(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
本実施形態における電力供給システム100は、需要場所に敷設されている低圧配電線LWを介して、給電部10が複数の電気使用場所Z(以下、電気使用場所Z1,Z2,Z3を総称して「電気使用場所Z」という。電力供給先)に電力を給電する。蓄電部BT1は、電力を蓄積する。蓄電給電部PCS1は、蓄電部BT1に蓄積されている電力に基づいて生成された蓄電電力を、低圧配電線LWを介して複数の電気使用場所Z(電力供給先)のうちの何れかの電気使用場所Z(第1電力供給先)に供給する。これにより、需要場所に設置された蓄電部BT1(蓄電設備)によって蓄積されている電力を有効に活用することができる。
また、電力供給システム100における蓄電部BTの充放電電力の売買を行うようにすることにより、現状の制度では不可能な次の課題を解決することができる。
−その1.蓄電部BTに蓄電された電力を電気使用場所に制限されずに共用できること。
−その2.蓄電部BTの設置者の経済的な負担を減らすこと。
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、最初に、電力供給システムの全体構成について説明し、その後に、電力供給システムにおける各種処理について説明する。本実施形態においては、主に電力供給システムに電力系統からの供給を受ける場合について示す。
【0023】
[電力供給システムの全体構成の説明]
図1は、本発明の実施形態に係わる電力供給システムの概略構成図である。この
図1において、符号PSは系統電源、符号HWは高圧配電線、符号TRは変圧器、符号LWは低圧配電線、符号LL1、LL2及びLL3は負荷、符号BT1は蓄電部、符号PCS1は蓄電供給部である。
【0024】
まず、電力供給システム100に電力を供給する電力系統について示す。
系統電源PSは、例えば、電気事業者(一般電気事業者、特定規模電気事業者など)によって運営されている発電所に相当し、発電した電力を電力網NWに供給する。電力網NWには、系統電源PSから供給される電力を高圧電力(例えば6600V)に変換する配電用変電所(不図示)が設けられている。高圧配電線HWは、配電用変電所と需要場所を接続し、配電用変電所から需要場所へ高圧電力を配電するために用いられる配電線である。需要場所には、電力供給システム100が設けられている。
以上に示したように、系統電源PSから、系統電源PSからの電力を配電する高圧配電線HWまでの構成によって既存の電力系統(商用電力系統)が構成されている。なお、本実施形態の電力供給システム100は、このような電力系統から電力の供給を受けるが、上記電力系統に連系するものではない。
【0025】
次に、電力供給システム100について示す。
電力供給システム100は、給電部10、蓄電電力制御装置20、蓄電設備30、及び、低圧側計器部40を備える。
【0026】
給電部10は、高圧側計器WhH、遮断器CB,変圧器TR、高圧側電圧電流検出部DTH、低圧側電圧電流検出部DTL、低圧側計器WhA、及び、低圧側計器WhBを備える。
高圧側計器WhHは、高圧電力として供給される電力量を検出し、検出した電力量を蓄電電力制御装置20に送る。
遮断器CBは、蓄電電力制御装置20からの指令に応じて、高圧配電線HWと変圧器TRの一次側とを接続する回路を遮断する。
【0027】
変圧器TRは、高圧配電線HWを介して受電した高圧電力を一般電力需用家が利用可能な低圧電力(例えば交流100Vまたは200V)に変換して低圧配電線LWを介して各電気使用場所Zに供給する。低圧配電線LWは、変圧器TRと各電気使用場所Zとを接続し、変圧器TRから各電気使用場所Zへ低圧電力を配電するために用いられる配電線である。また、負荷LCは、低圧配電線LWに接続された全ての負荷である。
【0028】
高圧側電圧電流検出部DTHは、高圧配電線HWによって供給されている電力による電圧VHと電流IHを検出し、検出した電圧VHと電流IHとをそれぞれ蓄電電力制御装置20に送る。
低圧側電圧電流検出部DTLは、変圧器TRによって低圧に変換された電力による電圧VLと電流ILを検出し、検出した電圧VLと電流ILとをそれぞれ蓄電電力制御装置20に送る。
以上に示す給電部10は、いわゆる受変電設備として機能する。
【0029】
低圧側計器部40は、各電気使用場所Zの電力量を検出する。低圧側計器部40には、各電気使用場所Zの電力量を検出する2種類の低圧側計器WhA(WhA1)と低圧側計器WhB(WhB2,WhB3)とが含まれる。例えば、
図1においては、低圧側計器WhA1が電気使用場所Z1に対応して設けられ、低圧側計器WhB2とWhB3とが、電気使用場所Z2と電気使用場所Z3とにそれぞれ対応して設けられている。
低圧側計器WhAは、電気使用場所Zにおいて消費される消費電力量と、低圧配電線LW側に電気使用場所Z側から供給する供給電力量とをそれぞれ検出する。低圧側計器WhAは、蓄電電力制御装置20との間の通信機能を有している。低圧側計器WhAは、それぞれ検出した消費電力量と供給電力量とをそれぞれ蓄電電力制御装置20に送る。
また、低圧側計器WhAは、蓄電電力制御装置20からの指令に応じて電力の供給を遮断する遠隔制御機能を有していてもよい。
また、低圧側計器WhAは、蓄電設備30との通信機能を有していてもよい。蓄電設備30との通信機能を有している低圧側計器WhAは、蓄電電力制御装置20から蓄電設備30への制御指令を受信して、蓄電設備30に中継するとともに、蓄電設備30から蓄電設備30の制御状態を受信して、蓄電電力制御装置20に中継する。
【0030】
低圧側計器WhBは、電気使用場所Zにおいて消費される消費電力を検出し、蓄電電力制御装置20との間の通信機能を有している。低圧側計器WhBは、検出した消費電力を蓄電電力制御装置20に送る。また、低圧側計器WhBは、蓄電電力制御装置20からの指令に応じて電力の供給を遮断する遠隔制御機能を有していてもよい。
【0031】
この
図1には、複数の電気使用場所Zとして、電気使用場所Z1、電気使用場所Z2、電気使用場所Z3が示されている。
給電部10には、需要場所における配電系統となる低圧配電線LWが接続されており、低圧配電線LWによって給電部10から電気使用場所Z1の接続点P1まで、電気使用場所Z2の接続点P2まで、電気使用場所Z3の接続点P3までの間がそれぞれ接続されている。
この給電部10は、高圧配電線HW(商用電力線)を介して受電した商用電力に基づいて、各電気使用場所Zに供給する電力を生成する。この給電部10は、敷設されている低圧配電線LWを介して複数の電気使用場所Z(電力供給先)に生成した電力を給電する。
【0032】
次に、各電気使用場所Zにおける構成を示す。
電気使用場所Z1には、低圧側計器WhA1を介して接続される低圧配電線LW1が敷設されている。低圧配電線LW1には、蓄電設備30と負荷LL1とが接続されている。この低圧配電線LW1には、需要場所における配電系統(低圧配電線LW)側から低圧側計器WhA1を介して電力が供給される。また、低圧側計器WhA1を介して低圧配電線LW1から電力低圧配電線LW側に、蓄電設備30によって生成された電力が供給される。
電気使用場所Z2には、低圧側計器WhB2を介して接続される低圧配電線LW2が敷設されている。低圧配電線LW2には、負荷LL2が接続されている。この低圧配電線LW2には、需要場所における配電系統(低圧配電線LW)側から低圧側計器WhB2を介して電力が供給される。
電気使用場所Z3には、低圧側計器WhB3を介して接続される低圧配電線LW2が敷設されている。低圧配電線LW3には、負荷LL3が接続されている。この低圧配電線LW3には、需要場所における配電系統(低圧配電線LW)側から低圧側計器WhB3を介して電力が供給される。
【0033】
蓄電設備30についての詳細を示す。
蓄電設備30は、蓄電部BT1と蓄電給電部PCS1を備える。
蓄電部BT1は、電力を蓄積する。蓄電部BT1は、2次電池を備え、蓄電給電部PCS1から供給された電力を蓄積し、蓄積した電力を蓄電給電部PCS1に供給する。蓄電部BT1が備える2次電池は、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、NaS電池などである。蓄電部BT1は、電気使用場所Zごとに設けられる。
【0034】
蓄電給電部PCS1は、蓄電部BT1に対となって同じ電気使用場所Zに設置されているとともに、低圧配電線LW上の連系点P1において需要場所の配電系統と連系(接続)されている。この蓄電給電部PCS1は内部にインバータ(不図示)を備えており、実際にはこのインバータを介して蓄電給電部PCS1は、需要場所の配電系統に連系されている。つまり、蓄電部BT1に蓄積されている直流電力は、蓄電給電部PCS1内のインバータによって交流電力に変換されて需要場所の配電系統側(低圧配電線LW)に送電(逆潮流)可能となっている。
【0035】
なお、蓄電給電部PCS1は、例えば需要場所に設置された太陽電池から供給される電力を蓄電部BT1に充電してもよい。また、蓄電給電部PCS1は、同太陽電池から供給される電力の一部を需要場所の配電系統側(低圧配電線LW)に送電(逆潮流)させてもよい。なお、蓄電給電部PCS1に電力を供給する設備は太陽電池に限らず、燃料電池などの他の分散型電源であっても良い。
【0036】
蓄電給電部PCS1は、給電部10から給電された電力を蓄電部BT1に蓄積させる。
また、蓄電給電部PCS1は、蓄電部BT1に蓄積されている電力に基づいて生成された蓄電電力を、低圧配電線LWを介して複数の電気使用場所Z(電力供給先)のうちの何れかの電気使用場所Z(第1電力供給先)に供給する。
この
図1に示されているように、蓄電給電部PCS1と蓄電部BT1とを含む蓄電設備30が、電気使用場所Z1に設けられている場合、上記の複数の電気使用場所Z(電力供給先)のうちの何れかの電気使用場所Z(第1電力供給先)とは、例えば、電気使用場所Z2又はZ3である。
【0037】
蓄電給電部PCS1は、蓄電電力を商用電力線に供給することなく、第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給する。要するに、蓄電給電部PCS1は、いわゆる電力系統に逆潮流を生じさせないように蓄電電力を供給するように調整する。
例えば、蓄電給電部PCS1は、蓄電電力による電圧を、給電部10の変圧器TRが低圧配電線LWに給電する(電力の)電圧(変圧器TRの2次側の電圧)よりも低く、かつ、給電部10から電力供給先の低圧側計器WhA(又は低圧側計器WhB)に給電されている(電力の)電圧よりも高く生成して、第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給する。
【0038】
また、蓄電給電部PCS1は、蓄電電力制御装置20からの制御によって、蓄電給電部PCS1から各負荷に供給する電力が制御されている。
例えば、蓄電給電部PCS1は、給電部10から給電された電力の料金が、1日のうちで高い時間帯に、蓄電電力を第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給してもよい。
【0039】
例えば、蓄電給電部PCS1は、複数の電力供給先に供給する電力量に応じて、蓄電電力を第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給してもよい。
【0040】
また、蓄電給電部PCS1は、商用電力に基づいた電力を第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給する場合の料金よりも、蓄電部BT1に蓄積されている電力を第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給する場合の料金の方が安い場合に、蓄電電力を第1電力供給先(例えば電気使用場所Z3)に供給してもよい。
【0041】
また、蓄電給電部PCS1には、蓄電設備30の蓄電容量(電力量)のうちから、売電用の電力として供給可能な売電電力量(
図3、Pdisc)と、非常時のバックアップ用の電力として供給可能な非常用電力量(Pback)とが予め設定されている。このような、蓄電給電部PCS1は、売電電力量の一部を売電用の電力として供給する。
【0042】
また、蓄電給電部PCS1は、買電単価A1とA2(
図2)を切り替える時刻と売電単価B1とB2(
図2)を切り替える時刻とを同期させてそれぞれ切り替える。
【0043】
さらに、蓄電給電部PCS1は、電力系統側の事故停電時や作業停電時などにより系統電源PSからの電力供給が停止した非常時の場合においても、電力の供給を行う。
【0044】
蓄電電力制御装置20(電力供給制御装置)は、蓄電電力制御部21と、記憶部22とを備える。
蓄電電力制御部21は、高圧側電圧電流検出部DTHが検出した電圧VHと電流IHとをそれぞれ得る。蓄電電力制御部21は、低圧側電圧電流検出部DTLが検出した電圧VLと電流ILとをそれぞれ得る。蓄電電力制御部21は、遮断器CBを制御する指令(指令情報)を給電部10に送り、高圧配電線HWと変圧器TRの一次側とを接続する回路を遮断させる。
【0045】
蓄電電力制御部21は、低圧側計器部40との間の通信機能を有している。蓄電電力制御部21は、低圧側計器部40が検出した各電気使用場所Zの電力量を得る。蓄電電力制御部21が低圧側計器部40から得る各電気使用場所Zの電力量には、各電気使用場所Zにおいて消費される消費電力量と、低圧配電線LW側に各電気使用場所Z側から供給する供給電力量とがある。
蓄電電力制御部21は、低圧側計器部40(低圧側計器WhA)に、電力の供給を遮断する指令(指令情報)を送る。電力の供給を遮断する指令(指令情報)には2つの指令があり、給電部10からの電力を電気使用場所Zに供給するか否かを制御する制御指令と、蓄電設備30からの電力を、他の電気使用場所Zに供給するか否かを制御する制御指令とがある。蓄電設備30からの電力を、他の電気使用場所Zに供給するか否かを制御する制御指令には、蓄電設備30から出力する電力を制御する蓄電設備30への制御指令を含む。
【0046】
蓄電電力制御部21は、高圧側電圧電流検出部DTHから得た電圧VHと電流IH、低圧側電圧電流検出部DTLから得た電圧VLと電流IL、低圧側計器部40から得た各電気使用場所Zの電力量、及び、記憶部22に記憶されている情報に基づいて、電力供給制御処理を行う。
【0047】
蓄電電力制御部21は、上記の電力供給制御処理によって生成される指令(指令情報)を、給電部10、蓄電設備30、及び、低圧側計器部40に送り、各部が指令(指令情報)に応じて所望の状態になるように制御する。
蓄電電力制御部21は、例えば、給電部10から給電された電力の料金が1日のうちで安い時間帯に、給電部10から給電された電力を蓄電部BT1に蓄積させるように制御する。
【0048】
また、蓄電電力制御部21は、高圧側電圧電流検出部DTHから得た電圧VHと電流IH、低圧側電圧電流検出部DTLから得た電圧VLと電流IL、低圧側計器部40から得た各電気使用場所Zの電力量、及び、上記の電力供給制御処理によって生成される指令(指令情報)を記憶部22に記憶させる。
記憶部22は、半導体メモリーによって構成され、蓄電電力制御部21が行う処理のプログラム、同処理に係る情報を記憶する。
なお、蓄電電力制御装置20(蓄電電力制御部21)が行う各種処理と、その詳細については、後述する。
【0049】
[1箇所の電力供給先に蓄電部が備えられている場合の各種処理]
まず、以下に示す制御条件、制御方法などにより、1箇所の電気使用場所Z1(電力供給先)に蓄電設備30が備えられている場合について説明する。
【0050】
(逆潮流を防止するための消費電力量の検出)
電力供給システム100においては、各電気使用場所Zにおいて消費する総消費電力量より、供給される総電力供給量が多くなると電力系統に対する逆潮流を生じる虞がある。そこで、電力供給システム100は、電力供給システム100からの逆潮流を生じさせないように制御するために、電力供給システム100においては、総消費電力量を検出することが必要となる。
例えば、電力供給システム100における総消費電力量の検出方法として、下記に示す方法がある。電力供給システム100における蓄電電力制御部21は、下記に示す方法1から方法3のうち、少なくとも何れかの方法を実施する。
【0051】
・方法1
方法1は、高圧側に設けられた計器(高圧側計器WhH)によって検出された電力量(高圧側の電力量)が、予め定められた所定の閾値以下になった場合を検出する方法である。
高圧側の電力量が0(ゼロ)以下になった場合に、電力系統に対する逆潮流を生じる虞がある。そこで、蓄電電力制御部21は、高圧側計器WhHによって検出された高圧側の電力量が予め定められた所定の閾値(0に近い正の値)以下になった場合を検出する。なお、上記の高圧側の電力量を、電力事業者において測定されている測定結果(消費電力情報)を、電力事業者の管理装置(不図示)から受信した情報としてもよい。その場合、電力供給システム100における蓄電電力制御装置20は、電力事業者の管理装置(不図示)から所定の高圧側の電力量の情報を受信する。
【0052】
・方法2
方法2は、電気使用場所Zごとに設けられている計器(低圧側計器部40)によって検出された電力量の総和が、予め定められた所定の閾値以下になった場合を検出する方法である。
蓄電電力制御部21は、1日、1週間、1ヶ月、1年などを周期とする消費電力、及び、供給電力の変動を低圧側計器部40によって検出させて、記憶部22にそれぞれ記憶させておく。記憶されている消費電力を正の値として、供給電力を負の値として集計した総和が負の値になる場合に、供給電力が過剰な状態にあり、電力系統に対する逆潮流を生じる虞がある。蓄電電力制御部21は、上記のように集計し、集計した総和が予め定められた所定の閾値(0に近い正の値)以下になった場合を検出する。
なお、蓄電電力制御部21は、低圧側計器部40からのデータ収集を周期的に実施する。低圧側計器部40からのデータは、蓄電電力制御部21において収集され、定期的に集計されている。蓄電電力制御部21は、そのデータを利用してもよい。
【0053】
・方法3
方法3は、低圧側計器部40の各計器同士の間の相互の通信により共有される情報から電力量の総和を算出し、消費電力量が予め定められた所定の閾値以下になった場合を検出する方法である。
低圧側計器部40の各計器が互いに通信可能である場合、それぞれの計器において、上記の蓄電電力制御部21が行うデータの収集と集計とを行うようにしてもよい。
【0054】
上記に示した方法1から方法3のうちの何れかの方法を実施することにより、逆潮流の発生が見込まれる状況を検出することができる。
【0055】
(逆潮流の発生が見込まれた場合の制御)
上記に示したように逆潮流の発生が見込まれる状況を検出した場合に、蓄電電力制御部21が逆潮流を生じさせないように制御する方法として、下記に示す方法がある。下記に示す方法1から方法3のうち、少なくとも何れかの方法を実施する。
【0056】
・方法1
蓄電電力制御部21は、蓄電給電部PCS1を制御して蓄電部BTからの供給(放電)を停止させる(出力のON/OFF制御する)。
【0057】
・方法2
蓄電電力制御部21は、蓄電部BT1からの供給電力量を調節するために、蓄電給電部PCS1を制御して、蓄電部BT1からの供給量を制御する。なお、蓄電部BT1が複数の場合、蓄電電力制御部21は、蓄電部BT1からの総供給電力量を調節するために、蓄電給電部PCS1を制御して、個々の蓄電部BT1からの供給量を制御する。
【0058】
・方法3
蓄電電力制御部21は、需要場所(施設)の共用部の負荷LC(エアコン、ポンプなど)を制御して、共用部の負荷LCの駆動量が多くなるように調整する。例えば、上記負荷の運転台数を増やしたり、負荷ごとの駆動量を増加させたりすることにより、蓄電電力制御部21は、共用部の負荷LCの駆動量が多くなるように制御することができる。蓄電電力制御部21は、このように制御することにより、総消費電力量が多くなるように制御する。
上記に示した何れかの方法を実施することにより、逆潮流の発生が見込まれた場合に、逆潮流の発生を回避することができる。
【0059】
(蓄電設備30の蓄電部BT(蓄電部)からの電力を利用可能とする時間の制御)
蓄電電力制御部21は、所定の制御情報に基づいて、蓄電部BTからの電力を供給する時間帯を制御する。所定の制御情報として、下記に示す情報がある。蓄電電力制御部21は、下記に示す情報のうち、少なくとも何れかの情報に基づいた制御を実施する。
【0060】
・単位電力量あたりの電力使用料の単価が高い時間帯の情報(時間帯に応じた価格情報)
・1日の内でピーク電力の発生が見込まれる時間帯の情報
・計画的な停電(輪番停電、保守など)が予め見込まれる時間帯の情報
なお、蓄電電力制御部21は、上記情報を予め定めて記憶部22に記憶させておくこととする。
【0061】
上記に示した何れかの情報に基づいた制御により、蓄電電力制御部21は、蓄電部BTからの電力を供給する時間帯を制御することができる。
【0062】
(蓄電設備30の蓄電部BT(蓄電部)からの電力を利用可能とする条件)
蓄電部BTからの電力を利用可能とする条件として、下記に示す条件がある。蓄電部BTからの電力を共有する際に、蓄電電力制御部21は、以下の条件がそれぞれ満足するように制御する。
【0063】
・蓄電給電部PCS1は、蓄電部BTの蓄電量(電圧)を検出し、蓄電部BTの蓄電量が、所定の下限値以下になった場合に放電を停止する。
【0064】
・1日又は1週間の消費電力量の周期性に基づいた消費電力パターンに応じて、供給量を制御する。
蓄電電力制御部21は、記憶部22に記憶されている消費電力情報に基づいて、蓄電給電部PCS1が設置されている電気使用場所Z1の消費電力パターンを生成する。蓄電電力制御部21は、生成した消費電力パターンを記憶部22に記憶させるとともに、蓄電給電部PCS1に送る。蓄電給電部PCS1は、蓄電部BTの蓄電量(電圧)を検出し、検出した蓄電部BTの蓄電量(電圧)と、送られてきた消費電力パターンとに基づいて、供給量を制御する。
例えば、蓄電給電部PCS1に送られてきた消費電力パターンによる電力量を電気使用場所Z1における推定消費電力として定義する。蓄電給電部PCS1は、その推定消費電力を蓄電給電部PCS1からの電力によってまかなえるように、蓄電給電部PCS1から他の電気使用場所への電力供給量を制御する。
なお、蓄電電力制御部21は、生成された消費電力パターンによって過去に生成された消費電力パターンを更新する際に、生成された消費電力パターンと、過去に生成された消費電力パターンとによる重み付け演算処理を行って記憶させる消費電力パターンを生成してもよい。
【0065】
上記に示した何れかの条件を定めることにより、蓄電設備30の蓄電部BT(蓄電部)からの電力を利用可能とする条件を変更することができる。
【0066】
(蓄電部BTの蓄電量に残量が発生する場合の処置)
1日の充電・供給のバランスにより、蓄電部BTに蓄積されている電力のうち、放電しきれなかった残量が発生する場合がある。そのような場合に、蓄電電力制御部21は、より効率よく蓄電部BTに蓄積されている電力を供給するために、供給条件などの制御ルールを変更する。制御ルールを変更する方法として、下記に示す方法がある。
【0067】
・蓄電電力制御部21は、蓄電部BTからの放電条件をそれぞれ緩和して、それぞれの蓄電部BTからの放電量を増やすように各種設定情報を変更する。各種設定情報は、記憶部22に記憶されている情報である。各種設定情報として一例を示す。例えば、供給を行う時間が延長するように、放電開始時刻を早め、放電終了時刻を遅くするように放電時間情報を設定する。又は、放電終了時間、蓄電給電部PCS1からの出力電圧が所定の値より高区なるように蓄電給電部PCS1の出力電圧制御情報を設定する。
【0068】
(放電パターンの例)
蓄電部BTに蓄積されている電力の利用目的を、予め定められた設定情報に応じて変更することができる。蓄電電力制御部21は、蓄電部BTに蓄積されている電力の利用目的を変更する設定情報を、記憶部22に記憶させる。
【0069】
・蓄電部BTに蓄積されている電力のうち、使用した電力量以外を売電する場合の設定情報。
蓄電電力制御部21は、使用した電力量以外を売電するように蓄電給電部PCS1を制御する。
・蓄電部BTに蓄積されている電力の全て消費する場合の設定情報。
蓄電電力制御部21は、蓄電部BTに蓄積されている電力の全て消費するように蓄電給電部PCS1を制御する。
上記に示した何れかの設定情報を選択することにより、蓄電部BTに蓄積されている電力の利用目的を変更することができる。
【0070】
(非常時の給電制御)
蓄電給電部PCS1は、一般のパワーコンディショナと異なり、電力系統側の事故停電時や作業停電時などにより系統電源PSからの電力供給が停止した非常時の場合においても、電力の供給を行う。このような蓄電給電部PCS1は、蓄電電力制御部21からの指令によって、非常時の場合に応じた処理に従って制御される。このような制御により、非常時の場合に、低圧配電線LWが蓄電給電部PCS1によって逆充電されるが、給電部10の変圧器TRの一次側と高圧配電線HWとの接続が遮断器CBによって遮断されるため、電力系統への逆潮流を生じることがない。このようにして、電力供給システム100は、非常時の場合においても安全性を確保する。
【0071】
(課金処理)
次に、
図2と
図3を参照し、需要者ごとの電力消費量と電力供給量とに応じた課金処理について説明する。
図2は、電気使用場所Zごとの電力消費量と電力供給量とに応じた課金処理を説明する図である。この
図2に示されるように、電力供給システム100において、電気使用場所Zごとの電力消費量と電力供給量とに応じた課金処理が必要とされる。また、
図3は、1日あたりの消費電力量の変化を示す図である。この
図3(a)には、1日あたりの消費電力量の変化が示されている。また
図3(b)には、
図3(a)と同じ消費電力量を消費する電気使用場所に蓄電設備30を導入した場合の消費電力の変化を示す図である。
【0072】
以下に、電力供給システム100における課金処理の条件を整理する。
【0073】
1)電気使用場所Zごとに消費する電力を時間帯別料金で買取る場合の料金体系には、時間帯別料金と定額料金の設定がある。要するに、買電力量料金単価は、契約条件の設定により、時間帯別料金の単価と、定額料金の単価とを選択することができる。
買電力量料金単価(買電単価A:電気使用場所Zごとに消費する電力を時間帯別料金で買取る場合の単価)は、時間帯に応じて定められており、1日のうちで複数の単価(例えば、買電単価A1、A2、(A1>A2))が設定されている(時間帯別料金)。
また、買電力量料金単価(買電単価A’:電気使用場所Zごとに消費する電力を定額料金で買取る場合の単価)は、終日定額に設定されている(定額料金)。
【0074】
2)電気使用場所Zごとに蓄電設備30から供給される電力を時間帯別料金で売る場合の料金体系には、時間帯別料金の設定があり、定額料金の設定がない。売電力量料金単価(売電単価B:電気使用場所Zごとに蓄電設備30から供給される電力を時間帯別料金で売る場合の単価)が時間帯に応じて定められており、1日のうちで複数の単価(例えば、売電単価B1、B2、(B1>B2))が設定されている(時間帯別料金)。
【0075】
3)電力事業者から需要場所ごとに供給される高圧の電力の料金体系には、定額料金の設定があり、時間帯別料金の設定がない。電力事業者からの買電力量料金単価(買電単価C)には、終日定額の単価が設定されている。
【0076】
4)買電単価Aを切り替える時刻と売電単価Bを切り替える時刻とを同期させる。
(ただし、それぞれ独立に設定されていてもよい。)
5)蓄電設備30の蓄電容量(電力量)のうちから、売電用の電力として供給可能な電力量Pdiscと、非常時のバックアップ用の電力として供給可能な電力量Pbackとを予め設定する。
6)1日のうちで、買電単価A1と売電単価B1とが設定されている売電時間帯Td(昼間)と、買電単価A2と売電単価B2とが設定されている充電時間帯Tc(夜間)とが定義されている。
【0077】
7)蓄電設備30は、上記の充電時間帯Tcに充電し、充電されていた電力を上記の売電時間帯Tdに放電する。
8)蓄電設備30が売電時間帯Tdに放電する電力量は、充電されている総電力量Psのうち電力量Pdiscを売電用の電力として供給可能とする。
また、充電されている総電力量Psのうち電力量Pbackは、非常時にバックアップ用の電力として供給するために保持される。(Ps=Pdisc+Pback)
【0078】
9)蓄電設備30が売電時間帯Tdに放電する電力量Pdiscは、蓄電設備30が設置されている電気使用場所Zにおいて消費する電力量Puserと、売電する電力量Pexcとが含まれる(Pdisc=Puser+Pexc)。
例えば、電力量Pdiscから電力量Puserを優先的に充当し、その余りの電力量Pexcまでを売電用の電力として供給可能な電力量とする。
【0079】
10)電力量Puserが発生しない場合(例えば、長期不在時など)には、予め登録されている設定情報に応じて、電力量Pdiscの全てを売電する電力量Pexcとする。
【0080】
さらに、説明を簡略化するために、電気使用場所ごとの消費電力量をそろえた場合の一例をあげて、経済性について説明する。
11)蓄電設備30の仕様
・充電容量を充電容量P0とする。
・償却期間(寿命)を償却期間TLとする。
・設備導入費用を設備導入費用C
BTとする。
12)蓄電設備30の利用形態
充電容量P0を、次のように売電用電力量(Pdisc)と、非常時のバックアップ用の電力量(Pback)とに分ける。
13)時間帯別電気料金
・売電時間帯Td(8時から20時)の買電単価と売電単価とをそれぞれ、買電単価A1、売電単価B1とする。
・充電時間帯Tc(20時から8時)の買電単価と売電単価とをそれぞれ、買電単価A2、売電単価B2とする。
14)需要負荷パターン
各電気使用場所とも共通にする。
・売電時間帯Td(8時から20時)の消費電力量を消費電力量Pdとする。
・充電時間帯Tc(20時から8時)の消費電力量を消費電力量Pcとする。
よって、売電用電力Pdiscのうち、売電時間帯Tdにおける消費電力量Pdを除いた電力が、売電できる売電電力Ppは、式(1)から算出される。
【0081】
Pp=Pdisc−Pd ・・・(1)
【0082】
上記の条件に基づいて、例えば、以下の演算処理による課金処理を行う。
【0083】
電気使用場所Z1の電気使用料金CH1:
蓄電設備30が設けられている電気使用場所Z1は、売電時間帯Tdに売電することができる。
まず、買電電気料金を時間帯ごとに計算する。
売電時間帯Tdの買電電力量は、蓄電設備30から供給される電力によってまかなわれて0kWhであり、買電電気料金が0円になる。
充電時間帯Tcの買電電力量は、売電時間帯Tdにおいて放電させる売電用電力Pdiscと、充電時間帯Tcにおいて消費される消費電力量Pcの和(Pdisc+Pc)である。充電時間帯Tcの買電電気料金が(A2×(Pdisc+Pc))になる。
次に、売電電気料金を時間帯ごとに計算する。
売電時間帯Tdの売電電力量は、蓄電設備30から供給される売電用電力Pdiscのうち、売電時間帯Tdにおける消費電力量Pdを除いた売電電力Ppを売ることができる。売電時間帯Tdの売電電気料金が(B1×Pp)になる。
充電時間帯Tcは、蓄電設備30の充電時間に当てられることから、売充電時間帯Tcの売電電力量は、0kWhであり、売電電気料金が0円になる。
電気使用場所Z1の1日の電気使用料金CH1を整理すると、式(2)から算出される。
【0084】
CH1=(A2×(Pdisc+Pc))−(B1×Pp) ・・・(2)
【0085】
電気使用場所Z2の電気使用料金CH2:
電気使用場所Z2には蓄電設備30が設けられておらず、終日買電することになる。
電気使用場所Z2における買電の契約は、時間帯別料金の契約である。
買電電気料金を時間帯ごとに計算する。
売電時間帯Tdの買電電力量は、売電時間帯Tdにおける消費電力量Pdである。売電時間帯Tdの買電電気料金が(
A1×Pd)になる。
充電時間帯Tcの買電電力量は、充電時間帯Tcにおいて消費される消費電力量Pcである。充電時間帯Tcの買電電気料金が(
A2×Pc)になる。
なお、売電電気料金は、蓄電設備30が設けられていないことから発生しない。
電気使用場所Z2の1日の電気使用料金CH2を整理すると、式(3)から算出される。
【0086】
CH2=(
A1×Pd)+(
A2×Pc) ・・・(3)
【0087】
電気使用場所Z3の電気使用料金:
電気使用場所Z3には蓄電設備30が設けられておらず、終日買電することになる。
電気使用場所Z3における買電の契約は、定額料金の契約である。
買電電気料金を時間帯ごとに計算する。
売電時間帯Tdの買電電力量は、売電時間帯Tdにおける消費電力量がPdである。売電時間帯Tdの買電電気料金が(A’×Pd)になる。
充電時間帯Tcの買電電力量は、充電時間帯Tcにおいて消費される消費電力量Pcである。充電時間帯Tcの買電電気料金が(A’×Pc)になる。
なお、売電電気料金は、蓄電設備30が設けられていないことから発生しない。
電気使用場所Z3の1日の電気使用料金CH3を整理すると、式(4)から算出される。
【0088】
CH3=(A’×Pd)+(A’×Pc) ・・・(4)
【0089】
以上に、条件の異なる3箇所の電気使用場所Zの電気料金をそれぞれ試算した。
電気使用場所Z1は、買電に対し売電による利益が得られるように各単価が設定されている。そのため、それぞれの電気使用場所において同じ電力量を消費したとしても、電力を消費するだけの電気使用場所Z2の電気使用料金CH2と、電気使用場所Z3の電気使用料金CH3のそれぞれより電気使用場所Z1の電気使用料金CH1が安くなる。
電気使用場所Z3の電気使用料金を基準にして、電気使用場所Z1の電気使用料金を比較する。
電気使用場所Z1においては、電気使用場所Z3の場合に比べて1日あたりの電気使用料金について毎日の利益Prdが生じることになる。利益Prdは、式(5)により算出できる。
【0090】
Prd=((A’×Pd)+(A’×Pc))−((A2(Pdisc+Pc))−(B1×Pp)))
・・・(5)
【0091】
上記について換言すれば、電気使用場所Z1においては、年間の電気使用料金についてPry(=Prd×365)の利益が生じることになる。
上記の試算結果により、この1年間の利益を蓄電設備30の償却期間TLを集計すると、(Pry×TL)となる。このように、蓄電設備30に投資したことにより償却期間TL分に発生する利益(Pry×TL)は、蓄電設備30の設備導入費用C
BTを上回るように設定されている。それゆえ、蓄電設備30に対する投資を行ったとしても、蓄電設備30の寿命期間内に蓄電設備30に対する投資額を回収することが可能であり、蓄電設備30による停電補償の効果も得ることができる。
【0092】
次に、各電気使用場所Zの入居者AからCに電力を提供するサービスを行うサービス事業者が、電気事業者(一般電気事業者又は特定規模電気事業者など)に支払う電気料金を整理する。
サービス事業者の電気使用料金:
サービス事業者は、電気事業者と需要場所の電気使用契約を行う。そこで、サービス事業者は、各電気使用場所Zが消費する電力量から、蓄電部BTから給電される電力量を減じた電力量の電気使用料金を電力事業者に支払うことになる。サービス事業者の買電の契約は、例えば、定額料金の契約とする。
以下、電気事業者から供給を受ける電力の買電電気料金を時間帯ごとに計算する。
売電時間帯Tdの買電電力量は、売電時間帯Tdにおける消費電力量がPdである。売電時間帯Tdの買電電気料金が(C1×(
2Pd−Pp))になる。
充電時間帯Tcの買電電力量は、充電時間帯Tcにおいて消費される消費電力量Pcである。充電時間帯Tcの買電電気料金が(C2×(
3Pc+Pdisc)になる。
なお、サービス事業者から電気事業者に対する売電電力の売電電気料金は、電力系統側への逆潮流を生じることがないことにより発生しない。
需要場所単位の1日の電気使用料金COMを整理すると、式(6)から算出される。
【0093】
COM=(C1×(
2Pd−Pp))+(C2×(
3Pc+Pdisc) ・・・(
6)
【0094】
なお、上記電気料金の算出において、蓄電電力制御部21は、記憶部22に、単価情報TBL、契約者情報TBL、及び、契約情報TBLを記憶させておく。
単価情報TBLには、契約条件に対応させて、予め定められている契約単価情報が記憶されている。契約単価情報は、例えば、一日が複数の時間帯に分割されており、その時間帯に応じて定められている。契約単価情報には、蓄電設備30からの電力を他の電気使用場所に給電する場合の売電単価情報と、電気使用場所ごとに給電を受ける買電単価情報とが、上記の時間帯に対応づけて記憶されている。各契約単価は、一日を通して同額とする定額単価を設けることができる。
【0095】
契約者情報TBLには、一意に契約者を識別可能とする契約者識別情報に対応づけられる契約者の情報が記憶されている。
【0096】
契約情報TBLには、一意に契約者を識別可能とする契約者識別情報に対応づけられる契約者ごとの契約情報が記憶されている。契約情報には、他の電気使用場所に蓄電設備30からの給電を行うことの可否情報、非常時に給電を継続させることの要否情報、上記の「蓄電設備30の仕様」における「充電容量(P0)」、「蓄電設備30の利用形態」における「売電用電力量(Pdisc)」と「非常時のバックアップ用の電力量(Pback)」などが含まれる。
【0097】
蓄電電力制御部21は、記憶部22に記憶されている単価情報TBL、契約者情報TBL、及び、契約情報TBLの各種情報を参照し、上記の課金演算処理を行い、契約者ごとの電気料金を算出し、算出した電気料金を契約者情報に対応づけて出力する。
【0098】
(対象施設)
上記の実施形態においては、「電気使用場所Z」を単位として、電力共有制御と課金処理とを行う場合について説明した。電力共有制御と課金処理とを行う場合の施設には、集合住宅施設、テナント型のビル(オフィスビル)があげられる
上記実施形態の処理と異なり、電力共有制御だけを行う場合にも本実施形態を適用することができる。例えば、電力共有制御だけを行う場合の施設には、(テナントのように個別の課金が不要な)纏めて電力料金を電力事業者に支払うビル(オフィスビル)、病院、工場などがあげられる。
【0099】
例えば、オフィスビルを例にあげて説明する。オフィスビルのテナントを単位として、本実施形態における電気使用場所Zを割り当てる。本実施形態と同様に電気使用場所Zに対応させて低圧Whメータを設けて、電気使用場所Zにおいて消費する消費電力と、電気使用場所Zから供給される供給電力とを検出する。このような構成とすることにより、本願の電力共有制御(電力シェア)の制御方法を、電気使用場所Z(テナント)を単位として適用することができる。
【0100】
なお、低圧側計器部40(低圧側のWhメータ)が各電気使用場所Z(テナント)に対応させて設けられていない場合は、電気使用場所Zにおいて消費する消費電力と、電気使用場所Zから供給される供給電力とを検出することができない。低圧側計器部40(低圧側のWhメータ)からの供給電力の情報を得ることができないことにより、本実施形態に示す電力供給システム100の適用が困難である。そのため、従来までの一般的な系統、即ち、低圧側計器部40(低圧側のWhメータ)が各電気使用場所Z(テナント)に対応させて設けられていない系統は、本実施形態に示す電力供給システム100と独立させた系統として構成する。
【0101】
このように課金処理を行わない場合であっても、本願の電力共有制御(電力シェア)の制御方法を適用するための構成は、上記の電力共有制御と課金処理とを行う場合と共通の構成とすることができる。上記の説明においてはオフィスビルを例示したが、他の施設に対しても、本実施形態と同様の構成とすることにより適用可能となる。
【0102】
本実施形態に示すように、通常時には、時間帯に応じて蓄電設備30の動作状態を切り替えることにより、充電処理の時間帯において充電する電力を、放電処理の時間帯に放電させることにより、効率よく蓄電設備30を機能させることができる。
【0103】
<第2実施形態>
図4を参照し、本発明の異なる実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係わる電力供給システムの概略構成図である。
この
図4に示される電力供給システム100Aには、複数の電気使用場所Z(電力供給先)に蓄電部BTが備えられている。以下、
図1と同じ構成には同じ符号を附し、異なる点を中心に説明する。
【0104】
(配電系統側の構成)
低圧配電系統には、電気使用場所Z2に対応させて、低圧側計器部40Aにおける低圧側計器WhAが設けられている。低圧側計器部40Aは、各電気使用場所Zの電力量を検出する。低圧側計器部40Aには、各電気使用場所Zの電力量を検出する2種類の低圧側計器WhA(WhA1、WhA2)と低圧側計器WhB(WhB3)とが含まれる。
【0105】
(各電気使用場所Zにおける構成)
電気使用場所Z1には、低圧側計器WhAを介して接続される低圧配電線LW1が敷設されている。低圧配電線LW1には、蓄電設備31と負荷LL1とが接続されている。この低圧配電線LW1には、需要場所における配電系統(低圧配電線LW)側から低圧側計器WhAを介して電力が供給される。また、低圧側計器WhAを介して低圧配電線LW1から電力低圧配電線LW側に、蓄電設備31によって生成された電力が供給される。
蓄電設備31は、蓄電部BT1と蓄電給電部PCS1を備える。蓄電設備31は、第1実施形態における蓄電設備30としての機能を備える。
【0106】
電気使用場所Z2には、低圧側計器WhAを介して接続される低圧配電線LW2が敷設されている。低圧配電線LW2には、蓄電設備32と負荷LL2とが接続されている。この低圧配電線LW2には、需要場所における配電系統(低圧配電線LW)側から低圧側計器WhAを介して電力が供給される。また、低圧側計器WhAを介して低圧配電線LW2から電力低圧配電線LW側に、蓄電設備32によって生成された電力が供給される。
【0107】
蓄電設備32についての詳細を示す。蓄電設備32は、蓄電部BT2と蓄電供給部PCS2を備える。
蓄電部BT2は、2次電池であり、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、NaS電池などである。蓄電部BT2は、電気使用場所Z2に設けられる。
【0108】
蓄電供給部PCS2は、蓄電部BT2に対となって電気使用場所Zに設置されているとともに、低圧配電線LW上の連系点P2において需要場所の配電系統と連系(接続)されている。「この蓄電供給部PCS2は内部にインバータ(不図示)を備えており、実際にはこのインバータを介して蓄電供給部PCS2は、需要場所の配電系統に連系されている。つまり、蓄電部BT2に蓄積されている直流電力は、蓄電供給部PCS2内のインバータによって交流電力に変換されて需要場所の配電系統側(低圧配電線LW)に送電(逆潮流)可能となっている。
なお、以下の説明において、蓄電設備31と蓄電設備32は、「蓄電設備30」で総称する場合がある。また、蓄電給電部PCS1と蓄電供給部PCS2は、「蓄電供給部PCS」で総称する場合がある。
【0109】
(複数の蓄電設備による給電制御)
上記の場合には、上記第1実施形態に示した内容に加え、以下に示すように、各蓄電設備30の所有者の利益がそれぞれ公平になるように、売電による利益を配分できるように制御することが必要になる。例えば、その制御方法として、下記に示す方法がある。
【0110】
・各蓄電設備30から電力を供給する時間が均等になるように配分する。
蓄電電力制御部21は、例えば、契約者ごとの契約情報を参照して、1日のうちで各蓄電設備30から供給させる時間が均等になるように定められた供給時間帯情報を生成する。蓄電電力制御部21は、定められた供給時間帯情報を各蓄電設備30に送り、供給時間帯情報に従って順に供給させるように各蓄電設備30を制御する。この方法の場合、各蓄電設備30の供給可能電力に差がある場合には、同じ時間が割り当てられたとしても、各蓄電設備30から供給する電力量に差が生じる場合がある。
【0111】
・各蓄電設備30から供給する電力量が均等になるように配分する。
蓄電電力制御部21は、例えば1日のうちで各蓄電設備30からそれぞれ供給させる電力量が均等になるように定められた供給時間帯情報を生成する。蓄電電力制御部21は、定められた供給時間帯情報を各蓄電設備30に送り、供給時間帯情報に従って順に供給させるように各蓄電設備30を制御する。この方法の場合、各蓄電設備30の供給可能電力に差がある場合であっても、供給する電力量に従って配分されるので各蓄電設備30から供給する電力量が均等になる。
【0112】
・蓄電設備30ごとに売電により得られる料金(利益)が均等になるように配分する。
蓄電電力制御部21は、蓄電設備30ごとに売電により得られる料金が均等になるように異なる売電単価を定め、蓄電設備30ごとの契約単価情報(売電単価情報)を設ける。なお、蓄電電力制御部21は、契約者情報TBLに記憶(登録)されている契約情報に基づいて対象となる契約者と、当該蓄電設備30とを対応づけて特定することにより、売電により得られる料金(利益)が均等になるように、蓄電設備30ごとに契約単価情報(売電単価情報)を設定する。この方法の場合、各蓄電設備30の供給可能電力や供給時間に差がある場合であっても、各蓄電設備30から供給される電力量と、売電により得られる料金(利益)とを独立に制御することができることから、各蓄電設備30から供給する電力量を有効に利用することが可能となる。
【0113】
・電気使用場所ごとに売電により得られる料金(利益)が均等になるように配分する。
例えば、1つの電気使用場所に複数の蓄電設備30が設けられる場合がある。この場合、蓄電電力制御部21は、電気使用場所ごとに売電により得られる料金が均等になるように異なる売電単価を定め、電気使用場所ごとの契約単価情報(売電単価情報)を設ける。なお、蓄電電力制御部21は、契約者情報TBLに記憶(登録)されている契約情報に基づいて対象となる契約者と、当該電気使用場所とを対応づけて特定することにより、売電により得られる料金(利益)が均等になるように、電気使用場所ごとに契約単価情報(売電単価情報)を設定する。この方法の場合、各蓄電設備30の供給可能電力や供給時間や、1つの電気使用場所における蓄電設備30の数量に差がある場合であっても、各電気使用場所から供給される電力量と、売電により得られる料金(利益)とを独立に制御することができることから、各蓄電設備30から供給する電力量を有効に利用することが可能となる。
【0114】
上記の制御方法は、1日単位で均一化できるように制御するものとして説明したが、予め定められた所定の期間を単位として均一化することができる。
【0115】
また、過去に実際に検出された消費電力の傾向(消費電力パターン)に応じて、蓄電設備30からの供給量を制御してもよい。このように、消費電力パターンに応じて供給量を制御することにより、例えば、ピーク電力が発生する朝晩などの時間帯に、蓄電設備30からの電力を供給することが可能となる。
【0116】
さらに、過去に実際に検出された消費電力の傾向(消費電力パターン)に基づいて、必要とされる電力量を時間帯ごとに推定することができる。
例えば、需要場所において供給が必要とされる電力量に対して、各蓄電設備30が供給可能な供給量まで放電しきれるか否かの判定結果に応じて、蓄電設備30に蓄電された電力を放電パターンを制御する。
上記の判定の結果により下記のように制御する。
上記の判定において、各蓄電設備30が供給可能な供給量まで放電しきれる(Yes)と判定した場合、蓄電電力制御装置20は、蓄電供給部PCSを制御して、蓄電供給部現状の供給状態(供給条件)を変更することなく、現状を維持してそのまま電池部BTから電力供給を継続させる。
上記の判定において、各蓄電設備30が供給可能な供給量まで放電しきれない(No)と判定した場合、蓄電電力制御装置20は、蓄電供給部PCSを制御して、蓄電供給部PCSの現状の供給状態(供給条件)を変更する。上記の蓄電供給部PCSの供給状態(供給条件)を、上記判定の基準とした推定放電量に基づいて利益を均等化するように、残りの放電量を配分する。なお、上記の判定の基準とする推定放電量は、例えば、1ヶ月の放電パターンを参照としてもよい。
【0117】
また、蓄電設備30の設備容量(蓄電部BTの容量、蓄電供給部PCSからの供給電力)が異なる場合がある。このような蓄電設備30の設備容量に応じた重み付けを行うために、放電量を制御する重み付け情報(優先順位)を重み付け情報テーブルとして生成し、記憶部22に記憶させてもよい。
【0118】
本実施形態に示される電力供給システム100(100A)によれば、複数の電気使用場所がある需要場所に設置された蓄電設備によって蓄積されている電力を有効に活用することが可能となる。
また、電気使用場所Zの利用者が個々に設置する場合の蓄電設備30の導入費用は、当該利用者がそれぞれ負担していたが、電力供給システム100(100A)を適用することにより、平常時の売電による利益により、初期投資を回収することができる。従来は、当該利用者の経済的な負担が大きくなることにより、当該利用者が蓄電設備を設けようとすることの妨げになるという問題があったが、電力供給システム100(100A)の効果により、経済的な課題を解決することが可能となる。
また、電力供給システム100(100A)によれば、電力系統に逆潮流を生じさせることなく、需要場所における他の電気使用場所Zに電力を供給することができる。
【0119】
<第3実施形態>
図1を参照し、電力供給システム100における給電制御処理の詳細について説明する。本実施形態においては、主に電力供給システムに電力系統からの供給を受けない場合について示す。
電力供給システム100における蓄電供給部PCS1は、前述のとおり一般のパワーコンディショナと異なり、電力系統側の事故停電時や作業停電時などにより系統電源PSからの電力供給が停止した非常時の場合においても、低圧配線LWに電力の供給を行う。
【0120】
最初に、電力供給システム100について、非常時の給電制御処理に係る構成を整理する。
本実施形態における蓄電電力制御装置20(電力供給制御装置)の蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて蓄電設備30に指令(指令情報)を送り、蓄電給電部PCS1(蓄電部BT1)からの電力の供給を制御する。
例えば、蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて、電気使用場所Z(例えば、電気使用場所Z2、第1電力供給先)に蓄電電力を供給するように制御するとともに、電気使用場所Z3(第1電力供給先(電気使用場所Z2)と異なる第2電力供給先)において蓄電電力が消費されないように制御する。このような蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて電気使用場所Z3(第2電力供給先)において電力を消費する負荷LL3を制御して、負荷LL3による蓄電電力の消費が低減するように制御する。或いは、蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて電気使用場所Z3(第2電力供給先)において電力を消費する負荷LL3を制御して、負荷LL3による蓄電電力の消費が中断するように制御してもよい。
【0121】
また、本実施形態における蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力に応じた電圧が、予め定められた所定の閾値より低下するか否かの判定結果に応じて、蓄電給電部PCS1から電気使用場所Z2(第1電力供給先)に蓄電電力を供給するように制御する。
なお、給電部10は、供給されている電力の供給状況を検出し、検出した供給状況に応じた情報を蓄電電力制御部21に送るものとする。例えば、給電部10は、供給されている電力の供給状況を、供給されている電圧に基づいて検出する。
蓄電電力制御部21は、給電部10から送られた情報に基づいて、検出した供給状況から給電部10に供給されている電圧が上記閾値より低下すると判定する。
【0122】
また、本実施形態における蓄電給電部PCS1は、予め定められている契約情報によって第1電力供給先と第2電力供給先とを識別し、該契約情報に定められる所定の条件に従って、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて、蓄電給電部PCS1からの電力の供給を制御する。
【0123】
(非常時の給電制御処理の処理手順)
続いて、電力供給システム100における、通常時と非常時とを識別する判定処理について説明する。ここでいう、通常時とは第1実施形態として示したように、電力系統から電力の供給を受けている状態のことであり、非常時とは、それに対して、電力系統から電力の供給を受けていない状態のことである。
図5は、電力供給システムの通常時と非常時とを識別する判定処理を示すフローチャートである。
【0124】
この
図5に示す通常時と非常時とを識別する判定処理において、まず、給電部10(高圧側電圧電流検出部DTH)は、給電部10に供給されている電力の供給状況を、給電部10に供給されている電圧によって検出する(ステップS10)。
蓄電電力制御装置20(蓄電電力制御部21)は、給電部10に電力が供給されている状況にあるか否かを判定する。この判定は、高圧側電圧電流検出部DTHによって検出された電圧を予め定められている所定の閾値と比較することにより行う(ステップS20)。
【0125】
ステップS20の判定により、給電部10に電力が供給されている状況にある(ステップS20:Yes)と判定した場合、蓄電電力制御部21は、通常時の給電状態になるように制御し、電力供給状況による通常時と非常時とを識別する判定処理を終える(ステップS30)。
このステップS30の処理において、蓄電電力制御部21は、敷設されている低圧配電線LWを介して複数の電気使用場所Z(電力供給先)に電力を給電部10が給電するように制御する。また、蓄電電力制御部21は、蓄電部BT1が電力を蓄積するように制御する。また、蓄電電力制御部21は、蓄電部BT1に蓄積されている電力に基づいて生成された蓄電電力を、蓄電給電部PCS1が、複数の電気使用場所Z(電力供給先)のうちの何れかの電気使用場所Z(第1電力供給先)に供給するように制御する。
【0126】
一方、ステップS20の判定により、給電部10に電力が供給されている状況にない(ステップS20:No)と判定した場合、蓄電電力制御部21は、非常時の給電状態になるように制御し、電力供給状況による通常時と非常時とを識別する判定処理を終える(ステップS40)。
以上に示したように、電力供給システム100は、通常時と非常時とを識別する判定処理を、給電部10に供給されている電力の供給状況に基づいて行うことができる。
【0127】
(非常時の給電制御処理の処理手順)
続いて、蓄電電力制御部21による、非常時の給電制御処理(上記のステップS40)について説明する。
図6は、電力供給システムの非常時の給電制御処理を示すフローチャートである。
前述の
図5におけるステップS20において、給電部10に電力が供給されている状況にない(ステップS20:No)と判定した場合に、以下に示す処理を順に従って実施する。
なお、
図6に示す非常時の給電制御処理を説明するにあたり、次の条件が定められている。
電気使用場所Zごとに非常時に電気使用場所Zへの給電を継続するか否かを選択する契約条件(給電継続契約情報)が、サービス事業者と入居者(ユーザー)との間において予め定められている。また、非常時に給電を継続する場合の優先度k(優先度情報)についても、サービス事業者と入居者(ユーザー)との間において予め定められている。また、蓄電設備30からの給電を行うか否か選択する契約情報(蓄電電力売電契約情報)が、サービス事業者と入居者(ユーザー)との間において予め定められている。
さらに、上記のように定められた契約条件は、記憶部22に上記の給電継続契約情報、優先度情報(優先度k)、及び、蓄電電力売電契約情報が、契約者を識別する契約者識別情報に対応づけて記憶されている。上記の優先度kは、供給する電力の不足が見込まれた場合に、電力の供給を選択的に遮断する際の情報とする。優先度kが高い場合には長く供給されるように定義されており、優先度kが低い場合には先に供給が停止される場合があるように定義されている。
また、蓄電設備30が売電時間帯に放電する電力量は、充電されている総電力量のうち電力量Pdiscまでを売電用の電力として供給可能とする。さらに、充電されている総電力量のうちの電力量Pbackは、非常時にバックアップ用の電力として供給するために保持される。
【0128】
この
図6に示す処理において、まず、蓄電電力制御部21は、遮断器CBを遮断する。これにより、逆潮流の発生を防ぐことができる(ステップS41)。
【0129】
次に、蓄電電力制御部21は、記憶部22に記憶されている各契約者の契約情報(蓄電電力売電契約情報)に基づいて、非常時に売電する契約をしている契約者の電気使用場所Zごとの契約電力を集計する。蓄電電力制御部21は、この集計により非常時において各蓄電設備30から供給可能な電力(P
back)の集計値ΣP
backを算出する(ステップS42)。
【0130】
次に、蓄電電力制御部21は、記憶部22に記憶されている各契約者の契約情報(給電継続契約情報)に基づいて、非常時に買電を継続する契約をしている契約者の電気使用場所Zごとの契約電力を、所定の優先度k以上の優先度の範囲で集計する。蓄電電力制御部21は、この集計により非常時に供給されることが必要とされる電力の集計値ΣP
EMを優先度kごとに算出する(ステップS43)。
【0131】
蓄電電力制御部21は、所定の優先度k以上の優先度の「非常時に供給されることが必要とされる電力の集計値ΣP
EM」の合計値と「非常時において各蓄電設備30から供給可能な電力の集計値ΣP
back」とを比較する(ステップS44)。
【0132】
ステップS44の判定により、所定の優先度k以上の優先度の「集計値ΣP
EM」の合計値が「集計値ΣP
back」より少ない(ステップS44:Yes)と判定した場合、蓄電電力制御部21は、所定の優先度k以上の優先度を契約条件として定めている契約者の電気使用場所Zに電力を供給するように制御して、非常時の給電制御処理を終える(ステップS45)。
【0133】
ステップS44の判定により、所定の優先度k以上の優先度の「集計値ΣP
EM」の合計値が「集計値ΣP
back」以上である(ステップS44:No)と判定した場合、蓄電電力制御部21は、所定の優先度を下げ(優先度kの設定値を下げ)、給電する範囲を制限して電力の供給を継続させるようにする(ステップS46)。
【0134】
蓄電電力制御部21は、設定した優先度kの値が妥当であるか否かを判定する(ステップS47)。ステップS47の判定により、設定した優先度kの値が妥当であると判定した場合には、ステップS43の処理に進む。
【0135】
一方、ステップS47の判定により、設定した優先度kの値が妥当でないと判定した場合には、蓄電電力制御部21は、蓄電設備30からの電力について全ての契約者の電気供給場所Zに対する給電を停止するように制御して、非常時の給電制御処理を終える(ステップS48)。
このステップS48の処理を行うことにより、非常時が生じている場合であっても蓄電設備30から供給可能な容量以上の給電を中断させる。このように、蓄電設備30から供給可能な容量以上の給電を中断させることにより、例えば蓄電設備30の損傷を未然に防ぐことができる。これにより、蓄電設備30から供給可能な容量以上に給電することができない状況が生じることがあっても、停電が復旧すれば速やかに通常時の動作を行えるようになる。仮に、蓄電設備30から供給可能な容量以上の給電を中断させなかったことにより、蓄電設備30が損傷してしまった場合には、停電が復旧しても修理が完了するまで蓄電設備30を使用できなくなる虞がある。このように、蓄電設備30から供給可能な容量以上の給電を中断させる処理は、蓄電設備30を運用するうえで有効な手段となる。
【0136】
以上の実施形態において示したように、電力供給システム100(100A)は、複数の電気使用場所がある需要場所に設置された蓄電設備によって蓄積されている電力を有効に活用することができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等も含まれる。
なお、計器部40Bは、さらに遮断部を備えてもよい。上記の遮断部は、電力供給先に対応させて設けられており、低圧配電線LWと電気使用場所Z(電力供給先)内の配線との回路を遮断する。
また、本実施形態における蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力の供給状況に応じて、電気使用場所Z(第1電力供給先)に対応する第1の遮断部を導通させ、他の電気使用場所Z(第2電力供給先)に対応する第2の遮断部を遮断するように制御する。蓄電電力制御部21は、給電部10に供給されている電力に応じた電圧が、予め定められた所定の閾値より低下するか否かの判定結果に応じて、蓄電給電部PCS1から第1電力供給先に蓄電電力を供給するように制御するとともに、負荷LLが消費する消費電力を低減させてもよい。
【0138】
なお、上述の電力供給システム100(100A)、並びに、蓄電電力制御装置20、蓄電設備30、及び、低圧側計器部40(40A)は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、各機能部の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリーやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0139】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。