(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワックスの含有量が、前記複合樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
前記複合樹脂中の前記ビニル系樹脂セグメントの含有量が25質量%以上60質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
前記ビニル系樹脂セグメントの原料となるモノマー成分中、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー成分を5質量%以上50質量%以下含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のトナー用結着樹脂の水系分散体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法は、下記工程1及び2を含む。
工程1:ポリエステル樹脂セグメント、及び炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント、を含む複合樹脂と、ワックスとを混合して混合物を得る工程
工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相乳化する工程
【0010】
本発明の結着樹脂組成物の水系分散体を用いて得られた静電荷像現像用トナーが、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法においては、1分子中にポリエステル樹脂セグメント及び特定のビニル系樹脂セグメントを含む複合樹脂と、ワックスとを混合して混合物を得、この混合物に水系媒体を添加して転相乳化する。
この複合樹脂のビニル系樹脂セグメントは、炭素数10以上20以下の疎水的な長鎖アルキル基を有するモノマー由来の構成成分を有しており、この部分がワックスとの親和性が高い。そのため、上記混合物中において、ワックスが複合樹脂中に分散するものと考えられる。
更に、この混合物に水系媒体を添加して転相乳化する際、上記のとおり複合樹脂のビニル系樹脂セグメントはワックスとの親和性が高く、かつ複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントは親水的なエステル結合を有するため、ワックスを取り囲むようにワックスの表面に樹脂層が形成されると考えられる。これによって、本発明の製造方法で得られた結着樹脂組成物の水系分散体は、複合樹脂内にワックスが内包されてなる結着樹脂組成物粒子が、水系媒体中に良好に分散することになる。そのため、この分散体を用いて得られたトナーは、ワックスのブリードアウトや脱落を防ぐことができるため、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性に優れるものと考えられる。
以下、本発明について説明する。
【0011】
[トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法]
本発明に係るトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法は、下記工程1及び2を含む。
工程1:ポリエステル樹脂セグメント、及び炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント、を含む複合樹脂と、ワックスとを混合して混合物を得る工程
工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相乳化する工程
また、工程1において、更に有機溶媒を用い、かつ工程2で得られた分散体から有機溶媒を除去する工程3を有していてもよい。
更に、工程2又は3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程4を有していてもよい。
次に、各工程について説明する。
【0012】
<工程1>
工程1は、ポリエステル樹脂セグメント、及び炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント、を含む複合樹脂と、ワックスとを混合して混合物を得る工程である。
これら複合樹脂及びワックスの他に、有機溶媒、中和剤及び界面活性剤の1種又は2種以上を混合してもよい。
【0013】
(複合樹脂)
複合樹脂は、ポリエステル樹脂セグメント及び炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメントを含む。
なお、この複合樹脂は、当該ポリエステル樹脂セグメント及びビニルモノマー由来の構成セグメントと、これらポリエステル樹脂セグメント及びビニルモノマー由来の構成部分のいずれとも反応し得る両反応性モノマーに由来する構成部分の3つの構成部分からなっていることが好ましい。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内でこれら3つの構成部分以外の構成分を含んでいてもよいが、3つの構成部分以外の構成部分を含んでいないことが好ましい。
前述したとおり、複合樹脂のビニル系樹脂セグメントが疎水的なアルキル基を有するためにワックスの表面に樹脂層を良好に形成することができる。また、複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントが親水的なエステル結合を有するために、転相乳化時に、ワックス及び複合樹脂を有する結着樹脂組成物粒子を水系媒体中に良好に分散させることができる。
【0014】
≪ポリエステル樹脂セグメント≫
ポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂は、一般的にトナー用として用いられる物性等を有するトナー用ポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。以下、本発明に用いられるトナー用ポリエステル樹脂の代表的な態様について説明する。
ポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂は、非晶質樹脂であっても結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)であってもよい。ここで、ポリエステル等の樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最大ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1であるポリエステルをいい、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
上記の「吸熱の最大ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最大ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
ポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
【0015】
〔アルコール成分〕
ポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性に優れたトナーを得る観点から、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
【0017】
(式中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。x及びyはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、正の数を示し、xとyの和は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、また、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。)
【0018】
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物として、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性に優れたトナーを得る観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上100モル%以下、より好ましくは80モル%以上100モル%以下、更に好ましくは90モル%以上100モル%以下含有される。
【0019】
本発明に用いられるポリエステル樹脂が結晶性ポリエステルである場合、そのポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分は、ポリエステルの結晶性を高める観点からは、好ましくは炭素数2以上、また、好ましくは炭素数14以下、より好ましくは炭素数6以下の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂のアルコール成分が脂肪族ジオールを含有する場合、脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性、耐久性及び耐熱保存性を高める観点から、ポリエステル樹脂のアルコール成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0020】
また、トナーの低温定着性、耐久性及び耐熱保存性を高める観点から、3価以上のアルコールを用いてもよい。
3価以上のアルコールとして、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、反応性及び分子量調整の観点から、グリセリンが好ましい。
ポリエステル樹脂のアルコール成分が3価以上のアルコールを含有する場合、3価以上のアルコールの含有量は、トナーの低温定着性、耐久性及び耐熱保存性を高める観点から、ポリエステル樹脂のアルコール成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0021】
〔カルボン酸成分〕
ポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂の原料モノマーであるカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の例には、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。これらの中でも、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の向上の観点から、フマル酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の向上の観点から、テレフタル酸が好ましい。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
また、芳香族ジカルボン酸の含有量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のモル比〔脂肪族ジカルボン酸/芳香族ジカルボン酸〕は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは40/60〜60/40である。
カルボン酸成分中における、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の総量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは99モル%以上、より更に好ましくは100モル%である。
【0023】
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸を用いる場合、その含有量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の向上の観点から、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは30モル%以下である。
【0024】
なお、物性調整の観点から、アルコール成分には1価のアルコールが適宜含有されていてもよく、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
【0025】
〔アルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比〕
縮重合反応の原料モノマーであるアルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性及び物性調整の観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.85以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.15以下である。
【0026】
≪ビニル系樹脂セグメント≫
ビニル系樹脂セグメントは、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有する。すなわち、このビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマーは、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーを有する。このように、ビニル系樹脂セグメントは炭素数10以上20以下の疎水的な長鎖アルキル基を有するため、ワックスとの親和性が高く、従って、ワックスは、このビニル系樹脂セグメントを含む複合樹脂中に良好に分散する。
当該観点から、この炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーのアルキル基は、好ましくは炭素数11以上19以下であり、より好ましくは炭素数12以上18以下である。この炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ラウリルの少なくとも1種であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリルである。
【0027】
このビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマーとしては、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーと共に、他のビニルモノマーをあわせて用いることができる。当該他のビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。反応性の観点から、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0028】
ビニル系樹脂セグメントの由来成分である原料ビニルモノマー中における、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーの含有量は、ワックスとの親和性を向上させてワックスを複合樹脂中に良好に分散させ、もってトナーの耐熱保存性、耐久性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における乳化性の向上及び低温定着性の向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。
【0029】
ビニル系樹脂セグメントの由来成分である原料ビニルモノマー中における、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー及びスチレン化合物の総含有量は、トナーの耐熱保存性、耐久性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0030】
ビニル系樹脂セグメントの由来成分である原料ビニルモノマー中における、スチレン化合物の含有量は、トナーの耐熱保存性、耐久性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における乳化性の向上及び低温定着性の向上の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下である。
【0031】
複合樹脂の原料モノマー中における、前記ビニル系樹脂セグメントの原料モノマーの含有量は、ワックスとの親和性を向上させてワックスを複合樹脂中に良好に分散させ、もってトナーの耐熱保存性、耐久性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における乳化性の向上及び低温定着性の向上の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
【0032】
複合樹脂の原料モノマーの総量中における、前記炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマーの含有量は、ワックスとの親和性を向上させてワックスを複合樹脂中に良好に分散させ、もってトナーの耐熱保存性、耐久性、及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは7質量%以上である。また、当該含有量は、工程2の転相乳化時における乳化性の向上及び低温定着性の向上の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。
【0033】
≪両反応性モノマー≫
複合樹脂の原料モノマーとして両反応性モノマーを用いると、当該両反応性モノマーがポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとの両方と反応することにより、複合樹脂を製造することができる。すなわち、本発明の複合樹脂は、前記ビニル系樹脂セグメントが、両反応性モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましく、該両反応性モノマーに由来する構成単位が、前記ビニル系樹脂セグメントと前記ポリエステル樹脂セグメントの結合点となることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物がより好ましい。このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。
【0034】
具体的には、両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーの使用量は、ビニル系樹脂成分の分散性、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、前記アルコール成分100モル部に対して、好ましくは2モル部以上、より好ましくは3モル部以上、更に好ましくは5モル部以上、より更に好ましくは6モル部以上、より更に好ましくは7モル部以上であり、また、好ましくは20モル部以下、より好ましくは18モル部以下、更に好ましくは15モル部以下、より更に好ましくは12モル部以下、より更に好ましくは10モル部以下である。
【0035】
≪複合樹脂の物性≫
本発明に用いられる複合樹脂の軟化点は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、より更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは105℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは115℃以下、より更に好ましくは113℃以下である。
また、本発明に用いられる複合樹脂のガラス転移温度は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上、より更に好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは57℃以下、より更に好ましくは55℃以下である。
【0036】
複合樹脂の酸価は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、より更に好ましくは18mgKOH/g以下である。
なお、軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
複合樹脂中における、ポリエステル樹脂セグメント、ビニル系樹脂セグメント及び両反応性樹脂セグメントの含有量の合計は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは99モル%以上、より更に好ましくは100モル%である。
【0037】
(複合樹脂の製造方法)
複合樹脂は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により製造することが好ましい。なお、両反応性モノマーは、反応性の観点から、ビニル系樹脂成分の原料モノマーと共に反応系に供給されることが好ましい。また、反応性の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更に重合開始剤及び重合禁止剤を用いてもよい。
(1)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)の後に、ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び必要に応じて両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法。
なお、工程(A)において、カルボン酸成分の一部を縮重合反応に供し、次いで工程(B)を実施した後に、再度反応温度を上昇させ、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応をさらに進める方法がより好ましい。
【0038】
(2)ビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)を行う方法。
アルコール成分及びカルボン酸成分については、付加重合反応時に反応系内に存在させておき、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒及び必要に応じて更にエステル化助触媒を添加させることにより縮重合反応を開始することもできるし、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に後から添加することにより縮重合反応を開始することもできる。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒及び必要に応じて更にエステル化助触媒を添加することで分子量及び分子量分布が調節できる。
【0039】
(3)アルコール成分及びカルボン酸成分による縮重合反応の工程(A)とビニル系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法。
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、ポリエステル樹脂成分の3価以上の原料モノマー等を架橋剤として重合系に添加し、更に工程(A)の縮重合反応を行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
以上の中でも、方法(1)が、縮重合反応の反応温度の自由度が高いという点から好ましい。
上記(1)〜(3)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
付加重合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、また、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは165℃以下である。
【0040】
縮重合反応の温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは160℃以上であり、より更に好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは260℃以下であり、より好ましくは250℃以下であり、更に好ましくは245℃以下であり、より更に好ましくは240℃以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
【0041】
≪エステル化触媒≫
上記縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0042】
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)が更に好ましい。
【0043】
上記エステル化触媒の存在量は、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0044】
≪エステル化助触媒≫
エステル化助触媒としては、ピガロール化合物が好ましい。このピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるエステル化助触媒の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。ここで、エステル化助触媒の存在量とは、縮重合反応に供したエステル化助触媒の全配合量を意味する。
エステル化助触媒とエステル化触媒との質量比(エステル化助触媒/エステル化触媒)は、反応性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上、更に好ましくは0.003以上であり、また、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.005以下である。
【0045】
(ワックス)
ワックスとしては、エステル系ワックス、炭化水素ワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミド等を用いることができる。なかでも、トナーの低温定着性を向上させ、耐熱保存性を良好に保つ観点から、エステル系ワックスが好ましい。
エステル系ワックスは、エステル結合を有する、酸価が1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であるワックスのことをいう。
エステル系ワックスの酸価は、トナーの低温定着性を向上させ、耐熱保存性を良好に保つ観点から、1mgKOH/g以上であり、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、また、10mgKOH/g以下であり、好ましくは8mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以下である。
エステル系ワックスとしては、合成エステルワックス及び天然エステルワックスが挙げられる。合成エステルワックスとしては、長鎖アルコールと脂肪酸からなるエステルが挙げられ、好ましくはベヘニン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルの少なくとも1種である。天然エステルワックスとしては、好ましくはカルナウバワックス及びライスワックスの少なくとも1種である。これらのうち、トナーの低温定着性を向上させ、耐熱保存性を良好に保つ観点から、合成エステルワックスが好ましく、長鎖アルコールと脂肪酸からなるエステルがより好ましく、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルが更に好ましく、ペンタエリスリトールベヘン酸エステルが更に好ましい。
炭化水素ワックスの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックスが挙げられる。
【0046】
ワックスの使用量は、トナーの離型性を向上して低温定着性を向上させる観点、耐熱性及び耐久性の観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
【0047】
(混合物)
混合物は、前述の複合樹脂と、前述のワックスとを含む。この混合物は、更に、有機溶媒及び中和剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、中和剤を含むことがより好ましく、有機溶媒及び中和剤を含むことが更に好ましい。
なお、混合物が有機溶媒を含まない場合には、後述の工程2で、ワックスの融点以上で混合物に水系媒体を添加して、転相乳化することが好ましい。
<有機溶媒>
有機溶媒としては、複合樹脂の分散性を向上する観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、好ましくは15.0MPa
1/2以上、より好ましくは16.0MPa
1/2以上、更に好ましくは17.0MPa
1/2以上であり、また、好ましくは26.0MPa
1/2以下、より好ましくは24.0MPa
1/2以下、更に好ましくは22.0MPa
1/2以下である。
【0048】
具体例としては、次の有機溶媒が挙げられる。なお、次の有機溶媒の名称の右側のカッコ内はSP値であり、単位はMPa
1/2である。すなわち、具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。これらの中では、トナーの粒径分布、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、ケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒が好ましく、メチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、更にトナーの耐熱保存性の観点から、酢酸エチル及び/又は酢酸イソプロピルが更に好ましく、更に酢酸エチルがより更に好ましい。
【0049】
有機溶媒と複合樹脂との質量比(有機溶媒/複合樹脂)は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.6以下である。
【0050】
(中和剤)
本発明に用いられる中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。これらの中でも、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、pKaが12以下である中和剤が好ましく、pKaが10以下である中和剤がより好ましく、また、同様の観点からpKaが8以上である中和剤がより好ましい。なかでもアンモニア(pKa=9.3)、トリエチルアミン(pKa=9.8)が好ましく、アンモニアがより好ましい。
複合樹脂の中和剤による中和度は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、より更に好ましくは80モル%以下、より更に好ましくは75モル%以下である。なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の質量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)]/(56×1000)〕}×100
【0051】
なお、混合物には、本発明の効果に影響しない範囲で、更に任意の成分を添加してもよい。例えば、無機塩、前述以外の有機溶媒、本発明に限定する濃度以下の後述する界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
(混合物の製造方法)
当該混合物は、上述した複合樹脂と、ワックスと、更に必要に応じて有機溶媒及び中和剤の少なくとも1種とを混合することにより得ることができる。
混合物の製造方法において、各原料の添加順序に限定はないが、複合樹脂、有機溶媒及びワックスを混合した後、中和剤を混合することが好ましい。
混合の際は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
【0053】
混合時の温度は、工程温度の安定化、工程時間の短縮、溶液の低粘度化などの観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。また、撹拌は、著しい分相や不溶物の存在等が無い状態となるまで行うのが好ましく、撹拌時間は、撹拌速度や温度条件にもよるが、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下である。
【0054】
<工程2>
工程2は、前記混合物に、水系媒体を添加し、転相乳化する工程である。また、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。この転相乳化により、複合樹脂及びワックスを含むトナー用結着樹脂組成物の粒子が水系媒体に分散してなるトナー用結着樹脂組成物の水系分散液を得ることができる。
【0055】
(水系媒体)
水系媒体としては水を主成分とするものが好ましい。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキル(炭素数1〜3)ケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらのなかでは、トナーへの混入を防止する観点から、樹脂を溶解しない有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶媒がより好適に使用できる。
水系媒体中の水の含有量は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。水は、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
【0056】
水系媒体を添加する際の温度は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、工程1において、有機溶媒を用い、前記混合物に有機溶媒を含む場合、前記ワックスの有機溶媒への溶解温度以上であることが好ましく、前記混合物が有機溶媒を含まない場合には、ワックスの融点以上であることが好ましい。
更に樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、複合樹脂のガラス転移温度以上が好ましい。具体的には、水系媒体を添加する際の温度は、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上、より更に好ましくは42℃以上であり、また、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下、より更に好ましくは60℃以下である。
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂組成物粒子を得る観点から、転相が終了するまでは、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは3質量部/分以上、より更に好ましくは4質量部/分以上であり、また、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは10質量部/分以下、より更に好ましくは8質量部/分以下である。転相後の水系媒体の添加速度には制限はない。
【0057】
水系媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上、より更に好ましくは300質量部以上、より更に好ましくは400質量部以上であり、また、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下、より更に好ましくは700質量部以下、より更に好ましくは500質量部以下である。
また、工程(1)で得られた混合物が有機溶媒を含んでいる場合には、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、水系媒体と前記有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)が70/30〜98/2になるように前記水系媒体を添加することが好ましい。当該観点から、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、また、より好ましくは95/15以下、更に好ましくは90/10以下である。
【0058】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。なかでも、複合樹脂の分散性の観点から、非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0059】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類あるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、これらの中でも樹脂の乳化安定性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸塩が好ましく、アルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
複合樹脂の分散性と樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤のなかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、アルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
【0060】
(トナー用結着樹脂組成物の粒子)
得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散液中における、トナー用結着樹脂組成物の粒子の体積中位粒子径(D
50)は、トナーの生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは120nm以上、より更に好ましくは140nm以上、より更に好ましくは150nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm以下である。
【0061】
<工程3>
工程3として、工程2の後に、工程2で得られた分散体から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、実質的に0%が更に好ましい。
【0062】
蒸留によって有機溶媒の除去を行う場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、複合樹脂の分散安定性を維持する観点から、減圧下で、その圧力における使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのがより好ましい。なお、減圧した後昇温しても、昇温した後減圧してもよい。複合樹脂の分散安定性を維持する観点から、温度及び圧力を一定にして留去するのが好ましい。
【0063】
<工程4>
工程4として、工程2又は工程3の後に、工程2又は工程3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程を有していてもよい。
工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、工程1〜4で添加する界面活性剤の総添加量の、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは70質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
また、工程4において添加する界面活性剤の量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4.5質量部以下である。
【0064】
界面活性剤添加時は、アンカー翼等の一般的に用いられる混合撹拌装置、外部循環撹拌装置等で撹拌することが好ましい。
アンカー翼等の混合撹拌装置を用いた場合、撹拌の周速は、分散性の観点から、好ましくは20m/分以上、より好ましくは40m/分以上、更に好ましくは60m/分以上、より更に好ましくは80m/分以上であり、また、好ましくは200m/分以下、より好ましくは150m/分以下、更に好ましくは100m/分以下である。
【0065】
工程4の界面活性剤添加時の温度は、界面活性剤の水への分散性などの観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは50℃以下、好ましくは40℃以下、好ましくは35℃以下である。
【0066】
工程1〜工程4を含む水系分散体の製造工程を経て得られる水系分散体の固形分濃度は、分散体の安定性及び取扱い容易性等の観点から、適宜水を加えることにより、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0067】
トナーの粒径分布、耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、工程3又は4の後、好ましくは工程4の後、水系分散体のpHを3以下、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜2.5に調整することが好ましい。
水系分散体のpHを3以下に調整する方法としては、酸を添加する方法が好ましい。酸としては、効率よくpHを低下させる観点から、無機酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
また、その後に水系分散体のpHを4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4.5〜5.5に調整することが好ましい。
水系分散体のpHを4以上に調整する方法としては、塩基を添加する方法が好ましい。塩基としては、効率よくpHを増加させる観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0068】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程A及びCを含む。
工程A:前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子を得る工程
工程C:前記凝集粒子を融着させる工程
また、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程Bを含み、かつ工程Cでは工程Bで得られた凝集粒子を融着させてもよい。すなわち、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程A、B及びCを含んでもよい。
工程A:前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子を得る工程
工程B:工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子を得る工程
工程C:工程Bで得られた前記凝集粒子を融着させる工程
以下、工程A〜Cについて説明する。
【0069】
<工程A>
工程Aは、前述の製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子を得る工程である。
この工程Aにより、凝集粒子が媒体中に分散してなる分散体が得られる。
工程Aでは、凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。また、工程Aでは、着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集させてもよい。該添加剤は、水系分散体としてから使用することもできる。
【0070】
(凝集剤)
凝集剤は、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩等の無機系凝集剤が用いられる。トナーの粒径分布、耐熱保存性及び印刷物の光沢性の観点から、無機系凝集剤が好ましく、なかでも無機金属塩が好ましい。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等が挙げられる。無機金属塩の中心金属の価数は、トナーの粒径分布、耐熱保存性、印刷物の光沢性の観点から、2価以上であることが好ましい。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.8質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下である。
凝集剤は、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
凝集工程において、凝集剤を均一に分散し、均一な凝集を起こさせる観点から、凝集剤の添加時の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは18℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。凝集剤を添加した後の保持温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上であり、また、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
【0071】
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の添加量は、画像品質を向上する観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上、より更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
この着色剤は、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液として添加してもよい。この着色剤微粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0072】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられる。各種荷電制御剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、画像品質を向上する観点から、複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
この荷電制御剤は、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液として添加してもよい。この荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上であり、また、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下である。
【0073】
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、樹脂粒子を調製する際に複合樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、複合樹脂の水系分散体と混合し、凝集工程に供してもよい。
樹脂粒子を調製する際に複合樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め複合樹脂と添加剤とを溶融混練することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが平行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、通常の二軸混練機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
また、各添加剤の水系分散液は、各添加剤、界面活性剤及び水を混合し、分散機で分散処理することによって得られる。
【0074】
<工程B>
工程Bは、工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子を得る工程である。
これにより、更に後述する工程Cを経て、コアシェル型のトナーを得ることができる。すなわち、工程Aで得られた凝集体部分が主にコア部を構成し、工程Bで凝集させた部分が主にシェル部を構成する。
トナー耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、上記のポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体のうち、少なくともポリエステル樹脂の水系分散体を混合するのが好ましく、ポリエステル樹脂の水系分散体のみを混合するのがより好ましい。
なお、「工程Aで得られた分散体」とは、前述のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて得られた、当該凝集粒子が媒体中に分散してなる分散体のことを意味する。
【0075】
(ポリエステル樹脂の水系分散体)
ポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂は、一般的にトナー用として用いられる物性等を有するトナー用ポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。
ポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分の種類及び含有量、アルコール成分とカルボン酸成分とのモル比、並びにポリエステル樹脂の物性は、前述した複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントを構成するポリエステル樹脂と同様である。
【0076】
トナーのシェル部の耐熱性をコア部よりも高くして、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂の軟化点は、複合樹脂の軟化点よりも高いことが好ましい。当該観点から、このポリエステル樹脂と複合樹脂の軟化点の温度差は、好ましくは2℃以上、より好ましくは4℃以上、更に好ましくは5℃以上、より更に好ましくは8℃以上、より更に好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下、より更に好ましくは20℃以下、より更に好ましくは15℃以下である。
このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂の軟化点は、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上、より更に好ましくは110℃以上、より更に好ましくは115℃以上であり、また、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下、より更に好ましくは125℃以下、より更に好ましくは123℃以下である。
また、このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下、より更に好ましくは70℃以下である。
【0077】
このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂の酸価は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上、より更に好ましくは12mgKOH/g以上であり、また、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、より更に好ましくは18mgKOH/g以下である。
なお、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、重量平均分子量、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
【0078】
このポリエステル樹脂の水系分散体を構成するポリエステル樹脂の原料であるカルボン酸成分の好ましい種類は、前記複合樹脂のポリエステル部分を構成するポリエステル樹脂のカルボン酸成分と同様であり、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、テレフタル酸及びフマル酸を含むことがより好ましい。
カルボン酸成分中における、脂肪族ジカルボン酸の含有量は、トナーのシェル部の耐熱性をコア部よりも高くして、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、前述の複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントの原料カルボン酸成分中における脂肪族ジカルボン酸の含有量よりも少ないことが好ましい。当該含有量は、当該観点から、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
また、カルボン酸成分中における、芳香族ジカルボン酸の含有量は、トナーのシェル部の耐熱性をコア部よりも高くして、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、前述の複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントの原料カルボン酸成分中における芳香族ジカルボン酸の含有量よりも多いことが好ましい。当該含有量は、当該観点から、カルボン酸成分中、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上であり、また、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0079】
この水系分散体中における、ポリエステル樹脂の粒子の体積中位粒子径(D
50)は、トナーの生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは120nm以上、より更に好ましくは140nm以上、より更に好ましくは150nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm以下である。
【0080】
(凝集粒子)
得られた凝集粒子の体積中位粒子径(D
50)は、トナーの低温定着性の観点から、好ましく3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上、より更に好ましくは4.5μm以上であり、また、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下、更に好ましくは7.5μm以下、より更に好ましくは7.0μm以下、より更に好ましくは6.5μm以下である。
<工程C>
工程Cでは、工程A又は工程Bで得られた凝集粒子の水系分散体に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、必要に応じて、加熱することにより融着粒子を得る。
【0081】
融着工程における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性を高める観点から、複合樹脂の軟化点−40℃以上が好ましく、軟化点−35℃以上がより好ましく、軟化点−25℃以上が更に好ましく、また、軟化点+10℃以下が好ましく、軟化点以下がより好ましく、軟化点−10℃以下が好ましく、軟化点−15℃以下が好ましく、軟化点−20℃以下が好ましい。
具体的には、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。
【0082】
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、アルキルエーテル硫酸塩を用いることが更に好ましい。
【0083】
〔後工程〕
前記工程Cにより得られた融着粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、本発明の静電荷像現像用トナーを好適に得ることができる。
洗浄工程では、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5質量%以下、更には1.0質量%以下に調整することが好ましい。
更に流動性を向上する等の目的のために外添剤を添加しても良い。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、及びカーボンブラック等の無機微粒子;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びシリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できる。
【0084】
外添剤の個数平均粒子径は、トナーの流動性の観点から、好ましくは4〜200nm、より好ましくは8〜30nmである。
外添剤を添加する場合、その添加量は、トナーの流動性、帯電度の環境安定性及び保存安定性の観点から、外添剤による処理前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
トナーの体積中位粒子径(D
50)は、トナーの耐熱保存性、耐久性及び低温定着性の観点から、好ましく3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上、より更に好ましくは4.5μm以上であり、また、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下、更に好ましくは7.5μm以下、より更に好ましくは7.0μm以下、より更に好ましくは6.5μm以下である。
【0085】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の水系分散体の製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造方法を開示する。
【0086】
<1>下記工程1及び2を含む、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
工程1:ポリエステル樹脂セグメント、及び炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント、を含む複合樹脂と、ワックスとを混合して混合物を得る工程
工程2:前記混合物に、水系媒体を添加し、転相乳化する工程
【0087】
<2>工程1において、更に中和剤を混合する、上記<1>に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<3>工程2において、更に界面活性剤を混合する、上記<1>又は<2>に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<4>前記ワックスの含有量が、前記複合樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、上記<1>〜<3>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<5>前記複合樹脂中の前記ビニル系樹脂セグメントの含有量が25質量%以上60質量%以下である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
【0088】
<6>前記ビニル系樹脂セグメントの原料となるモノマー成分中、炭素数10以上20以下のアルキル基を有するビニルモノマー成分を5質量%以上50質量%以下含有する、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂の水系分散体の製造方法。
<7>前記ビニル系樹脂セグメントが、両反応性モノマーに由来する構成単位を含む、上記<1>〜<6>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<8>工程1において、更に有機溶媒を用い、かつ工程2で得られた分散体から前記有機溶媒を除去する工程3を有する、上記<1>〜<7>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<9>工程2において、水系媒体を添加する際の温度が前記ワックスの有機溶媒への溶解温度以上である、上記<8>に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<10>工程2又は3で得られた水系分散体に界面活性剤を混合する工程4を有する、上記<8>又は<9>に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
【0089】
<11>前記界面活性剤の全添加量の50質量%以上100質量%以下を工程4で混合する、上記<10>に記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<12>工程1において、前記有機溶媒と前記複合樹脂との質量比(有機溶媒/複合樹脂)が0.03以上5以下である、上記<8>〜<11>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<13>工程2において、前記水系媒体と前記有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)が70/30〜98/2になるように前記水系媒体を添加する、上記<8>〜<12>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<14>前記有機溶媒が酢酸エステルである、上記<8>〜<13>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
<15>工程1において、更にpKaが12以下である中和剤を混合する、上記<1>〜<14>のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造方法。
【0090】
<16>下記工程A及びCを含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程A:上記<1>〜<15>のいずれかの製造方法で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を凝集させて凝集粒子を得る工程
工程C:前記凝集粒子を融着させる工程
<17>下記工程Bを含み、かつ工程Cでは工程Bで得られた凝集粒子を融着させる、上記<16>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程B:工程Aで得られた分散体に、ポリエステル樹脂の水系分散体及びスチレンアクリル樹脂の水系分散体の少なくとも1種を混合し、凝集させて凝集粒子を得る工程
【実施例】
【0091】
樹脂、樹脂粒子、トナー等の各性状等については次の方法により測定、評価した。
【0092】
[樹脂の酸価]
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0093】
[樹脂の軟化点及びガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0094】
(2)吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。
【0095】
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0096】
[凝集粒子の体積中位粒径(D
50)]
凝集粒子の体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザーIIIバージョン3.51」(ベックマンコールター社製)
・電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王(株)製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに試料10mg(固形分換算)を添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)及び粒径2μm以下の個数%を求めた。
【0097】
[樹脂粒子、結着樹脂組成物粒子、着色剤微粒子、荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D
50)]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」((株)堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D
50)を測定した。
【0098】
[着色剤分散液、荷電制御剤分散液、シェル用水系分散体、結着樹脂組成物の水系分散体の固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、試料の水分(質量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:試料の水分(質量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料質量(初期試料質量)
W0:測定後の試料質量(絶対乾燥質量)
【0099】
[トナーの低温定着性]
複写機「AR−505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm
2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を80℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆(株)製、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
【0100】
[トナーの耐熱保存性]
25mL容の容器(直径約3cm)にトナー5gを入れ、温度55℃ 、湿度75% の環境下で96時間放置した。12時間毎にトナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、耐熱保存性を評価した。凝集が認められない時間が長いほど、耐熱保存性に優れる。
(評価基準)
A:84時間後も凝集は認められない。
B:72時間後で凝集は認められないが84時間後では凝集が認められる。
C:60時間後で凝集は認められないが72時間後では凝集が認められる。
D:36時間後で凝集は認められないが48時間後では凝集が認められる。
E:24時間後で凝集は認められないが36時間後では凝集が認められる。
F:24時間後で凝集が認められる。
【0101】
[トナーの耐久性]
非磁性一成分現像方式プリンター「OKI Microline 18」((株)沖データ製)にトナーを実装し、温度30℃ 、湿度80%の条件下にて、黒化率5.5%の斜めストライプのパターンの耐刷を行った。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジを確認した。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を耐刷枚数とした。耐刷枚数が大きいものほど、耐久性に優れる。
【0102】
[複合樹脂の製造]
製造例1〜6及び10、11
(複合樹脂A〜F及びJ、Kの製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、160℃まで冷却し、表1に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、180℃まで冷却した。その後、ラジカル重合禁止剤(4−t−ブチルカテコール)及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、複合樹脂A〜F及びJ、Kを得た。なお、本発明における反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0103】
製造例7
(ポリエステル樹脂Gの製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認した。その後180℃まで冷却し、4−t−ブチルカテコール及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル樹脂Gを得た。
製造例8
(ポリエステル樹脂Hの製造)
4−t−ブチルカテコールを用いなかったこと以外は製造例7と同様にして、ポリエステル樹脂Hを得た。
【0104】
製造例9
(ワックス含有複合樹脂Iの製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで2時間かけて昇温を行った。その後235℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、160℃まで冷却し、パラフィンワックス「HNP9」(日本精蝋(株)製、融点:85℃)を480g(樹脂100質量部に対し、30質量部)加えた。その後、160℃に保温した状態で、表1に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、180℃まで冷却した。その後、4−t−ブチルカテコール及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、ワックス含有複合樹脂Iを得た。
【0105】
製造例12
(複合樹脂Lの製造)
表1に示すBPA−PO、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、160℃まで昇温した。表1に示すビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤の混合溶液を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持したのち、200℃まで昇温し、更に8kPaの減圧下で1時間反応させた後、180℃まで冷却した。その後、ラジカル重合禁止剤(4−t−ブチルカテコール)及びフマル酸を加え、2時間かけて210℃まで昇温した。その後、210℃にて1時間反応後、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、複合樹脂Lを得た。
【0106】
【表1-1】
【0107】
【表1-2】
【0108】
[着色剤分散液の製造]
製造例13
銅フタロシアニン「ECB−301」(大日精化工業(株)製)50g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤微粒子を含有する着色剤分散液を得た。着色剤微粒子の体積中位粒径(D
50)は120nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
【0109】
[荷電制御剤分散液の製造]
製造例14
荷電制御剤としてサリチル酸系化合物「ボントロンE−84」(オリエント化学工業(株)製)50g、非イオン性界面活性剤として「エマルゲン150」(花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤微粒子を含有する荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D
50)は400nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
【0110】
[シェル用水系分散体の製造]
製造例15
(ポリエステル樹脂の水系分散体の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、ポリエステル樹脂H150g、酢酸エチル75gを仕込み、30℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、20%アンモニア水溶液を樹脂の酸価に対して中和度100モル%になるように添加して中和し、30分撹拌した。その後30℃に保持したままで280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、イオン交換水675gを77分かけて添加した。ついで30分かけて50℃に昇温させた後、酢酸エチルを減圧下で留去した。その後、250r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えてシェル用水系分散体を得た。得られたシェル用水系分散体の樹脂粒子の体積中位粒径は152nmであった。
【0111】
[トナー用結着樹脂組成物の水系分散体の製造]
実施例1
(トナー用結着樹脂組成物の水系分散体1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、複合樹脂A 150g、酢酸エチル75g、エステル系ワックス「WEP8」(日本精蝋(株)製、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、融点:78℃)を45g(樹脂100質量部に対し30質量部)仕込み、70℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、20質量%アンモニア水溶液(pKa:9.3)を、樹脂の酸価に対して中和度70モル%になるように添加して、30分撹拌した(工程1)。
70℃に保持したまま、280r/分(周速88m/分)で撹拌しながら、イオン交換水675gを77分かけて添加し、転相乳化した(工程2)。継続して70℃に保持したまま、酢酸エチルを減圧下で留去した(工程3)。その後、280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王(株)製)を16.7g混合し、完全に溶解させた(工程4)。その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えることにより、水系媒体中に結着樹脂組成物粒子が分散してなるトナー用結着樹脂組成物の水系分散体を得た。得られた水系分散体の結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径は162nmであった。
【0112】
実施例2〜
6,8〜14
及び参考例7、及び比較例1〜3及び5
(トナー用結着樹脂組成物の水系分散体2〜17及び19の製造)
実施例1において、工程1で用いた樹脂の種類、ワックス量、工程2の転相乳化時の温度を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体を得た。ただし、比較例2は乳化できなかったため、水系分散体16は得られなかった。得られた水系分散体の結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径を表2に示す。
【0113】
比較例4
(トナー用結着樹脂組成物の水系分散体18の製造)
複合樹脂A 150g、酢酸エチル75g、エステル系ワックス「WEP8」(日本精蝋(株)製、融点:78℃)45g、アニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「エマールE27C」)を16.7gを25℃にて溶解させ、70℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、20質量%アンモニア水溶液(pKa:9.3)を、樹脂の酸価に対して中和度70モル%になるように添加して、その後、イオン交換水600gを混合し、超音波ホモジナイザー(ドクターヒールッシャー(株)製、商品名:「UP−400S」)を用いて出力350Wで30分散処理した。その後70℃にて、酢酸エチルを減圧留去し、結着樹脂組成物の水系分散体を得た。得られた水系分散体の結着樹脂組成物粒子の体積中位粒径を表2に示す。
【0114】
[静電荷像現像用トナーの製造]
実施例15
実施例1で得られたトナー用結着樹脂組成物の水系分散体1を300g、着色剤分散液8g、荷電制御剤分散液2g及び脱イオン水52gを2L容の容器に入れ、アンカー型の撹拌機で100r/分(周速31m/分)の撹拌下、20℃で0.1質量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら50℃まで昇温した。体積中位粒径が5μmになるまで50℃で保持した。3時間たった時点で体積中位粒径が5μmに達した。その後、表2にトナーのシェルとして示すシェル用水系分散体を75g加え、撹拌して分散させた。その後、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王(株)製、固形分28質量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加した。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これにより融着粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子を得た。
【0115】
(外添工程)
上記トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ「NAX−50」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径40nm)1.0質量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径16nm)0.6質量部、酸化チタン「JMT−150IB」(テイカ(株)製、個数平均粒子径15nm)0.5質量部を、ST、A0撹拌羽根を装着した10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、3000rpmにて2分間撹拌して、トナーを得た。トナーの評価結果を表2に示す。
【0116】
実施例16〜
20,22〜28
及び参考例21、及び比較例6〜9
(静電荷像現像用トナーの製造)
実施例15において、トナー用結着樹脂組成物の水系分散体を表2のように変更した以外は、実施例15と同様にして、トナーを得た。トナーの評価結果を表2に示す。
【0117】
【表2-1】
【0118】
【表2-2】
【0119】
【表2-3】
【0120】
表2から、実施例の静電荷像現像用トナーは、比較例の静電荷像現像用トナーに比べて、いずれも低温定着性、耐熱保存性及び耐久性に優れることがわかる。