(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050585
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】生体サンプルホルダをクランプするための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
G01N35/04 E
G01N35/04 G
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-512189(P2011-512189)
(86)(22)【出願日】2009年6月5日
(65)【公表番号】特表2011-522270(P2011-522270A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】FR2009051068
(87)【国際公開番号】WO2010001023
(87)【国際公開日】20100107
【審査請求日】2012年5月9日
【審判番号】不服2015-12598(P2015-12598/J1)
【審判請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】0853786
(32)【優先日】2008年6月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511187030
【氏名又は名称】バイオ−ラッド・イノヴァシオン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・フィリッポン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ベルナイ
【合議体】
【審判長】
郡山 順
【審判官】
渡戸 正義
【審判官】
信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−502479(JP,A)
【文献】
特開平11−108937(JP,A)
【文献】
米国特許第5681530(US,A)
【文献】
特公昭59−4272(JP,B2)
【文献】
特開平9−201788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルの処理および/または解析のための装置であって、該装置は、
− 少なくとも第1生体サンプルホルダ(10)を格納するための第1格納位置(57)であって、2つの対向した側端(14、16)が設けられた壁(12)と、該壁(12)に支持された生体サンプルリセプタクル(18)と、を具備し、前記壁(12)は垂直な側端(14、16)とともに垂直に延在し、前記生体サンプルリセプタクル(18)は上向に開口した、第1生体サンプルホルダ(10)を格納するための第1格納位置(57)と、
− 第2生体サンプルホルダ(30)を格納するための第2格納位置(57)であって、前記第2生体サンプルホルダは平行に対向した第1および第2側壁(38A、38B)と、該第1および第2側壁(38A、38B)を接続した上壁(32)と、該上壁(32)によって担持された生体サンプルリセプタクル(40)と、を具備し、前記第1および第2側壁(38A、38B)は、上向きに出現した前記リセプタクル(40)とともに垂直に延在した、第2生体サンプルホルダ(30)を格納するための第2格納位置(57)と、
− 前記第1および第2生体サンプルホルダ(10、30)を把持するためのクランプ(70)が固定されたヒンジアーム(72)であって、前記クランプ(70)は、前記第1生体サンプルホルダ(10)を把持する第1把持位置と、前記第1生体サンプルホルダ(10)を解放する第1解放位置と、の間、および前記第2生体サンプルホルダ(30)を把持する第2把持位置と、前記第2生体サンプルホルダ(30)を解放する第2解放位置と、の間、で把持方向(Z)に沿って互いに対して移動可能な第1および第2アーム(76、78)を具備したヒンジアーム(72)と、
を具備し、
− 前記第1アーム(76)は前記第2生体サンプルホルダ(30)の第1側壁(38A)と接触する第1接触面(114)を具備し、
− 前記第2アーム(78)は前記第2生体サンプルホルダ(30)の第2側壁(38B)と接触する第2接触面(116)を具備し、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が前記第2解放位置にある場合、前記第1および第2接触面(114、116)は前記把持方向(Z)に沿って互いに対して離間され、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が前記第2把持位置にある場合、前記第1および第2接触面(114、116)は前記把持方向(Z)に沿って互いに対して離間されて且つ互いに対向しており、個々に前記第2生体サンプルホルダ(30)の前記第1側壁(38A)および前記第2側壁(38B)に接触することが可能であり、前記把持方向(Z)に沿って前記第1および第2側壁(38A、38B)を締め付けることによって前記第2生体サンプルホルダ(30)を把持する装置において、
− 前記クランプ(70)の前記第1アーム(76)は第1溝(98)を具備し、
− 前記クランプ(70)の前記第2アーム(78)は第2溝(100)を具備し、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が前記第1解放位置にある場合、前記第1および第2溝(98、100)は前記把持方向(Z)に沿って互いに対して離間されており、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が前記第1把持位置にある場合、前記第1および第2溝(98、100)は前記把持方向(Z)に沿って互いに対して近接した状態とされ且つ互いに対向しており、前記第1生体サンプルホルダ(10)の前記側端(14、16)を受け入れることが可能となり、前記把持方向(Z)に沿って前記側端(14、16)を締め付けることによって前記第1生体サンプルホルダ(10)を把持することを特徴とする装置。
【請求項2】
− 前記第1アーム(76)は第1突出部(94)を具備し、前記第2アーム(78)は第2突出部(96)を具備し、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が第1把持位置にある場合、前記第1および第2突出部(94、96)は前記把持方向(Z)に沿って個々のアームに対して突出し、
− 前記第1溝(98)は前記第1突出部(94)に形成され、前記第2溝(100)は前記第2突出部(96)に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1突出部(94)は前記第1アーム(76)の第1下端(88)から突出しており、前記第2突出部(96)は前記第2アーム(78)の第2下端(90)から突出していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1および第2接触面(114、116)は、それぞれが個々の前記第1および第2アーム(76、78)に対して傾斜しており、前記第2把持位置において、前記第1および第2接触面は互いに略平行となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2生体サンプルホルダはマイクロプレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
− 前記第1アーム(76)は前記第1側壁(38A)のスライドを減少させるための第1手段(118)を具備し、
− 前記第2アーム(78)は前記第1側壁(38B)のスライドを減少させるための第2手段(120)を具備していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
− スライドを減少させるための前記第1手段は前記第1接触面(114)に対して張り出した第1ブレード(118)を具備し、張り出した該第1ブレード(118)は折りたたまれて前記第1側壁(38A)と接触するように意図されており、
− スライドを減少させるための前記第2手段は前記第2接触面(116)に対して張り出した第2ブレード(120)を具備し、張り出した該第2ブレード(120)は折りたたまれて前記第2側壁(38B)と接触するように意図されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
− 前記第1突出部(94)は前記第1接触面(114)を具備し、該第1接触面(114)は前記第1溝(98)によって2つに分割されており、
− 前記第2突出部(96)は前記第2接触面(116)を具備し、該第2接触面(116)は前記第2溝(100)によって2つに分割されていることを特徴とする請求項2および請求項6ならびに7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
把持方向(Z)に沿ってクランプ(70)を使用する、第1生体サンプルホルダ(10)および第2生体サンプルホルダ(30)を把持するための方法であって、
前記第1生体サンプルホルダ(10)は2つの対向した側端(14、16)が設けられた壁(12)と、該壁(12)によって担持され且つ前記2つの側端に接続されたリム(20)を通して出現した生体サンプルリセプタクル(18)と、を具備した第1生体サンプルホルダ(10)と、
前記第2生体サンプルホルダは平行に対向した第1および第2側壁(38A、38B)と、該第1および第2側壁(38A、38B)を接続した上壁(32)と、該上壁(32)によって担持された生体サンプルリセプタクル(40)と、を具備し、前記第1および第2側壁(38A、38B)は、上向きに出現した前記リセプタクル(40)とともに垂直に延在した第2生体サンプルホルダ(30)と、を把持するための方法において、
− 前記第1生体サンプルホルダを把持するステップであって、該把持ステップは、各々が第1および第2溝(98、100)を具備した前記クランプ(70)の第1および第2アーム(76、78)の動作は、前記第1および第2溝(98、100)が前記把持方向(Z)に沿って互いに離間された位置である第1解放位置から、前記第1および第2溝(98、100)が前記把持方向(Z)に沿って互いにより近接した状態とされた位置である第1把持位置までであり、前記第1および第2溝(98、100)は互いに向かい合って延在し、前記把持方向(Z)に沿って前記側端(14、16)を締め付けることによって前記第1生体サンプルホルダを把持するために、前記第1生体サンプルホルダ(10)の前記側端(14、16)を受け入れることを含んだ、第1生体サンプルホルダを把持するステップと、
前記把持方向(Z)に沿って第1および第2接触面(114、116)が互いに離間された位置である第2解放位置から、前記第1および第2接触面(114、116)が前記把持方向(Z)に沿って互いにより近接した状態とされた位置である第2把持位置までの前記第1および第2アーム(76、78)の動作を介して、前記第1生体サンプルホルダ(10)に代えて前記第2生体サンプルホルダ(30)を把持するステップであって、前記第1および第2接触面(114、116)は互いに向かい合っており、且つ各々が前記把持方向(Z)に沿って前記第2生体サンプルホルダ(30)の第1側壁(38A)および第2側壁(38B)と接触し、前記把持方向(Z)に沿って前記第1および第2側壁(38A、38B)を締め付けることによって前記第2生体サンプルホルダを把持するステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
− 前記第1アーム(76)は第1突出部(94)を具備し、前記第2アーム(78)は第2突出部(96)を具備し、
− 前記第1および第2アーム(76、78)が第1把持位置にある場合、前記第1および第2突出部(94、96)は前記把持方向(Z)に沿って個々のアームに対して突出し、
− 前記第1溝(98)は前記第1突出部(94)内に形成され、前記第2溝(100)は前記第2突出部(96)内に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1突出部(94)は前記第1アーム(76)の第1下端(88)から突出しており、前記第2突出部(96)は前記第2アーム(78)の第2下端(90)から突出していることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2接触面(114、116)は、それぞれが個々の前記第1および第2アーム(76、78)に対して傾斜しており、前記第2把持位置において、前記第1および第2接触面は互いに略平行となることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2生体サンプルホルダはマイクロプレートであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
− 前記第1アーム(76)は前記第1側壁(38A)のスライドを減少させるための第1手段(118)を具備し、
− 前記第2アーム(78)は前記第1側壁(38B)のスライドを減少させるための第2手段(120)を具備していることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
− スライドを減少させるための前記第1手段は、前記第1接触面(114)に関して張り出した第1ブレード(118)を具備し、該第1ブレード(118)は前記第1側壁(38A)と接触するように折りたたまれ、
− スライドを減少させるための前記第2手段は、前記第2接触面(116)に関して張り出した第2ブレード(120)を具備し、該第2ブレード(120)は前記第2側壁(38B)と接触するように折りたたまれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
− 前記第1突出部(94)は前記第1接触面(114)を具備し、該第1接触面(114)は前記第1溝(98)によって2つに分割されており、
− 前記第2突出部(96)は前記第1接触面(116)を具備し、該第2接触面(116)は前記第2溝(100)によって2つに分割されていることを特徴とする請求項10および14ならびに15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1生体サンプルホルダはゲルカードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記第1生体サンプルホルダはゲルカードであることを特徴とする請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体サンプルホルダを把持するのに適したクランプ、生体サンプルホルダおよびそれを把持するのに適したクランプを含んだアセンブリ、ならびに生体サンプルの処理および/または解析のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GRIFOLS社は生体サンプル処理および解析装置を販売しており、その装置は向かい合った2つの側端が設けられた壁を具備した第1生体サンプルホルダを把持するのに適したクランプと、意図された方向に延在した壁によって担持された生体サンプルリセプタクルと、を具備している。第1生体サンプルホルダの通常の使用において、壁は垂直に延在するとともに上向きにリセプタクルが開口している。クランプは、把持方向に沿って互いに対して移動可能な第1および第2アームを具備し、その方向は第1生体サンプルホルダの第1把持位置と、生体サンプルホルダの第1解放位置との間である。
【0003】
より詳細には、この公知のクランプは、メインプレートの上端に固定され且つメインプレートに直交した上部リムを含んだ「ゲル」タイプのカードを把持するために設計されている。上部リムは上端の長さ全体にわたって延在している。第1および第2アームはクランプのベースから下向きに延在している。第1および第2アームは、上部リムの幅の上部リムの下側近傍においてゲルカードを把持するように意図されている。把持は上端の長さの中央において上端に面したクランプのベースとともに実行される。ゲルカードの安定性を保証するために、指もベースから下向きに出現し、ゲルカードの上部リムを取り囲んでいる。
【0004】
また、ゲルカードの生体サンプルリセプタクルは上部リムを通って出現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、前記公知のクランプの欠点の1つは、クランプによって生体サンプルの汚染の危険性が著しいことである。
【0006】
本発明の目的の1つは、生体サンプルの汚染の危険性の少ない、ゲルカードの把持に適したクランプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明は以下のタイプのクランプに関するものである。第1アームは第1溝を具備し、第2アームは第2溝を具備し、第1および第2アームが第1解放位置にある場合、第1および第2溝は把持方向に沿って互いに対して離間されており、第1および第2アームが第1把持位置にある場合、第1および第2溝は把持方向に沿って互いに対して近接した状態とされ且つ互いに向き合っており、第1生体サンプルホルダの側端を受け入れることが可能となり、把持方向に沿って側端を締め付けることによって生体サンプルホルダを把持する。
【0008】
本発明によれば、ゲルカードの上部リムに接触するためのクランプの部品は必要なく、そのことは生体サンプルを汚染する危険性を減少している。
【0009】
本発明の別の特徴によれば、第1溝は第1横断プロファイルを備え、少なくともその一部は溝の第1方向に沿ってV字形状である。第2溝は第2横断プロファイルを備え、少なくともその一部は溝の第2方向に沿ってV字形状である。第1および第2アームが第1把持位置にある場合、第1プロファイルの一部のV字形状と第2プロファイルの一部のV字形状とは互いに向かって開いている。
【0010】
サンプルホルダが精密な位置決め保証することなくバスケット内に格納された場合、V字形状プロファイルの存在は、それでも溝の底部に向かった壁をガイドすることを可能にしており、それはクランプによる良好な把持に有利である。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、第1および第2アームが第1把持位置にある場合、第1および第2溝は互いに平行であるか10°以内であり、把持方向と直交であるか10°以内である。
【0012】
ゲルカードの側端は互いに平行であり、溝のこの方向は、各々の側端とそれを受け入れる溝との間の接触長さを大きくすることを可能にしており、溝内においてゲルカードを締め付けるのに適している。
【0013】
本発明の別の特徴によれば、第1アームは第1突出部を具備し、第2アームは第2突出部を具備し、第1および第2アームが第1把持位置にある場合、第1および第2突出部は把持方向に沿って個々のアームに関して突出し、第1溝は第1突出部に形成され、第2溝は第2突出部に形成されている。
【0014】
突出部はゲルカードからアームが離間されることを可能にしており、そのことは上部リムとの接触またはその近接を介した、特に、アームがゲルカードの上部リムの上に延在するように意図されたクランプのベースに接触される場合の汚染の危険性をさらに減少している。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、第1溝は2つの開放端を具備し、第2溝は2つの開放端を具備している。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、一方では、クランプは第1生体サンプルホルダの代わりに第2生体サンプルホルダを把持するのに適しており、第2生体サンプルホルダは、平行に対向した第1および第2側壁と、第1および第2側壁を接続した上壁と、上壁によって担持された生体サンプルリセプタクルと、を具備し、第1および第2側壁は、第2生体サンプルホルダの通常の使用において、上向きに開口したリセプタクルを伴って垂直に延在し、他方では、第1および第2アームは、第2生体サンプルホルダを把持する第2把持位置と、第2サンプルホルダを解放する第2解放位置と、の間で把持方向に沿って互いに対して移動可能とされ、第1および第2把持位置は同一とすることが可能であり、第1および第2解放位置は同一とすることが可能であり、第1アームは第2生体サンプルホルダの第1側壁と接触する第1接触面を具備し、第2アームは第2生体サンプルホルダの第2側壁と接触する第2接触面を具備し、第1および第2アームが第2解放位置にある場合、第1および第2接触面は把持方向に沿って互いに対して離間され、第1および第2アームが第2把持位置にある場合、第1および第2接触面は把持方向に沿って互いにより近接した状態とされて互いに対向しており、個々に第2生体サンプルホルダの第1側壁および第2側壁に接触することが可能であり、把持方向に沿って第1および第2側壁を締め付けることによって第2生体サンプルホルダを把持する。
【0017】
この特徴によって、同一のクランプは「マイクロプレート」を把持することが可能である。
【0018】
本発明の他の2つの特徴によれば、
− 第1アームは第1側壁のスライドを減少させるための第1手段を具備し、第2アームは第1側壁のスライドを減少させるための第2手段を具備しており、
− スライドを減少させるための第1手段は第1接触面に対して張り出した第1ブレードを具備し、張り出した第1ブレードは折りたたまれて第1側壁と接触するように意図されており、スライドを減少させるための第2手段は第2接触面に対して張り出した第2ブレードを具備し、張り出した第2ブレードは折りたたまれて前記第2側壁と接触するように意図されている。
【0019】
これらの特徴のいずれか一方により、クランプは平滑な側壁を備えたサンプルホルダの把持を可能にしている。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、前記第1突出部は第1接触面を具備し、第1接触面は第1溝によって2つに分割されており、第2突出部は第2接触面を具備し、第2接触面は第2溝によって2つに分割されている。
【0021】
したがって、クランプの体積は減少されている。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、
− クランプは把持された生体サンプルホルダの存在を検出するための手段を具備し、
− クランプは生体サンプルホルダに刻印されたバーコードを読み取るためのバーコードリーダを具備している。
【0023】
本発明は第1生体サンプルホルダと本発明によるクランプとのアセンブリにも関する。
【0024】
本発明は生体サンプルの処理および/または解析のための装置にも関し、その装置は、本発明によるクランプと、第1生体サンプルホルダのリセプタクル内に受け入れられた生体サンプルの処理または解析のための第1ステーションと、少なくとも第1生体サンプルホルダのための第1格納位置と、クランプが固定されたヒンジアームと、を具備し、ヒンジアームは、第1生体サンプルホルダを把持するための第1格納位置から、第1生体サンプルホルダを解放するための処理または解析ステーションへとクランプを移動するように構成されており、そこで第1生体サンプルホルダが処理または解析されることが可能である。
【0025】
「処理」との語は、生体サンプルホルダのリセプタクル内にピペッティング(pipetting)することを含んだ、生体サンプルへの任意の処理を指定している。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、一方では、装置は、第2生体サンプルホルダのリセプタクル内に受け入れられた生体サンプルの処理または解析のための第2ステーションと、少なくとも第2生体サンプルホルダのための第2格納位置と、を具備し、他方では、クランプが固定されたヒンジアームを具備し、ヒンジアームは第2生体サンプルホルダを把持するための第2格納位置から、第2生体サンプルホルダを解放するための処理または解析ステーションまでクランプを移動し、そこで第2生体サンプルホルダが処理または解析されることが可能である。
【0027】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、本発明の実施形態の一例の以下の記載を読むことによって明確になるだろう。記載は添付図を参照して行われている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】「マイクロプレート」の斜視図を示している。
【
図3】ゲルカードおよびマイクロプレートの双方を把持することを意図されたクランプを含んだ装置の斜視図を示している。
【
図4】ゲルカードを把持したクランプの斜視図を示している。
【
図5】ゲルカードを把持したクランプの斜視図を示している。
【
図8】マイクロプレートを把持したクランプの斜視図を示している。
【
図9】マイクロプレートを把持したクランプの斜視図を示している。
【
図10】マイクロプレートを把持したクランプのアームの断面を示した図である。
【
図11】クランプのバーコードリーダの動作を図示した、クランプの斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は生体サンプルに関し、それらのサンプルは「ゲル」カードまたは「マイクロプレート」のいずれかの状態において輸送される。
【0030】
本発明に照らして、「生体サンプルホルダ」は全てのゲルカードおよびマイクロプレートに加えて、他の任意の生体サンプルコンテナに言及しており、それらは主張された構造的特徴を備え、本発明によるクランプによって把持されることが可能である。
【0031】
図1を参照すると、例えば「DIAMED, Cressier, Switzerland」によって販売されたゲルカード10は、2つの対向した側端14、16が設けられた長方形の主壁12を具備した生体サンプルホルダを形成している。ゲルカード10は、主壁12に固定され且つ主壁12に直交して側端14と側端16との間に延在した上部リム20を具備している。ゲルカード10はチューブ18の形状の生体サンプルリセプタクル18も具備し、それは主壁12に担持されて上部リム20を通じて表面に出現している。ゲルカードは6つのリセプタクルチューブ18を一般的に具備している。
【0032】
ゲルカード10の通常の使用において、主壁12とチューブ18とは垂直方向に延在し、頂面を向いた上部リム20を備えており、チューブ18は
図1に示されたように上向きに表面に出現している。
【0033】
ゲルカード10は、主壁12のチューブ18の下の面24に刻印されたバーコード22も具備している。
【0034】
側端14、16は一般的に100mmよりも低い高さ、例えば52mmの高さであり、140mmより小さい距離d1、例えば70mmの距離に分離されている。主壁12は2mmより小さい厚さ、例えば1.2mmの厚さであり、10gよりも小さい重量、例えば6gの重量である。上部リム20は20mmよりも小さい幅、例えば9mmの幅である。
【0035】
図2を参照すると、例えば「NUNC, Denmark」によって販売されたマイクロプレート30は、上面34を備えた主壁32を具備した生体サンプルホルダを形成している。マイクロプレート30は、主壁32に直交して壁主32の端部から上面34と反対向きに延在した側壁38も具備している。側壁38は互いに平行に向かい合った第1および第2の大側壁38A、38B、および向かい合った側壁38C、38Dを具備している。
【0036】
マイクロプレート30は、主壁32によって担持された半カップ形状の生体サンプルリセプタクル40を具備している。リセプタクル40は上面34を通じて表面に出現している。リセプタクル40は、例えば12×8のマトリクスに配列されている。
【0037】
マイクロプレート30の通常の使用の際、主壁32は上面34を上向にして水平となるように意図されており、リセプタクル40が上向に出現する。
【0038】
マイクロプレート30は、主壁32の上面34に刻印されたバーコード42も具備している。
【0039】
マイクロプレート30は一般的にポリスチレンから形成されており、重量は60gよりも小さく、一般的に35gである。好適に、主壁32は200mm×150mmよりも小さい寸法であり、例えば128mm×85mmである。側壁38は一般的に30mmよりも低い高さであり、例えば15mmである。第1および第2の大側壁38A、38Bは150mmよりも小さい距離d2、例えば85mmだけ離れている。
【0040】
図3を参照すると、全体的な参照符号50は、ゲルカードまたはマイクロプレートのいずれかに受け入れられた生体サンプルの処理および解析を行うための装置を示している。
【0041】
以下の記載において、装置50の要素の位置および向きは、装置50に付された互いに直交した軸X、Y、Zを参照して行われる。装置50の通常使用される位置において、軸Yは垂直である。したがって、Y軸は垂直方向Yを定義している。さらに、装置50の通常使用される位置において、XおよびZは水平に延在している。X軸は長手方向Xを定義し、Z軸は横方向を定義している。
【0042】
装置50は、長手方向Xに沿った長さおよび横方向Zに沿った幅を持ったキャビネット形状の筐体52を具備している。筐体52は開放長手後面53および開放面53を閉じるための回動フラップ(図示略)を具備している。
【0043】
装置50は、筐体52内において、ゲルカードおよびマイクロプレートを格納するための引き出し56を具備している。引き出し56は横軸Zに沿って並進するように組み付けられており、引き出し56は装置50の前面に向かって開放されることが可能である。引き出し56は複数のロケーション57を具備し、各々のロケーション57はマイクロプレートまたはゲルカードのバスケットを受け入れるように設計されており、そこでゲルカードは整列されて、それらの主壁は互いに略平行となる。
【0044】
装置50は、筐体52内において、テストチューブまたは生体サンプル瓶を装填するための横通路59、ゲルカードまたはマイクロプレートを受け入れるための縦斜面61、および縦斜面61に受け入れられたゲルカードまたはマイクロプレートのためのピペットロボット62を具備している。
【0045】
縦斜面61は横スロットを具備し、各スロットはゲルカードの主壁またはマイクロプレートの側壁38C、38Dの1つを受け入れるように設計されている。
【0046】
装置50は、筐体52内において、縦斜面61と同一形状を備えた培養器62を具備し、加熱装置(図示略)も具備している。
【0047】
装置は、筐体52内において、ゲルカード内に含まれた生体サンプルのための遠心分離機63および解析装置54を具備している。
【0048】
装置50は、マイクロプレート内に含まれた生体サンプルを解析するための装置(図示略)を受け入れるのにも適している。
【0049】
装置50は、装置50内に配列されたゲルカードまたはマイクロプレートの1つのホルダを毎回把持するように意図されたクランプ70も具備している。
【0050】
装置50はクランプ70のヒンジ接続された輸送アーム72を具備している。輸送アーム72は空間の3次元全ての方向に沿ってヒンジ接続されており、クランプ70を格納引き出し56と処理ステーション61、62、63および64との間で移動させることが可能である。ヒンジアーム72はクランプ70を常に同一の向きに維持している。
【0051】
図4〜6を参照すると、クランプ70がゲルカード10を把持しているところが図示されている。
【0052】
クランプ70は、ヒンジアーム72に固定されるように意図された上部ベース74、ならびにベース74から下向きに延在した第1および第2アーム76、78を具備している。
【0053】
第1アーム76には
長手方向Xにおいて第1回動リンク82によってベース74に接続された第1上端80が設けられ、第2アーム78には
長手方向Xに沿って第2回動リンク86によってベース74に接続された第2上端82が設けられている。したがって、第1および第2アーム76、78は垂直平面
YZ中でベース74に対して
長手方向Xに沿って回動可能に構成されている。
【0054】
第1アーム76にはゲルカード10を把持するための第1下端88も設けられ、第2アーム78にはゲルカード10を把持するための第2下端90も設けられている。第1および第2下端88、90は締め付けることによってゲルカード10を把持するように意図されている。
【0055】
ベース74は、「スモールマシン」を介して移動伝達装置のタイプであるクランプ70の第1および第2アーム76、78を駆動するための回転電気モータ92を具備し、第1および第2アーム76、78を
図4および5に示されたゲルカード10を把持する第1位置と、ゲルカード10を解放する位置との間で移動させている。第1および第2アーム76、78が解放位置にある場合、第1および第2把持端88、90は横方向Zに沿って互いに離間されている。第1および第2アームが第1把持位置にある場合、第1および第2把持端88、90は横方向Zに沿って互いにより接近した位置に移動される。
【0056】
第1把持端88は第2アーム78に向かって方向付けられた第1突出部94を具備し、第2把持端90は第1アーム76に向かって方向付けられた第2突出部96を具備している。アーム76、78が把持位置にある場合、第1および第2突出部94、96は方向Yに対して、および個々のアーム76、78に対して垂直に突出している。
【0057】
第1アーム76はゲルカード10の垂直壁12を受け入れるための第1溝98を具備し、それは第1突出部94内に形成されている。それと同様に、第2アーム78はゲルカード10の垂直壁12を受け入れるための第2溝100を具備し、それは第2突出部96内に形成されている。第1および第2溝98、100は垂直平面
YZ内において延在し、すなわち、垂直平面
YZは第1および第2溝98、100の各々を通っている。第1および第2溝98、100の両端は開放されている。
【0058】
図7を参照すると、第1溝98には底部102、底部102に対向した開口部104、および底部102を開口部104に連結ずるための側壁106が設けられている。第1溝98は横プロファイル、すなわち水平面XZにおいてアーム76、78が第1把持位置にある場合、
図7の面に直交した第1溝の方向に沿ったV形状を備えている。したがって、側壁106は底部102とぶつかり、側壁が底部102から開口部104に向かって離れるように互いに離れている。第1および第2アーム76、78が把持位置にある場合、第1溝の方向は垂直である。
【0059】
第2溝100は第1溝と同一であり、したがって、底部108、開口部110、側壁112を具備し、第2溝の方向は全て第1溝98に関するものと同様に全てが配置されている。
【0060】
第1および第2溝98、100間の横軸Zに沿った離間は、ゲルカードの把持位置における離間よりも解放位置における離間の方が大きい。より詳細には、側壁106および112は解放位置において横軸Zに沿って離間され、その距離は距離d1よりも大きく、第1把持位置において距離d1と等しい距離となる。
【0061】
図8〜10を参照すると、クランプ70はマイクロプレート30を把持するように図示されている。
【0062】
この目的のために、第1突出部94はマイクロプレート30の第1側壁38Aと接触する第1前方接触面114を具備し、第2突出部96はマイクロプレート30の第2側壁38Bと接触する第2前方接触面117を具備している。
【0063】
モータ92はマイクロプレート30の解放位置と第2把持位置との間で第1および第2アーム76、78を移動するように構成されている。距離d2は距離d1よりも大きいので、第2把持位置は解放位置と第1把持位置との間に位置している。
【0064】
第1および第2アーム76、78が第2把持位置にある場合、第1および第2前方接触面114、116は解放位置に対して横方向Zに沿って互いにより接近し、互いに向かい合っており、各々がマイクロプレート30の第1側壁38Aおよび第2側壁38Bに接触可能である。これは、横方向Zに沿って第1および第2側壁38A、38Bを締め付けることによってマイクロプレート30を把持するためである。
【0065】
より詳細には、第1および第2接触面114、116は、解放位置においてd2よりも大きい距離で横方向Zに沿って離間されており、マイクロプレートの把持位置においてd2とほぼ等しい距離で離間されている。
【0066】
さらに、第1および第2接触面114、116はそれぞれのアーム76、78に対して傾斜しており、把持位置において、それらは互いにほぼ平行となる。
【0067】
第1接触面114は第1溝98によって2つに分離されており、第2接触面116は第2溝100によって2つに分離されている。
【0068】
第1アーム76は第1接触面114に対して張り出した第1ブレード118も具備しており、第1張り出しブレード118は2つの端部118A,118Bを具備し、各々が第1溝98の個々の側部に配置されて張り出している。それと同様に、第2アーム78も第2接触面116に対して張り出した第2張り出しブレード120を具備し、第2張り出しブレードは2つの張り出し端部120A、120Bを具備し、各々が第2溝100の個々の側部に配置されている。
【0069】
第1張り出しブレード118および特に各々の端部118A、118Bは、第1接触面114と第1側壁38Aとの間のスライドを減少するために、第1側壁38Aを接触するように折りたたまれることを意図されている。それと同様に、第2張り出しブレード120および特に各々の端部120A、120Bは、第2接触面116と第2側壁38Bとの間のスライドを減少するために、第2側壁38Bを接触するように折りたたまれることを意図されている。好適に、各端部118A、118B、120A、120Bは、クランプ70のベース74に向かって上向に湾曲した形状とされ、各端部118A、118B、120A、120Bはマイクロプレート30と上向きに接触するように折りたたまれる。したがって、輸送の間、マイクロプレート30の重量は端部を下向きに展開する傾向があり、より強力に壁38Aおよび38Bに対して端部を押し付け、これによって壁との摩擦を増加させて、スライドの危険性を減少させている。したがって、第1および第2張り出しブレードは、マイクロプレート30がクランプ70から逃げる危険性を減少させている。
【0070】
図10は、第1アーム76とマイクロプレート30の第1側壁38Aとの間の接触を図示したものである。
【0071】
図4〜8を参照すると、クランプ70は、クランプ70によって把持されたゲルカードまたはマイクロプレートの存在を検出するための装置122も具備している。それは例えば光学反射センサである。
【0072】
図11を参照すると、クランプ70はリーダビーム126を備えたバーコードリーダ124も具備し、ゲルカードのバーコード10およびマイクロプレート30のバーコードを読み取り可能であるように意図されている。
【0073】
ここでは装置50の作動例について記載する。
【0074】
作業者は引き出し56を開き、空のゲルカードを含んだバスケットおよび/または空のマイクロプレートをロケーション57に配置し、その後再度引き出し56を閉じる。
【0075】
作業者は、例えば患者からの生体サンプルを含んだテストチューブおよび/または瓶を、横通路59内に装填する。
【0076】
アーム72はクランプ70を移動し、格納された空のゲルカードのバーコードを読み取る。
【0077】
クランプ70は、例えばバーコードによって選択された空のゲルカードを把持する。溝98、100の有利な形状により、ゲルカードはその位置がバスケットに近接していても把持される。
【0078】
アーム72はクランプ70を縦斜面61へと移動し、そこでクランプ70はゲルカードを解放する。
【0079】
その後、1つのロボット60が生体サンプルを斜面61に配置されたゲルカードのリセプタクル18内に移送する。
【0080】
これまでと同様に、ゲルカードはクランプによって培養器62、次いで遠心分離機63、次に解析装置64内に連続的に移動する。
【0081】
それと同様に、アーム72はクランプ70を引き出し56上に移動し、そこでクランプ70は空のマイクロプレートを把持する。アーム72はクランプ70を斜面61に移動し、そこでクランプ70はマイクロプレートを解放する。
【0082】
次いで、1つのロボット60が生体サンプルを斜面61に配置されたマイクロプレートのリセプタクル内に移送する。
【0083】
アーム72とクランプ70とは、その後生体サンプルを含んだマイクロプレートを引き出し56に移送して、そこで作業者が装置50の外側で追加の処理を実施するために回収するか、または解析のためのステーションが装置50内に設けられている場合、マイクロプレートの生体サンプルを解析するためのステーションへと移送する。
【符号の説明】
【0084】
10 ・・・ゲルカード、 12 ・・・主壁、 14、16 ・・・側端、 18 ・・・リセプタクルチューブ、 20 ・・・上部リム、 22 ・・・バーコード、 30 ・・・マイクロプレート、 32 ・・・主壁、 38 ・・・側壁、 40 ・・・生体サンプルリセプタクル、 42 ・・・バーコード、 50 ・・・装置、 52 ・・・筐体、 53 ・・・開放面、 56 ・・・引出し、 57 ・・・ロケーション、 59 ・・・横通路 61 ・・・縦斜面、 62 ・・・培養器、 63 ・・・遠心分離機、 64 ・・・解析装置、 70 ・・・クランプ、 72 ・・・輸送アーム、 74 ・・・上部ベース、 76 ・・・第1アーム、 78 ・・・第2アーム、 92 ・・・回転電気モータ、 94 ・・・第1突出部、 96 ・・・第2突出部、 98 ・・・第1溝、 100 ・・・第2溝、 114 ・・・第1前方接触面、 116 ・・・第2前方接触面、 118 ・・・第1張り出しブレード、 120 ・・・第2張り出しブレード、 124 ・・・バーコードリーダ