(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6050535
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】計測用ガーゼ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20161212BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61B5/10 300A
G01B11/24 K
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-46579(P2016-46579)
(22)【出願日】2016年3月10日
【審査請求日】2016年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505288686
【氏名又は名称】株式会社ネクステッジテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100169753
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 堪亮
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0094597(US,A1)
【文献】
特開昭58−149757(JP,A)
【文献】
特表2013−524919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A61B 5/11
A61L 15/00
G01B 11/25
G01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーゼ生地と、
前記ガーゼ生地の地の色と視覚上区別可能な色の特徴点を所定の間隔で縦方向及び横方向に複数配置して構成したマーカー部と、
を備え、
前記ガーゼ生地には、所定の間隔で着色した糸が織り込まれており、
前記着色した糸の交点が前記マーカー部を構成する前記特徴点である、
計測用ガーゼ。
【請求項2】
前記着色した糸は、前記ガーゼ生地に縦方向及び横方向に織り込まれている、
請求項1に記載の計測用ガーゼ。
【請求項3】
前記着色した糸は、前記ガーゼ生地に第1の斜め方向及び第2の斜め方向に織り込まれ
ている、
請求項1に記載の計測用ガーゼ。
【請求項4】
前記着色した糸として、所定の間隔で太い糸が織り込まれている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の計測用ガーゼ。
【請求項5】
前記着色した糸の色は緑色系統の色である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の計測用ガーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、計測用ガー
ゼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術において、体内の臓器のサイズを計測する際には、体の中に入れても問題ない医療用のメジャーを用いたり、開腹した体内を3次元カメラでスキャンしつつ対象の臓器を鉗子でなぞったりする必要があり、医師にかなり煩雑な操作が要求されるとともに、患者にかかる負担も大きいものであった。
【0003】
一方、外科手術の際には、乾燥の防止や出血を拭き取る等の目的で、従来から医療用ガーゼが用いられている。例えば特許文献1には、RFID(Radio Frequency Identification)タグを埋め込むことによって、手術の前後で枚数を迅速に管理でき、患者の体内に置き忘れる事故を防止できる医療用ガーゼが記載されている。しかし、ガーゼを臓器のサイズ計測に用いる技術は従来存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−15395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術でのサイズ計測は、操作が煩雑なだけでなく、立体形状の正確な計測が困難という問題もあった。例えば、3次元カメラで臓器の立体形状を測定する際には、臓器の輪郭を鉗子で正しくなぞっていく必要があり、このなぞり方の精度が悪いと、計測結果の精度も悪くなってしまっていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、3次元形状の正確なサイズを計測することができ
る計測用ガー
ゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る計測用
ガーゼは、
ガーゼ生地と、
前記
ガーゼ生地の地の色と視覚上区別可能な色の特徴点を所定の間隔で縦方向及び横方向に複数配置し
て構成したマーカー部と、
を備え
、
前記ガーゼ生地には、所定の間隔で着色した糸が織り込まれており、
前記着色した糸の交点が前記マーカー部を構成する前記特徴点である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3次元形状の正確なサイズを計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る計測用ガーゼの全体構成を示す図である。
【
図2】(a)は計測用ガーゼの被計測物の例を示す図で、(b)は計測用ガーゼを(a)に示す卵状の被計測物に密着させたときの特徴点の様子を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る計測用ガーゼの全体構成を示す図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る計測用ガーゼの全体構成を示す図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る計測用ガーゼの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る計測用ガーゼ10は、外科手術時に、体内の臓器に密着させるものである。
図1に示すように、計測用ガーゼ10は、通常のガーゼを構成する糸11以外に、着色した糸12が縦方向及び横方向にメッシュ状に織り込まれており、縦方向に織り込まれた着色した糸12と横方向に織り込まれた着色した糸12の交点である特徴点13が、一定の間隔(例えば1cm間隔)で縦横に複数配置された構成になっている。この複数の特徴点13が、対象物を計測する際のマーカー部として機能する。
【0012】
着色した糸12の着色に用いる色は、外科手術で利用することを想定して、緑色系統の色(内臓、血液などの赤系統に反する色)とするのが好ましい。ただし、カメラで特徴点13を識別可能に撮影できるなら、人間が識別可能な色でなくても良い。
【0013】
この計測用ガーゼ10を、サイズを測定したい物体(臓器等)に密着させてカメラで撮影すると、その撮影画像中の特徴点13の間隔は撮影した物体の立体形状に応じた間隔になる。例えば、
図2(a)に示すような卵状の物体の上に計測用ガーゼ10を密着させたときの特徴点13は、
図2(b)に示すように、カメラに近い部分の間隔は大きくなり、カメラから遠い部分の間隔は小さくなる。なお、
図2では特徴点13の間隔の変化を分かりやすく示すため、通常のガーゼを構成する糸11や、着色した糸12の記載は省略している。
【0014】
予め、キャリブレーションのために、所定の距離(例えば50cmの距離)から計測用ガーゼ10をカメラで撮影し、その撮影画像中の特徴点13の配置間隔を取得しておくことにより、キャリブレーション時の特徴点13の画像中での間隔と、実際に物体に計測用ガーゼ10を密着させて撮影した時の特徴点13の画像中での間隔と、の比から、各特徴点13がどれだけカメラに近づいているか(つまり撮影した物体の立体形状における高さ)を算出できる。また、各特徴点13は一定の間隔で縦横に配置されているので、特徴点13の縦方向の個数で縦方向の長さを、横方向の個数で横方向の長さを測定できる。
【0015】
なお、計測用ガーゼ10の布地が伸縮すると、測定精度に悪影響を与えるため、計測用ガーゼ10は伸縮しない織り方になっている必要がある。計測用ガーゼ10を縦方向や横方向に引っ張ったときの伸
び率は所定の閾値(例えば3%)以下であることが望ましい。
【0016】
(第2の実施形態)
測定精度は特徴点13の間隔に依存するため、高い測定精度が必要な場合のために、第2の実施形態として、着色した糸12の間隔を細かくした計測用ガーゼ20を説明する。計測用ガーゼ20は、
図3に示すように、計測用ガーゼ10と比較して着色した糸12が縦横とも二倍用いられ、その間隔は計測用ガーゼ10の半分になっている。そして、特徴点13の認識精度を高めるために、着色した糸12は、一定間隔(
図3では3本に1本の割合)で太い線14によるメッシュの交点を生成している。
【0017】
この太い線14は、着色した糸12に使用する糸を太い糸にすることによって太い線14を生成しても良いし、着色した糸12を所定の本数束ねて使用することによって太い線14を生成しても良い。その他、視覚上太く見えるならば、どのような方法で太い線14を生成しても良い。
【0018】
図3では、計測用ガーゼ20は、着色した糸12の間隔は計測用ガーゼ10の半分になっているが、着色した糸12の間隔をもっと細かくしても良い。また、太い線14は
図3では着色した糸12の3本に1本の割合で存在しているが、この割合も任意に設定して良い。着色した糸12の間隔を細かくし過ぎると、カメラで撮影した時に、特徴点13をすべて認識することができない場合が生じてしまうことがある。しかし、確実に認識できる間隔で太い線14を配置することにより、少なくとも太い線14の間隔に基づく測定精度を確実に維持した上で、より細かい特徴点13によって、より高い測定精度を得ることができる。
【0019】
(第3の実施形態)
上述の実施形態では、着色した糸12が作るメッシュは、
図1及び
図3で示したような長方形の形状をしていたが、菱形の形状をしている第3の実施形態を説明する。第3の実施形態に係る計測用ガーゼ30は、
図4に示すように、着色した糸12が斜めに織り込まれて構成されている。
図4では太い線14が存在しているが、太い線14のない計測用ガーゼ30でも良い。計測用ガーゼ30では、菱形の頂点が特徴点13となる。
【0020】
計測用ガーゼ10,20は、縦や横方向の引っ張りに対しての伸
び率は小さいが、斜め方向の伸
び率を小さくできない場合がある。その点、計測用ガーゼ30は斜め方向の引っ張りに対しての伸
び率を小さくできる。したがって、測定したい物体に密着させたときに、縦横方向よりも、斜め方向に引っ張られる可能性が高い場合は、計測用ガーゼ30を用いることで高い測定精度を維持することができる。
【0021】
(第4の実施形態)
上述の実施形態では、着色した糸12の交点を特徴点13としていたが、第4の実施形態として、着色した糸12を織り込まない計測用ガーゼ40を説明する。第4の実施形態に係る計測用ガーゼ40は、
図5に示すように、単に複数の特徴点13を計測用ガーゼ40の平面上に配置したものである。着色した糸12を織り込む必要はなく、特徴点13が計測用ガーゼ40の平面上に複数配置されているだけで良い。したがって、着色した糸12を用いずに、通常のガーゼを構成する糸11のみでも、計測用ガーゼ40を構成することができる。
【0022】
例えば、通常の無着色のガーゼに、等間隔でドット状に色素を滴下させることによって特徴点13を生成して、計測用ガーゼ40を生産することができる。この生産方法を用いれば、わざわざ着色した糸12を織り込む必要がないため、比較的簡単に安価で計測用ガーゼ40を生産できる。
【0023】
次に、この計測用ガーゼ10,20,30,40の使用方法を説明する。
【0024】
最初に予め、既知の距離(例えば50cmの距離)からこの計測用ガーゼ10,20,30,40をカメラで画像認識することにより、特徴点13の画像上の間隔と特徴点13間の実際の距離とのキャリブレーションを行う。一度キャリブレーションを行えば、二回目以降はこのキャリブレーション工程は省略することができる。
【0025】
次に、測定したい部分(計測対象)に計測用ガーゼ10,20,30,40を密着させる。
【0026】
計測用ガーゼ10,20,30,40を測定したい部分に密着させたら、カメラでその計測用ガーゼ10,20,30,40を撮影して、特徴点13の配置を画像認識する。
【0027】
特徴点13の配置が認識できたら、キャリブレーション工程で得た情報を用いて立体形状のサイズを把握することができる。なぜなら、特徴点13間の距離が既知であることから、単眼計測法を使えば、計測用ガーゼ10,20,30,40の表面に存在する複数の特徴点13それぞれの3次元位置を認識することができるからである。したがって、計測用ガーゼ10,20,30,40を密着させた対象物の3次元形状を計測することが可能になる。
【0028】
以上の方法により、カメラで撮影した画像に映るこの計測用ガーゼ10,20,30,40を密着させた領域上の任意の2点間の距離、面積や体積のリアルタイムな計測が可能になる。
【0029】
次に、この計測用ガーゼ10,20,30,40を用いた応用例を説明する。
【0030】
本発明に係る計測用ガーゼ10,20,30,40は、人間の外科手術の際の臓器のサイズを計測する以外の用途にも利用可能である。例えば、動物の外科手術の際に動物の臓器のサイズを計測する場合にも、この計測用ガーゼ10,20,30,40を用いることができる。
【0031】
また、外科手術の際の臓器サイズの計測以外の目的でも利用可能である。例えば、指輪、腕輪等、身に付ける物のサイズを計測する場合のように、医療目的以外の目的で人間の各器官のサイズを計測する場合にも、この計測用ガーゼ10,20,30,40を用いることができる。
【0032】
例えば、指や腕に、この計測用ガーゼ10,20,30,40を密着させて巻き、それをカメラで撮影して、特徴点13の配置を画像認識させることで、指や腕の太さの計測だけでなく、立体的な凹凸をも計測することができる。したがって、計測用ガーゼ10,20,30,40を用いて計測することで、従来に比べ、より体型にフィットしたアクセサリ、装飾品、服等を作ることができる。
【0033】
また、計測用ガーゼ10,20,30,40の表面が3次元で計測されているなら、その計測データを用いて、複数の特徴点13のうち、隣り合った4点をマッチングさせることにより、ポリゴン状に3次元再生が可能になる。
【0034】
したがって、例えば、予め患者の3次元臓器モデルを作成しておけば、計測用ガーゼ10,20,30,40で3次元位置を計測した対象臓器上の特徴点13を当該3次元臓器モデルに配置することにより、その臓器の現在の形を術野で表示させることが可能になる。これも、人間の臓器だけでなく、動物の臓器にも適用可能である。
【0035】
なお、上述の実施形態では計測用ガーゼ10,20,30,40の生地はガーゼ生地を用いていたが、ガーゼ生地に限定する必要はない。伸
び率が所定の閾値以下で、計測対象に密着させることができるものであれば、他の布地を用いることもできる。
【0036】
さらに言えば、布地に限定する必要もなく、伸
び率が所定の閾値以下で、計測対象に密着させることができるシート状のものであれば、その素材は、紙、プラスチック(フィルム、ラップ)、金属(箔)等、任意のものを選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
10,20,30,40…計測用ガーゼ
11…通常のガーゼを構成する糸
12…着色した糸
13…特徴点
14…太い線
【要約】
【課題】3次元形状の正確なサイズを計測することが可能になる。
【解決手段】計測用ガーゼ10は
、ガーゼ生地と、ガーゼ生地の地の色と視覚上区別可能な色の特徴点13を所定の間隔で縦方向及び横方向に複数配置し
て構成したマーカー部と、を備える。計測用ガーゼ10を計測対象に密着させ、計測用ガーゼ10を撮影し、特徴点13の3次元位置を認識することによって、計測対象の3次元形状を計測することができる
。
【選択図】
図1