(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体基材、該誘電体基材に設けられたICチップ、並びに、前記ICチップと電気的に接続される給電点の近傍に不連続な領域を有するとともに、前記誘電体基材の一面に形成された平面状の第一導体、および、前記誘電体基材の他面側に設けられ、前記第一導体と離隔して対向する平面状の第二導体から構成される第一アンテナ部と、前記第一アンテナ部の近傍に、前記第一アンテナ部と離隔し、かつ、前記第一アンテナ部の長手方向に沿って配置された、平面状の第三導体を有する第二アンテナ部と、を備え、前記第一導体および前記第二導体の一方が金属物品側に配置され、前記第一導体および前記第二導体の他方と前記第三導体とが前記金属物品とは反対側に配置され、前記第一導体の放射面または前記第二導体の放射面と、前記第三導体の放射面とが面同士で磁界結合することを特徴とする非接触型データ受送信体。
前記誘電体基材を貫通し、前記第一導体と前記第二導体を接続する短絡線と、前記誘電体基材を貫通し、前記短絡線と離隔して対向するとともに、前記第一導体と前記第二導体を接続し、前記第一導体に給電する給電線と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触型データ受送信体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
(1)第一実施形態
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の第一実施形態を示す概略斜視図である。
図2は、本発明の非接触型データ受送信体の第一実施形態を構成するインレットを示す概略図であり、(a)は
図1のA−A線に沿う断面図、(b)は上面図、(c)は底面図である。
なお、以下の全ての図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
本実施形態の非接触型データ受送信体10は、平面状の第二導体21および第一導体22を有する第一アンテナ部23を有するインレット20と、インレット20の近傍に、インレット20の第一アンテナ部23と離隔し、かつ、第一アンテナ部23(インレット20)の長手方向に沿って配置された平面状の第三導体41を有するブースター用の第二アンテナ部40とから概略構成されている。
なお、インレット20の第一アンテナ部23と第二アンテナ部40が離隔しているとは、インレット20を構成する第二導体21と、第二アンテナ部40を構成する第三導体41とが直接接続していないことを言う。
【0016】
インレット20は、長方形状の誘電体基材24と、誘電体基材24の一面24aに設けられた第一導体22、誘電体基材24の他面24bに設けられた第二導体21、誘電体基材24を厚さ方向に貫通し、第一導体22と第二導体21を接続する短絡線25、および、誘電体基材24を厚さ方向に貫通し、短絡線25と離隔して対向するとともに、第一導体22と第二導体21を接続する給電線26から構成される第一アンテナ部23と、第一アンテナ部23と電気的に接続されたICチップ27とから概略構成されている。
また、第一導体22と第二導体21は、誘電体基材24を介して離隔するとともに、互いに対向して配置されている。
このように、第一アンテナ部23は、逆Fアンテナを形成している。
【0017】
第一導体22は、ICチップ27と電気的に接続される給電点22a,22aの近傍に不連続な領域を有するとともに、誘電体基材24の一面24a全域に渡って形成された略長方形状をなしている。すなわち、第一導体22は、給電点22a,22aの近傍において、誘電体基材24の一面24aが露出した不連続な領域22b,22bを有するものの、それ以外の部分は、誘電体基材24の一面24aのほぼ全域を覆う連続した平面状(略長方形状)の領域を有している。
また、第二導体21は、誘電体基材24の他面24b全域に渡って形成された長方形状をなしている。すなわち、第二導体21は、誘電体基材24の他面24bのほぼ全域を覆う連続した平面状(略長方形状)の領域を有している。
【0018】
短絡線25は、誘電体基材24を厚さ方向に貫通する貫通孔に充填された導電体からなり、第一導体22と第二導体21を電気的に接続している。
給電線26は、誘電体基材23を厚さ方向に貫通する貫通孔に充填された導電体からなり、短絡線25と間隔を隔て対向するとともに、第一導体22と第二導体21を電気的に接続している。そして、給電線26は、給電点22a,22aを介して第一導体22に実装されるICチップ27から第二導体21に給電するためのものである。
【0019】
また、インレット20では、ICチップ27を熱や水分から保護するために、ICチップ27およびその近傍を覆う絶縁性樹脂からなる絶縁部28が設けられている。
なお、ICチップ27の近傍とは、ICチップ27と接続されている第一導体22の給電点22a,22aや、誘電体基材24におけるICチップ27および第一導体22の給電点22a,22aの周辺部分のことである。
【0020】
第一アンテナ部23は、情報書込/読出装置との通信を直接行うためのものではなく、電磁誘導による、第二アンテナ部40との電気的な接続を行うためのものである。すなわち、情報書込/読出装置との通信を直接行うのは、第二アンテナ部40である。
また、第一アンテナ部23は、非接触型データ受送信体10を金属製物品に貼付した場合に、第一導体22が金属物品側に(金属物品に接するように)配置され、第二導体21が金属物品とは反対側に(金属物品と接しないように)配置されることによって、金属物品側に配置された第一導体22が金属物品の影響を抑え、非接触型データ受送信体10を通信可能とするためのものである。
【0021】
第二アンテナ部40は、長方形状の基材42と、基材42の一面全面に設けられ、連続した平面状(長方形状)の第三導体41とから概略構成されている。
【0022】
インレット20と、第二アンテナ部40との間隔(距離)は、特に限定されるものではないが、目的とする通信距離に応じて適宜調整される。
また、第一アンテナ部23をなす第二導体21の放射面(誘電体基材24の他面24bと平行な面)21aと、第二アンテナ部40を構成する第三導体41の放射面(基材42の一面と平行な面)41aとが同一面上に配置されるように、インレット20と第二アンテナ部40が配置されている。
【0023】
なお、本実施形態では、第二導体21の放射面21aと第三導体41の放射面41aが同一面上に配置されている場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にあっては、第一導体の放射面(誘電体基材の一面と平行な面)と第三導体の放射面が同一面上に配置されていてもよい。
【0024】
第二アンテナ部40を構成する第三導体41は、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波の周波数(300MHz〜30GHz)の半波長を受信できる形状をなすように基材42の一面に設けられている。また、第三導体41の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波の周波数(300MHz〜30GHz)の半波長に相当する長さとなっている。
【0025】
また、本実施形態では、インレット20を構成する誘電体基材24と、第二アンテナ部40を構成する基材42とが別体である場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にあっては、インレットを構成する誘電体基材と、第二アンテナ部を構成する基材とが同一の基材であってもよい。このように同一の基材を用いる場合、例えば、第一導体および第二導体と、第三導体とが接触しないように、離隔して設けられる。
【0026】
誘電体基材24をなす誘電体としては、各種のプラスチック、セラミックスなどが挙げられる。
【0027】
第一導体22は、誘電体基材24の一面24aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
第二導体21は、誘電体基材24の他面24bに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0028】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0029】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度で第一導体22または第二導体21をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。第一導体22または第二導体21をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜を構成する導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10
−5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0030】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型あるいは架橋/熱可塑併用型(ただし、熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型あるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0031】
また、第一導体22または第二導体21をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、第一導体22または第二導体21をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0032】
短絡線25および給電線26をなす導電体としては、上記のポリマー型導電インクを硬化してなるもの、上記の金属メッキなどが挙げられる。
【0033】
ICチップ27としては、特に限定されず、第一導体22および第二導体21と、第二導体41とを介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能であり、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0034】
絶縁部28を構成する絶縁性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル系反応樹脂などが挙げられる。
【0035】
基材42としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0036】
第三導体41は、基材42の一面に、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
第三導体41としては、上述の第一導体22または第二導体21と同様のものが用いられる。
【0037】
なお、本実施形態では、第三導体41が、基材42の一面に、ポリマー型導電インク、導電性箔、金属メッキなどにより形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にあっては、第三導体が、アルミニウムや銅などの金属板から構成されていてもよい。第三導体が金属板からなる場合、第二アンテナ部は第三導体のみから構成されていてもよい。
【0038】
非接触型データ受送信体10が、金属物品に貼付される場合、インレット20の第一導体22が金属物品側に(金属物品に接するように)配置され、インレット20の第二導体21と第二アンテナ部40の第三導体41が金属物品とは反対側に(金属物品と接しないように)配置される。この場合、金属物品側に配置された第一導体22が金属物品の影響を抑えるので、金属物品とは反対側に配置された第二導体21が通信可能となる。
あるいは、非接触型データ受送信体10が、金属物品に貼付される場合、インレット20の第二導体21が金属物品側に(金属物品に接するように)配置され、インレット20の第一導体22と第二アンテナ部40の第三導体41が金属物品とは反対側に(金属物品と接しないように)配置される。この場合、金属物品側に配置された第二導体21が金属物品の影響を抑えるので、金属物品とは反対側に配置された第一導体22が通信可能となる。
【0039】
本実施形態の非接触型データ受送信体10によれば、上述のように、金属物品に貼付した状態でも、金属物品側に配置された第一導体22または第二導体21が金属物品の影響を抑え、金属物品とは反対側に配置された第一導体22または第二導体21が通信可能となる。ひいては、ブースター用の第三導体41を用いた通信が可能となるので、金属物品に貼付した状態でも、全方位に対して通信距離を長くすることができる。また、第一導体22が誘電体基材24の一面24aのほぼ全域を覆う連続した平面状をなし、第二導体21が誘電体基材24の他面24bのほぼ全域を覆う連続した平面状をなし、第三導体41が基材42の一面全面に設けられた連続した平面状をなしているので、第三導体41の大きさ(長さ、幅)を変更することによって、本実施形態の非接触型データ受送信体10の共振周波数および通信距離を調整することができる。また、第三導体41の長さを変更することにより、第三導体41のインダクタンス(L)を調整することができ、第三導体41の幅を変更することにより、第三導体41のキャパシタンス(C)を調整することができるので、インダクタンスとキャパシタンスを、それぞれ個別に、かつ容易に調整することができる。また、第一導体22の放射面または第二導体21の放射面と、第三導体41の放射面とが面同士で磁界結合するので、第三導体41から、第一導体22または第二導体21への入力効率を向上することができる。言い換えれば、第一導体22または第二導体21と、第三導体41とが平面状をなしているので、線状の導体よりも通信距離を長くすることができる。
また、インレットが、第一アンテナ部とブースター用アンテナである第二アンテナ部を備えた構成とした場合、インレットの大きさが大きくなるため、コストが高くなる。本実施形態の非接触型データ受送信体10は、第一アンテナ部23を備えた小型のインレット20と、低コストで作製可能な単純な構造の第二アンテナ部40とを組み合わせた構成であるので、インレットが、第一アンテナ部と第二アンテナ部を備えた構成である場合と比較して、低コストで作製できる。また、第三導体41は、基材42の一面全面に形成された単純な構造をなしているので、第三導体41を低コストで形成することができる。
【0040】
(2)第二実施形態
図3は、本発明の非接触型データ受送信体の第二実施形態を示す概略斜視図である。
図4は、本発明の非接触型データ受送信体の第二実施形態を構成するインレットを示す概略図であり、(a)は
図3のB−B線に沿う断面図、(b)は上面図、(c)は底面図である。
図3において、
図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の非接触型データ受送信体50は、平面状の第一導体61からなる第一アンテナ部62を有するインレット60と、インレット60の近傍に、インレット60の第一アンテナ部62と離隔し、かつ、第一アンテナ部62(インレット60)の長手方向に沿って配置された平面状の第三導体41を有するブースター用の第二アンテナ部40とから概略構成されている。
なお、インレット60の第一アンテナ部62と第二アンテナ部40が離隔しているとは、インレット60を構成する第一導体61と、第二アンテナ部40を構成する第三導体41とが直接接続していないことを言う。
【0041】
インレット60は、長方形状の誘電体基材63と、誘電体基材63の一面63aに設けられた第一導体61、および、誘電体基材63の他面63bに設けられた第二導体64から構成される第一アンテナ部62と、第一アンテナ部62と電気的に接続されたICチップ65とから概略構成されている。
【0042】
第一導体61は、ICチップ65と電気的に接続される給電点61a,61aの近傍に不連続な領域を有するとともに、誘電体基材63の一面63a全域に渡って形成された略長方形状をなしている。すなわち、第一導体61は、給電点61a,61aの近傍において、誘電体基材63の一面63aが露出した不連続な領域61b,61bを有するものの、それ以外の部分は、誘電体基材63の一面63aのほぼ全域を覆う連続した平面状(略長方形状)の領域を有している。
また、第二導体64は、誘電体基材63の他面63b全域に渡って形成された長方形状をなしている。すなわち、第二導体64は、誘電体基材63の他面63bのほぼ全域を覆う連続した平面状(略長方形状)の領域を有している。
【0043】
また、インレット60では、ICチップ65を熱や水分から保護するために、ICチップ65およびその近傍を覆う絶縁性樹脂からなる絶縁部66が設けられている。
なお、ICチップ65の近傍とは、ICチップ65と接続されている第一導体61の給電点61a,61aや、誘電体基材63におけるICチップ65および第一導体61の給電点61a,61aの周辺部分のことである。
【0044】
第一アンテナ部62は、情報書込/読出装置との通信を直接行うためのものではなく、電磁誘導による、第二アンテナ部40との電気的な接続を行うためのものである。すなわち、情報書込/読出装置との通信を直接行うのは、第二アンテナ部40である。
また、第一アンテナ部62は、非接触型データ受送信体50を金属製物品に貼付した場合に、第二導体64が金属物品側に(金属物品に接するように)配置され、第一導体61が金属物品とは反対側に(金属物品と接しないように)配置されることによって、金属物品側に配置された第二導体64が金属物品の影響を抑え、非接触型データ受送信体50を通信可能とするためのものである。
【0045】
インレット60と、第二アンテナ部40との間隔(距離)は、特に限定されるものではないが、目的とする通信距離に応じて適宜調整される。
また、第一アンテナ部62をなす第一導体61の放射面(誘電体基材63の一面63aと平行な面)61cと、第二アンテナ部40を構成する第三導体41の放射面(基材42の一面と平行な面)41aとが同一面上に配置されるように、インレット60と第二アンテナ部40が配置されている。
【0046】
また、本実施形態では、インレット60を構成する誘電体基材63と、第二アンテナ部40を構成する基材42とが別体である場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にあっては、インレットを構成する誘電体基材と、第二アンテナ部を構成する基材とが同一の基材であってもよい。このように同一の基材を用いる場合、第一導体および第二導体と、第三導体とが接触しないように、離隔して設けられる。
【0047】
誘電体基材63をなす誘電体としては、上述の誘電体基材23と同様のものが用いられる。
第一導体61、第二導体64としては、上述の第一導体22、第二導体21と同様のものが用いられる。
ICチップ65としては、上述のICチップ27と同様のものが用いられる。
絶縁部66としては、上述の絶縁部28と同様のものが用いられる。
【0048】
非接触型データ受送信体50が、金属物品に貼付される場合、インレット60の第二導体64が金属物品側に(金属物品に接するように)配置され、インレット60の第一導体61と第二アンテナ部40の第三導体41が金属物品とは反対側に(金属物品と接しないように)配置される。この場合、金属物品側に配置された第二導体64が金属物品の影響を抑えるので、金属物品とは反対側に配置された第一導体61が通信可能となる。
【0049】
本実施形態の非接触型データ受送信体50によれば、上述のように、金属物品に貼付した状態でも、金属物品側に配置された第二導体64が金属物品の影響を抑え、金属物品とは反対側に配置された第一導体61が通信可能となる。ひいては、ブースター用の第三導体41を用いた通信が可能となるので、金属物品に貼付した状態でも、全方位に対して通信距離を長くすることができる。また、第一導体61が誘電体基材63の一面63aのほぼ全域を覆う連続した平面状をなし、第三導体41が基材42の一面全面に設けられた連続した平面状をなしているので、第三導体41の大きさ(長さ、幅)を変更することによって、本実施形態の非接触型データ受送信体50の共振周波数および通信距離を調整することができる。また、第三導体41の長さを変更することにより、第三導体41のインダクタンス(L)を調整することができ、第三導体41の幅を変更することにより、第三導体41のキャパシタンス(C)を調整することができるので、インダクタンスとキャパシタンスを、それぞれ個別に、かつ容易に調整することができる。また、第一導体61の放射面と、第三導体41の放射面とが面同士で磁界結合するので、第三導体41から、第一導体61への入力効率を向上することができる。言い換えれば、第一導体61と、第三導体41とが平面状をなしているので、線状の導体よりも通信距離を長くすることができる。さらに、第一導体61は、誘電体基材63の一面63aのほぼ全域に形成された単純な構造をなしているので、第一導体61を低コストで形成することができる。また、第二導体64は、誘電体基材63の他面63bのほぼ全域に形成された単純な構造をなしているので、第二導体64を低コストで形成することができる。
【0050】
(3)第三実施形態
図5は、本発明の非接触型データ受送信体の第三実施形態を示す概略斜視図である。
図5において、
図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の非接触型データ受送信体70が、上述の第一実施形態の非接触型データ受送信体10と異なる点は、また、第一アンテナ部22をなす第二導体21の放射面(誘電体基材24の他面24bと平行な面)21aと、第二アンテナ部40を構成する第三導体41の放射面(基材42の一面と平行な面)41aとが直交するように、インレット20と第二アンテナ部40が配置されている点である。
また、インレット20と、第二アンテナ部40との間隔(距離)は、特に限定されるものではないが、目的とする通信距離に応じて適宜調整される。
【0051】
なお、本実施形態では、第二導体21の放射面21aと第三導体41の放射面41aが直交している場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にあっては、前記第一放射導体の放射面、前記第一放射導体の放射面の延長面、前記第二放射導体の放射面または前記第二放射導体の放射面の延長面と、前記第三放射導体の放射面または前記第三放射導体の放射面の延長面とが交差していればよい。詳細には、第一放射導体の放射面と第三放射導体の放射面、第一放射導体の放射面と第三放射導体の放射面の延長面、第一放射導体の放射面の延長面と第三放射導体の放射面、または、第一放射導体の放射面の延長面と第三放射導体の放射面の延長面が交差していればよい。さらに、第二放射導体の放射面と第三放射導体の放射面、第二放射導体の放射面と第三放射導体の放射面の延長面、第二放射導体の放射面の延長面と第三放射導体の放射面、または、第二放射導体の放射面の延長面と第三放射導体の放射面の延長面が交差していればよい。すなわち、前記第一放射導体の放射面、前記第一放射導体の放射面の延長面、前記第二放射導体の放射面または前記第二放射導体の放射面の延長面と、前記第三放射導体の放射面または前記第三放射導体の放射面の延長面とが交差する角度は、直角(90°)に限定されるものではなく、鋭角(90°未満)または鈍角(90°超)であってもよい。
【0052】
本実施形態の非接触型データ受送信体70によれば、上述の第一実施形態の効果に加えて、さらに、第二導体21の放射面21aと、第三導体41の放射面41aとが直交するように、インレット20と第二アンテナ部40を配置することにより、インレット20が設置された金属物品から、第三導体41の放射面41aを遠ざけることができる。これにより、第三導体41からの磁束が、インレット20の第一導体22側の面からの逆向きの磁界による磁束と打ち消し合う現象を抑えることができ、第一実施形態と比較して、効率的にインレット20への給電が可能となる。また、第二導体21の放射面21aと、第三導体41の放射面41aとが直交するように、インレット20と第二アンテナ部40が配置されているので、第一実施形態と比較して、インレット20に対する、第三導体41の配置を限定せずに、インレット20の通信能力を向上することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実験例1]
図1および
図2に示すインレットを作製した。
本実験例では、
図1および
図2に示すインレットを構成する第一導体の長さが35mm、第一導体の幅が12mmであった。また、インレットを構成する第二導体の長さが33mm、第二導体の幅が10mmであった。
このインレットを、20cm×30cmのステンレス板上に配置して、RFID UHF測定/検査機(商品名:Tagformance lite、Voyantic社製)により、周波数860〜1000MHzにおける通信距離を測定した。
結果を
図6に示す。
【0055】
[実験例2]
図1および
図2に示す非接触型データ受送信体を作製した。
本実験例では、
図1および
図2に示すインレットを構成する第一導体の長さが35mm、第一導体の幅が12mmであった。また、インレットを構成する第二導体の長さが33mm、第二導体の幅が10mmであった。また、第二アンテナ部を構成する第三導体の長さが130mm、第三導体の幅が13.5mmであった。
また、インレットと第二アンテナ部の間隔が1mmとなり、かつ、第一導体の放射面と第三導体の放射面が同一面上に配置されるように、インレットと第二アンテナ部を離隔して配置した。
この非接触型データ受送信体を、20cm×30cmのステンレス板上に配置して、RFID UHF測定/検査機(商品名:Tagformance lite、Voyantic社製)により、周波数860〜1000MHzにおける通信距離を測定した。
結果を
図6に示す。
【0056】
[実験例3]
図5に示す非接触型データ受送信体を作製した。
本実験例では、
図5に示すインレットを構成する第一導体の長さが35mm、第一導体の幅が12mmであった。また、インレットを構成する第二導体の長さが33mm、第二導体の幅が10mmであった。また、第二アンテナ部を構成する第三導体の長さが130mm、第三導体の幅が13.5mmであった。
また、インレットと第二アンテナ部の間隔が3mmとなり、かつ、第一導体の放射面と第三導体の放射面が直交するように、インレットと第二アンテナ部を離隔して配置した。
この非接触型データ受送信体を、20cm×30cmのステンレス板上に配置して、RFID UHF測定/検査機(商品名:Tagformance lite、Voyantic社製)により、周波数860〜1000MHzにおける通信距離を測定した。
結果を
図6に示す。
【0057】
図6の結果から、インレットのみの実験例1に対して、第一導体の放射面と第三導体の放射面が同一面上に配置された実験例2では、通信距離を約2倍にできることが分かった。さらに、インレットのみの実験例1に対して、第一導体の放射面と第三導体の放射面が直交するように配置された実験例3では、通信距離を約4倍にできることが分かった。
また、実験例2および3は、実験例1では通信距離が非常に短い、周波数860〜920MHzにおいて、通信距離を長くできることが分かった。
なお、ブースター用のアンテナ部(導体)を配置すると、共振周波数が低周波数側にシフトするが、導体の大きさ(長さ、幅)を変更することにより、共振周波数を調整することが可能である。