【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
実施例1 一本鎖ランダムオリゴDNAの作成
40残基のランダム領域とその両側に各25残基のプライマー部位を含む計90残基の一本鎖ランダムオリゴDNAの合成は、(株)オペロンバイオテクノロジー社に依頼した。
【0037】
DNAの合成方法(ホスホアミダイト法)
(1)3’末端のヌクレオチドを、3’水酸基を介してCPG(controlled pore glass)担体に結合したものをカラムに詰めた。
(2)リボースの5’位の保護基であるジメトキシトリチル基をトリクロロ酢酸によって除去した。(Detritylation)
(3)リボースの3’位の水酸基がリン酸シアノエチルアミダイト誘導体である2番目のヌクレオチドを、脱トリチル化された1番目のヌクレオチドの5’水酸基に塩基触媒(テトラゾール)を用いて結合させた。(Coupling)
(4)未反応の5’水酸基を無水酢酸によってアセチル化した。(Capping)
(5)2つのヌクレオチド間の結合を、ヨードを用いて酸化して、3価のリンから5価のリン酸エステルへ変換した。(Oxidation)
(6)(2)〜(5)の操作を目的の鎖長になるまで繰り返す。ランダム部分の配列は、(3)のCoupling反応の際、4種のヌクレオチドアミダイト混合物を使用して行った。
(7)Coupling反応後、カラムからアンモニア処理によってDNAオリゴを切り出し、HPLCによって精製した。
(8)凍結乾燥後、適量の水に溶解し、SELEXライブラリーの鋳型とした。
【0038】
実施例2 グリセルアルデヒド由来AGE及びHSAの担体ビーズへの結合
1.グリセルアルデヒド由来AGEのビーズへの固定化には、PIERCE社のSulfoLink Coupling gel (cat# 20401)を使用し、製品のインストラクションに従って固定化した。
(1)Coupling gelをカラムにとり、coupling buffer (50 mM Tris-HCl, 5 mM EDTA, pH 8.5)で平衡化した。
(2)Coupling bufferに溶解したグリセルアルデヒド由来AGEをcoupling gelと混合し、室温で1時間インキュベートした。
(3)反応終了後、coupling bufferでカラムを数回洗浄した。
(4)L-Cysteinをcoupling bufferに溶解し、coupling gelと混合して、室温で30分インキュベートした。
(5)反応終了後、coupling buffer及びPBSでカラムを数回洗浄した。
(6)反応前、反応後の吸光度を測定することによってグリセルアルデヒド由来AGEの固定化量を算出した。
(7)固定化後のgel(ビーズ)は、小分けし、冷暗所に保存した。
【0039】
2.ヒト血清アルブミン(HSA)の担体ビーズへの固体化は、グリセルアルデヒド由来AGEと同様の方法でおこなった。
【0040】
実施例3 SELEX法の実施
(1)[1]で合成した一本鎖ランダムオリゴDNA(配列番号1)を鋳型にして、forwardプライマー(配列番号2)と5’側がビオチン化されたreverse プライマー(配列番号4)を用いてPCR (1サイクル: 98℃, 10秒; 50℃, 10秒; 72℃, 10秒 ×30 サイクル)を行った。この時、ヌクレオチドとして、dCTP, dGTP, Sp-dATP-αS(2’-deoxyadenosine-5’-O-(1-thiotriphosphate), Sp-isomer; Biolog社 CAS#80875-87-2)、Sp-TTP-αS (Sp-dTTP-αS) (Thymidine-5’-O-(1-thiotriphosphate), Sp-isomer; Biolog社 CAS#83199-32-0))を用いることによって、ヌクレオチド間がホスホロチオエート化(S化)された二本鎖DNAライブラリーを得た。このS化によってDNAのヌクレアーゼ耐性が向上することが知られている。
(2)PCR終了後、Streptavidin Mag Sepharose(GE healthcare, cat#28-9857-38)を加えてBiotin化二本鎖DNAライブラリープールを吸着させた。PBSで洗浄後、0.1M NaOHを加えることによって一本鎖DNAライブラリーを単離した。一本鎖DNAライブラリーをエタノール沈殿によって精製し、SELEX用のDNAライブラリーとした。
(3)SELEX用DNAライブラリーを0.5%のTween 20を含むPBS(PBS-T)に溶かし、98℃で5分加熱後、ただちに冷却した。
(4)DNAライブラリーとグリセルアルデヒド由来AGEを固定化させたビーズとを混合し、室温で30分インキュベートした。
(5)インキュベート後、PBS-Tでビーズを数回洗浄した。
(6)フェノール・クロロホルム抽出によって、グリセルアルデヒド由来AGEビーズに結合したDNAライブラリーを溶出した。
(7)溶出したDNAライブラリーをエタノール沈殿によって精製した。
(8)精製したDNAライブラリーをHSA固定化ビーズと混合し、室温で30分インキュベートした。
(9)素通りした(HSAに結合しなかった)ライブラリーDNAを回収して、エタノール沈殿によって、精製した。
(10)精製したDNAライブラリーを鋳型にして、(1)〜(9)の操作を10ラウンド繰り返した。
【0041】
実施例4 形質転換・大腸菌培養
10ラウンド後のDNAライブラリーを鋳型として、forwardとreverse2種類のプライマー(配列番号2及び3)を用いてPCRを行い、アガロースゲル電気泳動によって精製し、グリセルアルデヒド由来AGE特異的DNAライブラリーを得た。このDNAライブラリーをクローニングベクター(Invitrogen社: Zero Blunt(登録商標) TOPO PCR Cloning Kit for Sequencing (cat# K2875J10))へ導入し、クローン化後、配列を決定した。
(1)DNAアプタマー(PCR産物)とクローニングベクター(TOPO vector)とを混合し、室温で5分インキュベートした。
(2)反応終了後、反応液の一部をコンピテントセルに加え、氷冷下で30分インキュベートした。
(3)42℃、30秒ヒートショックした後、氷上で2分間冷却した。
(4)SOC培地を加えて37℃、1時間培養した。
(5)適量を寒天プレート(50μg/mlアンピシリンを含むLB培地)にスプレッドし、37℃で一晩培養した。
(6)無作為に数十個のクローンを選び、アルカリ法によってプラスミドDNAを調製した。
(7)各プラスミドのDNAシークエンス解析を行い、11種のグリセルアルデヒド由来AGE特異的DNAアプタマー(
図1に示す配列番号5〜15)を得た。
図1に、11種類のグリセルアルデヒド由来AGE特異的DNAアプタマーの配列を示す。
図1中の配列番号16〜26で表される配列は、5’側にビオチンを付加したDNAアプタマーの配列であり、配列番号27〜37で表される配列は5’側にジゴキシゲニンを付加したDNAアプタマーの配列である。
図1の配列中の*は、*の両側の塩基の間のホスホジエステル結合を形成するリン酸基のS化されていることを表す。
【0042】
実施例5 各種アプタマーの合成
(1)SELEX法によって得られた11種のグリセルアルデヒド由来AGE特異的アプタマー(
図1に示す配列番号5〜15)をそれぞれ化学合成した。その際、5’側にビオチン(Biotin)を付加したもの(
図1に示す配列番号16〜26)、ジゴキシゲニン(Digoxigenin)を付加したもの(
図1に示す配列番号27〜37)を合わせて合成した。合成は(株)オペロンバイオテクノロジー社に依頼した。
【0043】
実施例6 ELISA結合試験
(1)Pierce NeutrAvidin(商標)High Binding Capacity Coated 96-Well Plates (Pierce社、cat#15508)をPBS-Tで洗浄した。
(2)Biotin化DNAアプタマー(
図1に示す配列番号16〜26)とDigoxigenin化DNAアプタマー(
図1に示す配列番号27〜37)をPBS-Tに溶かして、98℃で3分間加温した後、直ちに冷却した。
(3)Biotin化DNAアプタマー(
図1に示す配列番号16〜26)をウェル上に添加し、室温で1時間インキュベートした。
(4)PBS-Tで洗浄後、グリセルアルデヒド由来AGEを10 ug/mlの濃度で添加して、室温で30分間インキュベートした。
(5)PBS-Tで洗浄後、Digoxigenin化DNAアプタマー(
図1に示す配列番号27〜37)をウェル上に添加し、室温で1時間インキュベートした。
(6)PBS-Tで洗浄後、POD標識ジゴキシゲニン抗体(Roshe社、cat#1207733)を添加して、室温で30分間インキュベートした。
(7)PBS-Tで洗浄後、ナカライテスク社のELISA POD基質 ABTS キット(ナカライテスク社、cat#14351-80)を使って染色し、405 nmの吸光度を測定した。
【0044】
結果を
図2に示す。
図2に示すように、11種のDNAアプタマーはいずれもグリセルアルデヒド由来AGEとの結合が認められ、その中でも
図1に示す配列番号8、11及び13に表される配列を有するDNAアプタマーの結合性が高かった。
【0045】
実施例7 表面プラズモン共鳴法結合試験
ELISA結合試験によって強い結合が観察された、DNAアプタマー(
図1に示す配列番号8、11及び13)について、表面プラズモン共鳴法によってグリセルアルデヒド由来AGEに対するKd値を計測した。
(1)センサーチップCM5 (GE healthcare, cat# BR-1000-12)にグリセルアルデヒド由来AGEをそれぞれamine coupling kit(GE healthcare, cat # BR-1000-50)を使用して固定化した。
(2)DNAアプタマー(
図1に示す配列番号8、11及び13)をそれぞれ、5 nM〜10 nMの濃度で送液し、結合解離曲線を得た。結合解離曲線を
図3に示す。
(3)得られた結合解離曲線をBIAevaluation ver3.0(BIAcore社)を使用して解析した。その結果、グリセルアルデヒド由来AGEに対する解離定数(Kd)値は、5.98×10
-10M(
図1に示す配列番号8)、3.46×10
-10M(
図1に示す配列番号11)、5.67×10
-10M(
図1に示す配列番号13)であることがわかった。一方、国際公開第WO2006/080262号国際公開パンフレットに記載のグリセルアルデヒド由来AGE認識DNAアプタマーは結合性が低く、解離定数は求められなかった。