(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パンツ型装着物が装着されたときに、前記第1結合手段及び第2結合手段が被装着者の脇腹領域よりも前記腹側領域に寄っている請求項1または2に記載のパンツ型装着物。
【背景技術】
【0002】
従来、介護が必要な老人等の被介護者のためのパンツやオムツ等のパンツ型装着物が販売されている。このようなパンツ型装着物を装着した被介護者のうち、歩行が可能な被介護者はトイレにおいて介護者に付き添われながら排尿や排便を行う。
【0003】
しかしながら、従来の通常の介護用パンツや介護用オムツのように両サイドに粘着テープや面ファスナー等の結合手段があるパンツ型装着物は、排尿や排便の際に、パンツ型装着物を両足の途中まで下ろさなくてはならない。この場合、介護者は被介護者が転倒しないように支えながらパンツ型装着物を下ろさなくてはならず、介護者にとって負担になる。
【0004】
また、被介護者の失禁等によりトイレ使用時にパンツ型装着物の汚れが認められたり、排尿時や排便時に排尿や排便がパンツ型装着物に付着して汚れたりすることがある。
この場合には、介護者はトイレ内で汚れたパンツ型装着物を新しいパンツ型装着物に交換する必要があるが、一般的には被介護者を立たせた状態で行う。
【0005】
しかしながら、従来の通常の介護用パンツや介護用オムツのように両サイドに粘着テープや面ファスナー等の結合手段があるパンツ型装着物は、介護者は被介護者に新しいパンツ型装着物を装着するときに大きな負担を感じる。
【0006】
即ち、新しいパンツ型装着物を被介護者に装着する場合、介護者は被介護者の股間部分からパンツ型装着物を通した後、落ちないようにパンツ型装着物を一方の手で押さえながら、他方の手で両サイドの結合手段を順番に結合する。特に、トイレ内が狭く、パンツ型装着物を被介護者に装着する際に、介護者が被介護者の周りを移動できない場合には、負担が大きい。
【0007】
このように、パンツ型装着物の交換時に一方の手でパンツ型装着物を押さえることは、介護者にとって無理な姿勢を強いることになり、負担が大きいとともに迅速な交換の妨げになっていた。
このような背景から、特許文献1には、股間領域に開口部を有するオムツ本体と、開口部をオムツ本体の内側から塞ぐ吸収性パッドと、吸収性パッドとオムツ本体とを分離可能に固定する固定手段とを備えたオムツが提案されている。このオムツによれば、介護者の負担を軽減できるとされている。
【0008】
また、特許文献2には、股間部分と、その一端側に連続して設けた覆い部と、他端側に連続して設けた後身頃と、当該後身頃の両側部より側方に延出する右前身頃と左前身頃を備え、右前身頃と左前身頃の端部を腹部側において重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を着脱自在に結合させて前身頃を構成すると共に、当該前身頃の上に覆い部を重ね合わせてその先端部を前身頃に着脱自在に結合させて構成した介護用パンツが提案されている。この介護用パンツによれば、着脱が容易で介護者の負担を軽減できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の股間領域の開口部は吸収パッドをオムツ本体に着脱したり、排泄物受容器に接続したりするためのものである。したがって、トイレで排尿や排便の際には、パンツ型装着物を両足の途中まで下ろさなくてはならず、介護者の負担解消にはならない。
【0011】
一方、特許文献2の介護用パンツは、覆い部と前身頃との結合を解除することで、股間が解放されるので、介護用パンツをはいたままで排尿や排便を行うことができる。
しかしながら、覆い部と前身頃との結合を解除することで、股間部分に連続して更に覆い部が垂れ下がるので、垂れ下がり部分が長くなり、垂れ下がり部分が便器内に接触して汚れてしまうという欠点がある。
【0012】
このように、従来のパンツ型装着物は、一長一短があり機能的に十分とは言えず、介護者から次の3点全てを満足することができるパンツ型装着物の要望が大きい。
(1)被介護者が排尿や排便の際に、パンツ型装着物を両足の途中まで下ろさないで行うことができること(以下「装着状態での排尿や排便」という)。
【0013】
(2)トイレ等の狭い空間でのパンツ型装着物の装着時における介護者の負担をできるだけ軽減できること(以下「装着時の介護者の負担軽減」という)。
(3)被介護者が便座に座って排尿又は排便する際にパンツ型装着物の一部が便器内に垂れ下がって汚れないこと(以下「排尿又は排便での汚れ防止」という)。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装着状態での排尿や排便、装着時の介護者の負担軽減、及び排尿又は排便での汚れ防止の全てを満足することができるパンツ型装着物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のパンツ型装着物は、腹側領域を覆う前側生地と、背側領域から股間領域を覆う連続した後側生地と、前記前側生地の左右方向の一端部に形成された結合部と前記後側生地の背側部分の左右方向の一端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第1結合手段と、前記前側生地の左右方向の他端部に形成された結合部と前記後側生地の背側部分の左右方向の他端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第2結合手段と、前記前側生地の下端部に形成された結合部と前記後側生地の股間部分の下端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第3結合手段と、を有し、前記第1結合手段及び前記第2結合手段の結合によって筒体状の胴部開口を形成し、前記第3結合手段の結合によって一対の脚部開口を形成することを特徴とする。
ここで、生地とは布素材に限定するものではなく、紙オムツに使用されるパルプ素材も含むものとする。
【0016】
本発明のパンツ型装着物によれば、例えば介護者が立った状態の被介護者にパンツ型装着物を装着する場合、前側生地と後側生地との例えば第1結合手段だけを予め結合した展開状態のパンツ型装着物を被介護者の腰に回して第2結合手段を結合する。これにより、パンツ型装着物は被介護者から脱落することはない。次に、介護者は前側生地と後側生地との下端部同士を第3結合手段で結合する。
【0017】
また、被介護者が便座に座って排尿や排便をする場合、介護者は被介護者のズボンを下ろした後、第3結合手段の結合を外して股間部を露出させ、パンツ型装着物を装着したまま被介護者を便座に座らせる。これにより、従来の両サイドにのみ結合手段を有する従来のパンツ型装着物(例えば特許文献1)のように、パンツ型装着物を下ろさなくても排尿や排便を行うことができる。この場合、パンツ型装着物の一部が垂れ下がるが、垂れ下がるのは後側生地の股間部分のみであり、従来のパンツ型装着物(例えば特許文献2)のように、股間部分に連続して更に覆い部が垂れ下がる場合よりも垂れ下がりが少ない。したがって、垂れ下がり部分が便器内に接触しにくいので、パンツ型装着物が汚れにくい。
このように、本発明のパンツ型装着物は、装着状態での排尿や排便、装着時の介護者の負担軽減、及び排尿又は排便での汚れ防止の全てを満足することができる。
【0018】
本発明においては、前記第1結合手段、前記第2結合手段、及び前記第3結合手段は、互いに識別可能な識別手段を有することが好ましい。これにより、第1結合手段の結合部と第2結合手段の結合部を間違って結合してしまうことがないので、パンツ型装着物を被介護者に容易且つ迅速に装着することができる。
【0019】
本発明においては、前記前側生地の上部位置外側には前記前側生地を外側に折り返して着脱自在に固定する第1固定手段を有し、前記後側生地における前記背側部分には前記股間部分を外側に折り返して着脱自在に固定する第2固定手段を有することが好ましい。これにより、第3結合手段の結合を外した後、前側生地を外側に折り返して第3結合手段の結合部を第1固定手段に固定し、後側生地を外側に折り返して第3結合手段の結合部を第2固定手段に固定できる。
【0020】
したがって、被介護者が便座に座って排尿や排便をする場合に、パンツ型装着物の垂れ下がりを確実になくすことができるので、便器内に接触してパンツ型装着物が汚れることを確実に防止できる。
【0021】
本発明においては、前記パンツ型装着物が装着されたときに、前記第1結合手段及び第2結合手段が被装着者の脇腹領域よりも前記腹側領域に寄っていることが好ましい。これにより、介護者は被介護者にパンツ型装着物をより装着し易くなる。
【0022】
本発明においては、前記パンツ型装着物が装着されたときに、前記第3結合手段が被装着者の股間領域から前記腹側領域に寄っていることが好ましい。これにより、介護者は被介護者にパンツ型装着物をより装着し易くなる。
【0023】
本発明においては、前記前側生地は形状及び/又はサイズの異なる複数種類を有し、被装着者の体型によって交換可能であることが好ましい。これにより、被装着者の体型に合わせてパンツ型装着物をぴったり装着することができる。
【0024】
本発明においては、前記パンツ型装着物は、介護用パンツ、介護用オムツ、子供用オムツ、産褥ショーツの何れかである。これは、本発明のパンツ型装着物の好ましい使用用途例を挙げたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパンツ型装着物によれば、装着状態での排尿や排便、装着時の介護者の負担軽減、及び排尿又は排便での汚れ防止の全てを満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面にしたがって本発明のパンツ型装着物の好ましい実施の形態について説明する。
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0028】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を「 〜 」を用いて表す場合は、「 〜 」で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0029】
図1は、本発明のパンツ型装着物の実施の形態の一例である介護用パンツの斜視図であり、
図2は介護用オムツの斜視図である。本発明のパンツ型装着物は、介護用パンツ、介護用オムツ以外にも、子供用オムツ、産褥ショーツ等として好適に使用することができる。
図3はパンツ型装着物の分解図であり、
図4はパンツ型装着物を分解状態から組み立てるステップを示したものである。
【0030】
図1〜
図3に示すように、本発明のパンツ型装着物10は、主として、腹側領域を覆う前側生地12と、背側領域から股間領域を覆う連続した後側生地14と、前側生地12の左右方向の一端部に形成された結合部と、後側生地14の背側部分14Aの左右方向の一端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第1結合手段16と、前側生地12の左右方向の他端部に形成された結合部と、後側生地14の背側部分14Aの左右方向の他端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第2結合手段18と、前側生地12の下端部に形成された結合部と、後側生地14の股間部分14Bの下端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第3結合手段20と、を有し、第1結合手段16の結合及び第2結合手段18の結合により筒体状の胴部開口22を形成し、第3結合手段20の結合により一対の脚部開口24、24を形成するように構成される。
【0031】
第1結合手段16、第2結合手段18、第3結合手段20は、簡単に着脱可能に結合できればどのような結合手段でもよいが、例えば面ファスナー(例えばマジックテープ:登録商標)、粘着テープ、小鉤等を好適に使用できる。特にフック面として形成された結合部とループ面として形成された結合部とが結合する面ファスナーが好適であり、本実施の形態では面ファスナーの例で以下に説明する。
【0032】
図3(A)及び
図3(B)は、前側生地12及び後側生地14を外面側から見た図である。
ここで、外面側とはパンツ型装着物10を装着した被装着者の肌に触れない面であり、内面側とは肌に触れる面を言うことにする。
【0033】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、前側生地12は、矩形の下側に逆台形が連続した形状に形成され、逆台形の両縁12A,12Aは内側に凹状の湾曲形状に形成される。また、後側生地14は、横方向に長い背側部分14Aと縦方向に長い股間部分14Bとにより略T字形状に形成され、背側部分14Aから股間部分14Bに至る両縁14C,14Cは内側に凹状の湾曲形状に形成される。
【0034】
前側生地12及び後側生地14の生地素材としては、パンツ型装着物10が介護用パンツや産褥ショーツの場合には、肌触りが良く洗浄乾燥できることが好ましく、通常の下着と同程度の生地素材を使用することができる。例えば、綿、ウール等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン等の合成繊維や,これらの混紡繊維等があり、不織布、織物、編み物等の何れでもよい。
【0035】
また、パンツ型装着物10が介護用オムツや子供用オムツの場合には、通気性が良く水分を通さない素材で形成された通常のオムツ素材を使用することができる。例えば、表面材(ポリオレフィン、ポリエステル不織布等)、吸水材(綿状パルプ、高分子吸収材、ポリオレフィン不織布等)、防水材(ポリオレフィンフィルム等)を層構成としたものを使用することができる。
【0036】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、前側生地12の左右方向の右端部における内面側(
図3の裏面側)には、第1結合手段16を構成する面ファスナーの結合部であるフック面16Bが設けられ、左端部における内面側(
図3の裏面側)には、第2結合手段18を構成する面ファスナーの結合部であるフック面18Bが設けられる。
【0037】
一方、後側生地14の背側部分14Aの左右方向の右端部における外面側(
図3の表面側)には、第2結合手段18を構成する面ファスナーの結合部であるループ面18Aが設けられ、左端部における外面側(
図3の表面側)には、第1結合手段16を構成する面ファスナーの結合部であるループ面16Aが設けられる。
【0038】
また、前側生地12の下端部における外面側(
図3の表面側)には、第3結合手段20を構成する面ファスナーの結合部であるループ面20Aが設けられ、後側生地14の股間部分14Bの下端部における内面側(
図3の裏面側)には、第3結合手段20を構成する面ファスナーの結合部であるフック面20Bが設けられる。
【0039】
これにより、
図4(A)に示すように、後側生地14の背側部分14Aの左右両端部を対向するように内面側に折り返す。そして、後側生地14の外面側と前側生地12の内面側とが対向するように前側生地12を重ね合わせ、第1結合手段16のループ面16Aとフック面16B、及び第2結合手段18のループ面18Aとフック面18Bとを結合することにより、筒体状の胴部開口22(
図1参照)を形成する。
【0040】
更に、
図4(B)に示すように、後側生地14の股間部分14Bの下端部を内面側に折り返し、第3結合手段20のフック面20Bを前側生地12の下端部のループ面20Aに結合することにより、一対の脚部開口24、24(
図1参照)を形成する。
これにより、
図1又は
図2のパンツ型装着物10を組み立てることができる。
【0041】
なお、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20のフック面16B、18B、20Bとループ面16A、18A、20Aは、前側生地12と後側生地14とにおいてフック面16B、18B、20Bとループ面16A、18A、20Aとが対になればよい。したがって、上述のように、第1結合手段16及び第2結合手段18のフック面16B、18Bを前側生地12に形成し、第3結合手段20のフック面20Bを後側生地14に形成したのは一例であり、これに限定されない。
【0042】
しかしながら、フック面が肌に触れると被装着者はチクチクした不快感を覚える。よって、ループ面とフック面の組み合わせは、フック面が被装着者の肌に触れないように、即ち、フック面が肌側に向かず、外側に向くように(フック面はパンツ型装着物10の外面側に配置するように)構成することが望ましい。
【0043】
図3の例では、16B、18B、20Bをループ面とし、16A、18A、20Aをフック面とすることにより、フック面とループ面が少しずれて装着されても、被装着者の肌側の面となり、肌と接触する可能性のある16B、18B、20Bがループ面となるので、被装着者は、チクチクした不快感を覚えることがない。
【0044】
あるいは、後側生地14の16A、18A及び前側生地12の20Aは、生地の先端部よりも内側に寄って形成してもよい。内側に寄る寸法としては、後側生地14の16A、18A及び前側生地12の20Aとそれぞれ結合する、前側生地12の16B、18B及び後側生地14の20Bの幅(生地端部側の辺からその辺と対向する辺までの距離)をαとするとα/2以上で有ることが好ましく、α以上で有ることがより好ましい。
【0045】
その理由は、内側にα以上の距離寄れば、フック面とループ面とがどれだけずれて結合しても、フック面が肌に触れることがないからである。また、フック面とループ面とを結合させるとき、その強度を持たせるために、フック面の幅αの1/2以上ずらして結合させることはあまり考えられないので、実質的には、内側にα/2以上ループ面をずらして構成することにより、フック面が肌に触れることはない。
【0046】
また、
図1に示すように、被装着者がパンツ型装着物10を装着したときに、第1結合手段16の結合位置及び第2結合手段18の結合位置が被装着者の脇腹領域Aよりも腹側領域Bに寄った位置になるように、
図3に示す後側生地14の上端幅W1と前側生地12の上端幅W2とが設定される。例えば、第1結合手段16及び第2結合手段18の結合位置(面ファスナー幅の中央位置)は、被装着者がパンツ型装着物10を装着したときに、脇腹領域Aよりも腹側領域Bに30〜60mm寄った位置が好ましい。
【0047】
その理由は、仰向けに寝ている状態の被装着者からパンツ型装着物10を脱着する場合、第1結合手段16の結合位置と第2結合手段18の結合位置とが脇腹領域Aにあると、これらは被装着者の体の下に一部隠れることになり得るので、介護者は被装着者の体の下に手を入れて第1結合手段16のループ面16Aとフック面16Bとを取り外す必要があるからである。第2結合手段18のループ面18Aとフック面18Bも同様である。
【0048】
これに対して、第1結合手段16の結合位置と第2結合手段18の結合位置とが脇腹領域Aよりも腹側領域Bに寄った位置にあることにより、第1結合手段16と第2結合手段18とは、仰向けに寝ている状態の被装着者の体の下に隠れないので、介護者は、容易に第1結合手段16の脱着と第2結合手段18の脱着とを行うことができる。
【0049】
本発明者は、鋭意研究により、第1結合手段16及び第2結合手段18の結合位置(面ファスナー幅の中央位置)を脇腹領域Aよりも腹側領域Bに30〜60mm寄った位置にすることにより、日本人の体型においてはほとんどの場合において、被装着者が仰向けに寝ている状態において、第1結合手段16及び第2結合手段18の結合位置が被装着者の体の下に隠れることはないことを見いだした。
【0050】
また、
図1に示すように、被装着者がパンツ型装着物10を装着したときに、第3結合手段20の結合位置が被装着者の股間領域Cよりも腹側領域Dに寄った位置になるように、
図3に示す後側生地14の縦方向の長さH1と前側生地12の縦方向の長さH2とが設定される。例えば、第3結合手段20の結合位置(面ファスナー幅の中央位置)は、被装着者がパンツ型装着物10を装着したときに、股間下端位置から50〜100mm腹側領域Dに寄った位置が好ましい。
【0051】
その理由は、第3結合手段20も第1結合手段16、第2結合手段18と同様に、被装着者が仰向けに寝ている状態で第3結合手段20の結合位置が被装着者の体の下にならないように、即ち、第3結合手段20の結合位置が被装着者の股間領域Cよりも腹側領域Dに寄った位置になるように、
図3に示す後側生地14の縦方向の長さH1と前側生地12の縦方向の長さH2とが設定されることにより、介護者は仰向けに寝ている状態の被装着者の第3結合手段20を容易に脱着することができるからである。
【0052】
本発明者は、鋭意研究により、被装着者がパンツ型装着物10を装着したときに、第3結合手段20の結合位置(面ファスナー幅の中央位置)を、股間下端位置から50〜100mm腹側領域Dに寄った位置にすることにより、日本人の体型においてはほとんどの場合において、被装着者が仰向けに寝ている状態において、第1結合手段16及び第2結合手段18の結合位置が被装着者の体の下に隠れることはないことを見いだした。
【0053】
また、
図3(A)に示すように、前側生地12の上部位置外面側(
図3の表面側)には前側生地12を外側に折り返して着脱自在に固定する第1固定手段28を有する。上述のように、前側生地12の第3結合手段20が面ファスナーのループ面20Aの場合には、第1固定手段28はフック面28Aとする。
【0054】
また、
図3(B)に示すように、後側生地14の背側部分14Aにおける外面側(
図3の表面側)には、股間部分14Bを外側に折り返して着脱自在に固定する第2固定手段26を有する。この場合、上述のように、後側生地14の股間部分14Bの下端部の内面側に形成する第3結合手段20がフック面20Bの場合には、第2固定手段26はループ面26Aとする。
【0055】
なお、
図3(B)では、後側生地14の股間部分14Bの下端部の内面側(
図3の裏面側)に形成した第3結合手段20を利用して、第2固定手段26に固定するようにした。しかし、後側生地14の股間部分14Bの下端部の外面側(
図3の表面側)に第2固定手段26のループ面26Aと対になる専用のフック面(図示せず)を設けるようにしてもよい。
また、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20は、互いに識別可能な識別手段を有している。
【0056】
図5は識別手段の一例を示したものであり、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20の形状を変えることにより識別可能とした場合である。即ち、第1結合手段16は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるループ面16Aとフック面16Bとが1本の縦方向の隙間16C、16D(面ファスナーが形成されない部分)を挟んだ2本の縦線形状で形成される。また、第2結合手段18は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるループ面18Aとフック面18Bとが1本の横方向の隙間18C、18Dを挟んだ2本の横線形状に形成される。また、第3結合手段20は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるフック面20Bとループ面20Aに隙間を有しない形状に形成される。
【0057】
また、別の態様の識別手段としては、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20の色を変えることにより識別可能とすることも好ましい。例えば、第1結合手段16は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるループ面16Aとフック面16Bとの色を黄色にする。また、第2結合手段18は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるループ面18Aとフック面18Bとの色を赤色にする。また、第3結合手段20は後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成されるフック面20Bとループ面20Aとの色を青色にする。
【0058】
これにより、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20を互いに識別できるので、例えば、第1結合手段16のフック面16Bと第2結合手段18のループ面18Aを間違って結合したり、第1結合手段16のフック面16Bと第3結合手段20のループ面20Aとを間違って結合したりすることはない。
【0059】
このように、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20は、互いに識別可能な識別手段を有することにより、後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成される結合すべきフック面とループ面とが一目で分かるので、間違いなく且つ迅速に結合することができる。
【0060】
図6は、本発明のパンツ型装着物10の別態様として、前側生地12が形状及び/又はサイズの異なる複数種類のスペアーを有し、被装着者の体型によって交換可能であるように構成したものである。この場合、後側生地14の形状及び/又はサイズは1種類とすることが好ましい。
【0061】
図6(A)の後側生地14と
図6(B)の前側生地12との組み合わせは、上記説明したものと同じであるが、
図6(C)及び
図6(E)は前側生地12のサイズを変えた一例であり、
図6(D)は形状を変えた一例である。即ち、
図6(C)の前側生地12は、
図6(B)の前側生地12の上端幅W2よりも上端幅W3を大きく形成したものである。また、
図6(D)の前側生地12は、
図6(B)の前側生地12と上端幅W2及び縦方向の長さH2は同じであるが、逆台形の両縁12Aに形成される湾曲形状の窪みを無くして直線状にしたものである。また、
図6(E)の前側生地12は、
図6(B)の前側生地12と上端幅W2は同じであるが、縦方向の長さH2よりも縦方向の長さH3を長くしたものである。
【0062】
図6(A)〜
図6(E)は、前側生地12の形状及び/又はサイズを変えた一例であり、これだけに限定するものではない。
このように、前側生地12が形状及び/又はサイズの異なる複数種類のスペアーを有することにより、被装着者の体型、例えば太っておりパンツ型装着物10に大きな胴部開口22や脚部開口24、24を必要とする場合、あるいは体型の変化により胴部開口22や脚部開口24、24の適切な大きさが変化してしまった場合等に対応することができる。
【0063】
このように、パンツ型装着物10は、前側生地12と後側生地14とを分離した構造としたことにより、前側生地12が形状及び/又はサイズの異なる複数種類のスペアーを有することが可能となる。
【0064】
これにより、被装着者の体型に合わせることができるので、被介護者に装着したときに体型にフィットし、失禁等の汚物が外部に漏れにくくなる。
なお、図示しなかったが、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10は、後側生地14の股間部分14Bの内面側に、尿を吸収する尿とりパッドを保持する例えばポケット等の保持構造を備えるようにしてもよい。
【0065】
次に、介護者が被介護者M(パンツ型装着物10を装着する被装着者と同じ)を介護する上で、上記の如く形成された本発明の実施の形態のパンツ型装着物10を使用する利点を説明する。
【0066】
(狭いトイレ内でパンツ型装着物を装着させる場合)
狭いトイレ30内で男性の被介護者Mが介護者(図示せず)に付き添われ、立った状態で男性用の便器32に排尿した時にパンツ型装着物10を汚してしまった場合である。この場合には、介護者がトイレ30内で汚れたパンツ型装着物10を被介護者Mから取り外し、新しいパンツ型装着物10を被介護者Mに装着する。
【0067】
図7は、介護者が、狭いトイレ30内で新しいパンツ型装着物10を被介護者Mに装着する一例の図である。なお、
図7(A)及び
図7(D)に示すパンツ型装着物10の展開図は前側生地12及び後側生地14ともに外面側から見た図である。34は被介護者Mのズボンであり、足の下部まで下ろされている。
【0068】
また、被介護者Mは介護者に対して横向きに立っており、トイレ30の中での便器32の向き等の関係で介護者が、
図7の表面側からしか被介護者Mにパンツ型装着物10を装着できない場合について説明する。
この場合は先ず、
図7(A)に示すように、介護者はパンツ型装着物10の第1結合手段16だけを予め結合し、前側生地12と後側生地14とを繋げた展開状態にしておく(第1手順)。
【0069】
次に、
図7(B)に示すように、介護者は展開状態のパンツ型装着物10の内面側が被介護者Mに接触するようにして被介護者Mの腰Nに
図7の裏面側から表面側に回す。そして、
図7(C)に示すように、第2結合手段18を結合する(第2手順)。
これにより、パンツ型装着物10は被介護者Mの腰Nから脱落しないようになる。
【0070】
したがって、介護者は、両手を使って
図7(C)の矢印で示すように、後側生地14の股間部分14Bを被介護者Mの股に通して、股間部分14Bの下端部と前側生地12の下端部とを第3結合手段20で結合することができる。
【0071】
これに対して、従来技術で説明した両サイドにのみ結合手段がある従来のパンツ型装着物は、装着時にパンツ型装着物を被介護者Mの股間を通した後、一方の手でパンツ型装着物10が脱落しないように押さえながら、他方の手で両サイドの結合手段を順番に結合しなくてはならない。
【0072】
したがって、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10は、従来のように一方の手でパンツ型装着物を落ちないように押さえる煩わしさがないので、装着時の負担を顕著に軽減できる。
【0073】
また、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20は、互いに識別可能な識別手段を有する。これにより、後側生地14及び前側生地12にそれぞれ形成される結合すべきフック面とループ面とが一目で分かるので、間違いなく且つ迅速に結合することができる。
【0074】
また、第1結合手段16、第2結合手段18、及び第3結合手段20の結合位置(面ファスナー幅の中央位置)が、被介護者Mがパンツ型装着物10を装着したときに、脇腹領域Aよりも腹側領域Bに30〜60mm寄った位置、及び股間下端位置Cから50〜100mm腹側領域Dに寄った位置にある。これにより、結合が容易になるので迅速に結合できる。
【0075】
ちなみに、被介護者Mは介護者の肩等に手を置いて体を支えながら、介護者にパンツ型装着物10を装着させてもらうことが多く、介護者と被介護者Mとは近接した状態にある。したがって、第1結合手段16及び第2結合手段18の結合位置が被介護者Mの脇腹位置にあると、介護者の手が窮屈になり装着させにくい。
【0076】
ここで、
図7において、被介護者Mの右側から介護者がパンツ型装着物10を装着させる場合を説明したが、トイレ30の中での便器32の向きにより被介護者Mの左側からしか介護できない場合もあり得る。そのような場合においても本発明のパンツ型装着物10は、前側生地12と後側生地14とは、左右方向いずれの側も脱着自在に構成されているので、被介護者Mのどの向きからも介護者は容易にパンツ型装着物10を装着させることができる。
【0077】
例えば、被介護者Mの左側から介護者がパンツ型装着物10を装着させる場合は、介護者はパンツ型装着物10の第2結合手段18だけをあらかじめ結合し、前側生地12と後ろ側生地14とを繋げた展開状態にしておく。次に、介護者は展開状態のパンツ型装着物10を内面側が被介護者Mに接触するようにして被介護者Mの腰Nに裏側面から表面側に回す。そして、第1結合手段16を結合することによって介護者はパンツ型装着物10を被介護者Mに容易に装着することができる。
【0078】
便器32の向きに限らず、被介護者Mの体の麻痺の状態や、障害の状態によっては、特定の方向からしか介護できない場合や、特定の方向から介護した方が良い場合などがあり得るが、本発明のパンツ型装着物10は、第1結合手段16と第2結合手段18と第3結合手段20を備えているので、パンツ型装着物10の左右及び下部のいずれもが脱着自在であり、被介護者Mのどちらの方向からもパンツ型装着物10の着脱、パンツ型装着物10に設置した尿とりパッド等の取り替えを行うことができる。
【0079】
なお、上述したパンツ型装着物10を使用する利点の説明は、狭いトイレ30内で介護者が被介護者Mの体の一方の側方側からパンツ型装着物10を被介護者Mに装着する例で説明した。しかし、片麻痺を有する被介護者Mに対するパンツ型装着物10の装着は、麻痺の有る側方側から行う方がやり易く、上記の狭いトイレ30内での装着と同様に行うことができる。
【0080】
(被介護者が便座に座って排尿又は排便をする場合)
図8(A)〜
図8(C)は、被介護者Mが便座36に座って排尿又は排便をする場合の介護者の介護ステップを図示したものである。
【0081】
先ず、
図8(A)に示すように、介護者は被介護者Mが立った状態で被介護者Mのズボン34を足の下部まで下ろす。そして、介護者は被介護者Mに装着されたパンツ型装着物10の第3結合手段20を脱着(外す)する(第1ステップ)。
【0082】
次に、
図8(B)に示すように、脱着した後側生地14の股間部分14Bを外側に折り返し、股間部分14Bの下端部に形成された第3結合手段20のフック面20Bを、背側部分14Aの上部位置の外側面に形成された第2固定手段26であるループ面26Aに固定する(第2ステップ)。
【0083】
更に、
図8(B)に示すように、前側生地12を外側に折り返し、前側生地12の下端部に形成された第3結合手段20のループ面20Aを、前側生地12の上部位置の外側面に形成された第1固定手段28であるフック面28Aに固定する(第3ステップ)。
なお、第2ステップと第3ステップとは何れを先に行ってもよい。
【0084】
上記第1ステップ〜第3ステップが終了したら、
図8(C)に示すように、介護者は被介護者Mを便座36に座らせて、排尿や排便をさせる。
これにより、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10を装着したままで、便座36に座って排尿及び排便を行うことができる。
【0085】
また、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10は、上記第2ステップ及び第3ステップにより、便座36に座った被介護者Mが装着したパンツ型装着物10の一部が便座36内に長く垂れ下がって汚れてしまうことがない。
これに対して、従来技術で説明した従来の介護用パンツ(特許文献2)は、股間部分に連続して更に覆い部が垂れ下がるので、便座36内に接触し易く、汚れやすい。
【0086】
また、本実施の形態では、パンツ型装着物10が第1固定手段28及び第2固定手段26を備えた場合で説明したが、第1固定手段28及び第2固定手段26が無い場合であっても、垂れ下がるのは股間部分14Bのみなので、従来の介護用パンツ(特許文献2)のよりも垂れ下がりを少なくできる。
【0087】
このように、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10は、装着状態での排尿や排便、装着時の介護者の負担軽減、及び排尿又は排便での汚れ防止の全てを満足することができる。
また、本発明の実施の形態のパンツ型装着物10は、被介護者Mがベッド等に寝たきりの場合、第3結合手段20のみを脱着して排尿しているかを調べたり、尿とりパッドを交換したりすることができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、パンツ型装着物として介護用パンツの例で説明したが、介護用オムツ、子供用オムツ、産褥ショーツの場合も同様の利点がある。例えば、パンツ型装着物10が子供用オムツである場合には、特に、トイレで排尿や排便をするトレーニング用のオムツとして好適である。
【0089】
また、本発明のパンツ型装着物10は、以下の効果も有する。
・狭いトイレでも、介護者がどこの位置にいても、交換が容易である。
・トイレの介助時にパンツ型装着物が汚れても、ズボンや靴を着脱することなく交換が容易なので、介護者、被介護者双方の負担を減少させることができる。
・先にウエスト部を装着させることができるので、被介護者が立っている時間が少なくてすむ。
・本発明のパンツ型装着物は、下に下ろさずに外すことが可能なので、足を広げやすく、被介護者は、安定した姿勢を保ちやすい。
・本発明のパンツ型装着物は、従来のパンツや、従来のオムツと同様の使用法もできる。
・腰が曲がっている被介護者の場合においても本発明のパンツ型装着物の場合、装着の際に引っ張り上げる必要が無いので、つけやすく、被介護者もふらつきにくい。
・これら上記の効果を有するため、トイレ介助がしやすくなり、失敗を恐れずに、積極的に自尿を促すことができ、被介護者の自尊心も保たれる。
・トイレ介助がしやすくなることにより、ベッドからの離床が促され、体力向上が期待できる。
・トイレ介助がしやすくなることにより、パンツ型装着物が濡れることや汚れることが少なくなり、褥瘡(床ずれ)の軽減が期待できる。
・失禁パットやナプキンとも併用しやすく、本発明のパンツ型装着物は、使い捨ての紙製だけでなく、布製で作製することもできるので、コストの低減、資源の使用を減少させることができる。
・本発明のパンツ型装着物は、ベッドでの交換時においても使いやすい。
・本発明のパンツ型装着物は、失禁の方、産褥の方など、乳幼児から老人まで性別や年齢に関係なく使用することができる。
・本発明のパンツ型装着物は、乳幼児は、オムツを嫌がり逃げたりすることもあるが、先にウエスト部分を腰から回すようにつけることで、逃げられづらく、迅速に交換することができる。
・本発明のパンツ型装着物は、上記効果を有するため、在宅介護の助けになり、在宅介護を行う人の負担を軽減し、在宅介護される側の負担も軽減することができる。
【解決手段】腹側領域を覆う前側生地12と、背側領域から股間領域を覆う連続した後側生地14と、前側生地12の左右方向の一端部に形成された結合部と後側生地14の背側部分の左右方向の一端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第1結合手段16と、前側生地12の左右方向の他端部に形成された結合部と後側生地の背側部分14Aの左右方向の他端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第2結合手段18と、前側生地12の下端部に形成された結合部と後側生地14の股間部分14Bの下端部に形成された結合部とを着脱自在に結合する第3結合手段20と、を有する。