slettnesに対する米国特許第6,040,586号によるものなどの様々なやり方で、補償または把握され得る。
【0213】
(実施例10)
図9において示すように、2次元表面は、単一の回転軸周囲での回転を直線軸走査と組み合わせることによって効果的に走査され得る。
図9aにおいて、図示されているスキャナは、軸L102を持つ回転アーム1020を有する。回転アーム1020は、回転型アクチュエータ1022を介して線スキャナ1010に付着される。線スキャナ1010は、単一の直線軸L101を走査するように構成される。図示するように、回転型アクチュエータ1022は、サンプルの平面にほぼ垂直となるように、アクチュエータ1022の中心周囲で、紙の平面に垂直な軸の周囲を回転する。回転型アクチュエータ1022の回転運動を線スキャナ1010の軸L101に沿った直線運動と組み合わせることにより、サンプル基板640上のいかなる場所、特にいかなるサンプルウェル608でも、光学系1024で調査し得る。例示目的のために、回転アーム1020を2つの異なる位置で示す。さらに、特定の構成によると、複数の回転アームおよび回転型アクチュエータが存在し得、それぞれ少なくとも1つの関連する光学系を有し、各アームは基板を走査するよう構成される。
【0214】
特定の実施形態によると、光学系1024は、例えば、本明細書で述べているように、熱補償の有無にかかわらず、LEDベースの走査ヘッドであり得る。したがって、例えば、これも本明細書において述べているように、低質量走査ヘッドであってもよい。
【0215】
図9b、
図9cに示すように、リニアアクチュエータ1010は、とりわけ、ステッパモータ1025およびベルトドライブ1026からなり得る。ステッパモータアクチュエータは、例えばNEMA17アクチュエータであり得る。ベルト1026は、ステッパモータ1025とスプリングベースのアイドラ巻き取りアーム1030との間を接続する。アクチュエータ1025を作動させた際、ベルトドライブ1026に動作可能なように接続されたプラットフォーム1032は、銅、プラスチック、またはその他の機能的に適合する物質であり得るブッシング1028上を移動しながら、軸L101に対して平行に移動する。回転型アクチュエータ1022はプラットフォーム1032に載置され、また軸L101に対し平行に移動される。回転型アクチュエータ1022もまた、例えばNEMA17アクチュエータであり得、その中心軸周囲を回転し、アーム1020および光学系1024を、基板640上の様々なウェル608から一掃するか、またはそれに対して整列させる。回転型アクチュエータ1022は調節され、アーム1020の長手方向軸L102は、基板640の2次元走査用の共通平面にあるままであるが、直線軸L101に対して異なる角度に移動される。
【0216】
したがって、例えば、光ヘッド1024をウェル608alの周囲に置くために、線形および回転型の調節の組み合わせを使用し得る。次いで直線軸は、ウェルal〜al2が走査されるように、走査され得る。線形および回転型の調節の組み合わせは、続いて光ヘッド1024をウェル608bl2の上に置くために使用され得、次に、直線軸を走査することにより、サンプル行bを走査し得る。
【0217】
(実施例11)
特定の実施形態によると、走査は、サンプル基板の表面にほぼ垂直な、個別の異なる回転軸周囲における、2つの相対角運動によって遂行され得る。スキャナは、光学装置を2次元表面にわたって移動させるために2つの回転軸スキャナを含む。例えば、第1の回転軸(「肩」回転)は、機器台に載置され、第2の回転軸(「肘」回転)は、第1の回転軸に接続されたアームに載置される。特定の実施形態によると、回転軸スキャナの一方または両方は直接駆動アクチュエータであり得、したがってギアおよびプーリーシステムを回避し得る。両方の回転運動の連携により、直線走査または点から点への運動を実現し得る。
【0218】
例えば、
図10に示すように、第1の回転(肩)軸と、それに接続されたアーム1110(肩アーム)の一端を有するアクチュエータシャフト1124を持つ肩アクチュエータ1123とがある。肩アクチュエータ1123は台1126に固定され、
図10cに示すように、そのアクチュエータシャフト1124をその中心軸A111の周囲で、また
図10a、
図10bのページの平面に垂直に、回転させるように構成される。関連する肩アーム1110の長手方向軸L112は、
図10a、
図10bのページの平面に平行に回転し得るよう、肩アクチュエータ回転シャフト1124に接続される。
図10bに示すように、肩アーム1110の長手方向軸L112は、走査するか、または基準線L111に対して、25.3°、42.4°、および61.3°などの様々な角度に設定され得る。
【0219】
肩アーム1110の第二端に付着されているのは、第2の回転(肘)軸、および肘アクチュエータシャフト1122を持つ肘アクチュエータ1128であり、アーム1120(「肘アーム」)の一端はそれに接続されている。肘アクチュエータ1128は、肩アーム1110の第二端に接続され、そのシャフト1122を、
図10cに示すようなその中心軸A112の周囲で、また
図10a、
図10bのページの平面に垂直に、回転させるように構成される。肘アーム1120の長手方向軸L113は、
図10a、
図10bのページの平面と平行に回転し得るように、肘アクチュエータ1122に接続される。
図10bに示すように、肘アーム1120の長手方向軸L1113は、走査するか、または肩アーム1110の長手方向軸L112に対して様々な角度(例えば、86.6°、92.2°、および86.6°)に設定され得る。回転運動は、2次元サンプル基板全体にわたって、直線走査、PTP走査、またはその他任意の走査もしくは運動を実現するために調整され得る。
【0220】
図10cに示すように、走査システムは、肘アクチュエータ用のホームポジションセンサ1132、ならびに肩アクチュエータおよび肩アーム用の肘アームおよびホームポジションセンサ1134など、ホームポジションスイッチまたはセンサを含んでもよい。これらの、またはその他の追跡または監視装置は、表面に対する走査ヘッドの位置を追跡するために使用され得る。
【0221】
例えば、走査を行う前に、走査ヘッドはホームポジションへ、またはそれを経由して移動し得る。後続の運動(サンプル基板に対する走査など)の後の走査ヘッドの位置は、線形または回転型アクチュエータを作動させるなどにより、走査ヘッドの位置を追跡し得るようなホームポジションを基準とし得る。したがって、回転型アクチュエータが走査ヘッドを回転させる際、ステッパモータ回転型アクチュエータおよびシステムの形状により特定されるステップの数により、位置を追跡してもよい。当然ながら、アクチュエータに統合された位置センサ(例えば、ロータリエンコーダ)など、さらなる位置センサを追加でまたは代わりに使用してもよい。別の例として、サンプル基板に対する走査ヘッド位置の追跡は、走査の前に計算され得、走査時間(またはその他のパラメータ)を走査位置と相関させる、システム較正に(全体的または部分的に)基づいて遂行され得る。
【0222】
走査ヘッドの追跡された(後に計算されることを含む)位置に基づいて、検出データは、検出データを各サンプルウェルに関連付け、割り当てるために、様々なサンプルウェルなどの表面上の様々な領域に関連付けられる。較正は、制御信号に対するアクチュエータの位相のずれなど、その他の要因を考慮に入れてもよい。
【0223】
(実施例12)
様々な走査ルーチンが可能であるが、1つの典型的な走査ルーチンは、直線走査である。例えば、低デューティサイクルの回転型調節と組み合わせた高デューティサイクルの線走査は、効率的な直線走査に使用され得る。別の例として、直線走査は、2つのほぼ垂直な線スキャナによって遂行され得る。
【0224】
低デューティサイクル回転型調節と組み合わせられた高デューティサイクル線走査を持つ直線走査の例として、
図9に示すように、スキャナは、ウェル608al(すなわち、列a、行1)を基点として、回転型アクチュエータ1022およびリニアアクチュエータ1010の予備調節から始めるように構成され得る。スキャナは、次いで、描写されているように、L101に平行なウェルを、列の終わり、すなわちウェル608al2まで、線形に走査するように構成され得る。線走査は、例えば一定速度に維持され得る。次いで回転アーム1020は、光学系1024を列bのウェルの中心に合わせて配列するために回転型アクチュエータ1022によって調節され、この角度位置を保持され得る。走査は、次にウェル608bl2から始めて当該列の第1のウェルまで行われ得る。走査は、次いでウェルの残りの列を同様の方式で上下して継続し得る。各列の始めまたは終わりにおいて、プラットフォーム1032の線形位置は、シータの変化によるサイン変動を把握することによって列内に第1または最後のウェルを持つ光学系1024の配列を最適化するために、L101に平行な線形調節を必要とし得る。
【0225】
(実施例13)
別の例として、走査は、逐点方式で達成することが可能である。例えば、走査ヘッドは、第1のサンプルウェルおよび光学的に調査されたサンプルウェル上に配列することが可能である。次に、走査ヘッドは第2のサンプルウェルの上に配列され、そのサイクルは所望のサンプルウェルがすべて調査されるまで繰り返される。そのような逐点は、特定の実施形態によると、調査する各ウェル上において、ある位置からの走査ヘッドの比較的速い動きと、次の位置への比較的遅い動きによって、あるいは、動きのない特定された滞留時間とによっても、遂行され得る。特定の実施形態によると、逐点は、表面に対する走査ヘッドのほぼ連続的な運動を伴い得る。
【0226】
逐点走査の例として、2軸回転スキャナの回転運動両方の連携により、線走査または点から点への運動を実現し得る。例えば、
図11bに示すように、検出光学装置1024を含有し得る肘アーム1120は、肩回転軸1124および肘1122回転軸からの角度の組み合わせに基づいて、3つの異なるサンプルウェル608上の3つの異なる位置に示されている。図示するように、第1の回転軸が25.3°であり第2の回転軸が86.6°である場合、第1のウェルを調査し得る。第1の回転軸が42.4°であり第2の回転軸が92.2°である場合、第2のウェルを調査し得る。同様に、第1の回転軸が61.3°であり第2の回転軸が86.6°である場合、第3のウェルを調査し得る。
【0227】
当業者には、本明細書の考察および本明細書において開示した様々な実施形態の実践より、その他の実施形態が明らかである。本明細書および実施例は、典型的なものとしてのみ見なされることを意図するものである。