特許第6050532号(P6050532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050532
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】縁に傾斜を有する杓子
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/28 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   A47J43/28
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-35152(P2016-35152)
(22)【出願日】2016年2月26日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3183904号
【原出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-116935(P2016-116935A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年2月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン販売
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3146043(JP,U)
【文献】 特開2012−120813(JP,A)
【文献】 特開2011−004803(JP,A)
【文献】 特開平04−020312(JP,A)
【文献】 特開2012−90931(JP,A)
【文献】 特開2007−195645(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3047175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掬い部を備える杓子であって、前記掬い部の窪み側の縁である内周縁と前記掬い部の窪みの外側の縁である外周縁とがなす略平面であって、前記掬い部の小口を示す縁面を有し、
少なくとも前記掬い部の先端部の前記縁面は、前記掬い部の内側に傾斜していることを特徴とする杓子。
【請求項2】
請求項1に記載の杓子であって、
前記掬い部の周囲の前記縁面が前記掬い部の内側に傾斜していることを特徴とする杓子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の杓子であって、
前記縁面は、前記掬い部の外周縁を含む平面に対して少なくとも5度傾斜していることを特徴とする杓子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の杓子であって、
前記縁面の少なくとも一部において、前記掬い部の内周縁と前記掬い部の外周縁との距離が少なくとも0.5cmであることを特徴とする杓子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の杓子であって、
前記掬い部のうち前記先端部を含む三分の一の領域が、前記掬い部のうち他の部分よりも厚く形成されることを特徴とする杓子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の杓子であって、
前記掬い部に貫通孔を備えることを特徴とする杓子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の杓子であって、
少なくとも前記掬い部をナイロン樹脂で形成した
ことを特徴とする杓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杓子に関する。
【背景技術】
【0002】
杓子は従来、台所用具として用いられ、汁物を掬ったり、炒め物をする際に食材をかき混ぜたり等の調理に利用されている。杓子は半球状の掬い部を備え、掬い部に長い柄が接続されている。杓子の形状は多様であり、掬い部の縁がなす略円形の平面に対して柄が略垂直に接続されるものや、掬い部を浅く形成し、柄と掬い部のなす角度が直角よりも広くなるよう形成した杓子が普及している。
【0003】
掬い部の縁のうち、柄が接続されている部分の縁と対称の位置にある部分の縁(以下、作用部とする)に繋がる内周縁を緩やかな角度に形成することで、炒め物の際に、掬い部の縁に食材が貼り付いたまま残存することを防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−195645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示された玉杓子は、掬い体に柄体が連結される玉杓子にあって、該掬い体に中凹み形状の本体部を設け、且つ、該本体部が、剛性を有し中凹み形状を保持できる保形部と、少なくとも外周縁を含む一部の領域で可撓性を有し弾性変形が可能な弾性部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
ところで、味噌汁などの汁物や、シチューなどの半流動状の食材等を掬う場合に、作用部の縁から食材が流れ落ち、食器や作業台を汚すことがよくある。特に、作用部の内周縁を緩やかな角度で形成すると、杓子を鍋の上から作業台又は食器上まで移動させる間に、掬い部がわずかに傾くだけで、作用部の縁から食材がこぼれてしまう。特許文献1の杓子においても、この問題は解決されていない。
【0007】
図6は、従来の杓子を説明するための図である。図6(a)及び図6(b)は、杓子50について、柄を右方向に置いた場合の断面図である。
【0008】
図6(a)において、従来の杓子50は掬い部51を備える。掬い部51は、縁面52を備える。掬い部51に、液状又は半流動状の食材γを掬った場合、食材γの表面張力により、食材γは縁面52の上に盛られる形となる。
【0009】
この状態で、掬い部51がわずかでも傾けば、縁面52上の食材γは掬い部51の外側にこぼれてしまう。
【0010】
また、杓子50に掬った食材を盛り付けたり、移し替えたりする際にも問題がある。図6(b)は、食材γを掬った杓子50が傾いた状態を示す図である。
【0011】
食材γは、一部が掬い部51の内側の壁面に沿って勢いを得、慣性の法則に従って斜め方向εへ流れ、そのまま下方へ落ちる。また食材γの一部は、掬い部51の外側の壁面をつたって方向σへ流れ落ちる。食材γが流れ落ちる方向が様々であるため、食材γはそれぞれがぶつかり合い、ちりぢりに分かれて、音を立てて流れ落ち、しぶきが上がり、周りに飛び散る。
【0012】
なお、特許文献1に開示された玉杓子は、作用部を他の部分よりも薄く形成し、可撓性を持たせることで、鍋の内底にある食材を掻き集める。しかし、作用部が薄く形成されると、内周縁の角度によっては豆腐等の柔らかい食材に刺さり、食材を崩してしまう恐れがある。
【0013】
また、フライパンなどでの炒め物を混ぜる際に、先端が薄いと、熱での溶解やすり減りにより先端部が変形し、器具の寿命を短くする。
【0014】
図7は、従来の杓子50で豆腐を掬った状態の一例を示す図である。作用部が薄く形成されているため、縁面52が鋭角を形成し、豆腐に刺さって崩してしまう。
【0015】
本発明は、柔らかい食材を崩すことなく掬い、掬い部から食材が流れ落ちることを防ぐ杓子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る杓子は、掬い部を備える杓子であって、前記掬い部の窪み側の縁である内周縁と前記掬い部の窪みの外側の縁である外周縁とがなす面であって、前記掬い部の小口を示す縁面を有し、少なくとも前記掬い部の先端部の前記縁面は、前記掬い部の内側に傾斜していることを特徴とする。
【0017】
また、当該杓子は、前記掬い部の周囲の前記縁面が前記掬い部の内側に傾斜していることを特徴としてもよい。
【0018】
また、前記縁面は、前記掬い部の外周縁を含む平面に対して少なくとも5度傾斜していることとしてもよい。
【0019】
また、当該杓子は、前記縁面の少なくとも一部において、前記掬い部の内周縁と前記外周縁との距離が少なくとも0.5cmであることであることを特徴としてもよい。
【0020】
また、当該杓子は、前記掬い部のうち前記先端部を含む三分の一の領域が、前記掬い部のうち他の部分よりも厚く形成されることとしてもよい。
【0021】
また、当該杓子は、前記掬い部に貫通孔を備えることとしてもよい。
【0022】
また、当該杓子は、少なくとも前記掬い部をナイロン樹脂で形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、柔らかい食材を崩すことなく掬い、掬い部から食材が流れ落ちることを防ぐと共に、先端部の変形による器具の劣化を防ぐ杓子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明における杓子の外観を示した図である。
図2】掬い部の断面形状を示す図である。
図3】掬い部に食材を掬った状態を説明するための図である。
図4】杓子の使用例を示す図である。
図5】本発明の変形例の外観を示す図である。
図6】従来の杓子を説明するための図である。
図7】従来の杓子で豆腐を掬った状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明における杓子の外観を示した図である。杓子1は、掬い部11、柄12を備える。掬い部11は、中央が窪んだ形状をしており、作用部13、内周縁14、外周縁15、縁面16を備える。掬い部11の先端の部分が作用部13である。掬い部11の窪み側の縁が内周縁14、掬い部11の窪みの外側の縁が外周縁15である。内周縁14と外周縁15とがなす面が縁面16である。
【0026】
杓子1はナイロン等の合成樹脂からなり、掬い部11と柄12とが一体成型されている。掬い部11は涙型の形状をしており、水滴の尖った方向を背側、膨らんだ方向を腹側とすると、背側の部分を斜め上方又は上方に突設させて柄12を形成している。
【0027】
掬い部11は浅底の半球状に形成される。掬い部11の円弧部分を下側とした場合、掬い部11の背側であって、下側の円弧形状の接線方向に延出した形で柄12が形成される。
【0028】
外周縁15は掬い部11の外側の半球形状の稜線であり、内周縁14は掬い部11の内側の稜線である。外周縁15と内周縁14とで縁面16を構成する。つまり、縁面16は掬い部11の厚みからなる面である。掬い部11の縁は略平面であり、手になじむよう若干の丸みを帯びているが、ここでは説明の関係上、縁面16は外周縁15と内周縁14とを含む平面であると定義する。
【0029】
詳しくは後述するが、本発明は、掬い部11の先端の作用部13において、外周縁15と内周縁14とで厚みを形成し、外周縁15よりも内周縁14の高さが低くなるよう構成する。この構成により、掬い部11の縁上に液状又は半流動状の食材が乗ってしまうことを防ぐことができる。
【0030】
なお、掬い部11が背側に向かうにつれて、外周縁15と内周縁14の高さの差がなくなり、また外周縁15と内周縁14との距離が狭くなる。つまり、縁面16の幅が漸次狭くなる。従って、掬い部11の縁部分が形成する厚みが薄くなり、柄12に滑らかに連続するよう形成することが望ましい。
【0031】
また、杓子1は、ナイロン樹脂とエラストマー等、耐熱性のある合成樹脂により二重成形したものを示すが、組合せ接合しても良い。また、ナイロン樹脂やシリコン、エラストマー樹脂などの混合物により形成してもよい。さらに、木製や金属製であってもよい。柄の握り部と他の部分を別々に形成した後に、接着等で固定することとしてもよい。
【0032】
次に、掬い部11の構成について説明する。図2は、掬い部の断面形状を示す図である。図2(a)は、図1においてα―α´方向に掬い部11を切断した状態を示す。α―α´は作用部13を含む。
【0033】
掬い部11は、図2(a)において左側に示す腹側を、背側よりも厚くなるよう形成する。掬い部11全体のうち、少なくとも作用点13を含む腹側の三分の一が、残りの部分の厚みの平均値よりも厚くなるよう、掬い部11を形成する。
【0034】
また、作用部13において、外周縁15が内周縁14よりも高くなるよう形成する。掬い部11の円弧部分を下側とすると、内周縁14の方が外周縁よりも下側に近い部分に位置する。つまり、縁面16は掬い部11の内側に傾斜している。
【0035】
掬い部11の外周縁15を含む平面を平面δとすると、縁面16と平面δとは、角度θをなす。つまり、縁面16は、外周縁15がなす平面δに対し、角度θだけ掬い部11の内側に傾斜している。なお、実験を重ねた結果、角度θは5〜20度であることが望ましい。
【0036】
また、作用部13において、外周縁15と内周縁14との間の距離kは、0.4〜1cmであることが望ましい。
【0037】
付言するに、内周縁14と外周縁15との間隔、つまり縁面16の幅は、掬い部11の先端部である作用部13において最も大きくなる。また、内周縁14と外周縁15は掬い部11の背側に向かうにつれて滑らかに連続していくため、内周縁14と外周縁15とのなす角度θも、先端部である作用部13において最も大きくなる。
【0038】
図2(b)は、図1において掬い部11をβ―β´方向に切断した状態を示す。β―β´方向は、掬い部11と柄12との接続部分を12時とした場合に、3時―9時方向である。
【0039】
β―β´において切断した場合にあっても、内周縁14は外周縁15よりも低くなり、縁面16は掬い部11の内側に向かい傾斜している。なお、前述したように、内周縁14と外周縁15とは、掬い部11が柄12と接続する方向に向かうにつれて、高さの差がなくなり、柄12に滑らかに連続するよう形成する。
【0040】
図3は、掬い部11に食材を掬った状態を説明するための図である。図3(a)は掬い部11の外周縁15がなす平面に対して柄12が平行に近い角度で接続された場合の杓子1を示す。図3(b)は外周縁15がなす平面に対して柄12が垂直に近い角度で接続された場合の杓子1aを示す。
【0041】
液状又は半流動状の食材γは、掬い部11に掬った場合に、内周縁14から表面張力を形成する。縁面16に乗った食材γは、縁面16の傾斜によって内周縁14側へ流れ込むため、縁面16上に盛られることはない。このため、掬い部11を少々傾けても、食材γが掬い部11から流れ落ちることがなくなる。
【0042】
また、縁面16の縁幅が広いため、例えばシチューの汁が縁にかかり、こぼれ落ちるまでにタイムラグが生じる。操作者は縁面16にかかる汁を目視することで、杓子1の傾きに気づくため、このタイムラグの間に傾きを戻すことができる。つまり、食材をこぼす前に杓子1の傾きに気づきやすいため、食材をこぼしにくくなる。
【0043】
図4は、杓子1aの使用例を示す図である。図4(a)は、食材を掬った杓子1aが傾いた状態を示す。
【0044】
食材γを掬い部11から流出させる際、縁面16が掬い部11の内側に傾斜して形成されていると、食材γが縁面16に沿って滑らかな流れを形成する。食材γは掬い部11の内側の壁面に沿って斜め方向へ流れ落ちるが、縁面16の傾斜が掬い部11の内面の傾斜に滑らかにつながっていることにより、食材γの流れが阻害されず、食材γが様々な方向へ流れ落ちることを防ぐ。そのため、食材γはスムーズに掬い部11から流出し、意図しない方向へこぼれ落ちて周囲を汚すことが予防される。
【0045】
図4(b)は杓子1aで豆腐を掬った状態の一例を示す図である。内周縁14と縁面16とがなす角度が鈍角であること、縁面16に適度な幅があり、作用部13における掬い部11に厚みがあることや、縁面16の傾斜が掬い部11の内面の傾斜に滑らかにつながっていることにより豆腐の流れが阻害されず、豆腐が縁面16に刺さってくずれてしまうことを防ぐ。
【0046】
さらに、杓子1、1aによれば、炒め物をする際に、作用部13がフライパンの縁に擦れることが考えられるが、掬い部11の腹側を厚く構成することで、作用部13が摩耗しすり減ることを防ぐことができる。
(変形例)
【0047】
次に、本発明の変形例について説明する。図5は、本発明の変形例の外観を示す図である。変形例における杓子2の掬い部21は、貫通孔27を備える。
【0048】
掬い部21の外周縁25は、内周縁24よりも高くなるよう形成し、縁面26が掬い部21の内側に向かい傾斜するよう構成する。また、縁面26は作用部23において所定の幅を設けるよう形成する。このため、杓子2においても豆腐等の柔らかい食材を掬う際に、食材を崩すことを防ぐ。
【0049】
掬い部21に液状又は半流動状の食材を掬った場合に、液体が貫通孔26から流れ出て、個体が掬い部21に残るため、水分は掬わずに、柔らかい具のみを掬いたい場合に特に有用である。
【0050】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。本発明の構成要素は、発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0051】
また、各実施形態は、それぞれの特徴を組み合わせることができる。上述のいずれかの杓子が、他の実施形態の特徴を併せ持つものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:杓子、2:杓子、11:掬い部、12:柄、13:作用部、14:内周縁、15:外周縁、16:縁面、21:掬い部、23:作用部、24:内周縁、25:外周縁、26:縁面、27:貫通孔、50:杓子、51:掬い部、52:内周縁、53:外周縁、k:距離、γ:食材、δ:平面、θ:角度、ε:方向、σ:方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7