(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態に関して図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態におけるラベルの断面を示す図である。本実施形態のラベル1は、第1着色層10と第2着色層20と標示層30とを主な構成要素として備える。第1着色層10は標示層30の露出面を含む一方の面F1と、第2着色層20と接する他方の面F2を有する。
【0022】
第1着色層10は、例えば、樹脂、架橋剤、着色剤および有機溶剤を含有する熱硬化性の樹脂塗料から形成する。所望により樹脂塗料には、安定剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防かび剤、滑剤、充填剤などを含有してもよい。第1着色層10は、第2着色層20および標示層30とは異なる色の層である。
【0023】
樹脂塗料に用いる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
【0024】
樹脂塗料に用いる着色剤としては、特に制限されるものではないが、レーザー光照射によって除去可能かつ長期間使用可能な耐候性、耐久性のあるものが好ましい。例えば、The Society of Dyes and Colourists社出版によるColor Index 3rd Edition(1971)およびSupplements(1975)から選ぶことができ、無機系、有機系、アゾ系、縮合多環系および金属錯塩系などの顔料を挙げることができる。さらに具体的には、例えば、無機系顔料として、亜鉛華、硫化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、白雲母、カーボンブラック、鉄黒、酸化鉄イエロー、チタン−アンチモン−ニッケル酸化物、アルミニウム粉末、有機系顔料として、アニリンブラック、ペリレンブラックなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
第1着色層10は、標示層30より硬化収縮率が大きい層である。この場合、第1着色層の樹脂塗料に用いる架橋剤は、架橋反応する際に分子が脱離するようなものであることが好ましい。このような架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤は、官能基として例えば水酸基やイミノ基を有する。これらの官能基は、架橋反応の際に水を生じ、生じた水は乾燥等により反応系外に脱離する。水が脱離する分だけ体積の減少が起こるため、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤を用いる架橋反応では硬化収縮率が大きくなる。また、金属キレート系架橋剤は、金属とキレート剤とを有する。金属キレート系架橋剤の架橋反応の際、キレート剤は脱離し、大気中など反応系外に放出される。キレート剤が脱離する分だけ体積の減少が起こるため、金属キレート系架橋剤を用いる架橋反応では硬化収縮が起きる。なお、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤の方が金属キレート系架橋剤よりも硬化収縮率が大きいため好ましく、より好ましくはメラミン系架橋剤である。
【0026】
メラミン系架橋剤としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的もしくは完全にエーテル化した化合物、または、これらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系架橋剤としては単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでも良く、これらの混合物でもよい。より具体的にはイミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0027】
ベンゾグアナミン系架橋剤としては、例えば、ベンゾグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化ベンゾグアナミン誘導体、メチロール化ベンゾグアナミンに低級アルコールを反応させて部分的もしくは完全にエーテル化した化合物、または、これらの混合物などを用いることができる。また、ベンゾグアナミン系架橋剤としては単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでも良く、これらの混合物でもよい。より具体的にはブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0028】
尿素系架橋剤としては、例えば、尿素とホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化尿素誘導体、メチロール化尿素に低級アルコールを反応させて部分的もしくは完全にエーテル化した化合物、または、これらの混合物などを用いることができる。また、尿素系架橋剤としては単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでも良く、これらの混合物でもよい。より具体的にはブチル化尿素樹脂、メチロール化尿素樹脂等が挙げられる。
【0029】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウムキレート系架橋剤、ジルコニウムキレート系架橋剤、チタンキレート系架橋剤、クロムキレート系架橋剤、コバルトキレート系架橋剤、銅キレート系架橋剤、鉄キレート系架橋剤、ニッケルキレート系架橋剤、バナジウムキレート系架橋剤、亜鉛キレート系架橋剤、インジウムキレート系架橋剤、カルシウムキレート系架橋剤、マグネシウムキレート系架橋剤、マンガンキレート系架橋剤、イットリウムキレート系架橋剤、セリウムキレート系架橋剤、ストロンチウムキレート系架橋剤、バリウムキレート系架橋剤、モリブデンキレート系架橋剤、ランタンキレート系架橋剤、スズキレート系架橋剤などを用いることができ、好ましくはアルミニウムキレート系架橋剤、ジルコニウムキレート系架橋剤、チタンキレート系架橋剤である。さらに好ましくはアルミニウムキレート系架橋剤である。
【0030】
第2着色層20は、標示層30の露出面を含む第1着色層10の一方の面F1とは逆側の面F2上に積層され、第1着色層10および標示層30とは異なる色の層である。第2着色層20は、例えば、樹脂、架橋剤、着色剤および有機溶剤を含有する熱硬化性の樹脂塗料から形成する。所望により、安定剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防かび剤、滑剤、充填剤などを含有してもよい。本実施形態の場合、樹脂塗料の樹脂と架橋剤は塗工直前に混合されることが好ましい。
【0031】
樹脂塗料に用いる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
【0032】
樹脂塗料に用いる着色剤としては、特に制限されるものではないが、レーザー光照射によって除去可能かつ長期間使用可能な耐候性、耐久性のあるものが好ましい。例えば、The Society of Dyes and Colourists社出版によるColor Index 3rd Edition(1971)およびSupplements(1975)から選ぶことができ、無機系、有機系、アゾ系、縮合多環系および金属錯塩系などの顔料を挙げることができる。さらに具体的には、例えば、無機系顔料として、亜鉛華、硫化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、白雲母、カーボンブラック、鉄黒、有機系顔料として、アニリンブラック、ペリレンブラックなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
第2着色層20の樹脂塗料に用いる架橋剤としては、第1着色層10の硬化収縮率より第2着色層20の硬化収縮率が小さくなる架橋剤が好ましい。第2着色層20の硬化収縮率が第1着色層10の硬化収縮率が小さいことで、第2着色層20の第1着色層10側と反対側の表面が収縮しない硬質な基材等に密着される場合に、第1着色層10と当該基材等との間の収縮率の差による応力を緩和することができ、クラック等が生じることを抑制することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、酸無水物系架橋剤などが挙げられる。さらに、第2着色層20と第1着色層10との密着性および第1着色層10と標示層30との密着性または耐久性を高める観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、官能基としてイソシアネート基を有する。イソシアネート基は、たとえば標示層30や第一着色層20が含む樹脂が有する水酸基やアミノ基のように活性な水素を有する官能基と反応することで架橋反応する。この反応では、脱離する分子は原則無く、架橋剤と樹脂とがそれぞれの官能基同士が反応することで結合が起き、分子間距離が小さくなることで硬化収縮する。従って、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂よりも硬化収縮率が小さくなる。さらに、イソシアネート基は、樹脂が官能基としてカルボキシル基を含む場合や、不純物として水がある場合には、それらと反応し二酸化炭素を発生する。この場合には二酸化炭素の脱離が生じ硬化収縮率が大きくなる。ただし、この場合であっても、通常、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂よりも硬化収縮率が小さくなる。
【0034】
イソシアネート系架橋剤としては、炭素数1〜1000程度の有機化合物にイソシアネート基が結合されていればよい。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、トリレンジイソシアネート三量体、イソフォロンジイソシアネート三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、n−ブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、トリメチルシリコンイソシアネート、ジメチルシリコンジイソシアネート、モノメチルシリコントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
これらのイソシアネート系架橋剤の中でも、ラベルが経時で黄変しないという観点からは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート− 2 官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物等の脂肪族イソシアネート系架橋剤が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0036】
エポキシ系架橋剤としては、トリグリシジルイソシアヌレート、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類および/またはα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合または共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル、アルキル置換または非置換のビフェノールのグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール類および/またはナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂やナフトール・アラルキル樹脂、ビフェニル・アラルキル樹脂等のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロロヒドリンとの反応より得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、硫黄原子を含むエポキシ樹脂、オレフィン結合を過酸化物で酸化して得られる脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、または、これらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0037】
酸無水物系架橋剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等が挙げられる。
【0038】
標示層30は、文字、記号または図形などの目印を表しており、第1着色層10および第2着色層20の色とは異なる色の層である。標示層30の色は、第1着色層10および第2着色層20の色とは異なる色である限りにおいて、透明色も含む。標示層30の色が透明色である場合には目立たない標示をすることができ、この場合、例えば、ウォーターマークを標示させる場合に適している。標示層30は、樹脂、架橋剤、着色剤および有機溶剤を含有する熱硬化性の樹脂塗料から形成する。所望により、安定剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防かび剤、滑剤、充填剤などが含有されてもよい。本実施形態の場合、樹脂塗料の熱硬化性樹脂と架橋剤は塗工直前に混合することが好ましい。
【0039】
樹脂塗料に用いる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。また、標示層30の樹脂塗料に用いる架橋剤としては、第1着色層10の硬化収縮率より標示層30の硬化収縮率が小さくなる架橋剤が好ましい。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、酸無水物系架橋剤などが挙げられる。さらに、第2着色層20と第1着色層10との密着性および第1着色層10と標示層30との密着性または耐久性を高める観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、官能基としてイソシアネート基を有する。イソシアネート基は、たとえば標示層30や第一着色層20が含む樹脂が有する水酸基やアミノ基のように活性な水素を有する官能基と反応することで架橋反応する。この反応では、脱離する分子は原則無いが、架橋剤と樹脂とがそれぞれの官能基同士が反応することで結合が起き、分子間距離が小さくなることで硬化収縮する。従って、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂よりも硬化収縮率が小さくなる。さらに、イソシアネート基は、樹脂が官能基としてカルボキシル基を含む場合や、不純物として水がある場合には、それらと反応し二酸化炭素を発生する。この場合には二酸化炭素の脱離が生じ硬化収縮率が大きくなる。ただし、この場合であっても、通常、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂よりも硬化収縮率が小さくなる。
【0040】
標示層30の樹脂塗料に用いる着色剤としては、特に制限されるものではないが、レーザー光照射によって除去可能かつ長期間使用可能な耐候性、耐久性のあるものが好ましい。例えば、The Society of Dyes and Colourists社出版によるColor Index 3rd Edition(1971)およびSupplements(1975)から選ぶことができ、無機系、有機系、アゾ系、縮合多環系および金属錯塩系などの顔料を挙げることができる。さらに具体的には、例えば、無機系顔料として、亜鉛華、硫化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、白雲母、カーボンブラック、鉄黒、有機系顔料として、アニリンブラック、ペリレンブラックなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、標示層30の樹脂塗料に用いる架橋剤としては、第1着色層10の硬化収縮率より標示層30の硬化収縮率が小さくなる架橋剤が好ましい。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、酸無水物系架橋剤などが挙げられる。さらに、標示層30と第1着色層10との密着性および第1着色層10と標示層30との密着性または耐久性を高める観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、上記のように、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂よりも硬化収縮率が小さくなる。従って、第1着色層10の樹脂塗料としてメラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤を含有する樹脂が用いられる場合、標示層30に樹脂塗料に用いる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましく、その他の架橋剤として、例えば、エポキシ系架橋剤、酸無水物系架橋剤などが挙げられる。
【0042】
ところで、第1着色層10に用いる架橋剤が標示層30が含有する樹脂と反応する、または、標示層30に用いる架橋剤が第1着色層10が含有する樹脂と反応することが好ましい。このような第1着色層10に用いる架橋剤と標示層30が含有する樹脂の組み合わせとしては、例えば、第1着色層10に用いる架橋剤がイソシアネート基を有する架橋剤であり、標示層30がメタクリル酸2ヒドロキシエチルのように水酸基を有する樹脂であればよい。この場合、第1着色層10に用いる架橋剤及び標示層30が含有する樹脂の少なくとも一方が第2着色層20に染み出て、架橋反応を生じると考えられる。また、標示層に用いる架橋剤と第1着色層10が含有する樹脂の組み合わせとしては、例えば、標示層30に用いる架橋剤がメラミン系架橋剤であり、第1着色層10が水酸基を有する樹脂であればよい。この場合、第1着色層10が含有する樹脂及び標示層30に用いる架橋剤の少なくとも一方が第2着色層20に染み出て、架橋反応を生じると考えられる。
【0043】
本実施形態における標示層30は、第1着色層10の一方の面F1に露出する露出面を有しており、この標示層30の露出面の面積割合は、第1着色層10との密着性を高める観点から、ラベルの一方の面F1の表面積に対して1%以上50%以下とすることが好ましく、1%以上40%以下とすることがより好ましい。さらに好ましくは1%以上30%以下である。
【0044】
ラベル1における第1着色層10の厚さは3〜30マイクロメートルが好ましく、第2着色層20の厚さは40〜120マイクロメートルが好ましく、標示層30の厚さは0.5〜30マイクロメートルが好ましい。
【0045】
第1着色層10、第2着色層20および標示層30は、それぞれ異なる色の層である。この場合、第1着色層10と第2着色層20との境界は視認可能であり、第1着色層10と標示層30も視認可能である。さらに第2着色層20と標示層30も視認可能である。従って、レーザーで標示層および第1着色層を所望の場所を除去し第2着色層を露出させて情報を印字する場合において、第2着色層20を視認することができる。このため、本実施形態のラベル1は、レーザマーキング用のラベルとして有用である。
【0046】
このように本実施形態におけるラベル1は、第1着色層10の硬化収縮率が標示層30の硬化収縮率よりも大きいため、硬化によって第1着色層10が標示層30を挟持する。したがって、本実施形態におけるラベル1は、第1着色層10または標示層30の厚みにかかわらず、第1着色層10と標示層30との密着性を高めることができる。
【0047】
こうして、本実施形態におけるラベル1は、第1着色層10と標示層30との層間の剥離やクラックの発生を抑制できる。
【0048】
第1着色層10で用いる架橋剤としてメラミン系架橋剤を用いた場合、第1着色層10と標示層30との密着性を一段と高めることができる。
【0049】
第2着色層20で用いる架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いた場合、第2着色層20と第1着色層10との密着性、及び第1着色層10と標示層30との密着性を一段と高めることができる。
【0050】
また、本実施形態におけるラベル1は、第1着色層10、第2着色層20および標示層30が熱により硬化する層であるため、本実施形態におけるラベル1は、第1着色層10、第2着色層20または標示層30の厚みにかかわらず、ラベルの各層間の剥離やクラックの発生が抑制され、耐久性に優れる。
【0051】
図2は、他の実施形態におけるラベル2の断面を示す図である。
図2に示すように、本実施形態のラベル2は、第1着色層10、第2着色層20および標示層30に加えて、脆質層41、粘着剤層42および剥離層43を設けることができる。
【0052】
脆質層41は、剥離層43を剥離したラベルを製品に貼付け後に剥がすと、そのラベルの再使用が不可能になるような破壊を生じる層である。
【0053】
脆質層41は、第2着色層20に用いる樹脂塗料に脆質性付与成分を加えた樹脂塗料から形成する。
【0054】
脆質層41に用いる樹脂塗料の脆質性付与成分として、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機系粒子、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ等の有機系粒子を使用することができる。
【0055】
次に、ラベル1の製造方法について説明する。
図3は、ラベル1の製造方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、ラベル1の製造方法は、標示層形成工程P1、第1着色層形成工程P2、第2着色層形成工程P3、および剥離工程P4を主な工程として備える。
【0056】
(標示層形成工程P1)
標示層形成工程P1は、標示層30を形成する工程である。
図4は、標示層形成工程P1の様子を示す図である。
図4に示すように、本工程では第1段階として基材40の一面上に所定の目印を表すパターンとなるように樹脂塗料50を塗工する。
【0057】
基材40は、PET、PENや紙等の一面上をポリオレフィン、シリコーン、フッ素、シリカ、ビーズ、ワックス等を含有するコーティング剤で表面処理したフィルム、または未処理のPETやPENフィルムなどを用いることができる。さらに基材40は、エンボス処理やコロナ処理等をしていてもよい。
【0058】
基材40の一面上に樹脂塗料50を塗工する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、シール印刷などがある。
【0059】
第2段階として、基材40の一面上に塗工した樹脂塗料50を加熱硬化し、所定の目印を表すパターンの標示層30を形成する。
【0060】
本工程P1では熱により硬化する樹脂塗料50を用いるため、樹脂塗料50の厚みにかかわらず均一に硬化でき、十分な強度を有する標示層30を得ることができる。
【0061】
(第1着色層形成工程P2)
第1着色層形成工程P2は、第1着色層10を形成する工程である。
図5に示すように、本工程では、第1段階として、基材40の一面および標示層30の表面上に、樹脂塗料60を塗工する。
【0062】
第2段階として、基材40の一面および標示層30の表面上に塗工した樹脂塗料60を加熱硬化し、第1着色層10を形成する。
【0063】
本工程P2では熱により硬化する樹脂塗料60を用いるため、樹脂塗料60の厚みにかかわらず均一に硬化でき、十分な強度を有する第1着色層10を得ることができる。
【0064】
(第2着色層形成工程P3)
第2着色層形成工程P3は、第2着色層20を形成する工程である。
図6は、第2着色層形成工程P3の様子を示す図である。
図6に示すように、本工程では、第1段階として、第1着色層形成工程P2で形成した第1着色層10の一面上に樹脂塗料70を塗工する。第2段階として、樹脂塗料70を加熱硬化し第2着色層20を形成する。
【0065】
本工程P3では熱により硬化する樹脂塗料70を用いるため、樹脂塗料70の厚みにかかわらず均一に硬化でき、十分な強度を有する第2着色層20を得ることができる。
【0066】
(剥離工程P4)
剥離工程P4は、標示層30および第1着色層10から基材40を剥離する工程である。
図7は、剥離工程P4の様子を示す図である。
【0067】
上述したように、第1着色層10の硬化収縮率が、その第1着色層10に埋め込まれている標示層30の硬化収縮率よりも大きく、硬化によって第1着色層10が標示層30を挟持するため、第1着色層10と標示層30との密着性が高い。したがって、剥離工程P4で基材40を剥離しても、第1着色層10から標示層30が分離することはない。
【0068】
以上がラベル1の製造方法である。ラベル2の場合は、剥離工程P4の前に、脆質層形成工程と粘着剤層および剥離層形成工程を設け、製造することができる。この場合、脆質層形成工程は第2着色層形成工程P3の次に行い、第2着色層20の一面上に脆質層41を形成する。
【0069】
このように製造したラベル1または2は、レーザーを用いて情報を印字することができる。たとえば、レーザーを用いて第1着色層10と標示層30の一部を除去し、第2着色層20を露出することで、情報を印字することができる。
【0070】
図8は、ラベル1にレーザーを用いて文字や図柄などの情報を印字する様子を示す図である。
図8に示すように、第1着色層10および標示層30にレーザー光Lを照射し、除去部80を形成する。この結果、レーザー光Lの照射面側を観察した場合、除去部80とその他の非除去部との対比によって情報が視認可能となる。なお、レーザー光Lの照射時に、第2着色層20の一部まで除去してもよい。
【実施例】
【0071】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<調製1>
アクリル系樹脂KP−2341(ニッセツ(株)製)50重量部、アクリル系樹脂Hi−S SP2100U4(日本カーバイド工業(株)製)50重量部、メラミン系架橋剤MS−11((株)三和ケミカル製)18重量部、リン酸エステルCT−198((株)三和ケミカル製)0.3重量部、着色剤FPGS−5910B(大日精化工業(株)製)15重量部を混合し、第1着色層を形成するための樹脂塗料を調製した。
【0072】
なお、調製1で用いたそれぞれのアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂KP−2341では官能基として水酸基を含む樹脂であるメタクリル酸2ヒドロキシエチルを、また、アクリル系樹脂Hi−S SP2100U4では、官能基として水酸基を含む樹脂であるメタクリル酸2ヒドロキシエチルと、官能基としてカルボキシル基を含む樹脂であるアクリル酸とを、それぞれ組成に含む。
【0073】
<調製2>
アクリル系樹脂Hi−S SP2100U4(日本カーバイド工業(株)製)50重量部、着色剤FPGS−5010W(大日精化工業(株)製)100重量部、イソシアネート系架橋剤コロネートHK(日本ポリウレタン工業(株)製)16重量部、PTMG−1000M(三洋化成工業(株)製)5重量部を混合し、第2着色層を形成するための樹脂塗料を調製した。
【0074】
<調製3>
アクリル・エポキシ系樹脂と着色剤を含有するインキMA31 OPニス(富士インキ工業(株)製)100重量部とイソシアネート系架橋剤NX ハードナー(富士インキ工業(株)製)10重量部を混合し、標示層を形成するための樹脂塗料を調製した。
【0075】
<実施例1>
基材としてのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製S75)に、調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して0.8%になるように文字や図柄などのパターンをグラビア印刷により印刷し、厚み2マイクロメートルの標示層を得た。続いて、基材の一部と標示層の上に調製1の樹脂塗料を塗工し、150℃で3分間加熱し、厚み15マイクロメートルの第1着色層を形成した。
【0076】
次に、第1着色層の上に調製2の樹脂塗料を、加熱後の厚みが60マイクロメートルになるように塗布し、140℃で3分間、続けて150℃で2分間加熱し、第2着色層を得た。最後に、基材を剥がしラベルを作製した。
【0077】
<実施例2>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して1%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0078】
<実施例3>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して11%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0079】
<実施例4>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して25%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0080】
<実施例5>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して40%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0081】
<実施例6>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して50%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0082】
<実施例7>
調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して75%になるように印刷した以外はすべて実施例1と同様にラベルを作製した。
【0083】
<実施例8>
調製1のメラミン系架橋剤MS−11をベンゾグアナミン系架橋剤BL−60((株)三和ケミカル製)に置き換え、調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して11%になるように印刷し、実施例1と同様にラベルを作製した。
【0084】
<実施例9>
調製1のメラミン系架橋剤MS−11を尿素系架橋剤MX−202((株)三和ケミカル製)に置き換え、調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して11%になるように印刷し、実施例1と同様にラベルを作製した。
【0085】
<比較例1>
調製1のメラミン系架橋剤MS−11をイソシアネート系架橋剤コロネートHK(日本ポリウレタン工業(株)製)に置き換え、調製3の樹脂塗料を用いて、標示層の露出面の面積割合が、ラベルの一方の面の表面積に対して11%になるように印刷し、実施例1と同様にラベルを作製した。
【0086】
次に、実施例1〜9及び比較例のラベルに用いた標示層と厚みが異なる標示層サンプルを作成した。標示層サンプルの作製は次のように行った。まず、表面処理されたPETフィルム(東洋紡(株)製 E−7004)の面上に、調製3の樹脂塗料を塗工した。このとき加熱乾燥後に厚みが50マイクロメートルとなるように塗工した。次に調製3の樹脂塗料が塗工されたフィルムを80℃で1.5分間加熱した。次に加熱により硬化した樹脂塗料をPETフィルムから剥離すると共に切断して、一辺が10cmの正方形の標示層サンプルを3枚得た。
【0087】
また、実施例1〜7のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプル、実施例8のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプル、実施例9のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプル、比較例1のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプルをそれぞれ作製した。それぞれの第1着色層サンプルの作製は次のように行った。
【0088】
実施例1〜7のラベルに係る第1着色層サンプルの作製は、上記実施例1〜7のラベルに係る第1着色層サンプルの調製1の樹脂塗料を用いて加熱の条件を150℃で3分としたこと以外を標示層サンプルと同様とした。こうして実施例1〜7のラベルに用いた加熱乾燥後に厚みが50マイクロメートルの第1着色層サンプルを3枚得た。
【0089】
実施例8のラベルに係る第1着色層サンプルの作製は、上記実施例8の第1着色層に用いた樹脂塗料を用いたこと以外を実施例1〜7のラベルに係る第1着色層サンプルと同様とした。こうして実施例8のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプルを3枚得た。
【0090】
実施例9のラベルに係る第1着色層サンプルの作製は、上記実施例9の第1着色層に用いた樹脂塗料を用いたこと以外を実施例1〜7のラベルに係る第1着色層サンプルと同様とした。こうして実施例9のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプルを3枚得た。
【0091】
比較例1のラベルに係る第1着色層サンプルの作製は、上記比較例1の第1着色層に用いた樹脂塗料を用いたこと以外を実施例1〜7のラベルに係る第1着色層サンプルと同様とした。こうして比較例1のラベルに用いた第1着色層と厚みが異なる第1着色層サンプルを3枚得た。
【0092】
次にそれぞれのサンプルに対して硬化収縮率の測定を行った。測定は次のように行った。まず、それぞれのサンプルの縦方向と横方向の長さをそれぞれ測定した。次にそれぞれのサンプルを80℃の環境に24時間放置し、その後、23℃で湿度が50%の環境に放置した。その後、再びサンプルの縦方向と横方向の長さをそれぞれ測定した。そして、下記式により、それぞれのサンプルについて硬化収縮率を求めた。なお、それぞれのサンプルは、80℃の環境に放置されることで収縮している。また、下記式で、縦方向の収縮前の長さをLpvとし、横方向の収縮前の長さをLphとし、縦方向の収縮後の長さをLavとし、横方向の収縮後の長さをLahとし、縦方向の硬化収縮率をSrvとし、横方向の硬化収縮率をSrhとし、それぞれのサンプルの収縮率をSrとした。
Srv={(Lpv−Lav)/Lpv}×100 ・・・(1)
Srh={(Lph−Lah)/Lph}×100 ・・・(2)
Sr={(Srv
2+Srh
2)
1/2}/2 ・・・(3)
そして、上記(3)式で得られた3枚のサンプルの収縮率を平均して、標示層サンプルの硬化収縮率、及び、それぞれの第1着色層サンプルの硬化収縮率とした。その結果を表1に示す。
【0093】
表1より、実施例1〜9のラベルにおいては、第1着色層の硬化収縮率が標示層の硬化収縮率よりも大きいことが確認できた。
【0094】
次に、上記実施例1〜実施例9および比較例1における露出面の面積割合および調製1の樹脂塗料に用いられた架橋剤と、密着性およびクラックとに関してまとめたものを下記表2に示す。
【0095】
上記表2における密着性は、次のように評価している。すなわち、作製したラベルを7.5cm角に切り出し、試験片とする。試験片を150℃の環境下で1000時間放置した後に、0.1%ローダミン水溶液に24時間浸漬し、ローダミン水溶液から取り出し、試験片に付着した余分な水溶液を布でふき取った。その後、標示層と第1着色層との間にローダミン水溶液が侵入しローダミンによる着色があるか否かを目視にて観察した。
【0096】
ローダミンによる着色がある場合は隙間があるとし、当該隙間が全くない場合には◎とし、一部に隙間を確認したが実用上問題がない場合には○とし、隙間が顕著な場合には×とした。
【0097】
また、上記表2におけるクラックは、次のように評価している。すなわち、作製したラベルを150℃の環境下で1000時間放置した後に、第1着色層の標示層側の表面にクラックがあるか否かを目視にて観察した。
【0098】
第1着色層の標示層側の表面にクラックがない場合には○とし、一部にクラックを確認したが実用上問題がない場合には△とし、クラックがある場合には×とした。
【0099】
第1着色層の架橋剤としてメラミン系架橋剤であるMS−11、ベンゾグアナミン系架橋剤であるBL−60および尿素系架橋剤であるMX−202を用いた実施例1〜実施例9のラベルにおいては、イソシアネート系架橋剤であるコロネートHKを用いた比較例1のラベルに比べ、層間の密着性が高く、クラックが生じ難いことが分かった。これは、表1に記載のように第1着色層の硬化収縮率が標示層の硬化収縮率よりも大きいため、標示層がより強固に第1着色層に挟持されたためと考えられる。なお、上記表2では、実施例6、実施例7が共に密着性について○とされているが、実施例7は実用上での問題はないものの実施例6と比べると密着性が悪かった。このため、実施例2〜実施例6から、層間の密着性が高く、クラックが生じ難くするためには、標示層の露出面の面積割合が1%以上50%以下であることが好ましいことが分かった。更に、実施例2〜実施例5から、密着性が良好でクラックが生じ難くするためには、標示層の露出面の面積割合が共に1%以上40%以下であることがより好ましいことが分かった。