特許第6050675号(P6050675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050675燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050675
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/20 20060101AFI20161212BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   F23R 3/10 20060101ALI20161212BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20161212BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20161212BHJP
   F01D 25/08 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F23R3/20
   F23R3/00 A
   F23R3/10
   F23R3/28 D
   F23R3/42 C
   F02C3/30 B
   F02C3/30 C
   F02C7/22 C
   F02C7/24 A
   F01D25/08
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-283882(P2012-283882)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-181746(P2013-181746A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】13/409,309
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホ・ウーム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エドワード・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】バイファン・ヅォ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・デイヴィッド・ヨーク
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0192566(US,A1)
【文献】 特開2008−175098(JP,A)
【文献】 特開2011−169573(JP,A)
【文献】 米国特許第04100733(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0031662(US,A1)
【文献】 特開2010−261697(JP,A)
【文献】 特開2010−181137(JP,A)
【文献】 特開2010−107191(JP,A)
【文献】 特開2010−203758(JP,A)
【文献】 特開昭56−091132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/30
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムであって、
a. 前記燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在するエンドキャップであって、下流側表面から軸方向に分離された上流側表面を備えるエンドキャップと、
b. 前記エンドキャップの前記上流側表面から前記下流側表面を貫通して延在する複数の管束であって、個々の管束が前記エンドキャップを貫通する流体連通を提供する複数の管束と、
c. 前記複数の管束の内の第1の管束の周囲の周りに延在する第1の分割器であって、前記エンドキャップの少なくとも一部および前記下流側表面を貫通して軸方向に延在する内側及び外側シュラウドにより前記第1の管束が画定され、前記下流側表面を貫通して軸方向に延在する第1の希釈剤通路を画定し、前記第1の希釈剤通路が、前記内側及び外側シュラウドの間で画定さる第1の分割器と、
d. 前記第1の分割器と流体連通している希釈剤供給装置であって、前記第1の分割器内の前記第1の希釈剤通路に希釈剤の流れを提供する希釈剤供給装置と、
e. 前記第1の分割器の半径方向外側に配置された第2の分割器と、
を備え、
前記第2の分割器が前記複数の管束を複数の管束のセクターに分割し、前記第2の分割器が前記下流側表面を通って軸方向に延びる第2の希釈剤通路を有する、
システム。
【請求項2】
燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムであって、
a. 前記燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在するエンドキャップであって、下流側表面から軸方向に分離された上流側表面を備えるエンドキャップと、
b. 前記エンドキャップの前記上流側表面から前記下流側表面を貫通して延在する複数の管束であって、個々の管束が前記エンドキャップを貫通する流体連通を提供する複数の管束と、
c. 前記複数の管束の内の第1の管束の周囲の周りに延在する第1の希釈剤通路であって、前記エンドキャップの少なくとも一部および前記下流側表面を貫通して軸方向に延在する内側及び外側シュラウドにより前記第1の希釈剤通路が画定される、前記第1の希釈剤通路と、
d. 前記第1の希釈剤通路と流体連通している希釈剤供給装置であって、前記希釈剤通路に希釈剤の流れを提供する希釈剤供給装置と、
e. 前記第1の希釈剤通路の半径方向外側に配置された第2の希釈剤通路と、
を備え、
前記第2の希釈剤通路が前記下流側表面を通って軸方向に延び、前記第2の希釈剤通路が前記複数の管束を複数の管束のセクターに分割する、
システム。
【請求項3】
前記第2の分割器が、前記下流側表面を貫通して軸方向に延在する第2の希釈剤通路を画定する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の希釈剤通路が、前記エンドキャップの前記下流側表面を通る前記希釈剤の流れのための流体連通を提供する複数の希釈剤ポートで終端する、請求項1乃至3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の希釈剤通路が、前記下流側表面から下流側に延在している複数の希釈剤分配器で終端する、請求項1乃至4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の希釈剤分配器の上に遮熱コーティングをさらに備える、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
個々の管束と流体連通している燃料供給装置をさらに備え、前記燃料供給装置が前記希釈剤供給装置と実質的に同心である、請求項1乃至6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記希釈剤が前記希釈剤通路に、水、蒸気、燃料添加剤、不活性ガスまたは不燃性ガスのうちの少なくとも1つを提供する、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするための方法であって、
a. 前記燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在しているエンドキャップを貫通して軸方向に延在している複数の管束を通して燃料を流すステップと、
b. 前記複数の管束の内の第1の管束の第1の希釈剤通路を通して前記エンドキャップから下流側の燃焼室に希釈剤を流入させるステップであって、前記第1の希釈剤通路が第1の管束の周囲の周りに延在し、前記エンドキャップの少なくとも一部および前記下流側表面を貫通して軸方向に延在する内側及び外側シュラウドにより前記第1の希釈剤通路が画定される、前記ステップと、
c. 前記第1の管束と少なくとも1つの他の隣接する管束との間の前記燃焼室内に希釈剤障壁を形成するステップと、
d. 第2の希釈剤通路を通して希釈剤を流入させるステップと、
を備え、
前記第2の希釈剤通路が前記下流側表面を通って軸方向に延び、前記第2の希釈剤通路が前記複数の管束を複数の管束のセクターに分割する、
方法。
【請求項10】
第1の管束の周囲に前記希釈剤障壁を形成するステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
隣接する管束の個々の対の間に前記希釈剤障壁を形成するステップをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記エンドキャップから下流側の前記燃焼室に前記希釈剤を噴射するステップをさらに含む、請求項9乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記燃焼器の少なくとも一部を介して、前記希釈剤と同心で前記燃料を流すステップをさらに含む、請求項9乃至12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼器は、燃料に点火して高温および高圧を有する燃焼ガスを生成するために産業および発電事業で広く使用されている。例えばガスタービンには、通常、動力または推力を生成するための1つまたは複数の燃焼器が含まれている。発電のために使用される典型的なガスタービンには、前方に軸流圧縮機が含まれており、中央部分の周囲に1つまたは複数の燃焼器が含まれており、また、後方にタービンが含まれている。周囲の空気を圧縮機に供給して圧縮機内の羽根および固定羽根を回転させることができ、それにより動作流体(空気)に連続的に運動エネルギーが付与され、ひいては高度に活性化された状態の圧縮動作流体が生成される。圧縮動作流体は、圧縮機から流出し、1つまたは複数のノズルを通って個々の燃焼器内の燃焼室へ流れ、そこで燃料と混合されて点火され、それにより高温および高圧を有する燃焼ガスが生成される。燃焼ガスはタービン内で膨張し、それにより仕事が生成される。例えばタービン内の燃焼ガスの膨張により、電気を生成するために発電機に接続されている軸を回転させることができる。
【0003】
様々な設計および動作パラメータによって燃焼器の設計および動作が影響される。例えば、一般的には燃焼ガスの温度が高いほど燃焼器の熱ダイナミックス効率が改善される。しかしながら、より高い燃焼ガス温度は、燃焼火炎がノズルによって供給される燃料に向かって移動し、場合によっては比較的短時間の間にノズルが著しく損傷する原因になる逆火または火炎保持状態を促進することにもなる。さらに、より高い燃焼ガス温度は、一般に二原子窒素の解離速度を速くし、そのために窒素酸化物(NOx)の生成が増加する。逆に、燃料流量が少ないこと、および/または部分負荷運転(ターンダウン)に関連するより低い燃焼ガス温度は、一般に燃焼ガスの化学反応速度を遅くし、そのために一酸化炭素および未燃炭化水素の生成が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0095676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の燃焼器設計では、エンドキャップを通って燃焼室に流入する動作流体および燃料のための流体連通を提供するために、複数の予混合器管をエンドキャップ内に半径方向に配置することができる。より高い動作温度を可能にし、その一方で逆火または火炎保持から保護し、かつ、望ましくない放出を制御する点では有効であるが、燃料によっては、また、運転条件によっては、燃焼器内の高い水素燃料組成との極めて高い周波数が生成される。高い周波数に関連する燃焼器内の振動の増加は、1つまたは複数の燃焼器構成要素の有効寿命を短くすることがある。別法として、あるいは追加として、燃焼ダイナミックスの高い周波数によって、燃焼火炎の安定性に影響を及ぼす圧力パルスが予混合器管および/または燃焼室の内側に生成されることがあり、そのために逆火または火炎保持のための設計マージンが小さくなり、および/または望ましくない放出が増加することがある。したがって燃焼器の熱ダイナミックス効率を改善し、破壊的損失から燃焼器を保護し、および/または広範囲に及ぶ燃焼器の動作レベル全体にわたって望ましくない放出を低減するためには、燃焼器内の共振周波数を低くするシステムおよび方法が有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様および利点は、以下、後続する説明の中で示されており、もしくは場合によってはその説明から明らかになり、または本発明を実践することによって習得することができる。
【0007】
本発明の一実施形態は、燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムである。システムには、燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在しているエンドキャップが含まれており、エンドキャップは、下流側表面から軸方向に分離された上流側表面を備えている。複数の管束がエンドキャップの上流側表面から下流側表面を貫通して延在しており、個々の管束は、エンドキャップを貫通する流体連通を提供している。第1の管束の内側の第1の分割器は、下流側表面を軸方向に貫通して延在している第1の希釈剤通路を画定している。第1の分割器と流体連通している希釈剤供給装置は、第1の分割器内の第1の希釈剤通路に希釈剤の流れを提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在しているエンドキャップを含んだ燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムであり、エンドキャップは、下流側表面から軸方向に分離された上流側表面を備えている。複数の管束がエンドキャップの上流側表面から下流側表面を貫通して延在しており、個々の管束は、エンドキャップを貫通する流体連通を提供している。第1の管束の内側の第1の希釈剤通路は、エンドキャップの少なくとも一部および下流側表面を貫通して軸方向に延在している。第1の希釈剤通路と流体連通している希釈剤供給装置は、希釈剤通路に希釈剤の流れを提供する。
【0009】
また、本発明は、燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするための方法を含むことも可能である。この方法には、燃焼器の少なくとも一部にわたって半径方向に延在しているエンドキャップを貫通して軸方向に延在している複数の管束を通して燃料を流すステップが含まれている。また、この方法には、第1の管束の内側の第1の希釈剤通路を通してエンドキャップから下流側の燃焼室に希釈剤を流入させるステップが含まれており、第1の希釈剤通路は、エンドキャップの少なくとも一部を貫通して軸方向に延在しており、第1の管束と少なくとも1つの他の隣接する管束との間の燃焼室内に希釈剤障壁を形成している。
【0010】
当業者には、本明細書を検討することにより、このような実施形態および他の実施形態の特徴および態様がより良好に理解されよう。
【0011】
本発明の、当業者にとって本発明の最良のモードを含む、十分で、かつ、使用を可能にする開示について、添付の図の参照を含む本明細書の以下の部分でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による一例示的燃焼器の簡易横断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、図1に示されているエンドキャップの上流側軸方向図である。
図3】本発明の第2の実施形態による、図1に示されているエンドキャップの上流側軸方向図である。
図4】本発明の第3の実施形態による、図1に示されているエンドキャップの上流側軸方向図である。
図5】本発明の第4の実施形態による、図1に示されているエンドキャップの上流側軸方向図である。
図6】本発明の一実施形態による、図1に示されている管束の拡大横断面図である。
図7】本発明の一代替実施形態による、図1および4に示されている燃焼器の一部の拡大横断面図である。
図8図7に示されているエンドキャップの下流側軸方向図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を提供するために詳細に参照すると、本発明の1つまたは複数の例が添付の図面に示されている。以下の詳細な説明には、図面の中の特徴を参照するために数値および文字による指示が使用されている。図面および説明の中のよく似ている指示または同様の指示は、本発明のよく似ている部品または同様の部品を参照するために使用されている。本明細書において使用されている場合、「第1の」、「第2の」および「第3の」という用語は、ある構成要素を他の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の位置または重要性を意味することは意図されていない。さらに、「上流側」および「下流側」という用語は、流体通路内の複数の構成要素の相対位置を意味している。例えば流体が構成要素Aから構成要素Bへ流れる場合、構成要素Aは構成要素Bから上流側である。逆に、構成要素Bが構成要素Aから流体の流れを受け取る場合、構成要素Bは構成要素Aから下流側である。
【0014】
個々の例は、本発明を説明するために提供されたものであり、本発明を制限するものではない。実際、本発明の範囲または趣旨を逸脱することなく、本発明に修正および変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として示され、あるいは説明されている特徴は、他の実施形態に使用することによってさらに他の実施形態をもたらすことができる。したがって本発明には、このような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲の範疇として本発明に包含されることが意図されている。
【0015】
本発明の様々な実施形態には、燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするためのシステムおよび方法が含まれている。このシステムおよび方法には、通常、エンドキャップ内に半径方向に配置された複数の管束が含まれている。これらの管束は、燃料と動作流体の混合物をエンドキャップから下流側の燃焼室に供給する。1つまたは複数の管束の内側の分割器は、隣接する管束間の火炎相互作用を減結合し、ひいては燃焼器内の燃焼ダイナミックスを小さくするための希釈剤障壁を、隣接する管束の少なくとも1つの対の間に生成している。本発明の例示的実施形態は、一般に、ガスタービンの中に組み込まれた燃焼器の文脈で説明されているが、本発明の実施形態は任意の燃焼器に適用することができ、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、ガスタービン燃焼器に限定されないことは当業者には容易に理解されよう。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による、ガスタービンに含まれることになる燃焼器などの一例示的燃焼器10の簡易断面図を示したものである。ケーシング12およびエンドカバー14は、燃焼器10を取り囲んで該燃焼器10へ流れる動作流体15を含むことができる。動作流体15は、衝突スリーブ18内のフローホール16を通過し、移行片20およびライナ22の外側に沿って流れることができ、それにより移行片20およびライナ22に対流冷却を提供することができる。動作流体15がエンドカバー14に到達すると、動作流体15は方向を反転し、複数の管束24を通って燃焼室26へ流入する。
【0017】
管束24は、燃焼室26から上流側のエンドキャップ28内に、それぞれ異なる形状、異なる数および異なるサイズで半径方向に配置されており、図2〜5は、本発明の範囲内における、上流側から見たエンドキャップ28内の管束24の例示的配置の図を提供している。図2および3に示されているように、例えば管束24は、エンドキャップ28全体にわたって、外部シュラウド31によって囲まれた複数の予混合器管30の円形のグループで半径方向に配置することができ、そのうちの6つの管束24が1つの管束24を取り囲んでいる。別法としては、図4および5に示されているように、複数の予混合器管30の一連のパイ形グループによって取り囲まれた、外部シュラウド31によって取り囲まれた複数の予混合器管30の円形のグループとして管束24を配置することも可能である。図4では、複数の予混合器管30のパイ形グループは、交互に少なくとも部分的に外部シュラウド31によって囲まれている。当業者には、管束24の形状、数およびサイズの複数の可能な組合せが容易に理解され、また、本発明は、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、管束24の何らかの特定の配置に限定されない。
【0018】
図2〜5に示されている個々の例示的配置の場合、とりわけ燃料および/または動作流体15の流れが個々の管束24の間で概ね等しい場合に、予混合器管30および/または管束24を通る燃料および/または動作流体15の流れによって、燃焼室26内に望ましくない燃焼ダイナミックスが生成されることがある。その結果、本発明の様々な実施形態には、隣接する管束24間の燃焼火炎相互作用を減結合し、ひいては燃焼器10内の燃焼ダイナミックスを小さくするための1つまたは複数の特徴が含まれている。これらの特徴は、通常、1つまたは複数の管束24の内側および/またはこれらの管束24の間に配置され、それにより隣接する管束24の1つまたは複数の対の間に、これらの隣接する管束24を分離する構造障壁および/または流体バリアを画定する。このようにして、これらの構造障壁および/または流体バリアによって、隣接する管束24によって生成される燃焼火炎間の相互作用が防止され、それにより燃焼室26内の望ましくない燃焼ダイナミックスが小さくなる。
【0019】
例えば図2〜5に示されている特定の管束24配置では、中央管束24の内側または中央管束24の周囲の第1の分割器32は、エンドキャップ28内に半径方向に配置されている他の管束から中央管束24を分離する第1の希釈剤通路34を画定することができる。第1の希釈剤通路34は、概ね、隣接する管束24の間のエンドキャップ28を通して希釈剤を流すための流体連通を提供する1つまたは複数の希釈剤ポート36で終端している。このようにして、第1の分割器32を通る希釈剤の流れは、中央管束24と、エンドキャップ28内に半径方向に配置されている他の管束24との間のあらゆる燃焼火炎相互作用を十分に減結合することができる。別法として、あるいは追加として、エンドキャップ28内に半径方向に配置されている複数の管束24のうちの1つまたは複数の管束24の内側、またはこれらの管束24の間に追加分割器38を配置することも可能であり、それによりエンドキャップ28内に半径方向に配置されている1つまたは複数の管束24の間に追加希釈剤通路40および希釈剤ポート36を画定することができる。例えば図2および4に示されている特定の実施形態では、エンドキャップ28内に半径方向に配置されている交互管束24の内側の追加分割器38は、任意の2つの隣接する管束24の間に少なくとも1つの分割器32、38および希釈剤通路34、40を提供している。別法としては、図3および5に示されている特定の実施形態に示されているように、エンドキャップ28内に半径方向に配置されている複数の管束24のうちの1つまたは複数の管束24の間に追加分割器38を配置することも可能であり、それにより同じく任意の2つの隣接する管束24の間に少なくとも1つの分割器32、38および希釈剤通路34、40を提供することができる。
【0020】
図6は、本発明の第1の実施形態による、図1および図2〜5の中央に示されている管束24と同じような一例示的管束24の拡大横断面図を示したものである。図に示されているように、管束24には、通常、下流側表面44から軸方向に分離された上流側表面42が含まれている。個々の予混合器管30は、上流側表面42の近傍に管入口46を含み、下流側表面44を貫通して延在しており、動作流体15が管束24を通って燃焼室26に流入するための流体連通を提供している。円筒管として示されているが、予混合器管30の断面は、任意の幾何形状にすることができ、本発明は、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、何らかの特定の断面に限定されない。内部シュラウド48は、管束24の少なくとも一部を円周方向に取り囲み、それにより上流側表面42と下流側表面44の間に部分的に燃料プレナム50および希釈剤プレナム52を画定している。上流側表面42と下流側表面44の間に、燃料プレナム50を希釈剤プレナム52から軸方向に分離するための概ね水平方向の障壁54を半径方向に延在させることができる。このようにして、上流側表面42、内部シュラウド48および障壁54は、予混合器管30の上流側部分の周囲の燃料プレナム50を囲むか、あるいは画定し、また、下流側表面44、内部シュラウド48および障壁54は、予混合器管30の下流側部分の周囲の希釈剤プレナム52を囲むか、あるいは画定している。
【0021】
燃料供給装置56および希釈剤供給装置58は、エンドカバー14を貫通して、また、上流側表面42を貫通して延在することができ、それにより燃料および希釈剤がエンドカバー14を通って個々の管束24内の対応するそれぞれの燃料プレナムまたは希釈剤プレナム50、52へ流れるための流体連通を提供することができる。管束24に供給される燃料は、燃焼に適した任意の液体燃料またはガス燃料を含むことができ、また、管束24に供給される可能希釈剤は、水、蒸気、燃料添加剤、窒素などの様々な不活性ガス、および/または二酸化炭素または燃焼排気ガスなどの様々な不燃性ガスを含むことができる。図6に示されている特定の実施形態では、燃料供給装置56は、希釈剤供給装置58と実質的に同心であるが、本発明は、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、それには限定されない。
【0022】
複数の予混合器管30のうちの1つまたは複数は、燃料プレナム50から1つまたは複数の予混合器管30へ流体連通を提供する燃料ポート60を含むことができる。燃料ポート60は、噴射のための角度を半径方向、軸方向および/または方位に対して付けることができ、および/または燃料ポート60を通って予混合器管30に流入する燃料に渦を付与することができる。このようにして、動作流体15は、管入口46を通って予混合器管30に流入することができ、また、燃料プレナム50からの燃料は、燃料ポート60を通って予混合器管30に流入し、そこで動作流体15と混合される。燃料−動作流体混合物は、次に、予混合器管30を通って燃焼室26に流入することができる。
【0023】
希釈剤は、希釈剤プレナム52内の予混合器管30の周囲の希釈剤供給装置58から流れることができ、それにより予混合器管30に対流冷却を提供することができ、および/または下流側表面44に衝突冷却を提供することができる。希釈剤は、次に、分割器32内の希釈剤ポート62を通って希釈剤通路34に流入することができる。希釈剤は、次に、希釈剤通路内の希釈剤ポート36を通って燃焼室26に流入することができる。このようにして、希釈剤は、隣接する管束24の燃焼火炎を分離するための流体バリアをこれらの隣接する管束24間に形成することができ、それにより隣接する管束24の燃焼火炎間のあらゆる相互作用を小さくし、あるいは防止することができる。
【0024】
図7は、本発明の一代替実施形態による、図1および4に示されている燃焼器10の一部の拡大横断面図を示したものであり、また、図8は、図7に示されているエンドキャップ28の下流側軸方向図を示したものである。図に示されているように、エンドキャップ28は、燃焼器10の少なくとも一部にわたって概ね半径方向に延在しており、図6に示されている管束24に関連して上で説明した上流側表面42および下流側表面44が含まれている。図7に示されているように、1つまたは複数の管束24が上流側表面42から下流側表面44を貫通して延在しており、それにより燃料および/または動作流体15がエンドキャップ28を通るための流体連通を提供している。図7および8に追加として示されているように、燃料供給装置56が管束24と流体連通しており、また、希釈剤供給装置58が分割器32、38によって決められた希釈剤通路34、40と流体連通している。希釈剤通路34、40は、エンドキャップ28の少なくとも一部を貫通し、また、下流側表面44を貫通して軸方向に延在しており、それにより隣接する管束24の1つまたは複数の対を分離している。この方法によれば、希釈剤供給装置58は、隣接する管束24間の燃焼室26に希釈剤通路34、40を介して希釈剤を供給することができる。
【0025】
図7に示されている特定の実施形態では、希釈剤通路34、40のうちの1つまたは複数は、複数の希釈剤分配器64で終端している。希釈剤分配器64は、希釈剤通路34、40の内側に存在させることができ、あるいは図7に示されているように下流側表面44から下流側に延在させることができる。希釈剤分配器64は、隣接する管束24間に物理障壁を提供しており、また、隣接する管束24間の燃焼室26に希釈剤を噴射する複数の希釈剤噴射器66を含むことができる。希釈剤分配器64を通って流れる希釈剤は、希釈剤分配器64に対流冷却および/または境膜冷却を提供する。別法として、あるいは追加として、希釈剤分配器64の下流側表面の遮熱コーティング68は、燃焼火炎に関連する過剰の熱負荷および/または酸化から希釈剤分配器64を保護することも可能である。特定の実施形態では、遮熱コーティング68は、少なくとも金属結合コーティング、熱生成酸化物、および/またはセラミックトップコーティングを含んだ複数の層を含むことができるが、本発明は、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、遮熱コーティング68の特定の組成および構造に限定されない。
【0026】
図1〜8に関連して説明し、かつ、図に示した様々な実施形態は、燃焼器10内の燃焼ダイナミックスを小さくするための方法を提供することも可能である。この方法は、燃焼器10の少なくとも一部にわたって半径方向に延在しているエンドキャップ28を貫通して軸方向に延在している1つまたは複数の管束24を通して燃料を流すステップを含むことができる。この方法は、さらに、1つまたは複数の管束24の内側および/またはこれらの管束24の間の1つまたは複数の希釈剤通路34、40を通して、エンドキャップ28から下流側の燃焼室26に希釈剤を流すステップを含むことができ、希釈剤通路34、40は、少なくとも1対の隣接する管束24を分離し、エンドキャップ28の少なくとも一部を通って軸方向に延在している。このようにして、この方法は、隣接する管束24の間の燃焼室26内に希釈剤障壁を形成することができる。
【0027】
特定の実施形態では、この方法は、1つまたは複数の管束24の周囲全体および/または隣接する管束24の個々の対の間に希釈剤障壁を形成することができる。さらに他の実施形態では、この方法は、エンドキャップ28から下流側の燃焼室26に希釈剤を噴射することができ、および/または燃焼器10の少なくとも一部を介して、希釈剤と同心で燃料を流すことができる。
【0028】
本明細書において説明されているシステムおよび方法によれば、既存のノズルおよび燃焼器に優る以下の複数の利点のうちの1つまたは複数を提供することができる。例えば、分割器32および/または希釈剤通路34によって生成される希釈剤障壁は、隣接する管束24間の火炎相互作用を減結合し、したがって燃焼器10内の燃焼ダイナミックスを小さくする。燃焼器10内の燃焼ダイナミックスが小さくなるため、様々な燃焼器10の構成要素の有効寿命および/または保守間隔を短くすることなく、広範囲の燃料にわたって燃焼器10の動作能力を向上させることができる。別法として、あるいは追加として、燃焼ダイナミックスが小さくなるため、逆火または火炎保持に対する設計マージンを維持し、あるいは大きくすることも可能であり、および/または広範囲に及ぶ燃焼器10の動作レベルにわたって望ましくない放出を少なくすることも可能である。
【0029】
本成文説明には、最良のモードを含む、本発明を開示するための例が使用されており、また、任意のデバイスまたはシステムの構築および使用、ならびに組み込まれている任意の方法の実施を含む、すべての当業者による本発明の実践を可能にするための例が使用されている。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者に思い浮ぶ他の例を含むことができる。このような他の例には、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含んでいる場合であっても、あるいはそれらが特許請求の範囲の文言とは実質的に異ならない等価構造要素を含んでいる場合であっても、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0030】
24 管束
26 燃焼室
28 エンドキャップ
32 第1の分割器
34 希釈剤通路
36、62 希釈剤ポート
38 追加分割器
40 追加希釈剤通路
44 下流側表面
64 希釈剤分配器
66 希釈剤噴射器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8