特許第6050731号(P6050731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050731近接場変換器のための反射層を備える熱アシスト記録(TAR)ヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050731
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】近接場変換器のための反射層を備える熱アシスト記録(TAR)ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20161212BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G11B5/31 Z
   G11B5/02 T
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-165804(P2013-165804)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-38689(P2014-38689A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】13/571,432
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】バリー カッシング スタイプ
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−146097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0074063(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0111309(US,A1)
【文献】 特開昭60−189708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0091618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31 − 5/325
G11B 5/56 − 5/60
G11B 5/00 − 5/024
G11B21/16 −21/26
G11B 7/12 − 7/22
G02B 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層対向表面を有するヘッド・キャリアと、
前記記録層対向表面に先端を有する前記ヘッド・キャリア上の書き込み磁極層と、
前記書き込み磁極層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上の近接場変換器(NFT)層であって、前記NFT層は前記記録層対向表面に出力端を有する、NFT層と、
前記NFT層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上に配置され、レーザー光を前記NFT層に導く光導波路層であって、前記NFT層は前記光導波路層と前記書き込み磁極層との間に配置される、光導波路層と、
前記光導波路層にほぼ平行な方向に向けられている反射層であって、前記光導波路層は前記反射層と前記NFT層との間に配置される、反射層と、
前記光導波路層と前記反射層との間および前記光導波路層と前記NFT層との間の電気的絶縁材料と、
を有し、
前記記録層対向表面に垂直な方向の前記NFT層の高さがHnftであり、かつ、前記反射層の高さHrlが0.2Hnft〜1.2Hnftである、磁気記録層書き込み用熱アシスト記録(TAR)ヘッド。
【請求項2】
前記反射層と前記NFT層との間の前記光導波路層に垂直な方向の距離Dが0.8N*λ/(2n)〜1.2N*λ/(2n)であり、Nは整数、λは前記レーザー光の波長、nは前記導波路および前記絶縁材料の屈折率の平均である、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項3】
前記光導波路層が、前記記録層対向表面に平行な平面において厚さTwgおよびTwgに垂直な幅Wwgを有し、Wwgに平行な前記反射層の幅Wrlが0.2Wwgより大きい、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項4】
rlが1.4Wwgより大きい、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項5】
前記反射層にほぼ平行な方向に向けられている帰還磁極層をさらに含み、前記反射層が前記帰還磁極層上に支持される、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項6】
前記反射層がCu、Ag、Au、Al、Rh、Ti、Cr、Mo、Fe、CoおよびNiの1つ以上を含む金属または金属合金から形成される、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項7】
前記NFT層の出力端がほぼ三角形状であり、前記出力端が前記書き込み磁極層に対向する頂点を有する、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項8】
前記ヘッド・キャリア上に磁気抵抗読み取りヘッドをさらに含む、請求項1に記載のTARヘッド。
【請求項9】
磁気記録ディスク上の磁気記録層書き込み用熱アシスト記録(TAR)ヘッドであって、
前記ディスク上の前記磁気記録層に対向する空気浮上表面(ABS)を有する空気浮上スライダであって、前記ABSは、トラックに沿った軸および前記トラックに沿った軸に垂直なトラック横断軸を有する、空気浮上スライダと、
前記スライダ上に配置され、前記トラックに沿った軸上の前記ABSに先端を有する書き込み磁極と、
前記スライダ上に配置され、前記トラックに沿った軸方向の厚さおよび前記トラックに沿った軸にほぼ垂直な方向に向けられている表面を有する光導波路であって、前記ABS近傍の端部にトラック横断軸方向の厚さWwgを有する光導波路と、
前記書き込み磁極と前記光導波路との間の前記スライダ上の近接場変換器(NFT)であって、前記NFTは、前記光導波路の前記表面に平行であり、かつ、前記光導波路の前記表面から離隔されている表面と、前記トラックに沿った軸方向の厚さと、前記ABSでの出力端を有し、前記出力端は、前記書き込み磁極先端と前記光導波路端との間の前記トラックに沿った軸上に配置される、近接場変換器(NFT)と、
前記光導波路の前記表面にほぼ平行な方向に向けられる反射層であって、前記光導波路は、前記反射層と前記NFTとの間に配置される、反射層と、
前記光導波路と前記反射層との間および前記光導波路の前記表面と前記NFTとの間の電気的絶縁材料と、を有し、
前記反射層と前記NFTの厚さの中心との間のトラックに沿った軸方向の距離Dは、0.8N*λ/(2n)〜1.2N*λ/(2n)であり、ここでNは整数、λはレーザー光の波長、nは前記光導波路および前記絶縁材料の屈折率の平均である、
熱アシスト記録(TAR)ヘッド。
【請求項10】
前記ABSに垂直な方向の前記NFT層の高さがHnftであり、かつ、前記ABSに垂直な方向の前記反射層の高さHrlが0.2Hnft〜1.2Hnftである、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項11】
wgに平行な前記反射層の幅Wrlが0.2Wwgより大きい、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項12】
rlが1.4Wwgより大きい、請求項11に記載のTARヘッド。
【請求項13】
前記反射層にほぼ平行な方向に向けられている帰還磁極層をさらに含み、前記反射層は前記帰還磁極層上に支持される、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項14】
前記反射層がCu、Ag、Au、Al、Rh、Ti、Cr、Mo、Fe、CoおよびNiの1つ以上を含む金属または金属合金から形成されることを含む請求項に記載のTARヘッド。
【請求項15】
前記NFT層出力端がほぼ三角形状であり、前記書き込み磁極先端に対向する頂点を有する、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項16】
N=2である、請求項に記載のTARヘッド。
【請求項17】
請求項9に記載のTARヘッドと、
光を前記光導波路層に差し向けるレーザーと、
磁気記録層を有する磁気記録ディスクと、
を有する熱アシスト記録(TAR)ディスク・ドライブ。
【請求項18】
前記磁気記録層が磁性材料の離散的アイランドを含むほぼ同心円状トラックにパターン化される、請求項17に記載のTARディスク・ドライブ。
【請求項19】
記録層対向表面を有するヘッド・キャリアと、
前記記録層対向表面に先端を有する前記ヘッド・キャリア上の書き込み磁極層と、
前記書き込み磁極層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上の近接場変換器(NFT)層であって、前記NFT層は前記記録層対向表面に出力端を有する、NFT層と、
前記NFT層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上に配置され、レーザー光を前記NFT層に導く光導波路層であって、前記NFT層は前記光導波路層と前記書き込み磁極層との間に配置される、光導波路層と、
前記光導波路層にほぼ平行な方向に向けられている反射層であって、前記光導波路層は前記反射層と前記NFT層との間に配置される、反射層と、
前記光導波路層と前記反射層との間および前記光導波路層と前記NFT層との間の電気的絶縁材料と、
を有し、
前記光導波路層が、前記記録層対向表面に平行な平面において厚さTwgおよびTwgに垂直な幅Wwgを有し、Wwgに平行な前記反射層の幅Wrlが0.2Wwgより大きい、磁気記録層書き込み用熱アシスト記録(TAR)ヘッド。
【請求項20】
rlが1.4Wwgより大きい、請求項19に記載のTARヘッド。
【請求項21】
記録層対向表面を有するヘッド・キャリアと、
前記記録層対向表面に先端を有する前記ヘッド・キャリア上の書き込み磁極層と、
前記書き込み磁極層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上の近接場変換器(NFT)層であって、前記NFT層は前記記録層対向表面に出力端を有する、NFT層と、
前記NFT層にほぼ平行な方向に向けられている前記ヘッド・キャリア上に配置され、レーザー光を前記NFT層に導く光導波路層であって、前記NFT層は前記光導波路層と前記書き込み磁極層との間に配置される、光導波路層と、
前記光導波路層にほぼ平行な方向に向けられている反射層であって、前記光導波路層は前記反射層と前記NFT層との間に配置される、反射層と、
前記反射層にほぼ平行な方向に向けられている帰還磁極層であって、前記反射層が当該帰還磁極層上に支持される、帰還磁極層と、
前記光導波路層と前記反射層との間および前記光導波路層と前記NFT層との間の電気的絶縁材料と、
を有する、磁気記録層書き込み用熱アシスト記録(TAR)ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してディス上の磁気記録層が高温状態にあるときにデータを記録する熱アシスト記録(TAR)ディスク・ドライブに関し、より具体的には改良型TARヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
在来の磁気記録においては、記録媒体中の蓄積磁化の熱的不安定性のために記録データの喪失が生ずることがある。これを回避するために、高い磁気結晶異方性(Ku)を有する媒体が必要である。しかし、Kuを高めると媒体の飽和保磁力も上昇し、それが書き込みヘッドの書き込み磁場能力を超えることがある。記録層の磁気材料の飽和保磁力は温度に依存することが分かっているので、温度安定性問題について提案されている解決方法の1つは、ヒート・アシスト磁気記録(HAMR)とも呼ばれる熱アシスト記録(TAR)である。この方法では、高K磁気録材料を書き込み中に局部的に加熱することにより書き込みが生ずるのに十分な程度に飽和保磁力を下げるが、このとき飽和保磁力/異方性はディスク・ドライブの周囲温度(すなわち、常温すなわち約15〜30℃の「室」温)において記録ビットの熱的安定性にとって十分な程度に保たれる。ある種の提案TARシステムでは、磁気記録材料は、キュリー温度付近またはそれを超える温度に加熱される。次に、記録されたデータを通常の磁気抵抗読み取りヘッドにより室温で読み戻す。TARディスク・ドライブは、磁気記録材料がディスク上の連続層である通常の連続媒体と磁気記録材料が離散的なデータのアイランドすなわち「ビット群」にパターン化されているビット・パターン媒体化(BPM)の両方について提案されている。
【0003】
提案されているTARディスク・ドライブの一タイプでは、ディスク上の記録材料を加熱するためにレーザー光源および近接場変換器(NFT)に結合されている光導波路を使用する。「近接場」変換器は、サブ波長特性を有する素子経由で光が伝播され、かつ、第1の要素からサブ波長の距離に配置される磁気記録媒体のような基板などの第2の要素に光が結合される「近接場光学素子」を指す。NFTは、一般的に、磁気ヘッドを浮上させるスライダの空気浮上表面(ABS)に配置される。このスライダは、読み取り/書き取りヘッドを支持するとともに、ディスク表面上に載って縦列進行する。
【0004】
ほぼ三角形の出力端を有するNFTは、ともに本出願と同一譲受人に譲渡されている特許文献1および特許文献2において記述されている。このNFTでは、導波路の表面に生成されたエバネセント波がNFT74の表面上に励起された表面プラズモンに結合し、そして、強力な光近接場が三角形出力端の頂点に生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許出願第20110096639号明細書
【特許文献2】米国公開特許出願第20110170381号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要なレーザー出力を低減できるようにTARヘッドのNFTの効率を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、TARディスクのデータ・トラックにデータを記録する熱アシスト記録(TAR)ヘッドに関する。空気浮上スライダは、近接場変換器(NFT)およびレーザー光をNFTに導く光導波路を支持する。NFTは、書き込み磁極と光導波路との間にトラックに沿った方向に配置されるスライダの空気浮上表面(ABS)に出力端を備えている。反射層は、NFTと反対の導波路側に配置される。導波路により伝播される散乱された光は、反射層によりNFTに反射により戻される。反射光の位相がNFT中のプラズマ発振の位相と合致するように反射層とNFTの中心との間のトラックに沿った方向の距離が調整されると、光近接場の強度が増大する。これによりレーザー光出力の低減が可能になる。この最適距離は、0.8N*λ/(2n)〜1.2N*λ/(2n)である。ただし、Nは整数、λはレーザー光の波長、nは導波路および中間絶縁材料の屈折率の平均である。
【0008】
本発明の性質および利点のより完全な理解のために、以下の詳細な説明および添付図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明による熱アシスト記録(TAR)ディスク・ドライブの平面図である。
図2図2は、この発明によるTARディスク・ドライブにおいて使用される空気浮上スライダおよびTARディスクの一部の断面図を示す。ただし、非常に細かい部分を示すことが困難であるため縮尺は一様ではない。
図3A図3Aは、本発明によるTARヘッドの書き込み磁極、近接場変換器(NFT)、導波路、反射層および帰還磁極を構成する材料の層を示すスライダの側面断面図である。
図3B図3Bは、本発明による書き込み磁極、NFT、導波路および反射層を構成する材料の層の透視図である。
図3C図3Cは、本発明によるTARヘッドの導波路、NFT出力端、書き込み磁極先端および反射層の相対的方向を示すスライダ空気浮上表面(ABS)の一部の図である。
図4A図4Aは、反射層とNFTの厚さの中心との間のトラックに沿った方向の距離の関数としての光近接場強度のグラフである。
図4B図4Bは、反射層の高さ(Hrl)の関数としての光近接場強度のグラフである。
図4C図4Cは、反射層の幅(Wrl)の関数としての光近接場強度のグラフである。
図5A図5Aは、本発明によるTARヘッドのNFT出力端において使用される他の形状、特にC字状の開口部を示す。
図5B図5Bは、本発明によるTARヘッドのNFT出力端において使用される他の形状、蝶ネクタイ形の開口部を示す。
図5C図5Cは、本発明によるTARヘッドのNFT出力端において使用される他の形状、E字状のアンテナを示す。
図5D図5Dは、本発明によるTARヘッドのNFT出力端において使用される他の形状、蝶ネクタイ形のアンテナを示す。
図5E図5Eは、本発明によるTARヘッドのNFT出力端において使用される他の形状、アイスキャンディ形のアンテナを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明による熱アシスト記録(TAR)ディスク・ドライブ100の平面図である。図1において、TARディスク・ドライブ100は、磁気記録層31を有するディスク200とともに描かれており、磁気記録層31は、半径方向に離隔配置されている円形トラック118中に置かれている磁化可能材料の離散データ・アイランド30にパターン化されている。ディスク200の内径および外径に近いいくつかの代表的アイランド30および代表的トラック118のみ示されている。しかしながら、図1の離散データ・アイランド30とともに示されているビット・パターン化媒体(BPM)の代わりに、TARディスク・ドライブは、記録層31が磁化可能材料の通常の連続磁気記録層であるディスクを代わりに使用することもできる。
【0011】
ドライブ100は、アクチュエータ130および磁気記録ディスク200を回転させるドライブ・モータを支持するハウジングまたはベース112を備えている。アクチュエータ130は、剛体アーム131を有し、かつ、矢印133により示されるようにピボット132の周りで回転するボイス・コイル・モータ(VCM)ロータリ・アクチュエータとすることができる。ヘッド・サスペンション・アセンブリは、アクチュエータ・アーム131の端部に取り付けられた一端を有するサスペンション135および空気浮上スライダ120などのサスペンション135の他端に取り付けられたヘッド・キャリアを含んでいる。サスペンション135は、スライダ120をディスク200の表面に非常に近い位置に保持することを可能にし、かつ、それがディスク200の矢印20の方向の回転により生成される空気支持面上で「ピッチ(pitch:前後方向での傾斜)」および「ロール(roll:左右方向での傾斜)」することを可能にする。スライダ120は、磁気抵抗読み取りヘッド、誘導書き込みヘッド、近接場変換器(NFT)および光導波路を含むTARヘッド(示されていない)を支持する。TAR光源として波長780〜980nmの半導体レーザー90を使用してもよい。これは、スライダ120の頂部に支持されるように描かれている。別案として、このレーザーは、サスペンション135上に配置し、光チャネルによりスライダ120と結合することもできる。ディスク200が矢印20の方向に回転するとき、アクチュエータ130の運動によりスライダ120上のTARヘッドはディスク200上の種々のデータ・トラック118にアクセスすることができる。スライダ120は、一般的にアルミナ/チタニウム−カーバイド(Al/TiC)の合成物などの複合材料から形成されている。図1にはただ1つのディスク表面が関連スライダおよび読み取り/書き込みヘッドとともに示されているが、一般的に複数のディスクがスピンドル・モータにより回転されるハブ上にスタックされ、各ディスクの各表面に、それぞれ、別のスライダおよびTARヘッドが関係する。
【0012】
以下の図面では、X方向はスライダの空気浮上表面(ABS)に垂直な方向を示し、Y方向はトラックの幅すなわちトラックを横断する方向を示し、Zはトラックに沿った方向を示す。図2は、本発明によるTARヘッドの構成例を示す断面略図である。図2において、ディスク200は、磁化領域すなわち「ビット群」34を有する磁化可能材料の通常の連続磁気記録層である記録層31を有するものとして描かれている。空気浮上スライダ120はサスペンション135により支持されている。空気浮上スライダ120は、また、ディスク200に対向し、かつ、磁気書き込みヘッド50、読み取りヘッド60、および磁気的透過性読み取りヘッド・シールドS1およびS2を支持するABSを備えている。記録磁界は、コイル56、コイル56により生成される磁束を送り込む磁極53、主磁極52、および帰還磁極54から構成される書き込みヘッド50により生成される。コイル56により生成される磁界は、磁極53を経て光近接場変換器(NFT)74の近傍に配置される主磁極52に送り込まれる。記録時、ディスク200の記録層31は、NFT74により生成される光近接場により加熱され、これと同時に主磁極52により生成された記録磁界を適用することにより領域すなわち「ビット34」が磁化され、したがって記録層31に書き込まれる。ディスク200は、任意選択で、書き込み磁極52からの磁束を帰還磁極54に向かわせるために記録層31の下に軟磁気的透過性下層(SUL)を含んでもよい。
【0013】
光近接場がNFT74により生成されると、散乱光もNFT74から生成される。反射層95は、NFT74の反対の導波路73側に配置されている。導波路73により伝播される散乱光は、反射層95により反射されてNFT74に戻る。反射層95とNFT74との間のトラックに沿った方向(Z軸)距離が調整されて反射光の位相がNFT74のプラズマ振動の位相と一致するとき、光近接場の強度が増大する。これは、レーザー出力の低減を可能にする。
【0014】
半導体レーザー90は、スライダ120の最上部の表面に搭載されている。レーザー90からの光をNFT74に導く光導波路73は、スライダ120の内部に形成されている。導波路73のコア材料の屈折率をクラッディング材料の屈折率より大きいことを保証する材料を導波路73のために使用することができる。たとえば、Alをクラッディング材料として使用し、TiO、TおよびSiOをコア材料として使用することができる。別案として、SiOをクラッディング材料として使用し、Ta、TiO、SiO、またはGeドープSiOをコア材料として使用することもできる。光をNFT74に導く導波路73は、単一モード導波路とすることが好ましい。多モード導波路はモード間干渉のために出力変動を引き起こすことがあるので、好ましくない。
【0015】
図3Aは、書き込み磁極52、NFT74、導波路73、反射層95および帰還磁極54を構成する材料の層を、ディスク200および記録層31との関係において示すスライダ120の側面断面図である。図3Aにおいて、スライダ120の斜影のない領域は、一般的にアルミナ(Al)のような絶縁材料から形成される。書き込み磁極52は、一般的にFeCoのような高能率磁性材料の層であり、ABSに磁極先端52aを備えている。導波路73は、書き込み磁極52の層にほぼ平行なコア材料の層であり、ABSに垂直な長さを有し、ABSにおける端部73aを有し、NFT74を構成している材料の層に対向し、かつ、それに平行なほぼ平坦な表面73bを有している。NFT74の層は導電性低損失金属(Auが望ましいが、Ag、AlまたはCuでもよい)である。NFT74の層は、導波路73の層および書き込み磁極52の層にほぼ平行であり、かつ、導波路73層と書き込み磁極52層との間にそれらから離隔して配置されている。NFT74層は、導波路表面73bに対向し、それに平行であり、かつ、それから離隔して配置されている表面74aを有している。NFT74層は、ABSに出力端80を有し、また、ABSから入力縁74b(これは、ABSから引っ込んでいる)までの高さHnftを有している。光が導波路73に入射されたときに、エバネセント波が導波路表面73bに生成され、かつ、NFT74の表面74aに励起されている表面プラズモンに結合される。矢印23は導波路73中の光の伝播方向を示し、矢印24は光の偏光の方向を示している。表面プラズモンは、NFT出力端80に伝播する。
【0016】
一形式のNFTでは、出力端80は、書き込み磁極先端52aに対向する頂点80aおよび導波路表面73bに対向する後縁80bを有するほぼ三角形状のアンテナである。頂点80aにおいて、光近接場スポットが、出力端頂点80aと書き込み磁極先端52aとの間のABSにおける空間に生成される。書き込み磁極先端52aは、この光学スポットに磁界を印加する。1つの例では、頂点80aと書き込み磁極先端52aとの間の距離Sは、約20nmである。
【0017】
図3Aに示すように、反射層95は、帰還磁極54上に形成されている。しかし、反射層95は、帰還磁極54から離隔し、たとえば、アルミナを帰還磁極54と反射層95との間に配置することもできる。反射層95は、たとえば、Cu、Ag、Au、Al、Rh、Ti、Cr、Mo、Fe、CoおよびNiの1つ以上の金属または金属合金とすることができる。反射層95は、種々の屈折率を有する複数の層の誘電材料とすることもできる。ディスクがSULを含む場合、書き込み磁極52と帰還磁極54のトラックに沿った距離は、強い磁界を生成するように十分小さくしなければならない。これにより、反射層95は約30〜100nmのトラックに沿った方向(Z軸)の厚さを有するようになる。ディスクがSULを含まない場合、反射層95の厚さは、これより長く、たとえば約200nmとなってもよい。反射層95は、ABSに垂直な方向に(X軸)高さHrlを有するが、この値はHnft未満とすることが好ましい。反射層95とNFT74の厚さの中心との間のトラックに沿った方向(Z軸)の距離Dを調整して反射光の位相をNFT74中のプラズマ振動の位相に一致させると、光近接場の強度が増大する。Dの最適距離はN*λ/(2n)である。ただしNは整数(1、2、3、4、...)、λはレーザー光の波長、nは反射層95とNFT74との間の材料、すなわち導波路73と絶縁材料(一般的にアルミナ)の屈折率の平均である。
【0018】
図3Bは、書き込み磁極52、NFT74、導波路73および反射層95を構成する材料の層の透視図である。図3Cは、導波路端73a、NFT出力端80、書き込み磁極先端52a、反射層端95aおよび帰還磁極端54aの相対的向きを示すABSの一部の図である。導波路は、トラックに沿った方向に厚さTwgおよびトラック横断方向に幅Wwgを有し、また、反射層95は、トラック横断方向に幅Wrlを有している。出力端80は、ABSにおいてほぼ三角形をなしており、書き込み磁極先端52aに対向する頂点80aおよび導波路表面73bに対向し、かつ、トラック横断方向(Y軸)に頂点80aより広い後縁80bを有している。したがって、出力端80は、ABSに位置する後縁80bを有し、後縁80bは、導波路経由で到来する入射光の偏光方向(図3Aの矢印24)に垂直であり、かつ、光近接場が生成される頂点80aに向かって漸減する。短い線80cは、出力端頂点80aに生成された光スポットを表している。
【0019】
図4Aは、光近接場強度と距離Dの関係を示している。この例では、導波路は、Taのコア、200nmの厚さTwgおよび500nmの幅Wwgを有している。反射層95の高さHrlおよび幅Wrlは、それぞれ、500nmおよび1μmであり、レーザー光の波長λは830nmであった。NFT74の高さHnftは、850nmであった。強度は、反射層のない場合の強度に規準化された。図示のとおり、強度は、Dが460nmのときに最大に達し、かつ、距離が460nm+/−100nm(約+/−20%に対応する)のときに強度は1.0より大きかった。Dの最適値は、D=N*λ/(2n)により与えられる。ただし、Nは整数(1、2、3、4、...)、λはレーザー光の波長、nは導波路73および中間絶縁材料、一般的にアルミナの屈折率の平均である。したがって、この例では、λ=830nm、D=460nm、N=2、nは約1.8であった。Dの最適範囲は、0.8N*λ/(2n)〜1.2N*λ/(2n)である。N=2であるときのDの最適範囲は、約0.8λ/n〜1.2λ/nである。
【0020】
図4Bは、最適近接場強度と反射層の高さ(Hrl)の関係を示している。この例では、導波路は、Taのコア、200nmの厚さTwgおよび500nmの幅Wwgを有している。反射層95の幅Wrlは、500nmであった。レーザー光の波長λは830nmであり、NFT層74の高さHnftは、850nm、距離Dは460nmであった。強度は、反射層のない場合の強度に規準化された。図示のとおり、高さが1μm未満であるとき、強度は1.0を超えた。したがって、高さHrlは、1μm未満とすることが好ましい。最適な高さHrlは、NFTの高さHnftに依存する。HrlがHnftに対して小さすぎる場合、散乱された光のわずかな部分しか反射層により反射されないので、効率の増加は小さい。HrlはNFT高さの20%(0.2Hnft)より大きくすることが好ましい。Hrlが大きすぎる場合、導波路コアの近傍に発生したエバネセント波(クラッディングに浸透する光)は、NFTに到達する前に反射層により散乱されてしまう。したがって、HrlはNFT高さの120%(1.2Hnft)より小さくすることが好ましい。
【0021】
図4Cは、光近接場強度と反射層の幅(Wrl)の関係を示している。この例の場合、導波路はTaのコア、200nmの厚さTwg、および500nmの幅Wwgを有している。反射層95の高さHrlは、500nmである。レーザー光の波長λは830nm、NFT層74の高さHnftは850nmであり、かつ、距離Dは460nmである。強度は、反射層がない場合の強度に規準化した。図示されているように、近接場強度は、幅Wrlの増大ととともに徐々に増加し、かつ、700nmで最大に達する。したがって、Wrlは、導波路の幅Wwgである500nmより大きくすることが好ましい。導波路の光スポット・サイズ(トラック横断方向のモード・フィールド直径)は、Wwgが500nmのときに約700nmである。散乱光が発生する領域のサイズは、導波路のモード・フィールド直径にほぼ等しい。したがって、反射層の幅(Wrl)は、導波路のモード・フィールド直径(これは一般的に1.4Wwgである)より大きくすることが好ましい。しかし、Wrlが100nm(これは、この例の場合、幅Wwgの20%である)程度に小さい場合でも、依然として1.0より強い強度が達成され得る。
【0022】
本発明は、ABSにほぼ三角形のアンテナを有するNFT出力端の場合について説明した。しかし、反射層は、その他の形状の既知アンテナおよび開口部形状の場合にも同じ利益および利点をもたらす。図5A図5Cは、その他の形状、特にC字状開口部(図5A)、蝶ネクタイ形開口部(図5B)、E字状アンテナ(図5C)、蝶ネクタイ形アンテナ(図5D)、およびSeagate Technologyに譲渡された米国特許第7,272,079 B2号明細書に示されている「アイスキャンディ」形アンテナ(図5E)を示す。
【0023】
本発明について、好ましい実施形態を参照しつつ、詳細に図示し、かつ、説明したが、当業者にとって当然のことながら本発明の精神および範囲から逸脱することなく形式および詳細を種々に変更することが可能であろう。したがって、開示された本発明は、単なる例示と考えるべきであり、かつ、添付請求項において指定される範囲においてのみ制限されるものである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E