(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1締結面を有する第1被締結部材と第2締結面を有する第2被締結部材とを、前記第1締結面と前記第2締結面とを対向させた状態で、これらの締結面に直交する方向である締結方向から締結する締結具であって、
前記第1被締結部材に前記第1締結面から突出して設けられ、前記第1締結面が位置する側に向けて形成された第1当接面を有する第1締結部と、
前記第2被締結部材に設けられ、前記第1締結面が位置する側とは反対側に向けて形成された第2当接面を有する第2締結部と、
前記第1当接面と前記第2当接面とを互いに対向させた状態において、前記第1当接面と前記第2当接面との間に生じた隙間にその先端部側から挿し込まれる楔部材と、
前記楔部材の基端部を前記楔部材の先端部側に向けて弾性力により押圧する弾性部材とを備え、
前記第2締結部は、
前記第1締結部の前記第1当接面が形成された部分である第1当接部を前記弾性部材の押圧方向に対して反対方向に移動させるための移動経路を構成する移動経路構成部と、
前記移動経路に前記第1当接部を導入するための導入口を構成する導入部と、
前記弾性部材の基端部に当接して、前記押圧方向に対して反対方向に前記弾性部材が移動することを阻止する第1ストッパ部と、
前記楔部材の先端部に当接して、前記押圧方向に前記楔部材が移動することを阻止する第2ストッパ部とを有し、
前記楔部材は、前記第1当接面に当接する第1楔面と、前記第2当接面に当接する第2楔面とを有しており、
前記第2締結部は、互いに間隔を隔てて平行に延びる2つの前記第2当接面と、2つの前記第2当接面のそれぞれから突出して形成された2つの前記第2ストッパ部と、2つの前記第2当接面の間に位置する第1スリットに対向して設けられ、棒状の工具の先端部が引っ掛けられる引掛け部とを有しており、
前記引掛け部は、前記第2締結部に設けられた穴である、締結具。
前記第2ストッパ部における前記楔部材が当接する側の端部を基端部とし、その反対側の端部を先端部としたとき、前記第2ストッパ部の先端部には、基端部側に向かうにつれて前記第1締結面から離間するように傾斜する傾斜面が形成されている、請求項2に記載の締結具。
前記第2当接面に前記第2楔面が当接した状態において、前記第1楔面は、前記楔部材の先端部側から基端部側に向かうにつれて前記第1締結面から離間するように傾斜している、請求項3に記載の締結具。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る締結具の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る締結具10の使用状態を示す断面図である。
図2は、締結具10の構成を示す分解斜視図である。
図1に示すように、締結具10は、第1締結面12aを有する第1被締結部材12と、第2締結面14aを有する第2被締結部材14とを、第1締結面12aと第2締結面14aとを対向させた状態で、これらの締結面12a,14aに直交する方向である締結方向Xから締結するものである。本実施形態における第1被締結部材12および第2被締結部材14は、トンネル用セグメントであり、第1被締結部材12と第2被締結部材14とを締結具10で締結する作業を繰り返すことによってトンネル(図示省略)が構築される。
【0013】
図1および
図2に示すように、締結具10は、第1被締結部材12に設けられた第1締結部16と、第2被締結部材14に設けられた第2締結部18と、楔部材20と、弾性部材22とを備えている。第1被締結部材12と第2被締結部材14とを締結する際には、第1被締結部材12に設けられた第1締結部16が、第2被締結部材14に設けられた第2締結部18に対して、締結方向Xに対して直交する方向である締結具10の長さ方向(以下、「長さ方向」という。)Yから組み合わされる。
図1および
図2には、締結方向Xおよび長さ方向Yを矢印で示している。
図2には、さらに、これらの方向X,Yに対して直交する方向である締結具10の幅方向(以下、「幅方向」という。)Zを矢印で示している。
【0014】
図1に示すように、第1締結部16は、アンカー部材24を介して第1被締結部材12に一体的に設けられる部分である。
図1および
図2に示すように、第1締結部16は、第1被締結部材12に埋設される埋設部26と、第1締結面12aから突出する突出部28と、埋設部26と突出部28との間に形成された鍔部30とを有している。
【0015】
図1に示すように、埋設部26は、円柱状に形成されている。埋設部26の基端部には、軸方向に延びる穴27が形成されており、穴27の内周面には、雌ねじ27aが形成されている。アンカー部材24は、第1被締結部材12に埋設される棒状の部材であり、アンカー部材24の先端部には、雄ねじ24aが形成されている。雄ねじ24aが雌ねじ27aに螺合されることによって、アンカー部材24が埋設部26に取付けられる。
【0016】
図2に示すように、突出部28は、埋設部26の先端部から締結方向Xに延びて形成された棒状または板状の脚部32と、脚部32の先端部から幅方向Zに延びて形成された第1当接部34とを有している。突出部28は、長さ方向Yから見たときの形状がT字状となるように形成されており、第1当接部34における第1締結面12a(
図1)と対向する2つの面は、楔部材20に当接する第1当接面36となっている。つまり、第1当接部34は、第1締結面12a(
図1)が位置する側に向けて形成された2つの第1当接面36を有している。
【0017】
図2に示すように、鍔部30は、埋設部26と突出部28との間において、これらの外周面から突出して形成されている。
図1に示すように、締結方向Xにおける鍔部30の一方端面30aは、第1被締結部材12の外部に露出している。第1被締結部材12と第2被締結部材14とを締結したとき、一方端面30aが第2締結部18に当接される。
【0018】
図1に示すように、第2締結部18は、アンカー部材38を介して第2被締結部材14に一体的に設けられる部分であり、第2被締結部材14に設けられた凹部40(
図1)の内面に沿って配置される。第2締結部18は、移動経路構成部42と、導入部44と、2つの第2当接部46(
図2)と、第1ストッパ部48と、第2ストッパ部50とを有している。
【0019】
図2に示すように、移動経路構成部42は、第1締結部16の第1当接部34を弾性部材22の押圧方向(すなわち圧縮された弾性部材22が楔部材20を押圧する方向)に対して反対方向に移動させるための移動経路Rを構成する部分である。移動経路構成部42は、凹部40(
図1)の底面に沿って配置される第1壁部52と、幅方向Zにおける第1壁部52の両端部から第2締結面14a(
図1)が位置する方向に延びて形成された第2壁部54および第3壁部56とを有している。移動経路構成部42の第2締結面14a(
図1)が位置する側の端部には、第1締結部16の脚部32を挿通させて、これを長さ方向Yに移動させるための第1スリット58が構成されている。
【0020】
また、
図1に示すように、長さ方向Yにおける第1壁部52の中央部には、円筒状のアンカー取付け部60が形成されている。アンカー取付け部60の内周面には、雌ねじ60aが形成されている。アンカー部材38は、第2被締結部材14に埋設される棒状の部材であり、アンカー部材38の先端部には、雄ねじ38aが形成されている。雄ねじ38aが雌ねじ60aに螺合されることによって、アンカー部材38がアンカー取付け部60に取付けられる。
【0021】
図1に示すように、凹部40は、長さ方向Yにおいて移動経路構成部42よりも長めに形成されている。凹部40の内側の移動経路構成部42が配置されていない領域には、第1締結部16が締結方向Xから挿入される挿入領域Qが構成されている。
【0022】
図2に示すように、導入部44は、移動経路Rに第1当接部34を導入するための導入口62を構成する部分である。本実施形態では、移動経路構成部42の挿入領域Q側に位置する端部が導入部44となっており、この導入部44の内側に導入口62が構成されている。したがって、導入口62は、移動経路Rに配置された楔部材20の先端部20bよりも先方に位置する。
【0023】
図3は、第2締結部18の構成を示す一部を断面にした斜視図である。
図3に示すように、各第2当接部46は、楔部材20に当接する第2当接面64を構成する部分であり、第2壁部54および第3壁部56(
図2)における第1スリット58側の端部の内面に突出して形成されている。第2当接部46は、導入口62から移動経路Rの奥端にわたって長さ方向Yに延びて形成されている。第2当接部46における第1壁部52に対向する面66は、導入口62から移動経路Rの奥端に向かうにつれて第2締結面14a(
図1)に近づくように傾斜して形成されている。そして、この面66のうち、導入口62側の端部から長手方向中央部までの領域が第2当接面64となっている。つまり、第2当接面64は、導入口62から移動経路Rの奥側に延びて形成されている。また、この面66のうち、長手方向中央部から移動経路Rの奥端までの領域が、弾性部材22を支持する支持面68となっている。
【0024】
図2に示すように、本実施形態では、2つの第2当接部46(2つの第2当接面64を含む。)が、導入口62から移動経路Rの奥端にわたって、互いに間隔を隔てて平行に形成されている。幅方向Zにおける第1スリット58の幅は、第2当接面64の幅によって定まっており、脚部32の幅よりも広く、かつ、第1当接部34の幅よりも狭くなっている。したがって、脚部32を第1スリット58に挿通させて、第1当接部34を移動経路Rに導入すると、第1締結部16の第1当接面36と第2締結部18の第2当接面64とが締結方向Xにおいて対向する。
【0025】
図3に示すように、第1壁部52の内面における第1スリット58と対向する部分には、
図5に示す棒状の工具70の先端部70bが引っ掛けられる「引掛け部」としての穴72が形成されている。工具70は、第2締結部18に対して弾性部材22および楔部材20を仮組みする際に用いられるものである。したがって、穴72は、第2締結部18に対して仮組みされた楔部材20の第2スリット78に対して対向している必要があり、また、第2締結部18に対して仮組みされた弾性部材22よりも導入口62側に配置されている必要がある。なお、「引掛け部」としては、穴72に代えて、工具70が引っ掛けられる段差や突起が用いられてもよい。
【0026】
図4は、第2締結部18に対して弾性部材22および楔部材20を仮組みした状態を示す一部を断面にした斜視図である。
図4に示すように、第1ストッパ部48は、弾性部材22の基端部22aに当接して、弾性部材22の押圧方向に対して反対方向に弾性部材22が移動することを阻止する部分である。第1ストッパ部48は、長さ方向Yにおける移動経路構成部42の導入口62が位置する側とは反対側の端部に形成されている。本実施形態では、第1ストッパ部48が、移動経路構成部42の第1壁部52、第2壁部54および第3壁部56(
図2)と一体となって板状に形成されている。
【0027】
図4に示すように、第2ストッパ部50は、楔部材20の先端部20bに当接して、弾性部材22の押圧方向に楔部材20が移動することを阻止する部分である。第2ストッパ部50は、導入口62において、第2当接面64から突出して形成されている。第2ストッパ部50における楔部材20が当接する側の端部を基端部50aとし、その反対側の端部を先端部50bとしたとき、第2ストッパ部50の先端部50bには、基端部50a側に向かうにつれて第1締結面12a(
図1)および第2締結面14aから離間するように傾斜する傾斜面73が形成されている。第2ストッパ部50の基端部50aは、楔部材20の先端部20bに沿うように、幅方向Zから見たときの形状が凹状に湾曲するように形成されている。これにより基端部50aに当接した楔部材20の先端部20bを保持することができ、先端部20bが第2当接面64から離間することを抑制できる。上述のように、第2ストッパ部50は第2当接面64から突出して形成されているので、第2ストッパ部50と第2当接面64とを連続して形成することができ、これらの加工が容易である。
【0028】
図1に示すように、楔部材20は、第1締結部16の第1当接面36と第2締結部18の第2当接面64とを互いに対向させた状態において、第1当接面36と第2当接面64との間に生じた隙間Sにその先端部20b側から挿し込まれる部材である。
図2に示すように、楔部材20は、2つの第2当接面64のそれぞれに対応する2つの楔片74と、2つの楔片74のそれぞれの基端部においてこれらを連結する連結部76とを有している。2つの楔片74は幅方向Zに離間して配置されており、2つの楔片74の間には、第2スリット78が構成されている。楔片74は、第1当接面36に当接する第1楔面74aと、第2当接面64に当接する第2楔面74bとを有している。楔片74の厚さは、基端部20aから先端部20bに向かうにつれて薄くなっている。
【0029】
図2に示すように、連結部76は板状に形成されており、連結部76の弾性部材22側に位置する面、すなわち楔部材20の基端部20aにおける第2楔面74bよりも第2当接面64から離間した領域が、弾性部材22の先端部22bに接触する押圧面76aとなっている。
図1に示すように、押圧面76aは、その第2当接面64に近接する部分がその第2当接面64から離間する部分よりも楔部材20の先端部20b側に位置するように傾斜して形成されている。つまり、連結部76を幅方向Zから見たとき、押圧面76aは、第2楔面74bに直交する仮想面Uに対して所定角度αで傾斜するように形成されている。所定角度αは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、5度よりも大きく、かつ、20度よりも小さい範囲内に定められている。また、
図1に示すように、第1楔面74aは、第2当接面64に第2楔面74bが当接した状態において、楔部材20の先端部20b側から基端部20a側に向かうにつれて第1締結面12a(
図1)および第2締結面14aから離間するように傾斜して形成されている。
【0030】
図1に示すように、弾性部材22は、楔部材20の基端部20aを楔部材20の先端部20b側に向けて弾性力により押圧する円柱状の本体部80と、本体部80の外周面に装着され、本体部80を支持する支持部82とを有している。本体部80は、ウレタンゴム等のような反発力の大きい弾性材料によって形成されている。支持部82は、スポンジ等によって移動経路構成部42の内面に沿う形状に形成されている。弾性部材22は、移動経路構成部42の内部において2つの第2当接部46の支持面68で支持される。したがって、弾性部材22の押圧方向は、支持面68および第2当接面64が延びる方向と一致し、かつ、弾性部材22に押されて楔部材20が移動する方向と一致する。弾性部材22の自然長さと楔部材20の長さとを合わせた合計長さは、第1ストッパ部48と第2ストッパ部50との離間距離よりも長くなっている。したがって、弾性部材22の基端部22aが第1ストッパ部48に当接し、かつ、楔部材20の先端部20bが第2ストッパ部50に当接した状態(仮組み状態)では、弾性部材22は第1ストッパ部48と楔部材20の基端部20aとの間で圧縮されて弾性力(復元力)を生じさせる。なお、弾性部材22に代えて、金属製のばねが用いられてもよい。
【0031】
図5は、第2締結部18に対して弾性部材22および楔部材20を仮組みする方法を示す断面図である。第2締結部18に対する弾性部材22および楔部材20の仮組み作業は、例えば、第2被締結部材14の製造工場で行われる。この仮組み作業では、まず、第2被締結部材14に埋め込まれた第2締結部18における移動経路構成部42の内部に、導入口62から弾性部材22および楔部材20をこの順に挿入し、これらを支持面68および第2当接面64の上に位置決めする。このとき、楔部材20の先端部20bは、第2ストッパ部50に乗り上げた状態となる。続いて、第2締結部18の第1スリット58と楔部材20の第2スリット78とに工具70を挿入し、工具70の先端部70bを穴72に引っ掛ける。そして、工具70の基端部70aを弾性部材22の押圧方向に対して反対方向(
図5では反時計回り)に回動させることにより、楔部材20の連結部76を工具70の一部で押圧する。すると、楔部材20が、弾性部材22を圧縮しながらその押圧方向に対して反対方向(
図5では右側)に移動し、楔部材20の先端部20bが第2ストッパ部50から離れたところで、楔部材20の第2楔面74bが第2当接面64に当接する。その後、工具70を取り外し、仮組み作業を終了する。工具70を取り外すと、弾性部材22の弾性力によって楔部材20が押圧され、楔部材20の先端部20bが第2ストッパ部50の基端部50aに当接する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、弾性部材22の先端部22bに接触する押圧面76aが、第2楔面74bに直交する仮想面Uに対して所定角度αで傾斜するように形成されているので、楔部材20に作用する弾性力の分力を、第2当接面64が位置する方向に向けることができる。したがって、仮組み作業の際には、第2ストッパ部50に乗り上げていた楔部材20を第2当接面64が位置する方向に容易に移動させることができる。
【0033】
図4に示すように、第2締結部18に対して弾性部材22および楔部材20を仮組みした状態では、弾性部材22の押圧方向に対して反対方向(
図4では右側)に弾性部材22が移動することを第1ストッパ部48で阻止でき、弾性部材22の押圧方向(
図4では左側)に楔部材20が移動することを第2ストッパ部50で阻止できるので、弾性部材22および楔部材20が第2締結部18から脱落し難い。また、第2締結部18に対して振動や衝撃が作用した場合でも、これらの振動や衝撃を弾性部材22で吸収できるので、弾性部材22および楔部材20が第2締結部18から脱落し難い。したがって、上述のように、第2被締結部材をトンネル構築現場に搬入する前に、弾性部材22および楔部材20を第2締結部18に仮組みしておくことができる。
【0034】
図6は、第1当接部34で楔部材20を押して移動させるときの締結具10の状態を示す一部を断面にした斜視図である。仮組み作業が完了すると、第1被締結部材12および第2被締結部材14をトンネル構築現場に搬入し、第1被締結部材12と第2被締結部材14とを締結具10を用いて締結する。
図6に示すように、締結作業では、第2締結部18の導入口62から移動経路Rに第1締結部16の第1当接部34を導入し、第1当接部34の第1当接面36を楔部材20の第1楔面74aに接触させる。本実施形態では、第2ストッパ部50の先端部50bに傾斜面73が形成されているので、第1当接部34を傾斜面73に沿わせて簡単に導入することができる。
【0035】
移動経路Rに第1当接部34を導入した後は、
図1に示すように、アンカー部材24とアンカー部材38とが一直線状に並ぶまで、第1当接部34を移動経路Rのさらに奥側に移動させる。本実施形態では、楔部材20の第1楔面74aが、楔部材20の先端部20b側から基端部20a側に向かうにつれて第1締結面12aおよび第2締結面14aから離間するように傾斜しているので、第1当接部34を長さ方向Yから第1楔面74aに押し当てることができる。したがって、楔部材20を第1当接部34と共に移動させることができ、楔部材20で弾性部材22を圧縮することができる。施行後に第1当接面36と第2当接面64との間の隙間Sが拡大した場合には、弾性部材22の弾性力によって当該隙間Sに楔部材20が挿入される。これにより、隙間Sの拡大による締結力の低下を抑制できる。