特許第6050688号(P6050688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6050688-気相成長装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050688
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20161212BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/34
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-3207(P2013-3207)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-135412(P2014-135412A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】池永 和正
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−210091(JP,A)
【文献】 特開2009−252969(JP,A)
【文献】 特開2011−100783(JP,A)
【文献】 特開2007−227429(JP,A)
【文献】 米国特許第05599732(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205−21/31、21/365、21/469、
21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス導入部及びガス排出部を備えたチャンバー内に、サセプタで保持したサファイア基板を配置し、該基板を加熱するとともに、前記原料ガス導入部からガス排出部に向けてチャンバー内に原料ガスを導入し、チャンバー内で原料ガスを反応させて前記基板面にGaN薄膜を形成する気相成長装置において、前記基板のガス流れ方向上流側の前記サファイア基板に対向する側に配置される部材のガス接触面のみをガリウム化合物で形成した気相成長装置。
【請求項2】
原料ガス導入部及びガス排出部を備えたチャンバー内に、サセプタで保持したサファイア基板を配置し、該基板を加熱するとともに、前記原料ガス導入部からガス排出部に向けてチャンバー内に原料ガスを導入し、チャンバー内で原料ガスを反応させて前記基板面にGaN薄膜を形成する気相成長装置において、
前記サセプタは円盤状であり、
該サセプタの上面には内周側に石英中央カバーが、該石英中央カバーの外周側に複数の収容部を周方向に等間隔で形成したサセプタカバーがそれぞれ着脱可能な状態で載置され、
前記収容部に、プレートリングを介して前記サファイア基板が保持されており、
前記原料ガス導入部から前記サファイア基板との間の原料ガスが接触する部材である前記石英中央カバー,前記サセプタカバー,前記プレートリング,前記チャンバーの天井板のうち、前記天井板のガス接触面のみをガリウム化合物で形成した気相成長装置。
【請求項3】
前記ガリウム化合物がGaNである請求項1又は2記載の気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関し、詳しくは、サファイア基板にGaN(窒化ガリウム)の薄膜を気相成長させる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体の一つであるGaN半導体を製造する装置は、例えば、石英製のチャンバー内にサファイア製の基板を配置して該基板を所定の温度に加熱するとともに、前記チャンバー内に、原料ガスとしてトリメチルガリウムとアンモニアとを導入し、該原料ガスを前記基板の表面付近で反応させることにより、基板の表面にGaNを気相成長させて窒化ガリウム半導体を形成する。
【0003】
このような気相成長装置では、原料ガスの状態や基板温度等の成膜条件の最適化だけでなく、各成膜時における成膜条件の均一性を確保することも重要な問題であった。このため、新品あるいは洗浄後のチャンバーを使用する際に、チャンバー内に原料ガスを導入してチャンバー内の原料ガスに接触する面を意図的に汚れた状態にすること、いわゆるプリコートを行うことによって各成膜時における成膜条件の均一化を図ったり、逆に、成膜後にチャンバーを洗浄して常に正常な状態にすることによって各成膜時における成膜条件の均一化を図ったりすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−262967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プリコートを行うためには、原料ガスの無駄が発生するだけでなく、プリコートを行っている間は成膜操作を行えないため、製造コストの増加や生産性の低下を招いてしまう。また、各成膜操作毎に清浄なチャンバーを使用するためには、成膜操作後のチャンバーを取り外して清浄なチャンバーに交換する手間が掛かり、チャンバー交換に要する時間も必要であり、生産性の低下を招いてしまう。
【0006】
そこで本発明は、製造コストの増加や生産性の低下を招くことなく、高品質なGaN薄膜を容易に得ることができる気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置は、原料ガス導入部及びガス排出部を備えたチャンバー内に、サセプタで保持したサファイア基板を配置し、該基板を加熱するとともに、前記原料ガス導入部からガス排出部に向けてチャンバー内に原料ガスを導入し、チャンバー内で原料ガスを反応させて前記基板面にGaN薄膜を形成する気相成長装置において、前記基板のガス流れ方向上流側の前記サファイア基板に対向する側に配置される部材のガス接触面のみをガリウム化合物で形成したことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の気相成長装置は、 原料ガス導入部及びガス排出部を備えたチャンバー内に、サセプタで保持したサファイア基板を配置し、該基板を加熱するとともに、前記原料ガス導入部からガス排出部に向けてチャンバー内に原料ガスを導入し、チャンバー内で原料ガスを反応させて前記基板面にGaN薄膜を形成する気相成長装置において、前記サセプタは円盤状であり、該サセプタの上面には内周側に石英中央カバーが、該石英中央カバーの外周側に複数の収容部を周方向に等間隔で形成したサセプタカバーがそれぞれ着脱可能な状態で載置され、前記収容部に、プレートリングを介して前記サファイア基板が保持されており、前記原料ガス導入部から前記サファイア基板との間の原料ガスが接触する部材である前記石英中央カバー,前記サセプタカバー,前記プレートリング,前記チャンバーの天井板のうち、前記天井板のガス接触面のみをガリウム化合物で形成したことを特徴としている。また、前記ガリウム化合物がGaNであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気相成長装置によれば、原料ガス導入部から導入した原料ガスを、ガス接触面がガリウム化合物で形成された部材に接触させることにより、サーマルクリーニング工程にてサファイア基板上にGaが飛散することで成膜条件が安定化し、結晶性や表面モフォロジーが良好なGaN薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の気相成長装置の一形態例を示す断面正面図である。
図2図1のII−II矢視図である。
図3】実験結果を示すもので、成膜操作回数と測定したFWHMとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明を、自公転型の気相成長装置に適用した一形態例を示すもので、本形態例に示す気相成長装置は、石英ガラス製の偏平円筒状のチャンバー11内に、チャンバー11の底面部分を貫通した支持軸12により円盤状のサセプタ13を支持し、前記支持軸12の上部に、放射状に原料ガスを流出させる原料ガス導入部14を設けるとともに、チャンバ11の外周部にガス排出部15を設けている。
【0012】
サセプタ13の下方には、支持軸12を囲むようにしてヒーター16が設けられ、ヒーター16の周囲にはリフレクター17が設けられている。サセプタ13の上面には、内周側に石英中央カバー18が、該石英中央カバー18の外周側に、複数の収容部19を周方向に等間隔で形成したサセプタカバー20が、それぞれ着脱可能な状態で載置され、前記収容部19に、プレートリング21を介してサファイア基板22がそれぞれ支持されている。
【0013】
そして、前記原料ガス導入部14と前記サファイア基板22との間、すなわち、サファイア基板22のガス流れ方向上流側で、原料ガス導入部14からチャンバー11内に導入された原料ガスが接触する部材、本形態例では、前記石英中央カバー18、前記サセプタカバー20、プレートリング21、チャンバー11の天井板11aの少なくともいずれか一つの部材のガス接触面を、ガリウム化合物で形成している。
【0014】
ガス接触面をガリウム化合物で形成する部材は、ガス接触面の全てをガリウム化合物で形成してもよいが、ガス接触面の一部だけをガリウム化合物で形成してもよい。ガリウム化合物の厚さは任意であるが、耐久性などを考慮すると、10nm以上の厚さに形成することが好ましい。また、ガス接触面へのガリウム化合物の形成は、任意の方法で行うことが可能であるが、例えば、前述のプリコートと同じ操作で部材表面にGaNの薄膜を形成することができる。
【0015】
ガリウム化合物としては、各種の化合物を使用することが可能であり、InGaNやAlGaNも仕様できるが、部品表面をガリウム化合物で形成する際の操作性や経済性を考慮すると、GaNが最適である。また、ガス接触面をガリウム化合物で形成する部材は、パーティクルの発生を防止するための部材交換作業を考慮すると、サファイア基板22に対向する位置に配置される天井板11aであることが好ましい。
【0016】
このように、サファイア基板22のガス流れ方向上流側における原料ガス導入部14とサファイア基板22との間の部材のガス接触面をGaNで形成することにより、原料ガスを導入して成膜する前に行われる、水素を含む雰囲気で1000℃以上まで加熱するサーマルクリーニングの工程で、GaNで形成したガス接触面からサファイア基板上にGaが飛散することで、一般的な成膜条件でサファイア基板22にGaN薄膜を気相成長させた場合でも、得られるGaN薄膜におけるGaNの結晶性を大幅に向上させることができ、表面モフォロジーも良好なものとすることができる。
【0017】
また、一部の部材表面をGaNで形成した場合、例えば、天井板11aのガス接触面をGaNで形成した場合、他の石英中央カバー18、サセプタカバー20及びプレートリング21は、パーティクルの発生を防止するため、適宜清浄な部材に交換すればよく、各成膜操作毎に清浄な部材に交換してもよい。
【0018】
ここで、同一構成の気相成長装置を使用し、天井板11aの内周側にGaN膜を3.5μmの厚さで形成し、3回の成膜操作毎に他の部材を清浄な部材に交換してGaN薄膜の成膜操作を繰り返した場合(実施例)と、天井板を含めて毎回清浄な部材に交換して成膜操作を繰り返した場合(比較例)とで、得られたGaN薄膜のX線半値幅(FWHM)を測定した。なお、天井板11aのGaNの有無以外、温度条件等の成膜条件は全て同一としている。1回目の成膜操作から5回目の成膜操作で得られたGaN薄膜のX線半値幅を測定し、実施例における測定結果を黒三角印で、比較例における測定結果を黒菱形印で、それぞれ図3に示す。図3から明らかなように、X線半値幅の値が小さくなり、良好なGaN薄膜が得られていることがわかる。
【0019】
また、従来例では、各成膜操作の間に30分の部材交換作業が必要であるのに対し、本実施例では、3回目と4回目との間に30分の部材交換作業を行っただけであり、1回の成膜操作に要する時間を6時間とすると、GaN薄膜の成膜操作における装置稼働率を10%以上向上させることができる。
【0020】
なお、気相成長装置における基板の支持構造は任意であり、従来から広く知られている自公転型、公転型、自転型、横型、縦型といった各種構造に対しても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
11…チャンバー、11a…天井板、12…支持軸、13…サセプタ、14…原料ガス導入部、15…ガス排出部、16…ヒーター、17…リフレクター、18…石英中央カバー、19…収容部、20…サセプタカバー、21…プレートリング、22…サファイア基板
図1
図2
図3