特許第6050786号(P6050786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050786
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20161212BHJP
   H02J 9/08 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 110
   H02J9/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-131906(P2014-131906)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-10307(P2016-10307A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進士 誉夫
(72)【発明者】
【氏名】塚田 龍也
(72)【発明者】
【氏名】田所 真之
(72)【発明者】
【氏名】八木 貴大
【審査官】 古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−219966(JP,A)
【文献】 特開2003−079052(JP,A)
【文献】 特開2009−055713(JP,A)
【文献】 特開2006−138287(JP,A)
【文献】 特開2011−190688(JP,A)
【文献】 特開2011−089514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00−29/06
H02J 3/00− 5/00
H02J 9/00−11/00
H02P 9/00− 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に投入している負荷量である既投入負荷量と、該既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、
エンジン発電機の温度を導出する温度センサと、
前記既投入負荷量を検出する負荷検出部と、
前記対応関係情報を参照し、導出された温度と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、
既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記温度センサは、前記エンジン発電機の冷却水温度および潤滑油温度のいずれか一方または双方を導出することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記温度センサは、さらに、排気ガス温度および外気温のいずれか一方または双方を導出することを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記温度センサは、前記エンジン発電機を始動してからの経過時間に基づいて該エンジン発電機の温度を導出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
既に投入している負荷量である既投入負荷量と、該既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、
大気中の絶対湿度を検出する湿度センサと、
前記既投入負荷量を検出する負荷検出部と、
前記対応関係情報を参照し、検出された絶対湿度と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、
既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項6】
既に投入している負荷量である既投入負荷量と、該既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、
エンジン発電機におけるターボチャージャーの過給気圧を検出する気圧センサと、
前記既投入負荷量を検出する負荷検出部と、
前記対応関係情報を参照し、検出された過給気圧と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、
既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と独立した自立運転が可能な電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の安定的な供給に対する関心が高まっている。それに伴い、例えば、駆動停止することができない負荷設備に対し、停電時等においても自立運転により電力供給が可能な電力供給システムの需要が増している。
【0003】
自立運転時には、電力供給システム内の発電機、例えば、エンジン発電機によって電力が生成されて負荷設備に供給される。しかし、エンジン発電機は、電力系統と比較して給電能力が低く、一度に無制限に負荷を投入することができない場合がある。例えば、エンジン発電機では、新たに投入可能な負荷量(投入可能負荷量)は、その時点で既に投入されている負荷量(既投入負荷量)に基づいて制限され、また、その投入可能負荷量は、既投入負荷量が大きいほど、小さくなる。
【0004】
そこで、自立運転直後は、エンジン発電機で負荷設備に電力を供給し、時間経過に伴い負荷を燃料電池と按分することで、エンジン発電機の負荷を下げ、その分、投入可能負荷量を増加させる技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−219966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、エンジン発電機の投入可能負荷量は、既投入負荷量に基づいて制限される。しかし、従来、既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係は、運転の安定性に鑑み、エンジンが始動していない状態、すなわち、まだエンジンの温度が低い状態を対象として導出されている。
【0007】
しかし、実際には、エンジン発電機が始動し、その温度が上昇すれば、同一の既投入負荷量であっても投入可能負荷量が大きくなることが分かっている。そうすると、本来、温度の上昇具合によっては、投入する負荷量を大きくとれるはずであるが、既存の電力供給システムでは、投入可能負荷量の余裕を計る術がないので、負荷量を大きくとれず、全ての負荷を投入し終わるまで長時間を要したり、大きな負荷変動に対応するために発電機の出力上限値を高めることができず、その能力を十分に発揮できない問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、エンジン発電機の状態に応じて投入可能負荷量を適切に定めることで、効率よく負荷を投入することが可能な電力供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電力供給システムは、既に投入している負荷量である既投入負荷量と、既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、エンジン発電機の温度を導出する温度センサと、既投入負荷量を検出する負荷検出部と、対応関係情報を参照し、導出された温度と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
温度センサは、エンジン発電機の冷却水温度および潤滑油温度のいずれか一方または双方を導出してもよい。
【0011】
温度センサは、さらに、排気ガス温度および外気温のいずれか一方または双方を導出してもよい。
【0012】
温度センサは、エンジン発電機を始動してからの経過時間に基づいてエンジン発電機の温度を導出してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の他の電力供給システムは、既に投入している負荷量である既投入負荷量と、既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、大気中の絶対湿度を検出する湿度センサと、既投入負荷量を検出する負荷検出部と、対応関係情報を参照し、検出された絶対湿度と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の他の電力供給システムは、既に投入している負荷量である既投入負荷量と、既投入負荷量に対してさらに投入可能な負荷量である投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部と、エンジン発電機におけるターボチャージャーの過給気圧を検出する気圧センサと、既投入負荷量を検出する負荷検出部と、対応関係情報を参照し、検出された過給気圧と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する投入可能負荷量導出部と、既に投入している負荷が整定した後、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する負荷投入部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジン発電機の状態に応じて投入可能負荷量を適切に定めることで、効率よく負荷を投入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電力の供給態様を示した説明図である。
図2】対応関係情報を説明するための説明図である。
図3】本実施形態の対応関係情報を説明するための説明図である。
図4】本実施形態の対応関係情報を説明するための他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(電力の供給態様)
図1は、電力の供給態様を示した説明図である。図1に示すように、複数の負荷設備10は、開閉器12aおよび負荷投入スイッチ14を通じて電力系統16に接続されている。したがって、複数の負荷設備10は、連系運転時に、電力系統16から商用電力の供給を受けることができる。また、複数の負荷設備10は、電力系統16と並行して、開閉器12bおよび負荷投入スイッチ14を通じて電力供給システム100に接続されている。したがって、停電等により電力系統16からの電力供給がなくなった場合においても、複数の負荷設備10は、電力系統16と独立した自立運転が可能な電力供給システム100から電力の供給を受けることができる。
【0019】
ここで、負荷設備10は、電気を消費する様々な電気機器をいう。開閉器12a、12bは、電力の供給源(ここでは、電力系統16、電力供給システム100)との電気接続を開閉する。負荷投入スイッチ14は、上記電力の供給源と負荷設備10との電気接続を開閉する。ここでは、負荷投入スイッチ14が各負荷設備10に対して1対1に配されているが、1の負荷投入スイッチ14で複数の負荷設備10を纏めて一度に開閉してもよい。
【0020】
また、電力系統16は、電力会社によって管理される電力供給源であって、所謂、商用電力を生成する。電力供給システム100は、電力系統16と独立して、所定範囲の負荷設備10に電力を供給するシステムであり、電力を生成する。かかる所定範囲は、例えば、町や村といった区域単位でもよいし、病院、工場、ホテル、レジャー施設、商業施設、マンションといった建物単位や、建物内の一部分でもよい。
【0021】
(電力供給システム100)
電力供給システム100は、エンジン発電機110と、制御装置120と、温度センサ130と、負荷検出部140とを含んで構成される。
【0022】
エンジン発電機110は、エンジン110aと発電機110bとから構成され、エンジン110aでガスやガソリン等を燃料として運動エネルギーを発生させ、発電機110bで運動エネルギーを電気エネルギーに変換して複数の負荷設備10に供給する。
【0023】
制御装置120は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成される。また、本実施形態において、制御装置120は、投入可能負荷量導出部122、負荷投入部124として機能する。また、ROMは、既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係を示した対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部としても機能する。かかる投入可能負荷量導出部122、負荷投入部124、および、対応関係情報については後程詳述する。
【0024】
温度センサ130は、エンジン発電機110の温度を導出する。ただし、エンジン発電機110の温度を直接検出するのが困難な場合、温度センサ130は、エンジン発電機110の冷却水温度(ジャケット冷却水温度)および潤滑油温度のいずれか一方または双方を、エンジン110aと等価な温度として導出することができる。また、冷却水温度および潤滑油温度の双方を導出する場合、導出された各温度を単に平均してもよいし、重み付けを施してから平均してもよい。
【0025】
また、温度センサ130は、冷却水温度や潤滑油温度に加え、排気ガス温度や外気温を導出し、冷却水温度や潤滑油温度を補完するとしてもよい。例えば、排気ガス温度や外気温は、単独でエンジン発電機110の温度と等価な温度とするのは難しいが、冷却水温度や潤滑油温度がどのように変化するかを予測する指標とすることができる。したがって、冷却水温度や潤滑油温度に排気ガス温度や外気温を組み合わせることで、エンジン発電機110の温度をより正確かつ容易に導出することが可能となる。
【0026】
また、エンジン発電機110は、始動後の経過時間に応じて温度が上昇する。すなわち、始動後の経過時間に基づいて、エンジン発電機110の温度を推測することができる。そこで、温度センサ130は、エンジン発電機110を始動してからの経過時間に基づき、その温度の変化特性を参照してエンジン発電機110の温度を導出してもよい。
【0027】
負荷検出部140は、エンジン発電機110に対し既に電力を供給している負荷設備10の負荷量である既投入負荷量を、例えば、エンジン発電機110の出力電力等に基づいて検出する。以下では、このような電力供給システム100の具体的な動作を説明する。
【0028】
(投入可能負荷量)
このような電力供給システム100においては、自立運転時に、開閉器12bが閉状態になり、エンジン発電機110から負荷設備10に電力が供給される。ただし、エンジン発電機110は、電力系統16と比較して給電能力が低く、一度に無制限に負荷を投入することができない場合がある。
【0029】
図2は、対応関係情報を説明するための説明図である。図2では、横軸に既投入負荷量(kW)が示され、縦軸に投入可能負荷量(kW)が示されている。図2では、既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係を示す対応関係情報が曲線として示されている。ここで、既投入負荷量は、任意の時点で既に投入している(電力を供給している)負荷設備10の負荷量であり、投入可能負荷量は、既投入負荷量に対し、その時点で、さらに投入可能な負荷量の最大値である。
【0030】
投入可能負荷量導出部122は、このような対応関係情報を参照し、既投入負荷量に基づいて投入可能負荷量を導出する。例えば、自立運転の開始時にはエンジン発電機110に対し負荷が全く投入されていなかったとする。この場合、既投入負荷量が0kWなので、投入可能負荷量導出部122は、図2のAに示すように、投入可能負荷量として400kWを導出する。これは、合計して400kWとなる負荷設備10にしか一度に電力を供給できないことを示している。図2を参照すると、エンジン発電機110の投入可能負荷量は、その時点で既に投入されている既投入負荷量によって制限されることが理解できる。
【0031】
また、投入可能負荷量は、既投入負荷量が大きいほど、小さくなる。すなわち、対応関係情報の曲線は、既投入負荷量の増加に対して漸減することとなる。例えば、図2のAの段階から、合計して300kWの負荷が投入されたとする。そうすると、既投入負荷量が300kWとなり、投入可能負荷量導出部122は、投入可能負荷量として333kWを導出する。既投入負荷量が300kWの投入可能負荷量333kWは、既投入負荷量が0kWの場合の投入可能負荷量400kWより小さいことが理解できる。
【0032】
このように、エンジン発電機110においては、既投入負荷量に基づいて投入可能負荷量が制限され、合計した負荷量が、投入可能負荷量以下の負荷量となる負荷設備10に一度に電力が供給される。
【0033】
このような、既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係は、運転の安定性に鑑み、エンジンが始動していない状態、すなわち、まだエンジン110aの温度が低い状態を対象として導出されていた。しかし、実際は、エンジン発電機110が始動し、その温度が上昇すれば、エンジン110aの摩擦抵抗が小さくなったり、ターボチャージャーの排気量が大きくなり、その結果、同一の既投入負荷量であっても投入可能負荷量が大きくなる。そうすると、本来、温度の上昇具合によっては、投入する負荷量を大きくとれるはずであるが、既存の電力供給システムでは、投入可能負荷量の余裕を計る術がない。そこで、本実施形態では、エンジン発電機110の状態、特に、温度に応じて投入可能負荷量を適切に定めることで、効率よく負荷を投入することを目的とする。
【0034】
図3は、本実施形態の対応関係情報を説明するための説明図である。図3では、横軸に既投入負荷量(kW)が示され、縦軸に投入可能負荷量(kW)が示されている。本実施形態において、対応関係情報は、既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係を、相異なる複数の温度毎に示している。そして、対応関係情報記憶部は、かかる対応関係情報を記憶し、投入可能負荷量導出部122は、対応関係情報を参照し、温度センサ130により導出された温度と、負荷検出部140により検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する。
【0035】
図3の例では、3つの温度である、温度(1)、温度(2)、温度(3)について既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係が示されている。例えば、自立運転の開始時にはエンジン発電機110に対し負荷が全く投入されておらず、エンジン発電機110の温度が温度(1)であったとする。この場合、既投入負荷量が0kWなので、図3の温度(1)の曲線のAに示すように、投入可能負荷量は400kWとなり、合計して400kWとなる負荷設備10にしか一度に電力を供給できないこととなる。
【0036】
そして、図3のAの段階から、合計して300kWの負荷が投入されたとする。そうすると、既投入負荷量が300kWとなる。ただし、この間に温度が温度(1)から温度(2)に上昇すると、投入可能負荷量は温度(1)の曲線における333kWではなく、温度(2)の曲線における382kWとなる。したがって、図2の例より、合計して大きい負荷量の負荷設備10に電力を供給することが可能となる。
【0037】
また、例えば、図3のBの段階から、合計して350kWの負荷が投入されたとする。そうすると、既投入負荷量が650kWとなる。ただし、この間に温度が温度(2)から温度(3)に上昇すると、投入可能負荷量は温度(3)の曲線における340kWとなる。こうして、エンジン発電機110の温度に応じて投入可能負荷量を適切に定め、効率よく負荷を投入することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態においては、新たに投入する実際の負荷量は、投入可能負荷量に対して小さい負荷量を採用している(例えば、図3のAの段階における投入可能負荷量400kWに対して、実際に投入した負荷量300kW)。これは、既に投入している負荷や新たに投入する負荷の負荷変動によって、実際の負荷量が投入可能負荷量を超えるのを回避するためである。
【0039】
図4は、本実施形態の対応関係情報を説明するための他の説明図である。図4では、横軸に既投入負荷量(kW)が示され、縦軸に投入可能負荷量(kW)が示され、対応関係が相異なる複数の温度毎に示されている。図4では、図3とは違う観点、すなわち、負荷変動を考慮した場合の既投入負荷量の出力上限値について説明している。
【0040】
例えば、300kWの負荷変動が推定される場合、電力供給システム100では、300kWの負荷量の投入を許容すべく、投入可能負荷量が300kW以上となる既投入負荷量までしか、負荷を投入してはならない。従来の既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係、すなわち、図4の温度(1)の曲線では、投入可能負荷量が300kW以上となる既投入負荷量は、図4のDに示すように、450kW以下である。これは、従来の既投入負荷量と投入可能負荷量との対応関係のみを用いて投入可能負荷量を導出する場合、発電機110bは合計して450kWまでしか出力できないことを示し、その能力を十分に発揮できないことが理解できる。
【0041】
本実施形態では、エンジン発電機110の温度を導出しているので、図4に示すように、例えば、エンジン発電機110の温度が温度(2)であれば、図4のEに示すように、既投入負荷量として638kWまで負荷を投入すること(既投入負荷量≦638kW)が可能となり、また、エンジン発電機110の温度が温度(3)であれば、図4のFに示すように、既投入負荷量として808kWまで負荷を投入すること(既投入負荷量≦808kW)が可能となる。したがって、負荷変動分の余裕を考慮したとしても、発電機110bの出力上限値を現実的な負荷量まで高めることができるので、その能力を十分に発揮することが可能となる。
【0042】
(負荷投入)
負荷投入部124は、導出された投入可能負荷量に基づいて負荷を投入する。例えば、図3のBのように、投入可能負荷量導出部122が、温度(2)の曲線を参照し、投入可能負荷量として382kWを導出すると、負荷投入部124は、負荷設備10の投入優先度(例えば、補機優先等)、負荷設備10個々の負荷量、および、負荷投入スイッチ14と負荷設備10との接続状態を勘案し、合計した負荷量が投入可能負荷量以下となるように、投入する負荷設備10の候補を決定する。かかる負荷設備10の候補を決定する手順は、既存の様々な技術を利用できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0043】
そして、負荷投入部124は、決定した候補の負荷投入スイッチ14を閉状態とすることで、一度(同時)に電力の供給を開始する。こうして、エンジン発電機110の定格、もしくは、定格以下の所定の上限負荷量までの負荷を迅速に投入することができる。
【0044】
また、負荷投入部124は、このように一度に負荷を投入すると、次の負荷の投入は、周波数や電圧が整定した後に行う。ここで、周波数や電圧が整定するのを待っているのは、何らの制限なしに、負荷を投入すると、負荷追従が間に合わず、周波数や電圧が著しく低下し、自立運転を継続することができなくなるおそれがあるからである。ここでは、所定の条件を満たしたこと、例えば、負荷を投入した後のエンジン発電機110から供給されている電力について、周波数が規定されている周波数の±15%の範囲内にあり、規定されている周波数の±0.5%以内の範囲への収束時間が15秒以内であることを条件とする。このような所定の条件は、かかる場合に限らず、例えば、負荷の投入後15秒待って、周波数および電圧を判定する等、任意に決定することができる。
【0045】
以上、説明したように、電力供給システム100によって、エンジン発電機110の状態に応じて投入可能負荷量をより現実的で適切な負荷量に定めることができ、その時点で投入できる負荷を現実的な最大量とすることができるので、効率よく負荷を投入することが可能となる。したがって、必要な負荷設備10への電力供給を短時間で完了することができる。
【0046】
また、負荷変動分の余裕を考慮したとしても、発電機110bの出力上限値を、現実的な負荷量まで高めることができるので、その能力を十分に発揮することが可能となる。
【0047】
さらに、従来では投入可能負荷量の制限により投入不可能であった負荷量の大きい負荷設備10についても、投入可能負荷量を適切な負荷量に定めることで投入可能となる場合があり、負荷設備10の投入効率を向上することも可能となる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上述した実施形態においては、温度センサ130によってエンジン発電機110の温度を導出し、導出された温度と既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出する例を挙げて説明した。しかし、投入可能負荷量は、エンジン発電機110の温度のみならず、大気中の絶対湿度や、エンジン発電機110におけるターボチャージャーの過給気圧等、様々なパラメータに依存して変化する。
【0050】
エンジン発電機110においては、大気中の絶対湿度に応じて、エンジン発電機110の燃焼状態も変化し、例えば、大気中の絶対湿度が低下すると、それに伴いエンジン110aの出力が高くなり、投入可能負荷量が大きくなる。したがって、温度センサ130に代えて、または、加えて、大気中の絶対湿度を検出する湿度センサを設け、投入可能負荷量導出部122は、図3および図4と同態様で変化する対応関係情報を参照し、検出された絶対湿度と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出することができる。
【0051】
また、エンジン発電機110におけるターボチャージャーの過給気圧に応じて、エンジン110aへの燃料および空気供給量も変化し、例えば、ターボチャージャーの過給気圧が大きくなると、それに伴いエンジン110aへの燃料および空気供給量が多くなり、投入可能負荷量が大きくなる。したがって、温度センサ130や湿度センサに代えて、または、加えて、ターボチャージャーの過給気圧を検出する気圧センサを設け、投入可能負荷量導出部122は、図3および図4と同態様で変化する対応関係情報を参照し、検出された過給気圧と検出された既投入負荷量とに基づいて投入可能負荷量を導出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電力系統と独立した自立運転が可能な電力供給システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 負荷設備
100 電力供給システム
110 エンジン発電機
120 制御装置
122 投入可能負荷量導出部
124 負荷投入部
130 温度センサ
140 負荷検出部
図1
図2
図3
図4