(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアルコール系樹脂層が、前記樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液をダイコート法により塗布し、乾燥することにより形成される、請求項1から11のいずれかに記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、性能が均一化された偏光膜を製造させ得る積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層体の製造方法は、
長尺状の樹脂基材がロール状に巻き取られた樹脂基材ロールから該樹脂基材を巻き出す巻出し工程と、巻き出された樹脂基材を該樹脂基材のガラス転移温度(Tg)−15℃以上に加熱する工程と、
前記樹脂基材の表面にコロナ処理を施す工程と、前記
コロナ処理が施された樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成する工程とをこの順で含む。
1つの実施形態においては、上記巻き取られた状態で保管した後に、上記加熱工程を行う。
1つの実施形態においては、上記巻出し工程と、上記加熱工程と、
上記コロナ処理と、上記ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程とを連続して行う。
1つの実施形態においては、上記加熱工程を、上記樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+15℃以下で行う。
1つの実施形態においては、上記加熱工程を加熱炉内に設置された搬送ロールで上記樹脂基材を搬送しながら行う。
1つの実施形態においては、上記加熱炉内の搬送ロールの抱角が90°以上である。
1つの実施形態においては、上記加熱炉内の搬送ロールの中心間距離が2m以下である。
1つの実施形態においては、上記加熱工程をテンターにて上記樹脂基材を搬送しながら行う。
1つの実施形態においては、上記加熱による樹脂基材の収縮率が3%以下である。
1つの実施形態においては、上記樹脂基材が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂で形成されている。
1つの実施形態においては、上記樹脂基材が予め延伸されている。
1つの実施形態においては、上記ポリビニルアルコール系樹脂層が、上記樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液をダイコート法により塗布し、乾燥することにより形成される。
本発明の別の局面によれば、偏光膜の製造方法が提供される。この偏光膜の製造方法は、上記製造方法により得られた積層体を用いる。
1つの実施形態においては、上記積層体を延伸する工程を含む。
本発明のさらに別の局面によれば、偏光板の製造方法が提供される。この偏光板の製造方法は、上記製造方法により得られた偏光膜に保護フィルムを積層する工程を含む。
本発明のさらに別の局面によれば、延伸積層体が提供される。この延伸積層体は、樹脂基材と、該樹脂基材上に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する。
上記樹脂基材のポリビニルアルコール系樹脂層が形成される面はコロナ処理面である。上記ポリビニルアルコール系樹脂層の200mm(MD)×200mm(TD)のサイズ内における膜厚ムラは0.25μm以下であり、かつ上記ポリビニルアルコール系樹脂層の200mm(MD)×200mm(TD)のサイズ内における遅相軸ムラは0.50°以下である。
本発明のさらに別の局面によれば、積層体の製造装置が提供される。
1つの実施形態においては、上記製造装置は、長尺状の樹脂基材がロール状に巻き取られた樹脂基材ロールから該樹脂基材を巻き出す巻出し手段と、前記長尺状の樹脂基材を搬送する搬送ロールを備え、前記樹脂基材を該樹脂基材のガラス転移温度(Tg)−15℃以上に加熱する加熱炉と、加熱された樹脂基材
の表面にコロナ処理を施すコロナ処理手段と、樹脂基材のコロナ処理面にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布する塗布手段とを備える。
1つの実施形態においては、上記加熱炉内に設置された搬送ロールで上記樹脂基材を搬送しながら加熱する。
1つの実施形態においては、上記加熱炉内の搬送ロールの抱角が90°以上である。
1つの実施形態においては、上記加熱炉内の搬送ロールの中心間距離が2m以下である。
1つの実施形態においては、上記製造装置は、長尺状の樹脂基材がロール状に巻き取られた樹脂基材ロールから該樹脂基材を巻き出す巻出し手段と、前記長尺状の樹脂基材の両端部を把持して搬送するテンターを備え、前記テンターのクリップで両端部を把持された前記樹脂基材に対し、該樹脂基材のガラス転移温度(Tg)−15℃以上に加熱する加熱手段と、加熱された樹脂基材
の表面にコロナ処理を施すコロナ処理手段と、樹脂基材のコロナ処理面にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布する塗布手段とを備える。
1つの実施形態においては、上記テンターにて上記樹脂基材を搬送しながら加熱する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂基材に所定の温度以上の加熱処理を施すことにより、樹脂基材の表面凹凸(例えば、樹脂基材を巻き取った際に発生するゲージバンド)を緩和(均一化)することができる。その結果、樹脂基材上に厚みの均一性に優れたPVA系樹脂層を形成することができる。このような厚みの均一性に優れたPVA系樹脂層に各種処理を施すことで、性能(具体的には、膜厚、光学特性、外観)にムラが発生することなく、均一性に極めて優れた偏光膜(例えば、液晶テレビに求められる品質を十分に満足する)を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.積層体
図1は、本発明の1つの実施形態による積層体の概略断面図である。積層体10は、樹脂基材11上にポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層12を形成することにより得られる。
【0010】
A−1.樹脂基材
上記樹脂基材は、代表的には、長尺状とされている。樹脂基材の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
【0011】
樹脂基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が用いられる。中でも、非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0012】
樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような樹脂基材を用いることにより、PVA系樹脂の結晶化が急速に進まない温度での積層体の延伸を可能とし、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。一方、樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0013】
樹脂基材は、任意の適切な方法により成形される。成形方法としては、例えば、溶融押出法、溶液キャスト法(溶液流延法)、カレンダー法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中でも、溶融押出法が好ましい。
【0014】
樹脂基材表面には、表面改質処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよいし、易接着層が形成されていてもよい。このような処理によれば、樹脂基材とPVA系樹脂層との密着性を向上させることができる。表面改質処理および/または易接着層の形成は、後述の加熱処理前に行ってもよいし、加熱処理後に行ってもよい。また、後述する延伸を行う場合、その延伸前に行ってもよいし、延伸後に行ってもよい。
【0015】
1つの実施形態においては、後述の加熱処理の前に樹脂基材を延伸する。樹脂基材の延伸方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸でもよい。また、同時二軸延伸でもよいし、逐次二軸延伸でもよい。樹脂基材の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の樹脂基材の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。また、延伸方式は、特に限定されず、空中延伸方式でもよいし、水中延伸方式でもよい。
【0016】
樹脂基材の延伸方向は、適宜設定され得る。例えば、長尺状の樹脂基材を幅方向に延伸する。具体的には、樹脂基材を長手方向に搬送し、その搬送方向(MD)と直交する方向(TD)に延伸する。本明細書において、「直交」とは、実質的に直交する場合も包含する。ここで、「実質的に直交」とは、90°±5.0°である場合を包含し、好ましくは90°±3.0°、さらに好ましくは90°±1.0°である。樹脂基材を幅方向(TD)に延伸することにより、樹脂基材を有効に利用することができる。また、樹脂基材のTDにおける厚みを均一とし、後述の部分的な膜厚ムラを抑制することができる。
【0017】
樹脂基材の延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。延伸温度は、代表的には、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg−10℃〜Tg+80℃である。樹脂基材の形成材料としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合、延伸温度は、好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは90℃〜130℃である。
【0018】
樹脂基材の延伸倍率は、樹脂基材の元長に対して、好ましくは1.5倍以上である。このような範囲とすることにより、後述の部分的な膜厚ムラが良好に抑制され得る。一方、樹脂基材の延伸倍率は、樹脂基材の元長に対して、好ましくは3.0倍以下である。このような範囲とすることにより、後述の加熱工程においてシワの発生が良好に抑制され得る。
【0019】
A−2.巻取りおよび保管
1つの実施形態においては、上記長尺状の樹脂基材をロール状に巻き取る。樹脂基材成形時に部分的な膜厚ムラが生じ、この状態で巻き取ることにより樹脂基材に凹凸が生じ得る。巻取り張力は、代表的には60N/m〜150N/m(単位:N/mは単位幅長さ当たりの張力)である。巻き取った樹脂基材(樹脂基材ロール)は、次の工程に供されるまでの任意の適切な期間、巻き取った状態のまま保管(放置)され得る。例えば、樹脂基材の成形後、連続して上記PVA系樹脂層を形成しない(できない)場合に、樹脂基材は巻き取った状態のまま保管される。この保管期間が長くなると(例えば、3日以上)、凹凸の発生(凹凸の度合い・凹凸の発生数)が顕著となって、得られるPVA系樹脂層(積層体)に膜厚ムラが発生する傾向にある。したがって、樹脂基材ロールの保管期間が長いほど、後述の加熱処理による効果が顕著に得られ得る。なお、樹脂基材ロールは、任意の適切な雰囲気下に保管され得る。保管温度は、例えば15℃〜35℃である。相対湿度は、例えば40%RH〜80%RHである。
【0020】
A−3.加熱
上記樹脂基材を加熱する。具体的には、熱風、赤外線ヒーター、ロールヒーター等により樹脂基材を加熱する。加熱温度は、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)−15℃以上であり、好ましくはTg−10℃以上、さらに好ましくはTg−5℃以上である。樹脂基材の形成材料としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合、加熱温度は、好ましくは68℃以上である。このような温度で樹脂基材を加熱することにより、樹脂基材の表面凹凸を緩和(均一化)することができる。その結果、後述するPVA系樹脂層を良好に形成することができ、厚みの均一性に優れたPVA系樹脂層を形成することができる。一方、加熱温度は、好ましくは(Tg)+15℃以下、さらに好ましくはTg+10℃以下である。樹脂基材の形成材料としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合、加熱温度は、好ましくは80℃以下である。このような温度で樹脂基材を加熱することにより、シワ(熱シワ)の発生を良好に抑制することができる。
【0021】
加熱時間は、好ましくは70秒〜150秒、さらに好ましくは75秒〜100秒である。
【0022】
樹脂基材は、加熱により収縮し得る。例えば、加熱前に樹脂基材を幅方向に延伸した場合、加熱により樹脂基材は幅方向に収縮(TD収縮)し得る。樹脂基材の収縮率(TD収縮率)は、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1.5%以下である。このような範囲であれば、シワの発生が抑制され、優れた外観を得ることができる。なお、TD収縮率は下記式により算出される。
TD収縮率(%)={1−(加熱後の樹脂基材幅(W
1)/加熱前の樹脂基材幅(W
0))}×100
【0023】
1つの実施形態においては、樹脂基材を搬送しながら加熱する。上述のように、樹脂基材をロール状に巻き取った場合は、樹脂基材ロールから巻き出した樹脂基材に加熱処理を施すことが好ましい。加熱方法としては、例えば、加熱炉内に設置された搬送ロールで樹脂基材を搬送する方法、テンターにて樹脂基材を搬送しながら加熱する方法が挙げられる。前者によれば、設備の大型化を抑制することができる。後者によれば、シワの発生を極めて良好に抑制することができる。
【0024】
搬送ロールを用いる場合の具体例を
図2(a)および
図2(b)に示す。図示例では、オーブン炉A内に設置されたフリーロールR2〜R5により樹脂基材11をその長手方向に搬送することで、樹脂基材11を加熱している。生産速度の観点から、図示例のように、オーブン炉内にフリーロールを4本以上設置することが好ましい。
【0025】
オーブン炉内のフリーロールの抱角は、好ましくは90°以上である。
図2(a)に示す例では、フリーロールR2およびR5の抱角θを90°とし、フリーロールR3およびR4の抱角θを180°としている。
図2(b)に示す例では、フリーロールR2〜R5の抱角θを90°としている。このような抱角とすることにより、樹脂基材の収縮が抑制され、シワの発生を抑制することができる。なお、抱角とは、フリーロールを軸方向に垂直な断面から見たときの、フリーロールの中心点と樹脂基材とフリーロールとの接触開始点とを結んだ直線と、フリーロールの中心点と樹脂基材とフリーロールとの接触終了点とを結んだ直線とのなす角である。オーブン炉内のフリーロールの間隔(ロールの中心間距離)は、好ましくは2m以下である。また、オーブン炉の出入口を跨ぐように設置される2本のフリーロールの間隔(図示例では、R1−R2間、R5−R6間)も2m以下であることが好ましい。このような間隔とすることにより、樹脂基材の収縮が抑制され、シワの発生を抑制することができる。なお、本実施形態において、樹脂基材の収縮は、上記樹脂基材の延伸倍率、加熱温度等にも関連し得る。
【0026】
テンターを用いる場合の具体例を
図3に示す。図示例では、テンターの左右のクリップ21,21で樹脂基材11の両端部(搬送方向と直交する線上にある)をそれぞれ把持し、その長手方向に所定の速度で加熱ゾーンを搬送させることで、樹脂基材11を加熱している。搬送方向のクリップ間距離(隣接するクリップ端同士の距離)は、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。クリップ幅は、好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上である。本実施形態においては、樹脂基材のTD収縮は、例えば、左右のクリップ間距離を調整することにより制御することができる。具体的には、左右のクリップ間距離を変化させずに移動させた場合、TD収縮率は実質的に0%となる。逆に、左右のクリップ間距離を広げることにより樹脂基材はTD延伸され得る。樹脂基材のTD変化率は、好ましくは1.00倍以上、さらに好ましくは1.00倍〜1.10倍である。なお、TD変化率は下記式により算出される。
TD変化率(倍)=加熱後の樹脂基材幅(W
1)/加熱前の樹脂基材幅(W
0)
【0027】
A−4.PVA系樹脂層の形成
上記PVA系樹脂層を形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0028】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0029】
PVA系樹脂層は、好ましくは、樹脂基材上にPVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより形成される。塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が用いられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、樹脂基材に密着した均一な塗布膜が形成され得る。
【0030】
塗布液には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。また、添加剤としては、例えば、易接着成分が挙げられる。易接着成分を用いることにより、樹脂基材とPVA系樹脂層との密着性を向上させ得る。その結果、例えば、樹脂基材からPVA系樹脂層が剥がれる等の不具合を抑制して、後述の染色、水中延伸を良好に行うことができる。易接着成分としては、例えば、アセトアセチル変性PVAなどの変性PVAが用いられる。
【0031】
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
【0032】
1つの実施形態においては、ダイコート法が採用される。ダイコート法では、樹脂基材とダイ(例えば、ファウンテンダイ、スロットダイ)との間隙を一定にして塗布液を塗布するので、厚みの均一性に極めて優れた塗布膜が得られ得る。一方で、樹脂基材に凹凸が発生している場合、樹脂基材−ダイリップ間距離が均一とならず、均一な塗布膜を形成するのが困難となり得る。したがって、ダイコート法を採用する場合、上記加熱処理による効果が顕著に得られ得る。
【0033】
上記塗布液を、乾燥後のPVA系樹脂層の厚みが、好ましくは、3μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜20μmとなるように塗布する。上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
【0034】
好ましくは、上記加熱後に連続してPVA系樹脂層を形成する。例えば、加熱後に樹脂基材を巻き取ることなく、樹脂基材にPVA系樹脂層を形成する。上記加熱による効果を良好に得ることができるからである。
【0035】
なお、PVA系樹脂層を形成する前に、樹脂基材のPVA系樹脂層を形成する側にあらかじめ下塗り層(プライマー層)を形成してもよい。プライマー層を構成する材料としては、樹脂基材とPVA系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。例えば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
A−5.その他
1つの実施形態においては、上記樹脂基材ロールからの樹脂基材の巻出し(巻出し工程)と、樹脂基材の加熱(加熱工程)と、PVA系樹脂層の形成(PVA系樹脂層形成工程)とを連続して行う。このような実施形態によれば、上記加熱処理による効果を良好に得ることができる。本実施形態の具体例として、
図4に示すように、長尺状の樹脂基材を搬送する一連のラインで巻出し、加熱、およびPVA系樹脂層形成工程を順次行う形態が挙げられる。
図4に示す積層体製造装置100には、樹脂基材ロール30から樹脂基材11を巻き出す巻出しロール40と、樹脂基材11を加熱する加熱装置50と、樹脂基材11の表面に上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布する塗布装置60と、塗布された塗布液を乾燥する乾燥装置70と、積層体10を巻き取る巻取りロール80とが備えられている。この他にも、積層体製造装置100には、複数の搬送ロール90が備えられている。
【0037】
B.延伸積層体
本発明の延伸積層体は、上記積層体を延伸することにより作製される。1つの実施形態においては、延伸積層体は、上記積層体を空中延伸方式により延伸倍率1.5倍以上3.0倍以下で延伸することにより作製される。積層体の延伸方法の詳細については、後述のとおりである。延伸積層体においてPVA系樹脂層の200mm(MD)×200mm(TD)のサイズ内における膜厚ムラは、好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.20μm以下である。延伸積層体においてPVA系樹脂層の200mm(MD)×200mm(TD)のサイズ内における遅相軸ムラは、好ましくは0.50°以下、さらに好ましくは0.30°以下、特に好ましくは0.25°以下である。
【0038】
C.偏光膜
本発明の偏光膜は、上記積層体のPVA系樹脂層を偏光膜とするための処理を施すことにより作製される。
【0039】
上記偏光膜とするための処理としては、例えば、染色処理、延伸処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理が挙げられる。これらの処理は、目的に応じて適宜選択され得る。また、処理順序、処理のタイミング、処理回数等、適宜設定され得る。以下、各々の処理について説明する。
【0040】
(染色処理)
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂層を二色性物質で染色することにより行う。好ましくは、PVA系樹脂層に二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に積層体を浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
【0041】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。二色性物質は、好ましくは、ヨウ素である。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部〜15重量部である。
【0042】
染色液の染色時の液温は、好ましくは20℃〜40℃である。染色液にPVA系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、好ましくは10秒〜300秒である。このような条件であれば、PVA系樹脂層に十分に二色性物質を吸着させることができる。また、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光膜の偏光度もしくは単体透過率が所定の範囲となるように、設定することができる。1つの実施形態においては、得られる偏光膜の偏光度が99.98%以上となるように、浸漬時間を設定する。別の実施形態においては、得られる偏光膜の単体透過率が40%程度となるように、浸漬時間を設定する。
【0043】
(延伸処理)
積層体の延伸方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸(例えば、テンター延伸機を用いる方法)でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。また、同時二軸延伸(例えば、同時二軸延伸機を用いる方法)でもよいし、逐次二軸延伸でもよい。積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
【0044】
延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させながら行う水中延伸方式であってもよいし、空中延伸方式であってもよい。好ましくは、水中延伸処理を少なくとも1回施し、さらに好ましくは、水中延伸処理と空中延伸処理を組み合わせる。水中延伸によれば、上記樹脂基材やPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を製造することができる。
【0045】
積層体の延伸方向としては、任意の適切な方向を選択することができる。1つの実施形態においては、長尺状の積層体の長手方向に延伸する。具体的には、積層体を長手方向に搬送し、その搬送方向(MD)である。別の実施形態においては、長尺状の積層体の幅方向に延伸する。具体的には、積層体を長手方向に搬送し、その搬送方向(MD)と直交する方向(TD)である。
【0046】
積層体の延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。空中延伸方式を採用する場合、延伸温度は、好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、さらに好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、特に好ましくはTg+15℃以上である。一方、積層体の延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
【0047】
延伸方式として水中延伸方式を採用する場合、延伸浴の液温は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは50℃〜85℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。
【0048】
水中延伸方式を採用する場合、積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することが好ましい(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。
【0049】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を作製することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0050】
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
【0051】
積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
【0052】
積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、積層体の元長に対して、代表的には4.0倍以上、好ましくは5.0倍以上である。このような高い延伸倍率は、例えば、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。なお、本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
【0053】
好ましくは、水中延伸処理は染色処理の後に行う。
【0054】
(不溶化処理)
上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。特に水中延伸方式を採用する場合、不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化処理は、積層体作製後、染色処理や水中延伸処理の前に行う。
【0055】
(架橋処理)
上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋処理は水中延伸処理の前に行う。好ましい実施形態においては、染色処理、架橋処理および水中延伸処理をこの順で行う。
【0056】
(洗浄処理)
上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
【0057】
(乾燥処理)
乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
【0058】
得られる偏光膜は、実質的には、二色性物質が吸着配向されたPVA系樹脂膜である。偏光膜の厚みは、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。このような偏光膜は、環境試験(例えば、80℃環境試験)においてクラック等の発生が抑制され得る。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。このような偏光膜は、製造時等における搬送性に極めて優れ得る。
【0059】
偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜は、単体透過率42%以上において偏光度が99.9%以上であることが好ましい。
【0060】
D.偏光板
本発明の偏光板は、上記偏光膜を有する。好ましくは、偏光板は、上記偏光膜と、この偏光膜の少なくとも片側に配置された保護フィルムとを有する。この保護フィルムとしては、上記樹脂基材をそのまま用いてもよいし、上記樹脂基材とは別のフィルムを用いてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜100μmである。
【0061】
上述のとおり、1つの実施形態においては、上記樹脂基材は偏光膜から剥離されることなく、保護フィルムとしてそのまま用いられる。別の実施形態においては、偏光膜から上記樹脂基材は剥離され、別のフィルムを積層する。保護フィルムは、偏光膜に接着層を介して積層してもよいし、密着させて(接着層を介さずに)積層してもよい。接着層は、代表的には、接着剤または粘着剤で形成される。本発明によれば、厚みの均一性に極めて優れた偏光膜が得られるので、偏光膜への保護フィルムの積層を良好に行うことができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0063】
[実施例1−1]
(積層体の作製)
吸水率0.75%、ガラス転移温度(Tg)75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)で構成され、予め115℃で2.0倍にTD延伸された、長尺状で厚み100μmの樹脂基材を張力100N/mにてロール状に巻き取って樹脂基材ロールとし、巻き取った状態で25℃,相対湿度60%RH環境下に30日間保管した。
その後、樹脂基材ロールから樹脂基材を巻き出し、樹脂基材を搬送させながら70℃で60秒間熱処理を施した。
続けて、樹脂基材の片面にコロナ処理を施した。このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃でダイコート法により塗布した後に60℃で200秒間乾燥して厚み10μmのPVA系樹脂層を形成して積層体を作製した。
【0064】
(偏光膜の作製)
得られた積層体を、115℃のオーブン内で周速の異なるロール間で長手方向に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対してホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水にヨウ素とヨウ化カリウムとを重量比1:7で配合して得られたヨウ素水溶液)に、得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が40%以下となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対してヨウ化カリウムを3重量部、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対してホウ酸を4重量部、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で長手方向に2.7倍に一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対してヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に10秒間浸漬させた後、60℃の温風で60秒間乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜を形成した。
【0065】
[実施例1−2]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を75℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0066】
[実施例1−3]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を80℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0067】
[実施例1−4]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を90℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0068】
[実施例1−5]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を100℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0069】
[実施例2−1]
(積層体の作製)
実施例1−1と同様にして、積層体を作製した。
【0070】
(偏光膜の形成)
得られた積層体を、115℃の加熱下で、テンター延伸機を用いて、自由端一軸延伸により幅方向に4.0倍に延伸した(延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対してホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水にヨウ素とヨウ化カリウムとを重量比1:7で配合して得られたヨウ素水溶液)に、得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が40%以下となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対してヨウ化カリウムを3重量部、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対してヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に10秒間浸漬させた後、60℃の温風で60秒間乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。
このようにして、樹脂基材上に厚み2.5μmの偏光膜を形成した。
【0071】
[実施例2−2]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を75℃としたこと以外は実施例2−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0072】
[実施例2−3]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を100℃としたこと以外は実施例2−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0073】
[比較例1−1]
積層体の作製に際し、熱処理を施さなかったこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0074】
[比較例1−2]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を50℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0075】
[比較例1−3]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を55℃としたこと以外は実施例1−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0076】
[比較例2−1]
積層体の作製に際し、熱処理の温度を55℃としたこと以外は実施例2−1と同様にして、樹脂基材上に偏光膜を形成した。
【0077】
(評価)
各実施例および比較例について、以下の評価を行った。
1.膜厚ムラ
(I)ポリビニルアルコール水溶液を塗布し乾燥した後(延伸前)および(II)空中延伸後のPVA系樹脂層の膜厚を、大塚電子製「MCPD3000」を用いて測定した。欠点部を含む部分(元々、ゲージバンドがあった部分)を200mm(MD)×200mm(TD)のサイズに切り出して測定サンプルとし、その膜厚をMD、TD共に1mmピッチで面内測定し、欠点部の最大膜厚と最小膜厚の差を評価した。
2.遅相軸ムラ・吸収軸ムラ
(I)ポリビニルアルコール水溶液を塗布し乾燥した後(延伸前)のPVA系樹脂層の遅相軸方向、(II)空中延伸後のPVA系樹脂層の遅相軸方向および(III)偏光膜の吸収軸方向を、Axometrics社製「Axoscan」を用いて測定した。欠点部を含む部分を200mm(MD)×200mm(TD)のサイズに切り出して測定サンプルとし、面内における欠点部の最大軸方向差を測定した。なお、(I)および(II)については、ガラス板に粘着剤層を介してPVA系樹脂層を貼り合わせた後、樹脂基材を剥離してPVA系樹脂層の遅相軸を測定した。
3.外観
(I)ポリビニルアルコール水溶液を塗布し乾燥した後(延伸前)のPVA系樹脂層、(II)空中延伸後のPVA系樹脂層および(III)偏光膜の外観を目視にて観察した。
(I)および(II)に関しては、
図5(a)に示すように、積層体(サンプル)の上下それぞれに市販の偏光板を重ね合わせた状態で下方から光を照射し、上方から目視にて観察した。その際、2枚の偏光板を、互いの吸収軸が直交するように配置し、積層体の延伸方向と、下側の偏光板の吸収軸とが直交するように配置した。
(III)に関しては、
図5(b)に示すように、積層体(サンプル)の下に市販の偏光板を重ね合わせた状態で下方から光を照射し、上方から目視にて観察した。その際、積層体の偏光膜の吸収軸と下側の偏光板の吸収軸とが直交するように配置した。
なお、表1に示す評価基準は以下の通りである。
○:欠点部のムラが視認不可
×:欠点部のムラが視認可
4.偏光度
分光光度計(村上色彩社製、製品名「Dot−41」)を用いて、偏光膜の単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式にて求めた。なお、これらの透過率は、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
偏光度(P)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}
1/2×100
【0078】
【表1】
【0079】
実施例では、全ての時点においてPVA系樹脂層の膜厚ムラおよび遅相軸ムラ・吸収軸ムラが抑制されていた。また、外観にも優れていた。なお、実施例1−5および実施例2−3では、シワの発生が目視にて確認された。これは、加熱処理により樹脂基材に発生した熱シワによるものと考えられる。