(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050552
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】同期発電機ステータおよび同期発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20161212BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H02K5/24 A
H02K1/18 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-510980(P2016-510980)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2016-521537(P2016-521537A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2014057377
(87)【国際公開番号】WO2014177363
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】102013207931.1
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】レール、ヨッヒェン
(72)【発明者】
【氏名】ファイト、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン、トルシュテン
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−74091(JP,A)
【文献】
特開昭61−258635(JP,A)
【文献】
特開2011−15536(JP,A)
【文献】
特開昭61−295839(JP,A)
【文献】
特開2010−230108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
H02K 1/00− 1/34
F16F15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータリング(300)と、ステータコア(400)と、前記ステータリング(300)と前記ステータコア(400)の間の環状ギャップ(310)と、前記環状ギャップ(310)内に複数のデカップリングユニット(500)とを有し、
前記デカップリングユニット(500)は、前記ステータコア(400)の輪郭に適合する第1プレート(510)と、前記ステータリング(300)の輪郭に適合する第2プレート(530)とを備え、
空隙と入口バルブ(540)を備えるマット(520)が前記第1および第2プレートの間(510,530)に設けられること
を特徴とする同期発電機のステータ。
【請求項2】
前記マット(520)は、加硫ゴム製圧力マットとして構成されることを特徴とする請求項1記載の同期発電機のステータ。
【請求項3】
ステータリング(300)と、ステータコア(400)と、前記ステータリング(300)と前記ステータコア(400)の間の環状ギャップ(310)と、前記環状ギャップ(310)内に複数のデカップリングユニット(500)とを備える同期発電機のステータを有し、
前記デカップリングユニット(500)は、前記ステータコア(400)の輪郭に適合する第1プレート(510)と、前記ステータリング(300)の輪郭に適合する第2プレート(530)とを備え、空隙と入口バルブ(540)を備えるマット(520)が前記第1および第2プレートの間(510,530)に設けられること
を特徴とする同期発電機。
【請求項4】
請求項3記載の同期発電機を有する風力発電装置。
【請求項5】
ステータリング(300)とステータコア(400)を有する同期発電機ステータの組立て方法であって、
ステータリング(300)内にステータコア(400)を挿入して、前記ステータリング(300)と前記ステータコア(400)の間に環状ギャップ(310)を設け、
前記環状ギャップ(310)内に複数のデカップリングユニット(500)を挿入し、
前記デカップリングユニット(500)は、前記ステータコア(400)の輪郭に適合する第1プレート(510)と、前記ステータリング(300)の輪郭に適合する第2プレート(530)とを備え、
空隙と入口バルブ(540)を備えるマット(520)が前記第1および第2プレートの間(510,530)に設けられ、
さらに複数の前記デカップリングユニット(500)が前記環状ギャップ(310)に挿入された後、前記第1および第2プレート(510,530)の間の前記マット(520)の空隙を充填するため、前記入口バルブ(540)を通じて前記デカップリングユニット(500)内に圧力媒体を導入することを特徴とする同期発電機のステータの組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期発電機ステータおよび同期発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
同期モータは、例えば風力発電装置で用いられ、発電機ステータと発電機ロータを有する。発電機ステータは、典型的には風力発電装置のナセルに固定的に接続され、発電機ロータは、直接または間接的に(変速機を介して)風力発電装置のロータ(ないしハブロータ)に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US6770996B2
【特許文献2】FR2979768A1
【特許文献3】DE102007040339A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、音響ないし音響振動の放出(エミッション)の低減を達成できる風力発電装置の同期発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的は、
第1の視点による同期発電機ステータおよび
第2の視点による同期発電機によって達成される。
(第1の視点)
ステータリングと、ステータコアと、前記ステータリングと前記ステータコアの間の環状ギャップと、前記環状ギャップ内に複数のデカップリングユニットとを有し、
前記デカップリングユニットは、前記ステータコアの輪郭に適合する第1プレートと、前記ステータリングの輪郭に適合する第2プレートとを備え、
空隙と入口バルブを備えるマットが前記第1および第2プレートの間に設けられること
を特徴とする同期発電機のステータ。
(第2の視点)
ステータリングと、ステータコアと、前記ステータリングと前記ステータコアの間の環状ギャップと、前記環状ギャップ内に複数のデカップリングユニットとを備える同期発電機のステータを有し、
前記デカップリングユニットは、前記ステータコアの輪郭に適合する第1プレートと、前記ステータリングの輪郭に適合する第2プレートとを備え、空隙と入口バルブを備えるマットが前記第1および第2プレートの間に設けられること
を特徴とする同期発電機。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、ステータリング、ステータコア(コアシート積層体、Blechpaket)、ステータリング(内側または外側の片方)とステータコア(外側または内側コア)の間の環状ギャップ、およびギャップ内の複数のデカップリングユニットを有する。
【0007】
デカップリングユニットは、ステータコアの(外)輪郭に適合する第1プレートと、ステータリングの(内)輪郭に適合する第2プレートを備える。マットは、空隙と入口バルブを備えて、第1および第2プレートの間に設けられる。
【0009】
空隙は、入口バルブを通じて圧力媒体を充填できる。
【0010】
本発明の一視点によれば、前記マットは、加硫したゴム製圧力マットとして構成される。
【0011】
また本発明は、本発明により同期発電機のステータを有する同期発電機に関する。
【0012】
また本発明
の他の視点(第3の視点)は、ステータリングとステータコアを有する同期発電機ステータの組立て方法に関する。ステータコアは、ステータリング内に挿入され、ステータリングとステータコアの間に環状ギャップが設けられる。複数のデカップリングユニットがそのギャップ内に挿入される。
【0013】
本発明の他の視点によれば、さらに複数のデカップリングユニットがギャップに挿入された後、第1および第2プレートの間のマットの空隙に充填するため、圧力媒体が、入口バルブを通じてデカップリングユニット内に導入される。
【0014】
本発明
の第4の視点は、
第1の視点による同期発電機ステータを備える
第2の視点の同期発電機を有する風力発電装置にも関する。
【0015】
本発明は、ステータリングとステータコアの間のギャップに複数のデカップリングユニットを有する同期発電機ステータを提供するという概念(思想)に関する。これらのデカップリングユニットは、ステータコアからステータリングへの構造的伝播ノイズの伝達を回避するために、設けることができる。
【0016】
本発明の一視点によれば、デカップリング要素は、外側および内側プレート部分を有し、さらにフレキシブルなマット、例えばこれらの部分間にゴム製圧力マット(Gummidruckmatte)を有する。
【0017】
同期発電機、インナロータとして構成されてもよく、すなわち、発電機のロータ(回転子)がステータ(固定子)内部に設けられる。
【0018】
デカップリングユニットの2つのプレート間のマットは空隙を有することができ、圧力媒体をこの空隙に導入できる。かくて、デカップリング要素は、圧力媒体なしで、ステータリングとステータコアの間のギャップに先ず挿入され、次に続いて圧力媒体が導入され、これによってデカップリング要素はステータリングとステータコアの間のギャップを(厚さの増加をともなって)充填する。
【0019】
本発明の他の構成は、従属項の主題を構成する。
【0020】
本発明の有利さおよび例示的実施形態を下記の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施形態による同期発電機ステータの斜視図を示す。
【
図3】(A)および(B)は、第1実施形態による同期発電機ステータ用のデカップリングユニットの斜視図を示す。
【
図4】第1実施形態による同期発電機の一部を示す模式的斜視図である。
【
図5】第1実施形態による同期発電機のステータの一部を示す他の模式的斜視図である。
【
図6】第1実施形態による同期発電機のステータの断面を示す斜視図である。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明による風力発電装置を模式的に示す。風力発電装置100は、タワー102とナセル104を有する。ロータ106は三枚のロータブレード108とスピナ110を備え、ナセル104上に設けられる。動作時、ロータ106は、風力によって駆動されて回転し、ナセル104内の同期発電機のロータを回転させる。ロータブレード108のピッチ角は、各ロータブレード108の根元でピッチモータによって可変される。
【0023】
同期発電機の同期発電機ステータは、典型的には風力発電装置のナセルに固定的に接続され、同期発電機のロータは風力発電装置の空力ロータ(空気力学的、aerodynamischen)に直接(または変速機を介して)連結され、発電機ロータは風力発電装置の空力ロータの回転時に回転する。
【0024】
インナロータ式の具体的形態を下記に説明する。外部ロータ式の場合、「インナ」と「アウタ」は逆になる。
【0025】
図2は、第1実施形態による同期発電機ステータの斜視図を示す。ステータは、アウタステータリング300、インナステータコア400、およびステータコア400の外周面とステータリング300の内周面との間の環状ギャップ310を有する。複数のデカップリングユニット500がこの環状ギャップ内に設けられる。デカップリングユニット500は、ステータコア400とステータリング300の間の振動および/または構造体ないし固体ノイズ(Korperschall)の伝播を遮断する。
【0026】
図3(A)および3(B)は、例示的な第1実施形態による同期発電機のステータ用のデカップリングユニットの斜視図をそれぞれ示す。デカップリングユニット500は、第1および第2プレート(Blech)510,530を備え、これらのプレート間にマット520を備える。第1プレート510は、ステータコア400の外部輪郭に適合されている。デカップリングユニット(複数)500は、環状ギャップ310内に環状セグメント状に配置される。例えば2つの係留ラグ511を第1プレート510に設けてもよく、2つの係留ラグ531を、第2プレート530に設けてもよい。これらのラグ511,531は、デカップリングユニット500の端面に設けられる。第1および第2プレート間のマット520は、デカップリングユニット500の端面上の入口バルブ540を介して、圧力媒体で充填可能な空隙を有してもよい。
【0027】
本発明の一視点によれば、第1および第2デカップリングプレートは約2mm厚であり、マット520は加硫ゴム製の圧力マットによって構成される。
【0028】
図4は、例示的な第1実施形態による同期発電機の一部を示す模式的斜視図である。特に
図4は、ステータリング300とステータコア400の間の環状ギャップ310に挿入されるときのデカップリングユニット500を示す。この場合、デカップリングユニット500は環状ギャップ310に挿入される。この場合、任意にマット520が、例えば第1および第2プレート510,530間に圧力媒体なしで設けられることができ、これによってそれは挿入がさらに容易になる。
【0029】
図5は、例示的な第1実施形態による同期発電機のステータの他の模式的斜視図を示す。同期発電機のステータは、ステータリング300、ステータコア400、ステータリング300とステータコア400の間の環状ギャップ310を有する。複数のデカップリングユニット500が、このギャップ内に配置または挿入される。デカップリングユニット500が環状ギャップ内に挿入された後、圧力媒体がマット520の空隙内へ、入口バルブ540を通じて導入できる。その結果、第1、第2プレート510,530間の間隔が、第1プレートがステータコア400の外部輪郭に、第2プレートがステータリング300の内部輪郭に当接するまで増大する。
【0030】
図6は、例示的な第1実施形態による同期発電機のステータの断面斜視図である。同期発電機ステータは、ステータリング300、ステータコア400、ステータリング300とステータコア400間の環状ギャップ310を有する。複数のデカップリングユニット500がギャップ内に設けられる。デカップリングユニット500は、第1および第2プレート510,530を備え、これらのプレート間にマット520を備える。
図6のようなデカップリングユニットの構成は、
図3(A)および3(B)のようなデカップリングユニットに基づくものとしてもよい。
【0031】
デカップリングユニットは、このようにしてステータコア400とステータリング300の間に設けられる。
【0032】
圧力媒体は、マットの空隙へ入口バルブ540を通じて導入でき、これによってステータリング300とステータコア400間のギャップを充満することができ、トルクの伝達のために加圧されることができる。デカップリングユニットは、発電機のエアギャップを調節するために用いることもできる。
【0033】
本発明によれば、ステータリング300とステータコア間のギャップ内のデカップリングユニットの使用によって、構造体ノイズ伝播の遮断(Korperschallentkopplung)および/または振動の遮断が提供され、この結果、同期発電機の音響放出(音響ノイズの放出)が顕著に低減される。
【0034】
本発明による同期発電機は、風力発電装置または水力発電層のための低速回転同期発電、特にリング状発電機を提供する。同期発電機は、1MW超の定格出力を有する。同期発電機の回転速度は40rpm未満、特に20rpm未満である。
【0035】
本発明により、4m超の直径を有する同期発電機が提供される。さらに同期発電機は、他励式同期発電機として構成される。
【符号の説明】
【0036】
100 風力発電装置
102 タワー
104 ナセル
106 ロータ
108 ロータブレード
110 スピナ
300 ステータリング、アウタステータリング
310 環状ギャップ
400 ステータコア、インナステータコア
500 デカップリングユニット
510 第1プレート
511,531 ラグ
520 マット
530 第2プレート
540 入口バルブ