(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記装置は、前記第一の表面上の正の動水圧の効力により波の峰から、及び、前記第一の表面上の負の動水圧の効力により波の谷から、前記エネルギーを抽出する請求項1に記載の波エネルギー抽出装置。
前記凸状の前記第二の表面は、前記装置の前進及び後退の動作中に抵抗を減少させ、波の峰での前記第二の表面上の負の動水圧の効力及び波の谷での前記第二の表面上の正の動水圧の効力により水の波からの前記エネルギーの抽出を増加させる請求項1又は請求項2に記載の波エネルギー抽出装置。
前記装置は、さらに前記波エネルギー変換機器へ装着するための装着点を含み、前記装着点に隣接する平坦な輪郭に向かって先細に変化する断面形状を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の波エネルギー抽出装置。
前記第二の表面の断面形状は、前記装置の垂直軸上の尖った先端に向かい追加的に延び、前記尖った先端は、前記凸状の前記第二の表面に固定して取り付けられた第三の表面により形成され、前記凸状の前記第二の表面と前記第三の表面との間に第一の内部体積を提供する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の波エネルギー抽出装置。
前記第一の表面の凹面の深さは、水の波の期待される主要な波長の16分の1から4分の1の間の長さである請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の波エネルギー抽出装置。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[実施例の説明]
本発明の実施例は、第一に水の波からエネルギーを抽出するパドル24の設計及び形状に関連し、水の波は特に海洋の波であるが、湾・港湾、湖、入江、河口、貯水池、またはその他の適した自然または人工の水塊を含む。このパドルは、波のエネルギーの伝わりの平均的方向に対して直角の平面中で非対称であることで、波の動きの方向的偏りに対する利点を有する。この非対称性は、既知の、概ね平坦なパドルの設計と比較して、エネルギー収集を増加させ、エネルギー消失を減少させる。この発明を具現化するパドルは、突然の衝撃負荷からの疲弊を減少させる滑らかな動力工程を実現する。
【0037】
前記のパドル24は、パドルの動作からエネルギーを抽出し有益な形式、通常は電力に変換する波力変換システムまたは「基部装置」15と共に使用されることを意図する。前記パドルはまた直接、例えば海水の脱塩化にも使用される。
【0038】
図1a及び1bはそれぞれ本発明を具現化する第一の波パドルの概略平面図及び三次元立体図である。このパドルは入射波40に対して向く凹面状の平面11(「後面」)と、反対側で波の伝わる方向に向く凸面状の平面12(「前面」)と、を有する。パドルの湾曲は高さに沿って減少し、パドル底部の平坦な縁1に向かって次第に平坦になり、このことから水面下の基部装置15への接続が容易になり、パドル上端の曲線状の縁は水面上に出る。その最大の湾曲において、パドルの形状は望ましくは水平面上で放物線状または半楕円形状で、パドル側面の縁または先端部2は概ね入射波の方向を向く。
【0039】
使用時、パドルは、ヒンジ13を介して基部装置15に接続され、このことからパドルは、入射波の峰及び谷に応じて前後に回転または揺れる動作が可能になる。基部装置15は、1つ以上の水圧式ピストン16などのエネルギー変換手段(1つのみ図示)を有し、パドルの動作を有益なエネルギーに変換する。ピストン16は、パドルの凸面状の前面12上の支柱19に接続される可変連結器18を有する。支柱19は、望ましくはパドルの全幅に延び、望ましくはパドルの底部から3分の1の高さに位置する。この構造によりパドルには垂直方向の柔軟性が与えられ、破砕の機会、特に割れる波や他の浮遊物体の衝撃による急激な衝撃負荷が最も多く起こる水面付近での破砕の機会を減少させる。
【0040】
凹面状の後面11は、望ましくは2.0以上の抵抗係数(C
d)を持つ。流体がパドル先端部2の間の凹面状の表面11に入ると横方向または下方向へ行くことが不可能なため、パドル表面上の淀み圧力が上昇し水面上昇が増加する(急上昇)。凹面状の後面11はまた、入射波の峰をパドル中央に向けて運び、このことから波頭の上昇及びパドルに対する動的圧力がさらに拡大される。
【0041】
さらに、後面11の凹面状表面は、波からパドルへの滑らかな力の移行を確実にし、波頭は最初に先端部2にぶつかり、次にパドルの後面11に徐々に接触し始める。
波の谷が形成される間、波流体の粒子がパドルの凹面状の後面11から遠ざかるように動く時、この凹面状の形状は波の谷の深さを拡大するように働き、パドル無しで起こりうるよりも低い水表面を形成する。結果として、動的圧力(D
1)の大きさは波の動作のこの過程の間に、反対の符号ではあるが、再び増加する。
【0042】
一般的に、パドルの形状に関わらず、パドルの動きにより移動する流体の容積は、その押し流される領域に直接関連する。本発明を具現化するパドルの凸面状の前面12は、パドル表面に対し垂直方向の流体速度が結果として減少する平坦なパドルよりも大きい周辺範囲で水を移動させ、結果として生じる小さい波は、この前面上の動的圧力(D
2)を減少させ、エネルギーの消失は相当に減少する。
【0043】
凸面状の前面12のさらなる利点は、入射波はパドルより早く動くという事実から生じる。波が先端部2の外側でパドルを追い越すにつれて、湾曲した前面12は、パドル周辺の層流を改善する。これはパドルの前方の水も結集するので、その水の動きはパドルの動きにより近く連携する。このことから前面12に対する動的圧力(D
2)は大幅に減少するので、前面12と後面11の間の圧力差が増加し、動力吸収の増加につながる。さらに、追い越す複数の波はパドルの前方で滑らかに合流するので、さもなければエネルギーの損失に帰する乱流(または渦巻き)の生成は少なくなる。
【0044】
凸面状の前面12の1つの欠点は、表面に並行する流れによる表面摩擦及び抵抗が増すということであるが、これは関連する速度に対し比較的小さいことが予想され得る。とは言うものの、前面12には抵抗を最小にする滑らかな仕上げが施される。
【0045】
エネルギーの捕捉を最大化するために、パドルの上端は予想される最大の波頭の高さより若干高くあるべきで(「乾舷」)、このために水位の変化、可動範囲を超えるパドル角度の変化、及び凹面状の後面11による海面の急上昇を考慮する。水が深い所では、パドルは波のエネルギーの大部分を捕捉するために主要な波長のおよそ半分の深さまで延長されることが望ましく、基部装置は下降流を制限する水平の棚状物25を含む。水が浅い所では、パドルは水深一杯に延長され、基部装置15は水がパドルの下を流れることを防止するために海底に寄せる封14を含む。結果として、パドルの高さは、水深、波の状態、及び基部装置の位置に依存する。
【0046】
水深10mの浅い水を例として、基部装置が海底から1mの所に立ち、顕著な波の高さHsは1.9mで、峰の期間T
pが5.9sだとそれぞれ仮定すると、パドルはおよそ11.5mの高さになる。この条件であれば、パドルは+/−22°の範囲で傾くことが出来、パドルが最も傾いて水中の低い位置にある時に水面から上端の距離が少なくとも1m残る。この海面から上端までの距離が無ければ、波はパドルの上を通過し、パドルが抽出し得るエネルギーが減少する。水面から上端までの距離は、必要以上に大きくてはいけない。なぜならばこれはパドルの重量を増加し、極度の条件では、水面から上端までの距離が限られていれば余分なエネルギーを逃がすことができてパドルにかかる負荷を制限する。極度に荒れた海では、パドルは水の外に持ち上げるか海底に向けて下げるかのいずれかの方法で水面から退去しなければならない。いくつかの環境では、パドルを完全に水没させたままにすることで非効率的に操業することが望ましいかもしれず、これは特に、動力要求に対して余剰な波エネルギー、水上交通(例えば海上交通路または地元のレジャー船など)、または環境的考慮(例えば景観への影響など)がある場所が当てはまる。
【0047】
基部ユニット15は、パドルの実質同じ領域が入射波にさらされるよう、潮の干満や高潮による水深の変化に対応して上昇または下降出来ることが望ましい。
パドルの幅は、パドルの使用中に波面と並行になる寸法で、これは要求される動力、及び展開される場所で期待される入射波の平均波長を含む要因により決定される。パドルの幅は入射波の波長の平均に比例して大きくなるので、パドルと周囲の流体の相対的動作は平坦な表面に近似し始め、本発明に関連する多くの利点を失う。パドルの幅に対する他の制限は、その重量とパドルを構成する材料の強度を含む。
【0048】
深い水の中では、パドルは高さよりも幅広くして動力の吸収を最大化出来る。しかし、基部装置が海底に直接設置できる浅い水の中では、パドルは概して幅広になるよりも高くして、水の一杯の高さまで延長される。しかし、高さと幅の相対的な割合は、例えば、予測される波の状態や動力の要求などに依存することになる。
【0049】
パドルの高さがその幅に対して一定であるということもまた重要ではない。湾曲した後面11が波をパドルの中心に向けて集中させるにつれて、波の高さは増す。それゆえ、中心部での越波の機会を減らすために、パドル中央は、側部より高くてよい。
【0050】
後面11の凹部の深さは、概してパドルの幅と同等からパドルの幅の約4分の1の範囲内にして、適度な曲面を確保する。水面での望ましい凹部の深さは、予測される波の状況に関係し、主要な波長の1/16から1/2の間にあるのが理想的である。後面11の凹部が深いと、パドル先端部2周辺で波の峰・谷の余分な水の排出を制限することで、より多くの入射波のエネルギーを捕捉し、それに対し波長の1/16以下の深さでは有意な量の入射波のエネルギーは捕捉しない。もし他の制限事項(重量や変化しやすい海など)により深さを入射波の約1/16以下にすることが求められる場合、先端部2は前方に、波の移動方向と平行に延長可能で、これにより排水の効果を制限する。一方、深さが波長の約1/2より大きいと連続的な波の峰と谷を埋め、結果としてパドル表面上の異なる点での流れの方向が対立する。
【0051】
パドルの縁上にある先端部2は、入射波に向かい、概ね波の粒子の運動と平行に配置されており、これは波頭に概ね直角である。
図8に示すように、各先端部の形状は鋭くなく、その断面形状は航空機の翼に類似しているが、圧力差を生じない中間的な形状である。これにより流れがパドルの中と外側にきれいに分けられる。先端部の正確な角度及び幅は、予期される主要な波の方向の偏差に依存する。一般的に、先端部の幅は、水面近くで大きくなるべきである。また幅が広い先端部は、主要な波の方向の偏差が大きい時に、渦流を減少させ、層流を維持し、構造的振動と疲弊を防ぐために使用されるべきである。波の方向に著しい偏差がある場合、概して+/−30°より大きい場合、動力の抽出を最大化するために、パドル全体が入射波に向かって回転可能であるべきである。
【0052】
パドルは、数種の異なる方法で製造され得る。簡素な製造方法の一例として、適切な金属(アルミ等)の平板を要求される曲面に曲げる方法があり、またはパドルは、適切なプラスチックまたは複合材料(グラスファイバー強化プラスチック等)でモールド形成され得る。パドルを製造する他の方法として、複数の中空のパイプを溶接または他の方法で望ましい形状に繋げて成形する方法がある。各中空パイプには内部空間があり、これは密封されている場合はパドルの浮力を増進し、また機材の収納にも使用され得る(
図2及び
図13bと関連し下記の記述を参照)。
【0053】
図2a、2b、及び2cは、本発明の第二の波パドル実施例の、それぞれ概略平面図、三次元立体図、及び側面図である。この第二の実施例は、前向きの先端部4及び後面11上の棚状部品6の追加を除き、第一の実施例と同一である。
【0054】
特に凸状の前面12には、波の移動方向を向きパドル底部の平坦な縁1に向かって徐々に形状を変える比較的鋭い先端部4が設けられている。前向きの先端部4はさらに、パドル周辺の層流を改善し、これは、さらに上記
図1に関連して述べられた水の結集効果を強調する。
【0055】
望ましくは、前向きの先端部4の形状は、この先端部が無い場合に形成されるであろう抵抗領域41(
図17a参照)に近似する。例えば、適度な形状は、偏差が0.2から1の間のガウス関数で、パドルの凸状の前面12に滑らかに合流するように調整される。その他の水力学的断面形状(一般的に、鋭い先端の縁と幅の広い基部を有する)をもつ形状も、ガウス関数の代わりに使用され得る。前向きの先端部4の前部から凹状の後面11の中心までの水平距離は、概してパドルの幅のおよそ1/2で、適度に滑らかな全体断面形状を形成する。
【0056】
図1に示すパドルに似たものから始めて、例えば湾曲させた金属平板から形成し、前向きの先端部4は、独立した平板として形成され、次にパドル本体24に取り付けられ、内部容量5を作成し得る。内部容量5を定義する追加の素材は、パドルの断面二次モーメントを増加させ、それぞれの主要な水平方向の寸法において、パドルの中央に付加的な構造的強度と硬性を与える。
【0057】
もう一つの選択肢として、パドルを成形または型成形し、前向きの先端部4を単体の部品として含め、内部容量5は含めることも含めないこともある。別の方法として、複数のチューブ状の部材を一体に固定することもできる。
【0058】
内部容量5は、密閉され防水されていることが望ましいが、水に対して解放されることもある。内部容量5は、付加的な構造的部材を収納することも可能で、さらなる構造的強度を与えられ、もし密閉されていれば、浮力を与えてパドルが水中で概ね垂直に向くようになる。内部容量5はまた、エネルギー変換機器または脱塩化機器を収納することもある。内部容量5が密閉されていれば、これは内部に保管された機器を海水の腐食効果から保護する。
【0059】
この第二の実施例ではまた、水平に配置された棚6は、該装置の後面11の上端に選択的に設置される。棚6は後面11の上部を彫るか棚部分を後面11に固定することで形成され得る。いずれの形成方法でも該棚は、
図2c及び2dに最適な方法が図示されるように、後面11に変遷するか滑らかに合体するべきで、構造的負荷の集中を減少させる。該棚は使用中に水が後面11の上端を超えて流れること(「越波」)の防止を助長し、よって動力の吸収を増加させ、付加的な構造的強度を与える。
【0060】
棚6の深さは、後面11の凹部の深さと同じかもしれず、特に越波の機会が著しく多い荒れた海が予測される場合、または該装置の上端が水面上もしくは水面下に位置する場合に同じになる。あるいは、例えば水が穏やか、または水面から該装置上端までの距離が十分な場合、棚6は凹部の深さの1/10だけ延長されるかもしれない。逆に、極端な波の著しい危険がある場合(異常波とも呼ばれる)、棚6の寸法を、適度な付加的強度を与えるが凹面部内の水を完全に制限しないように選ぶことで、越波を許容することが望ましいこともある。
【0061】
図示されてはいないが、前面12及び前向きの先端部4もまた棚6の曲面と合流することが望ましく、これにより第二の表面に滑らかに変遷し、抵抗を減らす。
使用中、該パドル上の曲げモーメントは、支柱19が該パドルに接続される部分で最大になり、該パドルのこの部分は最大強度であることが望ましい。構造的強度を増すために、該パドルの曲面の変遷は、
図2cに表されるように、該パドルの上端から前記接続点まで緩やかであることが望ましく、前記接続点より下では平坦な縁1に向かってより急な変遷になる。
【0062】
図2dは、この第二の実施例の代替配置の側面図である。この配置では、エネルギー変換手段の少なくとも一部(水圧式ピストン16と弾力的な水圧式パイプ17のみ図示)は、内部容量5内に設置される。この設定では水圧式ピストン16と基部装置15との間の接続部31は、ヒンジ13の近くに位置する。この配置は厳しい外部の塩水環境から機器を有利に保護し、保護ケース及び/またはコーティングの必要性を減じ、よって費用を削減する。さらに、この複合設計により動力変換機器は、パドル24と共に設置または除去が可能になる。1つの欠点は、水圧式ピストン16のピストン部分が内部容量5から出る場所に弾力性のある耐高圧密閉が必要になることである。
【0063】
図3a、3b、及び3cはそれぞれ、本発明の第三の波パドル実施例の概略平面図、三次元立体図、及び側面図である。この第三の実施例は、第二の実施例と同一であるが、基部装置15に上方で設置されるよう適合されており、該パドルは垂直で下方にぶら下げられる。曲面の後面11及び前面12、並びに前向きの先端部4は、平坦な上端の縁22に向かい次第に形を変え基部装置15に簡単に接続される。
【0064】
上方設置のパドルでは、該パドルの線形水平速度の大きさは、該パドルが上端の縁22の周りを回転するに従い、深さと共に増加する。しかし、入射波内の粒子の動きは深さと共に減少する。従って、望ましくは、パドルは該パドル下端の速度がその深さでの入射波内の粒子の速度を超える点より下に延長すべきではない。
【0065】
底板6は、凹状の後面11の底部全周に渡り接続されるのが望ましく、流体が該平面の下に流れることを防ぐ。底板6は前向きの先端部4に向かって上向きに湾曲することが望ましく、これにより該パドルが水中を前方に移動するに従い抵抗をさらに減少させる。
【0066】
図4a及び4bは、それぞれ本発明の第四の波パドル実施例の概略平面図及び三次元立体図である。この第四の実施例は、他の実施例の凹状の後面11と凸状の前面12を維持するが、水平及び垂直の両方に曲げることでカップ状またはスプーン状の形状を形成する。この形状は、中空の楕円体または回転面として形成され、放物線またはその他の適度な形状を対称中心軸を中心に回転させることで作成される。該パドルは、接続棒8により基部装置に接続され、これは該パドルの直接上または下のいずれかが望ましいが、他のいかなる方向にも接続され得る。接続棒8は、望ましくは楕円形の断面形状を有し、楕円形の鋭い側が平均的波の方向を向いて抵抗を最小化する。
【0067】
図5a及び5bは、それぞれ本発明の波パドルの第五の実施例の概略平面図及び三次元立体図である。この第五の実施例は、第一の実施例と同一であるが、該パドルの湾曲した後面11と前面12とが平坦な縁に向かって徐々に形状を変えず、代わりに該パドルの高さに沿って均一な曲面を有する点が異なる。このようなパドルは製造が簡単で、パドルの回転運動よりむしろ側方の運動に依存する基部装置21との使用に適していて、波の流速が深さと供にゆっくり減衰する浅い水の波での使用が望ましい。
【0068】
図5bに示すように、側方の運動に依存する基部装置21への接続のために、支柱19は、該パドルの凸状の前面12の中心に接続され、基部装置21のピストン16へ接続される。板または棚6は、凹状の後面11の底部全体に渡り接続されることが望ましく、この面を下り該装置の下へ流れる流体を阻止する。底板6は、前面12に向かって上向きに湾曲し、前面12と滑らかに接続することが望ましく、該パドルが水中を前方に移動することに伴う抵抗を減少させる。棚6は、後面11の凹状部の深さ全体まで後方に延長されることが望ましく、水の排出を最小化する。
【0069】
該装置が完全に水没するか、水面から上端までの距離が短いことを意図する場合は、さらなる棚6が凹状の後面11の上端部の全周に渡り接続されることが望ましく、この面を登り該装置を超える流れを阻止する。前述と同様、棚6は、抵抗を減少させるよう前面12と滑らかに変遷するよう湾曲することが望ましい。また、棚6は、後面11の凹状部の深さ全体に渡り後方へ延長し水の排出を最小化することが望ましいが、顕著な越波が予測されない場合または予測される大きな波から抽出される最大のエネルギーを制限する必要がある場合、全体の深さより短いかもしれない。
【0070】
あらゆる適した深さの水平の棚または板6が、付加的な構造的強度を与えるために、後面11の高さに沿ってさらに設けられ得る。
図6a及び6bは、それぞれ本発明の波パドルの第六の実施例の概略平面図及び三次元立体図である。この第六の実施例は、第二の実施例と同一であるが、該パドルの曲面11及び曲面12、並びに前向きの先端部4は、平坦な縁1に向かって徐々にその形状を変えず、代わりに該パドルの高さに沿って均一な曲面を有する点が異なる。第五の実施例と同様、このようなパドルは製造が簡単である。該パドルは、上記の第五の実施例のように、側方の運動に依存する基部装置と併用され得る。または、
図6bに示されるように該パドルは、内部容量5の中で支えられる構造的部材20を提供し、該パドルから延長して、基部装置15と旋回的な接続部22を介して接続されることにより、基部装置15に対し相対的に旋回するよう適合され得る。該パドルの動作を利用可能なエネルギーに変換する基部装置15のピストン16は、パドル自体に負荷を与えることを避けるため前記構造的部材に接続され得る。
【0071】
図6bに示されるように、該パドルは基部装置の下に設置され得るが、該基部装置の上、または他のいかなる方向にも設置され得る。望ましくは、第五の実施例と同様、底板6は、凹状の後面11の底部の全周に渡り接続される。
【0072】
ある変化形では、構造的部材20は、パドル24に移動可能にまたは可変的に接続される。これにより、該パドルの垂直位置は、基部装置15に対して調整可能となり、水位との相対位置を一定に維持できる。例えば、海水面は潮の干満に伴い変化するので、該パドルの位置を変化させることで変化する水深に合わせて動力の出力を確実に最適化できる。この垂直方向の調整は、該装置の内部容量5により生じる浮力を使用することで達成することが望ましく、これは自動的な調整を可能にする。
【0073】
図7a及び7bは、それぞれ本発明の波パドルの第七の実施例の概略平面図及び三次元立体図である。この第七の実施例は、第六の実施例と同一であるが、パドルの先端2が基部装置15との接続のために構造的部材26と合体するように拡大された点が異なる。移動可能または可変的な接続部が構造的部材26とパドルの先端2の間に存在し、これにより上記第六の実施例のように該パドルの垂直位置は、基部装置15に対して調整可能となる。共に図示される棒28は、パドルの先端2に接続され、該装置の構造的剛性を改善し、該装置の極度な横方向の変形を防ぐ。
【0074】
第三の実施例と同様に、底板6は、凹状の後面11の底部全周に渡り接続されることが望ましく、この表面を下降する流体の流れを防ぐ。底板6は、前向きの先端部4に向かって上向きに湾曲することが望ましく、さらなる抵抗を減少させる。
【0075】
図8a、8b及び8cは、それぞれ本発明の波パドル24の第八の実施例の概略平面図、三次元立体図、及び側面図である。これらの図中のパドルのデザインは、
図2のものと同一であるが、完全に平坦なデザインを含め、適したデザインになり得る。パドルの後面側の側面に取り付けられたものは、二枚の波偏向板または波集中パネル23である。1つの実施例では、パネルは、入射波に応じて動かないが、その代わりに可動式パドル24に向かう入射波のエネルギーを運び、可動式パドルが受ける波頭の高さと波の谷の深さとの両方を拡大する。これらのパネル23は、パドル24の幅が大きさや重量またはその他の制限により最大に達したが、該システムが各波からより多くの有益なエネルギーを抽出する能力がある場合に有益である。
【0076】
別の実施例では、パネル23もまた入射波に応じて可動式で、各パネル23及びパドル24には、水圧式ピストン等のエネルギー抽出装置が設けられている。パネル23及びパドル24は、全て単一の基部装置に設置されるか、または別の基部装置に設置され、波の状態によってパネル23とパドル24との相対位置に順応性を持たせるかもしれない。独立して動くことが出来る複数の構成要素があるという事は、異なる表面が互いにずれた位相で反応できる事を意味し、特に、指向性の波のエネルギーを受けることになる。独立した複数の部品による設計はまた、小さく独立しているが結合可能な構成要素を使用することで、製造及び設置の柔軟性を向上させる。
【0077】
望ましくは、上記のパドルの実施例のように、入射波に向かうパネル23の縁の先端部は、
図9に示されるように鋭くない、航空機の翼状の形状を持つ。
上述の実施例では、曲面が該パドルの高さに沿って一定であるか、または該パドルの高さに沿って曲面が直線の縁まで徐々に形状を変えるかのいずれかである。しかし、本発明はこれらの特別な配置に限定されない。この発明の他の実施例では、パドルの高さの一部で一定の曲面とパドルの高さに沿って曲面が変化する部分を有し得る。曲面の変化もまた曲線から直線への変遷に限らない。パドルの異なる部分は、異なる一般的な曲面を有し得て、これは予測される波の状態と基部装置のデザインとに依存し、パドルの高さに沿って異なる曲面が滑らかに変遷する。
【0078】
図10aから10pは、本発明の実施例で使用し得る異なるパドル24の曲面または断面形状を示す。
図10aから10dは、上記第一の実施例に似た放物線状または半楕円形状のパドルを示す。
図10cに図示されるパドルは、先端部2に延長される後方向き直線延長部分27を含み、これは入射波に概ね平行な方向に延長され、パドルの縁周辺の水の流出を制限する。
【0079】
図10eは、上記第二の実施例に類似した前向きの先端部4のデザインを示すが、これは一体のパネルから形成され、後面11は、前面12と同じ輪郭を有する。
図10fは、10eの例の代替を示し、先端部の構造的強度を増すために鋭くない前向きの先端部4を有する。
【0080】
図10gから10iは、それぞれ2、4、及び8枚の平坦な部分から形成されたパドルを示し、これらは滑らかな曲面を近似する。
図10jは、概ね平坦な中心部を有し、端部を削って入射波に向かう先端部2を形成するパドルを示す。この平坦な輪郭は、基部装置に接続するために必要になり得る。
【0081】
図10kから10pは、パドルの後面及び前面に異なる輪郭を用いて形成する複合パドルデザインの種類を示す。各複合パドルは、内部容量5を有し、これは構造的剛性と浮力とをもたらす。
図10kは、
図10gに類似したそれぞれ2枚の平坦な部分から形成された前面と後面とを有するパドルを示す。
図10lは、
図10aに類似して滑らかな曲面の凹状の後面と、2枚の平坦な部分から形成される前面と、を有する。
図10mは、滑らかな曲面の凹状の後面と、
図10eに類似した前向きの先端部4と、を有するパドルを示し、一方で、
図10nに示すパドル上の前向きの先端部4は、
図10fに示すパドルと類似して鈍い。
図10oは、後面と前面に僅かに異なる曲面の輪郭を有するパドルを示す。
図10pは、
図10jに類似して、後面に平坦な中央部分を有するパドルを示し、このパドルは、前向きの先端部4を有する。
【0082】
図10aから10pに示す各パドルにおいて、後面11の抵抗係数(C
d)は、2よりも大きい。使用する素材に依存して、前面12の抵抗係数(C
d)は、0.3と2.0の間にあり、
図10jの平坦なデザインは、前面12上に最大の抵抗があり、
図10kから10nに示す前向きの先端部を有するパドルは、前面12上の抵抗が概ね最小になる。先行例で知られるような対称で概ね平坦なパドルは、概して両面の抵抗係数が2以上である。
【0083】
図11aから11fは、
図8に関連した上記の実施例に類似し、パドル24及びパネル23の組み合わせの種類を示す。これらの図のそれぞれに示される配置では、パネル23は、単に波のエネルギーを可動式パドル24に導き集中させるために所定の場所に固定され得るし、あるいは各パネル23は上述のように独立して可動式になり得る。
【0084】
図11aは、
図10bに示すパドルと類似した楕円形状に湾曲したパドル24に滑らかに合流する曲面を有する2枚の滑らかに湾曲したパネル23を示す。
図11bは、4枚のパネル/パドルの組み合わせを示し、これは
図10gのパドルに類似した全体形状を有するが、これら4枚のパネル/パドルの、いずれまたは全てが波エネルギーを抽出するために独立して可動式になり得る。
【0085】
図11cから11eは、パネル23及びパドル24の組み合わせを示し、パネル及びパドルは、それぞれ複数の平坦な部分から構成される。
図11eは、特別に、完全に平坦な前面を有する。それでもまだ、本発明の利点の多くは、入射波の方向に垂直な水平面に対する全体的な非対称性により実現される。側面のパネル23は、従って、波のエネルギーをパドル24に向かって滑らかに集中させる。
【0086】
図11fは、
図8と類似して2枚の波集中パネル23とガウス関数的輪郭のパドル24との組み合わせを示す。
図12は、発電のために設計された波駆動の水力システムの可能性のあるデザインを示す。他の設計は、先行例でよく知られている。波駆動パドルの動作は、複動式水圧式シリンダー16の一方の端に流体を圧縮し、2つの逆流防止バルブ52の一方を通して水力畜圧器55へポンプで押し上げる。水力モーター58は、水をポンプで押し上げ交流発電機59を動作させ、電力が生成される。畜圧器55の容量は、シリンダー16の容量と比較して大きいことが望ましく、大きい平面領域を有し、これにより結果として生じる水力モーター58で利用可能な圧力水頭は、比較的一定に保たれる。畜圧器の高さを低くするため、圧力水頭を維持しつつ、該畜圧器の上部にある空所56はガスで加圧され得る。
【0087】
モーター58への流体の流れは、制御バルブ57により調整される。排出流体は、貯蔵容器60に運ばれ、ここから第二の逆流防止バルブの組を通して水圧式ピストン16の一方の端へ戻るために利用可能になる。波パドルアセンブリから畜圧器までのパイプ(相当な長さになり得る)内のいかなる圧力変動も滑らかにするために、圧力室54が設けられる。
【0088】
基部装置上に1つ以上のピストン16がある場合、該パドル動作の全体的な抵抗は、追加的なピストンを作動させるか作動させないかにより変更可能となる。これを実現する便利な方法は、複動式水圧式シリンダーの一端からもう一方への流体の流れを可能にするバイパスバルブ64を開けることである。複数のパドルの配列を使用する場合、各パドルは、ボックス63内の要素のみを有する同一のコアシステムを共通に使用することが望ましい。ボックス63内の要素のいくつかはパドルの内部容量5内に配置され得る。
【0089】
該システムは、中央コンピュータユニット62により制御される。電子的検知システム61は、入射波を監視し、バルブ51の操作により水圧式ピストン16の動作は変えられ、よってパドルの動作は、波の状態に合うように変えられる。ポンプにより汲み上げられる流体の量は、流量計53により計測される。
【0090】
図13aは、海水を淡水に変換する波力駆動の脱塩化システムの可能なデザインを示す。このシステムのボックス70内の要素は、操作の点において
図12のボックス63内の要素に類似するが、動作流体は、濾過機71を通して流入する海水である点が異なる。海水は、シリンダー16により加圧され、流量計53及び制御バルブ57を介して逆浸透装置73に運ばれ、ここで生成された淡水は、貯蔵容器72に収集され、凝集された海水は、貯蔵容器75に収集される。制御バルブ74及び57は、中央コンピュータユニット62により制御され、逆浸透装置73中の適度な圧力を維持する。
【0091】
図13aの要素のいくつかは、パドルの内部容量5内に配置され得る。例えば、
図13bは、可能性のあるパドルデザイン24を示し、ここでは逆浸透チューブが前面12と後面11とを定義するパネルの間に配置される縦型の構造的チューブ76内に組み入れられる。
図13aに示される残りの機器は、該装置の前向きの先端部5内に配置され得て、脱塩化された水を陸上へ運ぶ低圧パイプが設けられる。
【0092】
図14aは、波操業の隊列を形成するよう配置された3つのパドルユニットのグループを示す。各ユニットは、隊列全体から抽出される動力を滑らかにするために入射波がそれぞれのパドルユニットを異なるタイミングで打つように配置されている。畜圧器55または脱塩化装置73への水の供給を滑らかにするように、多数のパドルユニットを並行して使用することが望ましい。パドルはまた海岸に到達する波の大きさと激しさを軽減する防波堤として集団的に機能するように配列され得る。
【0093】
図14bは、基部装置15を海底に直接固定することが困難または不可能な深い水にパドルを設置する1つの方法を示す。該パドルは、それ自体が水没した浮桟橋30に設置された基部装置15に装着される。浮桟橋は、ケーブル29を使用して海底に固定され、このケーブル29は、波の状態によって短くしたり長くしたりすることにより該パドルを正しい高さに位置付けるか、悪天候時は水面から完全に引き下げ得る。
【0094】
図15から17は、本発明を具現化するパドルの領域中の圧力変動及び流速を示す。これらの図は本発明の背景にある数学的及び理論的基礎の理解を補助するために提供される。
【0095】
波に関連する圧力場は、理想流体に対する非定常ベルヌーイ方程式から導かれる。
【0097】
ここで、φは速度ポテンシャル、ρは密度、gは重力加速度、zは静水位(SWL: Still Water Level)上の垂直位置を表す。
図15は、非砕波下の垂直パドル上の全圧を示し、これは主に流体静力学的であり(即ち、P=−ρgz)、式1の
【0099】
から水面近傍の非定常寄与を伴う。水面上の波の存在は、水面下の圧力に対して局部的な影響しか持たないため、主な波長の約半分の深さでは、圧力は、純粋に流体静力学的になり静水位のみに関わる。波の下の実際の圧力と静水位に対して相対的な流体静力学的圧力との間の相違は、動的圧力(D
1)として知られており、これは波の峰の下の正圧から波の谷の下の負圧へ交互に入れ替わり、これを
図17a及び17bに示す。
【0100】
図16は、波の峰の下で波パドルの前面及び後面上で動的圧力がどのように異なり得るかを示す。パドルが波よりも遅く動くと、後面11の凹状の曲面は、流体の動きを制限し、該表面に沿った圧力D
1を増加させ、これは波の峰では正側に、波の谷では負側に作用する。
【0101】
前面12上では、動的圧力は工程の組み合わせにより導かれ、これには以下のものを含む。
1)水に対するパドルの相対的加速による慣性力は、周囲の流体の慣性の変化を生じさせる。従って、この圧力は、概してパドル24が最大の加速度に達する時のパドル動作のいずれかの範囲で最大になる。後面11上の水の動きが該パドルを動かすに従い、このパドルの加速に影響される水の領域は、該パドルの前の水域41として理想化され得る。これは概してガウス型の形状になり、パドルの速度の変化に抵抗する。文献では、これは通常該パドルに質量を追加することにより説明され、これは、従って「付加質量」として参照される。
【0102】
2)パドルが動き始めると、これに対応した抗力が生じ、これは該パドルの前面12から直角に伝播する波の生成とエネルギーの消散の主原因になる。消散した波に含まれるエネルギーは、波の速度の二乗に比例するので、これらの速度を最小化することが有益である。凸状の前面12及び先端部4は共に、これら直角方向の波の速度の減少を助長する。
【0103】
3)構造的圧力(D
3)は、パドルの外側で先端部2の周りを通過しパドルの前面12の周りを移動する入射波42により生じる。波頭の通過中(
図17a)、波42は、パドルの前の流体を結集して、パドルの前面12に沿って負の動的圧力(D
3)を生じさせる。波の谷の通過中(
図17b)、今度は波42は、逆方向に移動し、前面12に沿って付加的な正の動的圧力を生じさせる。
【0104】
この第三の工程が、パドルを波の移動の方向に引くように作用し、よってパドルが利用可能なエネルギーが増加する。本発明の実施例の初期試験中、これは、上記の工程2で述べた抗力を減ずるのみと予想されていたパドルの前面12上の滑らかな曲面の予想外の効果だった。よって、該装置により捕捉されたエネルギーは、予想よりもはるかに大きかった。事実、該装置は、実際のパドルの幅よりも幅広い波面からエネルギーを捕捉する。
【0105】
パドル上で作用する主要な力を平衡させると、次のようになる。
【0107】
ここで、F
pはパドルと動力を抽出するピストンとの間の力、mはパドルの質量、m
addedは付加質量を表す。
パドルが前方へ移動する間、D
1及びD
3は共に作用し、D
2により制限され(
図17a参照)、一方で式2の右辺の成分は、それぞれ保存されるエネルギー、抽出されるエネルギー、及び失われるエネルギーを表す。パドルが後方へ移動する間、D
1は、今度はパドルの後面11上に形成される谷により圧倒的に負になり、D
3は正に変わり、D
2は負になる。
【0108】
パドルから抽出される動力は、次のように近似される。
【0110】
ここで、Tは主要な波の周期、Δはパドルの水平方向の移動距離、F
Pはパドルとピストンとの間の平均の力を表す。Tは所定の波の状態では固定値であるので、波から抽出される動力を変化させる唯一の方法は、F
P・Δの積を変化させることである。
【0111】
動力が抽出されない時に、この方程式には以下の2つの限定条件がある。
1)もしパドルが固着されていて硬直した垂直の壁として作用するならば、Δ=0となりF
Pは最大化される。しかし、動きが無く他の損失が小さいと仮定するならば、ほぼ全てのエネルギーは反射され、よって入射波に対抗して後進する。
【0112】
2)もしパドルが波と共に自由に動くならば、F
P=0となり、そしてΔは最大化される。もしパドルが十分に軽くて入射波側の流体と同じ速度で動くことが可能ならば、パドルに到達するほぼ全ての波のエネルギーは、吸収され、新しい第2の波の生成により反対側で直ちに消散する。
【0113】
数種類の湾曲した試験用パドルデザインを使用した実験室での試験が行われ、平坦で対称の試験用パドルが比較の基を形成するために使用された。実験室設備は、長さ15m、幅2.5m、水深1mである。タンクは、一方にコンピュータ制御の波発生装置を含み、他方で波を吸収する浜を含む。各試験用パドルの幅及び高さは正確に1mで、入射波に対する投影面積が同じになる。全てのパドルは、タンクの底から20cm上に固定された枠の上に概ね垂直方向に設置され、パドルは、入射波の方向と平行に前後に回転できるようにされた。この回転は、試験用パドルの上端に力変換器を通して接続された圧縮空気ピストンにより制限され、ピストンには適度な抵抗を与えるよう設定されたバルブが付けられ、また各ストロークで空気がポンプにより注入された(
図12のボックス63に示す設定に類似)。
【0114】
図18a及び18bは、それぞれ湾曲パドル(試験番号123)及び平坦パドル(試験番号139)の、ほぼ同一の入射波に対するサンプル結果の一部を表す。湾曲パドルの形状は、
図2aに示すものと類似し、凹面部の深さは、およそ0.3mである。それぞれのケースで、入射波の高さ(incident wave height)はおよそ16cm、周期は1.3sで、これは31W/mの入射波エネルギーに等しかった。
【0115】
各パドルについて、力と移動(Force and Displacement)曲線を比較すると、湾曲パドルはかなり大きな力を加え、結果として移動が大きくなった証拠となった。これら2つの曲線から式3を使用して生成された動力と2s期間での平均出力とを計算した(点線で示す)。これらの結果は、湾曲パドルが約51W/mの平均出力を出し、一方で平坦パドルは23W/mしか出さなかったことを示す。さらに予想外だった結果は、湾曲パドルが波の峰及び谷の通過中の双方でほぼ同等の出力を出し、一方で平坦パドルは、波の峰から30%ほど低い値しか出さなかったという事である。
【0116】
他の波の周波数及び高さの範囲もテストされ、湾曲したデザインでは一貫して40%から150%増の出力が出された。波の状態に基づいた湾曲パドルデザインの最適化により、さらに大きな相対的改善が期待される。