(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る可変容量形ポンプの実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施形態は、自動車用内燃機関の機関弁のバルブタイミングを可変にする可変動弁機構の作動源とすると共に、機関の摺動部、特にピストンとシリンダボアとの摺動部にオイルジェットによって潤滑油を供給し、またクランクシャフトの軸受に潤滑油を供給する可変容量形ポンプに適用したものを示している。
【0011】
〔第1実施形態〕
本実施形態における可変容量形ポンプは、ベーンタイプに適用されたものであって、このポンプ本体は、内燃機関のシリンダブロックの前端部などに設けられ、
図1、
図2で示すように、一端開口がポンプカバー2によって閉塞された有底円筒状のポンプハウジング1と、該ポンプハウジング1のほぼ中心部に貫挿配置されて、図外の機関のクランクシャフトによって回転駆動される駆動軸3と、前記ポンプハウジング1の内部に回転自在に収容され、中心部が前記駆動軸3に結合されたロータ4と、該ロータ4の外周側に揺動自在に配置された可動部材であるカムリング5と、から主として構成されている。
【0012】
また、前記ポンプカバー2の外側面に配置固定されたアルミ合金製の制御ハウジング6に設けられて、前記カムリング5を揺動させるために、油圧供給切り換えを制御する切換弁であるパイロット弁7と、図外のシリンダブロックに設けられた制御機構である電磁切換弁8と、を備えている。
【0013】
前記ポンプ本体のポンプハウジング1とポンプカバー2は、
図2に示すように、前記シリンダブロックへ取り付けられる際に、4本のボルト9によって一体的に結合されており、この各ボルト9は、ポンプハウジング1やポンプカバー2にそれぞれ形成されたボルト挿通孔1aなどに挿通して、先端部がシリンダブロックに形成された各雌ねじ孔に螺着締結されるようになっている。
【0014】
前記ポンプハウジング1は、アルミ合金材によって一体に形成され、
図3にも示すように、凹状の作動室であるポンプ収容室1bの底面はカムリング5の軸方向の一側面が摺動することから、平面度や表面粗さなどの精度が高く加工され、摺動範囲が機械加工によって形成されている。
【0015】
また、ポンプハウジング1は、前記ポンプ収容室1bの底面ほぼ中央位置に前記駆動軸3の一端部を軸受する軸受孔1cが貫通形成されていると共に、内周面の所定位置には、前記カムリング5の枢支点となる枢支ピンであるピボットピン10が挿入される有底状のピン孔1dが穿設されている。また、ピボットピン10の軸心とポンプハウジング1の中心(駆動軸3の軸心)を結んだ直線M(以下「カムリング基準線」という。)より垂直上方の位置の内周側に、円弧凹状に形成されたシール面1eが形成されている。
【0016】
前記シール面1eは、前記カムリング5に形成された後述するシール溝5bに嵌着されたシール部材13が常時摺接して、後述する制御油室16をシールするようになっている。前記シール面1eとシール部材13とによってシール機構が構成されている。
【0017】
また、前記シール面1eは、
図3に示すように、前記ピン孔1dを中心とした所定長さの半径Rによって形成される円弧面状に形成されており、前記カムリング5が偏心揺動する範囲において前記シール部材13が常時摺接可能な長さに設定されている。
【0018】
また、ポンプハウジング1の底面には、
図3中、駆動軸3(軸受孔1c)の左側の位置にほぼ三日月凹状の吸入部である吸入ポート11が形成されていると共に、該吸入ポート11に径方向の反対側の位置、つまり、前記駆動軸3の右側の位置に、ほぼ三日月凹状の吐出部である吐出ポート12がそれぞれほぼ対向して形成されている。なお、この吸入ポート11と吐出ポート12の具体的構成については後述する。
【0019】
さらに、前記ポンプ収容室1bの駆動軸3の軸受孔1dには、前記吐出ポート12から吐出された潤滑油が供給される潤滑油溝23が形成されている。この潤滑油溝23は、軸受孔1dの孔縁から内部軸方向の中央付近までの長さに形成されて、内部に保持された潤滑油によって前記駆動軸3と軸受孔1dとの間の潤滑性が確保されて、フリクションによる摩耗や焼き付きを抑制するようになっている。
【0020】
前記ポンプカバー2は、
図2に示すように、アルミ合金材によってほぼプレート状に形成され、ほぼ中央位置に前記駆動軸3の他端部を回転自在に支持する軸受孔2aが貫通形成されていると共に、外周部に前記ボルト挿通孔を形成する複数のボス部が一体に形成されている。また、ポンプカバー2の内側面は、この実施形態ではほぼ平坦面状に形成されているが、ここに前記ポンプ収容室1bの底面と同じく吸入ポートや吐出口ポート、オイル溜まり部を形成することも可能である。また、このポンプカバー2は、ポンプハウジング1に固定された位置決めピン14を介してポンプハウジング1に円周方向の位置決めされつつ前記駆動軸3の両軸受孔1c、2aの同軸性が確保されるようになっている共に、前記各ボルト9によってポンプハウジング1に結合されている。なお、前記制御ハウジング6は、前記ポンプハウジング1の側部に一体的に設けられている。
【0021】
前記駆動軸3は、ポンプカバー2から突出した先端部3aにギアなどを介してクランクシャフトから伝達された回転力によってロータ4を
図1中、矢印方向(時計方向)に回転するようになっており、該駆動軸3を中心とした図中左側の半分が吸入領域となり、右側の半分が吐出領域となる。
【0022】
前記ロータ4は、
図1及び
図2に示すように、内部中心側から外方へ放射状に形成された7つのスリット4a内にそれぞれ7枚のベーン15が進退自在に摺動保持されていると共に、前記各スリット4aの基端部に前記吐出ポート12に吐出された吐出油圧を導入する断面ほぼ円形状の背圧室24がそれぞれ形成されている。この各背圧室24内の圧力とロータ4の回転に伴う遠心力とによって前記各ベーン15を外方へ押し出すようになっている。
【0023】
前記各ベーン15は、内側の各基端縁が前記ロータ4の両側面に有する前後一対のリング溝4b、4cの内部に収容された一対のベーンリング18、18の外周面に摺接している共に、各先端縁が前記カムリング5の内周面5aに摺接自在になっている。また、隣接する各ベーン15間とカムリング5の内周面5a及びロータ4の内周面、ポンプ収容室1b、ポンプカバー2の内側面との間に作動油室である複数のポンプ室19が液密的に隔成されている。
【0024】
前記各ベーンリング18は、回転に伴って前記各ベーン15を放射外方へ押し出すようになっており、機関回転数が低く、また、前記遠心力や背圧室24の圧力が小さい場合でも、各ベーン15の各先端部がそれぞれカムリング5の内周面と摺接して各ポンプ室19が液密に隔成されるようになっている。
【0025】
前記カムリング5は、加工容易な焼結金属によってほぼ円筒状に一体に形成され、外周面の前記カムリング基準線M上の
図1中、右外側位置に前記ピボット凹部5dが形成されており、このピボット凹部5bに挿入位置決めされた前記ピボットピン10が嵌挿して偏心揺動支点となっている。
【0026】
また、カムリング5の前記カムリング基準線Mから上方側の位置には、前記シール溝5bを介してシール部材13を保持するほぼ三角形状の突起部5eが設けられている。
【0027】
なお、前記駆動軸3とロータ4、カムリング5、ベーン15及びベーンリング18によってポンプ構成体が形成されている。
【0028】
前記カムリング5の突起部5e側の外周面とポンプハウジング1の間には、前記カムリング基準線Mを中心とした上方側に制御室である前記制御油室16が形成されている。
【0029】
前記制御油室16は、内部に供給された油圧によって前記カムリング5を後述する付勢部材であるコイルばね28のばね力に抗して偏心量が減少する方向へ押圧するようになっている。また、この制御油室16は、前記パイロット弁7を介して吐出ポート12に連通あるいは連通が遮断されるようになっていると共に、カムリング5の揺動時においても前記シール機構によって常時液密的にシールされるようになっている。
【0030】
また、前記カムリング5の制御油室16側の外側面が、受圧面20として機能するようになっている。
【0031】
したがって、制御油室16内の油圧によるカムリング5に対する押圧力が、該カムリング5を、ピボットピン10を支点として
図1中、反時計方向へ揺動させて偏心量を減少させようとする力になっている。
【0032】
前記シール部材13は、例えば低摩耗性の合成樹脂材によってカムリング5の軸方向に沿って細長く形成されていると共に、カムリング5の前記突起部5eの外周面に形成された前記シール溝5b内に保持されていると共に、該シール溝5bの底部側に固定されたゴム製の弾性部材の弾性力によって前方へ、つまり各シール面1eに押し付けられるようになっている。これにより、制御油室16の常時良好なシール性を確保するようになっている。
【0033】
前記吸入ポート11は、
図1及び
図3に示すように、各ポンプ室19の容積が拡大する領域に開口していると共に、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴って発生する負圧によって、ほぼ中央に形成された吸入口11aを介して図外のオイルパン内の潤滑油が吸入されるようになっている。
【0034】
また、この吸入ポート11の外周側のほぼ中央位置には、後述するばね収容室27まで延設された導入部11bが連続して形成されており、この導入部11bは前記吸入口11aに連通している。この吸入口11aは、導入部11bと共に低圧室22と連通していると共に、ポンプ構成体のポンプ作用によって発生する負圧によって、オイルパンから吸入通路を介して吸い上げられたオイルを吸入ポート11に供給して、容積が拡大された各ポンプ室19に導入させるようになっている。したがって、前記吸入ポート11と吸入口11a、導入部11b及び低圧室22の全体が低圧部として構成されている。
【0035】
一方、前記吐出ポート12は、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴って各ポンプ室19の容積が縮小する領域に開口していると共に、上側に形成された吐出口12aから吐出通路12bを介してシリンダヘッド内部に有する後述のメインオイルギャラリー25を介して機関の各摺動部および可変動弁装置である例えばバルブタイミング制御装置にオイルを供給するようになっている。
【0036】
また、前記メインオイルギャラリー25から分岐した分岐通路29に、後述するパイロット弁7と電磁切換弁8が連通している。
【0037】
なお、前記吐出通路12b近傍のメインオイルギャラリー25には、第1オイルフィルタ51が設けられていると共に、前記分岐通路29のメインオイルギャラリー25との分岐箇所付近には第2オイルフィルタ52が設けられて、前記パイロット弁7や電磁切換弁8へ供給されるオイルを二重に濾過するようになっている。
【0038】
これらのオイルフィルタ51,52は、例えば濾紙が用いられ、目詰まりなどが発生した場合は交換可能なカートリッジ式か前記濾紙の交換が可能になっている。
【0039】
前記カムリング5は、筒状本体の外周面の前記ピボット凹部5dと反対側の位置に径方向外側に突出した延出部であるアーム26が一体に設けられている。このアーム26は、
図1に示すように、カムリング5の筒状本体の前端縁から軸方向のほぼ中央位置まで延設された矩形板状のアーム本体26aと、該アーム本体26aの先端部側の下面に一体に形成された凸部26bと、を有している。
【0040】
前記アーム本体26aは、先端部の前記凸部26bと反対側の下面が平坦状に形成されている一方、前記凸部26bは、その外面が曲率半径の小さな円弧面状に形成されている。
【0041】
また、前記ポンプハウジング1の前記ピン孔1dと反対側の位置、つまり前記アーム26の下方位置には、ばね収容室27が形成されている。
【0042】
前記ばね収容室27は、ポンプハウジング1の軸方向に沿って延びたほぼ平面矩形状に形成され、内部には、前記アーム26を介して前記カムリング5を
図1中、時計方向へ付勢する、つまりロータ4の回転中心と前記カムリング5の内周面の中心との偏心量が大きくなる方向へ前記カムリング5を付勢する前記コイルばね28が収容配置されている。なお、前記ばね収容室27は、前記導入部1bと吸入ポート11を介して前記低圧室22に連通している。
【0043】
前記コイルばね28は、下端縁がばね収容室27の底面に弾接している一方、上端縁がアーム26の凸部26bに弾接しており、ばね収容室27内において所定のばね荷重Wが付与されていて、前記上端縁がアーム26の凸部26bに常時当接しつつカムリング5における前記ロータ4の回転中心とカムリング5の内周面の中心との偏心量が大きくなる方向へ付勢している。
【0044】
すなわち、前記コイルばね28は、ばね荷重Wが付与された状態で常にアーム26を介してカムリング5を上方へ偏心させる方向、言い換えれば各ポンプ室19の容積が大きくなる方向に付勢している。前記ばね荷重Wは、
図6に示すように、ポンプ吐出圧がバルブタイミング制御装置の必要油圧P1のときに、前記制御油室16に油圧が導入されてカムリング5が動き出す荷重に設定されている。
【0045】
また、ポンプハウジング1の前記ばね収容室27と軸方向から対向する位置には、前記アーム26の先端部の上面が当接して該アーム26の時計方向の最大回動位置を規制する球面状の規制突部1fが一体に設けられている。
【0046】
前記パイロット弁7は、
図1に示すように、制御ハウジング6の内部に上下方向に沿って設けられ、底部が蓋部材31によって閉塞された段差円筒状の摺動用孔30と、該摺動用孔30の上側の小径孔部30a内部に上下方向へ摺動自在に設けられたスプール弁32と、摺動用孔30の下側の大径孔部30b内に上下摺動自在に設けられた支持部である大径摺動部33と、前記スプール弁32と大径摺動部32との間に弾装されて、スプール弁32と大径摺動部33を互いに反対方向へ付勢するバルブスプリング34とから主として構成されている。
【0047】
前記摺動用孔30は、制御ハウジング6に形成されたオイル導入口29aを介して前記小径孔部30aの上端が前記分岐通路29に連通していると共に、小径孔部30aの側部に第1連通路35の一端開口35aが形成されている。この第1連通路35は、他端が前記ポンプハウジング1の端壁に形成された連通孔36を介して前記制御油室16に連通している。
【0048】
前記オイル導入口29aは、内径が前記小径孔部30aの内径より小さく形成されて両者間に段差テーパ状の着座面29bが形成されて、この着座面29bにスプール弁32の後述する第1ランド部32aが着座してオイル導入口29aが閉止されるようになっている。
【0049】
また、前記小径孔部30aの下部には、図外のオイルパンに連通するドレン通路37の一端が開口形成されている。
【0050】
前記スプール弁32は、弁体を構成する上端側の第1ランド部32aと、第1ランド部32aと同じ外径の下側の第2ランド部32bと、第1、第2ランド部32a、32bの間に形成された小径軸部32cと、を備え、内部軸方向に第1ランド部32a側の上端が閉塞された円筒状の通路孔32dが形成されている。
【0051】
第1ランド部32aは、第2ランド部32bよりも軸方向の長さが短く形成されて、上下摺動に伴い前記連通孔34の一端開口34aを開閉するようになっていると共に、内部の通路孔32dの上壁面に前記バルブスプリング34の上端34aを弾持している。なお、前記第1ランド部32aの軸方向長さは、前記第1連通孔35の一端開口35aの内径よりも僅かに大きく形成されている。
【0052】
第2ランド部32bは、軸方向に長い外周面を介してスプール弁32を小径孔部30a内で安定的に摺動案内するようになっている。
【0053】
前記小径軸部32cは、外周に第1連通孔35の一端開口35aに臨む環状溝32eが形成されていると共に、円周方向の所定位置に前記環状溝32eと通路孔32dとを連通する透孔32fが径方向に沿って貫通形成されている。
【0054】
一方、前記大径摺動部33は、上端側内部に前記バルブスプリング34の下端34bを弾持する有底のばね受け穴33aが形成されていると共に、下面33bの中央には小径円柱状のストッパ突部33cが一体に設けられている。このストッパ突部33cは、大径摺動部33の最大下降位置を規制すると共に、大径摺動部33の下面である大径受圧面33bと前記蓋部材31の上面との間に大径な受圧室38を形成するものであって、この受圧室38に前記電磁切換弁8を介して導入された油圧を前記下面33bが受けて大径摺動部33を上方へ押し上げるようになっている。
【0055】
前記大径孔部30bの下端側には、前記受圧室38と電磁切換弁8とを連通する第2連通路39の一端が開口形成されている。
【0056】
前記電磁切換弁8は、
図1に示すように、シリンダブロックの所定位置に形成されたバルブ収容孔1gに圧入固定され、内部軸方向に作動孔41が形成されたバルブボディ40と、前記作動孔41の先端部(図中上端部)に圧入され、中央にソレノイド制御ポート43が形成されたバルブシート42と、該バルブシート42の内側に離着座自在に設けられて、前記ソレノイド制御ポート43の開口端を開閉する金属製のボール弁44と、バルブボディ40の一端側に設けられたソレノイド部45とから主として構成されている。
【0057】
前記バルブボディ40は、周壁の上端部に給排ポート46が径方向から貫通形成されていると共に、周壁の下端部側には、前記作動孔41と連通するドレンポート47が径方向から貫通形成されている。前記給排ポート46は、前記第2連通路39を介してパイロット弁7の受圧室38に連通している。
【0058】
前記ソレノイド制御ポート43は、前記シリンダブロックに形成された油通路48を介して前記分岐通路29に連通している。
【0059】
前記ソレノイド部45は、ケーシング45aの内部に図外の電磁コイルや固定鉄心、可動鉄心等が収容配置され、該可動鉄心の先端部に前記作動孔41内に所定隙間をもって摺動して先端が前記ボール弁44を押圧あるいは押圧を解除するプッシュロッド49が設けられている。
【0060】
前記プッシュロッド49の外周面と前記作動孔41の内周面との間には、前記給排ポート46とドレンポート47を適宜連通する筒状の通路50が形成されている。
【0061】
そして、前記電磁コイルに電子コントローラから通電されると、前記プッシュロッド49が進出移動して先端部で前記ボール弁44を押圧してバルブシート42に着座させて前記ソレノイド制御ポート43の開口端を閉止すると同時に、前記筒状通路50を介して給排ポート46とドレンポート47とを連通させる。
【0062】
一方、電磁コイルへの通電が遮断されると、
図5に示すように、前記プッシュロッド49が後退移動してボール弁44の押圧(閉止)を解除し、前記ソレノイド制御ポート43を開成させて、該ソレノイド制御ポート43と給排ポート46を連通させると共に、筒状通路50とドレンポート47との連通を遮断するようになっている。
【0063】
前記電磁コイルには、図外の機関のコントロールユニットからオン−オフ的に電流が通電あるいは通電が遮断されるようになっている。
【0064】
前記コントロールユニットは、機関の油温や水温、機関回転数や負荷等から現在の機関運転状態を検出して、特に機関回転数が
図6のNを基準としてこれより低い場合は前記電磁コイルへ通電し、Nより高い場合は前記通電を遮断するようになっている。
【0065】
但し、機関回転数がN以下でも高負荷の場合などには、電磁コイルへの通電を遮断するようになっている。
〔第1実施形態の作用〕
以下、前記構成による可変容量形オイルポンプの作用について説明する。まず、機関始動後のアイドリング運転などの低回転域では、カムリング5は、
図1に示すように、前記コイルばね28のばね力(付勢力)によってアーム26が規制突部1fに当接して最大時計方向に回転して駆動軸3に対する偏心量が最大となり、ポンプ吐出量が最大になっている。
【0066】
この時点では、前記電磁切換弁8の電磁コイルにコントロールユニットを介して通電されている。このため、前記プッシュロッド49が進出してボール弁44を上方へ押圧してソレノイド制御ポート43の開口端を閉止し、該ソレノイド制御ポート43と給排ポート46との連通を遮断すると共に、前記給排ポート46とドレンポート47を連通させる。
【0067】
したがって、前記大径受圧室38は、オイルパンに開放されて大径摺動部33の受圧面33bに油圧が作用しない状態になっている。このため、大径摺動部33は、バルブスプリング34のばね力によって下方へ付勢されてストッパ突部33cが蓋部材31の上面に当接して最大下降移動が規制されている。
【0068】
一方、前記スプール弁32は、前記バルブスプリング34のばね力によって上方へ付勢されて第1ランド部32aが着座面29bに着座している。これによって、オイル導入口29aと第1連通路35の連通が遮断されると共に、前記第1連通路35とドレン通路37が前記環状溝32eと透孔32f、通路孔32d及び小径孔部30aを介して連通している。
【0069】
したがって、前記制御油室16は、通路溝36や前記環状溝32e等を介してドレン通路37に連通してオイルパンに開放され、油圧が全く作用しない状態になる。
【0070】
よって、前記カムリング5は、コイルばね28のばね力に抗して反時計方向へは回転移動せずに、最大偏心量を保持した状態になる。したがって、オイル吐出量は、機関回転数の上昇に比例して増加し油圧も比例的に上昇することから、
図6に示す低回転領域aの状態になる。なお、この時点における油圧は、前記バルブタイミング制御装置(可変動弁装置)の要求圧になっている。
【0071】
この上昇した油圧がメインオイルギャラリー25から分岐通路29を介してパイロット弁7のオイル導入口29aに導かれると、スプール弁32は、バルブスプリング34のばね力に抗して下方への移動を開始する。そして、前記ポンプ吐出圧がバルブタイミング制御装置の要求圧を超えたP1に達すると、スプール弁32は、僅かに下降移動した位置になる。この状態では、スプール弁32の第1ランド部32aが第1連通路35の一端開口35aを閉止した状態になっていることから、いまだオイル導入口29aと第1連通路35とは連通が遮断された状態が維持されて、制御油室16には油圧が供給されない。
【0072】
前記コイルばね28のばね荷重は、油圧P1がそのまま制御油室16に作用した場合は、その油圧力によってカムリング5が反時計方向へ回転移動して前記駆動軸3とカムリング5の内径が同心となる程度のばね荷重になっている。したがって、スプール弁32がさらに下降して
図4に示す位置になると、パイロット弁7の第1ランド部32aによってオイル導入口29aと第1連通路35が小さな開口面積で連通し、減圧された油圧が第1連通路35から制御油室16へ供給される。そして、前記コイルばね28のばね力に抗してカムリング5が反時計方向へ回転移動することによってポンプ吐出量が調整される。
【0073】
前記第1連通路35から制御油室16に供給された油圧が高すぎると、カムリング5の反時計方向の回転移動量が大きくなってポンプ吐出量が減少する。そうすると、メインオイルギャラリー25へ供給される油圧が低下することから、今度はスプール弁32がバルブスプリング34のばね力によって上方へ移動してオイル導入口29aと第1連通路35との連通開口面積が小さくなって制御油室16への供給油圧が低下する。
【0074】
一方、前記制御油室16に供給された油圧が低すぎる状態になると、カムリング5の反時計方向の回転移動量が小さいため、偏心量が大きい状態となってポンプ吐出量が過剰になる。そうすると、メインオイルギャラリー25側へ供給される油圧が高くなるので、スプール弁32はコイルばね34のばね力に抗して下方へ移動して第1ランド部32aによるオイル導入口29aと第1連通路35との連通開口面積が大きくなって、制御油室16の油圧が上昇する。
【0075】
このように制御油室16の油圧は、所定の油圧P1でオイル導入口29aと第1連通路35の連通が開始し、その後は連通開口面積の変化によって制御される。そして、スプール弁32の小さな移動量で制御できるため、バルブスプリング34のばね定数の影響はほとんど受けない。
【0076】
これは、僅かな油圧変動でも必要十分に連通開口面積の変化させることができ、
図6の実線bに示すように、機関回転数が上昇しても油圧が上がることはなく、ほぼ一定の圧力P1に制御することができるのである。
【0077】
また、機関回転数や油温(オイル粘度)の変化、エアーの混入やキャビテーションの発生などでカムリング5の内周面5aに対する圧力分布が変化し、前記カムリング5を回転移動させようとする油圧力が変化した場合にも、所定の油圧P1でオイル導入口29aと第1連通路35の連通を開始して開口面積による制御が可能であり、その変化の影響をほとんど受けない。
【0078】
さらに、機関回転数が
図6のNに示す回転数に達すると、ピストン冷却のためにオイルジェットを噴射する必要性が発生する。また、機関の最高出力トルク時にはクランクシャフトの軸受に高油圧P2を供給する必要性が発生する。
【0079】
なお、低回転においても機関負荷が高い場合にはオイルジェットを噴射する必要性が発生する。
【0080】
このように
図6のc領域の回転数域の他、b領域の回転数域でも高負荷時には破線で示すように油圧をP2に高める必要があるので、前記電磁切換弁8への通電を遮断する(オフ状態)。
【0081】
すなわち、
図5に示すように、前記電磁切換弁8の電磁コイルへの通電が遮断されると、プッシュロッド49がボール弁44をソレノイド制御ポート43側へ押し付ける力がなくなって、ボール弁44はソレノイド制御ポート43の油圧で反対側(下方)に移動し、筒状通路50を閉止して該筒状通路50とドレンポート47との連通を遮断すると同時に、ソレノイド制御ポート43と給排ポート46とを連通させる。この給排ポート46は、パイロット弁7の第2連通路39と連通しているので、前記受圧室38にメインオイルギャラリー25(分岐通路29)の油圧が導入される。
【0082】
前記受圧室38とオイル導入口29aは共に同じ分岐通路29の油圧が導入されているが、第1ランド部32aの上面の受圧面積より大径孔部30bの受圧面33bの受圧面積が大きいことから、スプール弁32とバルブスプリング34及び大径摺動部33の全体が、共にオイル導入口29a方向へ移動する。ここで、前記大径摺動部33は、大径孔部30bと小径孔部30aの段差部30cに当接してそれ以上の上方移動が規制される。
【0083】
スプール弁32が上方へ移動すると、第1ランド部32aも移動して
図1に示す位置になるので、第1連通路35は再び小径軸部32cの透孔32fを介してドレン通路37と連通する。そうすると、前記制御油室16の油圧が低下するため、前記カムリング5は、コイルばね28のばね力で偏心量が大きくなる方向に戻されてポンプ吐出量を増加させ、
図6に示すP2まで上昇させる。このポンプ吐出量の増加に伴ってメインオイルギャラリー25(分岐通路29)の油圧が増加することから、前記スプール弁32は、
図5に示すように、バルブスプリング34のばねカに抗して下方へ移動する。
【0084】
このように、ポンプ吐出圧がP2に達すると、前述のようにスプール弁32は、
図4に示す位置となり再び第1ランド部32aが第1連通路35位置まで移動して、第1ランド部32aによりオイル導入口29aと第1連通路35が連通し減圧された油圧が第1連通路35から制御油室16に導入される。
【0085】
そして、前記制御油室16は、ポンプ吐出圧をP2の状態に一定に保持するようにパイロット弁7によって制御されるが、その制御方法と作用は前述のポンプ吐出圧をP1に制御するときと同様である。
【0086】
以上のように本実施形態においては、前記電磁切換弁8の電磁コイルへの通電あるいは通電を遮断することによって、メインオイルギャラリーへの吐出油圧を低油圧であるP1と高油圧であるP2の2種類に制御できる。
【0087】
しかも、前記制御されたポンプ吐出圧は、機関回転数や油温などの運転条件に関わらず一定に安定した状態を保つことができる。
【0088】
また、ポンプ吐出圧のP1とP2の関係は、バルブスプリング34の伸縮量とばね定数によって決まるため、複数の内燃機関に用いて異なった関係とする場合でも、バルブスプリング34の設定を変更するだけで他部品は同一設計のまま対応することが可能である。
【0089】
したがって、前記従来技術のように、ポンプ本体の構造を最初から設計し直して新たに製造する必要がないので、製造コストの大幅な低減が図れる。
【0090】
また、たとえ前記バルブスプリング34の変更だけでは対応できないほどの変更であっても、大径摺動部33のストッハ突部33cの長さや、小径孔部30aと大径孔部30bとの間の段差部30cや、オイル導入口29aと小径孔部30bとの間のテーパ状の着座面29bの段差位置などの小さな変更で対応することが可能になる。
【0091】
さらに、前記受圧室38が高圧になった時には、大径摺動部33は前記段差部30cに当接することから受圧室38のシール性は良好である。したがって、大径孔部30bと大径摺動部33の間のクリアランスはそれほど厳しく精度を管理する必要はない。
【0092】
また、前記スプール弁32と大径摺動部33は別個の部材であるため、小径孔部30aと大径孔部30bの同軸度も比較的厳しく管理する必要はないことから、この点でも製造作業が容易になる。
【0093】
本実施形態では、前記コントロールユニットが判断して前記電磁コイルへのオン−オフ制御を行うが、電磁コイルなどの断線時のフェールセーフを考慮しオフで油圧が高まる設定としているが、オン−オフ時の特性を逆にすることも可能である。
【0094】
さらに、本実施形態では、前記メインオイルギャラリー25の上流側と分岐通路29の分岐箇所付近に第1、第2オイルフィルタ51,52を設けているため、二重の濾過によって前記パイロット弁7や電磁切換弁8へ金属粉などのコンタミの流入を十分に阻止することが可能になる。これによって、パイロット弁7や電磁切換弁8などがコンタミによって作動不良を起こすおそれがなくなる。
【0095】
仮に、前記第1、第2フィルタ51,52に目詰まりが発生してしまった場合でも、前記制御油室16に油圧が導入されず、前記カムリング5が最大偏心状態を維持したままとなり、ポンプ吐出圧が過剰になると、リリーフ弁が作動してポンプ吐出圧の過度な上昇を抑制する。このように、油圧回路の目詰まりなどの故障時においても高油圧が確保できるので、機関の高回転高負荷時などで油圧不足によって機関の故障してしまうのを十分に抑制することができる。
〔第2実施形態〕
図7は本発明の第2実施形態を示し、基本構成は第1実施形態と同じであるから共通の構成箇所には同一の符番を付して、具体的な説明は省略する。
【0096】
すなわち、本実施形態では、主として前記ピボットピン10を中心とした下側に第2制御油室53が形成されていると共に、パイロット弁7のスプール弁32の構造を変更したものである。
【0097】
具体的に説明すると、前記ポンプハウジング1の内部に、カムリング基準線M(ピポットピン10)を挟んだ上下位置に、第1制御油室16と第2制御油室53が設けられている。
【0098】
第1制御油室16には、前記分岐通路29から分岐した導入通路54から第1連通孔36を介して前記分岐通路29の油圧が直接導かれ、その油圧はコイルばね28のばね力に抗して偏心量を小さくするようにカムリング5を反時計方向へ回転移動させる力を発生させる。
【0099】
一方、前記第2制御油室53には、前記第1連通孔36と並行に形成された第2連通孔55を介してパイロット弁7から分岐通路29の油圧が導かれるようになっている。この油圧は、コイルばね28のばね力をアシストして偏心量を大きくするようにカムリング5を時計方向へ回転移動させる力を発生させる。
【0100】
前記第1、第2制御油室16、53の両方に同じ圧力が作用している場合は、お互いの油圧が相殺されて小さな油圧となり、コイルばね28のばね力に反して偏心量を小さくする方向にカムリング5を回転移動させることができないようになっている。
【0101】
前記第2制御油室53の油圧を下げると、コイルばね28のばね力をアシストする力が減少するので、カムリング5を、
図9に示すように、コイルばね28のばね力に反して偏心量を小さくする方向に回転移動させることが可能になる。但し、安全のために1MPa程度の油圧でカムリング5を回転移動させられる程度に、前記コイルばね28のばね荷重と第1、第2制御油室16、53からカムリング5外周面に受ける受圧面積の比率が設定されている。
【0102】
また、前記各制御油室16、53を構成するために、ポンプハウジング1の第1シール面1eと対応してこれとほぼ対称位置にポンプハウジング1の一部を膨出して形成された膨出部1hの内面に円弧状の第2シール面1iが形成されている。また、カムリング5の前記膨出部1hに対応した位置に第2突起部5fが形成され、この第2突起部5fの外面に形成された保持溝内に前記第2シール面1iに摺接可能な第2シール部材56が設けられている。
【0103】
その他の構成部品は第1実施形態のポンプ構成体と同じであり、作動も同様である。
【0104】
前記パイロット弁7は、オイル導入口29aと小径孔部30a及び大径孔部30bの3つの内径の異なる円筒形状のシリンダが形成されていることは、第1実施形態と同じであるが、スプール弁57は、軸方向の3箇所に第1ランド部57aと第2ランド部57b及び第3ランド部57cが形成され、前記各ランド部57a、57b、57cの間に第1、第2小径軸部57d、57eが形成されている。
【0105】
また、スプール弁57の内部軸方向には、オイル導入口29a側が開口した有底状の通路孔57fが形成されていると共に、下側の第2小径軸部57eには、前記通路孔57fと連通する透孔57gが径方向に貫通形成されている。なお、前記各小径軸部57d、57eの外周には、環状溝57h、57iがそれぞれ形成されている。
【0106】
さらに、小径孔部30aの軸方向ほぼ中央位置には、一端が前記第2連通孔55を介して前記第2制御油室53に連通する第3連通路58の他端が開口形成されている。また、同じく小径孔部30aの第3連通路58の他端開口58aよりも上方位置には、オイルパンに連通するドレン通路59の一端が開口59a形成されている。
【0107】
前記第3連通路58の開口58aとドレン通路59の開口59aは、前記スプール弁57の第2ランド部57bなどを介して相対的に開閉されて、前記オイル導入口29aと第3連通路58や、該第3連通路58とドレン通路59を連通あるいは遮断するようになっている。
【0108】
前記パイロット弁7の他の構成は第1実施形態と同様であって、スプール弁32と大径摺動部33の間にはバルブスプリング34が配置されて、このばね力によってスプール弁32と大径摺動部33が互いに離間する方向に付勢されている。
【0109】
前記スプール弁32は、第1ランド部57aの上端外周縁がオイル導入口29aと小径孔部30aとの間のテーパ状の着座面29bに着座し、前記大径摺動部33は、凸形状のストッパ突部33cで蓋部材31に当接しているので、受圧室38となる空間を形成して大径摺動孔30bの下端開口部は蓋部材31によって封止される。このとき、前記バルブスプリング34は所定のセット荷重を与えられて配置されている。
【0110】
前記電磁切換弁8は、第1実施形態のものと同一の構成であり、また給排ポート46と第2連通路39が連通していることなどは同一であるから具体的な説明は省略する。
〔第2実施形態の作用〕
次に、本実施形態に係る可変容量形ポンプの作動について、
図6の油圧特性と合わせて説明する。
【0111】
図7は機関回転数が低くポンプ吐出油圧も低い初期の状態を示している。前記電磁切換弁8には、オン状態で通電されているため磁力によってプッシュロッド49が伸びてボール弁44をソレノイド制御ポート43へ押し付けて遮断すると共に、前記給排ポート46とドレンポート47が連通している。前記給排ポート46は、パイロット弁7の第2連通路39と接続されているため、パイロット弁7の受圧室38はオイルパンに開放されて油圧が作用せず低圧状態になっている。したがって、前記大径摺動部33は、ストッパ突部33cがバルブスプリング34のばね力により蓋部材31に当接している。
【0112】
一方、前記スプール弁32は、バルブスプリング34のばね力により前記着座面29bに当接し、この状態では第2小径軸部57eが第3連通路58に開口しており、第3連通路58とオイル導入口29aが第二小径軸部57eの透孔57gを介して連通している。
【0113】
前記第3連通路58は、前記第2連通孔55に接続しているので、第2制御油室53はオイル導入口29aと連通してメインオイルギャラリー25の油圧が作用する状態となっている。
【0114】
前記第1制御油室16は、常に分岐通路29を介してメインオイルギャラリー25と繋がっているので、2つの制御油室16、53には等しい油圧が作用している。したがって、前記カムリング5は、コイルばね28のばね力に逆らい回転移動することはできず、最大偏心量を保持した
図7の状態となる。
【0115】
機関回転数の上昇と比例して吐出量が増加しポンプ吐出圧も比例的に上昇するので、
図6に示す低回転数域aの状態となる。
【0116】
上昇した油圧がパイロット弁7のオイル導入口29aに導かれると、スプール弁32は、バルブスプリング34のばね力に反して下降移動を開始する。ポンプ吐出圧が、
図6に示すように、バルブタイミング制御装置の要求油圧を超えたP1に達すると、スプール弁32の位置は
図8に示した僅かに下降した位置となる。
【0117】
この状態では、オイル導入口29aが、第1ランド部57aによって閉塞された状態になっていると共に、前記第3連通路58とドレン通路59が、第1環状溝57dを介して連通することから、第2制御油室53内の油圧がドレン通路59からオイルパン内にドレンされて低圧状態になる。
【0118】
前記コイルばね28の荷重は、油圧P1がそのまま第2制御油室53に作用した場合には、その油圧力でカムリング5が回転移動できないばね荷重となっているが、第2制御油室53の低圧化に伴って、コイルばね28のばね力に反してカムリング5は反時計方向へ回転移動してポンプ吐出量を調整する。
【0119】
そして、前記第2制御油室53の油圧が低すぎると、カムリング5の反時計方向の回転移動量が大きくなりポンプ吐出量が減少する。そうすると、メインオイルギャラリー25(分岐通路29)の油圧が低下するので、スプール弁57がバルブスプリング34のばね力で上方へ僅かに移動して、第1環状溝57dと第3連通路58の連通開口面積が小さくなりドレン量が減って、第2制御油室53の油圧を上昇させる。
【0120】
一方、第2制御油室53の油圧が高すぎると、カムリング5の反時計方向の回転移動量が小さいのでポンプ吐出量が過剰になる。そうすると、メインオイルギャラリー25の油圧が高くなるので、第2ランド部57dはばね荷重に反して移動して第2環状溝57eと第3連通路58の連通開口面積が大きくなりドレン量が増えて、第2制御油室53の油圧が低下する。
【0121】
このように第2制御油室53の油圧は、所定の油圧P1でオイル導入口29aとの連通が遮断され第1ドレン通路59と第3連通路58の連通が開始し、その後は連通開口面積の変化で制御される。
【0122】
そして、第2ランド部57bの小さな移動量で制御できることから、バルブスプリング34のばね定数の影響はほとんど受けない。
【0123】
これは、僅かな油圧変動でも必要十分に連通開口面積の変化させることができ、
図6のbの実線領域に示すように機関回転数が上昇しても油圧が上がることは無く、ほぼー定の圧力P1に制御することができることを意味しており、第1実施形態と同様である。
また、第1実施形態と同様に油圧をP2へ高める必要があるときには、電磁切換弁8への通電を遮断する(オフ状態)。これによって、電磁切換弁8の給排ポート46はパイロット弁7の第2連通路39と連通されるので、前記受圧室38にメインオイルギャラリー25の油圧が導かれる。
【0124】
前記受圧室38とオイル導入口29aには、共に同じメインオイルギャラリー25の油圧が導かれているが、受圧室38側が大径孔部30bとなっており、大径摺動部33の下面の受圧面33bの受圧面積が第1ランド部57aの上面の受圧面積よりも大きいことから、発生する油圧力が大きい。したがって、
図9に示すように、前記スプール弁32全体とバルブスプリング34が、共にオイル導入口29a方向(上方向)へ移動する。よって、前記大径摺動部33は、大径孔部30bと小径孔部30aの間の段差部30cに当接してそれ以上の移動が不可能となって停止する。
【0125】
前述のように、スプール弁32が上方移動すると第2ランド部57bも移動するので、
図7に示すように、第3連通路58は再び第2環状溝57eの透孔57gを介してオイル導入口29aと連通する。そうすると、前記第2制御油室53の油圧が増加するのでカムリング5はコイルばね28のばね力で偏心量が大きくなる方向に戻されて吐出量を増加させる。吐出量増加に伴いメインオイルギャラリー25の油圧が増加して、前記スプール弁32をバルブスプリング34のばね力に抗して下降へ移動させる。
【0126】
ポンプ吐出圧がP2に達すると、
図9の状態となり、再び第2ランド部57bが第3連通路58の位置まで移動して、第1ランド部57aにより第2環状溝57eと第3連通路58が連通して、ドレン通路59と第2制御油室53が連通する。したがって、該第2制御油室53が低圧になる。
【0127】
そして、第2制御油室53は、ポンプ吐出圧を
図6のP2一定に保持するようにパイロット弁7によって制御されるが、その制御方法と作用は前述のポンプ吐出圧をP1に制御するときと同様である。
【0128】
以上のように第2実施形態により達成できる油圧特性や効果は第1実施形態と同じであるが、前記パイロット弁7や電磁切換弁8が、例えばコンタミなどによってロックしてしまい、第1、第2制御油室16,53の両方に油圧が作用したままの状態となった場合でも所定の油圧(概ねIMPa程度)で作動するフェールセーフ機能が働く。
〔第3実施形態〕
図10は第3実施形態を示し、可変容量オイルポンプのポンプ構成体などの全体の構成は第2実施形態のものと同じであるが、第1制御油室16は、パイロット弁7を介してメインオイルギャラリー25(分岐通路29)の油圧が供給あるいは排出されるようになっている。また、前記コイルばね28の荷重は、停止時に偏心量を最大位置に保持できる程度の荷重に設定されている。
【0129】
そして、小径孔部30aの前記第3連通路58の開口端58aより上側の位置の前記オイル導入口29a側寄りに、第1実施形態と同じ第1連通路35が形成されている。この第1連通路35は、一端35aが小径孔部30aに開口形成され、他端が第1連通孔36を介して第1制御油室16に連通している。
【0130】
3つのランド部57a、57b、57cと2つの小径軸部57d、57e(2つの環状溝57h、57i)を有するスプール弁57などの他の構成は第2実施形態と同じである。
【0131】
前記第1環状溝57hの幅は、第1連通路35の一端開口35aの内径、つまり開口幅とほぼ等しく形成され、第2環状溝57iの幅は、第3連通孔58の一端開口58aの内径、つまり開口幅とほぼ等しく形成されている。第1ドレン通路59の一端開口の開口幅は、第1環状溝57hの幅とほぼ等しく形成されている。また、前記第2小径軸部57eには透孔57eが径方向に沿って形成されて前記第3連通路58に適宜連通するようになっている。
【0132】
電磁切換弁8は、その構成や油通路構成は第2実施形態のものと同じである。
〔第3実施形態の作用〕
ポンプの吐出通路12bから吐出されたオイルはオイルフィルタ51や図外のオイルクーラを通過後、メインオイルギャラリー25に至り、摺動各部や油圧で作動する各部品へ供給される。
【0133】
前記電磁切換弁8のソレノイド制御ポート43とパイロット弁7のオイル導入口29aは、前記メインオイルギャラリー25(分岐通路29)に接続されている。メインオイルギャラリー25と接続されているのが望ましいが、吐出通路12b直後や吐出ポート12に接続することも可能である。
【0134】
前記電磁切換弁8の給排ポート46は、パイロット弁7第2連通路39に接続されている。
【0135】
前記パイロット弁7のスプール弁32の第1環状溝57hは、ドレン通路59に開口しており、第2環状溝57iは、透孔57gを介して通路孔57fに連通していると共に、さらには前記オイル導入口29aに連通している。前記パイロット弁7の第1、第2ドレン通路37,59と電磁切換弁8のドレンポート47は、オイルパンに連通していることは前記実施形態と同じである。
〔第3実施形態の作用〕
次に、本実施形態の作用について説明すると、
図10は機関回転数が低くポンプ吐出圧も低い初期の状態を示している。
【0136】
この時点では、電磁切換弁8は、オンされて通電されているため、電磁コイルの磁力によってプッシュロッド49が伸張してボール弁44がソレノイド制御ポート43の開口端に押し付けられて該ソレノイド制御ポート43とパイロット弁7の第2連通路39との連通を遮断すると共に、給排ポート46とドレンポート47が連通している。前記給排ポート46は、前記第2連通路39と接続されるため、受圧室38はオイルパンに開放されて油圧が作用しない状態となっている。
【0137】
そして、前記パイロット弁7の大径摺動部33は、バルブスプリング34のばね力によりストッパ突部33cを介して蓋部材31に当接している。
【0138】
一方、パイロット弁7のスプール弁32は、バルブスプリング34のばね力によって上方へ付勢されて、小径孔部30aの着座面29bに当接している。この状態では、第1小径軸57d(第1環状溝57h)が、第1連通路35と第1ドレン通路59に開口しているので、第1連通路35は第1ドレン通路59に連通している。
【0139】
第3連通路58とオイル導入口29aは、第2小径軸部57eの透孔57gを介して連通している。前記第1連通路35は、ポンプハウジング1の第1連通孔36に接続しているので、第1制御油室16と第1ドレン通路59が連通して第1制御油室16に油圧が作用しない状態となっている。第3連通路58は、第2連通孔55に接続しているので、第2制御油室53が透孔57gなどを介してオイル導入口29aと連通してメインオイルギャラリー25の油圧が作用している。
【0140】
このように、前記ポンプハウジング1内の第2制御油室53のみにメインオイルギャラリー25の油圧が分岐通路29を介して作用しているため、カムリング5は、コイルばね28のばね力に抗して反時計方向へ回転移動することはできず、最大偏心量を保持した
図10の状態となっている。
【0141】
機関回転数の上昇と比例してポンプ吐出量が増加し油圧も比例的に上昇するので、
図6に示す低回転数域(a)の状態となる。
【0142】
そして、上昇したポンプ油圧がパイロット弁7のオイル導入口29aに導かれると、スプール弁57はバルブスプリング34のばね力に反して下降移動を開始する。
【0143】
ポンプ吐出圧が、バルブタイミング制御装置の要求油圧を超えたP1(
図6参照)に達すると、スプール弁57は
図11に示す下降位置になる。
【0144】
前記第1連通路35の開口幅と第1ランド部57aの幅はほぼ等しくなっており、第1連通路35の連通先は、オイル導入口29aまたは第1環状溝57hを介して第1ドレン通路59とで選択式に切り換えられるようになっている。一方、第3連通路58の連通先は、第2環状溝57iを介してオイル導入口29a、または第1環状溝57hを介して第1ドレン通路59とで選択式に切換えられようになっている。そして、この二つの第1連通路35と第3連通路58の切り換えはほぼ同時に行われる。
【0145】
したがって、前記第1制御油室16の連通先を、第1ドレン通路59とオイル導入口29aとで切り換え、第2制御油室53の連通先を、オイル導入口29aと第1ドレン通路59とで切り換えを同時に行っていることになる。そして、切り換えが行われると、前記コイルばね28のばね力に抗してカムリング5が反時計方向へ回転移動して吐出量を調整する。
【0146】
第1制御油室16の油圧が高すぎる、あるいは第2制御油室53の油圧が低すぎると、前記カムリング5の反時計方向の回転移動量が大きくなって吐出量が減少する。そうすると、メインオイルギャラリー25の油圧が低下するので、スプール弁57がばね力で僅かに上昇移動して第1ランド部57aによるオイル導入口29aと第1連通路35の連通開口面積が小さくなり、第1制御油室16の油圧が下げられると同時に、第2ランド部57bが移動して第2環状溝57iと第1連通路35の連通開口面積が小さくなりドレン量が減って、第2制御油室53の油圧が上げられる。
【0147】
第1制御油室16の油圧が低すぎ、あるいは第2制御油室53の油圧が高すぎると、カムリング5の回転移動量が小さいのでポンプ吐出量が過剰となる。そうすると、メインオイルギャラリー25の油圧が高くなるので、第1ランド部57aは、ばね力に抗して下降移動してオイル導入口29aと第1連通路35の連通開口面積を大きくさせ、第1制御油室16の油圧が上げられると同時に、第2ランド部57bも下降移動して第1環状溝57hと第3連通路58の連通開口面積が大きくなることから、第2制御油室53からのオイルのドレン量が増えて、第2制御油室53の油圧が下げられる。
【0148】
このように二つの制御油室16、53の油圧は、所定の油圧P1でオイル導入口29aやドレン通路59と第1連通路35、第2連通孔58の連通が開始し、その後は連通開口面積の変化で制御される。
【0149】
そして、両方の制御油室16,53の油圧制御を同時に行うため、第1、第2ランド部57a、57bの移動量が第1実施形態や第2実施形態の場合に対してさらに小さくても制御できる。このため、バルブスプリング34のばね定数の影響をより少なくできる。
【0150】
また、ポンプ吐出圧をP2へ高める必要があるときには、前記電磁切換弁8への電流を遮断すれば可能になるのは第1、第2実施形態と同様であり、その作動も同様である。
【0151】
ポンプ吐出圧をP2に制御しているときのパイロット弁7の状態を
図12に示す。つまり、第2連通路39から受圧室38に油圧が導入されて大径摺動部33を介して前記スプール弁32全体とバルブスプリング34が、共にオイル導入口29a方向(上方向)へ移動する。よって、前記大径摺動部33は、大径孔部30bと小径孔部30aの間の段差部30cに当接してそれ以上の移動が不可能となって停止する。
〔第4実施形態〕
図13A〜Cは第4実施形態に供されるパイロット弁7を示し、この実施形態では前記第1実施形態のパイロット弁7の変形例を示している。ポンプ本体は、第1実施形態と同−の構造であり、前記電磁切換弁8も第1実施形態〜第3実施形態のものと同一である。
【0152】
第1実施形態〜第3実施形態では、前記大径摺動部33の位置を移動させることによりバルブスプリング34の全長を変えて前記スプール弁32,57による第1連通路35の連通、遮断状態を切換えるときの切換え圧力を変化させているが、この実施形態のように、パイロット弁7のポート位置を変えることによっても同じように切り換え圧力を変化させることができる。
【0153】
すなわち、第4実施形態では、パイロット弁7の摺動用孔30とスプール弁32の間にスリーブ60を配置し、電磁切換弁8の通電−非通電(オン−オフ)でスリーブ60を移動させることによって切り換え時のバルブスプリング34長さを変え、ばね荷重を変えて2種類の制御油圧P1とP2に油圧制御できるようにしたものである。
【0154】
具体的に説明すれば、前記スリーブ60は、円筒状の小径部60aと該小径部60aの図中下端縁に一体に設けられたフランジ状の大径部60bとから構成され、前記小径部60aが小径孔部30a内に微小クリアランスをもって摺動自在に収容されていると共に、大径部60bが微小クリアランスをもって大径孔部30b内に摺動自在に配置されている。また、前記スプール弁32が、前記小径部60aの内周面に微小クリアランスをもって摺動自在に収容されている。
【0155】
また、前記小径部60aの前記第1連通路35に対応する位置には、複数の連通ポート61が径方向から貫通形成されており、前記第1連通路35の開口幅は、前記連通ポート61が上下移動しても常に連通が可能な幅に設定されている。
【0156】
図13Aはポンプ吐出圧が作用していないか、または低油圧の初期状態を示している。前記スリーブ60の内周面の下部には、円環凸状のスプリング座62が設けられており、このスプリング座62と前記大径孔部30bの下端開口を封止する蓋部材31の間に、前記スリーブ60を上方へ付勢する第3付勢部材であるスリーブスプリング63が弾装されている。このスリーブスプリング63は、前記オイル導入口29aに油圧が作用してもスリーブが移動しない程度のばね荷重に設定され、スリーブ60を前記小径孔部30aの上端に形成された着座面30dに押し当て付勢している。
【0157】
前記蓋部材31のほぼ中央位置には、スリーブ60の内部と連通するドレンポート31aが貫通形成されている。
【0158】
前記スプール弁32は、その構造が第1実施形態のものと同一であって、上側の第1ランド部32aと、下側の第2ランド部32bを有し、該両ランド部32a、32b間に小径軸部32cが形成されている。また、スプール弁32の内部軸方向には、上端が閉塞された通路孔32dが形成されている。前記小径軸部32cは、外周に環状溝32eが形成されていると共に、内部径方向に前記通路孔32dと環状溝32eを連通する透孔32fが貫通形成されている。
【0159】
前記スプール弁32の通路孔3上面と蓋部材31の間には、スプール弁32を、オイル導入口29aを閉塞する方向へ付勢するバルブスプリング34が設けられている。
【0160】
小径孔部30aと大径孔部30bの段差部30cとスリーブ60の小径部60aと大径部60bの段差部の間に円環状の受圧室64が形成され、ここに第2連通路39が開口している。この第2連通路39には、図外の前記電磁切換弁8の給排ポート46が接続されている。
【0161】
スリーブ60の前記連通ポート61は、大径な第1連通路35と連通している。
【0162】
そして、
図13Aに示す初期状態では、前記第1連通路35は、連通ポート61と環状溝32e及び透孔32fを介してスリーブ60の内部と連通していると共に、蓋部材31のドレンポート31aと連通している。
【0163】
前記連通ポート61は、スリーブ60の回転方向の向きに拘わらず前記第1連通路35と連通するように、軸方向同位置に円周方向に複数設けられている。
【0164】
そして、それぞれの構成部材の油通路の接続は
図1に示す第1実施形態と同−であり、作動も同じであるから
図6に示す油圧特性が得られる。
【0165】
つまり、ポンプ吐出圧がP1に上昇したときのパイロット弁7は、
図13Bに示すように、オイル導入口29aの油圧により、スプール弁32はバルブスプリング34のばねカに反して蓋部材31方向に下降移動する。第1ランド部32aの幅と連通ポート61の開口幅はほぼ等しく、第1ランド部32aが連通ポート61の位置まで移動したときに、前記連通ポート61とドレンポート31aとの連通が遮断されると共に、連通ポート61とオイル導入口29aとの連通に切換えられる。これによって、前記制御油室16に油圧が導入される。
【0166】
この時点では、前記電磁切換弁8への電流が遮断されて、前記ソレノイド制御ポート43と第2連通路39が連通されているから、
図13Cに示すように、前記環状受圧室64に油圧が導入される。
【0167】
前記環状受圧室64に油圧が導入されると、スリーブ60の大径部60bに作用する油圧力によってスリーブ60はスリーブスプリング63のばね力に抗して蓋部材31方向に下降移動して大径部60bの下面が蓋部材31の上面に強く押し付けられる。これによって、良好なシール性が得られると共に、前記環状受圧室64が高圧になる。
【0168】
なお、前記スリーブ60の小径部60aと摺動用孔30の小径孔部30aの間のクリアランスをより小さくしてシール性を確保しておけば、前記大径部60bと大径孔部30bのクリアランスを大きくすることが可能になり、クリアランスを大きくした分だけ小径部60aと大径部60bの同軸精度を緩和することができる。
【0169】
図13Cに示すように、前記スリーブ60の下降移動に伴い連通ポート61も蓋部材31方向に移動することから、スプール弁32の第1ランド部32aも連通ポート61と一緒に下降移動する。この際、前記バルブスプリング34を圧縮して荷重が高まるため、その切換え圧力は
図6に示すP2となる。
【0170】
他の作用効果は第1実施形態と同じであるが、スリーブ60を鉄系材によって形成することにより、スプール弁32との摺動箇所の耐摩耗性が向上し、また、アルミ合金材である制御ハウジング6の摺動用孔30との摺動面積がスプール弁32より大きく耐摩耗性を向上させることができる。
【0171】
〔第5実施形態〕
図14A〜Cは第5実施形態に供されるパイロット弁7を示し、この実施形態では前記第2実施形態に対して第4実施形態と同様にスリーブ60を追加で配置したパイロット弁7の変形例を示している。ポンプ本体は、第1実施形態と同−の構造であり、前記電磁切換弁8も第1実施形態〜第3実施形態のものと同一である。
【0172】
すなわち、摺動用孔30とスプール弁57の間に、スリーブ60が上下摺動自在に配置され、電磁切換弁8への通電−非通電(オン−オフ)により前記スリーブ60を上下移動することによって切換え時のバルブスプリング34の全長を変え、つまりばね荷重を変えて2種類の制御油圧P1とP2に油圧制御できるようにしたものである。
【0173】
前記スリーブ60は、第3連通路58と対応した位置に周方向の等間隔位置に複数の連通ポート61が径方向へ貫通形成されていると共に、該連通ポート61の上側にドレン通路59と連通する複数のドレンポート65が径方向へ貫通形成されている。なお、このドレンポート65は、蓋部材31のドレンポート31aと置き換えられている。
【0174】
前記スプール弁57は、バルブスプリング34のばね力によってオイル導入口29aを閉止する方向に付勢されている一方、スリーブ60は、スリーブスプリング63のばね力によって着座面30dに当接する方向へ付勢されている。
【0175】
図14Aはパイロット弁7の初期状態を示しており、この状態では、連通ポート61が、第2実施形態と同様に透孔57gなどを介してオイル導入口29aに連通していると共に、第3連通路58に連通している。したがって、メインオイルギャラリー25の吐出圧は、第2制御油室53に供給されている。
【0176】
図14Bは前記メインオイルギャラリー25の油圧がP1のときのパイロット弁7の作動状態を示し、スプール弁57の第2ランド部57bの幅と連通ポート61の開口幅はほぼ等しく、第2ランド部57bが連通ポート61の位置まで下降移動したときに、連通ポート61が閉止されて第2制御油室53へのオイル供給が停止されると共に、連通ポート61が第1環状溝57hを介してドレンポート65に切り換えられて第2制御油室53の油圧が減圧される。
【0177】
その後、電磁切換弁8がオフされて電流が遮断されると、
図14Cに示すように、環状受圧室64に油圧が導入されて該受圧室64の油圧が上昇すると、スリーブ60がスリーブスプリング63のばね力に抗して蓋部材31方向に下降移動して大径部60bの下面が蓋部材31の上面に押し当てられる。
【0178】
スリーブ60の下降移動に伴い連通ポート61も蓋部材31方向に移動するため、スプール弁57の第2ランド部57bも連通ポート61に合わせて下降移動する。この際、バルブスプリング34を縮めて荷重が高まることからその切換え圧力は
図6に示すP2になる。
【0179】
前記第2連通孔58とドレン通路59の開口幅は、連通ポート61とドレンポート65が移動しても連通が可能な幅に設定されていることから、前記それぞれの連通が確保される。
他の作用効果は第2実施形態と同じであるが、スリーブ60を鉄系材料によって形成してあることにより、スプール弁57との摺動部の耐摩耗性が向上し、また、アルミ合金材である制御ハウジング6と摺動用孔30の摺動面積がスプール弁57より大きく耐摩耗性を向上させる効果が得られることは、第4実施形態と同じである。
〔第6実施形態〕
図15A〜Cは第6実施形態に供されるパイロット弁7を示し、この実施形態では前記第3実施形態に対して第4、第5実施形態と同様にスリーブ60を追加で配置したパイロット弁7の変形例を示している。ポンプ本体は、第1実施形態と同−の構造であり、前記電磁切換弁8も第1実施形態〜第3実施形態のものと同一である。
【0180】
摺動用孔30とスプール弁57との間に摺動自在に設けられたスリーブ60は、第1連通路35に連通する複数の第1連通ポート61が径方向へ貫通形成されていると共に、この下側にドレン通路59に連通する複数のドレンポート66が径方向へ貫通形成されている。また、このドレンポート66の下側には、第3連通路58に連通する複数の第2連通ポート67が貫通形成されている。
【0181】
そして、前記電磁切換弁8のオン−オフでスリーブ60を上下移動させることによって切換え時のバルブスプリング34の全長を変え、これによりばね荷重を変えて2種類の制御油圧P1とP2に油圧制御できるようにしたものである。
【0182】
図15Aはパイロット弁7の初期状態を示し、スリーブ60とスプール弁57は、バルブスプリング34とスリーブスプリング63のばね力で着座面30dに押し当てられている。
【0183】
この状態では、第1連通路35は、第3実施形態と同様に第1環状溝57hを介してドレンポート66及びドレン通路59に連通し、第3連通路58は第2連通ポート67や透孔57gなどを介してオイル導入口29aと連通している。
【0184】
なお、ポンプ本体と電磁切換弁8及びそれらの接続は、第2実施形態と同一である。
【0185】
図15Bはメインオイルギャラリー25の油圧がP1のときのパイロット弁7の作動状態を示し、第1ランド部57aの幅と第1連通ポート61の開口幅はほぼ等しく、第2ランド部57bの幅と第2連通ポート67の開口幅はほぼ等しい。したがって、第1、第2ランド部57a、57bが第1、第2連通ポート61、67の位置まで移動したときは、第1連通ポート61の接続先がドレンポート66からオイル導入口29aに切換えられて、第2連通ポート67の接続先がオイル導入口29aからドレンポート66に切換えられて、ポンプ本体の第1制御油室16には油圧が導入され、第2制御油室53の油圧が減圧される。
【0186】
図15Cは前記電磁切換弁8がオフされて非通電状態になり、環状受圧室64に油圧が導入された状態を示し、受圧室64に油圧が導入されるとスリーブ60はスリーブスプリング63のばね力に抗して蓋部材31方向へ下降移動し大径部60bの下面が蓋部材31の上面に押し当てられる。
【0187】
スリーブ60の下降移動に伴い第1、第2連通ポート61,67も蓋部材31方向に下降移動するため、スプール弁57の第1、第2ランド部57a、57bも各連通ポート61、67に合わせて下降移動する。この際、バルブスプリング34を縮めて荷重が高まるため、その切換え圧力は
図6に示すP2となる。
【0188】
前記第1連通路35とドレン通路59の開口幅は、前記連通ポート61とドレンポート66が移動しても連通可能な幅に設定されている。
【0189】
〔第7実施形態〕
図16A〜Cは第7実施形態を示し、これは基本構造が第4実施形態と同じであるが、異なるところは、摺動用孔30とスプール弁57の間に摺動自在に配置されたスリーブ60の構造を変更したものである。このスリーブ60は、小径部60aの上端に上壁60cが形成され、この上壁60cの中央にオイル導入口29aと連通する大径連通孔60dが貫通形成されていると共に、上壁60cの下面がスプール弁32の最大上方移動を規制する第2着座面60eになっている。このスプール弁32は、第1実施形態のものと同一の構造である。
【0190】
また、前記小径部60aの上部側には、第1連通路35と連通する複数の連通ポート61が径方向に貫通形成されている。
【0191】
前記蓋部材31は、上面中央に段差径状の凸部31bが一体に形成され、この凸部31bの外周面に前記スリーブ60の下部内周面が上下方向へ摺動案内されるようになっている。また、蓋部材31の内部中央にドレンポート31aが軸方向に貫通形成されている。
前記スプール弁57と蓋部材31の凸部31b上面と間には、バルブスプリング34が所定のばね荷重を持って配置されており、このばね力によってスプール弁57の第1ランド部32aをスリーブ60の第2着座面60eに押し当て、その力でスリーブ60を摺動用孔30の段差面30dに押し当てている。
【0192】
また、スリーブ60の大径部60b下面と蓋部材31との間に受圧室64が形成されて、ここに前記第2連通路39の一端が開口している。
【0193】
前記小径孔部30aと大径孔部30bの段差部とスリーブ60の小径部60aと大径部60bの段差部の間に、背圧室68が形成されている。この背圧室68は、スリーブ60の小径部60a下部側に設けられた背圧ドレン孔69を介して蓋部材31のドレンポート31aと連通している。
そして、
図16Aに示す初期状態では、制御油室16は、連通孔35と連通ポート61及び小径軸部32cの透孔32fを介してスリーブ内の通路孔32dと蓋部材31のドレンポート31aと連通している。前記連通ポート61は、スリーブ60の回転方向の向きに拘わらず前記連通孔35と常時連通している。
【0194】
ポンプ本体は、第1実施形態と同−であり、電磁切換弁8との接続構成も同じであり、また作動も同じであって、
図6に示す油圧特性が得られる。但し、電磁切換弁8は、通電時に第2連通路39から受圧室64に油圧を供給し、非通電時には第2連通路39への油圧供給を遮断してドレンポート47と連通させる仕様のものへ変更される。
【0195】
ポンプ吐出圧がP1に上昇したときは、
図16Bに示すように、オイル導入口29aの油圧により、スプール弁32がバルブスプリング34のばねカに抗して蓋部材31方向へ下降移動する。
【0196】
このスプール弁32が第2着座面60eから離れてバルブスプリング34のばね力が作用しなくても、電磁切換弁8に電流が流れている状態では受圧室64に油圧が供給されているためスリーブ60の上壁60cが着座面30dに押し当てられた状態を維持している。すなわち、スリーブ60は、大径部60bの受圧室64から受ける受圧面積が大きく設定されていることから、同じメインオイルギャラリー25の油圧が作用した場合には上方へ押し上げられて着座面30dへ押し当てられる。
【0197】
スプール弁32の第1ランド部32aの幅と連通ポート61の開口幅はほぼ等しく、第1ランド部32aが連通ポート61の位置まで移動したときに、連通ポート61がドレンポート31aとの連通が遮断されてオイル導入口29aと連通して前記制御油室16に油圧が導入される。
【0198】
前記電磁切換弁8がオフされて電流が遮断されると、受圧室64の油圧がドレンされると、
図16Cに示すように、受圧室38の油圧がドレンされることから、第2着座面60eの外側端部に作用する油圧力によってスリーブ60は蓋部材31方向へ下降移動し、蓋部材31の凸部31bの段差状ストッパ面31cに押し当てられる。そして、蓋部材31のストッパ面31cでスリーブ60の下降移動は規制されて受圧室38は最小容積となる。
【0199】
前記スリーブ60の下降移動に伴い連通ポート61も蓋部材31方向に移動するため、スプール弁57の第1ランド部32aも連通ポート61に合わせて下降移動する。この際、バルブスプリング34を縮めて荷重が高まるため、その切換え圧力は
図6に示すP2となる。連通孔35の開口幅は、スリーブ60の連通ポート61が移動しても常時連通状態が確保される幅に設定されている。
【0200】
その他の作用効果は第4実施形態と同じであるが、この実施形態では、前記圧室64に油圧が供給されないときには、ポンプ吐出圧が高圧のP2となるため、通路詰り時のフェールセーフとなる効果が得られる。
〔第8実施形態〕
図17A〜Cは第8実施形態を示し、この実施形態は、基本構造が第5実施形態と同じであるが、異なるところは、第7実施形態と同じく摺動用孔30とスプール弁57の間に摺動自在に配置されたスリーブ60の構造を変更したものである。
【0201】
このスリーブ60は、小径部60aの上端に上壁60cが形成され、この上壁60cの中央にオイル導入口29aと連通する大径連通孔60dが貫通形成されていると共に上壁60cの下面がスプール弁32の最大上方移動を規制する第2着座面60eになっている。このスプール弁32は、第5実施形態のものと同一の構造である。
【0202】
前記スリーブ60には、前記第3連通路58に連通する連通ポート61と、ドレン通路59に連通するドレンポート65が形成されている。
【0203】
そして、
図17Aに示す初期位置では、スリーブ60とスプール弁57がバルブスプリング34のばね力で上昇移動して、各着座面30d、60eにそれぞれ押し当てられている。
【0204】
この状態では、第3連通路58は、第2実施形態と同様にオイル導入口29aと連通している。ポンプ本体と電磁切換弁8及びそれらの接続は第2実施形態、第5実施形態と同一である。但し、電磁切換弁8は、通電時に第2連通路39へ油圧を供給し、非通電時に第2連通路39への油圧供給を遮断して電磁切換弁8の前記ドレンポート47と連通させるようになっている。
【0205】
メインオイルギャラリー25の油圧がP1のときは、
図17Bに示すように、第1ランド部57aの幅と連通ポート61の開口幅はほぼ等しくなっていることから、第1ランド部57aが連通ポート61の位置まで移動したときは、該連通ポート61の連通先がオイル導入口29aからドレンポート65に切換えられて前記第2制御油室53内の油圧が減圧される。
【0206】
電磁切換弁8が非通電となり、受圧室64への油圧の供給が遮断されてドレンされると、
図17Cに示すように、スリーブ60の上壁60cの外周端部に作用する油圧力によってスリーブ60は蓋部材31方向に下降移動して大径部60bの下面が蓋部材31のストッパ面31cに押し当てられる。この状態で、スリーブ60の下降移動が規制されて受圧室64は最小容積を確保される。
【0207】
スリーブ60の下降移動に伴い連通ポート61も蓋部材31方向へ下降移動するため、スプール弁57の第1ランド部57aも連通ポート61に合わせて下降移動する。この際、バルブスプリング34を縮めて荷重が高まるため、その切換え圧力はP2となる。
【0208】
なお、第3連通路58とドレン通路59の開口幅は、前記連通ポート61とドレンポート65が移動しても連通が可能な幅に設定されている。
〔第9実施形態〕
図18A〜Cは第9実施形態のパイロット弁7を示し、この第9実施形態は、第6実施形態に対して第7実施形態、第8実施形態と同様にスリーブ60は小径部60aが小径孔部30aに、大径部60bが大径孔部30bにそれぞれ微小クリアランスを持って摺動可能に設けられている。また、スプール弁57もスリーブ60の内周面に微小クリアランスをもって摺動自在に設けられている。またスリーブ60は、上壁60cの中央に大径連通孔60dが形成されていると共に、外周端部に第2着座面60eが設けられ、ここにスプール弁57が当接する。
【0209】
前記スリーブ60には、第1連通路35に連通する第1連通ポート61とドレンポート66と第第3連通路58に連通する第2連通ポート67がそれぞれ径方向へ貫通して設けられている。スリーブ60とスプール弁57は、
図18Aに示す初期位置では、バルブスプリング34のばね力でそれぞれ各着座面30d、60eに押し当てられている。
【0210】
この状態では、第1連通路35は、第3実施形態と同様に第1環状溝57hを介してドレンポート66と連通し、第3連通路58は透孔57gなどを介してオイル導入口29aに連通している。ポンプ本体と電磁切換弁8及びそれらの接続は第3実施形態、第6実施形態と同一である。但し、電磁切換弁8は、通電時に第2連通路39へ油圧を供給し、非通電時に油圧供給を遮断してドレンポート47と連通させるようになっている。
【0211】
その後、メインオイルギャラリー25の油圧がP1になったときは、
図18Bに示すように、スプール弁57の第1ランド部57aの幅と第1連通ポート61の開口幅はほぼ等しく、第2ランド部57bの幅と第2連通ポート67の開口幅はほぼ等しくなっていることから、第1、第2ランド部57a、57bが第1、第2連通ポート61,67の位置まで下降移動すると、第1連通ポート61の接続先がドレンポート66からオイル導入口29aに切換えられて、第2連通ポート67の接続先がオイル導入口29aからドレンポート66に切換えられて、第1制御油室16には油圧が導入され、第2制御油室53の油圧が減圧される。
【0212】
次に、前記電磁切換弁8の電流が遮断されると、
図18Cに示すように、受圧室64の油圧がドレンされて低圧になると共に、スリーブ60の上壁60cの上面に作用する油圧力によって該スリーブ60が蓋部材31方向に下降移動して大径部60bの下面が蓋部材31のストッパ面31cに当接して下降移動が制限されて受圧室38は最小容積になる。
【0213】
前記スリーブ60の下降移動に伴い第1、第2連通ポート61,67も蓋部材31方向へ下降移動するため、スプール弁57の第1,第2ランド部57a、57bも連通ポート61に合わせて下降移動する。この際、バルブスプリング34を縮めて荷重が高まるため、その切換え圧力はP2となる。
【0214】
なお、第1連通路35とドレン通路37の開口幅は、第1連通ポート61とドレンポート66が移動しても連通が可能な幅に設定されている。
図19A〜Cは例えば第1実施形態における前記第1連通路35の一端開口35aの開口幅と第1ランド部32aの幅との種々異なる構成を示し、
図19Aに示すものは、第1連通路35の開口幅と第1ランド部32aの幅はほぼ同等に設定され、どちらかが若干広い場合も有り、
図19Bに示すものは、第1ランド部32aの幅が第1連通路35の開口35a幅より僅かに大きく形成されている。
図19Cに示すものは、第1ランド部32aよりも第1連通路35の開口35aの方がやや大きく形成されている。このように、一端開口35aの幅と第1ランド部32aの幅を相対的に変えることによって、スプール弁32のストローク量に応じて前記制御油室16への油圧の供給量を任意に制御することが可能になる。
【0215】
図20A〜Cは第1ランド部32aの形状を変更したもので、前記第1ランド部32aの外周面の上下部位に面取り部32g、32hを形成することも可能である。第1ランド部32a幅の方が広い場合でも小径孔部30aとは微小な隙間があり、三方が完全に遮断されることは無い。これらはスプール弁57の変位と連通開口面積変化の関係を変えているものであり、ポンプ本体の仕様や作動圧の大きさによって適時選択して使うものである。
【0216】
これらは、前記各実施形態におけるすべての連通孔35,58とスプール弁32、57との関係においても同様である。
【0217】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記支持部は、前記制御機構を介して電気的に制御されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項b〕請求項aに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記支持部は、受圧することによって前記スプール弁の摺動方向に移動する受圧面を有し、該受圧面への吐出圧の供給を前記制御機構の電磁切換弁によって制御することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項c〕請求項bに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動用孔は、段差径状に形成され、前記スプール弁が摺動する小径孔と、前記支持部が摺動する大径孔とから構成され、
前記支持部は、小径孔と大径孔の間に形成された段差部によって小径孔方向への最大移動位置が規制されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項d〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動用孔のスプール弁を付勢する第2付勢部材側の部位は低圧状態になっていることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項e〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記吐出部から前記制御室に導入された油圧によって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を一方向へ移動させ、
前記吐出圧により前記スプール弁が前記第2付勢部材に抗して一方向へ摺動することによって、前記吐出部から前記連通ポートを経由して前記制御室にオイルが導入され、前記スプール弁が前記第2付勢部材によって最大に付勢された状態では、前記連通ポートと低圧部が連通することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項f〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
常に前記吐出部から吐出されるオイルが導かれることによって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を一方向へ移動させる方向の力を作用させる常圧室を有すると共に、
前記吐出部から吐出されるオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力をアシストして付勢方向に前記可動部材を移動させる力を作用させる第2制御室を有し、
前記スプール弁が吐出圧を受圧して前記第2付勢部材に抗して移動することによって、前記連通ポートと低圧部を連通させ、前記スプール弁が前記第2付勢部材の付勢力によって最大に付勢された状態では、前記吐出部から前記連通ポートを経由して前記第2制御室にオイルが導入されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項g〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記制御室は、前記吐出部から吐出されたオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を移動させる方向の力を作用させる第1油室と、
前記吐出部から吐出されたオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力をアシストして付勢方向へ前記可動部材を移動させる方向の力を作用させる第2油室と、
によって構成されていると共に、
前記連通ポートは、前記第1油室に連通する第1連通ポートと、前記第2油室に連通する第2連通ポートとによって構成され、
前記スプール弁が吐出圧を受圧して前記第2付勢部材に抗して移動することにより、前記吐出部から第1連通ポートを経由して前記第1油室にオイルを導くと共に、前記第2連通ポートと低圧部を連通させ、前記スプール弁が前記第2付勢部材によって最大に付勢された状態では、前記第1連通ポートと低圧部を連通させると共に、前記吐出部から前記第2連通ポートを経由して前記第2油室にオイルが導入されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項h〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記スプール弁が前記吐出部と前記連通ポートの前記制御室に対するオイルの導入と排出を切り換える際には、前記連通ポートを一時的に閉止することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項i〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記連通ポートは、前記吐出部または低圧部と常時連通していることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項j〕請求項2に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記スプール弁は、軸方向の両端部に面取りが施された大径なランド部と小径な軸部を有し、
前記連通ポートは前記ランド部によってオイルの導入と排出が切り換えられことを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項k〕請求項13に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動部材は、前記制御機構を介して電気的に制御されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項l〕請求項kに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動部材は、受圧することによって前記スプール弁の摺動方向に移動する受圧面を有し、該受圧面への吐出圧の供給を前記制御機構の電磁切換弁によって制御することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項m〕請求項lに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動部材は、外周に鍔部を有し、該鍔部が前記受圧面となることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項n〕請求項mに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記摺動部材の内部のスプール弁と反対側の空間部は大気圧になっていることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項o〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記制御室に前記吐出部から吐出されたオイルが導かれることによって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を移動させる方向への力を作用させるように構成され、
前記スプール弁が吐出圧を受圧して前記第2付勢部材に抗して移動することによって、前記吐出部から前記連通ポートを経由して前記制御室にオイルが導入され、前記スプール弁が前記第2付勢部材によって最大に付勢された状態では、前記連通ポートと低圧部が連通することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項p〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
常に前記吐出部から吐出されるオイルが導かれることによって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を移動させる方向に力を作用させる常圧室を有すると共に、
前記制御室に吐出部から吐出されるオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力をアシストして付勢方向に前記可動部材を移動させる力を作用させるように構成され、
前記スプール弁が吐出圧を受圧して前記第2付勢部材に抗して移動することによって、前記連通ポートと低圧部を連通させ、前記スプール弁が前記第2付勢部材の付勢力によって最大に付勢された状態では、前記吐出部から前記連通ポートを経由して前記制御室にオイルが導入されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項q〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記制御室は、前記吐出部から吐出されたオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記可動部材を移動させる方向の力を作用させる第1油室と、
前記吐出部から吐出されたオイルが導入されることによって、前記第1付勢部材の付勢力をアシストして付勢方向へ前記可動部材を移動させる方向の力を作用させる第2油室と、
によって構成されていると共に、
前記連通ポートは、前記第1油室に連通する第1連通ポートと、前記第2油室に連通する第2連通ポートとによって構成され、
前記スプール弁が吐出圧を受圧して前記第2付勢部材に抗して移動することにより、前記吐出部から第1連通ポートを経由して前記第1油室にオイルを導くと共に、前記第2連通ポートと低圧部を連通させ、前記スプール弁が前記第2付勢部材によって最大に付勢された状態では、前記第1連通ポートと低圧部を連通させると共に、前記吐出部から前記第2連通ポートを経由して前記第2油室にオイルが導入されることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項r〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記スプール弁が前記吐出部と連通ポートの前記制御室に対するオイル導入と排出を切り換える際には、前記連通ポートを一時的に閉止することを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項s〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記連通ポートは、前記吐出部または低圧部と常時連通していることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
〔請求項t〕請求項3に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記スプール弁は、軸方向の両端部に面取りが施された大径なランド部と小径な軸部を有し、
前記連通ポートは前記ランド部によってオイルの導入と排出が切り換えられことを特徴とする可変容量形オイルポンプ。