(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水素供与体Bが次のゲルベアルコール:2−ブチル−1−オクタノール、2−ペンチル−1−ノナノール、2−ヘキシルデカン−1−オール、2−オクチルデカン−1−オール及び2−オクチルドデカン−1−オール、並びにそれらの混合物:より成る群から選択される、請求項1、2又は4に記載の組成物R。
前記熱安定剤Cがアミン、化学構造中に立体障害基及びニトロキシル官能基を含む化合物、化学構造中に立体障害基及びフェノール官能基を含む化合物、有機リン化合物並びにそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1、2又は6に記載の組成物R。
【背景技術】
【0003】
光誘起重合又は光重合反応の原理は、反応性官能基(例えばアクリル、ビニル、エポキシ等)を有するモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを含む組成物を光放射に曝露して重合を開始させるために活性種(フリーラジカルやカチオン)を作り出すことから成る。これらの種の生成は、モノマーの直接励起によって起こるものではなくて、感光性配合物中に含有される1種以上の添加剤、一般的に「光開始剤」と称されるものによって引き起こされる。
【0004】
光開始剤は、次の2つの主要なファミリーにカテゴライズされる:
・ラジカル光開始剤、及び
・カチオン光開始剤。
【0005】
ラジカル光開始剤はとりわけ、芳香族ケトンであって、紫外線(UV)下に曝露した後に
・カルボニル官能基(例えばアシルホスホネート誘導体、アシルホスフィンオキシド誘導体、ベンゾインエーテル誘導体及びアセトフェノン誘導体)に対してα位においてホモリティック開裂を起こして2つのラジカルフラグメント(その一方はベンゾイル基である)を生成するもの(タイプIの光開始剤)、又は
・カルボニル官能基(例えばアシルホスホネート誘導体、アシルホスフィンオキシド誘導体、ベンゾインエーテル誘導体及びアセトフェノン誘導体)に対してα位においてホモリティック開裂を起こして2つのラジカルフラグメント(その一方はベンゾイル基である)を生成するもの(タイプIの光開始剤)、又は
・励起状態において水素付与性分子(より一般的には「共開始剤」と称される)から水素を引き離すことによって促進された時にフリーラジカルを生成し、これが不活性セチル基及び対応ドナーから誘導される開始剤基の生成をもたらすもの(タイプIIの光開始剤)
である。
【0006】
タイプIの光開始剤の例としては、α−ヒドロキシケトン、ベンゾインエーテル、α−アミノ芳香族ケトン及びアシルホスフィンオキシドを挙げることができる。タイプIIの光開始剤の例としては、イソプロピルチオキサントン(ITX)、ベンゾフェノン及びカンファーキノン(CQ)を挙げることができる。共開始剤の例としては、フェニルテトラゾールチオール、トリス(トリメチルシリル)シラン及び芳香族アミン、例えばエチルジメチルアミノベンゾエート(EDB)を挙げることができる。
【0007】
ラジカル重合反応におけるタイプI又はII光開始剤の活性は、大気中の酸素によって強く抑制される。実際、酸素は、これらの光開始剤の一重項励起状態及び三重項励起状態に関するエネルギー移動によって、並びにフリーラジカルを開始活性がないペルオキシル基に転化させることによって、阻害特性を有することが知られている。
【0008】
カチオン光開始剤の中では、光分解の後に且つ水素付与性分子の存在下で、
・ブレンステッド酸、例えばオニウム塩(ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アルコキシピリジニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びスルホニウム塩)
を放出するか、
・ルイス酸、例えば有機金属塩(本質的にフェロセニウム塩)
を放出するかに応じて、しばしば2つのカテゴリーに分けられる。
【0009】
オニウム塩の光分解に応じて、発生するプロトン酸は、ラジカルルートでは重合しないビニルエーテルやヘテロ環モノマー(エポキシド、ラクトン、環状エーテル、エポキシシリコーン類)等のモノマーのカチオン重合を開始させることができる。このタイプの重合の主な特徴は、酸素に対する不感受性及びその「リビング」性状である。実際、カルボカチオンは互いに反応せず、ひとたび開始されれば重合はモノマーが完全に消費するまで暗闇の中で継続することができるだろう。
【0010】
オニウム塩については、UV放射線の吸収を担うのはカチオン部分であり、アニオン部分に関しては、これは生成する酸の強度を決定し、結果として重合開始速度を決定する。その求核性状が弱ければ弱いほど、光分解反応が速くなる。カチオン光開始剤中に用いられる様々な対イオンは、従って、それらの反応性に応じてカテゴライズすることができる(降順)。
SbF
6->(C
6F
5)B
->AsF
6->PF
6->BF
4->ClO
4-
【0011】
用途に応じて、光増感剤を光開始剤と組み合わせることもできる。光増感剤は、光開始剤とは異なる波長を吸収する分子であり、従ってそれらのスペクトル感度を拡張させる。光増感は、励起状態の光増感剤から光開始剤へのエネルギー移動から成る。光増感剤は、開始剤によって吸収される光の割合を増加させ、従って光分解収率を増大させる。かくして、反応性の種の発生量が多ければ多いほど、重合はより一層迅速になる。光増感剤の例としては、アントラキノン、アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、キサントン、カルバゾール誘導体、フルオレノン及びアシルホスホンオキシドを挙げることができる。
【0012】
カチオン光開始剤の中では、米国特許第4256828号明細書に記載されたヨードニウム又はスルホニウム塩を挙げることができる。欧州特許公開第0562897号公報には、構造中に反応性有機官能基を含むモノマー、オリゴマー又はポリマーと関連付けられた重合又は架橋開始剤が記載されている。特に、欧州特許公開第0562897号公報には、光開始剤がメタノール中の50重量%の溶液状にあって次の構造を有するものである組成物が記載されている。
【化1】
【0013】
この組成物は、エポキシ化モノマーをUV照射することによって重合及び架橋させることによって紙基材上にコーティングを製造するためのものである。
【0014】
しかし、ホウ酸ヨードニウムタイプの光開始剤は、特に有効であるものの、アルコール溶液(通常はメタノール又はイソプロパノール溶液中)を用いて配合され、これらの溶媒の引火点に関連した安全性の問題を示すという大きな欠点があることがわかっている。さらに、おそらく使用後の光開始剤の分解のせいで特徴的な臭いがあることが、使用者に不快な知覚をもたらす。従って、このことは、特に生産速度がますます高くなっていく工業的環境においては、それらを使わないようにすることの要望が生じてきている。工業的環境におけるこの問題に対処するための解決策は、高価な設備(ベンチレーション、吸気フード)の使用を伴うものである。施設及び使用割合によっては、これらの臭いは、使用者が(過度に)有害なものと認知した瞬間から、「嗅覚公害」と言われることさえあり得る。
【0015】
本明細書において用語「臭い」とは、規格ISO 5492、NF EN 13725に従って決定され、所定の揮発性物質の臭いを嗅いだ時に嗅覚器官が感知する官能属性と定義される。
【0016】
近年、ヨードニウム塩タイプのカチオン光開始剤の不快な感知というこの問題に対応するために、国際公開WO2009/083564号(A1)では、ホウ酸ヨードニウムタイプの光開始剤とアントラセンジエーテル、ナフタレンジエーテル及びベンゼンジエーテルから選択される特定のカテゴリーの光増感剤とを組み合わせることが提案されている。しかしながら、この組合せに関連した主な欠点は、系の反応性が工業的用途のためには低すぎるということである。実際、架橋させる物体のゲル硬化のために必要な時間は、6秒〜120秒の範囲である。
【0017】
従って、基材上のワニス及びコーティングの産業界では、常に、カチオン光開始剤として有用な新規のカチオン光開始剤又は組成物であって、
・できるだけ高い重合/架橋反応性及び速度を達成することを可能にして、特に例えばコーティング(インク、ワニス)に関して工業的コーティング速度を維持することができるようにしつつ;
・しかし使用者が不快と感じる臭いがあることに関連した問題を示さず、従ってこの嗅覚公害の問題を解決するために高価な技術的解決策を設置することを回避する:
ものが求められている。
【0018】
臭い又は混合臭の感知は経験的によく知られている。しかし、この分野での理論的知識は、常に進歩はしているものの、化合物又は化合物の混合物について、
・実際に感知する臭いやその「嗅覚閾値」(個々のパネル(検査員)が感知可能な臭いを生じる最低濃度);
・臭いを感知した時にそれが快いものであるかどうか;及び
・その化合物又はその化合物の混合物による臭いの強さ:
を予測することは、依然として困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これらの状況において、本発明の本質的な目的の1つは、できるだけ高い重合/架橋反応性及び速度を達成することを可能にして、特にインクやワニスのようなコーティング産業において用いることができ、しかし(特に重合/架橋の後に)使用者が不快と感じる臭いがあることに関連した問題を示さず、従ってこの嗅覚公害の問題を解決するために高価な技術的解決策を設置することを回避する光開始剤組成物を用いて、熱活性化、化学線活性化又は電子ビームによる活性化の下でカチオン重合又は架橋可能な組成物を提供することにある。
【0021】
本発明の別の本質的な目的は、本発明に従う組成物を用いて基材又は物品上にフィルム又はコーティングを製造するための方法を提供することにある。
【0022】
本発明の最後の目的は、本発明に従うカチオン重合又は架橋可能な組成物から得られたフィルム又はコーティングで少なくとも1つの表面をコーティングされた基材又は物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの様々な目的は、本発明によって達成される。本発明は、まず最初に、第1の主題において、熱活性化及び/又は化学線活性化及び/又は電子ビームによる活性化の下でカチオン重合及び/又は架橋可能な新規の組成物Rであって、以下の1)〜6)を含むものに関する:
1)ケイ素原子を含有しないカチオン重合及び/又は架橋可能な少なくとも1種の有機化合物D;
2)有効触媒量の、以下のa)〜c)を含むカチオン光開始剤組成物P:
a)次式(I)’の少なくとも1種のヨードニウム塩A:
【化2】
[ここで、
記号R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ10〜30個の炭素原子、好ましくは10〜20個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表し、
a及びbは0≦a≦3、1≦b≦4、a+b=4の整数であり、
c及びc’は同一であっても異なっていてもよく、1〜5の範囲の整数であり、好ましくはc及びc’は1であり、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、
・塩素若しくはフッ素原子(0≦a≦3)、又は
・OH官能基(0≦a≦2)
を表し、
記号R
3は同一であっても異なっていてもよく、少なくとも2個のハロゲン原子(好ましくは少なくとも2個のフッ素原子)で置換されたフェニル基、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)より成る群から選択される少なくとも1個の電子求引基で置換されたフェニル基;又はビフェニル、ナフチル等の少なくとも2個の芳香族核を含有するアリール基{随意に少なくとも1個のハロゲン原子(特にフッ素原子)で、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)等の電子求引性基で置換されたもの}:
を表す]、
b)次式(II):
【化3】
のゲルベ(Guerbet)アルコールより成る群から選択される少なくとも1種の水素供与体(水素ドナーとも言う)B
(ここで、
記号R
4及びR
5は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ4〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
該ゲルベアルコールの合計炭素原子数は10〜20であることを追加の条件とする)、
c)随意としての少なくとも1種の熱安定剤C;
3)随意としての有効量の少なくとも1種の光増感剤E;
4)随意としての少なくとも1種の有機溶媒F;
5)随意としての少なくとも1種の添加剤Q;並びに
6)随意としての少なくとも1種の熱安定剤C。
【0024】
好ましくは、熱活性化及び/又は化学線活性化及び/又は電子ビームによる活性化の下でカチオン重合及び/又は架橋可能な組成物Rは、次の1)〜6)を含む:
1)ケイ素原子を含有しないカチオン重合及び/又は架橋可能な少なくとも1種の有機化合物D;
2)有効触媒量の、以下のa)〜c)を含むカチオン光開始剤組成物P:
a)次式(I)の少なくとも1種のヨードニウム塩A:
【化4】
[ここで、
記号R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ10〜30個の炭素原子、好ましくは10〜20個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表し、
a及びbは0≦a≦3、1≦b≦4、a+b=4の整数であり、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、
・塩素若しくはフッ素原子(0≦a≦3)、又は
・OH官能基(0≦a≦2)
を表し、
記号R
3は同一であっても異なっていてもよく、少なくとも2個のハロゲン原子(好ましくは少なくとも2個のフッ素原子)で置換されたフェニル基、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)より成る群から選択される少なくとも1個の電子求引基で置換されたフェニル基;又はビフェニル、ナフチル等の少なくとも2個の芳香族核を含有するアリール基{随意に少なくとも1個のハロゲン原子(特にフッ素原子)で、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)等の電子求引性基で置換されたもの}:
を表す]、
b)次式(II):
【化5】
のゲルベアルコールより成る群から選択される少なくとも1種の水素供与体B
(ここで、
記号R
4及びR
5は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ4〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
該ゲルベアルコールの合計炭素原子数は10〜20であることを追加の条件とする)、
並びに
c)随意としての少なくとも1種の熱安定剤C;
3)随意としての有効量の少なくとも1種の光増感剤E;
4)随意としての少なくとも1種の有機溶媒F;
5)随意としての少なくとも1種の添加剤Q;並びに
6)随意としての少なくとも1種の熱安定剤C。
【発明の効果】
【0025】
本発明者らは、カチオン部分について芳香核のレベルにおいて10〜30個の炭素原子を有するアルキル基を有するホウ酸ヨードニウムである特定の光開始剤と、ゲルベアルコールという特定のカテゴリーのアルコールから選択される水素供与体Bとの組合せを選択することによって、使用者が感知する不快臭の存在に関連した問題がもはや存在せず、嗅覚公害の問題を解決するために高価な技術的解決策を設置することを回避するという功績を遂げた。
【0026】
別の重要な利点は、この新規の光開始剤が先行技術の光開始剤と比較してより一層良好な反応性を有し、例えばコーティング(ワニス)に関してコーティング速度を高めることを可能にするということに関する。
【0027】
さらに、カチオン光開始剤としてのこの組成物Pの使用には、カチオン光開始剤として用いた時に揮発性有機化合物(VOC)の生成を減少させるという利点がある。
【0028】
この組成物Pはまた、メタノールやイソプロパノールのようなアルコール中に配合される先行技術のホウ酸ヨードニウム光開始剤とは対照的に、混合物に高い引火点を付与することによって引火の危険を取り除くという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1つの好ましい実施形態において、本発明に従うゲルベアルコールは、追加的にヨードニウム塩A用の溶媒としての働きをして、組成物Pが本発明に従う水素供与体B中の溶液状のヨードニウム塩Aの混合物の形にあるようにすることもできる。当業者であれば、より高濃度又はより低濃度のヨードニウム塩溶液が得られるように各成分の濃度や手順を調節することができるであろう。
【0030】
好ましくは、前記組成物Pは、
a)組成物Pの総重量に対して1〜95重量部、好ましくは20〜80重量部の、ヨードニウム塩A、
b)組成物Pの総重量に対して5〜99重量部、好ましくは20〜80重量部の、少なくとも1種の水素供与体B(好ましくはゲルベアルコール)、及び
c)組成物Pの総重量に対して0〜5重量部の、少なくとも1種の熱安定剤C
を含む。
【0031】
ゲルベアルコールはよく知られており、商品として入手できる。それらは、同等炭素数において直鎖状同族体が固体の状態にあるのに対して、低い融点を有するという利点を有する。
【0032】
1つの好ましい実施形態に従えば、水素供与体Bは下記の式を有するゲルベアルコールである:
【化6】
(ここで、nは5〜10(5、6、7、8、9又は10)の整数、好ましくは6〜10の整数である)。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態に従えば、水素供与体Bは、次のゲルベアルコール:2−ブチル−1−オクタノール、2−ペンチル−1−ノナノール、2−ヘキシルデカン−1−オール、2−オクチルデカン−1−オール及び2−オクチルドデカン−1−オール、並びにそれらの混合物:より成る群から選択される。
【0034】
採用される命名法に従って、次のゲルベアルコール(それらの内のいくつかは2種以上の成分の混合物の形で商品として入手できる)を挙げることができる:
・2−ブチル−1−オクタノール、CAS No.: 3913-02-8、5−(ヒドロキシメチル)ウンデカンとも称される;ゲルベC
12;ゲルベドデカノール;Isofol(登録商標)12又はJarcol(登録商標)I-12;Sasol Germanyより入手可能、
・2−ペンチル−1−ノナノール、CAS No.: 5333-48-2、
・2−ヘキシルデカン−1−オール、CAS No.: 2425-77-6、ゲルベC
16;ゲルベヘキサデカノール;Guerbitol 16;Isofol(登録商標)16;又はJarcol(登録商標)I-16、
・2−オクチルデカン−1−オール、又はオクチルデカノール(CAS: 70693-04-8)、Sasol Germanyから入手可能又はJarcol(登録商標)I-18Tの名称で混合物として見出せる(C
16、C
18及びC
20ゲルベアルコールの混合物)、並びに
・2−オクチルドデカン−1−オール、CAS No.: 5333-42-6、又は2−オクチル−1−ドデカノールJarcol(登録商標)I-20(Jarchem Innovative Ingredients社より販売されているか又はコグニス(BASF)ジャパン若しくは花王株式会社から入手できるJarcol(登録商標)シリーズの製品)。
【0035】
好ましくは、ヨードニウム塩Aのアニオンは、次のアニオン:[B(C
6F
5)
4]
-、[B(C
6H
3(CF
3)
2)
4]
-、[B(C
6H
4OCF
3)
4]
-、[B(C
6H
4CF
3)
4]
-、[(C
6F
5)
2BF
2]
-、(C
6F
5BF
3]
-及び[B(C
6H
3F
2)
4]
-:より成る群から選択され、好ましくは次のアニオン:B(C
6F
5)
4-及び[B(C
6H
3(CF
3)
2)
4]
-:より成る下位群から選択される。
【0036】
好ましくは、ヨードニウム塩Aのカチオン部分について、記号R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ次の基より成る群から選択されるアルキル基を表す:
【化7】
{ここで、
xは6〜16、好ましくは6〜11の範囲の整数であり、
yは5〜15、好ましくは5〜10の範囲の整数であり、
n及びmは同一であっても異なっていてもよく、それらの合計n+mが5〜15の範囲(境界を含む)となる整数である}。
【0037】
採用される調製モードに従って、ヨードニウム塩Aは、アニオン部分については同様の構造だがしかしアルキルフェニルヨードニウムのカチオン部分については異なる構造の塩の混合物の形にあることができ、そのアルキル鎖は直鎖状又は分岐鎖状であり、10〜30個の炭素原子、好ましくは10〜20個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜15個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜13個の炭素原子、さらにより一層好ましくは12個の炭素原子から成る。
【0038】
1つの好ましい実施形態に従えば、ヨードニウム塩Aは、次の構造(IV)を有する:
【化8】
(ここで、
記号R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ10〜30個の炭素原子、好ましくは10〜20個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す)。
【0039】
1つの特に好ましい実施形態に従えば、ヨードニウム塩Aは、次の構造から選択される。
【化9】
【0040】
本発明の主題であるヨードニウム塩Aは、カチオン部分の塩(ハライド、例えばクロリド又はヨージド)とアニオン部分のアルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム又はカリウム)との間の交換反応によって調製することができる。操作条件(試薬のそれぞれの量、溶媒の選択、時間、温度、撹拌)は、当業者の範囲内である;該条件は、所望のオニウムホウ酸塩を、生成した沈殿の濾過によって固体の形で又は適当な溶媒を用いた抽出によってオイルの形で、回収することを可能にするものでなければならない。上記のカチオン部分のヨージドを合成するための手順は、周知である。この点については、特に欧州特許公開第0562897号公報を参照されたい。ホウ酸塩アニオン部分のアルカリ金属塩を合成するための手順は、特に例えば欧州特許公開第0562897号公報において、周知である。
【0041】
本発明に従う組成物Pは、有利には、次の工程を含む方法によって調製することができる:
a)下記の式(VIII)及び(IX)の前駆体塩を調製する:
【化10】
[これら式中、
記号R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ10〜30個の炭素原子、好ましくは10〜20個の炭素原子、さらにより一層好ましくは10〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、
a及びbは0≦a≦3、1≦b≦4、a+b=4の整数であり、
記号Xは同一であっても異なっていてもよく、
・塩素若しくはフッ素原子(0≦a≦3)、又は
・OH官能基(0≦a≦2)
を表し、
記号R
3は同一であっても異なっていてもよく、
・少なくとも2個のハロゲン原子(好ましくは少なくとも2個のフッ素原子)で置換されたフェニル基、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)より成る群から選択される少なくとも1個の電子求引基で置換されたフェニル基;又は
・ビフェニル、ナフチル等の少なくとも2個の芳香族核を含有するアリール基{随意に少なくとも1個のハロゲン原子(特にフッ素原子)で、若しくは−CF
3、−OCF
3、−NO
2、−CN、−SO
2−C
nF
2n+、−(CO)−C
nF
2n+1、−O−C
nF
2n+1及び−C
nF
2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)等の電子求引性基で置換されたもの}:
を表し、
記号Z
+は原子又は原子団のカチオンであり、好ましくは記号Z
+はNa
+、Li
+又はK
+であり、
記号Y
-は原子又は原子団のアニオンであり、好ましくは記号Y
-はブロミド(Br
-)又はヨージド(I
-)アニオンである];
b)式(VIII)の前駆体塩と水とから成る混合物1番を調製し、且つ式(IX)の少なくとも1つの前駆体塩と本発明に従う前記の少なくとも1種のゲルベアルコールとから成る混合物2番を調製する;
c)混合物1番又は混合物2番を反応器に撹拌しながら随意に還流下で入れ、好ましくは反応器の温度を上昇させて30〜80℃の範囲、さらにより一層好ましくは50〜80℃の範囲に保つ;
d)次いで工程c)において反応器中に混合物2番を存在させた場合には混合物1番を、工程c)において反応器中に混合物1番を存在させた場合には混合物2番を、撹拌しながら加え、反応器の温度を好ましくは30〜80℃の範囲、さらにより一層好ましくは50〜80℃の範囲に保つ;
e)反応が終了した時に、反応器を随意に冷まし、有機相を水性相から分離する;
f)随意に前記有機相を水で洗浄する;
g)随意に前記有機相を脱蔵させる;
h)前記有機相を回収する。これが組成物Pであり、これに少なくとも1種の熱安定剤Cを随意に加える。
【0042】
前駆体塩(VIII)の例としては、次の塩を挙げることができる:トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS No.: 136040-19-2)、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(エチルエーテルリガンドと錯化された形、CAS No.: 155543-02-5)、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS No.: 149213-65-0)及びカリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS No.: 89171-23-3)(これらは)商品として入手できるよく知られた化合物である)。式(VIII)の好ましい前駆体塩は、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS No.: 149213-65-0)及びカリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS No.: 89171-23-3)である。
【0043】
式(IX)の前駆体塩はよく知られた化合物であり、欧州特許公開第2428501A1号公報に記載されたプロトコルに従って調製することができる。式(IX)のこれらの前駆体塩は、2種又は3種又はそれ以上の化合物の混合物の形にあることができる。
【0044】
1つの好ましい実施形態に従えば、本発明に従う方法の工程b)において、式(IX)の少なくとも1種の前駆体塩と少なくとも1種のゲルベアルコールとから成る混合物2番の撹拌しながらの調製は、反応器中で40〜85℃の範囲、好ましくは50〜80℃の範囲の温度において実施され、次いで工程c)においてこの温度を保ち、工程d)において混合物2番に混合物1番を、反応器の温度を40〜85℃の範囲、さらにより一層好ましくは 50〜80℃の範囲に保ちながら、加える。
【0045】
1つの好ましい実施形態において、本発明に従うゲルベアルコールは、追加的にヨードニウム塩A用の溶媒としての働きをして、組成物Pが本発明に従う水素供与体B中の溶液状のヨードニウム塩Aの混合物の形にあるようにすることもできる。当業者であれば、式(IX)の少なくとも1種の前駆体塩及び少なくとも1種のゲルベアルコールのより高濃度又はより低濃度の溶液が得られるように各成分の濃度を調節することができるであろう。
【0046】
1種以上の熱安定剤Cを本発明に従う組成物P中又は重合及び/若しくは架橋させるべき組成物(その中に組成物Pを存在させてカチオン光開始剤として用いる)中に存在させることができる。熱安定剤Cの例は、J.F. Rabek, "Photostabilization of Polymers; Principles and Applications", Elsevier Applied Science, NY, 1990又は"Plastics Additives Handbook"第5版、H. Zweifel編集、Hanser出版社、2001に記載されている。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態に従えば、熱安定剤Cは、アミン、化学構造中に立体障害基及びニトロキシル官能基を含む化合物、化学構造中に立体障害基及びフェノール官能基を含む化合物、有機リン化合物並びにそれらの組合せより成る群から選択される。
【0048】
より一層特定的な例としては、以下のものを挙げることができる:
・有機ホスファイト及びホスホナイト、例えば次の化合物:トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト;
・有機リン化合物の例は、米国特許第6444733号明細書に記載されている。スルフィドを含むリン含有化合物、例えば次の化合物:トリスメチルチオホスファイト、トリスエチルチオホスファイト、トリスプロピルチオホスファイト、トリスペンチルチオホスファイト、トリスヘキシルチオホスファイト、トリスヘプチルチオホスファイト、トリスオクチルチオホスファイト、トリスノニルチオホスファイト、トリスラウリルチオホスファイト、トリスフェニルチオホスファイト、トリスベンジルチオホスファイト、ビスプロピオチオメチルホスファイト、ビスプロピオチオノニルホスファイト、ビスノニルチオメチルホスファイト、ビスノニルチオブチルホスファイト、メチルエチルチオブチルホスファイト、メチルエチルチオプロピオホスファイト、メチルノニルチオブチルホスファイト、メチルノニルチオラウリルホスファイト、及びペンチルノニルチオラウリルホスファイト;又は
・立体障害基及びニトロキシル官能基を含む化合物は、例えば米国特許第6337426号明細書若しくは米国特許第5254760号明細書に記載されている;
・立体障害基を含むアミン、例えば次の化合物:ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)セバケート、n−ブチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)エステル、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との間の縮合生成物、N,N’−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−t−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−s−トリアジンとの間の縮合生成物、トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、及び1,1’−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)。立体障害基を含むアミン安定剤及びその使用の例は、欧州特許公開第162524号、同第920483号又は同第263561に見出される。
【0049】
一般的に、安定剤の添加量はその性状に応じて変化する。指標として、立体障害アミンを用いる場合には1〜3000ppmの量が一般的である。
【0050】
本発明に従えば、用語「有効触媒量」又は「有効量」とは、重合及び/又は架橋を開始させるのに足りる量を意味するものとする。組成物P中のヨードニウム塩Aの濃度に応じて、この量は、カチオン重合及び/又は架橋可能な有機ケイ素化合物D100重量部を重合及び/又は架橋させるために0.01〜20重量部の範囲、特に一般的には0.05〜8重量部の範囲の量のヨードニウム塩Aが加えられるように、調節される。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、化合物Dは、有機性状であり、次の種の内の少なくとも1種に属する有機官能基を有する:
・α1.1 脂環式エポキシド、
・α1.2 非脂環式エポキシド、
・α2 線状又は環状アルケニルエーテル、
・α3 ポリオール、及び
・α4 オキセタン。
【0052】
化合物Dの例としては、以下のものを挙げることができる:
α
1.1 単独の又は互いの混合物としての脂環式エポキシド
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:
【化11】
・ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート;
・3,4,2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;
・ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、又は
・米国特許第3117099号明細書に挙げられたもの;
α
1.2 単独の又は互いの混合物としての非脂環式エポキシド:
・ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合から得られるもののタイプのエポキシド、アルコキシル化ビスフェノールAジグリシジル若しくはトリグリシジルエーテル、又は米国特許第3018262号明細書に記載されたもの、
・α−オレフィンエポキシド、ノボラックエポキシド、エポキシ化大豆及び亜麻仁油、エポキシ化ポリブタジエン、並びにより一般的には飽和又は不飽和のエポキシ化及びモノヒドロキシル化ジエンポリマー(国際公開WO96/11215号に記載されたもの)、
α
2 単独の又は互いの混合物としての線状又は環状アルケニルエーテル:
・ビニルエーテル、特にトリエチレングリコールジビニルエーテル、環状ビニルエーテル又はアクロレイン四量体及び/又は二量体、
・プロペニルエーテル、並びに
・ブテニルエーテル(これが特に好ましい)、
α
3 単独の又は互いの混合物としてのポリオール、好ましくは次式を有する化合物(ここで、Iは1より大きく、100より小さい):
【化12】
(ここで、R
16は直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
30アルキル基である)、並びに
α
4 ビス−オキセタン、例えば米国特許第5721020号明細書に記載されたもの。
【0053】
また、エポキシ(オキシラン)基及びオキセタン基を含有する化合物Dを構想することも可能である。かかる化合物は、ドイツ国特許第19647848A1号に記載されている。特定的な例としては、3−((オキシラニルメトキシ)メチル)オキセタン又は3−アルキル−((オキシラニルメトキシ)メチル)オキセタン(アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する)を挙げることができる。
【0054】
特にエポキシ樹脂のカテゴリーには、以下のような多数の工業製品が存在する:オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からEpon 828、Epon 825、Epon 1004又はEpon 1010の商品名で入手できるもの、Dow Chemical Co.社からDER-331、DER-332及びDER-334の商品名で入手できるもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4206)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4221、Cyracure UVR 6110若しくはUVR 6105)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセンカルボキシレート(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4201)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4289)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-0400)、ポリプロピレングリコールから誘導された脂肪族エポキシ(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4050及びERL-4052)、エポキシ化ポリブタジエン(例えばFMC Corp.社からのOxiron 2001)、難燃性エポキシ樹脂(例えばDow Chemical Co.社からのDER-580、臭素化ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂)、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック誘導1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えばDow Chemical Co.社からのDEN-431及びDEN-438)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4299 or UVR-6128)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン(例えばUnion Carbide Corp.社からのERL-4234)、ビニルシクロヘキセンモノオキシド1,2−エポキシヘキサデカン(例えばUnion Carbide Corp.社からのUVR-6216)、アルキルグリシジルエーテル、例えばC
8〜C
10アルキルグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 7)、C
12〜C
14アルキルグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 8)、ブチルグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 61)、クレシルグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 62)、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 65)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 68)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 107)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 44)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 48)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 84)、ポリグリコールジエポキシド(例えばShell Chemical Co.社からのHeloxy Modifier 32)、ビスフェノールFエポキシド(例えばCiba-Geigy Corp.社からのEPN-1138又はGY-281)並びに9,9−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]フルオレノン(例えばShell Chemical Co.社からのEpon 1079)。
【0055】
アクリレート種の有機官能基を持つモノマー、オリゴマー又はポリマーHは、例えば、エポキシ化アクリレート、ポリエステルグリセロールアクリレート、多官能性アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート又はアクリルアクリレート官能基を有するものである。
【0056】
これらのアクリレート種(随意に混合物)は、好ましくは次の種から選択される:トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリシジルプロピルトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート(例えばCytec社からの製品Ebecryl 810)、及びエポキシアクリレート(例えばCytec社からの製品Ebecryl(登録商標)600)。
【0057】
本報告において、「アクリル(系)」という表現には、CH
2=CH−(CO)−O−タイプ又はCH
2=C(CH
3)−(CO)−O−タイプの官能基を含む化合物が包含されるものとする。
【0058】
光増感剤Eは、スペクトル感度を拡張させることができるようにするために、光開始剤によって吸収される波長とは異なる波長を吸収する分子から選択される。その作用モードはより一般的には「光増感」と称され、励起された光増感剤から光開始剤へのエネルギー移動から成る。従って、光増感剤は開始剤によって吸収される光の割合を増加させ、従って光分解収率を増加させる。従って、より多量の反応性種が生成し、結果として重合がより一層迅速になる。当業者によく知られた多数の光増感剤が存在する。好ましくは、光増感剤は、次の基準に従って選択される:
・その励起状態のエネルギーが光開始剤のエネルギーより高いこと、
・その吸収スペクトルがフィラー及び顔料が吸収しない領域にあること、並びに
・化学的に不活性であること。
【0059】
光増感剤Eの例としては、アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、カルバゾール誘導体、フルオレノン、アントラキノン、カンファーキノン又はアシルホスホンオキシドを挙げることができる。
【0060】
特に、光増感剤Eは、次のものから選択することもできる:
・次式を有するジエーテルアントラセン:
【化13】
・次式を有するジエーテルナフタレン:
【化14】
又は
・次式を有するジエーテルベンゼン:
【化15】
【0061】
これらの光増感剤は、特に国際公開WO2006/073021号に記載されている。また、1個以上の置換又は非置換芳香核を含有し、200〜500nmの範囲の残留吸光を有する芳香族炭化水素系光増感剤、例えば国際公開WO00/19966号の第8頁〜第15頁に記載された式(IV)〜(XI)及び式(XIII)〜(XXII)のもの、又は国際公開WO99/05181号の第4頁第33行〜第7頁第12行及び第8頁第9行第13行に記載されたベンゾフェノン類の内の少なくとも1種を挙げることもできる。例として、次の化合物を挙げることができる:
4,4’−ジメトキシベンゾイン;フェナントレンキノン;2−エチルアントラキノン;2−メチルアントラキノン;1,8−ジヒドロキシアントラキノン;ジベンゾイルペルオキシド;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン;ベンゾイン;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン;ベンズアルデヒド;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン;ベンゾイルアセトン;
【化16】
【化17】
2−イソプロピルチオキサントン;1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン;4−イソプロピルチオキサントン;2,4−ジエチルチオキサントン;カンファーキノン;及びそれらの混合物。
【0062】
別の光増感剤を用いることもできる。特に、米国特許第4939069号明細書米国特許第4278751号明細書及び米国特許第4147552号明細書に記載された光増感剤を用いることができる。
【0063】
また、国際公開WO2005/070989号に記載された以下のような光増感剤を挙げることもできる:
・チオキサントンファミリー中:チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン−2−エチルヘキシルエーテル、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
・ベンゾフェノンファミリー中:ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2−メチルベンゾイルベンゾエート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
・3−アシルクマリンファミリー中:3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(プロポキシ)クマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニル−ビス[5,7−ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3’−カルボニル−ビス[7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
・3−(アロイルメチレン)チアゾリンファミリー中:3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−5−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−p−ナフトチアゾリン;又は
・ケトンファミリー中:アセトフェノン、3−エトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル 2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−アントラキノン、9−フルオレン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α−(p−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン若しくは3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、2−ベンゾイル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)2−プロペンニトリル、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド及びN−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0064】
光増感剤の別の例は、米国特許第6025406号明細書に記載されている。組成物中に存在させる時、光増感剤は、重合/架橋させるべき組成物の総重量に対して0.05〜10重量%の量、好ましくは重合/架橋させるべき組成物の総重量に対して0.1〜2重量%の範囲の量で、加えられる。
【0065】
添加剤Qの例としては、粘着性調整剤(ビニル、エポキシ、ビニルエーテル、ヒドロキシル等の官能基を持つ線状シリコーン樹脂若しくはポリマー)、顔料、無機フィラー、例えば、特に合成繊維(ポリマー)若しくは天然繊維(粉砕したもの)、炭酸カルシウム、タルク、クレー、二酸化チタン、沈降シリカ、ヒュームドシリカ;可溶性染料;三価及び不織防止剤;抗菌剤、抗細菌剤、抗微生物剤;並びに/又は他の任意の材料であって開始剤の触媒活性を妨げず且つ光開始剤について選択される波長範囲において吸収がないものを挙げることができる。
【0066】
カチオン重合及び/又は架橋可能な組成物Rは、そのままで用いることもでき、有機溶媒F中の溶液状で用いることもできる。この組成物Rは、セルロース系材料上の非粘着性コーティング、塗料の分野における薄層として有用であり、また、電気及び電子部品を封入するための厚い層として、織物用のコーティングとして、並びにインクにも、有用である。
【0067】
インクの場合、該組成物Rはまた、粘度を調節するために水を含むこともできる。加えて、インクジェットインクから高粘度のペースト状インクまでにわたる広範な印刷用途用に好適な優れたレオロジーを有する水性インクを製造するために、該組成物R中に顔料及び/又は染料を加えることもできる。インク用途においては、当業者によく知られた補助剤、例えば界面活性剤、均展剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤等を加えることも可能である。
【0068】
「化学線活性化の下で」という表現は、該組成物を約190nm〜約400nmの範囲の波長を有する放射線によって活性化させることを意味する。このタイプの化学線は、多くの光源から、例えば水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ又は単色レーザー源から得ることができる。
【0069】
1つの特定的な実施形態に従えば、架橋操作は、約200〜400nmの波長のUV放射線によって実施される。照射時間は短くてよく、一般的に1秒未満、コーティングの厚さが小さい場合にはほぼ百分の数秒である。得られる架橋は、加熱しない場合にさえ優れている。もちろん、25〜200℃の範囲の加熱は本発明から除外されない。もちろん、硬化時間は、特に用いるUVランプの数、UV曝露時間、組成物とUVランプとの間の距離によって調節することができる。本発明に従う組成物Rは、溶媒なしで、即ち希釈せずに、少量の液体を均一に付着させることができる装置を用いて、塗布される。この目的のために、例えば「スライド式へリオ(Helio glissant)」と称される装置、特に2つの重なったシリンダーを含有するものを用いることができる。一番下のシリンダーは組成物を含有させたコーティングタンク中に浸漬され、その役割は一番上のシリンダーを非常に薄い層で含浸させることである。一番上の層の役割は、基材(例えば紙基材)上に所望の量の組成物を含浸させるために付着させることである。かかる定量的装填は、互いに対して反対方向に回転する2つのシリンダーのそれぞれの速度を調節することによって、得ることができる。基材上に付着される組成物の量は可変的であり、大抵の場合は被処理表面1m
2当たり0.1〜5gの範囲である。これらの量は、基材の性状及び望まれる非粘着特性に依存するが、大抵の場合は非孔質基材1m
2当たり0.5〜1.5gの範囲である。
【0070】
本発明のカチオン重合及び/又は架橋可能な組成物Rはまた、もっと厚い層(5μm超)の形で、熱帯地方用(tropicalisation)ワニス(「相似被覆」)として用いることもでき、その役割は、組立体の部品及び回路を電気的に絶縁し、それらを外的環境から及び組立体の性能レベルを危うくすることがある機械的ファクターから保護することである。その場合、該組成物は、吹付けによって若しくは浸漬によって、又は刷毛塗りによって、塗布することができる。こうして形成されるコーティングの厚さは、選択した塗布方法に依存し、大抵の場合は5μm〜十分の数mmの範囲である;ある場合には、その後の重合工程が必要である;後者は熱処理によって達成することができる。
【0071】
本発明はまた、次の工程を含む、硬質フィルム又はコーティングを製造するための方法にも関する:
1.請求項1〜11のいずれかに記載のカチオン重合及び/又は架橋可能な組成物Rを調製し;
2.得られた混合物を支持体に塗布し;そして
3.前記組成物を熱で又は化学線で重合及び/又は架橋させることによって硬化させてフィルム又はコーティングにする。
【0072】
本発明の別の主題はまた、本発明に従う前記の方法に従って得られたフィルム又はコーティングで少なくとも1つの表面をコーティングされた物品から成る。これは例えば固体材料(金属、ガラス、プラスチック、紙等)の少なくとも1つの表面を前記の組成物Rでコーティングしてこれを熱で又は化学線で架橋させてなる物品(例えばシート)に関するものである。
【0073】
本発明の別の主題は、本発明に従う前記の組成物Rから調製された印刷用インクから成る。
【0074】
最後に、本発明の最後の主題は、本発明に従う前記のフィルム又はコーティングで少なくとも1つの表面をコーティングされた基材又は物品から成る。
【0075】
以下の実施例は、例示として与えたものである。これらは、特に本発明をより一層はっきり理解することを可能にし、そのすべての利点を明らかにし、その実施態様のいくつかを予見することを可能にする。
【実施例】
【0076】
1)光開始剤[(C12H25)−Ph−I−Ph(C12H25)]+;-B[C6F5]4の合成および本発明によるカチオン性光開始剤として有用な組成物の調製
【0077】
機械撹拌器、水冷式還流冷却管、および滴下漏斗を取り付けた1リットル丸底フラスコに、ドデシルベンゼン(100g;0.45mol)、ヨウ素酸カリウム(43.5g;0.203mol)、酢酸(199.6g)、および無水酢酸(59.5g)を投入する。混合物を撹拌し、氷浴で0℃に冷却する。滴下漏斗に、硫酸(59.8g)と酢酸(39.86g)の混合物を入れる。反応物に、この混合物を25分かけて加える。次いで、混合物を周辺温度(20℃)に戻し、次いで周辺温度で18時間撹拌放置する。次いで水(750ml)を加え、次いで反応物をエーテルで3回抽出する(3×350ml)。エーテル相を1つにまとめ、次いで減圧下で蒸発させる。濃縮物を取り出して飽和塩化ナトリウム溶液(540ml)に入れ、次いで混合物を氷浴で2時間冷却する。4番焼結ガラスで濾過して生成物を回収する。次いで固体をアセトンから再結晶させる操作を2回行い、濾過してビスドデシルフェニルヨードニウムクロリドを回収する。この化合物13.05g、テトラキス(ペンタフルオロベンゼン)ホウ酸カリウム14.36g、およびメタノール160gを混合して、暗中、周辺温度で、30分間撹拌する。混合物を12時間静置し、濾過し、続いて0.8bar下60℃で脱蔵させる。
【0078】
得られる生成物A1は、油状物であり、25.8gである。次いで、この光開始剤をゲルベアルコールに混合することで、本発明によるカチオン性光開始剤として有用な組成物を得る。
【0079】
2)光開始剤[(CnH2n+1)−Ph−I−Ph(CnH2n+1)]+;-B[C6F5]4(n=10−13)の合成および本発明によるカチオン性光開始剤として有用な組成物の調製
【0080】
機械撹拌器、水冷式還流冷却管、および滴下漏斗を取り付けた1リットル丸底フラスコに、(C
10−C
13)アルキルベンゼン画分(100g)、ヨウ素酸カリウム(43.5g;0.203mol)、酢酸(199.6g)、および無水酢酸(59.5g)を投入する。混合物を撹拌し、氷浴で0℃に冷却する。滴下漏斗に、硫酸(59.8g)と酢酸(39.86g)の混合物を入れる。反応物に、この混合物を25分かけて加える。次いで、混合物を周辺温度に戻し、次いで周辺温度で18時間撹拌放置する。次いで水750mlを加え、次いで反応物をエーテルで3回抽出する(3×350ml)。エーテル相を1つにまとめ、次いで減圧下で蒸発させる。濃縮物を取り出して10%テトラキス(ペンタフルオロベンゼン)ホウ酸ナトリウム溶液(1500ml)に入れ、次いで12時間、暗中でゆっくりと撹拌しながら反応させる。反応物をエーテルで3回抽出する(3×350ml)。
【0081】
エーテル相を1つにまとめ、次いで減圧下で蒸発させる。
【0082】
生成物A2が、油状物として得られる(225.3g)。
【0083】
NMR分析から、C
10−C
13アルキルベンゼンの分布に幅があり、3種類の生成物が混在していて(63重量%、20重量%、および17重量%)、これらは互いに、それぞれのカチオン部分によって異なっていることがわかる。次いで、この光開始剤をゲルベアルコールに混合することで、本発明によるカチオン性光開始剤として有用な組成物を得る。
【0084】
3)本発明による調製プロセス:ゲルベアルコール中で直接行う光開始剤[(CnH2n+1)−Ph−I−Ph(CnH2n+1)]+;-B[C6F5]4(n=10−13)の合成:
【0085】
還流冷却管、滴下漏斗、および温度計プローブを取り付けた3つ口丸底フラスコで、以下の手順に従い、用手操作(試験1、2、および3)を行う(各成分量は、表1および表2に示す):
・所定量のビス(C
10-13)アルキルフェニルヨードニウムヨージド、次いでゲルベアルコールIsofol(登録商標)20(オクチルドデカノール)を投入し、続いて機械撹拌する(510rpm)、
・65℃で加熱し、その間、ビス(C
10-13)アルキルフェニルヨードニウムヨージドが完全に溶解するのを待つ、
・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム水溶液を流し入れる、
・混合物を、65℃で4時間撹拌放置する、
・混合物を分液漏斗に移し、(24時間かけて)周辺温度に戻してから、相を分離する、
・有機相を脱イオン水100gで3回洗う、
・有機相を脱蔵(5mbarの減圧下、70℃で4時間)し、本発明によるカチオン性光開始剤として有用な組成物を得る。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
4)紫外線照射下での物質反応性:
【0089】
これらに例については、ケイ素原子を含有しないカチオン重合及び/又は架橋可能な有機化合物Dは、化合物3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート[RN CAS = 2386-87-0]である。より特定的には、Dow Chemical社からの商用サンプルUVR-6105を用いる。
【化18】
【0090】
【表3】
【0091】
ヨードニウム塩/溶媒/水素供与体+有機化合物Dの混合物を調製する。次いで、各混合物1.4gを、ポリ(メチル)メタクリレート(PMMA)の入ったタンクに入れる。振動針(周波数100Hz)を、このタンクの底から2mmの深さまで沈める。光ファイバーを用いて、タンクの底にUV照射すると、重合反応が始まる。重合が進むにつれて、媒体の粘度が上昇し、上昇はゲルになるまで続く。この粘度上昇が、振動針の振動に対する抵抗を作り出す。これにより電位が変化し、電位の変化により、ゲル化時間を測定することができる。生成させる混合物は、ヨードニウム塩A2(本発明)または別のヨードニウム塩A−comp(比較例)を等モル量、すなわちUV重合させようとする反応系(成分D)20gに対して0.088mmolで用い、こうすることで、光開始剤として試験される組成物の効率を直接比較することができる。
【0092】
それらは、本発明の光開始剤組成物の使用が、重合させようとする反応系の反応性を顕著に改善できることを示す。
【0093】
5)様々な溶媒を用いた光開始剤組成物の安定性
【0094】
以下の表4は、光開始剤A2を40%〜50質量重量%で様々なゲルベアルコール(I1およびI2)に混合して得られる光開始剤組成物の経時安定性試験をまとめたものである。経時変化は、15日間60℃に加温することで加速させる。
【0095】
【表4】
【0096】
試験12および13は、本発明による光開始剤組成物が、均一なままであり、経時安定性を有することを示す。
【0097】
6)光開始剤組成物の安定化
【0098】
ヨードニウム塩A2を70質量%およびC
20ゲルベアルコール(I2)を30質量%含有する光開始剤組成物に、安定剤(CIBA社製Tinuvin(登録商標)292、これは、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)とセバシン酸1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6−ピペリジニル)の混合物である)を様々な量で加える。これら各種組成物を、20、40、および60℃で貯蔵する。pH測定(光開始剤組成物0.175gをイソプロパノール15gに加える)を行う。使用したpHメーター(Schott、CG825)にはガラス電極(Schott Instruments、N52A)を取り付け、この電極は、pH=4およびpH=7の緩衝溶液を用いて、各測定系列の前に較正する。pH値は、溶液を5分間静置し、続いて磁気撹拌子で3分間撹拌してから記録する。
【0099】
【表5】
【0100】
試験番号19および22は、本発明による光開始剤組成物に安定剤を加えることにより、長期間の貯蔵中もpHを安定させることが可能であることを示す。pH値が低すぎる(4未満)と、その溶液を、UV下で反応性であるカチオン系に使用できなくなる。
【0101】
7)最終生成物および塗布中の悪臭の影響
【0102】
上記の多数の被膜を、以下の方法により評価した:基板0.5m
2を、被覆およびUV光照射後直ちに、装置出口から回収する。この試料を、気密性の清浄な1リットルジャムジャーに入れる。24後、4人の検査員団が、盲検で、このジャムジャーから感知される臭い(悪臭)の強度を評価する。
【0103】
被膜形成は上記のとおり行った。検査員により付けられた評価0〜5を合計する。すなわち、最低点は悪臭の発生が最も少なく、最高点はその逆である。
本発明による試験品(本発明)は、比較試験よりも弱い悪臭を示す。比較試験は、光開始剤A−compのイソプロパノール溶液を用いており、光開始剤A−compはカチオン被膜産業で広く用いられているヨードニウム塩である。