(54)【発明の名称】二重作用H1インバースアゴニスト/5−HT2Aアンタゴニストとしての(チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル化合物
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に他のヒスタミン受容体、セロトニン受容体および他の生理的に意義のある受容体に対してのように、特に5−HT
2C受容体、GABA
A受容体、ムスカリン性受容体、ドーパミン作動性受容体、アドレナリン作動性受容体およびhERGチャンネルに対してのように、H1受容体についての高いインバースアゴニスト有効性、5−HT
2A受容体についての高いアンタゴニスト有効性、およびこれらの受容体についての良好な選択性を有する、3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸およびその薬学的に許容される塩を提供する。これらの化合物は、睡眠維持不良によって特徴づけられる睡眠障害の治療にも有用であり得ることを動物モデルを介して実証する。それゆえ、化合物は、睡眠潜時不良もしくは睡眠維持不良または両方によって特徴づけられる睡眠障害の治療(不眠症、例えば慢性もしくは一過性の一次性不眠、慢性もしくは一過性の二次性不眠または両方の治療等)に有用であると考えられる。二次性不眠の例は、鬱病性障害(例えば大鬱病性障害、気分変調症および/または気分循環症)と関連する不眠症、不安障害(例えば全般性不安障害および/または社交恐怖症)と関連する不眠症、疼痛(例えば結合組織炎、炎症性関節炎もしくは骨関節炎と関連するもの等の慣性的な骨もしくは関節の疼痛または糖尿病性神経障害性疼痛)と関連する不眠症、アレルギー反応(例えばアレルギー喘息、掻痒感、鼻炎および鬱血など)と関連する不眠症、肺または気道の障害(例えば閉塞性睡眠時無呼吸、反応性気道疾患など)と関連する不眠症、精神障害、認知症および/もしくは神経変性疾患と関連する不眠症、ならびに/または概日リズム睡眠障害(例えば交代勤務睡眠障害、時差ぼけ障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害、非24時間睡眠−覚醒症候群など)と関連する不眠症を含むが、これらに限定されない。
【0008】
さらに、本発明の化合物は、選択的セロトニン再取込み阻害剤と同時投与された時に、非急速眼球運動睡眠(NREM睡眠)に対するそれらの効果の増強を示す。
【0009】
本発明は、式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を提供する。すなわち、3−[4−(2−クロロ−8−メチルチエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸またはその薬学的に許容される塩である。
【0010】
本発明の他の態様において、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて提供される。さらに、本発明のこの態様は、不眠症、例えば睡眠潜時延長もしくは睡眠維持不良または両方によって特徴づけられる不眠症、例えば一次性不眠、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害の治療のための医薬組成物であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のこの態様のさらなる実施形態は、式Iに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤および任意で他の治療法成分と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。本発明のこの態様のなおさらなる実施形態において、医薬組成物は、セロトニン再取込み阻害剤(例えばシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチンおよび/またはフルボキセチン)である第2の治療法剤をさらに含む。
【0012】
本発明は、不眠症、例えば睡眠潜時延長もしくは睡眠維持不良または両方によって特徴づけられる不眠症、例えば一次性不眠、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害を哺乳動物において治療する方法であって、効果的な量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする哺乳動物へ投与することを含む方法も提供する。本発明のこの態様の別の実施形態において、方法は、セロトニン再取込み阻害剤(例えばシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチンおよび/またはフルボキセチン)である第2の治療法剤を、同時の、分離した、または連続する組み合わせで、投与することをさらに含む。これらの治療の方法のうちの1つの特定の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0013】
本発明は、治療法で使用される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩も提供する。この態様内で、本発明は、不眠症の治療における使用ための式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。さらなる実施形態において、不眠症は睡眠潜時延長もしくは睡眠維持不良または両方によって特徴づけられ、例えば一次性不眠、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害である。この態様の別の実施形態において、本発明は、セロトニン再取込み阻害剤(例えばシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチンおよび/またはフルボキセチン)との、同時の、分離した、または連続する組み合わせでの、不眠症の治療における使用ための、式Iに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。本発明のこの態様の1つの特定の実施形態において、使用は哺乳動物、特にヒトにおいてである。
【0014】
本発明の他の態様は、不眠症、例えば睡眠潜時延長もしくは睡眠維持不良または両方によって特徴づけられる一次性不眠、例えば一次性不眠、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害の治療のための医薬品の製造における、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本発明のこの態様の他の実施形態は、不眠症、例えば睡眠潜時延長および/または睡眠維持不良によって特徴づけられる不眠、例えば一次性不眠、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害の治療のための医薬品の製造における、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩およびセロトニン再取込み阻害剤(例えばシタロプラム、パロキセチン、フルオキセチンおよび/またはフルボキセチン)である第2の治療法剤の使用を提供する。
【0015】
明確にするために、三環構造の以下のナンバリングは本出願の全体にわたって使用されるだろう。
【化2】
【0016】
本発明の化合物は塩基性モイエティおよび酸性モイエティを有しており、したがって多数の有機酸、無機酸、有機塩基および無機塩基と反応して薬学的に許容される塩を形成する。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は本出願の範囲内で検討される。「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書において使用される時、生物体に実質的に非毒性の本発明の化合物の任意の塩を指す。かかる塩は、Journal of Pharmaceutical Science,66,2−19(1977)中でリストされたものを含み、それは当業者に公知である。
【0017】
本明細書において使用される略称は以下のように定義される。
「DMEM」はDulbeccoの最小Eagle培地を意味する。
「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味する。
「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
「FBS」はウシ胎仔血清を意味する。
「HEPES」は4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸を意味する。
「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィーを意味する。
「hr.」は時間を意味する。
「IC
50」は、最大阻害の50%が達成される濃度を意味する。
「LC−MS」はHPLC−質量分析法を意味する。
「MeOH」はメタノールを意味する。
「min.」は分を意味する。
「MS」は質量分析法を意味する。
「MS(ES+)」はエレクトロスプレーイオン化を使用する質量分析法を意味する。
「NMR」は核磁気共鳴を意味する。
「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
全般的な化学
本発明の化合物は以下の合成例に従って調製することができる。
【0019】
調製例1.2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボニルクロライド
【化3】
ジクロロメタン(500mL)中の2,5−ジクロロ−チオフェン−3−カルボン酸(49.7g;252.23mmole;1.00当量)の懸濁物へ、ジメチルホルムアミド(0.5mL;6.47mmole)、続いてジクロロメタン(138.73mL;277.45mmole;1.1当量)中の2M塩化オキサリルの溶液を1.5時間にわたり添加する(苛性溶液を介して発生気体を出す)。気体発生が終わるまで生じた透明な溶液を室温で1時間撹拌し、反応はLCMSによって完了される(反応モニタリングのために7M NH
3/MeOHの中へサンプルをクエンチする)。対応する一級アミドについてMS(m/z):=195.9,197.9(M+H)
+。蒸発乾固して、茶色油(55g、252mmol、定量的)として表題中間体を得た。
【0020】
調製例2.2,5−ジクロロ−N−(2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
【化4】
THF(450mL)中の6−アミノ−m−クレゾール(34.14g;277.20mmole;1.1当量)の溶液へ、ピリジン(40.76mL;504.00mmole;2当量)、続いてTHF(250mL)中の2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボニルクロライド(54.30g、252mmole、1.00当量)の溶液を、15〜20℃の温度を維持するためにアイスバスを使用して30分にわたり添加する。生じた濃厚な混合物を室温で1時間撹拌して、LC−MSによってアミノフェノールの完全な消費を得た。2MのHCl水溶液(500ml)および氷(250ml)の混合物上に撹拌しながら注ぐ。生じたベージュ色固形物を濾過によって回収し、水により良く洗浄し、空気中で乾燥する。MS(m/z):=301.84,303.94(M+H)
+.40℃の真空オーブン中のP
2O
5の上で一晩乾燥して、表題中間体(84.5g、定量的と推測される)を得た。
【0021】
調製例3.2−クロロ−8−メチル−5H−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−オン
【化5】
ジメチルスルホキシド(450mL)中の2,5−ジクロロ−N−(2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(76.15g;252mmole;1.00当量)のよく撹拌された懸濁物へ、炭酸カリウム(38.31g;277.20mmole;1.1当量)を添加し、混合物を100〜110℃へ4.5時間加熱して、LCMSによって本質的に完全な転換を得た。室温まで冷却させ、1Mの塩酸水溶液(500ml)を含有する2個の個別のビーカーにゆっくり添加し、気体発生が観察された。室温で0.5時間撹拌し、生じた暗灰色固形物を濾過によって回収する。水、続いて少量のエタノール、続いて少量のジエチルエーテルにより連続して洗浄する。45℃の真空オーブン中で一晩乾燥して、表題中間体(58.5g、87%)を得た。MS(m/z):=265.99(M+H)
+.
【0022】
調製例4.2,4−ジクロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン
【化6】
メトキシベンゼン(225mL、5体積)、2−クロロ−8−メチル−5H−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−オン(45g;169.4mmole;1当量)およびN,N−ジメチルアニリン(47.2g;389.5mmole;2.3当量)を、1Lの丸底フラスコにチャージする。60℃まで加熱し、塩化ホスホリル(85.7g;558.9mmol;3.3当量)を0.5時間にわたり滴下して添加する。TLC分析によって完了するまで、100℃まで加温し2時間撹拌する。40〜60℃まで冷却し蒸発させ、暗茶色固形物(123.1g、433.2mmole、アッセイにより補正せずに256%収率)として表題中間体を得た。MS(m/z):283.8(M+H).
【0023】
調製例5.メチル3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノアート
【化7】
2,4−ジクロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン(121.1g;169.4mmol;1.0当量)、続いてアセトニトリル(600mL、12.5体積)、次いで1ポーションの炭酸カリウム(119.4g;863.9mmol)を、1Lの丸底フラスコにチャージする。10〜20分間撹拌して、次いでメチル2,2−ジメチル−3−(ピペラジン−1−イル)プロパノアートジヒドロクロライド(55.54g;203.3mmole;1.2の当量)を1ポーションで添加する。80℃まで加熱し、30時間撹拌する。混合物を真空下で濃縮乾固し、次いで混合物の中へ酢酸エチル(1920mL、40体積)および水(1920mL、40体積)をチャージする。撹拌し濾過し次いで水相を分離し、酢酸エチル(960mL、20体積)により抽出する。有機相を合わせて、水(960mL×2)およびブライン(200mL、4体積)により洗浄する。シリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル(0〜10%))によって濃縮および精製して、黄色固形物(55.4g、123.7mmole、95.8%純度、アッセイにより補正せずに73.0%収率)として表題中間体を得た。MS(m/z):448.2(M+H).
1HNMR(400MHz,CDCl
3):δ7.03(m,1H),6.91(m,1H),6.85(s,1H),6.50(s,1H),3.67(s,3H),3.47(m,4H),2.58−2.54(m,6H),2.28(s,3H),1.19(s,6H).
【0024】
実施例1.3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸
【化8】
メチル3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノアート(70.3g;156.9mmole;1.0当量)、イソプロピルアルコール(469mL;6.67体積)および水(469mL;6.67体積)を、2Lの丸底フラスコにチャージする。次いで水酸化ナトリウム(18.83g;470.8mmole;3.0当量)を添加し、混合物を撹拌しながら80℃まで3時間加熱する。20℃まで冷却し、5MのHCl水溶液によりpH7へ中和する。大部分のイソプロピルアルコールを蒸発させ、次いで5MのHCl水溶液によりpHを6〜7へ調整し、濃縮して溶媒を除去する。次いで酢酸エチル(2800mL、40体積)および水(2800mL、40体積)をチャージし、濾過前に30分間撹拌して、粗製産物を得た。酢酸エチル(700mL、10体積)により水相および抽出物を分離する。酢酸エチル層を合わせ蒸発させて、粗製産物を得た。粗製産物およびイソプロピルアルコール(500mL、7体積)を、1Lの丸底フラスコの中へチャージする。80℃まで加熱し、1時間撹拌し、次いで20℃までゆっくり冷却する。濾過し、イソプロピルアルコール(70mL、1体積)によりケーキを洗浄して、黄色固形物(60.4g;138.6mmole;99.3%純度、アッセイにより補正して88.3%収率)として表題化合物を得た。MS(m/z):434.0(M+H).
1HNMR(400MHz,CDCl
3):δ7.01(m,1H),6.94(m,1H),6.82(s,1H),6.50(s,1H),3.64(brs,4H),2.86(brs,4H),2.60(s,2H),2.29(s,3H),1.26(s,6H).13CNMR(400MHz,CDCl3):δ178.57,161.10,154.37,152.00,136.63,135.64,127.95,127.14,121.88,121.20,120.14,118.58,65.70,54.46,46.45,41.54,25.34,20.70.
【0025】
実施例2.3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸
【化9】
イソプロピルアルコール(150mL;1.96モル)および水(150mL)の混合物中のメチル3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノアート(22.5g;50.23mmole;1.00当量)の懸濁物へ、水酸化ナトリウム(6.03g;150.68mmole;3当量)を添加し、混合物を80℃(オイルバス)で2.5時間加熱して、LC−MSによって完全な転換を得た。冷却させ、5MのHCl水溶液によりpH7へ中和する。大部分のイソプロピルアルコールを蒸発させて、細かい沈殿物を得た。5MのHCl水溶液によりpHをpH7へ再調整する。フラスコを冷蔵庫中に0.5時間放置し、次いで濾過によって淡黄色固形物を回収し、水により洗浄する。45℃の真空オーブン中のP
2O
5の上で一晩乾燥して、表題化合物(20.6g、95%)を得た。MS(m/z):=434.1(M+H)
+.
【0026】
実施例3.3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸ジヒドロクロライド
【化10】
3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸(5.8g;13.3mmol)を少量のアセトニトリル中でスラリー化し、次いで塩化水素(14.06g;53.57mmole;4当量)の4Mのジオキサン溶液を添加し、生じた溶液を蒸発させる。少量のジエチルエーテルにより粉砕し、濾過によって回収し、真空オーブン中で乾燥し、表題化合物(4.74g、70%)を得た;MS(m/z):=434.1(M+H)
+.
【0027】
ジヒドロクロライド塩の追加の精製
3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチルプロピオン酸ジヒドロクロライド(7.5g;14.80mmole;1.00の当量)をとって、完全な混合物が得られるまで超音波処理によりエタノール(150ml)中で加熱する。蒸発乾固する。少量のジエチルエーテルにより粉砕し、濾過によってベージュ色固形物を回収する。細粉まで砕き、50℃で真空オーブン中で2晩にわたり乾燥させて、表題化合物(7.14g、95%)を得た。MS(m/z):=434.1(M+H)
+.
【0028】
文献データ(Morairty SR,Hedley L,Flores J,Martin R,Kilduff TS.(2008)Selective 5−HT
2A and 5−HT6 receptor antagonists promote sleep in rats.Sleep 31,34−44.;およびBarbier,A.J.,and Bradbury,M.J.,Histaminergic Control of Sleep−Wake Cycles:Recent Therapeutic Advances for Sleep and Wake Disorders,CNS & Neurological Disorders−Drug Targets,vol 6,pg.31−43(2007))および非臨床動物研究において生成されたデータは、不眠症の治療における、ならびに他の障害(鬱病性障害、不安障害、疼痛、アレルギー、肺または気道の障害、精神障害、認知症および/または神経変性疾患等)と関連する不眠症および/または概日リズム睡眠障害の対症療法における、二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT
2Aアンタゴニストの役割を支持する。特に、特定の二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT
2Aアンタゴニストは、過度もしくは臨床的に意義のある低活動性、REM睡眠の減少または傾眠過剰なしのEEGでモニタリングしたげっ歯動物を使用して、総睡眠時間の増加に効果的であることが見出される。
【0029】
本化合物の特徴をさらに実証するために、それらを以下のin vitroおよびin vivoのアッセイにおいて実行することができる。
【0030】
in vitro結合および活性アッセイ:
H1競合結合アッセイ
[
3H]−ピリラミン結合実験をSPA(シンチレーション近接アッセイ)96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換えH1受容体(ヒト)を安定的に発現するHEK−293細胞から調製する。インキュベーションは、3.5nMの[
3H]−ピリラミンおよび変動する濃度の試験化合物(10ポイント濃度反応曲線)を含有するアッセイバッファー(67mMトリス;pH7.6)へ、WGA PVT SPAビーズ(1mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)RPNQ0001)および3μgの膜混合物を添加することによって開始する。非特異的結合は10μMのトリプロリジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta Triluxにおいて読み取る。
【0031】
5−HT2A競合結合アッセイ
[
3H]−ケタンセリン結合実験をSPA 96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換え5−HT
2A受容体(ヒト)を安定的に発現するAV−12細胞から調製する。インキュベーションは、3.1nMの[
3H]−ケタンセリンおよび変動する濃度の試験化合物(10ポイント濃度反応曲線)を含有するアッセイバッファー(67mMトリス、0.5mM EDTA;pH7.6)へ、WGA YSi SPAビーズ(1mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)RPNQ0011)および2μgの膜混合物を添加することによって開始する。非特異的結合は20μMの1−(1−ナフチル)ピペラジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta Triluxにおいて読み取る。
【0032】
5−HT2C競合結合アッセイ
[
125I]−(±)DOI結合実験をSPA 96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換え5−HT
2C受容体(ヒト)を安定的に発現するAV−12細胞から調製する。インキュベーションは、0.2nM[[
125I]−(±)DOIおよび変動する濃度の試験化合物(10ポイント濃度反応曲線)を含有するアッセイバッファー(50mMトリスHCl、10mM MgCl
2、0.5mM EDTA、10μMパルギリン、0.1%アスコルビン酸、pH7.4)へ、WGA PVT SPAビーズ(0.5mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)、RPNQ0001)および2.5μgの膜混合物の添加によって開始する。非特異的結合は20μMの1−(1−ナフチル)ピペラジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta Triluxにおいて読み取る。
【0033】
結合データ解析
4パラメータのロジスティック非線形方程式を使用して曲線を評価して、放射性リガンド結合の50%阻害を引き起こす競合物の濃度(IC
50)を得る。平衡解離定数(K
i)を方程式K
i=IC
50/(1+L/K
d)に従って計算し、式中、Lは実験において使用される放射性リガンドの濃度と等しく、K
dは受容体について放射性リガンドの一定の平衡解離と等しく、標準的な飽和分析または相同な競合実験から決定される。K
iについて報告された値は、n値が示される場合、nによって示される重複した決定の数により幾何平均値±標準誤差(SEM)として示される。幾何平均値は、方程式GeoMean=10^(Average(log K
i 1 + log K
i 2 +...log K
i n)/sqrt n)によって計算される。
【0034】
初代ニューロン培養におけるネイティブ受容体を使用するGABAAアンタゴニズム
ネイティブGABA
A受容体に対する化合物の活性は、96ウェルフォーマットFLIPR(登録商標)システム(蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR(登録商標))、Molecular Devices)を使用して、カルシウムフラックスをモニタリングすることによって評価する。簡潔には、胚性皮質ニューロンをE18ラット胚から分離し、黒色壁で囲まれた透明底のポリ−D−リジンコート96ウェルFLIPR(登録商標)プレートの中へ最適の密度でプレーティングする。カルシウム感受性色素(Fluo4−AM、Molecular Devices)と共に細胞をロードした後に、細胞を低塩化物含有溶液(塩化物をグルコン酸塩によって置き換える)中に入れる。これらの条件下で、GABA
A受容体の活性化は塩化物イオンの流出を引き起こし(化学勾配の方向において)、電位関門型カルシウムチャンネル(VGCC)の膜脱分極およびしたがって活性化をもたらす。VGCCを介するカルシウム流入を記録し、FLIPR(登録商標)システムを使用してオフラインで分析する。アッセイの薬理学的検証のために、標準的なアゴニスト(GABA)および標準的なアンタゴニスト(ギャバジン)について濃度反応曲線(CRC)を記録する。任意の効果は10μMのアゴニストGABAの固定した濃度(EC
90GABA反応と等価)に対するCRCモードにおいて決定される。
【0035】
方法:
化合物のアンタゴニスト効果を、化合物の存在および非存在下におけるアゴニストGABAに対するピーク蛍光応答を比較することによって、10ポイント用量反応曲線を使用して定量化する。アッセイウィンドウは、ギャバジンの完全阻害濃度(50μM)によって得られた反応を引いた、あらかじめ決定したEC
90濃度でのGABAによって得られた最大反応として定義される。アンタゴニスト効果はアッセイウィンドウのパーセントとして計算される。すべてのデータは、4パラメータのロジスティック曲線フィッティングプログラム(Prism Graphpad(登録商標)3.01)を使用して、相対的IC
50値として計算される。すべての化合物についてアンタゴニスト有効性は、各アッセイランにおける3つの重複測定によりギャバジンに対して比較される。
【0036】
さらに、本発明の化合物は、他の生理的に重要な受容体(hERGチャンネル、他のセロトニン受容体(特に5−HT
1B、5−HT
1D受容体、5−HT
2B受容体でのアゴニスト活性の欠如、5−HT
2C、5−HT
5、5−HT
6および5−HT
7受容体)、ドーパミン作動性受容体(特にD1、D2およびD3)、GABA
A受容体、アドレナリン作動性受容体およびモノアミン輸送体等であるがこれらに限定されない)についての周知の方法による結合アッセイおよび機能的活性アッセイにおいて、試験することができる。
【0037】
実施例1および13の化合物は本質的には上記のように試験され、表1中の示されるような活性プロファイルを有することが見出される。
【0039】
したがって、本発明の化合物の生理的に意義のある用量は、H1および5−HT
2A受容体のin vivoでの実質的な阻害を提供するが、他の生理的に意義のある受容体と実質的に相互作用しないことが期待され、したがって所望される薬理学を提供するが、標的外の活性と関連する所望されない効果を回避することが期待される。かかる所望されない効果は以下のもの含むが、これらに限定されない。治療下で出現した体重増加と関連する5−HT
2Cアンタゴニスト活性、弁膜症と関連する5−HT
2Bアゴニスト活性、QT延長と関連するhERGチャネル修飾、および発作活動と関連するGABA
Aアンタゴニスト活性。さらに、睡眠/覚醒生理的機能に対する妨害は、ドーパミン受容体、他のセロトニン受容体、アドレナリン作動性受容体およびモノアミン輸送体に関する選択性によって回避される。
【0040】
5−HT2A受容体占有:受容体占有をアッセイして、5−HT
2A受容体のin vivoでのアンタゴニスト/インバースアゴニスト活性を実証する。簡潔には、およそ230〜280グラムの体重のオスのSprague−Dawleyラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)は、3時間の実験プロトコルの開始まで飲水および摂食を自由にさせる。1mg/kgのケタンセリン(非選択的5−HT
2Aアンタゴニスト)はアッセイ有効性を確立するために陽性対照として使用される。試験化合物または対照を、20%のヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンからなるベヒクル中で経口強制投与によって投与する。MDL 100907((R)−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール)(選択的5−HT
2Aアンタゴニスト)をトレーサーとして使用する。MDL 100907を5μlの希釈乳酸(1mg/ml)により水中で懸濁し、生理食塩水により6μg/mlまで希釈し、1mL/kgの体積で外側尾静脈を介して静脈内に投与して、3μg/kgのトレーサー用量がもたらされる。ラットに試験化合物、ケタンセリンまたはベヒクル(N=4)、続いて1時間後に静脈内で3μg/kgのトレーサー用量のMDL 100907を投与する。受容体占有(RO)を測定するべきと判断されるのはトレーサー投与の時間である。トレーサー投与の15分後に、ラットは頸椎脱臼によって屠殺される。血漿サンプルを回収し、前頭皮質および小脳のサンプルを取り出す。MDL 100907トレーサーのレベルを各皮質および小脳サンプルにおいて測定する。ROはよく確立されている比率法を使用して計算され、その方法は受容体がないかまたは非常に低いレベルの領域(小脳)によって正規化された代表的な高い受容体密度の領域(前頭皮質)の全結合を用いるものである。ヌル領域と称されるこの領域は、リガンドプローブの非特異的結合を示す。小脳と比較して皮質におけるトレーサーレベルのベヒクル比は、0%占有を示す。1の比は100%占有を示し、MDL 100907トレーサーの5−HT
2A受容体への特異的な結合がすべてブロッキングされる場合に達成される。試験化合物に前処理された群からの小脳トレーサーに対する皮質トレーサーの中位の比は、パーセント5−HT
2AROを決定するために、ベヒクル処理の動物におけるトレーサーレベルの比(0%占有)と1の比(100%占有)との間に直線的に挿入される。
【0041】
MDL 100907分析:皮質サンプルおよび小脳サンプルの重量を量り、氷上のコニカル遠心分離機チューブ中に置く。4体積(w/v)の0.1%ギ酸を含有するアセトニトリルを各チューブに添加する。次いでサンプルをホモジナイズし、14,000RPM(21920×g)で16分間遠心分離する。上清をLC/MS/MS分析のためにHPLC注射バイアル中で100〜900μLの滅菌水の添加によって希釈する。MDL 100907の分析を、Agilentモデル1200 HPLC(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)およびAPI 4000質量分析計を使用して実行する。クロマトグラフ分離は、全体的に0.1%ギ酸含有量で水中で60%アセトニトリルからなる移動相により、2.1×50mmのC18カラム(Agilentパーツ番号971700−907)上で行なわれる。MDL 100907の検出は、374.2対123.0の質量対電荷比(m/z)により、前駆体から産物へのイオン移行のモニタリングによって遂行される。スタンダードは、未処理のラットからの脳組織サンプルへ検体の既知量を添加し上記のように加工することによって調製する。
【0042】
統計的方法:JMP(登録商標)バージョン8.0(SAS Institute Inc、Cary NC)を使用して、0%で固定されたボトムにより、各研究のための曲線を4パラメータのロジスティック関数へフィッティングさせ、絶対的ED
50をソフトウェアによって計算する。値は平均、標準誤差および95%の信頼区間として与えられる。実施例3の化合物は本質的に記載されるように試験され、0.09mg/kgのED
50で高い5−HT
2A受容体占有を達成することが見いだされる。
【0043】
H1インバースアゴニズム:本発明の化合物のインバースアゴニスト本質を決定するために、ヒト組換えH1受容体によりトランスフェクションしたHEK293細胞(HEK293/hm H1クローンR−40)におけるミオイノシトール1リン酸(IP1)のレベルに対する効果を測定する。簡潔には、HEK293/hm H1細胞(クローンR−40)を〜90%密集度まで増殖させ(3:1のDMEM/F12、5%FBS、20mM HEPES、G418 500μg/ml、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン)、1×トリプシン/EDTA(PAA Pasching、オーストリアL11−003)を使用してアッセイの日に採取する。35μlの細胞(300K)を、刺激バッファー(NaCl 146mM、CaCl
2 1mM、KCl 4.2mM、MgCl
2 0.5mM、グルコース5.5mM、HEPES 10mMおよびLiCl 50mM)中で96ウェルの2分の1面積の白色のソリッドボトムプレート(Corning、英国3688)の中へ播種する。試験化合物を、最初に最終濃度の100倍で100%DMSO中に溶解する。これらを刺激バッファー中で最終アッセイ濃度の2倍までさらに希釈し、次いで35μlのこの溶液をアッセイプレート中の細胞に添加する。各々15μlのHTRF IP1検出キット試薬(CisBio 62P1APEC)の添加の前に、細胞+化合物を37℃/5% CO
2で1時間30分インキュベーションする。細胞プレートをIP1蓄積の測定(Envisionプレートリーダー、Perkin Elmer)前に、室温でさらに1時間インキュベーションする。IP1蓄積(nM)をアッセイの日に実行したスタンダードのIP1曲線からの推定によって計算する。負の有効性値は、陽性対照トリペレナミン(10μM、Sigma、英国P5514)に比較したものとして表現される。化合物3は本質的に記載されるように試験され、構成的活性を完全に抑制することが見出される(1μMで105%および10μMで85%(n=2))。
【0044】
DOI誘導性頭部振戦活性の阻害:本発明の化合物のin vivoでの5−HT
2A受容体アンタゴニスト活性を、5−HT
2A受容体アゴニスト(2,5−ジメトキシ−4−ヨードアンフェタミン(DOI))によって誘導された頭部振戦活性をブロッキングする能力によって、さらに実証する(例えばBartoszyk GD,van Amsterdam C,Bottcher H,Seyfried CA.EMD 281014,a new selective serotonin 5−HT
2A receptor antagonist.Eur J Pharmacol.2003 473:229−230.を参照されたい)。簡潔には、オスのC57BL/6Jマウス(20〜25g、Charles River)を、標準的な収容条件(大きなIVCケージ中で32匹のマウス、07.00〜19.00の明相、一定温度(19〜23℃)および湿度(50%±10)、自由飲水および摂食)において収容する。マウスに、ベヒクル(0.25%メチルセルロース)、DOI(生理食塩水中で3mg/kg)または10mg/kg経口で試験化合物+DOI(生理食塩水中で3mg/kg)のいずれかを投与した。試験化合物は、各化合物についてn=4で、ベヒクルおよびDOI+ベヒクル(n=8)と共に、1実験あたり4群で個別に評価される。60分間の試験化合物前処理時間後に、マウスにベヒクル(生理食塩水)または3mg/kgのDOIいずれかを皮下投薬し、次いで透明なパースペックス観察チャンバーの中へ置く。DOIまたはベヒクル投与の5分後に、個別のマウスによって示される視覚的にスコアリングした頭部振戦の数を、15分間カウントする。データはANOVAおよび事後Dunnet検定を使用して解析される。実施例3の化合物は本質的に記載されるように試験され、10mg/kgでDOI誘導性頭部振戦反応を100%阻害することが見出される。
【0045】
ラットにおける睡眠および行動のモニタリング:本発明の化合物は、所望されない効果(REM睡眠の阻害、覚醒運動不全、および/または反跳性不眠症)なしの、睡眠の量の増加もしくは睡眠中断の減少または両方の能力についてラットにおいて試験される。試験動物は、脳波図(EEG)、筋電図(EMG)ならびに累積非REM睡眠を測定する体動、累計睡眠、平均睡眠バウト継続、最長の睡眠バウト継続、反跳性不眠症、REM睡眠阻害および不眠の間の自発運動活性強度によって連続的にモニタリングされる。かかる研究のための方法は当該技術分野において公知である(例えばEdgar DM,Seidel WF.Modafinil induces wakefulness without intensifying motor activity or subsequent rebound hypersomnolence in the rat.J Pharmacology&Experimental Therapeutics 1997;283:757−769;van Gelder RN,Edgar DM,Dement WC.Real−time automated sleep scoring:validation of a microcomputer−based system for mice.Sleep 1991,14:48−55;and Gross BA,Walsh CM,Turakhia AA,Booth V,Mashour GA,Poe GR.Open−source logic−based automated sleep scoring software using electrophysiological recordings in rats.J Neurosci Methods.2009;184(1):10−8.中に記載される方法を参照されたい)。研究は以下のように行なわれる。
【0046】
動物調製。成体のオスのWistarラット(外科手術時でおよそ270〜300g)は、EEG、EMGおよび運動の長期記録のために以下のように外科的に取り付けられる。EEG記録のための4つのステンレス鋼ネジからなる頭蓋のインプラント(前頭部に2つ[前頂部から前方に3.9mmおよび中外側に±2.0mm]および後頭部に2つ[前頂部から後方に6.4mmおよび中外側に±5.5mm])、およびEMG記録のための2つのテフロン加工のステンレス鋼ワイヤー(項部僧帽筋下に配置した)により、ラットを外科的に調製する。全ての導線を外科手術前に小型のコネクター(Microtech、Boothwyn、PA)へはんだ付けする。インプラントアセンブリーを、ステンレス鋼EEG記録ネジ、インプラントコネクターと頭蓋骨との間に適用されたシアノアクリレート、および歯科用アクリル樹脂の組み合わせによって頭脳に貼付する。腹部の中へ外科的に置いた小型の発信機(Minimitter PDT4000G、Philips Respironics、Bend、OR)を介して、自発運動活性をモニタリングする。少なくとも3週間回復させる。
【0047】
記録環境。各ラットを、頭上に垂直なより多くのスペースを可能にするように挿入したポリカーボネートフィルタートップライザーにより修飾した微隔離器ケージ内で個別に収容する。移動を最小に限定したフレキシブルケーブルを、1つの端部でケージ上部に貼付した整流子へ、および他の端部で動物の頭蓋のインプラントへ連結する。各ケージは、ステンレス鋼の睡眠−覚醒記録チャンバーの分離して換気されたコンパートメント内に位置する。餌および水は自由に利用可能であり、周囲温度は約23±1℃で維持される。蛍光灯を使用する24時間の明暗サイクル(LD 12:12)を、研究の全体にわたって維持する。相対的湿度はおよそ50%の平均である。各動物は処理前後の少なくとも30時間安静にさせる。
【0048】
研究デザインおよび投薬。ラットが同じ処理を2回受けず、そしてラットが任意の1つの研究において8つの処理のうちの2つを超えてを受けないように、ベヒクル(プラセボ、水中でメチルセルロース15センチポアズ0.25%)または試験化合物のうちの1つの用量レベルを1mL/kgで経口で擬似無作為に投与する。各ラットの体重を量り処理するために約1分間ケージから取り出す。少なくとも6日間の「ウォッシュアウト」期間が各処理に先行および後続する。
【0049】
データ収集。睡眠および覚醒の区別は自動化することができる(例えばVan Gelder et al.1991(上述);Edgar et al.1997(上述);Winrow CJ,et al.,Neuropharmacology 2010;58(1):185−94.;およびGross et al.,2009(上述))。EEGは増幅およびフィルタリングされ(X10000、バンドパス1〜30Hz)、EMGは増幅および積分され(バンドパス10〜100Hz、RMS積分)、非特異的自発運動活性(LMA)は同時にモニタリングされる。喚起状態は、非REM睡眠、REM睡眠、覚醒またはθ優勢覚醒として10秒エポックに分類される。自発運動活性(LMA)は1分あたりのカウントとして記録し、商業的に入手可能な遠隔測定レシーバー(ER4000、Minimitter、Bend、OR)によって検出する。
【0050】
統計解析。少なくとも1つの転帰を有する動物はすべて、要約した結果中に含まれる(例えば、遠隔測定データが使用可能であるがEEGデータはそうではない動物処理からの適切なデータを含む)。処理後の観察期間は各転帰に適切な投薬後の区間へと分割され、そこで投薬の時間は開始の時間=0として定義され、転帰は、各期間にわたって1時間ごとの平均または累積値のいずれかを計算することによって観察期間において要約される(各転帰の正確な定義については表1の凡例を参照)。睡眠バウトは変動を安定化するためにlogスケール上で解析し、他のすべての変数は直線スケールで解析する。各期間における各転帰は、因子として処理群および処理期日、ならびに共変数として対応する前処理区間(24時間早いもの)を使用して、共分散分析によって解析する。調整された平均およびベヒクル平均からの変化ならびにそれらの対応する標準誤差は、各処理群について要約される。logスケールで解析した転帰を逆変換し、幾何平均値および平均比対ベヒクルの結果を報告する。
【0051】
実施例3の化合物は本質的に記載されるように試験される。実施例3の化合物は、3mg/kgで有意な反跳性不眠症、REM睡眠阻害または自発運動強度(LMI)の阻害なしに、累積NREM睡眠時間および累計睡眠時間を有意に増加させることが見出される(表2中の睡眠プロファイルおよび自発運動活性強度を参照されたい)。
【0053】
表2.転帰統計:略称:N=サンプルサイズ;Adj.Mean=ベヒクル対照と比較して調製された群平均値;SE=標準誤差;LCL=下側95%信頼限界、NREM=非REM、すなわち、REM睡眠以外のすべての睡眠。並列の参照ベヒクル群サンプルサイズはN=27であった。
定義および単位−平均はベヒクル対照からの差異を調整したものである:
・累積睡眠:分における、処理後最初の6時間にわたるもの(「全睡眠」はNREM睡眠+REM睡眠を示す)。
・平均睡眠バウト:ベヒクル対照に対してn倍増加として表現される、処理後最初の6時間のにわたる1時間ごとの平均化された睡眠バウトの平均。
・最長睡眠バウト:ベヒクル対照に対してn倍増加として表現される、処理後最初の6時間のにおける最長睡眠バウト。
・反跳性不眠症:点灯期間の最初の3時間の間の(すなわち処理後7、8および9時間目)NREM+REM睡眠の累積分。
・REM阻害:処理後最初の12時間の間のREM睡眠の累積分。
・自発運動活性(LMA)強度:処理後最初の6時間にわたって平均化した、EEGで定義した覚醒の1分あたりのカウントをLMAとして表現したもの。
【0054】
有効性の決定。各々の4つの有効性変数についての閾有効性は、処理後の6時間の期間の間のベヒクル対照と比較した各変数における増加を、log(用量)に対してプロットすることによって計算される。各変数についての閾有効性は、定義された有効性閾値、すなわち、蓄積された非REM睡眠の+30分の追加、蓄積された全睡眠の+25分の追加、平均睡眠バウト継続における1.75倍の増加、および最長の睡眠バウト継続における1.5倍の増加を、与える用量(4パラメータのロジスティック非直線回帰によって推測される)である。実施例3の化合物は表3中に示されるような閾有効用量を有することが見出される。
【0056】
所望されない効果の決定。各々の「所望されない効果」転帰変数(定義については表2の凡例を参照)を、log(用量)に対してプロットする。REM阻害についての閾値は−10分のREM睡眠の累積減少として定義される。反跳性不眠症についての閾値は−20分として定義される。LMI減少についての閾値は、EEGで定義した覚醒の1分あたり−5の自発運動活性カウントとして定義される。有意な所望されない効果は、下側信頼限界が任意の用量での閾値より下または平均有効用量の10倍より下になるとき、生じると定義され、そして用量反応傾向は閾有効性用量より上の用量について明らかである。実施例3の化合物について、REM阻害、反跳性不眠症またはLMIの減少の所望されない出現は、少なくとも1.2mg/kgまでの用量で観察されない(1.2mg/kgは最も控え目な有効性用量の0.12mg/kgの10倍である[表3])。負の値はREM阻害、反跳性不眠症およびLMI減少をそれぞれ示す。
【0057】
さらなる研究において、本発明の化合物を選択的セロトニン再取込み阻害剤と同時投与して、非急速眼球運動睡眠(NREM睡眠)および睡眠維持に対する効果の増強の実証することができる。実施例3の化合物は、本質的にこの化合物単独について上記されたように、ラット睡眠研究においてシタロプラムと同時投与され、有意により低い用量でNREM睡眠を有意に増加させることが見出される。
【0058】
血漿クリアランス:望まれない効果(所望される睡眠期間を超える延長された傾眠、日中の眠気、覚醒後の認知力不全など等)を回避するために、好ましいクリアランス率により身体から適切にクリアランスされることは睡眠障害(不眠症等)の治療に有用な化合物において重要である。本発明は改善されたクリアランス率を備えた化合物を提供する。クリアランス率は本質的に以下に記載されるようにアッセイすることができる。
【0059】
留置大腿動脈カニューレを備えたオスのSprague Dawleyラット(体重範囲250〜320g)を、Charles River、Wilmington、MA、USA 01887から得る。試験化合物は、1.0mg/mLの最終薬物濃度(遊離塩基等価物)で、22.5mMリン酸緩衝液(pH2)中の20%Captisol(登録商標)中で、溶液(1mL/kg)で静脈内に投与される。血液サンプルは24時間にわたり留置カニューレを使用して得られる。血漿のサンプルを遠心分離によって得て、分析前に凍結(−20℃)またはドライアイス上で保存する。
【0060】
オスのビーグル犬(体重範囲10〜12kg)をMarshall Bioresources、USAから得る。試験化合物は、1.0mg/mLの最終薬物濃度(遊離塩基等価物)で、22.5mMリン酸緩衝液(pH2)中の20%Captisol(登録商標)中で、溶液(1mL/kg)で静脈内に投与される。血液サンプルは24時間にわたり頚静脈から得られる。血漿のサンプルを遠心分離によって得て、分析前に凍結(−20℃)保存する。
【0061】
凍結された血漿サンプルを、試験化合物の濃度のバイオ分析のために室温へ融解する。アセトニトリル/メタノール(1:1、v/v)中の関連する内部スタンダード化合物を、血漿のすべてのサンプルに添加する(1:1、v/v)。サンプルを遠心分離して沈殿させたタンパク質を分析前に除去する。上清は、Javelin Betasil C18カラム(20×2.1mmカートリッジ、移動相A:水/1M NH
4HCO
3、2000:10 v/v、移動相B:MeOH/1M NH
4HCO
3、2000:10 v/v)上でのインジェクションおよび迅速な勾配溶出によって分析する。溶出した検体は、Sciex API 4000トリプル四重極質量分析計を使用するLC−MS−MS分析によって検出する。化合物の濃度は、同一の条件下で調製および分析したスタンダードから決定する。クリアランスは、Watson 7.4(Thermo Fisher Scientific Inc)中の非コンパートメント分析を使用して計算する。
【数1】
【0062】
実施例1および3の化合物は本質的に記載されるように実行され、以下の好ましいクリアランスプロファイルを有することが見出される。
実施例 クリアランス(ml/分/Kg)
ラット イヌ
1 14.1(±6.9、n=3) −
3 14.5(±1.4、n=3) 3.2(±0.7、n=3)
【0063】
製剤化なしに本発明の方法において用いられるような化合物を直接投与することは可能であるが、化合物は通常、活性成分としての化合物またはその薬学的に許容される塩ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される。これらの組成物は、経口、舌下、鼻腔、皮下、静脈内および筋肉内を含む多様な経路によって投与することができる。それらの調製のためのかかる医薬組成物およびプロセスは当該技術分野において周知である。例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(University of the Sciences in Philadelphia,ed.,21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins Co.,2005)を参照されたい。
【0064】
組成物は単位投薬量形態において好ましくは製剤化され、各投薬量は約0.1〜約60mg、通常約0.5〜約30mg、例えば約1〜約10mgの間の活性成分を含有する。「単位投薬量形態」という用語はヒト被験体および他の哺乳動物についての一体型投薬量として好適な物理的に不連続の単位を指し、各単位は計算された既定量の活性材料を含有して、少なくとも1つの好適な薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共同して所望される治療法上の効果を産生する。
【0065】
式Iの化合物は、幅広い投薬量範囲にわたって概して効果的である。例えば、1日あたりの投薬量は、通常は約0.002〜約1.0mg/kgの範囲、より通常は約0.008〜0.5mg/kg、および例えば0.015〜0.15mg/kg体重内である。いくつかの実例において、前記範囲の下限より下の投薬量レベルが適切であるよりも多いが、他の事例において、任意の有害な副作用も引き起こさずにさらに多い用量を用いることができ、したがって上記の投薬量範囲はいかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図しない。実際に投与される化合物の量は、治療条件、選ばれた投与経路、投与される実際の化合物または化合物、個別の患者の年齢、重量、および反応ならびに患者の症状の重症度を含む関連する状況を考慮して、医師によって決定されることが理解されるだろう。