(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)(i)アルミニウム塩アジュバント上に吸着された少なくとも1のHPV型のHPV VLPであって、ここで該少なくとも1のHPV型のVLPは10〜200mcg/mlの濃度で存在しており、および該VLPはHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選択される、(ii)1%ないし10%w/vマンニトール、および(iii)5%ないし10%w/vショ糖を含む液体HPVワクチン製剤を調製すること、
(b)該液体製剤を凍結して凍結製剤を製造すること、および
(c)該凍結製剤を乾燥させて凍結乾燥HPVワクチン製剤を提供すること、を含む安定な凍結乾燥HPVワクチン製剤を製造する方法であって、
ここで、該製剤は、凍結乾燥後に25℃で1ヶ月間安定である、方法。
(a)(i)アルミニウム塩アジュバント上に吸着された少なくとも1のHPV型のHPV VLPであって、ここで該少なくとも1のHPV型のVLPは10〜200mcg/mlの濃度で存在しており、および該VLPはHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選択される、(ii)1%ないし10%w/vマンニトール、ならびに(iii)5%ないし10%w/vショ糖を含む液体HPVワクチン製剤を調製すること、ならびに
(b)凍結製剤を製造するために該液体製剤を凍結すること、を含む安定な凍結HPVワクチン製剤を製造する方法であって、
ここで、該製剤は、凍結‐融解プロセスストレス後に25℃で1ヶ月間安定である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本明細書記載の凍結‐融解および凍結乾燥の研究において使用された緩衝液の組成を示す。示す通り、6種類の緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)および異なる塩含量(0、150および320mMの塩化ナトリウム)を含む各緩衝液の3つの変種が存在して、18種類の異なる緩衝液組成物(B‐1からB‐18)がもたらされた。記載された賦形剤に加えて、緩衝液の各々は、10mMヒスチジンおよび0.01%ポリソルベート80(pH6.2)を含有した。
【
図2A】
図2は、各試験緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)の塩化ナトリウム濃度および凍結融解条件の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。HPVワクチン製剤は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を1回使用する急速瞬間凍結(「F/T FF 1X」)か、または1回(「F/T 1X」)か3回(「F/T 3X」)の通常凍結を実施した。
【
図2B】
図2は、各試験緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)の塩化ナトリウム濃度および凍結融解条件の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。HPVワクチン製剤は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を1回使用する急速瞬間凍結(「F/T FF 1X」)か、または1回(「F/T 1X」)か3回(「F/T 3X」)の通常凍結を実施した。
【
図2C】
図2は、各試験緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)の塩化ナトリウム濃度および凍結融解条件の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。HPVワクチン製剤は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を1回使用する急速瞬間凍結(「F/T FF 1X」)か、または1回(「F/T 1X」)か3回(「F/T 3X」)の通常凍結を実施した。
【
図2D】
図2は、各試験緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)の塩化ナトリウム濃度および凍結融解条件の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。HPVワクチン製剤は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を1回使用する急速瞬間凍結(「F/T FF 1X」)か、または1回(「F/T 1X」)か3回(「F/T 3X」)の通常凍結を実施した。
【
図3A】
図3は、凍結乾燥後の、塩化ナトリウム濃度の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。結果は、緩衝液Aから緩衝液Fを含む4価HPV製剤におけるHPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。組成物の各々は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を使用する瞬間冷凍(「Lyo FF」)かまたは予備冷却した凍結乾燥棚(「Lyo PC」)を使用する瞬間冷凍によって凍結処理したものに関し凍結乾燥を実施した。
【
図3B】
図3は、凍結乾燥後の、塩化ナトリウム濃度の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。結果は、緩衝液Aから緩衝液Fを含む4価HPV製剤におけるHPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。組成物の各々は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を使用する瞬間冷凍(「Lyo FF」)かまたは予備冷却した凍結乾燥棚(「Lyo PC」)を使用する瞬間冷凍によって凍結処理したものに関し凍結乾燥を実施した。
【
図3C】
図3は、凍結乾燥後の、塩化ナトリウム濃度の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。結果は、緩衝液Aから緩衝液Fを含む4価HPV製剤におけるHPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。組成物の各々は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を使用する瞬間冷凍(「Lyo FF」)かまたは予備冷却した凍結乾燥棚(「Lyo PC」)を使用する瞬間冷凍によって凍結処理したものに関し凍結乾燥を実施した。
【
図3D】
図3は、凍結乾燥後の、塩化ナトリウム濃度の関数としての、4価の試験製剤におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性のデータのプロットを示す。実施例2を参照されたい。結果は、緩衝液Aから緩衝液Fを含む4価HPV製剤におけるHPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)について示す。組成物の各々は、実施例1に記載の通り、液体窒素吹付を使用する瞬間冷凍(「Lyo FF」)かまたは予備冷却した凍結乾燥棚(「Lyo PC」)を使用する瞬間冷凍によって凍結処理したものに関し凍結乾燥を実施した。
【
図4A】
図4は、45℃で1か月間保存後の、種々の緩衝液組成物における塩化ナトリウム濃度および凍結乾燥条件の関数としての、HPV型の各々に対するインビトロ抗原性のプロットを示す。また、45℃で1か月間保存されたそれぞれの凍結乾燥されなかった液体製剤も含む。示したデータは、45℃で1か月間保存後の、
図2に示したものと同一条件下での、同一の試験製剤に対するものである。
【
図4B】
図4は、45℃で1か月間保存後の、種々の緩衝液組成物における塩化ナトリウム濃度および凍結乾燥条件の関数としての、HPV型の各々に対するインビトロ抗原性のプロットを示す。また、45℃で1か月間保存されたそれぞれの凍結乾燥されなかった液体製剤も含む。示したデータは、45℃で1か月間保存後の、
図2に示したものと同一条件下での、同一の試験製剤に対するものである。
【
図4C】
図4は、45℃で1か月間保存後の、種々の緩衝液組成物における塩化ナトリウム濃度および凍結乾燥条件の関数としての、HPV型の各々に対するインビトロ抗原性のプロットを示す。また、45℃で1か月間保存されたそれぞれの凍結乾燥されなかった液体製剤も含む。示したデータは、45℃で1か月間保存後の、
図2に示したものと同一条件下での、同一の試験製剤に対するものである。
【
図4D】
図4は、45℃で1か月間保存後の、種々の緩衝液組成物における塩化ナトリウム濃度および凍結乾燥条件の関数としての、HPV型の各々に対するインビトロ抗原性のプロットを示す。また、45℃で1か月間保存されたそれぞれの凍結乾燥されなかった液体製剤も含む。示したデータは、45℃で1か月間保存後の、
図2に示したものと同一条件下での、同一の試験製剤に対するものである。
【
図5】
図5は、0、150または320mMの塩化ナトリウムを有する緩衝液Aから緩衝液FにおけるHPV4価試験製剤の浸透圧測定値(mOsm/kg(重量オスモル濃度))のプロットを示す。実施例3を参照されたい。
【
図6】
図6は、凍結融解および凍結乾燥条件後の、塩化ナトリウム濃度の関数としての、種々の緩衝液中のHPV4価試験製剤の各々に対する粒度測定値(Z−平均、nm)のプロットを示す。全てのプロットに対し、示された結果は、緩衝液A(白いひし形)、緩衝液B(白い四角形)、緩衝液C(黒い三角形)、緩衝液D(黒いx)、緩衝液E(白い三角形)および緩衝液F(黒い円)を表す。凍結融解(「F/T 1X」)、凍結融解3X(「F/T 3X」)、瞬間凍結(「F/T 1X FF」)、瞬間凍結によって凍結処理したものの凍結乾燥(「Lyo FF」)および予備冷却した凍結乾燥棚を使用した凍結乾燥(「Lyo PC」)の後の試験製剤に対する結果を示す。凍結融解も凍結乾燥もされなかった対照製剤に対しても結果を示す。実施例4を参照されたい。
【
図7】
図7は、0、150または320mM塩化ナトリウムを含む種々の緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)における凍結乾燥4価HPV製剤に対するケーキの外観を示す。製剤は、瞬間凍結法により凍結乾燥し(「瞬間凍結」)または予備冷却した凍結乾燥棚の上で凍結乾燥した(「予備冷却」)。示した結果は、T=0時点での各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。また、45℃で1か月間保存後の同一の製剤のケーキ外観も示す。乾燥ケーキに対する品質特性の記載については、実施例1、表2を参照されたい。実施例5も参照されたい。
【
図8】
図8は、注射用滅菌水添加後の、0、150または320mM塩化ナトリウムを含む種々の緩衝液(緩衝液Aから緩衝液F)における、凍結乾燥4価HPV製剤に対する再構成時間を示す。製剤は、瞬間凍結により凍結乾燥(「瞬間凍結」)または予備冷却した凍結乾燥棚の上で凍結乾燥した(「予備冷却」)。示した結果は、各試験製剤の2個のバイアルに対するものである。また45℃で1か月間保存後の同一の製剤に対する注射用滅菌水添加後の再構成時間も示す。実施例5を参照されたい。
【
図9】
図9は、注射用滅菌水添加後の、0、150または320mM塩化ナトリウムを含む種々の緩衝液(緩衝液‐Aから緩衝液‐F)における、凍結乾燥4価HPV製剤に対する振盪試験時間を示す。製剤は、瞬間凍結により凍結乾燥(「瞬間凍結」)または予備冷却した凍結乾燥棚の上で凍結乾燥した(「予備冷却」)。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルに対するものである。実施例5を参照されたい。
【
図10A】
図10は、−70℃で種々の時点における保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV16型(パネルA)および18型(パネルB)に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、実施例1に記載の通り、凍結‐融解(F/T)または凍結乾燥プロセス(LYO)を受けた後に保存された。Biacoreの効力(%)は、保存期間の関数として示す。実施例1および6を参照されたい。
【
図10B】
図10は、−70℃で種々の時点における保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV16型(パネルA)および18型(パネルB)に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、実施例1に記載の通り、凍結‐融解(F/T)または凍結乾燥プロセス(LYO)を受けた後に保存された。Biacoreの効力(%)は、保存期間の関数として示す。実施例1および6を参照されたい。
【
図11A】
図11は、25℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)における、HPV16型(パネルA)および18型(パネルB)に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結‐融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。
【
図11B】
図11は、25℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)における、HPV16型(パネルA)および18型(パネルB)に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結‐融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。
【
図12A】
図12は、37℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)を示す。
【
図12B】
図12は、37℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)を示す。
【
図12C】
図12は、37℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)を示す。
【
図12D】
図12は、37℃で種々の時点での保存後の、4価試験製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐D)におけるHPV型の各々に対するインビトロ抗原性を示す。試験製剤は、凍結融解または凍結乾燥プロセスを受けた後に保存した。実施例6を参照されたい。プロットは、HPV6型(パネルA)、HPV11型(パネルB)、HPV16型(パネルC)およびHPV18型(パネルD)を示す。
【
図13A】
図13は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキについての品質特性の記載に対しては実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図13B】
図13は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキについての品質特性の記載に対しては実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図13C】
図13は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキについての品質特性の記載に対しては実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図13D】
図13は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキについての品質特性の記載に対しては実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図14A】
図14は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥1X MAA製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキに対する品質特性の記載については実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図14B】
図14は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥1X MAA製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキに対する品質特性の記載については実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図14C】
図14は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥1X MAA製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキに対する品質特性の記載については実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図14D】
図14は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥1X MAA製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対するケーキ外観を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルの平均を表す。乾燥ケーキに対する品質特性の記載については実施例1、表2を参照されたい。実施例10も参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図15A】
図15は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対する振盪試験時間を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルに対するものである。実施例10を参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図15B】
図15は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対する振盪試験時間を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルに対するものである。実施例10を参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図15C】
図15は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対する振盪試験時間を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルに対するものである。実施例10を参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【
図15D】
図15は、種々の保存温度で数か月間保存後の、凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液Bから緩衝液D)に対する振盪試験時間を示す。示した結果は、各試験製剤の3個のバイアルに対するものである。実施例10を参照されたい。データは、2〜8℃(パネルA)、25℃(パネルB)、37℃(パネルC)および−70℃(パネルD)での保存について示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ワクチン製剤は、通常アルミニウムアジュバントを含有し、それは抗原に対する免疫応答を増強するために使用される。アルミニウムアジュバント化ワクチンは、加熱または凍結等の温度変化に極めて敏感である。上記の低下した効力および/または有効性の問題を回避するために、免疫学的に活性であるアルミニウム塩アジュバントを含む熱的に安定なワクチン製剤を産生する方法に対する要請がある。その為に本発明は、アルミニウム塩アジュバント上に吸着した少なくとも1の抗原およびマンニトールとショ糖の組み合せを含む、安定な液体および凍結固体および凍結‐乾燥ワクチン製剤を提供する。本発明の好ましい態様において、抗原はヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス様粒子(VLP)である。
【0026】
上述の通り、本発明は、(a)アルミニウムアジュバント上に吸着されている少なくとも1のHPV型のHPVウイルス様粒子(VLP)、および(b)マンニトールとショ糖を含有する緩衝液を含む、ヒトパピローマウイルスワクチン製剤を提供する。ワクチン製剤は、非イオン性界面活性剤および/またはNaCl等の任意の塩を含む。
【0027】
本発明による液体HPVワクチン製剤は、(1)凍結および融解、(2)液体製剤の凍結‐乾燥、(3)乾燥製剤の再構成、ならびに(4)室温または高温で1か月以上保存後の乾燥製剤の再構成の際に、その物理的および免疫学的特性を保持することが可能である。従って、本発明は、本明細書を通して種々の実施形態において記載される通り、凍結された、凍結‐乾燥されたまたは再構成されたHPVワクチン製剤を提供する。
【0028】
本発明のこの態様の好ましい実施形態においてHPVワクチン製剤は、(a)アルミニウムアジュバント上に吸着した少なくとも1のHPV型のHPVウイルス様粒子(VLP)(ここで各HPV型の該VLPは10〜200mcg/mlの濃度で存在し、しかも該VLPは、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選択されている)、(b)約1%ないし約10%w/vマンニトール、ならびに(c)約0.5%ないし約10%ショ糖を含む。追加の実施形態において、HPVワクチンは非イオン性の界面活性剤をさらに含む。さらなる実施形態において、ワクチン製剤は、前述の任意の実施形態に定義された成分を含み、しかも一種の塩をさらに含む。
【0029】
本発明の追加の実施形態は、上で定義したHPV製剤を提供し、ここで製剤中に存在するマンニトールの量は約4%ないし約10%であり、ショ糖の量は約1%ないし約5%である。
【0030】
本発明のこの態様のさらなる実施形態が提供され、ここで製剤は前述の任意の製剤において定義された成分を含み、さらに約5mMないし約100mMヒスチジンを含む。好ましい実施形態において、製剤は10mMヒスチジンを含む。
【0031】
追加の実施形態において、本発明は、前述の任意の実施形態において定義されたHPVワクチン製剤に関し、ここで製剤は加えて界面活性剤を含む。本発明の代表的な実施形態において、ワクチン製剤は、約0.001%ないし約0.04%の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤はPS20またはPS80である。
【0032】
本発明のこの態様のさらにもう一つの実施形態において、HPVワクチン製剤は、(a)アルミニウム塩アジュバント上に吸着された少なくとも1のHPV型のHPV VLP(ここで少なくとも1のHPV型のHPV VLPは10〜200mcg/mlの濃度で存在し、VLPはHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選択されている)、(b)約5%ないし約6%w/vマンニトール、および(c)約2%ないし約4%ショ糖を含む。さらなる実施形態において、ワクチン製剤は、約10mMヒスチジン、約0.3ないし約0.35M NaClおよび/または0.01%PS80をさらに含む。
【0033】
製剤成分
前述の通り本発明に従って、マンニトールとショ糖の組み合せは、アルミニウムアジュバント化ワクチン製剤を凍結、融解または凍結‐乾燥によって誘発されるストレスから防護することが明らかにされた。その為に本発明は、例えば、HPV VLPワクチン製剤等のワクチン製剤を提供し、ここで製剤成分は前述の任意の実施形態に定義された通りであり、マンニトールは以下の任意の量、約1%ないし約10%w/v、約2%ないし約10%w/v、約3%ないし約10%w/v、約4%ないし約10%w/v、約5%ないし約10%w/v、約1%ないし約9%w/v、約2%ないし約9%w/v、約3%ないし約9%w/v、約4%ないし約9%w/v、約5%ないし約9%w/v、約1%ないし約8%w/v、約2%ないし約8%w/v、約3%ないし約8%w/v、約4%ないし約8%w/v、約5%ないし約8%w/v、約1%ないし約7%w/v、約2%ないし約7%w/v、約3%ないし約7%w/v、約4%ないし約7%w/v、約1%ないし約6%w/v、約2%ないし約6%w/v、約3%ないし約6%w/vまたは約4%ないし約6%w/vで存在する。本発明の別の実施形態において、ワクチン製剤成分は前述の任意の実施形態に定義された通りであり、マンニトールの量は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%w/vである。好ましい実施形態において、組成物は4%、5%または6%w/vのマンニトールを含む。
【0034】
本発明のさらなる実施形態において、HPVワクチン製剤は前述の任意の実施形態に定義された通りの成分、およびショ糖を含み、ショ糖は以下の任意の量、約0.5%ないし約10%w/v、約1%ないし約10%w/v、約2%ないし約10%w/v、約3%ないし約10%w/v、約4%ないし約10%w/v、約0.5%ないし約9%w/v、約1%ないし約9%w/v、約2%ないし約9%w/v、約3%ないし約9%w/v、約4%ないし約9%w/v、約1%ないし約8%w/v、約2%ないし約8%w/v、約3%ないし約8%w/v、約4%ないし約8%w/v、約1%ないし約7%w/v、約2%ないし約7%w/v、約3%ないし約7%w/v、約4%ないし約7%w/v、約1%ないし約6%w/v、約2%ないし約6%w/v、約3%ないし約6%w/v、約4%ないし約6%w/vのショ糖である。別の実施形態において、ワクチン組成物は、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%w/vのショ糖を含む。好ましい実施形態において、組成物は2%、3%、4%または5%w/vのショ糖を含む。
【0035】
本発明の特定の実施形態において、HPVワクチン製剤は前述の任意の実施形態または以下に記載した任意の実施形態に定義された通りの成分を含み、および約5mMないし100mMヒスチジンをさらに含む。追加の実施形態において、組成物におけるヒスチジン濃度は、約5mMないし約90mM、約5mMないし約80mM、約5mMないし約75mM、約5mMないし約60mM、約5mMないし約50mM、約10mMないし約90mM、約10mMないし約75mM、約10mMないし約60mM、約10mMないし約50mM、約20mMないし約90mM、約20mMないし約75mM、約20mMないし約60mMまたは約20mMないし約50mMである。別の実施形態において、ワクチン製剤は約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mMまたは約50mMヒスチジンを含む。好ましい実施形態において、ワクチン製剤は約10mMヒスチジンを含む。
【0036】
本明細書に記載されるワクチン組成物のいずれも、任意に界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、精製、濾過、凍結‐乾燥、輸送、保存および配送等の処理条件の間に、凝集を減少および/または防止するために、またはタンパク質の損傷を防止および/または阻害するために、添加し得る。本発明の製剤において有用な界面活性剤には、これらに限られるものではないが、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)およびポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)を含むポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、Tween(登録商標)(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)の商品名で販売されている);ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、Brij(登録商標)58(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)およびBrij(登録商標)35;ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton(登録商標)X−100(Union Carbide Corp.,Houston,TX)およびTriton(登録商標)X−114;NP40;Span20、Span40、Span60、Span65、Span80およびSpan85;エチレンとプロピレングリコールの共重合体(例えば、非イオン性界面活性剤のpluronic(登録商標)シリーズ、例えば、pluronic(登録商標)F68、pluronic(登録商標)10R5、pluronic(登録商標)F108、pluronic(登録商標)F127、pluronic(登録商標)F38、pluronic(登録商標)L44、pluronic(登録商標)L62(BASF Corp.,Ludwigshafen,Germany));ならびにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。
【0037】
本発明の代表的な実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Brij(登録商標)35、pluronic(登録商標)F−68およびTriton(登録商標)から成る群より選択される非イオン性界面活性剤である。いくつかの好ましい実施形態において、界面活性剤はポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0038】
本発明の製剤中に含められるべき界面活性剤の量は、所望の機能を果たすのに十分な量、即ち、タンパク質の凝集を防止するために、微粒子の形成を防止または阻害するために、BWFI(注射用静菌水)等の希釈液の添加後の凍結乾燥若しくは凍結製剤または再構成製剤の凝集の量を許容可能なレベルまで減少させるために、再構成を容易とするためにまたは輸送および/または処理の間の安定性の優位性を提供するために必要とされる最小限の量である。界面活性剤は、典型的には約0.001%ないし約0.5%(wt/vol)の濃度で存在する。本発明のこの態様の好ましい実施形態において、界面活性剤は製剤中に(凍結乾燥前)約0.005%ないし約0.4%の量で存在し、より好ましい実施形態において、界面活性剤は約0.01%ないし約0.3%の量で存在する。特定の好ましい実施形態において、界面活性剤は約0.01%の量で存在する。
【0039】
本発明の代表的な実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Brij(登録商標)35、pluronic(登録商標)F−68およびTriton(登録商標)から成る群より選択される非イオン性界面活性剤である。いくつかの好ましい実施形態において、界面活性剤はポリソルベート20またはポリソルベート80である。特に好ましい実施形態において、HPVワクチン製剤は約0.01%のPS80を含む。
【0040】
また本発明は、前述の任意の実施形態において定義された成分を含み、さらに製剤のイオン強度の制御に寄与し得る塩を含むワクチン製剤も含む。本発明のHPVワクチン製剤において使用し得る塩には、限定されるものではないが、NaCl、KCl、Na
2SO
4、(NH
4)
2SO
4,リン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムが含まれる。塩は、製剤中に約0.10Mないし1Mの濃度で存在すべきである。しかしながら、高塩製剤の非経口注射の実際的制限より、非常に高い濃度は好まれない。代わりに、より中程度の濃度、例えば、0.15〜0.32MのNaClを有する約0.15Mないし約0.5Mのより生理学的な濃度が好まれる。本発明の別の実施形態において、HPVワクチン製剤は塩を含まない。
【0041】
本発明のワクチン組成物のpHは、前述の任意の実施形態または以下に述べる実施形態に記載の通り、好ましくは約5.5ないし約7.5の範囲にある。本発明の特定の実施形態において、組成物のpHは、約5.5、約5.75、約6.0、約6.1、約6.2、約6.25、約6.3、約6.4、約6.5、約6.75、約7.0、約7.25または約7.5である。追加の実施形態において、pHは、約5.5ないし約7.0、約5.5ないし約6.5、約6.0ないし約7.5、約6.0ないし約7.0、約6.5ないし約7.0、約6.0ないし約6.5、約6.0ないし約6.9、約6.2ないし約6.75または約6.0ないし約6.75である。
【0042】
場合によっては、同一のバイアル中にワクチンの2用量以上を含む多用量HPVワクチン製剤を提供することが望ましいかもしれない。もしも多用量製剤が望まれるならば、細菌や糸状菌等の微生物を殺菌しまたはその増殖を防止するために抗菌防腐剤が使用されるべきである。抗菌防腐剤を含む多用量ワクチン製剤は、最初の採取が不注意に微生物汚染を誘発したという懸念を抱かずにワクチンの複数回の容量をバイアルから採取することを可能とすることを含む、単回容量製剤に優るいくつかの利点を提供する(Meyerら,J.Pharm.Sci.96(12):3155−3167(2007))。本発明のHPVワクチン製剤における使用に対する好ましい抗菌防腐剤には、m−クレゾール、フェノールおよびベンジルアルコールから成る群より選択される抗菌防腐剤が含まれる(Bryanら,米国特許第7,709,010を参照されたい)。
【0043】
本発明の製剤は、好ましくは室温以下の温度で少なくとも1か月間安定である。製剤の安定性は、凍結または凍結乾燥の前後および/または保存状態後のAPI(活性医薬成分)の生物物理学的特性(例えば、凝集は、動的光散乱(DLS)を使用する粒子測定法を使用して)および結合親和性(例えば、Biacoreを使用する力価アッセイ)を測定するために使用される種々の方法によって試験される。本発明のいくつかの実施形態において、凍結乾燥または凍結‐融解プロセスのストレスの後、製剤は室温または室温以下(例えば、20〜25℃)で1か月、3か月、6か月または6か月を超えて安定である。さらなる実施形態において、製剤は室温より低い温度(例えば、−70℃または2〜8℃)に保存されたとき、6か月間、6か月を超えてまたは1年を超えて安定である。さらに他の実施形態において、凍結乾燥または凍結‐融解プロセスのストレス後に、37℃で1か月または3か月を超えて安定である。好ましい実施形態において、本発明の製剤はワクチンバイアルモニター(VVM)カテゴリーにおけるVVM30である(即ち、25℃において193日間または37℃において30日間安定である)。VVMシステムに関する解説書を参照されたい。
【0044】
本明細書で、本発明の製剤におけるマンニトールとショ糖の組み合せが、HPV VLPワクチン組成物に凍結乾燥または凍結‐融解手順の後に、−70℃または2〜8℃で6か月以上の安定性を維持することを可能にすることが示される。また、マンニトールとショ糖の組み合せを含む本発明の製剤が、凍結乾燥後、25℃で>6か月または37℃で>3か月の間、その力価を保持することも示される。
【0045】
本発明の製剤は、限定されるものではないが、アジュバント(API(HPV VLP)に対する患者の免疫系の免疫応答を増強するために添加され得る)、
緩衝剤、安定剤、可溶化剤、浸透張力調節剤、キレート剤、デキストラン、デキストラン硫酸、デキストランT40、ジエタノールアミン、グアニジン、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、アルブミン、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、脂質およびヘパリンを含む、追加の成分および薬学的に許容可能な担体を更に含んでもよい。当業者は、どの追加の賦形剤が所望のワクチン製剤において含まれるべきか、製剤におけるその機能、ならびに計画された投与方式、投与量および製剤の所期の保存期間および温度等の他の要因に依存して、容易に決定することができる。当業者は、追加の賦形剤の量が変動し得ることを認知しており、ヒトまたは動物への投与に対して安全でもありかつ所望の機能に関して効果的でもある、適切な量を容易に決定することが可能である。
【0046】
HPVウイルス様粒子
80を超えるHPVの型が現在まで同定され、その多くは良性増殖性疣贅ないし子宮頚部の悪性癌に及ぶ病理と関連づけられている(総説として、McMurrayら,Int.J.Exp.Pathol.82(1):15−33(2001)を参照されたい)。HPV6型およびHPV11型は「低リスク群」と呼ばれ、
良性疣贅、非悪性尖圭コンジローマおよび/または性器粘膜または呼吸器粘膜の低悪性度変異形成に最も一般的に関連しているHPV型である。性器疣贅の約90%は、この2のHPV型によって引き起こされる。対照的に、HPV16およびHPV18は、子宮頚部、膣、外陰および肛門管の発生部位内癌および浸潤性癌と最も頻繁に関連しているので、「高リスク群」HPV型と呼ばれる。子宮頸癌の70%以上は、HPV16およびHPV18の感染により引き起こされる。余り広まっていない発癌型HPV31、33、45、52および58と合わせるとこれらの型は、子宮頸癌の90%以上の原因となる(Schiffmanら,J.Natl.Cancer Inst.85(12):958−64(1993))。
【0047】
パピローマウイルスは、8個までの初期遺伝子(E1〜E7)および2個の後期遺伝子(L1〜L2)をコードする小型(50〜60nm)、非外包性、正二十面体のDNAウイルスである。L1タンパク質は主要カプシドタンパク質であり、55〜60kDaの分子量を有する。酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞または細菌におけるL1タンパク質またはL1およびL2タンパク質の組合せの発現は、ウイルス様粒子(VLP)の自己集合をもたらす(総説としては、SchillerおよびRodenの,Papillomavirus Reviews:Current Research on Papillomaviruses;Lacey編,Leeds,UK:Leeds Medical Information,pp101−12(1996)を参照されたい)。VLPは形態学的に真正ビリオンに類似しており、動物またはヒトに投与されると中和抗体の高力価を誘導しうる。VLPは潜在的発癌性ウイルスゲノムを含有しないので、それらは、HPVワクチン開発における生きたウイルスの使用に代わる安全な代替法を提供する(総説としては、SchillerおよびHidesheim,J.Clin.Virol.19:67−74(2000)を参照されたい)。この理由により、L1およびL2遺伝子は、HPV感染および疾病に対する予防用および治療用ワクチンの開発のための免疫学的標的として確認されてきた。
【0048】
従って本発明のワクチン組成物は、少なくとも1のHPV型の組換えL1または組換えL1+L2タンパク質から構成されたHPV VLPを含む。HPV L1またはHPV L1+L2タンパク質は、適したプロモーターおよび他の適切な転写制御因子を含有する発現ベクターへのL1またはL1+L2 DNAの分子クローニングによって組換え的に発現されることが可能であり、組換えタンパク質を産生するために原核または真核宿主細胞内に導入される。そのような操作のための技術は、Sambrookら(「Molecular Cloning:A Laboratory Mannual」Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,(1989))によって十分に記載されており、これを参照して本明細書で援用する。L1タンパク質が宿主細胞内において組換え的に発現されるときに、VLPは自己集合し得る。
【0049】
本発明の組換えHPV L1タンパク質は、自然界に見出され得る任意の完全長L1タンパク質配列、またはVLPへ自己集合し得る任意の変異型または切断型L1タンパク質であってよい。本発明において使用するためのL1タンパク質配列は、選択されたHPV型を含有する1または複数の臨床サンプルからDNAを単離し、HPV L1 DNA配列の配列を決定し、遺伝暗号を用いてDNA配列をアミノ酸配列に翻訳することにより決定され得る。本発明における使用に適した多数の代表的なL1配列が文献中に見出され得る。例えば、米国特許第5,820,870号、7,250,170号、7,276,243号および5,437,951号;Kiriiら(Virology 185(1):424−427(1991))を参照されたい。さらに、本発明の組成物および製剤において有用であるL1タンパク質には、必ずしも限定されるものものではないが、これらの変異がVLPを形成可能なL1タンパク質またはタンパク質フラグメントを提供するところの、アミノ酸の置換、欠失、付加、アミノ末端切断およびカルボキシ末端切断を含む生物学的活性フラグメントおよび/またはHPV L1配列の変異型が含まれる。例えば、国際公開WO 2006/114312および米国特許第6,599,508号を参照されたい。
【0050】
組換えHPV L1または組換えL1+L2の発現、およびそれに続くVLPの自己集合のための適切な宿主細胞には、これに限定されるものではないが、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞または細菌が含まれる。本発明の代表的な実施形態において、VLPは、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クリベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からなる群より選択される1の酵母の酵母細胞において産生される。酵母細胞におけるHPV VLPの発現は、費用効果的であり発酵における大規模増殖に容易に適合化されるという利点を提供する。
【0051】
本発明にはまた、例えば、必ずしもこれに限定されるものではないが、当該変異がタンパク質またはタンパク質フラグメントに対し治療または予防の利用を提供し、HPV VLPワクチン開発にとって有用であるような、アミノ酸置換、欠失、付加、アミノ末端切断およびカルボキシ末端切断を含む、生物学的に活性なフラグメントおよび/またはHPV L1またはL2タンパク質の変異体を含むHPV VLP等のHPV VLPの変異形を含む製剤も含有される。HPV L1タンパク質のいずれの当該変異形もVLPを形成し、ヒト患者に投与されたときに所望のHPV型に対する免疫応答を惹起する能力があるべきである。
【0052】
加えて、当業者は、本明細書に記載の製剤に包含させるのにVLPを自己集合させるために使用される、L1またはL1+L2タンパク質が、完全長の野生型HPV L1またはL2ポリペプチドによってコードされ得る、または既知の野生型配列のフラグメントまたは変異体によってコードされうることを認識するであろう。HPV L1またはL2タンパク質を発現するmRNAをコードする野生型のポリヌクレオチド配列は、当技術分野において入手可能である。いずれの変異体のポリヌクレオチドも、ヒトに投与されたときに対象のHPV型に対する免疫応答を惹起し得るVLPを形成する能力を含む、HPV L1またはL2タンパク質の薬学的な特性を少なくとも実質的に模倣するタンパク質またはタンパク質断片のいずれかをコードする。いずれの当該ポリヌクレオチドも、必ずしもこれに限定されるものではないが、ヌクレオチドの置換、欠失、付加、アミノ末端切断およびカルボキシ末端切断を含む。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1のHPV型のVLPには、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選択されるHPV型が含まれる。しかし、病態または障害に関連するいずれのHPV型も、本明細書で提供する製剤に包含させるのに適している。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、例えば、HPV16、18、31、45型等のただ一つのHPV型、または上記の任意のHPV型、または病態に関連する任意の他のHPV型のVLPを含む1価ワクチン製剤である。別の実施形態において、製剤は2価であり、例えば、16および18型のHPV VLPを含む製剤である。別の実施形態において、製剤は3価、4価、5価、6価、7価、8価、9価または10価である。いくつかの好ましい実施形態において、製剤は4価であり、例えば、HPV6、11、16および18型のVLPを含む製剤である。別の好ましい実施形態において、製剤は、HPV6、11、16、18、31、33、45、52および58型のVLPを含む。
【0054】
本発明の製剤に包含させる各HPV型のウイルス様粒子の量は、治療的に有効な量であり、発現される遺伝子産物の免疫原性に依存する。一般に、免疫学的または予防的に有効な用量には、VLPの約10μgないし約100μg、好ましくは、約20μgないし80μgが含まれる。
【0055】
本発明の製剤中に包含させるHPV VLPの濃度は、様々であるが、しかし一般に、製剤に含まれる各HPV VLP型に対し約20μg/mLないし約200μg/mLの濃度が好まれる。より好ましくは、HPV VLPの濃度は、製剤における各HPV型に対し約40μg/mLないし約160μg/mLである。
【0056】
アルミニウム塩アジュバント
上述の通り、アルミニウムは、共投与された抗原に対する免疫応答を刺激することが昔から示されてきた。本発明のワクチン製剤は、アルミニウムアジュバントに吸着される。本明細書で提供する組成物のアルミニウムアジュバントは、アルミニウム沈降物の形態ではないことが好ましい。アルミニウム沈降ワクチンは、標的抗原に対する免疫応答を増強するが、しかし非常に不均一な製剤であることが示されており、一貫した結果が観察されなかった(Lindblad E.B.Immunology and Cell Biology 82:497−505(2004)を参照されたい)。対照的に、アルミニウム吸着ワクチンは、標準化された方法で予備調製されることが可能であり、これは、ヒトへの投与にとってワクチン製剤の必須の特性である。さらに、アルミニウムアジュバント上への所望の抗原の物理的吸着は、おそらく一つには注射部位からのより遅い消失を可能にすることによりまたは抗原提示細胞による抗原のより効率的な取り込みを可能にすることにより、アジュバント機能において重要な役割を担うと考えられている。
【0057】
本発明のアルミニウムアジュバントは、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、リン酸アルミニウム(AlPO
4)、アルミニウムヒドロキシホスファート、アモルファスアルミニウムヒドロキシホスファートスルファート(AAHS)、またはいわゆる「ミョウバン」(KAl(SO
4)・12H
2O)の形態でありうる(Kleinら,Analysis of aluminum hydroxyphosphate vaccine adjuvants by(27)Al MAS NMR.,J.Pharm.Sci.89(3):311−21(2000)を参照されたい)。本明細書で提供する本発明の代表的な実施形態において、アルミニウムアジュバントはアルミニウムヒドロキシホスファートまたはAAHSである。これらの実施形態において、アルミニウムアジュバントは、アルミニウム(Al)に対するホスファート(PO
4)の約0.1ないし約1.3のモル比でホスファートおよびアルミニウムを含むのが好ましい。本発明のこの態様の好ましい別の実施形態において、アルミニウムに対するホスファートの比は、0.1ないし0.70の範囲内である。アルミニウムアジュバントは、約0.2ないし約0.5(PO
4/Al)のモル比で存在するホスファートとアルミニウムを含むのがより好ましい。本発明のこの態様の別の実施形態において、アルミニウムアジュバントは水酸化アルミニウムである。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、アルミニウムアジュバントは、AAHS(本明細書において同じ意味でMerckアルミニウムアジュバント(MAA)とも呼ばれる。)の形態である。MAAは中性pHにおいて電荷を帯びず、一方、Al(OH)
3は正の正味電荷を帯び、AlPO
4は典型的には中性pHにおいて負の正味電荷を帯びている。MAAは、AlOHよりも高いHPV VLPへの結合能を有する。加えて、MAAに吸着されたVLPは、Al(OH)
3に吸着されたVLPより大きな体液性免疫応答をマウスにおいて誘導しうる。Caulfieldら,Human Vaccines 3:139−146(2007)。理論に束縛されるものではないが、アルミニウムアジュバントの正味電荷は、VLP抗原へのその結合能に影響を及ぼしうる可能性があり、強く荷電したアジュバントは、中性荷電アジュバントと同じくらい強く抗原に結合することはできない。この理由により、本発明の医薬組成物のアルミニウムアジュバントは、中性pHにおいてゼロ表面電荷点を有することが好ましい。当業者は、中性pHにおけるゼロ表面電荷点を可能にするために緩衝液、塩濃度および/または遊離ホスファートの比率を変更しうるであろう。
【0059】
当業者は、対象のHPV型に対する免疫応答を増強する上で安全かつ有効である、アルミニウムアジュバントの最適投与量を決定しうるであろう。FDA認可ワクチンに含有されるアルミニウムの安全性プロファイル、ならびにアルミニウムの量に関する考察については、Baylorら,Vaccine 20:S18−S23(2002)を参照されたい。一般に、アルミニウムアジュバントの有効かつ安全な用量は、150ないし600μg/用量(300ないし1200μg/mLの濃度)と変動する。本発明の製剤および組成物の特定の実施形態において、ワクチンの用量当たり200ないし300μgの間のアルミニウムアジュバントが存在する。本発明の製剤および組成物の別の実施形態において、ワクチンの用量当たり300ないし500μgの間のアルミニウムアジュバントが存在する。
【0060】
作製法
本発明の他の態様において、凍結乾燥プロセスにより引き起こされたストレスに耐性のある凍結乾燥HPVワクチン製剤を作成するための方法が提供され、ここで該HPVワクチン製剤は、液体製剤の物理的および/または免疫学的特性を保持することが可能である。従って、本発明は、(a)(i)アルミニウム塩アジュバント上に吸着された少なくとも1のHPV型のHPV VLP(ここで少なくとも1のHPV型のHPV VLPは、10〜200μg/mlの濃度で存在し、該VLPはHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82から成る群より選ばれている)、(ii)約1%ないし約10%w/vマンニトール、ならびに(iii)約0.5%ないし約10%ショ糖を含む液体HPVワクチン製剤を処方すること、(b)凍結製剤を産生するために液体製剤を凍結すること、ならびに(c)凍結乾燥HPVワクチン製剤を提供するために凍結製剤を乾燥することを含む安定な凍結乾燥HPVワクチン製剤を作成する方法を提供する。本発明のこの態様の好ましい実施形態において、マンニトールは約4%ないし約7%w/vの範囲の濃度で存在し、ショ糖は約1%ないし約5%w/vの濃度で存在する。あるいは、本明細書に記載のHPVワクチン製剤のいずれも、上述の方法において使用し得る。
【0061】
本発明のこの態様のさらなる実施形態において、液体HPVワクチン製剤は、約10mMヒスチジン、約0.30Mないし約0.35M NaClおよび/または0.01%PS80をさらに含む。別の実施形態において、該方法は、(a)本発明の第一の態様のいずれかの実施形態において定義された通りの液体HPVワクチン製剤を処方すること、(b)凍結HPVワクチン製剤を産生するために該液体製剤を凍結すること、ならびに(c)凍結乾燥(llyophilized or freeze−dried)ワクチン製剤を提供するために該製剤を乾燥することを含む。
【0062】
製剤の凍結乾燥(lyophilizing)(「free−drying」としても知られる)プロセスは二つの段階、即ち(1)凍結および(2)乾燥を含む。本明細書に開示される方法の凍結ステップは、凍結乾燥プロセスの第一のステップであるが、アモルファスな産物に対してはTg‘(ガラス転位温度)より低い温度でまたは結晶状態の産物に対してはTeu(共晶溶融温度)より低い温度で、液体製剤の固体への変換に十分な時間だけ実施される。液体製剤を固体に変換するのに要する時間は、一部は製剤を凍結乾燥するために使用される容器における総充填量に依存する。多量の充填量が使用されるとき、液体製剤を固体に変換するために要する時間は、同等の製剤に対して比較的に少量の充填量が使用されるときよりも長いであろう。
【0063】
凍結ステップの最後に、液体製剤に存在する水は氷に変換されて、典型的には水の20%(w/w)未満が液体として存在する。加えて冷却速度は、氷晶の大きさおよびケーキの構造を決定する。緩慢凍結は、例えば、通常大きな氷晶を有する多孔質なケーキの形成をもたらす。当業者は、本発明の方法を実施するための適切な凍結温度を容易に決定し得る。
【0064】
凍結乾燥プロセスの第二のステップは乾燥からなる。乾燥ステップは、個々の製剤、棚温度、容器施栓およびチャンバー圧力に基づいて最適化し得る。凍結乾燥プロセスに追加のステップを組み入れるのは有利かもしれず、例えば、本発明の凍結乾燥HPVワクチン製剤を作成するために、予備凍結ステップ、追加の乾燥ステップまたは徐冷(アニーリング)ステップが凍結乾燥サイクルに追加されてもよい。当業者は、本発明の個々の製剤に対し既知の手順に従って凍結乾燥サイクルを最適化し得る(例えば、WO 2011/017070を参照されたい。)。
【0065】
本発明のこの態様の他の実施形態において、プロセスには、再構成液体製剤を提供するためにワクチン製剤が希釈剤により再構成されるステップがさらに含まれる。本発明の凍結乾燥製剤を再構成するために有用な希釈剤には、安全で安定かつ薬学的に許容可能な担体である任意の液体が含まれる。本発明のいくつかの実施形態において、製剤はSWFI(注射用滅菌水)および/またはBWFI(注射用静菌水)により再構成される。安定剤、可溶化剤、例えばNaCl、MgCl
2またはCaCl
2等の浸透張力調節剤およびその混合物を含有するSWFIは、本明細書記載の方法においても有用である。
【0066】
本発明の他の態様において、凍結および融解によって引き起こされるストレスに耐性である凍結HPVワクチン製剤を作成するための方法が提供され、ここで該HPVワクチン製剤は、液体製剤の物理的および/または免疫学的特性を保持することが可能である。従って、本発明は、(a)(i)アルミニウム塩アジュバント上に吸着した少なくとも1のHPV型のHPV VLP(ここで少なくとも1のHPV型のVLPは、10〜200μg/mlの濃度で存在し、VLPは、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82からなる群より選ばれている)、(ii)約1%ないし約10%w/vマンニトール、および(iii)約0.5%ないし約10%ショ糖を含む液体HPVワクチン製剤を処方すること、ならびに(b)凍結製剤を産生するために液体製剤を凍結することを含む安定な凍結HPVワクチン製剤を作成する方法を提供する。本発明のこの態様の好ましい実施態様において、マンニトールは、約4%ないし約7%w/vの範囲の濃度で存在し、ショ糖は、約1%ないし約5%w/vの濃度で存在する。別の好ましい実施形態において、マンニトールは、約5%ないし約6%w/vの範囲で存在し、ショ糖は、約2%ないし約4%w/vの濃度で存在する。あるいは、本明細書記載のHPVワクチン製剤のいずれも上述の方法において使用され得る。
【0067】
本発明のこの態様のさらなる実施形態において、液体HPVワクチン製剤は、約10mMヒスチジン、約50mMないし約350mM NaClおよび/または0.01%PS80をさらに含む。別の実施形態において、該方法は、(a)本発明の第一の態様の任意の実施形態において定義された液体HPVワクチン製剤を処方すること、および(b)凍結HPVワクチン製剤を産生するために液体製剤を凍結することを含む。
【0068】
使用方法
本発明は、また本明細書に開示するHPVを含むワクチン組成物の投与によって、ヒト患者の感染の可能性を防止または低減する方法も提供する。
【0069】
本明細書で提供する特定の実施形態において、患者に投与される医薬組成物は、HPV6、11、16および18型のVLPを含む。追加の実施形態において、組成物はHPV31、33、45、52および58型のVLPをさらに含む。他の実施形態において、該組成物は、HPV16型のHPV VLPを含み、しかも、HPV6、HPV11、HPV18、HPV26、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV53、HPV55、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68、HPV73およびHPV82からなる群より選択される少なくとも1の追加のHPV型のVLPをさらに含む。
【0070】
本発明のワクチン組成物は、最小限の潜在毒性を伴ってHPV感染の最適な阻害を可能とする適切な投与量で単独で使用し得る。加えて、他の薬剤の共投与または逐次投与も望ましい。
【0071】
本発明の製剤および組成物は、筋肉内注射、皮下注射、皮内導入または皮膚を通した圧入によって患者に投与し得る。他の投与方法、例えば、腹腔内、静脈内または吸入送達等もまた考慮される。本発明の好ましい実施形態において、ワクチンおよび医薬組成物は筋肉内投与によって投与される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に開示のHPV医薬組成物および製剤は、増強された持続的な免疫応答を誘導するために種々の初回免疫/追加免疫の組み合せで患者に投与される。この場合、2の医薬組成物が「初回免疫および追加免疫」投薬計画において投与される。例えば、第一の組成物が1回または複数回投与され、次に予め設定された時間、例えば、2週間、1か月、2か月、6か月または他の適切な間隔の後に、第二の組成物が1回または複数回投与される。
【0073】
好ましくは、臨床投与計画において使用される2以上のHPV医薬組成物は、同一のHPV型のVLPまたはHPV型の組み合わせのVLPを含む。しかしながら、2のワクチン投与を分離する適切な時間の間隔を伴って、2の異なるHPV医薬組成物が患者に投与される臨床投与計画に従うのも望ましい。例えば、HPV16型および18型のVLPを含むワクチン組成物は、適切なある時点で投与され得て、予め設定された時間が経過した後に、適切な第二の時点でHPV31型、33型、45型、52型および58型のVLPを含むHPVワクチン組成物によって引き続いて投与され得る。このような場合、2の異なるHPVワクチン組成物の各々は、患者に対し1回、または適切な時間を隔てて2回以上投与され得る。
【0074】
本明細書で言及する全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る方法および材料を記載し開示する目的で参照して援用される。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のために当該開示に先行する権利を有さないということを承認するものと解釈されてはならない。
【0075】
添付の図を参照して発明の好ましい実施形態を記載したが、本発明はこれらの実施形態そのものに限定されないこと、および種々の変更や改変が、添付の特許請求の範囲で定義された発明の範囲と趣旨から逸脱することなく当業者によって行うことができることを了解されたい。
【0076】
以下の実施例は、本発明を説明するが限定するものではない。
【実施例1】
【0077】
材料と方法
(a)試料の調製:ガーダシル(GARDASIL(登録商標))(Merck and Co.Inc.,Whitehouse Station,NJ)として知られるヒトパピローマウイルス4価(6型、11型、16型、18型)組換えワクチンを、本明細書記載の研究において代表的なワクチンとして使用した。ガーダシル(登録商標)は、HPV6、11、16および18型の主カプシド(L1)タンパク質の高度に精製されたウイルス様粒子(VLP)から調製された非感染性の組換え4価ワクチンである。この研究で使用されたガーダシル(登録商標)試料(本明細書で「HPV4価ワクチン(HPV4−valent vaccine)」または「HPV4価ワクチン(HPV quadrivalent vaccine)」と表す)は、既述の通り(Lowe,R.S.ら,J.Infect.Dis.176:1141−45(1997);Cook,J.C.ら,Protein Expres Purif.17:477−84(1999))製造された最終容器ロットから構成した。即ち、型特異的HPV L1タンパク質は、組換えサッカロミセス・セレビシエにおいて別々の発酵によって産生され、VLPへと自己集合させた。VLPは、一連の化学的および物理的方法によって精製した。精製した水性VLPの各々は、予備形成されたMerckのアルミニウムヒドロキシホスファートスルファートアジュバント(MAA)上に個別に吸着した。1価ワクチン成分は、10mMヒスチジン、0.01%ポリソルベート80および0.33M塩化ナトリウム中で処方された。4の個々の1価(アジュバント吸着)ワクチンは、ガーダシルの4価の用量を形成するために、HPV6、11、16および18型のそれぞれに対し40、80、80および40μg/mlのタンパク質濃度で混合した。
【0078】
長期安定性の研究のために、HPV試料は上記の通り調製した。加えて、抗原を有さない1X MAAを含む試料を調製した。2X MAA試料を調製するために、緩衝塩類溶液(6.1mMリン酸ナトリウムおよび120mM塩化ナトリウム)および5.44%硫酸アルミニウムカリウム溶液をタンク中で組み合わせた。アジュバントを沈殿させ2〜8℃において目標のpH7.7〜7.8に調整するために、タンクに1.0N 水酸化ナトリウムを添加した。pHを調整した溶液は、表示分画分子量(MWCO)200,000の膜を通す再循環によって3倍に濃縮し、その後カリウムおよびスルファートイオンの含量を低減するために、目標の生理的食塩水(0.9% 塩化ナトリウム)の2.1容量に対して透析濾過した。透析濾過後に、アジュバントは、生理的食塩水および1.4% ホウ酸溶液により目標の900μg/mL(2X MAA)のアルミニウム濃度に希釈した。2X MAAは、この研究において使用される1X MAAを調製するために生理的食塩水(0.9% 塩化ナトリウム)により1:1でさらに希釈した。
【0079】
(b)緩衝液組成。MAAに結合した四価のHPV型を含有するHPVワクチン製剤は、沈降/デカントプロセスを使用して18の緩衝液により緩衝液交換した。全ての緩衝液は、
図1に示す通り、異なる賦形剤組成を含む10mMヒスチジン、0.01%ポリソルベート80(pH6.2)の基礎製剤を有した。
【0080】
緩衝液の識別番号と共に、この研究で使用される緩衝液の簡単な説明を以下に示す(表1)。
【表1】
【0081】
長期安定性の研究のために、MAAおよび1X MAAアジュバントのみに結合した4価HPV型を含有するHPVワクチン製剤は、上記緩衝液の5個により緩衝液交換された。(0または320mM NaClを含む緩衝液‐Bから緩衝液‐Dまで(即ち、緩衝液B‐14、B‐3、B‐15、B‐4およびB‐16)。緩衝液B‐2は、長期安定性研究において試験しなかった)。
【0082】
(c)凍結融解の研究:緩衝液B‐1ないしB‐18(参照、表1)を含むHPVワクチン製剤は、液体窒素吹付を使用する−115℃で15分間の急速瞬間凍結(FF)かまたは−70℃で1時間の通常の凍結を実施した。瞬間凍結は1回(1X)(1X FF)繰り返し、通常凍結は1回(1X)および3回(3X)繰り返した。試験製剤は、0.6mlの充填量で3mLのガラス製バイアルに充填した。凍結ワクチン試料は、雰囲気温度において1時間で融解した。凍結融解サイクル後に、試料の効力を分析し、他の特性アッセイを実施した。
【0083】
長期安定性研究のために、上記のHPVワクチン製剤および1X MAA製剤は、−70℃で通常凍結し、凍結製剤は−70℃で約24時間保存した。試験製剤は、0.6mlの充填量で3mLのガラス製バイアルに充填した。凍結ワクチン試料は、雰囲気温度において1時間で融解した。凍結融解サイクル後にバイアルは、長期安定性研究を受ける前に2〜8℃において1か月間放置した。いくつかの時点において、HPV製剤および1X MAA製剤の双方について試料の効力を分析し、他の特性アッセイを実施した。
【0084】
(d)凍結乾燥の研究:緩衝液B‐1ないしB‐18(参照、表1)を含むHPV製剤は、液体窒素の吹付を使用する−115℃で15分間の急速瞬間凍結(FF)かまたは予備冷却凍結乾燥用棚を使用する急速瞬間凍結による凍結処理を伴う凍結乾燥を受けた。ワクチン試料は、0.6mlの充填量で3mLのガラス製バイアルに保持した。凍結ワクチン試料は、標準的な凍結乾燥プロセスパラメータを使用して凍結乾燥を実施した。即ち、試料を凍結乾燥器内で−50℃に予備冷却した棚上に載せ、棚を−50℃で1時間保持した。その後、−20℃で2時間徐冷(アニール)処理を実施した(0.5℃/分の温度勾配)。その後、棚を−50℃に再冷却し(0.5℃/分の温度勾配)、2.5時間保持した。第一の乾燥は、100ミリトル(mTorr)の圧力下で48時間、毎分1℃の割合で棚を−20℃まで加熱することによって行った。第二の乾燥は、10℃の温度で4時間、0.5℃/分の割合で実施した。凍結乾燥後、バイアルを窒素ガスで充填し、部分真空下で栓をし、取出した。凍結乾燥ワクチン試料は、さらなる分析のために凍結して保存した。
【0085】
長期安定性の研究のために、HPVワクチン製剤および1X MAA製剤は、予備冷却凍結乾燥棚を使用する凍結処理を伴う凍結乾燥を受けた。ワクチン試料は、上記の通り充填した。凍結ワクチン試料は、上記の標準的な凍結乾燥プロセスパラメータを使用して凍結乾燥した。凍結乾燥ワクチンバイアルは、長期安定性の研究を受けるまで凍結して保存した。
【0086】
(e)加速安定性の研究:安定性の研究は、緩衝液B‐1ないしB‐18(参照、表1)を含む全ての4価HPVワクチン製剤に対して加速温度条件下で実施した。種々の製剤緩衝液中の凍結乾燥4価HPVの試験試料は、それぞれの凍結乾燥していない液体4価HPV製剤と共に、45℃で1か月間の加速温度条件に放置した。この温度は、HPV VLPの不活化速度が非常に温度に敏感であるので選択した。試料は、認証された安定性試験チャンバーに保存した。安定性試験の最後に、試料の外観を分析し、次に再構成後に効力および他の特性研究について評価しした。
【0087】
(f)インビトロ抗原性アッセイ。アルミニウムアジュバントからHPVを遊離するために、クエン酸およびポリソルベート80を含有する高濃度塩溶液へのHPVアルミニウム製剤の希釈を含むアルミニウム溶解法を開発した。アルミニウム溶解法の後に、HPV VLP試料は、表面プラズモン共鳴測定装置を使用するインビトロ抗原性アッセイを直接受けた。
【0088】
HPV VLPのインビトロ抗原性は、HPV特異的中和抗体に対するVLPの親和性をBiacore(登録商標)2000または3000測定装置(GE Healthcare Biosciences AB,Piscataway,NJ)で表面プラズモン共鳴法を使用して測定することによって決定した。抗HPV抗体は、BiacoreセンサーチップCM5の表面に化学的にカップルしたラット−マウス抗体Fcγに結合することによって固定化した。流動相におけるセンサーチップ表面上の抗体とHPV VLP抗原の相互作用は、抗原に対する抗体の結合によって誘導されるセンサーチップの屈折率変化に基づいて記録される。アルミニウムアジュバント化製剤の研究からのHPV VLP試料は、インビトロ抗原性を決定するために、同じHPV VLPの新たに融解した凍結保存溶液(標準試料)と直接比較した。
【0089】
(g)動的光散乱法(DLS)。粒度の測定は、雰囲気温度でDynaPro(登録商標)動的光散乱測定装置(Wyatt Technology Corp.,Santa Barbara,CA)を使用して行った。測定装置は、ポリマーラテックスのサイズ標準物質を使用して較正した。上記のアルミニウム溶解法を使用して得られたHPV VLP試料は、DLS測定を直接実施した。溶液中のVLPのブラウン運動による散乱強度の変動に対する自己相関関数の累積解析が、平均拡散係数を与えた(Koppel,D.E.J.Chem.Phys.37:4814−20(1972))。Z平均液体力学的径の値は、ストークス・アインシュタインの式を使用して平均拡散係数に基づき得られた。抗原粒子の見かけの流体力学サイズは、Z平均流体力学径(D
h)として記録した。本明細書に報告した全てのデータは、同一試料の5の測定値の平均である。
【0090】
(h)静的光散乱法(SLS)。粒度の測定は、雰囲気温度でMalvern(登録商標)Mastersizer2000静的光散乱測定装置(Malvern Instruments;Worcestershire,United Kingdom)を使用して行った。粒子サイズを測定するためにレーザー回折法を使用した。測定装置は、ポリマーラテックスのサイズ標準物質を使用して較正した。1X MAA試料は、水で希釈しその後にSLS測定を実施した。ミクロン(μm)での粒子サイズ(0.5)を、散乱方向のファクターとして平均強度分布を回収して、種々の試験条件(それぞれの対照とともにF/T FF 1XおよびLYO)の関数としてプロットした
(i)浸透圧測定。この研究のためにAdvanced(登録商標)Model 3300 Micro−Osmometer(Advanced Instruments Inc.,Norwood,MA)を使用した。本装置は、氷点効果によって試料の浸透圧を測定するために試料20μlを使用する。試料の過冷却は、定位置にある装置のサーミスタプローブへ、試料を含有する特別に設計したディスポーザブルなホルダーを挿入することによって開始した。ソレノイド誘導パルスおよび続いて起こる試料の凍結後に、解放された融解熱がマイクロプロセッサーによって試料の氷点と関連づけられ、浸透圧がデジタル表示装置に示される。測定装置の較正は、2の較正レベル(50および850 mOsm/kg)の各々において2〜5の試料を実行することによって実施した。内部較正は、許容可能な再現性が確立した後に、測定装置によって自動的に実施された。測定装置の較正後に、Advanced Instrumentsにより供給された標準試料Clinitrol(登録商標)290(290 mOsm/kg)を測定した。HPV製剤の試料は、標準試料の後に測定した。
【0091】
(j)乾燥ケーキの外観:製品開発努力の間の所望の医薬エレガンスの促進には、一般的に許容可能な製品外観標準の範囲を確立することが含まれる。乾燥ケーキの性状を評価することには、色調、密度、均一性および収縮、崩壊またはメルトバックの形跡等の物理的性状の記載が必要となる。凍結乾燥HPVワクチン製剤の外観は、以下に特定する通りの品質性状に基づいて主観的に評価した(表2)。
【表2】
【0092】
(k)再構成時間。再構成速度は、製剤に依存する製品特性である。乾燥HPVワクチン製剤の再構成時間は、注射用滅菌水の添加の際の均一な懸濁液の存在によって示される、凍結乾燥ケーキの完全な溶解に必要な時間を測定して決定した。凍結乾燥HPVワクチン製剤の各々に、製剤の賦形剤濃度に基づいて、滅菌WFI(注射用水)の約0.5ないし0.6mlを添加した。HPV VLPの所望の濃度を維持するために、再構成後の製剤の終容量は、ほぼ0.6mlに保持した。
【0093】
(l)振盪試験。ワクチン製剤がコールドチェーン行程の間に凍結したかどうかを判定するために、アルミニウム吸着ワクチンに関して振盪試験を実施した。ワクチン製剤の凍結は、ミョウバンの構造を不可逆的に変えて、ワクチンの抗原性を著しく低下させる。ミョウバンに基づくワクチンの凍結は、格子構造の破壊をもたらし、結果としてミョウバン内容物の凝集およびより速い沈降を生じる。沈降のより速い速度は、試験および対照バイアル中の沈降速度を比較しようとする陽性の振盪試験の基礎を形成する。もしも以前に凍結または凍結乾燥されたことが知られた試験バイアルが、以前に凍結または凍結乾燥されなかった対照バイアルのそれと類似の沈降速度を示せば、ワクチンの効力が確認される。もしも対照バイアルに比べて、より速い臨港速度が試験バイアルに対して観察されるならば、該ワクチンは凝集ミョウバンが存在するために使用には安全でないと考えられる。
【0094】
沈降速度を測定するために、試験バイアルおよび対照バイアルを混合してワクチン製剤の均一な懸濁液を得た。混合後、バイアルを放置し、沈降時間を測定した。もしワクチンが均一に混合されなかったならば、または沈殿物/綿状沈殿物がより速い速度で底に定着したならば、試験バイアルが凍結/凍結乾燥され、それによりミョウバン構造が損傷して、その損傷の結果大きな凝集ミョウバン粒子が形成し得たと結論することができる。凍結‐融解または凍結乾燥および再構成された全てのHPVワクチン製剤は、その品質を評価するために振盪試験によって分析した。
【実施例2】
【0095】
インビトロ抗原性
HPV VLPを含む4価HPVワクチン製剤のインビトロ抗原性は、中和抗体結合アッセイ法(表面プラズモン共鳴法、Biacore)を使用して評価した。抗原の生物活性の分析は、Biacore2000およびBiacore3000測定装置を使用して測定した(GE Healthcare Biosciences AB,Piscataway,NJ)。Biacoreは、凍結‐融解かまたは凍結乾燥された4価HPVワクチンの試験製剤に対して実施した。凍結乾燥4価HPV製剤は、実施例1に記載の通りアルミニウム溶解に先立って注射用滅菌水で再構成した。HPV6、11、16および18型VLPを含む全ての試験製剤は、溶解緩衝液により希釈し緩衝液B‐1ないしB‐18に懸濁した。
【0096】
各4価HPVワクチン製剤におけるHPV VLP抗原の全4型は、Biacore分析によってインビトロ抗原性を分析した。利用したBiacoreの条件は、Machら(J.Pharm.Sci.95:2195−2206(2006))に記載されたものに改変を加えたものであった。全ての試料は、Biacoreアッセイによる分析に先立ってアルミニウムアジュバントからHPV VLP抗原を遊離するために、実施例1に記載のアルミニウム溶解法により処理した。アルミニウムアジュバント化研究からのHPV VLP試料は、インビトロ抗原性を測定するために同じHPV VLPの凍結保存溶液と直接比較した。新たに融解したHPV VLPの凍結保存溶液を、Biacoreアッセイの基準品とした。アルミニウム溶解HPV試料は、直接使用するかかまたはBiacore測定の前に各HPV型に対して凍結保存溶液の基準品の濃度と釣り合わせるために更に希釈した。試験HPV製剤のBiacoreのデータは、全ての緩衝液(B‐1ないしB‐18)由来の凍結融解された製剤および凍結乾燥された製剤の双方は、同じ緩衝液(B‐1ないしB‐18)中の凍結融解も凍結乾燥もされなかった対照HPV製剤と正規化した。報告したBiacore値は、試料製剤当たり2の測定値の平均であった。
【0097】
1X凍結‐融解、3X凍結‐融解および1X瞬間凍結後のHPV試験製剤の各々における、各HPV型に対する正規化したBiacoreのデータを
図2に示す。凍結融解プロセスを受けた全ての4価HPVワクチン製剤は、十分に効力があり、しかもいずれの塩も賦形剤も有さない緩衝液B‐2(緩衝液B+0mM NaCl)の製剤を除き、試験した全ての4のHPV型に対する標準試料とほとんど同一のBiacore応答を有した。全てのHPV型の抗原性に関する強い影響は、塩および賦形剤が存在しない緩衝液B(B‐2)に関しては3X凍結‐融解を実施したときにより著しかった。全てのHPV型に対する抗原性において、1X通常凍結‐融解試料と1X瞬間凍結融解試料の間に有意差はなかった。データより、塩、賦形剤または双方の存在が凍結‐融解に関連するストレスに耐え、HPV型の抗原性を保持するために必要であると結論し得る。
【0098】
予備冷却棚または瞬間凍結を使用した凍結乾燥後の、種々のHPVワクチン製剤の各々における各HPV型に対する凍結乾燥プロセスの間の正規化したBiacoreのデータ(参照、実施例1)を
図3に示す。Biacoreの結果は、いかなる賦形剤も含まない緩衝液‐B(B‐2、B‐8およびB‐14)に対しては全てのHPV型についての抗原性が低下し、一方、製剤緩衝液の残りについての抗原性が標準試料と同等であることを示した。全てのHPV型についての抗原性において凍結乾燥の間、予備冷却試料と瞬間凍結試料の間に有意差はなかった。緩衝液B‐2およびその対応する塩緩衝液(B‐8およびB‐14)におけるHPVワクチン製剤は、凍結乾燥プロセスに耐え得なかった。抗原性の低下が製剤緩衝液B(B‐2、B‐8およびB‐14)において全てのHPV型について観察された。抗原性の低下は塩が無いときに(B‐2)著しく大きく、しかもそれは塩濃度の上昇により改善された。5%マンニトールおよび塩を含む緩衝液(緩衝液A+150mM NaCl(B‐7)および緩衝液A+320mM NaCl(B‐13))については、10〜15%の抗原性の低下が全てのHPV型に対して観察された。
図3から分かるように、製剤中に賦形剤の組み合せを有さなかった緩衝液は、凍結乾燥プロセスに関連するストレスに耐え得なかった。賦形剤であるマンニトールおよびショ糖の組み合せから成る製剤緩衝液CおよびDは、HPV VLPの完全性を維持し得て、それ故に凍結乾燥プロセス後でさえもワクチンの抗原性を保持した。これは、緩衝液‐E(ショ糖単独)または緩衝液‐A(マンニトール単独)製剤と比較して、共同したこれらの賦形剤のワクチン安定剤としての役割を示唆する。
【0099】
上記の凍結乾燥研究において使用した凍結乾燥4価HPVワクチン製剤(B‐1ないしB‐18)は、凍結乾燥ワクチンの保存安定性を評価するために45℃で1か月間、凍結乾燥した固体形態で保存した。凍結乾燥していない液体4価HPVワクチン製剤(B‐1ないしB‐18)は、凍結乾燥HPVワクチン製剤の保存安定性の評価において、それぞれの対照として使用した。45℃で1か月保存後に、凍結乾燥製剤は外観について評価し、その後に実施例1に記載の通り注射用滅菌水により再構成した。試験試料は、実施例1に記載の通りBiacoreを使用して抗原性を評価した。45℃で1か月保存後の、種々のHPVワクチン製剤の各々における各HPV型についての正規化されたBiacoreのデータを
図4に示す。種々の緩衝液中の凍結乾燥していない液体4価HPV製剤における全てのHPV型についての抗原性は、45℃で1か月保存後に約20〜40%であったが、HPV VLP抗原が所定の保存条件下、液体製剤の中で安定でなかったことを示している。これに反して、45℃で1か月間保存された緩衝液‐C中の凍結乾燥の双方の型(Lyo PCおよびLyo FF)の凍結乾燥HPV製剤は、凍結乾燥されていない液体のカウンターパートよりも著しく高い抗原性値を示した。製剤中にショ糖のみを含有する凍結乾燥HPV製剤、緩衝液‐E(B‐5、B‐11およびB‐17)は、45℃で1か月保存後にショ糖の不安定性(分解)のために着色した。分解したショ糖試料が固定化チップへのHPV抗体の結合を阻害して測定装置の故障を引き起こしていたと信じられており、それ故に
図4においてデータ点の幾つかが失われた。結果は、緩衝液C(B‐3)およびその対応する塩含有緩衝液(B‐9およびB‐15)が、45℃で1か月保存後でさえもHPV型のほとんどに対してHPV VLPの抗原性を80〜90%まで保持し得たことを示す。抗原性の低下が塩を含まない緩衝液Dについて観察されたが、一方、その対応する塩を含有する緩衝液(B‐10およびB‐16)は、45℃で1か月保存後でさえもHPV型のほとんどに対する抗原性を保持した。従って、安定性プロファイルに基づいて、マンニトールとショ糖の組合せを含有する緩衝液は、所望の抗原性を有する安定なワクチン製品を提供したと結論付けることができる。
【実施例3】
【0100】
浸透圧測定
浸透圧測定は、凍結融解かまたは凍結乾燥プロセスに先立って種々の緩衝液(B‐1ないしB‐18)中の全ての対照の4価HPV製剤に関して実施した。結果は、全ての緩衝液に対して塩濃度の上昇に伴う浸透圧値の増加があることを示す(
図5)。浸透圧に対する寄与は、主に賦形剤(マンニトール、ショ糖およびグリシン)および塩(塩化ナトリウム)由来であり、ヒスチジン、HPV抗原またはMAA由来ではない(最小の浸透圧を有する緩衝液B‐2の事例に示す通りである)。製剤緩衝液B‐14中に存在したHPV4価ワクチン(現行のガーダシル(登録商標)製剤に類似)についての浸透圧は、約585mOsmであった(
図5)。緩衝液B‐13ないしB‐18(参照、表1)は、緩衝液B‐14を除き、それらの製剤についての高い浸透圧に寄与した高い塩濃度の賦形剤を有した。これに反して、緩衝液B‐1ないしB‐12(参照、表1)は、緩衝液B‐9およびB‐10を除き、低い浸透圧値に寄与した低い塩濃度の賦形剤を有した。塩と賦形剤の組合せが、所定のHPV4価ワクチン製剤の浸透圧を確定するうえで重要な役割を果たす。
【実施例4】
【0101】
粒度測定
粒度測定は、凍結‐融解製剤(実施例1(c)に記載の通り、1X、3X通常凍結‐融解サイクルおよび1X瞬間凍結‐融解サイクル後)、および凍結乾燥製剤(実施例1(d)に記載の通り、瞬間凍結による凍結乾燥または予備冷却凍結乾燥棚による凍結乾燥後)を含む、全ての緩衝液(緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)由来の全ての4価HPVワクチン製剤、ならびに凍結融解も凍結乾燥もされなかった同じ緩衝液(緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)における対照の4価HPVワクチン製剤に関して実施した。全ての試料は、アルミニウムアジュバントからHPV VLP抗原を遊離するために、粒度測定に先立って実施例1(f)に記載のアルミニウム溶解法により処理した。粒度分布は、アルミニウム溶解後に溶液中に存在する全てのHPV VLPの粒度分布の平均測定値である。種々の緩衝液組成物中の全ての4価HPV製剤についての粒度分布に相当するz平均値を
図6に示す。
【0102】
図6に示すように、最大の粒度測定値を示した150mM塩化ナトリウムを含む緩衝液‐D(B‐10、参照、
図1)を除き、粒度は、塩を含まない全ての緩衝液(0mM塩化ナトリウムを含有する緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)中の対照および凍結‐融解(1X、3Xおよび1X FF)4価HPV製剤の方が、塩を含む緩衝液(150または320mM塩化ナトリウムを含有する緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)におけるそれらの製剤よりもわずかに大きかった。塩の存在下において、対照の4価HPV製剤を含む全ての4価HPV製剤は、溶解緩衝液中に存在するHPV VLPに対し典型的に予想される80ないし100nmの範囲内の粒度分布を有した。評価した種々の試験製剤の間で、賦形剤の組合せ(マンニトールおよびショ糖)を含む緩衝液‐Cおよび緩衝液‐Dを有する試験製剤は、賦形剤であるマンニトールとショ糖の組み合せを含まなかった製剤と比較して、VLPの粒度分布に関する限りは、凍結融解条件のストレスによる影響を受けにくかった。
【0103】
凍結乾燥4価HPVワクチン製剤の場合、HPV VLPについての粒度分布は、該製剤組成物中に賦形剤を含有しないかまたは賦形剤としてマンニトールだけを含有する緩衝液(緩衝液‐Aおよび緩衝液‐B、参照、
図6)については、凍結乾燥された他の4価HPVワクチン製剤(緩衝液‐Cないし緩衝液‐F)と比較してより大きく、またそれらのそれぞれの凍結乾燥していない対照の4価HPVワクチン製剤と比較したときもより大きかった。粒度の増大は、塩化ナトリウムが存在する緩衝液‐Aおよび緩衝液‐B中の凍結乾燥4価HPVワクチン製剤にとって重要である。緩衝液‐C、緩衝液‐Dおよび緩衝液‐Fを含む凍結乾燥製剤中のHPV VLPの粒度分布は、塩濃度に無関係に80〜100nmの通常の範囲内にあって、それぞれの凍結乾燥していない対照の4価HPV製剤と同等であった。その賦形剤としてショ糖のみを有した凍結乾燥4価HPV製剤(緩衝液‐E)は、塩化ナトリウムが存在しないHPV VLP(0mM塩化ナトリウムを有する緩衝液‐E)に対してはより大きな粒度分布を有し、塩化ナトリウムが存在するHPV VLP(150または320mM塩化ナトリウムを有する緩衝液‐E)に対しては80〜100nmの範囲内の通常の粒度分布を有した。
【0104】
全体的に見て、その緩衝液組成物中に塩化ナトリウムを含有しない緩衝液‐A、緩衝液‐B、緩衝液‐Dおよび緩衝液‐E中の4価HPVワクチン製剤は、これらの緩衝液がその緩衝液組成物中に界面活性剤を有したときでさえも、凍結融解および凍結乾燥プロセスのストレスに耐え得なかった。界面活性剤は、典型的には凍結融解および凍結乾燥プロセスのストレスを受けているタンパク質の凝集を防止することが知られている(Bhambhaniら,Am.Pharm.Rev.13(1):31−38(2010);Changら,J.Pharm.Sci.12:1325−30(1996))。これに反して、塩化ナトリウムを含んでも含まなくとも、その緩衝液組成物中に賦形剤の組合せを含有した緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D中に存在した4価HPVワクチン製剤は、凍結融解および凍結乾燥プロセスのストレス条件に対し極めて安定であった。塩化ナトリウムをふくんでも含まなくとも、これらの緩衝液中の賦形剤の組み合せ(マンニトールとショ糖)の存在は、凍結融解および凍結乾燥プロセス条件の間、MAAに結合されるHPV VLPの完全性を保存し得た。
【実施例5】
【0105】
凍結乾燥4価HPV製剤の特性
(a)乾燥ケーキの外観
全ての凍結乾燥ケーキの外観は、凍結乾燥直後(T=0)および45℃で1か月保存後に写真を撮影した。ケーキの外観は、二人の分析者により視覚化して、ケーキは、形態、色調および他の品質特性に基づいて実施例1の記載の通りに分類した(参照、
図2)。概して、全ての4価HPV製剤に対して乾燥白色固体ケーキが得られた。
図7は、種々の緩衝液中の全ての凍結乾燥HPV製剤の外観を、各製剤当たり3個のバイアルに基づいて記述する。エレガントなケーキが緩衝液B‐1、B‐3、B‐4、B‐6およびB‐13に対し観察され、わずかに崩壊したまたは裂け目ができまたは収縮したケーキがB‐7、B‐8、B‐9、B‐10、B‐14、B‐15およびB‐16に対し観察された。瞬間凍結かまたは予備冷却棚を使用した凍結乾燥後に、完全に崩壊したケーキが緩衝液B‐5、B‐11、B‐12、B‐17およびB‐18に対して観察された。加えて、完全に崩壊したケーキが、瞬間凍結を使用した凍結乾燥後の緩衝液B‐2中の製剤に対して観察された。この研究の結果は、ケーキの外観が製剤の賦形剤に依存したことを示す。ショ糖のみ(B‐5、B‐11およびB‐17)、またはグリシンおよび塩と組み合わせたショ糖(B‐12およびB‐18)を含有する製剤において、瞬間凍結かまたは予備冷却棚を使用する凍結乾燥後に、ケーキは完全に崩壊した。ショ糖のみを含む製剤とは異なって、エレガントなケーキは、塩の存在なしで、マンニトールのみまたはマンニトール若しくはグリシンと組み合わせたショ糖を含む製剤に対して観察された。マンニトールとショ糖の組み合せの賦形剤を含有する製剤についてのケーキの品質は、塩濃度の上昇とともに低下した。
【0106】
種々の緩衝液中の全ての凍結乾燥HPV製剤の外観は、45℃で1か月保存後も記録した。結果は、凍結乾燥ケーキの形態または外観が、高温におけるショ糖の不安定性により黄色ないし褐色に変色した緩衝液B‐5、B‐11およびB‐17(緩衝液‐E)における製剤を除いて、45℃で1か月保存後に変化しなかったことを示す。ショ糖とマンニトールまたはグリシンの組み合せを含む製剤に対しては、色調の変化は観察されなかった。
図7は、45℃で1か月保存された種々の緩衝液中の全ての凍結乾燥HPV製剤の外観を記載する。
【0107】
(b)再構成時間
凍結乾燥4価HPVワクチン製剤は、含まれる賦形剤の量に基づいて注射用滅菌水(WFI)により再構成した。WFIの量は、各製剤に対して0.50ないし0.60mlの範囲で添加した。再構成後の最終容量は約0.6mlであった。再構成時間はストップウォッチを使用して測定し、完全溶解(この場合、均一な懸濁液)に要する時間を凍結乾燥後のHPVワクチン製剤の各々に対して記録した。再構成時間は、凍結乾燥直後に再構成された試料および45℃で1か月間保存された試料に対して
図8に示す。
【0108】
製剤のほとんどは、15秒未満の速い再構成時間を有したが、一方、ショ糖のみを含有する製剤の緩衝液‐E(B‐5、B‐11およびB‐17)は90秒以上の遅い再構成時間を有した。同様の傾向が、45℃で1か月間保存された試料に対し観察された。ショ糖のみを含有する緩衝液‐E(B‐5、B‐11およびB‐17)中の製剤は、45℃で1か月間保存されたとき黄色ないし褐色となった。これらの試料の再構成の際、製剤の黄色ないし褐色は、高温での1か月間の保存の間、ショ糖の分解のためになお保持された。
【0109】
(c)振盪試験
全ての凍結乾燥4価HPVワクチン製剤の再構成後、ワクチン製剤の品質を検査するために振盪試験を実施した。ミョウバン粒子がバイアルの底に沈降する時間を試験製剤の各々に対し測定した。全ての4価HPV製剤についての振盪試験時間を
図9に示す。塩以外の賦形剤を含まなかった製剤緩衝液(150または320mM塩化ナトリウムを有する緩衝液‐B)は、ミョウバン粒子が凝集したことを示す速い沈降時間を有した。全ての他の製剤においては、沈降時間は10〜15分以上であったが、ミョウバン粒子が凝集しなかったことを示している。4価HPVワクチン製剤における賦形剤の存在は、凍結融解および凍結乾燥ストレス後でさえも、ミョウバン粒子の凝集を防止する。
【0110】
長期安定性研究(実施例6〜9)
長期安定性研究は、種々の保存温度条件下でHPVおよび1X MAA試験製剤に対して実施した。種々の製剤緩衝液中の凍結融解および凍結乾燥された4価HPV試験試料および1X MAA試験試料は、種々の保存温度条件(−70℃、2〜8℃、25℃および37℃)において、T=0、T=1か月、T=2か月、T=3か月およびT=6か月の採取時点(研究計画に関して表3を参照されたい)を伴って6か月以上放置した。各安定性時点の終わりに、試料の効力および外観を分析し、他の特性研究を実施した。
【0111】
6か月の時点について、試料は、熱安定性に基づくワクチンバイアルモニター(VVM)カテゴリーの決定を可能とするために、198日間(>6か月)の規定時間の時点で保存した。世界保健機関(WHO)によって実施されているVVMシステムは、ワクチンの熱に対する規定時間を超えた累積暴露を検知するための方法として、ワクチンバイアル上に化学的な時間‐温度表示ラベルを利用する。ラベルは、VVMの色調変化に基づいてワクチンがその温度ではもはや効力がなくなる温度に暴露されたかどうか、従って廃棄すべきかどうかを医療従事者が決定することを可能とする。ラベルが色調を変える速度は、VVMの色調変化速度がワクチンの時間および温度感受性に近似するように、そのVVMカテゴリーに基づいて修正される。
【0112】
WHOによって定義される通り、VVMカテゴリーは以下の通りである:VVM30(高い安定性)−25℃で193日間安定、37℃で30日間安定;VVM14(中位の安定性)−25℃で90日間安定、37℃で14日間安定;VVM7(普通の安定性)−25℃で45日間安定、37℃で7日間安定;VVM2(低い安定性)−37℃で2日間安定。
【表3】
【実施例6】
【0113】
インビトロ抗原性
4価HPVワクチン試験製剤のインビトロ抗原性は、中和抗体結合アッセイ法(表面プラズモン共鳴法、Biacore)を使用して評価した。凍結‐融解および凍結乾燥された4価HPV試験試料は、種々の緩衝液中のHPVワクチン製剤の保存安定性を評価するために6か月にわたる期間、実施例1に記載の通り−70℃、2〜8℃、25℃および37℃で保存した。抗原の生物活性分析は、長期安定性研究の各時点において実施した。Biacore分析用試料の調製は、実施例2に記載の通りであった。緩衝液‐Bないし緩衝液‐Dに懸濁されたHPV6、11、16および18型のVLPを含んだ全ての試験製剤は、溶解緩衝液により希釈した。試験HPV製剤のBiacoreのデータは、凍結‐融解も凍結乾燥もされなかった同じ緩衝液中の対照のHPV製剤により正規化した。記載したBiacore値は、同一製剤当たりの2の測定値の平均であった。
【0114】
正規化したBiacoreのデータは、凍結‐融解プロセスを受けその後に−70℃で6か月以上保存された緩衝液Cおよび緩衝液D中のHPVワクチン製剤が十分に効力があり、試験した全ての4のHPV型に対する標準試料とほとんど同じBiacore応答を有したことを示す(HPV16型および18型に対する代表的なデータについては
図10を参照されたい)。緩衝液B(緩衝液‐14)中のHPVワクチン製剤は、全ての4のHPV型に対して6か月の時点においてわずかな効力の低下を示した。データより、塩、賦形剤および/または双方の存在が、凍結‐融解および保存に関連するストレスに耐えて、HPV型の抗原性を保持するために必要とされると結論し得る。
【0115】
−70℃で6か月以上保存された凍結乾燥HPV製剤のBiacoreの結果は、全てのHPV型についての抗原性が、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D中のHPV製剤と比較して、T=0の時点を含む全ての時点において緩衝液‐B(緩衝液‐14)に対して低下したことを示した(HPV16型および18型に対する代表的なデータについては
図10を参照されたい)。このことは、緩衝液‐14における凍結融解条件下、−70℃で6か月保存後に観察された効力低下の増幅と見なすことができる。緩衝液‐14は塩のみを含むので(即ち、賦形剤を含まない)、凍結乾燥プロセスを耐え得なかった(T=0時点における効力低下)。ショ糖とマンニトールを含む試験製剤(緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D)中の全てのHPV型についての抗原性は、標準試料と同じであったが、これらの緩衝液がHPV VLPの完全性を維持し得たこと、それ故に凍結乾燥プロセス後に−70℃で6か月にわたって保存されたとき、ワクチンの抗原性を保持したことを示している。このことは、組み合わせたこれらの賦形剤の所定の試験条件下でのワクチン安定剤としての役割を極めて明瞭にする。
【0116】
凍結‐融解プロセスを受けた全ての4価HPVワクチン製剤(緩衝液‐Bから緩衝液‐Dまで)は、緩衝液‐14を含む製剤を除いて十分に効力があり、2〜8℃で6か月にわたる保存後に試験した全ての4のHPV型に対する標準試料とほとんど同じBiacore応答を有した(データ未記載)。効力のわずかな低下が、全てのHPV型について6か月の時点において凍結‐融解緩衝液‐14製剤に対し観察された。−70℃で6か月にわたる保存後に観察されたのと同様である。従って、塩、賦形剤または双方の組み合せを含有する種々の緩衝液中のHPV抗原の安定性は、凍結‐融解プロセスおよび長期保存によって影響を受けなかった。
【0117】
2〜8℃で6か月以上保存された凍結乾燥HPV製剤のBiacoreの結果は、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐Dと比較して、全てのHPV型についての抗原性がT=0を含む全ての時点において、緩衝液‐B(緩衝液‐14)について低下したことを示した(データ未記載)。ショ糖およびマンニトールを欠く緩衝液‐14組成物についての結果は、上述の−70℃での保存後に得られた結果と類似したが、製剤が安定剤を欠くために凍結乾燥ストレスおよびその後の保存に耐え得なかったという結論を支持する。緩衝液Bについて得られた結果と異なり、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐Dを含有する試験製剤中の全てのHPV型についての抗原性は、標準試料と同じであった。データは、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D中の凍結乾燥試験製剤が2〜8℃で6か月以上の期間、保存安定であったことを示しており、そのことは、緩衝液中の賦形剤であるマンニトールとショ糖の組み合せがHPV VLPの完全性を維持し得たことを証明する。この結果は、塩を含むがマンニトールまたはショ糖を含まない緩衝液14を含む製剤が凍結乾燥ストレスに耐え得なかったことを説明する。
【0118】
凍結‐プロセスを受けその後25℃で6か月以上保存された全ての4価HPVワクチン製剤(緩衝液‐Bないし緩衝液‐D)は、十分に効力があり、種々の時点において試験されたHPV6、11および16型に対する標準試料とほとんど同じBiacore応答を有した(HPV16型およびHPV18型についての代表的な結果を
図11に示す)。HPV18の抗原性は、緩衝液‐15および緩衝液‐16を含む製剤において3および6か月の時点で低下した。抗原性の低下は、また緩衝液‐3および緩衝液‐4を含有する製剤中のHPV18に対しても観察されたが、しかしその低下は、6か月の時点においては緩衝液‐15および緩衝液‐16を含有する製剤に対し観察されたよりもかなり小さかった。結果は、上で特定した条件下で、凍結‐融解HPV18型製剤中の賦形剤の存在が特定の期間の熱ストレスに耐え得なかったことを示す。
【0119】
25℃で6か月以上保存された凍結乾燥HPV製剤のBiacoreの結果は、緩衝液‐B(緩衝液‐14)についての全てのHPV型についての抗原性が、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D中のHPV製剤と比較して、T=0を含む全ての時点において低下したことを示した(HPV16および18型についての代表的な結果を
図11に示す)。緩衝液‐Bについての抗原性の低下は、T=0時点を過ぎると著しかったが、それは25℃におけるHPV型の凍結乾燥後の熱的不安定性に起因し得た。緩衝液‐Cおよび緩衝液‐Dを含む製剤については、抗原性は保持され、種々の時点において全ての4のHPV型に対する標準試料とほとんど同じBiacore応答を有した。凍結乾燥HPV製剤(緩衝液‐Cおよび緩衝液‐D)に対し観察された25℃で6か月以上の保存安定性は、緩衝液製剤における賦形剤であるマンニトールとショ糖の組合せが熱的ストレスならびに凍結乾燥ストレスに耐え、従ってHPV VLPの完全性を維持し得たことを証明する。Biacoreの結果は、より高い保存温度下においてより大きな効力低下が観察されており、試験条件下での効力の低下が保存温度によって直接に影響を受けたことを示す。
【0120】
凍結‐融解プロセスを受けた全ての4価HPVワクチン製剤(緩衝液‐Bないし緩衝液‐D)は、37℃で1か月の保存後にすべてのHPV型に対して効力の低下を示した(
図12)。従って結果は、凍結‐融解HPV製剤中の賦形剤の存在が37℃で1か月後の熱的ストレスに耐え得なかったことを示す。37℃で3か月間保存された凍結乾燥HPV製剤のBiacoreの結果は、全てのHPV型についての抗原性が緩衝液‐B(緩衝液‐14)に対して、T=0を含む全ての時点において低下したことを示した。3か月の時点において、標準試料と比較してほとんど同じBiacoreの応答が、緩衝液‐C(緩衝液‐3および緩衝液‐15)および緩衝液‐D(緩衝液‐4)を含む試験製剤中の全てのHPV型について観察され、抗原性が保持されたことを示している。しかし3か月の時点において、緩衝液‐16を含む製剤のHPV型に対して効力の低下が観察された。37℃で1か月以上の凍結乾燥HPV製剤の保存安定性は、製剤緩衝液中の賦形剤であるマンニトールとショ糖の組合せが熱的および凍結乾燥ストレスに耐え得たという結論を支持する。再度、より高い保存温度下においてより大きな効力低下が観察されており、試験条件下での効力低下は保存温度による影響を受けた。一般的に、現在の実験における反応速度は、VVM当量(ワクチンバイアルモニター)によって定義されるならば、高い安定性の指標であるVVM30カテゴリーに分類されるであろう。
【実施例7】
【0121】
浸透圧測定
2〜8℃で1か月間保存された凍結乾燥HPV製剤および凍結乾燥1X MAA製剤の浸透圧は、実施例1に記載の通り測定した。結果は、HPVおよび1X MAA製剤の双方について、塩を含有する緩衝液(緩衝液14、緩衝液15および緩衝液16)を含む製剤について浸透圧値の増加があったことを示す(データ未記載)。浸透圧に対する寄与は、主として賦形剤(マンニトールおよびショ糖)および塩(塩化ナトリウム)由来であり、ヒスチジン、HPV抗原または1X MAAアジュバント由来ではない。塩と賦形剤の組合せが、所定のHPV4価ワクチン製剤の浸透圧を規定するうえで重要な役割を果たす。
【実施例8】
【0122】
粒度測定
静的光散乱
実施例1に記載の通り0かまたは320mM NaCl濃度(緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)を含有する全ての1X MAA製剤についての粒度を測定するために、静的光散乱法を用いた。瞬間凍結‐融解(F/T FF 1X)かまたは凍結乾燥(LYO FF)したこれらの1X MAA製剤に対する粒度を、凍結‐融解も凍結乾燥もされなかった同じ緩衝液(緩衝液‐Aないし緩衝液‐F)中の対照製剤と比較した。
【0123】
対照製剤中の1X MAA(塩が含まれても含まれなくても)の粒径は、25μm(データ未記載)のかなり大きい粒径を有した緩衝液‐E(緩衝液‐5;0mM塩化ナトリウム)を除いて、約4ないし9μmであった。1X MAAの著しい凝集は、粒度の増大によって説明されるので、凍結‐融解条件および凍結乾燥条件の双方のそれぞれでMAA凝集を防止する目的で、塩の添加(緩衝液‐5(0mM塩化ナトリウム)を緩衝液‐17(320mM塩)と比較されたい)を思いつかせる。また、MAA凝集を防止するマンニトールおよびショ糖の賦形剤の組み合せ(緩衝液‐5(ショ糖のみ)を緩衝液‐4および緩衝液‐3(塩不存在下でのショ糖とマンニトールの組み合せ)と比較されたい)の能力も観察された。全ての試験条件下で、塩不存在下における凝集の最少量が6%マンニトールおよび4%ショ糖を含有する製剤に対して観察された。この観察結果は、ショ糖とマンニトールの存在下においてHPV抗原に対し観察された長期保存安定性の傾向と一致したが、このことはこの組合せを含む製剤の凍結‐融解および凍結乾燥ストレスに耐える能力を示す。
【0124】
動的光散乱
実施例1に記載の通り種々の温度で1か月間保存後、全ての凍結‐融解および凍結乾燥4価HPVワクチンに関してもまた、粒度を動的光散乱法を用いて測定した。同じ緩衝液(緩衝液‐Bないし緩衝液‐D)中の、凍結‐融解も凍結乾燥もされなかった対照のHPVワクチン製剤に対してもまた粒度を測定した。粒度測定に先立って、アルミニウムアジュバントからHPV VLP抗原を遊離するために、実施例1に記載の通りアルミニウム溶解法により全ての試料を処理した。粒度分布は、アルミニウム溶解後に溶液中に存在する全てのHPV VLPの粒度分布の平均測定値である。
【0125】
結果は、種々の温度で1か月間保存された凍結‐融解HPV製剤に対する粒度分布が、緩衝液‐14中で37℃、1か月間保存されたHPV製剤に対するのを除いて、凍結‐融解も凍結乾燥もされなかった対照の製剤に匹敵したことを示す(データ未記載)。37℃で1か月間保存したこの製剤(緩衝液‐14)に対し大きな粒径が観察されたが、それは凍結‐融解ストレス後のHPV VLPの熱的不安定性に起因する可能性があった。このデータは、この製剤が塩以外の賦形剤の欠如による凍結‐融解ストレスに耐え得なかったという結論と一致する。種々の温度で1か月間保存された凍結乾燥HPV試験製剤についての粒度は、2〜8℃で1か月間保存された緩衝液‐14を含むHPV製剤を除いて、凍結‐融解も凍結乾燥もされなかった対照の製剤に匹敵した。この製剤に対して大きな粒径が観察されたが、このことは、この製剤が凍結乾燥ストレスに耐え得なかったことを示している。評価された種々のHPV製剤の中で、緩衝液‐Cおよび緩衝液‐Dを含有するHPV製剤は、賦形剤の組合せ(マンニトールとショ糖)を含むが、賦形剤であるマンニトールとショ糖の組み合せを含まなかった当該製剤(緩衝液‐B)と比較すると、VLPの粒度分布に関する限り凍結‐融解条件のストレスによる影響を受けにくかった。
【0126】
全体的に見て結果は、賦形剤のこの組合せ(マンニトールとショ糖)の存在が、塩化ナトリウムが含まれても含まれなくても、凍結‐融解および凍結乾燥プロセス条件の間、MAAに結合されたHPV VLPの完全性を保ち得たことを示す。
【実施例9】
【0127】
凍結乾燥4価HPV製剤および1X MAA製剤の特性
乾燥ケーキの外観
全ての凍結乾燥ケーキの外観は、凍結乾燥後(T=0)および種々の温度で安定性研究の経過各時点において写真撮影した。ケーキの外観は、二人の分析者によって視覚化され、形態、色調および他の品質特性に基づいて、ケーキは実施例1の記載の通りに分類された。概して、全ての4価HPV製剤ならびに1X MAA製剤に対して乾燥白色固体ケーキが得られた(参照、
図13および
図14)。凍結乾燥HPV製剤の各々の外観は、全ての時点および保存温度について、凍結乾燥1X MAA製剤の外観に匹敵した。エレガントなケーキが緩衝液‐3、緩衝液‐4を含有する製剤に対し観察され、わずかに崩壊しまたは裂け目ができまたは収縮したケーキが緩衝液‐15および緩衝液‐16を含有する製剤に対し観察された。完全に崩壊したケーキが凍結乾燥後に緩衝液‐14を含有する製剤に観察された。賦形剤の熱的分解に起因する色調の変化は、製剤のいずれに対しても観察されなかった。この研究の結果は、ケーキの外観が製剤の賦形剤に依存し、保存温度または保存期間に依存しなかったことを示す。マンニトールとショ糖の賦形剤の組み合せを含有した製剤についてのケーキの品質は、塩濃度の上昇にともなって低下した。
【0128】
再構成時間
凍結乾燥4価HPVワクチン製剤および1X MAA製剤は、存在する賦形剤の量に基づいて滅菌WFIにより再構成した。WFIの量は、各製剤に対して0.50ないし0.60mlの範囲で添加した。再構成後の最終容量は約0.6mlであった。再構成時間はストップウォッチを使用して測定し、凍結乾燥HPVワクチン製剤ならびに凍結乾燥1X MAA製剤の各々に対して、完全溶解(この場合、均一な懸濁液)に要する時間を記録した。全ての凍結乾燥HPV製剤に対する再構成時間は、全ての時点および保存温度について、全ての凍結乾燥1X MAA製剤に匹敵した(データ未記載)。ほとんど全ての製剤は、保存温度および保存期間にかかわらず60秒未満の急速な再構成時間を有した。
【0129】
振盪試験
全ての凍結乾燥4価HPVワクチン製剤および1X MAA製剤の再構成後に、ワクチン/アジュバント製剤の品質を検査するために振盪試験を実施した。凍結‐融解または凍結乾燥された試験製剤の各々に対し、ミョウバン粒子がバイアルの底に沈降する時間を測定した。結果は、塩を含有する全ての4価HPV製剤(緩衝液‐14、緩衝液‐15および緩衝液‐16)が塩を有さない製剤よりもより急速な沈降時間を有したことを示し、ミョウバン粒子が凝集したこと示している(参照、
図15)。塩の不存在下にマンニトールとショ糖を含有する全ての4価HPV製剤(緩衝液‐3および緩衝液‐4)については、沈降時間は15分以上であったが、ミョウバン粒子が凝集しなかったことを示している。従って、4価HPVワクチン製剤中の賦形剤の存在は、凍結融解および凍結乾燥ストレス後でさえもミョウバン粒子の凝集を防止する。保存時間および温度は、振盪試験の結果に関しいかなる顕著な影響も与えなかった。
【0130】
1X MAA製剤に対する振盪試験の結果は、賦形剤および塩を含有した全ての試験製剤が15分以上の長い沈降時間を有したので、凍結‐融解ストレスがいかなる所定の時点または保存温度においても沈降時間に影響を与えなかったことを示すが、一方、塩のみを含有した製剤(緩衝液‐14)は、製剤の残りと顕著には異ならないが、わずかに急速な沈降時間を有した(データ未記載)。塩の不存在下にマンニトールとショ糖を含有する凍結乾燥1X MAA製剤(緩衝液‐3および緩衝液‐4)については、沈降時間は15分以上であったが、ミョウバン粒子が凝集しなかったことを示している。従って、1X MAA中の賦形剤の存在は、凍結乾燥ストレス後のミョウバン粒子の凝集を防止した。保存時間および温度は、振盪試験の結果に関しいかなる顕著な影響も与えなかった。