特許第6050967号(P6050967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050967フェーズドアレイの広帯域連結リングアンテナ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050967
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】フェーズドアレイの広帯域連結リングアンテナ素子
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20161212BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20161212BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20161212BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20161212BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20161212BHJP
   H01Q 5/364 20150101ALI20161212BHJP
   H01Q 5/10 20150101ALI20161212BHJP
   H01P 7/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   H01Q21/06
   H01Q21/24
   H01Q1/52
   H01Q7/00
   H01Q5/364
   H01Q5/10
   H01P7/00 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-140315(P2012-140315)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2013-34184(P2013-34184A)
(43)【公開日】2013年2月14日
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】13/194,344
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】マンリー, ジュニア, チャールズ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】カイ, リックシン
【審査官】 赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−240625(JP,A)
【文献】 特開2003−188636(JP,A)
【文献】 特開2008−177888(JP,A)
【文献】 特開2004−007559(JP,A)
【文献】 特開2006−086688(JP,A)
【文献】 特開平03−254208(JP,A)
【文献】 特開平11−239017(JP,A)
【文献】 特開2011−061754(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01357636(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0042903(US,A1)
【文献】 特表2006−514483(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0052587(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0026567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01P 7/00
H01Q 1/52
H01Q 5/10
H01Q 5/364
H01Q 7/00
H01Q 21/06
H01Q 21/24
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの隣り合う衛星通信帯域において通信するためのシステムにおいて、
フェーズドアレイで構成されている複数のアンテナ素子(100)であって、複数のアンテナ素子(100)のうちの少なくとも1つが、4つの同調用タブ(304)によって接続された内側リング素子(302B)および外側リング素子(302A)を有する連結リング伝導性共振器(102)と、前記連結リング伝導性共振器(102)に容量的に結合された第1のフィードライン(104A)および第2のフィードライン(104B)と、前記連結リング伝導性共振器(102)、前記第1のフィードライン(104A)および前記第2のフィードライン(104B)を遮蔽するように働くことができるファラデーケージ(106)とを含む、複数のアンテナ素子(100)と、
第1のフィードライン(104A)および第2のフィードライン(104B)に電気的に結合され、複数のアンテナ素子(100)のうちの少なくとも1つに独立した信号伝達をもたらすように構成されている通信電子回路と
を備えるシステム。
【請求項2】
第1のフィードライン(104A)および第2のフィードライン(104B)が、連結リング伝導性共振器(102)を駆動するようにさらに働いている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1のフィードライン(104A)が、第2のフィードライン(104B)に対して実質的に90度に配向される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
ファラデーケージ(106)が、少なくとも1つの伝導性ビア(108、402)によって複数の伝導性ストリップ(202)に結合された電磁遮蔽用接地面(110)を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
共形フェーズドアレイによって広帯域衛星通信(「SATCOM」)を行うための方法において、
複数のアンテナ素子(100)のフェーズドアレイを実装するステップであって、アンテナ素子(100)のうちの少なくとも1つが、1つまたは複数の同調用タブ(304)によって接続された複数のリング素子(302)を含む連結リング伝導性共振器(102)と、前記連結リング伝導性共振器(102)に電磁的に結合されたフィードライン(104)と、フェーズドアレイ内で隣接するアンテナ素子(100)の電界から、連結リング伝導性共振器(102)およびフィードライン(104)を遮蔽するように働くことができるファラデーケージ(106)とを含む、ステップと
少なくとも1つのアンテナ素子(100)のフィードライン(104)を通信電子回路に結合するステップと、
通信電子回路を利用して、第1のSATCOM受信帯域における信号を受信するために連結リング伝導性共振器(102)を駆動するステップと、
通信電子回路を利用して、第2のSATCOM受信帯域における信号を受信するために連結リング伝導性共振器(102)を駆動するステップと
を含む方法。
【請求項6】
SATCOM帯域における信号を、少なくとも1つのアンテナ素子(100)の連結リング伝導性共振器(102)およびフィードラインを通じて通信電子回路で受信するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連結リング伝導性共振器(102)が、4つの同調用タブ(304)によって接続された内側リング素子(302B)および外側リング素子(302A)を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのアンテナ素子(100)において、第1のフィードライン(104A)が、第2のフィードライン(104B)に対して実質的に90度に配向され、それにより、通信電子回路が、右旋円偏波信号および左旋円偏波信号をともに、またはデュアル直交線形偏波信号を選択的に受信することが可能になる、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ファラデーケージ(106)が6角形状を含み、それにより、ファラデーケージ(106)の伝導性ストリップ(202)および伝導性ビア(108、402)が、フェーズドアレイ内で隣接するアンテナ素子(100)と共用される、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか一項および請求項5ないし9のいずれか一項に記載のフェーズドアレイシステム用の広帯域連結リングアンテナ素子。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
通常のマイクロ波およびミリ波周波数の指向性アンテナは、一般に、導波管、皿型アンテナ、ヘリカルコイル、ホーン、および他の大型非共形構造体などの扱いにくい構造体を備える。一般に、少なくとも1つの発信機が移動している通信応用例、ならびにレーダ応用例には、可動型ビームおよび/または可動型受信部が必要である。ビームステアリングは、アンテナの物理的運動がなくても電子的に達成することができるので、ビームステアリングの応用例にはフェーズドアレイアンテナが特に有益である。このような電子ビームステアリングは、ジンバル型/モータ駆動型の機械的アンテナステアリングよりも、速く、正確で、信頼性が高い可能性がある。フェーズドアレイアンテナはまた、多重同時信号ビームを有する能力を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許出願第13/999,999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、通常、多重帯域における通信には、その帯域ごとの多重アンテナ開口および/またはデュアル帯域皿型アンテナのいずれかが必要である。航空機における皿型アンテナは、一般に、レードームの下に配置され、航空機の重量、空力抵抗、および保守の複雑さを著しく増幅させる。単一広帯域フェーズドアレイ開口は、多重単一帯域ソリューションおよび/または皿型アンテナに比較して、車両の集積化費用、ならびに大きさ、重量、および電力のニーズを最小限に抑える。しかしながら、スロットリングおよび/またはマイクロストリップパッチアンテナを使用する従来の低プロファイル設計は相互結合に悩まされ、それにより、これらのアンテナの周波数のカバー範囲、スキャン容量、および軸比性能が制限される。
【0004】
これらおよび他の考慮事項に関して、本明細書においてなす開示を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本「発明の概要」が、「発明を実施するための形態」でさらに後述する概念の選択を簡略化した形態で紹介するように提供されることを理解されたい。本「発明の概要」は、主張される主題の範囲を限定するために使用すべきものと意図されていない。
【0006】
17.7〜20.2GHz民生用、および20.2〜21.2GHz軍事用の衛星通信(「SATCOM」)受信K帯域をともにカバーするSATCOM向けの単一共形フェーズドアレイを実装するための広帯域連結リングアンテナ素子を本明細書において説明する。本アンテナ素子のアレイは、照準から60度のコニカルスキャン容量よりも優れた広スキャン容量をもたらし、特定の周波数帯域にわたって優れた円偏波軸比率を維持する一方、非常に薄く、軽量である。本アンテナ素子はまた、他の周波数帯域にスケール化することも、伝送用素子として使用することも、および見通し内通信リンク、信号インテリジェンス(「SIGINT」)アレイ、レーダ、センサアレイなど、他のフェーズドアレイアンテナの応用例に使用することも可能である。
【0007】
一態様によれば、アンテナ素子が、少なくとも1つのフィードラインに電磁的に結合される連結リング伝導性共振器を備える。伝導性共振器およびフィードラインは、ファラデーケージでさらに囲まれており、このファラデーケージは、電磁遮蔽用接地面に伝導的に結合され、伝導性共振器およびフィードラインを遮蔽するように働くことができる。
【0008】
本明細書において論じる特徴、機能、および利点を、本開示の様々な実施形態においては独立して達成することができ、またはさらに別の実施形態においては組み合わせることもでき、以下の説明および図面を参照して、さらにその詳細を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書において示す実施形態により、アレイにおいて実装されるアンテナ素子の斜視図である。
図2】本明細書において示す実施形態により、アンテナ素子の伝送コンポーネントを囲んだファラデーケージの側面図である。
図3】本明細書において示す実施形態により、アンテナ素子の最上層において実装された例示的な連結リング伝導性共振器を上から見た図である。
図4】本明細書において示す実施形態により、アンテナ素子100の伝導性共振器の下の層において実装された例示的なマイクロストリップフィードラインを上から見た図である。
図5】本明細書において説明する実施形態において提供される単一の共形フェーズドアレイによってデュアル帯域SATCOMを行うための一方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、フェーズドアレイの広帯域連結リングアンテナ素子を対象とする。本明細書において説明するアンテナ素子を利用すると、単一の共形フェーズドアレイが、隣り合う軍事用および民生用の受信帯域をカバーするSATCOM受信向けに実装可能である。本アンテナ素子は、照準から60度のコニカルスキャン容量よりも優れた広スキャン容量をもたらし、特定の周波数帯域にわたって優れた円偏波軸比率を維持する。本アンテナ素子設計は、軽量であり、非常に薄い。また、本アンテナ素子設計には、広角インピーダンス整合(「WAIM」)層またはレードームが必要なく、したがって、航空機の空力抵抗、ならびに集積化および保守の費用が非常に抑えられる。本アンテナ素子はまた、他の周波数帯域、およびフェーズドアレイアンテナの応用例にスケール化することも、伝送用素子として使用することも、ならびに見通し内通信リンク、信号インテリジェンス(「SIGINT」)アレイ、レーダ、センサアレイなど、他のフェーズドアレイの応用例に使用することも可能である。
【0011】
本開示の実施形態を、平面または共形のSATCOMフェーズドアレイアンテナの文脈で本明細書においては説明する。しかし、本開示の実施形態は、このような平面SATCOMの応用例に限定するものではなく、本明細書において説明する技法はまた、他の応用例において利用することもできる。例えば、諸実施形態は、共形アンテナ、有人および無人航空機のアンテナ、見通し内通信、センサアンテナ、レーダアンテナなどに適用可能である可能性がある。
【0012】
以下の詳細な説明においては、本明細書の一部を形成し、具体的な実施形態または例を例示として示す添付の図面を参照する。本明細書における図面は、縮尺通りには描かれていない。同様の符号は、いくつかの図全体を通じて同様の要素を示す。
【0013】
図1は、本明細書において説明する実施形態により、SATCOM応用例向けの共形フェーズドアレイにおいて実装されるアンテナ素子100の斜視図を示している。アンテナ素子100は、2本のフィードライン104Aおよび104Bに電気機械的に結合された単一の連結リング伝導性共振器102を含み、すべて、ファラデーケージ106で囲まれている。アンテナ素子100は、2層、3層、4層、またはそれ以上の層を含む多層回路板において実装可能である。図1には、多層回路板の様々な層において実装された素子については示しているが、層間の基板または誘電体については示していないことが理解されるであろう。
【0014】
伝導性共振器102は、最上部の、表面層において実装され、受信すべき電磁周波数で共振するように働くことができる。実施形態によれば、伝導性共振器は、図3に関してより詳細に後述するように、同調用タブによって連結されている多重リング素子を含む。伝導性共振器は、金属化、マイクロストリップ、直接描画などを使用して、表面層において実装可能である。
【0015】
(本明細書においては、大まかにフィードライン104と呼ぶ)フィードライン104A、104Bは、伝導性共振器102の下の第2の層において実装され、伝導性共振器に電磁的に結合されて、伝導性共振器から信号を送信および/または受信するために、伝導性共振器を駆動する。一実施形態によれば、フィードライン104Aおよび104Bは、マイクロストリップトレースを使用して、第2の層において実装される。フィードライン104Aはまた、金属化、直接描画などを使用して実装可能であることが理解されるであろう。電磁結合は、誘導結合、容量結合などを含んでもよい。
【0016】
ファラデーケージ106は、伝導性共振器102およびフィードライン104を遮蔽するように働くことができる。ファラデーケージ106は、最下層において実装される電磁遮蔽用接地面110と、接地面110に電磁的に結合され、最上層まで多層回路板の各層を通って上昇してくる複数の伝導性ビア108と、それぞれの層において直接実装され、ビア108を電磁的に結合し、伝導性共振器を囲む伝導性スリップとを含む。伝導性ストリップは、金属化、マイクロストリップ、直接描画などを使用して、それぞれの層において実装可能である。一実施形態によれば、伝導性ビア108は、多層回路板の各層を貫通して開けられ、銅または他の伝導性材料で充填またはめっきされた穴を含む。
【0017】
伝導性ストリップおよび伝導性ビア108を、図1に示すように、伝導性共振器102およびフィードライン104を囲んだ6角形状で配置して、アレイ内で隣接するアンテナ素子、隣接するデバイスの外部アンテナなどによって発生する電界など、底面および側面の外部電界から、アンテナ素子100の伝導性共振器102およびフィードライン104を絶縁/遮蔽するように働くことができる導電性ケージを形成することができる。伝導性ストリップおよび伝導性ビア108は任意の他の多角形状で配置可能であり、それにより、限定はしないが、3角形、正方形、長方形、6角形、8角形などを含むアレイ内のアンテナ素子100の実装が容易になることは理解されるであろう。別の実施形態において、ファラデーケージ106は、2011年4月1日に出願され、「DUAL Band Antenna Element with Integral Faraday Cage for SATCOM Transmit Phased Arrays」と題された同時係属の米国特許出願第13/999,999号に記載されるように実装され、同出願は、その全体を本参照によって本明細書に組み込まれる。
【0018】
図2は、一実施形態により、アンテナ素子100の伝導性共振器102およびフィードライン104を囲み、4層で実装されたファラデーケージ106の側面図を示している。上述のように、ファラデーケージ106は、最下層、または図に示す層4において電磁遮蔽用接地面110を含むことが可能である。(本明細書においては、大まかに伝導性ストリップ202と呼ぶ)伝導性ストリップ202A、202B、202Cは、図2にさらに示すように、多層回路板の上方層のそれぞれ、または層1、層2、および層3それぞれにおいて実装可能である。伝導性ビア108は、多層回路板の最上層、すなわち層1から、介在層、すなわち層2および層3を通って、底面層、すなわち層4において実装された底面接地面110まで貫通することが可能である。
【0019】
多層回路板の層間の基板または誘電体は、アリゾナ州のRogers Corporation of ChandlerによるRT/DUROID(登録商標)5870/5880板など、低損失、低誘電率回路板材料で構成されていてもよい。多層回路板が任意の適切な低損失、低誘電率材料から構成されていてもよいことは理解されるであろう。一実施形態によれば、TL1と表記された第1の2つの層間の誘電体の厚さは、約20ミル(0.51ミリメートル)であってもよく、TL2およびTL3と表記された残りの層間の厚さは、約31ミル(0.79ミリメートル)であってもよい。層1と、層2と、層3との間の接着剤層については、図には示していない。実装される層の数、層を一緒に接着する方法、ならびにアンテナ素子100における層間の誘電体の厚さTL1、TL2、およびTL3を変更して、所望の全厚の共形アレイを形成すること、および隣り合うアンテナ素子からの結合を最小限にすることができるファラデーケージ106を実装することが可能であり、アンテナ素子は照準から60度以上にスキャンダウンすることが可能になることが理解されるであろう。さらに、ファラデーケージ106の伝導性ビア108の数、大きさ、および間隔はまた、ケージおよびアンテナ素子の性能に影響を及ぼす可能性がある。一実施形態において、伝導性ビア108は、半径が約7ミル(0.18ミリメートル)であってもよい。
【0020】
図3は、アンテナ素子100の、最上層、層1において実装された例示的な連結リング伝導性共振器102を上から見た図を示している。上述のように、伝導性共振器102は、(本明細書においては、同調用タブ304と呼ぶ)同調用タブ304Aおよび304Bなどの同調用タブによって連結される(本明細書においては、リング素子302と呼ぶ)リング素子302Aおよび302Bなどの多重リング素子を備える。一実施形態によれば、連結リング伝導性共振器102は、2つのリング素子、外側リング素子302Aと、4つの等間隔の同調用タブ304によって接続された内側リング素子302Bとを含むことが可能である。外側リング素子302Aは、フィードライン104A、104Bによって供給されるエネルギーを共振させ、一方、内側リング素子302Bおよび同調用タブ304の構造および構成は、所望の周波数帯域において働くことができる伝導性共振器102の「同調」を可能にする。
【0021】
別の実施形態において、内側リング素子302Bの内側半径RR1は、約36.6ミル(0.93ミリメートル)であってもよく、一方、外側リング302Aの内側半径RR2は、約53.6ミル(1.36ミリメートル)であってもよい。内側リング302Bの厚さTR1は、約6.2ミル(0.16ミリメートル)であってもよく、外側リング素子302Aの厚さTR2は、約24.8ミル(0.63ミリメートル)であってもよく、リング間の隙間CLR1は、約10.8ミル(0.27ミリメートル)である。それぞれの同調用タブ304は、内側幅W1が約22.2ミル(0.56ミリメートル)、および外側幅W2が約27.7ミル(0.70ミリメートル)であってもよい。この構造は、アンテナ素子100の伝導性共振器102が、17.7〜21.2GHzの隣り合う民生用および軍事用のSATCOM受信帯域において最適に機能することを可能にすることができる。リング素子302および同調用タブ304の数、ならびにそれらに対応する寸法RR1、RR2、TR1、TR2、W1、W2、およびCLR1は、連結リング伝導性共振器102を同調させて、所望の周波数帯域において適切に動作するように変更可能であることが理解されるであろう。
【0022】
図3はさらに、アンテナ素子100のファラデーケージ106を含む、最上層、層1において実装された伝導性ストリップ202Aと、伝導性ビア108とを示している。図3に示すファラデーケージ106のコンポーネントは、図1に示すように、フェーズドアレイにおける1つのアンテナ素子とその隣り合うものとのファラデーケージ106の共用性質を表すために分割されている。さらには、伝導性共振器102およびフィードライン104に対するファラデーケージ106の大きさおよび構成は、意図された構成および動作周波数帯域においてアンテナ素子100の最適な性能をもたらすよう、さらに調整可能である。
【0023】
図4は、アンテナ素子100の、第2の層、層2において実装された例示的なフィードライン104Aおよび104Bを上から見た図を示している。上述のように、アンテナ素子は、連結リング伝導性共振器102の下に設置され、共振器に電磁的に結合された2本のマイクロストリップフィードライン104Aおよび104Bを備えることが可能である。一実施形態によれば、マイクロストリップフィードライン104Aおよび104Bは、図4に示すように、互いに対して実質的に直角に設置され、上記の伝導性共振器102に容量的に結合される。例えば、マイクロストリップフィードライン104Aおよび104Bは、互いに対して90±5度に配向可能である。フィードライン104Aと104Bとの直角構成は、アンテナ素子100の2峰性動作をもたらし、それにより、受信すべき選択可能な右旋円偏波SATCOM信号または左旋円偏波SATCOM信号、あるいは他の応用例ではデュアル直交線形偏波信号が与えられる。
【0024】
フィードライン104Aおよび104Bは、結合用ビア402によって信号源に接続可能であり、結合用ビア402は、マイクロストリップフィードラインの底面から、残りの層、層2および層3を通って、アンテナ素子100の、底面層、層4での接地面110における開口404内に置かれているビアパッド(図示せず)まで及ぶ。別の実施形態において、フィードライン104Aおよび104Bは、伝導性共振器102の下、約20ミル(0.50ミリメートル)に置かれ、厚さTR3が約4ミル(0.10ミリメートル)であり、結合用ビア402への接続点における半径RR3が約8ミル(0.20ミリメートル)である。マイクロストリップフィードライン104Aおよび104Bの両端部間の最小離隔距離MSは、約12ミル(0.30ミリメートル)であってもよい。厚さTR3、板層接着方法、半径RR3、最小離隔距離MS、ならびにフィードライン104Aと104Bの長さおよび配置は、所望の周波数帯域においてアンテナ素子100の最適な動作をもたらすように変更可能であることが理解されるであろう。
【0025】
結合用ビア402は、半径が約4ミル(0.10ミリメートル)であってもよく、残りの層を通って、接地面110におけるビアパッドまで約62ミル(1.57ミリメートル)に及ぶ。ビアパッドは、半径が約8ミル(0.20ミリメートル)であってもよく、一方、ビアパッドのための接地面110内の開口404は、半径が約18.4ミル(0.47ミリメートル)であってもよい。ビアパッドは、アンテナ素子100におよびアンテナ素子100から、独立した信号伝達をもたらす通信電子回路(やはり図示せず)にさらに電気的に結合可能である。図4はさらに、アンテナ素子100のファラデーケージ106を含む、中間層、層2において実装された伝導性ストリップ202Bと、伝導性ビア108とを示している。図4に示すファラデーケージ106のコンポーネントは、図1に示すように、フェーズドアレイにおける1つのアンテナ素子とその隣り合うものとのファラデーケージ106の共用性質を表すために分割されている。
【0026】
本明細書において説明するアンテナ素子100の実施形態は、最小限の大きさ、重量、および電力(「SWAP」)、ならびに最小限の集積化費用による単一の共形パッシブフェーズドアレイアンテナの構成を提供する。SWAPは、多重狭帯域「ストーブの煙突のような」SATCOM帯域のシステム、および関連する個別アンテナの設置をなくすことによって非常に抑えられる。実施形態は、少なくとも2つのSATCOMの隣り合う受信周波数帯域をカバーすることが可能である一方、薄く、軽量であるフェーズドアレイアンテナをさらに提供する。実施形態は、他の周波数帯域、および見通し内通信リンク、SIGINTアレイ、レーダ、センサアレイなど、フェーズドアレイアンテナの応用例にスケール化することが可能である。
【0027】
図に示し本明細書に説明する連結リング伝導性共振器102、マイクロストリップフィードライン104、ならびにファラデーケージ106を含む伝導性ストリップ202および伝導性ビア108を含んだ様々なコンポーネントの構成および寸法は、アンテナ素子100の例示的な実装形態を示し、本開示を読むと、他の実施形態が当業者には明らかになることが理解されるであろう。さらに、様々なコンポーネントは、追加されても、除外されても、または代用されてもよく、様々な技法が、本明細書において説明する技法を越えて、アンテナ素子100の製造に使用可能である。本出願は、当技術分野において知られている任意のプロセスまたは方法によって製造されるアンテナ素子100のすべてのこのような実装形態を含んでいることが意図される。
【0028】
次に図5を参照して、本明細書において説明する実施形態で提供される単一の共形フェーズドアレイによって、デュアル帯域SATCOMを行うための方法に関して詳細を提供することとする。本明細書において説明する様々な論理動作、構造的デバイス、作用、およびコンポーネントが、専用電子回路および電気回路に、汎用コンピュータデバイスのソフトウェアまたはファームウェアに、専用デジタル論理部に、ならびにそれらの任意の組合せに実装可能であることを理解されたい。また図に示すより、および本明細書において説明するより多い動作が実行されても、または少ない動作が実行されてもよいことも理解されたい。これらの動作はまた、本明細書において説明する動作と並行して実行されても、または異なる順序で実行されてもよい。
【0029】
図5は、一実施形態により、単一の共形フェーズドアレイによって、広帯域SATCOM受信を行うためのルーチン500を示している。ルーチン500は、動作502で開始し、ここで、共形フェーズドアレイがいくつかのアンテナ素子を含んで実装され、アンテナ素子のうちの少なくとも1つは、図1に示し上述したアンテナ素子100を含む。上述のように、アレイにおけるそれぞれのアンテナ素子100は、連結リング伝導性共振器102、1つまたは複数のフィードライン104、および周囲のファラデーケージ106を含むことが可能であり、すべて、多層回路板内に実装される。ファラデーケージ106の伝導性ストリップ202および伝導性ビア108を、先の図1図3、および図4に示すように、接地面110に電気的に結合し、伝導性共振器102およびフィードライン104を囲んだ6角形状で配置して、アレイ内で隣接するアンテナ素子によって発生する電界など、底面および側面の外部電界から、アンテナ素子100の伝導性共振器102およびフィードライン104を絶縁/遮断するように働くことができる導電性ケージを形成することができる。伝導性ストリップおよび伝導性ビア108は任意の他の多角形状で配置可能であり、それにより、アレイ内のアンテナ素子100の実装を容易にすることが理解されるであろう。さらに、1つのアンテナ素子100のファラデーケージ106を含む伝導性ストリップ202および伝導性ビア108を、図1にさらに示すように、フェーズドアレイ内でその隣接するアンテナ素子と共用することもできる。
【0030】
動作502から、ルーチン500は、動作504に進み、ここで、アンテナ素子100のフィードライン104が、アンテナ素子100におよび/またはアンテナ素子100から、独立した信号伝達をもたらす通信電子回路に電気的に結合される。上述のように、通信電子回路は、専用電気回路、汎用コンピュータデバイスのソフトウェアまたはファームウェア、これらの任意の組合せなどを含むことが可能である。さらに、通信電子回路は、フェーズドアレイのアンテナ素子100を含んでいる多層回路板において部分的に実装されても、または全面的に実装されてもよい。
【0031】
ルーチン500は、動作504から動作506に進み、ここで、通信電子回路は、第1のK帯域の信号を受信するために伝導性共振器102に結合された1本または複数本のフィードライン104から信号を検出する。例えば、通信電子回路は、アンテナ素子100を利用して、17.7〜20.2GHzの民生用SATCOM受信K帯域の信号を受信することができる。一実施形態によれば、通信電子回路は、アンテナ素子100において互いに対して実質的に直角に実装された2本のフィードライン104Aおよび104Bを利用して、伝導性共振器102によって右旋円偏波信号または左旋円偏波信号(あるいは他の応用例ではデュアル直交線形偏波)を選択的に受信することができる。
【0032】
動作506から、ルーチン500は動作508に進み、ここで、通信電子回路は、第2のK帯域の信号を受信するために伝導性共振器102に結合された1本または複数本のフィードライン104から信号を検出する。例えば、通信電子回路は、アンテナ素子100を利用して、隣接する20.2〜21.2GHzの軍事用SATCOM受信K帯域の信号を受信することができる。動作508から、ルーチン500は終了する。
【0033】
図に示し、上述したように、多層回路板と、多層回路板の最上層において置かれ、1つまたは複数の同調用タブ304によって接続された複数のリング素子302を含んだ連結リング伝導性共振器102と、多層回路板の中間層において置かれ、連結リング伝導性共振器102に容量的に結合された第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bと、多層回路板の底面層において置かれた電磁遮蔽用接地面110と、連結リング伝導性共振器102、第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bを囲み、電磁遮蔽用接地面110に伝導的に結合されたファラデーケージ106とを含むアンテナ素子100が開示される。一変形形態において、連結リング伝導性共振器102は、4つの同調用タブ304によって接続された内側リング素子302Bおよび外側リング素子302Aを含む。一例において、第1のフィードライン104Aは、第2のフィードライン104Bに対して実質的に90度に配向され、それにより、アンテナ素子100は、右旋円偏波信号および左旋円偏波信号をともに受信することが可能になる。
【0034】
一代替形態において、ファラデーケージ106は、底面層の上の多層回路板のそれぞれの層において置かれた伝導性ストリップ202と、伝導性ストリップ202を電磁遮蔽用接地面110に接続する複数の伝導性ビア108、402とを含む。別の代替形態において、多層回路板のそれぞれの層は、低損失、低誘電率材料によって分離される。さらに別の例において、アンテナ素子100は、フェーズドアレイアンテナを形成するために、複数のアンテナ素子100を用いて構築されるように構成されている。
【0035】
さらに別の例において、少なくとも2つの隣り合う衛星通信帯域において通信するシステムが開示され、本システムは、フェーズドアレイで構成されている複数のアンテナ素子100を含み、複数のアンテナ素子100のうちの少なくとも1つは、4つの同調用タブ304によって接続された内側リング素子302Bおよび外側リング素子302Aを有する連結リング伝導性共振器102と、連結リング伝導性共振器102に容量的に結合された第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bと、連結リング伝導性共振器102、第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104B、ならびに第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bに電気的に結合され、複数のアンテナ素子100のうちの少なくとも1つに独立した信号伝達をもたらすように構成されている通信電子回路を遮蔽するように働くことができるファラデーケージ106とを含む。一変形形態において、第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bは、連結リング伝導性共振器102を駆動するようにさらに働くことができる。別の変形形態において、第1のフィードライン104Aは、第2のフィードライン104Bに対して実質的に90度に配向される。さらに別の変形形態において、ファラデーケージ106は、少なくとも1つの伝導性ビア108、402によって複数の伝導性ストリップ202に結合された電磁遮蔽用接地面110を含む。
【0036】
別の例において、1つまたは複数の同調用タブ304によって接続された複数のリング素子302を含む連結リング伝導性共振器102と、連結リング伝導性共振器102に電磁的に結合されたフィードライン104と、連結リング伝導性共振器102およびフィードラインを遮蔽するように働くことができるファラデーケージ106とを備えるアンテナ素子100が開示される。一変形形態において、連結リング伝導性共振器102は、4つの同調用タブ304によって接続された内側リング素子302Bおよび外側リング素子302Aを含む。別の変形形態において、フィードライン104は、連結リング伝導性共振器102を駆動するように働くことができる。一代替形態において、フィードライン104は、連結リング伝導性共振器102から信号を受信するように働くことができる。一変形形態において、アンテナ素子100は、第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bを含み、第1のフィードライン104Aが、第2のフィードライン104Bに対して実質的に90度に配向される。別の変形形態において、第1のフィードライン104Aおよび第2のフィードライン104Bは、アンテナ素子100の連結リング伝導性共振器102の下に置かれ、連結リング伝導性共振器102に容量的に結合される。
【0037】
一代替形態において、ファラデーケージ106は、少なくとも1つの伝導性ビア108、402によって複数の伝導性ストリップ202に結合された電磁遮蔽用接地面110を含む。さらに別の代替形態において、本アンテナ素子は、複数の層を含み、複数の層のそれぞれは、低損失、低誘電率材料によって分離される。別の一代替形態において、連結リング伝導性共振器102は、最上層において置かれ、フィードライン104は、連結リング伝導性共振器102の下の中間層において置かれ、電磁遮蔽用接地面110は、底面層において置かれ、複数の伝導性ストリップ202のうちの1つが、底面層の上の複数層のそれぞれにおいて置かれる。さらに別の例において、アンテナ素子100は、フェーズドアレイアンテナを形成するために、複数のアンテナ素子100を用いて構築されるように構成されている。
【0038】
共形フェーズドアレイによって広帯域衛星通信(「SATCOM」)を行うための例示的な方法が開示され、本方法は、複数のアンテナ素子100のフェーズドアレイを実装するステップであって、アンテナ素子100のうちの少なくとも1つが、1つまたは複数の同調用タブ304によって接続された複数のリング素子302を含んだ連結リング伝導性共振器102と、伝導性共振器102に電磁的に結合されたフィードラインと、フェーズドアレイ内で隣接するアンテナ素子100の電界から、伝導性共振器102およびフィードライン104を遮蔽するように働くことができるファラデーケージ106とを含む、ステップ、少なくとも1つのアンテナ素子100のフィードライン104を通信電子回路に結合するステップ、通信電子回路を利用して、第1のSATCOM受信帯域における信号を受信するために連結リング伝導性共振器102を駆動するステップ、ならびに通信電子回路を利用して、第2のSATCOM受信帯域における信号を受信するために連結リング伝導性共振器102を駆動するステップを含む。
【0039】
一変形形態において、本方法は、SATCOM帯域における信号を、少なくとも1つのアンテナ素子100の連結リング伝導性共振器102およびフィードライン104を通じて通信電子回路で受信するステップを含む。別の変形形態において、伝導性共振器102は、4つの同調用タブ304によって接続された内側リング素子302Bおよび外側リング素子302Aを含む。別の変形形態においては、少なくとも1つのアンテナ素子100において、第1のフィードライン104Aが、第2のフィードライン104Bに対して実質的に90度に配向され、それにより、通信電子回路は、右旋円偏波信号および左旋円偏波信号をともに、またはデュアル直交線形偏波信号を選択的に受信することが可能になる。一変形形態において、ファラデーケージ106は6角形状を含んでおり、それにより、ファラデーケージ106の伝導性ストリップ202および伝導性ビア108、402は、フェーズドアレイ内で隣接するアンテナ素子100と共用される。
【0040】
上述に基づいて、フェーズドアレイの広帯域連結リングアンテナ素子の技術が本明細書において提供されることを理解されたい。上述の主題は、例としてのみ与えられ、限定するものと解釈すべきでない。様々な修正形態および変更形態が、図示および説明する例示的な実施形態および応用例を経ることなく、かつ以下の特許請求の範囲に規定される本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において説明した主題に対してなされてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 層
2 層
3 層
4 層
100 アンテナ素子
102 共振器
104 フィードライン
106 ファラデーケージ
108 ビア
110 接地面
202 ストリップ
302 リング素子
304 タブ
402 ビア
404 開口
500 ルーチン
502 動作
504 動作
506 動作
508 動作
TL1 厚さ
TL2 厚さ
TL3 厚さ
RR1 内側半径
RR2 内側半径
RR3 半径
TR1 厚さ
TR2 厚さ
TR3 厚さ
CLR1 隙間
W1 内側幅
W2 外側幅
MS 最小離隔距離
図1
図2
図3
図4
図5