【実施例】
【0042】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために与えられるが、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0043】
化合物の融点はSRY−1モデル融点測定器によって測定したものであり、この温度は補正しなかった。
1H−NMRスペクトルは、BrukerのARX400又はUS VarianのUnity Inova 600モデルNMR分光器によって測定し、FAB質量スペクトルはZabspectの高分解能質量分析計によって測定した。
【0044】
実施例1:3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムブロミドの調製
15.6gの4−メチルチアゾールを、50mlの無水アセトン中に溶解させた。混合物に21gのブロモ酢酸を添加し、3日間攪拌し、濾過して固体を得た。次いで、エタノールからの再結晶によって白色の固体を得て、乾燥させて、26gの生成物を72%の収率で得た。融点=240.6℃〜241.6℃。
【0045】
MS[M]
+=158.2m/e;
1H−NMR(400MHz、DMSO)2.48(d,3H);5.55(s,2H);8.09(d,1H);10.25(d,1H);14.05(brs,1H)。
【0046】
実施例2:3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムクロリドの調製
15.6gの4−メチルチアゾールを、50mlの無水アセトン中に溶解させた。混合物に15gのクロロ酢酸を添加し、5日間攪拌し、濾過して固体を得た。次いで、エタノールからの再結晶によって白色の固体を得て、乾燥させて、20.4gの生成物を66.9%の収率で得た。融点=262.3℃〜263.6℃。
【0047】
MS[M]
+=158.2m/e;
1H−NMR(400MHz、DMSO)2.42(d,3H);4.84(s,2H);7.93(d,1H);10.01(d,1H);13.98(brs,1H)。
【0048】
実施例3:3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムブロミドナトリウム(A)の調製
白色の固体である3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムブロミド20gを、90ml〜100mlの無水メタノール中に懸濁させた。次いで、懸濁液に等モル量の炭酸水素ナトリウムを添加し、室温で8時間攪拌し、濾過した。母液に150mlの無水エタノールを添加し、静置して結晶を沈殿させて、15gの生成物を白色の結晶として75%の収率で得た。
【0049】
MS[M]
+=158.2m/e;
1H−NMR(400MHz、DMSO)2.50(d,3H);4.82(s,2H);7.93(d,1H);10.00(d,1H)。
【0050】
元素分析:C
6H
7NO
2SBr(260.08)、理論値:C、27.71%;H、2.71%;N、5.39%;Br、30.72%。
【0051】
実測値:C、27.50%;H、2.836%;N、5.304%;Br、30.891%。
【0052】
X線単結晶回折による結晶構造の測定
白色の結晶である3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムブロミドナトリウム5mgを、1mlの無水エタノール中に加熱しながら溶解させて、無色の溶液を得た。溶液を濾過して、濾液をcalorstatのオーブン内で30℃で5日間静置し、白色の柱状結晶をゆっくりと沈殿させた。結晶粒がゆっくりと成長して単結晶が形成された後、その結晶構造をX線単結晶回折法を用いて測定した。この構造を
図1に示す。
【0053】
結晶学的データ:C
12H
14Br
2N
2Na
2O
4S
2、Mr=520.20、三斜晶系、空間群P−1、結晶学的パラメータ:a=8.9000(18)Å、α=92.82(3)°、b=9.4095(19)Å、β=109.00(3)°、c=12.028(2)Å、
γ=104.11(3)°。
【0054】
実施例4:3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムクロリドナトリウムの調製
白色の結晶である3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾリウムクロリド20gを、90ml〜120mlの無水メタノール中に懸濁させた。次いで、懸濁液に等モル量の炭酸水素ナトリウムを添加し、室温で8時間攪拌し、濾過した。次いで、濾液に150mlの無水エタノールを添加し、静置して結晶を沈殿させて、19gの生成物を白色の結晶として79%の収率で得た。
【0055】
実施例5:AGE−BSA−コラーゲン架橋構造の破壊に関するELISAスクリーニング試験
AGE架橋構造を、AGE−BSAを96ウェルELISAプレート上にコーティングしたラット尾コラーゲンに対して架橋することによって、in vitroで作製した。ELISA法を用いて、AGE架橋に対する化合物の破壊効果を評価した。
【0056】
尾コラーゲンコーティング96ウェルELISAプレートの作製:
正常Wisterラット(体重200±20g)をすばやく屠殺し、尾を切り取って、尾コラーゲンを4℃の温度で以下の通りに調製した。尾腱コラーゲン原線維を採取し、生理食塩水で洗浄して、非コラーゲン原線維組織を剥離した。再蒸留水で3回すすぎ、粉砕して、0.1%氷酢酸中に、頻繁に振とうしながら4℃で1週間浸漬した。最後に、浸液を8000gで30分間の遠心分離にかけ、上清のコラーゲン溶液を回収した。希釈後、タンパク質含量を測定した。96ウェルELISAプレート(Costar)を、コラーゲン溶液を用いて、1ウェル当たり70μgのコラーゲン量で、4℃で24時間十分にウェルをコーティングした後、コーティング溶液を捨てた。プレートを無菌条件下で空気乾燥させて、劣化防止フィルムでコーティングし、最後に使用のために4℃で保管した。
【0057】
AGE−BSAの調製:
0.2M PBS(pH7.4)中50mg/mlのウシ血清アルブミンBSA(V)(Roch)及び0.5Mのグルコースを含有する溶液を、無菌条件下、37℃で暗所において3ヶ月〜4ヶ月間インキュベートし、それによりグリコシル化BSA、すなわちBSA−AGEを形成した。同時に、非グリコシル化BSAをグルコース無添加BSAを用いて調製した。次いで、BSA−AGE溶液を0.01M PBS(pH7.4)に対して透析して、未反応グルコースを除去した。蛍光スキャニング(Exi/Em(395nm/460nm))及びSDS−PAGEを用いてBSA−AGEの形成を検査し、ローリー法によってタンパク質濃度を求めた。
【0058】
アッセイのプロトコル:
尾コラーゲンコーティング96ウェルELISAプレートを、PBS(pH7.4)で1時間十分ウェルを処理して、酸性のコラーゲンを中和した。次いで、プレートをSuperblock(PIERCE)を用いて37℃で1時間ブロッキングして、各回の洗浄につき1分間振とうしながらPBST(PBS−Tween)で3回洗浄した。AGE−BSAを、最大の架橋を得るのに必要な濃度までPBSで希釈した。100μlのAGE−BSA溶液を96ウェルプレートのA、B、C及びDとラベル表示された列のウェルに添加し、同じ濃度のBSA溶液をE、F、G及びHとラベル表示された列のウェルに添加した。各列の最初の3つのウェルは、試薬ブランクウェルを作る目的で、PBSで満たした。プレートを37℃で4時間インキュベートしてコラーゲンを架橋させ、各回の洗浄につき1分間振とうしながらPBSTで4回洗浄した。試験化合物をpH7.4のPBSで希釈した。試験化合物を、4連のAGE−BSA架橋ウェル及び4連のBSAウェルに100μl/ウェルの量で添加した。非破壊対照として、PBSを100μl/ウェルの量で同じように添加した。プレートを37℃で16時間インキュベートし、各回の洗浄につき1分間振とうしながらPBSTで4回洗浄した。80μl/ウェルのウサギ抗BSA抗体(1:500)をウェルに添加して、プレートを37℃で50分間インキュベートした。プレートを各回の洗浄につき1分間振とうしながらPBSTで4回洗浄した後、80μl/ウェルのセイヨウワサビペルオキシターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(1:1000)をウェルに添加した。プレートを37℃で50分間インキュベートした後、各回の洗浄につき1分間振とうしながらPBSTで3回洗浄した。100μl/ウェルのTMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)をウェルに添加した。プレートを暗所、室温で20分間インキュベートした。2M H
2SO
4を用いて反応を終わらせた。反応後10分以内に、光学密度(OD)をBOBRADのModel 550プレートリーダーで、プレートのブランクウェルを0に設定して450nmで読み取った。
【0059】
データ分析:
平均光学密度(OD)値は4連の値から算出した。
補正OD=AGE−BSAウェルの平均OD − BSAウェルの平均OD
【0060】
破壊率はODの減少率(パーセント)によって表した:
[(PBSウェルの平均OD − 試験化合物ウェルの平均OD)/PBSウェルの平均OD]×100%
【0061】
上記プロトコルに従って求めた0.1mmol/L、0.3mmol/L又は1mmol/Lの濃度、又はより低濃度での試験化合物の破壊率を表1に示す(結果は4つ以上のスクリーニング結果の平均値である)。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例6:赤血球表面上へのIgG架橋のin vitro破壊に関するアッセイ
血球の処理方法:
麻酔後の16週齢の糖尿病ラットの頚動脈から血液を採取し、抗凝固のためにヘパリンを添加し、4℃及び1000gで3分間遠心分離して、下層の赤血球(RBC)を得た。0.1mol/LのPBS(pH7.4)で3回洗浄した(1回毎に(per time)4℃及び1000gで3分間遠心分離した)。下層のRBCを実験に使用した。
【0064】
in vitro投与:
0.1mol/Lの等浸透圧PBS(pH7.4)を、陰性対照として用い、また、試験する化合物の薬液を種々の濃度で形成するために溶剤として用いた。薬液又は溶剤対照900μl当たり100μlのRBCを添加して、37℃で16時間〜18時間軽く(slightly)振とうした。1000g及び4℃で3分間遠心分離して、上清を捨てた。0.1mol/LのPBS(pH7.4)を用いてプレートを4回洗浄し、残留化合物を除去した。1000g及び4℃で3分間遠心分離して、下層のRBCを得た。これを1:100に希釈してELISAアッセイに使用した。
【0065】
RBC表面上に架橋したIgG含量に関する免疫吸着アッセイのプロトコル:
Multiscreen−HA 0.45μm 96ウェルマイクロタイタープレート(Millipore)を、Superblock(300μl/ウェル)を用いて37℃で1時間ブロッキングした。次いで、5mmHgの減圧下で乾燥させて、プレートをPBSTで3回、0.1M PBS(pH7.4)で3回洗浄した(プレートを1回毎に1分間振とうした)。試験するRBCを添加し(50μl/ウェル)、PBSバックグラウンド対照ウェルを設定した(OD0)。減圧下で吸引乾燥して、0.1mol/LのPBS(pH7.4)150μlで4回洗浄した(プレートを1回毎に1分間振とうした)。減圧下で吸引乾燥した後、1:500希釈のヤギ抗マウスIgG−HRP(50μl/ウェル)を添加し、室温で2時間静置して、吸引乾燥した。0.1mol/LのPBS(pH7.4)150μl/ウェルで3回洗浄した(プレートを1回毎に1分間振とうした)。吸引乾燥して、o−フェニレンジアミン(OPD)基質着色溶液(100μl/ウェル)を添加して、遮光下、室温で30分間静置し、2mol/LのH
2SO
4(100μl/ウェル)を用いて反応を終わらせた。反応液を即座に取り出し(150μl/ウェル)、標準(normal)96ウェル酵素標識プレートに移し、OD値を490nmで測定した。
【0066】
試験化合物の破壊率の算出:
補正OD=試験するRBC試料の平均OD − RBCを含まないPBSバックグラウンドウェルの平均ODであり、化合物の破壊率は、OD
490nmの減少率(パーセント):(PBSウェルのOD
490nm − 試験する化合物のOD
490nm)/PBSウェルのOD
490nm×100%として表される。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例7:ラットにおける血管コンプライアンスの改善に関するアッセイ
ラットをペントバルビタールナトリウム注射(0.8%、50mg/kg)によって麻酔して、気管カニューレの挿入、ヘパリン抗凝固、血圧を記録するために圧力トランスデューサを介してBiopacの生理記録計と連絡した右総頸動脈カニューレの挿入を行った。胸骨の中央で開胸を行い、上行大動脈を分離し、これをパルスドップラープローブで覆い、パルスドップラー血流計を、Biopacのソフトウェア(Acknowledge、バージョン3)による血行動態パラメータ:収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、心拍(HR)、心拍出量(CO)、心係数(CI)、全末梢抵抗(TPR)、全末梢抵抗係数(TPR係数)、一回拍出量(SV)及び全身動脈コンプライアンス(SAC)等のリアルタイム記録及び算出のためにBiopacの生理記録計に接続した。10分間の術後安定化の後、これらのパラメータを継続的に記録し、30秒間の平均値をこれらのパラメータの測定値として用いた。
【0069】
幾つかの血行動態パラメータの算出のための式:
TPR=平均動脈圧(MAP)/CO
SAC=SV/(SBP − DBP)
【0070】
正常対照と比較すると、糖尿病モデルラットは、体重及び心拍において有意な減少を示すが(P<0.01)、収縮期圧及び拡張期圧は有意な変化を示さず(表1−1)、各々の器官は器官係数の有意な増大を示す(P<0.01)(表1−2)。モデルラットと比較すると、薬剤投与群のラットは体重、心拍、収縮期圧、拡張期圧及び器官係数において有意な変化を示さない。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
ドップラー血流計を使用して、ラットにおけるSBP、DBP、HRを測定し、ラットのCO、CI及びSACを算出した。正常ラットと比較して、糖尿病ラットがCO、CI及びSACにおいて有意な減少を示し(P<0.01)、TPR及びTPRIにおいて有意な増大を示す(P<0.01)ことが表1−3から分かる。これにより、糖尿病ラットが全末梢抵抗の有意な増大、並びに心拍出量及び全身動脈コンプライアンスの有意な減少を有し、心血管系の硬化、並びに長期糖尿病ラットにおける他の構造障害及び機能障害を示すことが示唆される。糖尿病ラットのモデル群と比較すると、薬剤投与の4週間後、薬剤投与群の全てのラットがCO、CI及びSACにおいて有意な増大を示し、TPR及びTPRIにおいて有意な減少を示す。これにより、化合物Aが長期糖尿病ラットにおいて血管硬化を改善する効果を有することが示唆される。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
実施例8:ラットにおける左室機能の改善に関するアッセイ
ラットをペントバルビタールナトリウム注射(0.8%、50mg/kg)によって麻酔して、気管カニューレの挿入、ヘパリン抗凝固、左室圧の経過を記録するために圧力トランスデューサを介してBiopacの生理記録計と連絡した、左室への右総頸動脈カニューレの挿入を行った。Biopacのソフトウェア(Acknowledge、バージョン3)を、心拍、左室収縮期圧ピーク(LVSP)、左室内圧の最大の変化率(±dp/dt max)、左室拡張末期圧(LVEDP)のリアルタイム記録に使用した。10分間の術後安定化の後、上記のパラメータを継続的に記録し、30秒間の平均値をこれらのパラメータの測定値として用いた。結果を表1−4に示す。
【0077】
正常対照群と比較すると、糖尿病群のラットは心拍、LVSP、+dp/dt及び−dp/dtにおいて有意な減少を示す(P<0.01)一方で、LVEDPにおいて有意な増大を示し(P<0.01)、糖尿病ラットの左室機能障害が示唆される。糖尿病モデル群と比較すると、薬剤投与の4週間後、薬剤投与群の全てのラットは+dp/dtの有意な増大を示し、LVEDPの有意な減少を示し(P<0.05又はP<0.01)、A 9mg/kg群を除いてLVSPの有意な増大を示し(P<0.05又はP<0.01)、A 9mg/kg群について−dp/dtの有意な増大を示す(P<0.05)(A 18mg/kg群及びA 36mg/kg群についてはP値はそれぞれ0.055及び0.057であり、同様に増大傾向を示している)。これらのことから、Aは糖尿病によって引き起こされる心臓の収縮期機能障害を改善することが可能であり、左室機能の改善において有意な効果を有することが示唆される(表1−4)。
【0078】
実施例9:ラット尾コラーゲンの溶解性に関する実験
尾腱コラーゲン原線維を氷浴下で採取し、生理食塩水で洗浄して、非コラーゲン原線維組織を剥離した。これを凍結乾燥し、使用に備えて−70℃で保管した。
【0079】
凍結乾燥した尾コラーゲンを粉砕し、2mgの尾コラーゲンを正確に秤量して、10μg/mlのペプシン(溶媒:0.5mol/Lの酢酸)を尾コラーゲン1mg当たり5μgのペプシンという最終濃度に到達するまで添加し、4℃で2時間振とうした(shanken)。40000gで60分間遠心分離して、上清の体積を正確に測定した後、500μlの上清及び全沈殿物を別々に5ml容アンプルに移した。6mol/LのHClを添加し、密閉して、calorstatのオーブン内に入れ、110℃で24時間加水分解した。
【0080】
加水分解溶液中のヒドロキシプロリン濃度の測定:
(1)100μlの加水分解溶液を各々のアンプルから取り出し、10mol/LのNaOH約50μlをpH6.0となるまで添加し、クエン酸緩衝液(50gのクエン酸・H
2O、72.36gの無水酢酸ナトリウム、34gのNaOH、11.52mlの氷酢酸を混合し、水を1200mlとなるまで添加し、300mlのn−プロパノールを添加した)850μlを添加した。(2)クロラミンT(1.41gのクロラミンTを10mlの蒸留水に溶解させた後、10mlのn−プロパノール及び80mlのクエン酸緩衝液を別々に添加した)500μlを添加して、均一に混合し、室温で10分間反応を行った。(3)3.15mol/Lの過塩素酸500μlを添加して、即座に室温で5分間混合した。(4)10%P−DMAB(3.15mol/Lの過塩素酸2.6mlを添加して溶解させた後、n−プロパノールで10mlとなるまで希釈した、1gのp−ジメチルアミノベンズアルデヒド、即時使用可500μlを添加して、即座に75℃の水浴で10分間混合した。(5)反応溶液を即座に氷水中で冷却して、ELIASAによって吸光度値を570nmで測定した。(6)加水分解溶液中のヒドロキシプロリン濃度を、それに応じて共時的に測定したヒドロキシプロリンの検量線(0μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、4μg/ml、5μg/ml及び6μg/ml)を用いて算出した。尾コラーゲンの溶解性は、以下の式を用いて得られる:
尾コラーゲンの溶解性(%)=上清の全ヒドロキシプロリン含量/(上清のヒドロキシプロリン含量 + 沈殿物の全ヒドロキシプロリン含量)×100%
【0081】
正常対照群と比較すると、糖尿病モデル群のラットは、尾コラーゲン溶解性の有意な減少を示す(19.7±7.2%対79.8±12.0%、P<0.01)。A 18mg/kg群及びA 36mg/kg群は、糖尿病モデル群と比較すると、糖尿病ラットにおいて尾コラーゲン溶解性の有意な増大を示す(33.7±17.8%、37.5±11.1%対19.7±7.2%、P<0.01)。
【0082】
実施例10:ラットにおける心筋コラーゲン溶解性の増大に関する実験
血管コンプライアンス実験の終了後、各々のラットの心臓を取り出して、心耳及び右室を取り除き、左室のみを残すようにトリミングした。トリミングした組織ブロックを乳鉢に入れ、少量の液体窒素を添加して、すばやくすり潰した。少量の液体窒素を再度添加して組織を軟らかくし、続けてすりつぶして細かい粉末状にし、使用に備えて−70℃で保管した。約100mgの心筋を秤量し、200μg/mlのペプシン(溶媒:0.5mol/L酢酸)1mlを添加して、37℃でそれぞれ2時間及び24時間振とうし、40000gで60分間遠心分離した。2時間及び24時間のペプシン消化溶液の上清を別々に取り、加水分解し、ヒドロキシプロリン含量を求めるために測定した(加水分解及び測定の方法は上述したものと同じである)。心筋コラーゲンの溶解性は、以下の式によって算出される:
心筋コラーゲンの溶解性(%)=2時間のペプシン消化溶液の上清のヒドロキシプロリン含量/24時間のペプシン消化溶液の上清のヒドロキシプロリン含量×100%
【0083】
正常群と比較すると、糖尿病モデル群のラットは、左室心筋コラーゲン溶解性の有意な減少を示す(42.8±4.3%対68.9±14.1%、P<0.01)。A 18mg/kg群は、糖尿病モデル群と比較すると、糖尿病ラットにおいて心筋コラーゲン溶解性の有意な増大を示す(54.7±11.0%、53.7±11.9%、57.7±7.3%対42.8±4.3%、P<0.01)。
【0084】
実施例5〜実施例10の結果から、化合物AがAGEsの架橋構造をin vitroで破壊し、長期糖尿病ラットにおける大動脈、左室心筋及び腎臓中のAGEs蛍光含量を有意に減少させ、一方で心筋コラーゲン及び尾コラーゲンの溶解性を改善し、ラットにおける大動脈コンプライアンスを改善し、全末梢抵抗を低減し、心拍出量を増大させ、左室機能を有意に改善する効果を有することが示唆される。したがって、化合物Aは既に形成されたAGE架橋を破壊し、血管構造を再構築し、糖尿病によって誘発される心血管系の硬化及び機能障害を回復させることができ、新規のAGEs破壊剤である。
【0085】
実施例11:高齢患者及び糖尿病患者における心血管系薬剤に対する感度の向上に関する実験
ニフェジピンの血圧降下効果に対するAGE破壊剤の影響についての実験を、糖尿病−高血圧症ラットモデルに対して行った。試験動物及び糖尿病−高血圧症モデルは、対照群と比較することにより、モデルが確立されたことを確認して選択したラットであった。実験の間、動物は自由に食物を摂取し、いかなる血糖降下薬又は血圧降下薬の介入も受けなかった。
【0086】
動物のグループ分け及び投与方法:
化合物Aを蒸留水中に溶解させ、使用可能な状態にする。ラットを無作為に糖尿病−高血圧症対照(DM−HTN)群と、A(18mg/kg)群とにグループ分けした。薬物は4週間続けて1日に1回胃内投与し、糖尿病−高血圧症対照群には同量の蒸留水を投与した。実験の終了後、血液試料を採取し、胸部大動脈、肝臓、腎臓を使用に備えて−70℃で保管し、組織生化学的指標、及び遺伝子発現に関するアッセイに使用した。腎臓の別の部分を4%パラホルムアルデヒドで固定し、病理染色に使用した。
【0087】
ニフェジピン溶液の調製:
ニフェジピン粉末をDMSOに配合し、5mg/mlの溶液を形成した後、15%エタノール−10%DMSO−25%PEG400で希釈して、500μg/mlの溶液を調製し、再度希釈して、125μg/ml、62.5μg/ml、31.25μg/ml、15.62μg/ml、7.8μg/mlの溶液を調製した。
【0088】
ニフェジピンの血圧降下効果に対するAGEs破壊剤の影響を研究する方法
ラットをウレタン−クロラロース混合物によって腹腔内麻酔して、ヘパリン抗凝固、圧力トランスデューサを介してBiopacの生理記録計と連絡した右総頸動脈カニューレの挿入を行った。右大腿静脈に定置した針によって、ニフェジピン溶液を5回に分けて濃度の低いものから高いものへという順番でゆっくりと注射した。動脈収縮期圧、拡張期圧、脈圧及び心拍の変化を継続的に記録した。
【0089】
糖尿病−高血圧症ラットにおける血圧に対するAGEs破壊剤の影響
ラットにおいてin vivoで測定した血圧の結果から、化合物Aを4週間投与した糖尿病−高血圧症ラットが心拍及び血圧において有意な変化を与えないことが示される。このことから、AGEs破壊剤は糖尿病−高血圧症ラットの血圧に対して直接的な影響を有しないことが示唆される(表2−2)。
【0090】
【表8】
【0091】
ニフェジピンの血圧降下効果に対するAGE破壊剤の影響
糖尿病−高血圧症ラットにおける血圧降下薬の血圧降下効果を、薬物を濃度の低いものから高いものへという勾配で投与することによって観察した。2回目の投与量のニフェジピン(15.62μg/ml)の投与から、化合物A群は糖尿病−高血圧症モデル群と比較して増大した血圧降下効果を示し始めた。3回目の投与量(31.25μg/ml)を用いた時点で、化合物A群のラットにおけるニフェジピンの血圧降下度は、モデル群より有意に高かった(19.49±13.29mmHg対9.35±6.46mmHg、P<0.05)。4回目の投与量(62.5μg/ml)を用いた時点で、化合物A群はモデル群と比較して向上した効果を示す(29.99±9.06mmHg対18.92±10.54mmHg、P<0.05)。このことから、AGEsを破壊する化合物Aでの処理によって、糖尿病−高血圧症ラットのニフェジピンに対する感受性を向上させることができることが示唆される。
【0092】
本実験では、糖尿病−高血圧症ラットにおける化合物Aでの4週間の前処理の後、血圧降下薬を評価する古典的な方法を使用した。血管平滑筋細胞に作用する血圧降下ニフェジピンを、濃度の低いものから高いものへという勾配で投与したが、濃度の増大とともに、化合物A群のラットに対するニフェジピンの血圧降下効果は高血圧症モデル群よりも良好となった。ニフェジピンの濃度を31.25μg/mlまで増大させた時点で、AGEを破壊する化合物Aの群における血圧降下度は、高血圧症モデル群との有意な統計学的差異を有していた。このことから、AGEを破壊する化合物Aが確かにニフェジピンの血圧降下効果を向上させる効果を有し、高齢患者及び糖尿病患者における心血管系薬剤に対する感度を向上し得ることが示唆される。
【0093】
実施例12:慢性心不全の治療に関する薬力学的実験
動物のグループ分け及び投与方法:
第1のバッチ:20週間NaCl処理した心不全をモデル化した糖尿病ラットを、4つの群に分けた:モデル対照群(モデル対照)、薬物を16週間続けて1日に1回投与した、バルサルタン群(VAL、胃内、10mg/kg)、化合物A群(胃内、18mg/kg)。薬力学的評価を非侵襲的心エコー図法を用いて行った。
【0094】
第2のバッチ:20週間NaCl処理した心不全をモデル化した糖尿病ラット、及び共時的かつ慣習的に飲料水を与えた正常対照ラットを、5つの群に分けた:共時的かつ慣習的に飲料水を与えた正常対照ラット群(正常対照)、モデル対照群(モデル対照)、薬物を10週間続けて1日に1回投与した、化合物A群(胃内、9mg/kg)、化合物A群(胃内、36mg/kg)。左室機能についての薬力学的評価を、心室カテーテル法を用いて行った。
【0095】
評価指標:
(1)形態的指標:左室後壁厚(LVPWd)、左室拡張末期径(LVDd)、収縮末期径(LVDs);(2)機能的指標:駆出率(EF)、短縮率(FS)、心室早期血流充満速度(E)、心房充満速度(A)及びE/A比;ドップラー組織画像;心尖部四腔断層像では、僧帽弁前尖弁輪部を試料採取点として用い、最大拡張早期血流速度(Eaピーク)、最大拡張後期血流速度(Aaピーク)及びEa/Aa比は、左室全体の収縮運動及び拡張運動を反映していた。
【0096】
SPSS統計ソフトウェアを使用してデータを分析及び処理し、全てのデータを平均±標準偏差(平均±SD)で表した。実験の結果では、群間差の有意性検定を一元配置分散分析(one-way ANOVA analysis)方法を用いて統計学的に扱い、P<0.05の場合の有意差を求めた。
【0097】
第1のバッチのモデルの薬力学的評価の結果
心エコー図評価の結果:
形態的指標:モデル化の30週目(投与の10週目)に、心エコー図から、バルサルタン群(10mg/kg)及び化合物A群(18mg/kg)のラットが、飲料水によってNaCl処理した糖尿病モデルラットと比較して、10週間の胃内投与の後、PWdのわずかな増大、並びにLVDd及びLVDsのわずかな減少を示したことが示される。
【0098】
モデル化の36週目(投与の16週目)に、心エコー図から、全ての投与群のラットが、飲料水によってNaCl処理した糖尿病モデルラットと比較して、16週間の胃内投与の後、左室形態的指標の変化傾向において、モデル化の30週目(投与の10週目)に測定されたものと同様の結果を示したことが示される。
【0099】
左室拡張期機能的指標:
モデル化の30週目(投与の10週目)に、心エコー図から、バルサルタン群(10mg/kg)及び化合物A群(18mg/kg)のラットが、飲料水によってNaCl処理した糖尿病モデルラットと比較して、10週間の胃内投与の後、E/A比の有意な減少を示し(モデル対照2.5±0.31;バルサルタン群1.24±0.32;化合物A群1.32±0.31、P<0.05又はP<0.01)、一方で、Ea/Aa比が有意に増大した(P<0.05又はP<0.01)ことが示される。これにより、モデル化の30週目に、10週間のバルサルタン及び化合物Aの投与は、飲料水によってNaCl処理した糖尿病ラットにおいて左室拡張期機能を有意に改善し得ることが示唆される。
【0100】
モデル化の36週目(投与の16週目)に、心エコー図から、バルサルタン群(10mg/kg)及び化合物A群(18mg/kg)のラットが、飲料水によってNaCl処理した糖尿病モデルラットと比較して、16週間の胃内投与の後、E/A比の有意な減少(モデル対照2.5±0.52;バルサルタン群1.32±0.25;化合物A群1.45±0.18、P<0.05又はP<0.01)を示したこと、及びバルサルタン(10mg/kg)がラットにおいてEa/Aa比を有意に増大し得る(P<0.01)ことが示される。これにより、モデル化の36週目に、16週間のバルサルタン及び化合物Aの投与は、飲料水によってNaCl処理した糖尿病ラットにおいて左室拡張期機能を有意に改善し得ることが示唆される。
【0101】
第2のバッチのモデルの評価結果
化合物A群のラットにおける左室機能及び血漿BNPレベルに対する影響
表3−1に示されるように、正常対照群と比較して、飲料水中のNaClで処理した糖尿病ラットは、+dp/dt及び−dp/dtの有意な減少を示し、一方で、LVEDP及び血漿BNPレベルの有意な増大を示した。これにより、心室の収縮機能及び拡張機能の両方における有意な減少が示唆される。化合物A群(9mg/kg及び36mg/kg)のラットは全て、+dp/dt及び−dp/dtの有意な増大(P<0.05又はP<0.01)並びにLVEDPの有意な減少(P<0.01)を示した。このことから、化合物Aが飲料水中のNaClで処理した糖尿病ラットにおいて、心室の拡張期機能を改善し得ることが示唆される。
【0102】
【表9】