特許第6050907号(P6050907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6050907
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20161212BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20161212BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20161212BHJP
【FI】
   H01M8/04 T
   H01M8/04 J
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-65235(P2016-65235)
(22)【出願日】2016年3月29日
【審査請求日】2016年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 達哉
(72)【発明者】
【氏名】井出 卓宏
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−265802(JP,A)
【文献】 特開2013−161602(JP,A)
【文献】 特開2013−089499(JP,A)
【文献】 特開2010−205647(JP,A)
【文献】 特開2004−087377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668,8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気とを反応させて発電する第1燃料電池セルスタックと、
空気と前記第1燃料電池セルスタックの燃料極から排出された第1アノードオフガスとを反応させて発電する第2燃料電池セルスタックと、
前記第2燃料電池セルスタックから排出された第2アノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、
を備え、
前記第1燃料電池セルスタック及び前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器に沿って前記燃焼器と熱交換可能に配置され、前記燃焼器内の燃焼空間へ前記第2アノードオフガスが放出される放出部が、前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックの中間部に対応する位置、及び、前記中間部を挟んで前記第1燃料電池セルスタック側、前記第2燃料電池セルスタック側の各々に対応する位置、の少なくとも一方に形成される、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器の一方面側に並んで配置され、
前記放出部は、前記燃焼空間の前記第1燃料電池セルスタック側の一端と前記第2燃料電池セルスタック側の他端の中間部に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃焼器から燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス排出部が前記燃焼器の前記一端と前記他端とに形成されている、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器の一方面側に並んで配置され、
前記放出部が前記燃焼空間を挟んで前記燃焼器の前記第1燃料電池セルスタック側の一端と前記第2燃料電池セルスタック側の他端に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2アノードオフガスは、前記一端に形成された前記放出部から前記他端へ向けて放出されると共に、前記他端に形成された前記放出部から前記一端へ向けて放出される、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃焼器から燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス排出部が、前記燃焼器の前記一端と前記他端の中間部に形成されている、請求項4または請求項5に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムには、複数の燃料電池セルスタックを有するものがある。例えば、複数の燃料電池セルスタックを多段化し、前段の燃料電池セルスタックから排出されたアノードオフガス中の未反応燃料を、後段の燃料電池セルスタックでの発電に使用する、発電効率の高いものが提案されている。このように、複数の燃料電池セルスタックを有する場合、例えば燃料電池セルスタックの負荷電流の制御方法によっては、発電時の電流が異なる場合がある。その場合は、燃料電池セルスタックからの発熱量が異なり、各々の燃料電池セルスタックの近傍において温度が不均一になる。この場合には、各燃料電池セルスタック間で、発電効率が異なってしまう。また、複数の燃料電池セルスタック間において負荷電流の制御方法を同じにしても、ガスの流量変化などにより燃料電池セルスタックの温度が不均一になると、発電性能が変わるだけでなく、発電可能な温度に達するまでの時間に差が生じることも考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、燃料電池セルスタックの外周に燃焼部から排出された燃焼ガスを流動させるガス流路を設けて、燃焼電池セルスタックの温度バラツキを抑制している。また、特許文献1では、複数の燃料電池スタックを有しているが、多段に構成されているものではない。各々の燃料電池スタックから排出されたオフガスは、それぞれが燃焼に供され、オフガスを燃焼器や、燃焼器以外の部分に導く構成を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−242565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、燃焼電池セルスタックを高温に維持しつつ、複数の燃料電池セルスタック間での温度の不均一を抑制する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスと空気とを反応させて発電する第1燃料電池セルスタックと、空気と前記第1燃料電池セルスタックの燃料極から排出された第1アノードオフガスとを反応させて発電する第2燃料電池セルスタックと、前記第2燃料電池セルスタックから排出された第2アノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、を備え、前記第1燃料電池セルスタック及び前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器に沿って前記燃焼器と熱交換可能に配置され、前記燃焼器内の燃焼空間へ前記第2アノードオフガスが放出される放出部が、前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックの中間部に対応する位置、及び、前記中間部を挟んで前記第1燃料電池セルスタック側、前記第2燃料電池セルスタック側の各々に対応する位置、の少なくとも一方に形成されるものである。
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムでは、第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックは、燃焼器と熱交換可能に配置されている。そして、燃焼器内の燃焼空間へ第2燃料電池セルスタックから排出された第2アノードオフガスが放出される放出部が、第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックの中間部に対応する位置、または、前記中間部を挟んだ両側の各々に対応する位置、または、その両方に形成されている。ここでの放出部は、燃焼器内部で第2アノードオフガスが燃焼する燃焼点となる位置であり、燃焼器内でも高温となる部分である。したがって、第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックのどちらかに偏って燃焼器の熱が伝達されることがなく、両者を高温に維持しつつ第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックの温度の不均一化を抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器の一方面側に並んで配置され、前記放出部は、前記燃焼空間の前記第1燃料電池セルスタック側の一端と前記第2燃料電池セルスタック側の他端の中間部に形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る燃料電池システムでは、第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックの中間部と燃焼器の中間部とが一致し、燃焼器内の温度の不均一化を抑制することができる。
【0010】
請求項3記載の発明に係る燃料電池システムは、前記燃焼器から燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス排出部が前記燃焼器の前記一端と前記他端とに形成されている。
【0011】
請求項3記載の発明に係る燃料電池システムでは、燃焼器の中間部から送入された第2アノードオフガスが燃焼に供され、燃焼器の一端と他端から排出されるので、燃焼器内で燃焼排ガスが中央部から両端部に流れ、燃焼器内の温度差を小さくすることができる。
【0012】
請求項4記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第1燃料電池セルスタックと前記第2燃料電池セルスタックは、前記燃焼器の一方面側に並んで配置され、前記放出部が前記燃焼空間を挟んで前記燃焼器の前記第1燃料電池セルスタック側の一端と前記第2燃料電池セルスタック側の他端に形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る燃料電池システムでは、燃焼器の一端と他端に放出部を設けることにより、燃焼器の一方面側に並んで配置された第1燃料電池セルスタック側と第2燃料電池セルスタック側に燃焼点が形成され、第1燃料電池セルスタックと第2燃料電池セルスタックの温度の不均一化を抑制することができる。
【0014】
請求項5記載の発明に係る燃料電池システムは、前記第2アノードオフガスは、前記一端に形成された前記放出部から前記他端へ向けて放出されると共に、前記他端に形成された前記放出部から前記一端へ向けて放出される、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る燃料電池システムでは、燃焼器において、第2アノードオフガスが、一端に形成された放出部から他端へ向けて放出されると共に、他端に形成された放出部から一端へ向けて放出される。したがって、燃焼器内において燃焼排ガスが一端から他端へ、他端から一端へ流れ、燃焼器内の温度差を小さくすることができる。
【0016】
請求項6記載の発明に係る燃料電池システムは、前記燃焼器から燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス排出部が、前記燃焼器の前記一端と前記他端の中間部に形成されている。
【0017】
請求項6に係る燃料電池システムでは、燃焼器の一端と他端から送入された第2アノードオフガスが燃焼に供され、燃焼器の中間部から排出されるので、燃焼器内で気体が両端部から中央部に流れ、燃焼器内の温度差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃焼電池セルスタックを高温に維持しつつ、複数の燃料電池セルスタック間での温度の不均一を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態における放出部の例(A)〜(C)を示す図である。
図3】第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図4】第2実施形態における第1放出部、第2放出部の例(A)〜(C)を示す図である。
図5】第2実施形態の変形例に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1には、本実施形態に係る燃料電池システム10Aの概略構成が示されている。本実施形態に係る燃料電池システム10Aは、主要な構成として、気化器12、改質器14、第1燃料電池セルスタック16、第2燃料電池セルスタック18、及び、燃焼器40を備えている。
【0022】
気化器12には、原料ガス管P1の一端が接続されており、原料ガス管P1の他端は図示しないガス源に接続されている。ガス源からは、ブロアB1によりメタンが気化器12へ送出される。また、気化器12には、水供給管P2が接続されている。水供給管P2からは、ポンプPにより、水(液相)が気化器12へ送出される。気化器12では、水が気化される。気化には、後述する燃焼器40から排出された燃焼排ガスG10の熱を用いることができる。なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよい。
【0023】
メタン及び水蒸気は、気化器12から配管P3を介して改質器14へ送出される。改質器14は、後述する燃焼器40との熱交換により加熱される。改質器14では、メタンを改質し、水素を含む600℃程度の温度の燃料ガスG1を生成する。改質器14には、燃料ガス管P4の一端が接続されている。燃料ガス管P4の他端は、燃料電池セルスタック16のアノード(燃料極)16Aと接続されている。改質器14で生成された燃料ガスG1は、燃料ガス管P4を介してアノード16Aに供給される。
【0024】
第1燃料電池セルスタック16は、固体酸化物形の燃料電池セルスタックであり(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、積層された複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池セルスタック16は、作動温度が650℃程度に設定されている。第1燃料電池セルスタック16は、後述する燃焼器40の一方面に沿って配置され、燃焼器40との間で熱交換可能となっている。なお、当該熱交換は、輻射であってもよいし、伝熱材を介した伝熱であってもよい。
【0025】
第1燃料電池セルスタック16の個々の燃料電池セルは、電解質膜と、当該電解質膜の表裏面にそれぞれ積層されたアノード(燃料極)16A、及びカソード(空気極)16Bと、を有している。図1では、複数の燃料電池セルの個々のアノード、カソードをまとめて、各々「アノード16A」「カソード16B」と図示している。
【0026】
第1燃料電池セルスタック16のカソード16Bには、空気管P5の一端が接続され、空気管P5の他端には、ブロアB2が接続されている。ブロアB2から送出された空気G5は、空気管P5によって、カソード16Bへ供給される。なお、空気管P5を流通する空気G5は、後述する燃焼排ガスG10との間で熱交換を行って、加熱してもよい。
【0027】
カソード16Bでは、下記(1)式に示すように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質膜を通って第1燃料電池セルスタック16のアノード16Aに到達する。
【0028】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2− …(1)
【0029】
カソード16Bからは、カソードオフガスが排出される。
【0030】
一方、第1燃料電池セルスタック16のアノード16Aでは、下記(2)式及び(3)式に示すように、電解質膜を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。アノード16Aで生成された電子がアノード16Aから外部回路を通ってカソード16Bに移動することで、各燃料電池セルスタックにおいて発電される。また、各燃料電池セルスタックは、発電時に発熱する。
【0031】
(燃料極反応)
+O2− →HO+2e …(2)
CO+O2− →CO+2e …(3)
【0032】
アノード16Aには、アノードオフガス管P7の一端が接続されている。アノード16Aからアノードオフガス管P7へ、第1アノードオフガスG3が排出される。第1アノードオフガスG3には、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0033】
第2燃料電池セルスタック18は、第1燃料電池セルスタック16と同様の構成を有しており、アノード16Aに対応するアノード18Aと、カソード16Bに対応するカソード18Bを備えている。第2燃料電池セルスタック18では、第1燃料電池セルスタック16と同様の反応により、発電される。第2燃料電池セルスタック18は、後述する燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16と同一面側に沿って並んで配置され、燃焼器40との間で熱交換可能となっている。なお、当該熱交換は、輻射であってもよいし、伝熱材を介した伝熱であってもよい。
【0034】
カソード18Bには、カソードオフガス管P9−2の一端が接続されている。カソードオフガス管P9−2の他端は、燃焼器40と接続されている。カソード18Bから排出されたカソードオフガスG9−2は燃焼器40へ送出される。燃焼器40は、内部に燃焼空間Rが形成された金属製の箱体とされ、第1燃料電池セルスタック16及び第2燃料電池セルスタック18の一方面側を覆うように配置されている。燃焼器40には、燃焼器40内へカソードオフガスG9−2を放出する放出部43が形成されている。放出部43は、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部に対応する位置に配置されている。ここでの中間部とは、放出部43から第1燃料電池セルスタック16及び第2燃料電池セルスタック18までの距離が略等距離の部分をいい、当該距離の差は10cm以下であることが好ましく、さらに、5cm以下であることがより好ましい。なお、本実施形態では、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18が並ぶ方向における中間部と、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部とは、概ね一致している。
【0035】
なお、本実施形態では、燃焼器40の中間部と、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部と、を概ね一致させたが、必ずしも一致させる必要はなく、ずれていてもよい。
【0036】
アノード18Aには、アノードオフガス管P8の一端が接続されている。アノードオフガス管P8の他端は、燃焼器40と接続されている。燃焼器40には、燃焼器40内へ第2アノードオフガスG8を放出する放出部42が形成されている。放出部42は、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部に対応する位置に配置されている。ここでの中間部も、第1燃料電池セルスタック16及び第2燃料電池セルスタック18までの距離が略等距離の部分をいう。また、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18が並ぶ方向における中間部と、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部とは、概ね一致している。放出部42と放出部43の距離は10cm以下であることが好ましく、さらに5cm以下であることがより好ましい。と放出部42から放出された第2アノードオフガスG8中の未反応水素、一酸化炭素は、放出部42近傍で燃焼する。これにより、燃焼器40内の放出部42近傍が燃焼点となる。
【0037】
なお、放出部42までの経路としては、図2(A)に示されるように、燃焼器40の外側から放出部42までアノードオフガス管P8を延在させてもよいし、図2(B)に示されるように、燃焼器40の内側にアノードオフガス管P8を引き込んで放出部42まで延在させてもよい。さらに、図2(C)に示されるように、燃焼器40の内部に第2アノードオフガスG8の流路41を設けて放出部42まで導き、燃焼器40内へ第2アノードオフガスG8を放出させてもよい。また、放出部43についても、図2(A)〜(C)に示されるように、放出部42と同様に形成してもよい。
【0038】
燃焼器40には、燃焼排ガス管P10A、P10Bが接続されている。燃焼排ガス管P10Aは、燃焼器40の燃焼空間Rを挟んで一端側に接続され、燃焼排ガス管P10Aは、燃焼器40の燃焼空間Rを挟んで他端側に接続されている。燃焼排ガス管P10A、P10Bから、燃焼排ガスG10が排出される。
【0039】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0040】
ブロアB2により所定の流量で送出された空気G5は、カソード16Bへ供給され、発電に供された後、カソードオフガス管P9−1を経てカソードオフガスG9−1がカソード18Bへ送出される。カソードオフガスG9−1は、カソード18Bで発電に供され、カソード18BからカソードオフガスG9−2が排出される。カソードオフガスG9−2は、カソードオフガス管P9−2を経て燃焼器40へ送出される。
【0041】
一方、ブロアB1により送出されたメタンは、気化器12へ供給される。また、気化器12には、ポンプPにより水(液相)が供給され、燃焼排ガス(不図示)により加熱される。これにより水は気化され、加熱されたメタンと水蒸気は配管P3を経て改質器14へ送出され、燃料ガスG1へ改質される。燃料ガスG1は、燃料ガス管P4を経てアノード16Aへ供給され、発電に供される。アノード16Aからは、未反応の水素等の燃料を含む第1アノードオフガスG3が排出され、アノードオフガス管P7を経てアノード18Aへ供給される。第1アノードオフガスG3は、アノード18Aで発電に供され、アノード18Aから第2アノードオフガスG8が排出される。
【0042】
第2アノードオフガスG8は、アノードオフガス管P8を経て燃焼器40へ送出され、放出部42から燃焼器40内へ放出される。第2アノードオフガスG8中の未反応水素、一酸化炭素は、放出部42近傍で燃焼する。これにより、放出部42近傍の温度が上昇する。燃焼器40内の燃焼排ガスG10は、燃焼排ガス管P10A、P10Bから排出される。
【0043】
本実施形態では、放出部42が、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部に対応する位置に配置されているので、放出部42近傍の熱がどちらかの燃料電池セルスタック側に偏って伝達されることがなく、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18を高温に維持しつつ、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の温度の不均一化を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18が並ぶ方向における中間部と、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部とが一致し、この中間部に放出部42が配置されている。したがって、燃焼空間R内における温度の片寄りを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、燃焼排ガス管P10A、P10Bが、燃焼器40両端に接続されているので、燃焼器40内で燃焼排ガスが中央部から両端部に流れ、燃焼器40内の温度差を小さくすることができる。
【0046】
なお、本実施形態の燃料電池システム10Aは、第1燃料電池セルスタック16を前段、第2燃料電池セルスタック18を後段とする、2段の構成の例で説明したが、第2燃料電池セルスタック18の後段に別の燃料電池セルスタックを有する3段の構成、更に4段目の燃料電池セルスタックを備えた燃料電池システムに本発明を適用することもできる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0048】
図3に示されるように、本実施形態の燃料電池システム10Bは、第2アノードオフガス管P8が分岐して、2カ所に設けられた第1放出部46A、第2放出部46Bから燃焼器40へ第2アノードオフガスG8が流入する。第1放出部46Aは、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16が配置されている側の一端に設けられ、第2放出部46Bは、燃焼器40の第2燃料電池セルスタック18が配置されている側の他端に設けられている。すなわち、第1放出部46Aと第2放出部46Bとは、燃焼空間Rを挟んで互いに対向する位置に配置されている。また、第2アノードオフガスG8は、第1放出部46Aから燃焼器40の他端へ向かって放出され、第2放出部46Bから燃焼器40の一端へ向かって放出される。なお、第1放出部46A、第2放出部46Bから放出される第2アノードオフガスG8の単位時間当たりの流量は、略等しくなるように、第2アノードオフガス管P8の長さや流路径等が設定されている。
【0049】
また、カソードオフガス管P9−2も分岐し、2カ所に設けられた第1放出部45A、第2放出部45Bから燃焼器40へカソードオフガスG9−2が流入する。第1放出部45Aは、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16が配置されている側の一端の第1放出部46Aの近傍に設けられ、第2放出部45Bは、燃焼器40の第2燃料電池セルスタック18が配置されている側の他端の第2放出部46Bの近傍に設けられている。すなわち、第1放出部45A、46Aと第2放出部45B、46Bとは、燃焼空間Rを挟んで互いに対向する位置に配置されている。また、第2アノードオフガスG8は、第1放出部46Aから燃焼器40の他端へ向かって放出され、第2放出部46Bから燃焼器40の一端へ向かって放出される。さらに、カソードオフガスG9−2は、第1放出部45Aから燃焼器40の他端へ向かって放出され、第2放出部45Bから燃焼器40の一端へ向かって放出される。第1放出部45Aと第1放出部46Aの距離、及び、第1放出部45Bと第1放出部46Bの距離は、10cm以下であることが好ましく、さらに5cm以下であることがより好ましい。
【0050】
第1放出部46A、第2放出部46Bから放出された第2アノードオフガスG8中の未反応水素、一酸化炭素は、第1放出部46A、第2放出部46Bの近傍で各々燃焼する。これにより、燃焼器40内の第1放出部46A、第2放出部46Bの近傍が燃焼点となる。
【0051】
なお、第1放出部46A、第2放出部46Bは、図4(A)に示されるように、燃焼器40の外側から第1放出部46A、第2放出部46Bまでアノードオフガス管P8を延在させてもよいし、図4(B)に示されるように、燃焼器40の内側にアノードオフガス管P8を引き込んで第1放出部46A、第2放出部46Bまで延在させてもよい。さらに、図4(C)に示されるように、燃焼器40の内部に第2アノードオフガスG8の流路47を設けて第1放出部46A、第2放出部46Bまで導き、燃焼器40内へ第2アノードオフガスG8を放出させてもよい。また、放出部45A、45Bについても、図4(A)〜(C)に示されるように、放出部46A、46Bと同様に形成してもよい。
【0052】
燃焼器40には、燃焼排ガス管P10が接続されている。燃焼排ガス管P10は、燃焼器40の第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の並び方向の中間部に対応する位置に接続されている。燃焼排ガス管P10から、燃焼排ガスG10が燃焼器40の外へ排出される。
【0053】
本実施形態では、第1放出部46A、第2放出部46Bが、燃焼器40の、第1燃料電池セルスタック16に対応する一端と、第2燃料電池セルスタック18に対応する他端に配置されている。したがって、第1放出部46A、第2放出部46Bの各々の近傍の燃焼点における熱が、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の各々に伝達され、温度の不均一化を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、第2アノードオフガスG8が、第1放出部46Aから燃焼器40の他端へ向かって放出され、第2放出部46Bから燃焼器40の一端へ向かって放出される。したがって、燃焼空間Rにおいて燃焼排ガスが一端から他端へ、他端から一端へ流れ、燃焼器40内の温度差を小さくすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、燃焼排ガス管P10が、燃焼器40の中央部に接続されているので、燃焼器40内で燃焼排ガスが両端部から中央部に流れ、燃焼器40内の温度差を小さくすることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、第1放出部46A、第2放出部46Bを燃焼器40の一端と他端に設けたが、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の各々に対応する位置であれば、他の位置に設けてもよい。例えば、図5に示されるように、第1燃料電池セルスタック16の中央部分に対応する位置に配置された第1放出部48Aと、第2燃料電池セルスタック18の中央部分に対応する位置に配置された第2放出部48Bとしてもよい。この場合には、カソードオフガスG9−2を放出する第1放出部45A、第2放出部45Bについても、第1放出部48A、第2放出部48Bに隣接させた位置に配置した第1放出部49A、第2放出部49Bとする。
【0057】
また、本実施形態の燃料電池システム10Bは、第1燃料電池セルスタック16を前段、第2燃料電池セルスタック18を後段とする、2段の構成の例で説明したが、第2燃料電池セルスタック18の後段に別の燃料電池セルスタックを有する3段の構成、更に4段目やそれ以上の燃料電池セルスタックを備えた燃料電池システムに本発明を適用することもできる。この場合には、各々の燃料電池セルスタック(3段目、4段目等)毎に第2アノードオフガスG8を放出する放出部を設けることが好ましい。
【0058】
なお、本発明の燃料電池としては、固体酸化物形の燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に限られるものではなく、他の燃料電池、例えば、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)であってもよい。
【0059】
さらに、本発明は、前述の第1、2実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、既知の装置を組み合わせて実施することができる。例えば、熱交換器の設置、組み合わせなどを、種々に設定することができる。
【符号の説明】
【0060】
10A 、10B 燃料電池システム
16 第1燃料電池セルスタック
16A アノード
16B カソード
18 第2燃料電池セルスタック
18A アノード
18B カソード
40 燃焼器
42 放出部
46A 第1放出部(放出部)
46B 第2放出部(放出部)
48A 第1放出部(放出部)
48B 第2放出部(放出部)
R 燃焼空間
G3 第1アノードオフガス
G8 第2アノードオフガス
P10、P10A、P10B 燃焼排ガス管(燃焼排ガス排出部)
【要約】
【課題】複数の燃料電池セルスタック間での温度の不均一を抑制する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック16は、燃焼器40に沿って燃焼器40と熱交換可能に配置されている。燃焼器40内の燃焼空間Rへ第2アノードオフガスが放出される放出部42が、第1燃料電池セルスタック16と第2燃料電池セルスタック18の中間部に対応する位置に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5