【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
製剤例1〜28においては、薬効成分として、メロキシカム(DKSHジャパン社製)を使用した。フィルム基剤としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L、日本曹達社製)、及びヒプロメロース(商品名メトローズ60SH−4000、信越化学工業社製)を使用した。添加剤として、マクロゴール6000(和光純薬工業社製)、ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、L−メントール(長岡実業社製)、D−マンニトール(ロケットジャパン社製)、アスパルテーム(味の素社製)、及びアセスルファムカリウム(丸善製薬社製)を使用した。塩基性化合物として、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びL−アルギニンを用いた。
【0038】
製剤例29〜38においては、薬効成分として、カンデサルタンシレキセチル(中国 GOLD PHARMA製)を使用した。フィルム基剤としてヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L、日本曹達社製)、及びヒプロメロース(商品名メトローズ60SH−4000、信越化学工業社製)を使用した。添加剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)、D−マンニトール(ロケットジャパン社製)、アスパルテーム(味の素社製)、及びアセスルファムカリウム(丸善製薬社製)、タウマチン(ソーマチン) (三栄源エフエフアイ社製)、ハッカ油(鈴木薄荷社製)を使用した。塩基性化合物として、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びL−アルギニンを用いた。
【0039】
製剤例で得られた各製剤について、下記に示した試験法によって、物性評価及び安定性評価を実施した。
【0040】
(1)物性評価(i)(溶出性)
評価は、溶出試験器(富山産業社製)を用いて、日本薬局方の一般試験法である溶出試験法第2法(パドル法)に準じて行い(試験液:水、パドルの回転数:50rpm、経過時間:5分間、10分間、15分間、30分間、45分間、60分間及び120分間)、製剤からのメロキシカム又はカンデサルタンシレキセチルの溶出量と溶出率を求めた。
具体的には、製剤1個をとり、試験液に水900mLを用い、溶出試験法第2法(パドル法)により、毎分50回転で試験を行った。溶出試験開始5分、10分、15分、30分、45分、60分及び120分後、溶出液10mLを正確にとり、直ちに37±0.5℃に加温した水を正確に注意して補った。溶出液は孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めのろ液5mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。メロキシカムについては、別に定量用メロキシカム約0.05gを精密に量り、メタノールに溶かし、正確に100mLとした後、この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に50mLとした。この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に50mLとし、標準溶液とした。メロキシカム含量は、水を対照とし、紫外可視吸光度測定法により、波長360〜364nmにおけるメロキシカムの極大波長の吸光度A
T(n)(試料溶液の吸光度)及びA
S(標準溶液の吸光度)を測定して求めた。
【0041】
カンデサルタンシレキセチルについては、別に定量用カンデサルタンシレキセチル約0.01gを精密に量り、メタノールに溶かし、正確に200mLとした後、この液4mLを正確に量り、水を加えて正確に50mLとし標準溶液とした。カンデサルタンシレキセチル含量は、液体クロマトグラフィーを用いて以下の測定条件で求めた。
【0042】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:アセトニトリル/水/酢酸(100)混液(65:35:1)
流量:カンデサルタンシレキセチルの保持時間が約6分になるように調整した。
システムの性能:標準溶液20μLにつき、上記の条件で操作するとき、カンデサルタンシレキセチルのピークの理論段数及びシンメトリー係数は、それぞれ5000段以上及び1.5以下である。
システムの再現性:標準溶液20μLにつき、上記の条件で試験を6回繰り返すとき、カンデサルタンシレキセチルのピーク面積の相対標準偏差は1.5%以下である。
【0043】
(2)物性評価(ii)(pH)
評価は、pH計を用いて、日本薬局方による一般試験法であるpH測定法に従って、製剤の溶解液(1→100)のpHを求めた。
【0044】
(3)安定性評価
製剤を個々にSP包装(アルミ箔)して調製した後、保存温度60℃に設定した恒温器に保管し、保管期間4週間後にサンプリングし、製剤中のメロキシカムの含量を液体クロマトグラフィーにより測定し、初期含量に対する残存率を求めた。
具体的には、製剤1個をとり、内標準溶液5mLを正確に加え、更にメタノール45mLを加えて30分間振り混ぜた後、30分間超音波処理を行った。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過し、ろ液を試料溶液とした。別に定量用メロキシカムを約10mgを精密に量り、メタノールに溶かし、正確に50mLとした。この液25mLを正確に量り、内標準溶液5mLを正確に加え、更にメタノールを加えて50mLとし、標準溶液とした。メロキシカム含量は、内標準物質のピーク面積に対するメロキシカムのピーク面積の比Q
T及びQ
Sを測定して求めた。
【0045】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:メタノール/水/リン酸混液(600:400:1)
流量:メロキシカムの保持時間が約6分になるように調整した。
システム適合性は、以下の条件を採用した。
システムの性能:標準溶液5μLにつき、上記の条件で操作するとき、メロキシカム、内標準物質の順に溶出し、その分離度は3以上である。
システムの再現性:標準溶液5μLにつき、上記の条件で試験を6回繰り返すとき、内標準物質のピーク面積に対するメロキシカムのピーク面積の比の相対標準偏差は1.0%以下である。
【0046】
製剤例1
製剤の調製は、表1に示すメロキシカム及び基剤、並びに添加剤を無水エタノール又は精製水に溶解又は分散させた混合液を調製し、次いで該混合液をベースフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。塗布された混合液を乾燥させてフィルムに形成させた後、形成させたフィルムをベースフィルム上から剥離させ、剥離させたフィルムを、フィルム状製剤の1枚当たりの大きさが約15mm×20mm、質量が約35mgとなるように切断した。フィルム状製剤の1枚当たりの厚さは、約100μmとなるように調整した。本製剤の処方を、表1に示す。
【0047】
製剤例2
製剤の調製は、表1に示すメロキシカム、塩基性化合物及び基剤、並びに添加剤を無水エタノール又は精製水に溶解又は分散させた混合液を調製し、次いで該混合液をベースフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。塗布された混合液を乾燥させてフィルムに形成させた後、製剤例1と同様にしてフィルム状製剤を製造した。本製剤の処方を、表1に示す。
【0048】
製剤例3〜28
メロキシカム及び他の成分の配合量を表1〜5に示すようにした以外は、製剤例1〜2と同様の方法によりフィルム状製剤を製造した。表1〜5中のpH以外の数値は、固形分量(質量部)を表し、表1〜5中の合計は、固形分量の合計(質量部)を表す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
表1〜表5で示す製剤例1〜28の各製剤について、上記(1)〜(3)の試験を行なった。製剤の溶解液(1→100)のpHを、表1〜5に示す。表6〜10及び
図1〜6に、溶出試験の結果を示す。表6〜10中の数値は、試験前の製剤に含まれたメロキシカム質量を100とした場合の溶出率(%)である。
図1〜6において、横軸は、溶出試験開始(0分)からの時間であり、縦軸は、溶出率である。
別に、モービック錠(商品名、第一三共社製)、及び口腔内速崩壊錠であるメロキシカム速崩錠(商品名、日本臓器製薬社製)についても、前記の方法でメロキシカムの溶出性を確認したが(参考例1:モービック錠、参考例2:メロキシカム速崩錠)、表1〜表5で示された製剤例3〜6、8〜17及び20〜28の製剤の溶出挙動の範囲内であった(表10及び
図6)。
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
製剤例で製造した製剤における、塩基性化合物の配合量に対する製剤中のメロキシカムの残存率(%)を、表11及び
図7に示す。
図7において、三角(▲)は、水酸化ナトリウムであり、四角(□)は、炭酸水素ナトリウムであり、バツ(×)は、L−アルギニンであり、丸(●)は、クエン酸ナトリウムである。
【0060】
【表11】
【0061】
製剤例の各製剤について、前記に示した試験法に基づき、安定性評価及び物性評価を実施したところ、塩基性物質を配合することにより、酸性の医薬有効成分であるメロキシカムの溶出性が質量依存的に向上した。更に、製剤例4〜6、8〜17及び23〜28の製剤の全てにおいて、初めのサンプリング時点(5分間)で、溶出が確認された。また、安定性評価に関しては、すべての製剤例の製剤において、フィルム状製剤中のメロキシカム含量の90%以上の残存率が認められた。
【0062】
製剤例29
製剤の調製は、表12に示すカンデサルタンシレキセチル及び基剤、並びに添加剤を無水エタノール又は精製水に溶解又は分散させた混合液を調製し、次いで該混合液をベースフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。塗布された混合液を乾燥させてフィルムに形成させた後、形成させたフィルムをベースフィルム上から剥離させ、剥離させたフィルムを、フィルム状製剤の1枚当たりの大きさが約15mm×20mm、質量が約35mgとなるように切断した。フィルム状製剤の1枚当たりの厚さは、約100μmとなるように調整した。本製剤の処方を、表12に示す。
【0063】
製剤例30
製剤の調製は、表12に示すカンデサルタンシレキセチル、塩基性化合物及び基剤、並びに添加剤を無水エタノール又は精製水に溶解又は分散させた混合液を調製し、次いで該混合液をベースフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した。塗布された混合液を乾燥させてフィルムに形成させた後、製剤例29と同様にしてフィルム状製剤を製造した。本製剤の処方を、表12に示す。
【0064】
製剤例31〜38
カンデサルタンシレキセチル及び他の成分の配合量を表12〜13に示すようにした以外は、製剤例29〜30と同様の方法によりフィルム状製剤を製造した。表12〜13中のpH以外の数値は、固形分量(質量部)を表し、表12〜13中の合計は、固形分量の合計(質量部)を表す。
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
表12〜表13で示す製剤例29〜38の各製剤について、上記(1)〜(2)の試験を行なった。製剤の溶解液(1→100)のpHを、表12〜13に示す。表14〜15及び
図8〜11に、溶出試験の結果を示す。表14〜15中の数値は、試験前の製剤に含まれたカンデサルタンシレキセチル質量を100とした場合の溶出率(%)である。
図8〜11において、横軸は、溶出試験開始(0分)からの時間であり、縦軸は、溶出率である。
別に、ブロプレス錠(商品名、武田薬品工業社製)についても、前記の方法でカンデサルタンシレキセチルの溶出性を確認した(参考例1:ブロプレス錠)。なお、ブロプレス錠の溶解液(1→100)のpHは、6.05であった。
【0068】
【表14】
【0069】
【表15】
【0070】
製剤例29〜38の各製剤について、前記に示した試験法に基づき、安定性評価及び物性評価を実施したところ、塩基性物質を配合することにより、酸性の医薬有効成分であるカンデサルタンシレキセチルの溶出性が質量依存的に向上した。更に、製剤例30〜38の製剤の全てにおいて、2回目のサンプリング時点(10分間)で、溶出が確認された。