特許第6050985号(P6050985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050985
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/136 20060101AFI20161212BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G02F1/136
   G02F1/1335 505
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-183705(P2012-183705)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-41268(P2014-41268A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌直
(72)【発明者】
【氏名】國松 登
(72)【発明者】
【氏名】園田 英博
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033821(JP,A)
【文献】 特開2002−202736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/136
G02F 1/1335
G02F 1/1343
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFT基板側に、対向電極、層間絶縁膜、画素電極及び配向膜が形成され、液晶層を挟んで、対向基板が配置された液晶表示装置において、
前記TFT基板又は前記対向基板にカラーフィルタが形成され、
前記画素電極と、前記層間絶縁膜又は前記配向膜との間には半導体層が形成されており、
前記半導体層はSi半導体層又は酸化物半導体層であり、
前記半導体層は、前記画素電極と前記配向膜との間に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記半導体層はSi半導体層である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記Si半導体層の比抵抗は、前記配向膜の比抵抗よりも一桁以上小さい、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記Si半導体層はa−Siであることを特徴とする請求項2又は3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記Si半導体層の厚さは5nm〜100nmであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置に係り,特にカラーフィルタを画素電極が形成されている基板に形成した場合の残像現象を対策した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は薄型で軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0003】
従来の液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0004】
しかし、上記した従来の液晶表示装置では、TFT基板と対向電極とを正確に位置合わせしなければならい。このための合わせ工程は、液晶表示装置の製造コストを押し上げることになる。また、TFT基板と対向基板との完全な位置合わせは不可能であるから、設計的に位置合わせのための裕度をとる。この裕度を取るためには、ブラックマトリクスの面積を大きくとる必要があるので、液晶表示パネルの透過率の減少をもたらし、画面輝度の損失となる。また、高精細画面の形成にも限界がある。
【0005】
そこで、TFT基板にカラーフィルタを形成する技術が開発されている。TFT基板にカラーフィルタを作りこめば、例えば、画素電極とカラーフィルタとの位置合わせはフォトリソグラフィ工程によって行うことができるので、TFT基板と対向基板との合わせに比較して、精度は格段に高い。また、カラーフィルタを形成する工程は、対向基板に形成する場合もTFT基板に形成する場合も同様な工程を必要とするので、カラーフィルタを形成する工程が増加することも無い。
【0006】
したがって、カラーフィルタをTFT基板に作りこむ方式(Color Filter on Array 以後COA)を用いることによって製造コストの低減と、液晶表示装置の透過率を向上させることによる、画面輝度の向上を図ることが出来、かつ、高精細の画面を実現することができる。
【0007】
一方、液晶表示装置には、DC残像という現象がある。これは、一定の画像を所定時間表示した場合に、配向膜に電荷が蓄積され、この一定の画像がある時間、画面に焼きついたように見える現象である。このDC残像の時間は、配向膜の電気抵抗を小さくすることによって少なくすることが出来る。
【0008】
液晶表示装置では、バックライトを使用しているので、配向膜に光導電性の材料を使用することによって、動作時の配向膜の電気抵抗を小さくすることができる。したがって、近年多くの液晶表示装置においては、光導電性の配向膜が使用されている。配向膜材料として光導電特性を示す材料としては、例えば、日産化学のSE6414等を挙げることが出来る。
【0009】
しかし、COAにおいては、カラーフィルタが配向膜よりもバックライト側に形成されているので、従来に比較して、配向膜に到達するバックライトの光が弱い。したがって、配向膜に十分な光導電性を与えることが出来ず、動作時における配向膜の抵抗を十分に小さくすることが出来ない。したがって、COAにおいては、DC残像が深刻な問題となっている。
【0010】
配向膜は短い波長の光をより多く吸収する。短い波長の光が光導電性に寄与するからである。短波長において透過率が低くなると、配向膜を透過してくる光、あるいは、液晶表示パネルを透過してくる光は長波長側の光が多くなり、画像が赤色側にシフトするという現象を生ずる。
【0011】
「特許文献1」では、これを防止するために、COAにおけるカラーフィルタの厚さを赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタの順に厚くすることによって、画面の赤色側へのシフトを防止している。あるいは、画素の大きさを赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタの順に大きくすることによって画面の赤色側へのシフトを防止している構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−237571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
「特許文献1」に記載の構成は、赤、緑、青の画素毎に画素の大きさを変える、あるいは、カラーフィルタの厚さをかえる必要がある。そして、カラーフィルタの吸収スペクトルが品種ごとに、あるいは、カラーフィルタの材料毎に異なると、各カラーフィルタの厚さの比、あるいは、各カラーフィルタの面積の比を品種ごとあるいはカラーフィルタの材料毎に変化させる必要があり、プロセス負荷が大きい。
【0014】
図9は、カラーフィルタ102が対向基板200側に形成された従来の液晶表示パネルの断面図である。図10は、図9の構成の液晶表示パネルにおいて、配向膜107の比抵抗を、バックライトをOFFした場合とONした場合とにおいて比較した表である。図9において、カラーフィルタ102は対向基板200側に形成されているので、配向膜107の比抵抗に対する光導電特性はカラーフィルタ102による差は無い。
【0015】
図10において、配向膜SE6414は、バックライトをOFFした場合の比抵抗は1014Ωcmであり、バックライトをONした場合の比抵抗は1012Ωcmである。
【0016】
図11は、カラーフィルタ102がTFT基板100側に形成された従来の液晶表示パネルの断面図である。図11において、TFT基板100の配線層101の上にカラーフィルタ102が形成され、その上に対向電極103、画素電極106、配向膜107等が形成されている。図11において、対向基板200には、ブラックマトリクス201とオーバーコート膜202および配向膜107が形成されており、カラーフィルタ102は形成されていない。
【0017】
図11において、TFT基板100の裏側からバックライトが照射されるが、この構成は、バックライトの光がカラーフィルタ102によって吸収されるので、配向膜107に十分な光導電性を付与することが出来ない。また、配向膜107の光導電性は、波長依存性があるので、画素毎に配向膜107の光導電特性が異なり、画面の色シフトが生ずることになる。
【0018】
図12は、バックライトを照射した場合における色毎の光導電効果を評価した表である。図12の配向膜において、赤画素と緑画素の場合は、バックライトを照射しても比抵抗は殆ど変わらないのに対して、青画素は比抵抗が2桁小さくなっている。これは、残像が生じた場合に色シフトが生ずることを示している。
【0019】
本発明の課題は、カラーフィルタをTFT基板100側に配置したCOA構成において、配向膜に電荷が蓄積されることによる残像を防止することである。本発明の他の課題は、COAにおいて、色毎にカラーフィルタ102の厚さを変えたり、画素の大きさを変えたりすることなく、残像の色シフトを防止する構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0021】
(1)TFT基板側にカラーフィルタ、対向電極、層間絶縁膜、画素電極、配向膜が形成され、液晶層を挟んで、対向基板が配置された液晶表示装置において、前記画素電極と前記層間絶縁膜の間にはSi半導体層が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0022】
(2)TFT基板側にカラーフィルタ、対向電極、層間絶縁膜、画素電極、配向膜が形成され、液晶層を挟んで、対向基板が配置された液晶表示装置において、前記画素電極と前記配向膜の間にはSi半導体層が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0023】
(3)TFT基板側に対向電極、層間絶縁膜、画素電極、配向膜が形成され、液晶層を挟んで、カラーフィルタが形成された対向基板が配置された液晶表示装置において、前記画素電極と前記層間絶縁膜の間にはSi半導体層が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0024】
(4)TFT基板側に対向電極、層間絶縁膜、画素電極、配向膜が形成され、液晶層を挟んで、カラーフィルタが形成された対向基板が配置された液晶表示装置において、前記画素電極と前記配向膜の間にはSi半導体層が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0025】
(5)上記Si半導体層のかわりに、同等の抵抗を示す酸化物半導体が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カラーフィルタがTFT基板側に形成されたCOA方式を用いたIPS液晶表示装置において、DC残像を抑えることが出来る。また、従来のように、カラーフィルタが対向電極側に形成された液晶表示装置において、光導電効果にたよらずに、配向膜に蓄積した電荷を逃がすことが出来るので、DC残像の色シフトを抑えることが出来る。使用する配向膜については、ラビング配向膜でも光配向膜でもよく、材料や配向プロセスに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の液晶表示パネルの断面図である。
図2】実施例1の動作を示す断面図である。
図3】実施例2の液晶表示パネルの断面図である。
図4】実施例2の動作を示す断面図である。
図5】実施例3の液晶表示パネルの断面図である。
図6】実施例4の液晶表示パネルの断面図である。
図7】実施例5の液晶表示パネルの断面図である。
図8】実施例6の液晶表示パネルの断面図である。
図9】第1の従来例の液晶表示パネルの断面図である。
図10】第1の従来例における配向膜の光導電効果を示す表である。
図11】第2の従来例の液晶表示パネルの断面図である。
図12】第2の従来例における配向膜の光導電効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明の第1の実施例による液晶表示パネルの断面図である。図1は、IPS方式の液晶表示パネルであり、カラーフィルタ102がTFT基板100側に形成されたCOAタイプの液晶表示パネルである。図1において、ガラスで形成されたTFT基板100の上に配線層101が形成されている。配線層101はTFT、映像信号線、走査線等を含む層を言う。
【0030】
図1において、配線層101の上に画素毎に赤カラーフィルタ102、緑カラーフィルタ102、青カラーフィルタ102が形成されている。カラーフィルタ102の上には平面ベタで形成されたITO(Indium Tin Oxide)による対向電極103が形成されている。対向電極103の上には、SiNによる層間絶縁膜104が形成されている。このSiN膜は200℃程度の低温CVDによって形成される。
【0031】
層間絶縁膜104の上には、Si半導体層105が形成され、これが、本発明の特徴となっている。Si半導体層105は真性の半導体でもよいし、P等をドープした半導体でもよい。Si半導体層105の膜厚は5nm〜100nmである。
【0032】
Si半導体層105の上には櫛歯状電極である画素電極106がITOによって形成され、その上に配向膜107が形成されている。配向膜107の抵抗が大きいと、配向膜107に電荷が長く残留し、これが残像の原因となる。残像を早期に消失させるためには、配向膜107の抵抗を小さくするほかに、配向膜107の下層に形成されるSi半導体層105の抵抗を小さくすることによって電荷を早期に逃がすことが出来る。
【0033】
図1において、液晶層150を挟んで、対向基板200が配置している。ガラスで形成された対向基板200にはブラックマトリクス201が形成され、ブラックマトリクス201を覆ってオーバーコート膜202が形成されている。ブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間には、カラーフィルタ102は形成されていない。オーバーコート膜202の上には配向膜107が形成されている。
【0034】
図2は、図1の構成におけるこの動作を説明するための拡大断面図である。図2において、カラーフィルタ102の上にITOで形成された対向電極103が平面ベタで形成され、その上に層間絶縁膜104がSiNによって形成され、その上にSi半導体層105が形成され、その上に櫛歯状の画素電極106がITOによって形成され、これを覆って配向膜107が形成されている。
【0035】
SiNによる層間絶縁膜104は、有機材料であるカラーフィルタ102の形成後にCVDによって形成されるので、カラーフィルタ102が変質することを防止するために、200℃程度の低温CVDによって形成される。層間絶縁膜104の上に形成されるSi半導体層105はa−Siによって形成される。SiNによる層間絶縁膜104とSi半導体層105はCVDによって連続して形成されるので、本発明を適用してもプロセスに対する負荷は小さい。
【0036】
配向膜107の抵抗は、1014Ωcm程度と極めて大きいので、配向膜107に蓄積された電荷は画素電極106等に逃げるのに、時間がかかる。図2において、配向膜107の下にSi半導体層105が形成されており、Si半導体層105が真性半導体の場合であっても、その比抵抗は配向膜材料よりも一桁以上小さい。したがって、配向膜107にバックライトからの光が十分に当たらずに、光導電効果が十分に発揮できなくとも、配向膜107にチャージした電荷は、下層のSi半導体層105を介して画素電極106に逃げていくことが出来、残像を早期に消失させることが出来る。
【0037】
配向膜107の厚さは50〜70nm程度であるから、配向膜107の厚さ方向の抵抗は大きくはない。したがって、配向膜107の表面から移動してきた電荷は、下層のSi半導体層105を通して画素電極106に速やかに移動することが出来、したがって、残像の早期消失につながる。Si半導体層105の抵抗をどの程度とするかによって残像の消失時間を制御することが出来るが、これはSi半導体層105の厚さとSi半導体層105にP等をドープする、あるいはしない、ことによって制御することが出来る。
【0038】
本発明は、配向膜自体の抵抗値を光導電効果によって減少させるものではないので、配向膜の光導電効果は大きくなくともよい。光導電効果に頼る場合は、カラーフィルタは分光特性を持つので、配向膜の抵抗の波長依存性が生じ、残像における色シフトが起こる。本発明は、配向膜の光導電効果に頼るものではないので、残像の色シフトは生じない。また、配向膜は、光導電効果を考慮せずに、配向膜の目的に合った、最適な材料選択をおこなうことが出来る。
【0039】
本実施例における構成が従来構成と異なる点は、SiNによる層間絶縁膜104を形成した後に、Si半導体層105を形成し、その後、画素電極106を形成することである。SiNはいわゆる低温CVDによって形成され、Si半導体層105もCVDによって形成されるので、Si半導体層105はSiNによる層間絶縁膜104をCVDによってデポジションした後、連続して形成することが出来る。したがって、プロセスに対する負荷は小さい。
【実施例2】
【0040】
図3は本発明の第2の実施例による液晶表示パネルの断面図である。カラーフィルタ102はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。図3図1と異なる点は、平面ベタで形成された対向電極103の上にSiNによる層間絶縁膜104が形成され、その上に櫛歯状の画素電極106が形成されているが、画素電極106の上にSi半導体層105が形成されている点である。そして、Si半導体層105の上に配向膜107が形成されている。
【0041】
図3において、残像の原因となる配向膜107の上にチャージした電荷は、配向膜107の下に形成されたSi半導体層105を介して画素電極106側に逃げる。Si半導体層105は配向膜107に比較して1桁以上比抵抗が小さいので、配向膜107上の電荷は、Si半導体層105を通して早期に消失し、残像も早期に消失する。
【0042】
図4図3の構成における動作を説明するための拡大模式断面図である。図3において、カラーフィルタ102の上にITOで形成された対向電極103が平面ベタで形成され、その上に層間絶縁膜104がSiNによって形成され、その上に画素電極106が形成される。画素電極106をフォトリソグラフィによって櫛歯状電極にパターニングした後、Si半導体層105を形成する。
【0043】
Si半導体層105の厚さは、5〜100nm程度であるが、ITOによる画素電極106によって全体的に断切れを生ずる厚さでは動作上問題である。但し、部分的な断切れは許容することが出来る。画素電極106とSi半導体層105とが導通を取れていればよいからである。
【0044】
配向膜107の抵抗は、1014Ωcm程度と極めて大きいので、配向膜107に形成された電荷は画素電極106等に逃げるのに、時間がかかる。図4においては、図2で説明したのと同様、配向膜107の下にSi半導体層105が形成されており、Si半導体層105が真性半導体の場合であっても、その比抵抗は配向膜材料よりも一桁以上小さい。したがって、配向膜107にバックライトからの光が十分に当たらずに、光導電効果が十分に発揮できなくとも、配向膜107にチャージした電荷は、下層のSi半導体層105を介して画素電極106に逃げていくことが出来、残像を早期に消失させることが出来る。Si半導体層105の抵抗をどの程度とするかによって残像の消失時間を制御することが出来るが、これはSi半導体層105の厚さとSi半導体層105にP等をドープする、あるいはしない、ことによって制御することが出来る。
【0045】
本実施例においても、配向膜に蓄積された電荷は、配向膜自体の、光導電効果による低抵抗化に頼るのではなく、下層に形成されたSi半導体層に頼るので、カラーフィルタの分光特性に影響される残像の色シフトを抑えることが出来る。
【0046】
本実施例においては、層間絶縁膜104を形成した後、ITOをデポジションし、フォトリソグラフィを用いてパターニングして画素電極106を形成する。その後、Si半導体層105をCVDによってデポジションする。つまり、層間絶縁膜104をCVDによってデポジションし、画素電極106となるITOを成膜した後、真空中からTFT基板100を外気に出し、ITOのパターニングを行う。その後再び、CVDによってSi半導体層105をデポジションすることになる。
【0047】
このように、プロセスに対する負荷は、実施例1に比較して実施例2のほうが大きい。しかし、効果は同様である。
【実施例3】
【0048】
図5は本発明による第3の実施例を示す断面図である。図5において、ガラスで形成されたTFT基板100の上に配線層101が形成されている。配線層101は、TFT、映像信号線、走査線等を含む構成である。配線層101の上に有機パッシベーション膜108が形成され、その上にITOによって、平面ベタで対向電極103が形成されている。対向電極103の上にはSiNで形成された層間絶縁膜104が形成され、その上にSi半導体層105が形成されている。Si半導体層105の上に櫛歯状の画素電極106が形成され、これを覆って配向膜107が形成されている。ここで、層間絶縁膜104を構成するSiNはCVDによって形成されるが、有機パッシベーション膜108を形成した後に形成されるので、200℃程度のいわゆる低温CVDによって形成される。
【0049】
図5において、ガラスで形成された対向基板200には、ブラックマトリクス201とカラーフィルタ102が形成され、ブラックマトリクス201とカラーフィルタ102を覆ってオーバーコート膜202が形成されている。オーバーコート膜202を覆って配向膜107が形成されている。
【0050】
図5の構成は、従来のように、カラーフィルタ102は対向基板200に形成されている。すなわち、バックライトからの光はカラーフィルタ102によって遮られることは無い。しかし、図5に示すような従来例においても、配向膜107に電荷が蓄積して残像を引き起こすことは同様である。従来の構成では、配向膜107に光導電効果を有する材料を使用して配向膜107の抵抗を下げることがおこなわれている。
【0051】
しかしながら、従来例においても、光導電効果による配向膜107の抵抗の減少には限度がある。そこで、配向膜107を2層構造として、配向性は高いが抵抗率の高い配向膜の層を上層とし、下層には、上層よりは抵抗率の低い配向材料を使用することが行われてきた。この方法は、1回の配向膜材料の塗布によって、2層の配向膜を形成するプロセスに適する材料を合成する必要があり、配向膜材料としての自由度が損なわれるという問題があった。
【0052】
図5に示す本発明では、櫛歯状の画素電極106の下にSi半導体層105を形成し、画素電極の上に配向膜107を形成している。Si半導体層105の比抵抗は真性半導体であっても、配向膜の比抵抗よりも一桁以上小さい。したがって、配向膜107に対して光導電効果を生じさせるまでもなく、配向膜107に蓄積した電荷を画素電極107に早期に逃がすことが出来る。すなわち、バックライトから光の強度に関係なく、安定して配向膜107にチャージする電荷を早期に画素電極等に逃がすことが出来る。
【0053】
配向膜107に蓄積した電荷がどのようにして、画素電極106に早期に逃げることが出来るかは、図2に示した断面模式図によって説明したのと同様である。また、Si半導体層105の膜厚、比抵抗、ドーピングの要否等も実施例1の図2で説明したのと同様である。したがって、本実施例によれば、従来のように、カラーフィルタ102を対向基板200側に形成した構成の液晶表示パネルであっても、残像を安定して早期に消失させることが出来る。
【0054】
本実施例においても、層間絶縁膜104を形成するSiNはCVDによって形成され、Si半導体層105もCVDによって形成されるので、Si半導体層105はSiNをCVDによってデポジションした後、連続して形成することが出来る。したがって、プロセスに対する負荷は小さい。
【実施例4】
【0055】
図6は本発明による第4の実施例による液晶表示パネルの断面図である。図6図5と同様に、カラーフィルタ102は従来のように対向基板200側に形成されている。図6に示す構成が図5に示す構成と異なるのは、画素電極106付近の断面図である。図6において、櫛歯状の画素電極106は層間絶縁膜104の上に形成されている。画素電極106の上にはSi半導体層105が形成され、Si半導体層105の上に配向膜107が形成されている。
【0056】
この構成においても、Si半導体層105の比抵抗は、配向膜107の比抵抗よりも1桁以上小さいので、配向膜107に蓄積した電荷は、Si半導体層105を通して、早期に画素電極106等に逃がすことが出来る。したがって、残像減少を早期に消失させることが出来る。
【0057】
図6の構成において、配向膜107に蓄積した電荷がいかにして画素電極106に逃げていくかは、図4を用いて実施例2において説明したのと同様である。また、図6の画素電極106付近の形成プロセスも図4において説明したのと同様である。本実施例によれば、配向膜107を2層構造とし、光導電効果を利用した構成ではないので、バックライトからの光の強度に関係なく、配向膜107に蓄積した電荷を画素電極106に早期に逃がすことが出来、残像効果を早期に消失させることが出来る。
【0058】
以上の実施例では、下層に平面ベタで対向電極103が形成され、その上に層間絶縁膜104が形成され、その上に櫛歯状の画素電極106が形成されている構成であるが、本発明はこれに限らず、下層に平面ベタで画素電極106が形成され、その上に層間絶縁膜104が形成され、その上に櫛歯状の対向電極103が形成されている構成についても適用することが出来る。
【実施例5】
【0059】
図7は本発明による第5の実施例による液晶表示パネルの断面図である。カラーフィルタ102はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。図7図1と異なる点は、配向膜107の下に形成されたSi半導体層のかわりに、同等の抵抗を示す酸化物半導体層109が形成されている点である。酸化物半導体としては、ITO等が挙げられる。酸化物半導体層109の抵抗をどの程度とするかによって残像の消失時間を制御することが出来るが、これは酸化物半導体層109の厚さと、製膜時の酸素濃度によって制御することが出来る。
【0060】
図7に示す実施例においては、層間絶縁膜104の上に形成される酸化物半導体層109はITOによって形成される。酸化物半導体層109と画素電極106はスパッタリングによって連続して形成されるので、本発明を適用してもプロセスに対する負荷は小さい。
【実施例6】
【0061】
図8は本発明による第6の実施例による液晶表示パネルの断面図である。図8図5と同様に、カラーフィルタ102は従来のように対向基板200側に形成されている。図8に示す構成が図5に示す構成と異なるのは、配向膜107の下に形成されたSi半導体層のかわりに、同等の抵抗を示す酸化物半導体層109が形成されている点である。酸化物半導体としては、図7と同様、ITO等が挙げられる。配向膜107に蓄積した電荷がどのようにして、画素電極106に早期に逃げることが出来るかは、図2に示した断面模式図によって説明したのと同様である。酸化物半導体層109の膜厚、比抵抗、製膜条件等は実施例5の図7で説明したのと同様である。したがって、本実施例によれば、従来のように、カラーフィルタ102を対向基板200側に形成した構成の液晶表示パネルであっても、残像を安定して早期に消失させることが出来る。
【0062】
また、以上の実施例において配向膜材料はラビング配向膜でも光配向膜でもよく、材料や配向プロセスに限定されず本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100…TFT基板、 101…配線層、 102…カラーフィルタ、 103…対向電極、 104…層間絶縁膜、 105…Si半導体層、 106…画素電極、 107…配向膜、 108…有機パッシベーション膜、 109…酸化物半導体層、150…液晶層、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…オーバーコート膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1000…TFT
図1
図2
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図4
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図12