(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らの実験によれば、上記特許文献1のように、最終的に5〜15重量%程度に加湿した炭化物を、そのままホッパ等の貯留設備に投入して保管した場合には、ホッパ内で炭化物が発熱し、例えば、投入前に10〜20℃程度のものが、数時間後には50〜70℃程度まで上昇することが明らかになった。
【0007】
ところが、上記特許文献1記載の方法は、炭化物の製品としての最終的な出荷前に、その水分量を5〜15重量%に加湿し、この加湿した炭化物をそのまま貯留・出荷する方法を採用しているため、最終的な加湿工程(第2段階の加湿)後に炭化物が50〜70℃程度まで発熱する懸念がある。従って、この従来技術では、最終的な加湿工程後、発熱した炭化物の温度が安定するまでの長時間の貯留が必要となり、出荷するまでの貯留時間が延び、貯留スペースの増大や歩留まり低下等の問題を生じることになる。さらに、長時間の貯留の間に炭化物が再度温度上昇し、万一の熱暴走を生じることも懸念される。また、炭化物の温度を十分に安定化させることなく製品として出荷した場合には、製品出荷後に温度上昇を生じる懸念がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を考慮してなされたものであり、加湿した炭化物を早期に安定化させて製品として出荷するまでの貯留時間を短縮することができ、その貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる炭化物の製造方法及び炭化物の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炭化物の製造方法は、有機性廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を加湿し、該加湿された炭化物を製品として出荷するための炭化物の製造方法であって、前記炭化物の出荷前の最終的な加湿工程を実行した後、該加湿工程によって加湿された炭化物を冷却する冷却工程を実行することを特徴とする。
【0010】
このような方法によれば、出荷前の最終的な加湿工程後の炭化物の発熱を効果的に抑制することができるため、加湿後の炭化物の温度を製品として出荷が可能となる温度域まで迅速に低下させることができる。このため、加湿炭化物を製品として出荷するまでの貯留時間を短縮することができ、貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる。
【0011】
前記冷却工程では、前記炭化物を収容した冷却容器内にエアを供給してエアパージを行いながら炭化物を冷却するとよい。そうすると、冷却工程時に炭化物の酸化を促進して炭化物を安定化させることができるため、製品出荷後の酸化反応を抑制し、温度上昇を防止することができる。
【0012】
前記冷却工程の後、炭化物を掻き混ぜる工程を行うと、加湿炭化物の温度状態を均等化させることができ、炭化物を一層安定化させることができる。この場合、前記掻き混ぜる工程は、炭化物を貯留している槽内で上下方向に該炭化物を入れ替え循環させる循環工程であると、炭化物の温度状態をより均等化させることができる。
【0013】
前記掻き混ぜる工程では、前記炭化物を収容した貯留設備の槽内にエアを供給してエアパージを行いながら炭化物を掻き混ぜるとよい。そうすると、炭化物を掻き混ぜる工程時にも炭化物の酸化を促進することができる。
【0014】
前記掻き混ぜる工程の後、前記炭化物を収容した貯留設備内で、前記冷却工程での冷却時間よりも長い一定時間貯留する養生工程を行い、その後、炭化物を製品として出荷する直前に、前記貯留設備内で炭化物を再び掻き混ぜる工程を行うと、加湿炭化物の温度をより低温で安定させてから出荷することが可能となる。
【0015】
前記冷却工程は、前記加湿工程の終了後、2〜4時間以内に実行することが好ましい。すなわち、炭化物の加湿発熱が2時間程度の反応時間を有するため、冷却が早すぎても後段の貯留時に発熱し、遅すぎても冷却前に発熱するため、加湿工程後2〜4時間以内に冷却工程を実行することで、加湿後の炭化物が再度温度上昇し熱暴走等を生じることを回避することができる。
【0016】
前記冷却工程は、前記炭化物を充填した冷却容器の周囲に冷却液を流通する間接冷却方式によって行うと、加湿炭化物の水分量や性状に影響を与えることを防止できるため好ましい。
【0017】
本発明に係る炭化物の製造システムは、有機性廃棄物を炭化処理して炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化物を加湿する加湿機と、前記加湿機で製品として出荷される前の最終的な加湿が行われた前記炭化物を冷却する冷却装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、製品として出荷前の炭化物を加湿後すぐに冷却して温度上昇を抑えることができるため、加湿炭化物を製品として出荷するまでの貯留時間を短縮でき、貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる。
【0019】
前記冷却装置は、前記炭化物を収容して冷却する冷却容器内へとエアを供給してエアパージを行うエア供給口を備えるとよい。そうすると、冷却時に炭化物の酸化を促進することができ、炭化物の状態をより安定化させることができる。
【0020】
前記冷却装置で冷却された炭化物を貯留するホッパを備え、前記ホッパには、内部に貯留している炭化物を掻き混ぜる掻き混ぜ装置が設けられていると、ホッパ内での炭化物の温度状態を均等化させ、炭化物の状態を一層安定化させることができる。この場合、前記掻き混ぜ装置は、前記ホッパ内で炭化物を上下方向に入れ替え循環させる循環路を有する循環装置であると、ホッパ内で炭化物をより均等に掻き混ぜることができるため好ましい。
【0021】
前記冷却容器は、前記炭化物を充填するための入口が上部に設けられ、冷却後の前記炭化物を排出するための開閉可能な出口が下部に設けられた筒体であり、前記冷却装置は、前記筒体を収納配置し、前記筒体の周囲に冷却液を流通可能な冷却槽を備えると、炭化物を間接冷却方式で効果的に冷却することができる。
【0022】
前記筒体は、前記冷却槽内に複数設けられると、筒体の放熱面積を増大させて冷却効率を向上させることができる。
【0023】
各筒体の入口が前記冷却槽の上部を閉塞する天板の上面で開口しており、前記天板の上面に投入された冷却前の炭化物を均して各筒体の入口へと充填する均し装置を備えると、各筒体内へと炭化物を均等に且つ迅速に充填することができる。
【0024】
前記筒体の下部に衝撃を与え、前記出口からの炭化物の排出を促進する排出促進装置を備えると、筒体の出口での炭化物の詰まりを防止することができる。
【0025】
前記冷却装置には、該冷却装置から排出される炭化物を貯留するホッパが連結されており、当該炭化物の製造システムは、前記冷却装置と前記ホッパとを連結した冷却貯留設備を複数台備えると共に、これら複数台の冷却貯留設備は、前記加湿機から搬出される炭化物の搬送ラインに対し、炭化物の搬送方向で前記加湿機側から順に接続され、前記冷却貯留設備から排出された炭化物を前記搬送ラインにおける炭化物の搬送方向で上流側に接続された冷却貯留設備へと供給可能な第2搬送ラインを備えると、搬送ラインで上流側の冷却貯留設備に入りきらずにこれを通過した炭化物を、下流側の冷却貯留設備へと投入することができる。これにより、例えば、上流側の冷却貯留設備にて加湿炭化物の最終的な養生工程を行う場合に、冷却前の加湿炭化物が最終的な養生工程を行う上流側の冷却貯留設備へと誤って投入されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出荷前の最終的な加湿工程後の炭化物の発熱を効果的に抑制することができるため、加湿後の炭化物の温度を製品として出荷が可能となる温度域まで迅速に低下させることができる。このため、加湿炭化物を製品として出荷するまでの貯留時間を短縮することができ、貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る炭化物の製造方法について、この方法を実施する製造システムとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
先ず、本実施形態に係る炭化物の製造方法と製造システムの説明に先立ち、加湿後の炭化物の温度変化について、
図1に示す実験データを参照して説明する。
【0030】
図1は、炭化物を加湿した後の経過時間(h)と温度変化(℃)との関係を示すグラフである。
図1の実験は、汚泥(有機性廃棄物)を炭化炉内で500℃程度で炭化処理して得られた炭化物を10重量%程度に加湿し、加湿された炭化物である加湿炭化物を各条件下で20時間以上貯留し、そのときの加湿炭化物の温度変化を計測したものである。
【0031】
図1中の温度変化を示す3本のグラフのうち、「冷却なし」は、炭化物を加湿後すぐに貯留設備であるホッパ内に貯留したものであり、「冷却(1)」及び「冷却(2)」は、炭化物を加湿後すぐに所定時間(2時間)冷却してからホッパ内に貯留したものである。なお、「冷却(1)」及び「冷却(2)」では、加湿炭化物が充填される鋼管の周面に冷却水を流通させた間接冷却方式の冷却装置を用いて実験を行っており、「冷却(1)」は直径200mmの鋼管を用い、「冷却(2)」は直径250mmの鋼管を用いた実験結果である。
【0032】
図1に示すように、「冷却なし」では、加湿直後は13℃程度であったものが、加湿後すぐに発熱を開始し、2時間以内に73℃程度まで上昇した後、徐々に温度が低下している。この「冷却なし」の場合、例えば6時間後でも60℃近い高温を維持していることから、例えば、加湿炭化物の出荷時の温度を40℃以下に設定した場合には、加湿炭化物を製品として出荷するまでに、最低でも加湿後14時間程度はホッパで貯留しておく必要があり、貯留スペースの増大と歩留まりの低下を引き起こすことになる。
【0033】
一方、「冷却(1)」及び「冷却(2)」の場合には、いずれも加湿直後は13℃程度であったものが、加湿後すぐに発熱を開始して1時間以内に65℃程度まで上昇するが、すぐに温度低下を開始し、4〜5時間後にはいずれも40℃以下となっており、その後迅速に出荷することが可能となっている。
【0034】
以上の実験結果より、「冷却なし」の場合、つまり単に加湿後の炭化物を貯留しただけでは、該炭化物は加湿後から2時間程度は温度上昇を続け、最高温度は初期温度より50〜60℃程度上昇することが分かった。さらに、炭化物は加湿後2時間程度は温度上昇を続けることから、「冷却(1)」及び「冷却(2)」のように、加湿直後から2時間程度を冷却装置によって冷却することで、加湿直後の炭化物を効果的に冷却でき、出荷が可能となる温度域へと迅速に温度低下させることができることが分かった。なお、この傾向は、状態の異なる複数種類の汚泥に基づく炭化物についても同様であった。
【0035】
次に、本実施形態に係る炭化物の製造システムについて説明する。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る炭化物の製造システム10の全体構成図である。本実施形態に係る炭化物の製造システム10(以下、単に「製造システム10」ともいう)は、下水汚泥等の有機性廃棄物を炭化炉12で炭化処理し、得られた炭化物(炭化品)を加湿機14で加湿した後、加湿炭化物(加湿炭化品)を冷却装置16a〜16cで冷却することで製品(加湿炭化物)を製造するためのシステムであり、製造された製品は、例えば発電所等に出荷され、発電装置の燃料として利用される。
【0037】
図2に示すように、製造システム10は、下水汚泥等の有機性廃棄物を炭化処理する炭化炉12と、炭化炉12で炭化処理され、冷却コンベア18によって搬送される炭化物を加湿する加湿機14と、加湿機14で加湿され、第1搬送ライン20によって搬送される加湿炭化物を冷却する冷却装置16a〜16cと、冷却装置16a〜16cで冷却された加湿炭化物を貯留するホッパ22a〜22cとを備える。
【0038】
本実施形態に係る製造システム10の運用方法の一例として、以下では、中央の冷却装置16bを予備的な冷却手段として通常は運転せず、両側に備えた2台の冷却装置16a,16cで冷却されてホッパ22a,22cに貯留された加湿炭化物を次にホッパ22bに導入し、このホッパ22b内で循環しながら貯留・養生した後、製品として出荷する場合を例示する。勿論、全ての冷却装置16a〜16cで加湿炭化物を冷却し、各ホッパ22a〜22cに貯留して出荷する等、製造システム10は各種方法で運用可能である。
【0039】
炭化炉12は、公知の外熱式のロータリーキルンであり、投入口12aから乾燥させた有機性廃棄物(乾燥品)を炉内に投入し、400〜800℃程度、好ましくは600℃程度で窒素パージしながら加熱・炭化処理して炭化物を生成し、この炭化物を排出口12bから冷却コンベア18へと排出する。炭化温度を500〜600℃程度にすることにより、炭化物は自己発熱によって熱暴走しにくい性状となる。炭化炉12の炉方式は特に限定されるものではないことは勿論であり、上記ロータリーキルンのような間接加熱式キルン方式以外のものであってよく、例えば流動炭化炉を用いてもよい。
【0040】
冷却コンベア18は、炭化炉12の排出口12bから2重ゲート17を介して送られる高温の炭化物を、放熱板等を用いた間接冷却方式で冷却しつつ、次工程の加湿機14へと搬送する搬送手段であり、例えば、炭化炉12から受け取った600℃程度の炭化物を40℃程度まで冷却し、加湿機14へと投入する。
【0041】
加湿機14は、冷却コンベア18から投入された炭化物に所定量の水分を含ませる加湿手段であり、例えば、パドルやスクリューによって炭化物を攪拌しながら水を噴霧し、投入された炭化物を5〜15重量%程度、好ましくは12重量%程度まで加湿した後、第1搬送ライン20へと排出する。炭化物への加湿割合を12重量%程度にすることにより、製品受入設備(製品出荷先)での粉塵飛散を適切に抑制することができる。
【0042】
第1搬送ライン(搬送ライン)20は、加湿機14から排出された加湿炭化物を冷却装置16a〜16cへと搬送するための搬送手段である。第1搬送ライン20は、公知のフライトコンベア等によって構成され、加湿機14から受け取った加湿炭化物を搬送する第1搬送コンベア24と、第1搬送コンベア24で搬送された加湿炭化物を3台の冷却装置16a〜16cにそれぞれ選択的に投入可能な第1投入コンベア26とを備え、第1搬送コンベア24と第1投入コンベア26との間に廃棄ライン28が接続されている。
【0043】
第1投入コンベア26は、通常運転時、2つの投入口26a,26c(
図2中の実線矢印26a,26c参照)から、2台の冷却装置16a,16cへと加湿炭化物を交互に投入する横方向に延在したコンベアである。第1投入コンベア26には、炭化物の搬送方向で上流側となる加湿機14側から下流側に向かって順に、冷却装置16aと、冷却装置16bと、冷却装置16cとが接続されている。通常運転時、第1搬送ライン20からの加湿炭化物は、両側の冷却装置16a,16cに投入され、冷却装置16bへの投入口26b(
図2中の1点鎖線の矢印26b参照)は閉じられている。
【0044】
廃棄ライン28は、当該第1搬送ライン20の上流側の炭化炉12や加湿機14において炭化不良や加湿不良等の不具合があった場合や、下流側の冷却装置16a〜16c等で冷却不足等の不具合があった場合に、不要となった加湿炭化物を外部に排出して廃棄するためのものである。
【0045】
冷却装置16a〜16cは、第1搬送ライン20で搬送された加湿炭化物を間接冷却方式で所定時間冷却した後、ホッパ22a〜22cへと排出するものであるが、その具体的な構成については後述する。なお、通常運転時には、3台の冷却装置16a〜16cのうち、第1投入コンベア26の投入口26a,26cが接続された2台の冷却装置16a,16cが運転され、中央の冷却装置16bは運転されない。
【0046】
ホッパ22a,22cは、冷却装置16a,16cで冷却された加湿炭化物を一時保管するための貯留設備であり、それぞれ冷却装置16a,16cの下部に一体的に連結され、これら冷却装置16a,16cと共に冷却貯留設備を構成している。ホッパ22a,22cは、冷却装置16a,16cでの加湿炭化物の冷却容量(充填容量)よりも大きな貯留容量を有する。ホッパ22a,22cに貯留された加湿炭化物は、各ホッパ22a,22cの底部に連結された粉粒体供給機であるサークルフィーダ30a,30cを介して第2搬送ライン(戻しライン)32(又は輸送車34)へと供給される。
【0047】
ホッパ22a,22c間に設置されたホッパ22bは、ホッパ22a,22cに一時保管され、第2搬送ライン32を介して投入される加湿炭化物を貯留・養生しつつ、貯留した加湿炭化物を循環路35によって循環する貯留設備(循環養生設備)であり、ホッパ22a,22cと同程度の貯留容量を有する。ホッパ22bもホッパ22a,22cと同様、冷却装置16bの下部に一体的に連結されることで冷却貯留設備を構成しているが、予備的な冷却手段である冷却装置16bを省略した場合には、ホッパ22bが貯留設備として単体で第2搬送ライン32に接続される。
【0048】
第2搬送ライン32は、サークルフィーダ30a〜30cから供給された加湿炭化物を、冷却装置16a〜16cへと戻すための搬送手段である。第2搬送ライン32は、公知のフライトコンベア等によって構成され、サークルフィーダ30a〜30cから受け取った加湿炭化物を搬送可能な第2搬送コンベア36と、第2搬送コンベア36で搬送された加湿炭化物を3台の冷却装置16a〜16cにそれぞれ選択的に投入可能な第2投入ライン38とを備える。
【0049】
第2投入ライン38は、通常運転時、
図2中の実線矢印37a,37cに示すように、冷却装置16a,16bで冷却され、第2搬送コンベア36によって搬送された加湿炭化物を、第2投入口38b(
図2中の実線矢印38b参照)から予備用の冷却装置16bを通してホッパ22bへと投入する。この通常運転時には、冷却装置16bでの冷却運転は行われず、冷却装置16a,16cで冷却された加湿炭化物は、第2搬送ライン32によってホッパ22bへと移送されて保管・養生されると共に、循環路35によって適宜循環された後、製品Pとしてサークルフィーダ30bから輸送車34へと搬入される(
図2中の実線矢印39b参照)。
【0050】
次に、冷却装置16a〜16cの具体的な構成の一例について、
図3及び
図4を参照して説明する。本実施形態の場合、3台の冷却装置16a〜16cは同一構造のものを用いているため、以下では代表的に冷却装置16aについて説明する。勿論、冷却装置16a〜16cのそれぞれに異なる構造のものを用いてもよく、また、本実施形態では中央の冷却装置16bでの冷却運転は行わないため、該冷却装置16bを省略してもよい。
【0051】
図3及び
図4に示すように、冷却装置16a(16b,16c)は、加湿炭化物を充填する複数の筒体(冷却容器)40を冷却槽42内に収納配置することで、筒体40内の加湿炭化物を冷却する冷却部44と、冷却部44の上部(上流側)に連結される投入部46と、冷却部44の下部(下流側)に連結される排出部48とを備える。
【0052】
冷却部44は、冷却前の加湿炭化物を充填するための入口40aが上端に開口形成されると共に、冷却後の加湿炭化物を排出するための出口40bが下端に設けられた複数の筒体40と、各筒体40を起立姿勢で収納配置し、これら筒体40の周囲に冷却液(例えば、冷却水)を流通可能な冷却槽42とを備える。
【0053】
筒体40は、例えばステンレス鋼管からなる放熱管であり、その上部が冷却槽42上部を閉塞する天板50に貫通形成された孔部50aに嵌合され、その下部が冷却槽42底部を閉塞する底板52に貫通形成された孔部52aに嵌合されて、冷却槽42内に固定されている。筒体40は、上記のように複数本設けられることにより、その放熱面積(各筒体40の外周面の合計面積)を増大させることができ、冷却効率を向上させることができる。
【0054】
筒体40の上端にある入口40aは、天板50の上面に面一又は略面一となる位置で開口しており、これにより、天板50の上面に投入された加湿炭化物は、投入部46の均し装置54によって各筒体40内へとそれぞれ均等に充填される。一方、筒体40の下端にある出口40bは、孔部52aを挿通して底板52のやや下方で開口しており、この出口40bは、排出部48の開閉ダンパ装置56によって開閉可能となっている。
【0055】
冷却槽42は、上部及び下部がそれぞれ天板50及び底板52で閉塞された円筒形状の水槽であり、下部側面に入口ポート42aが設けられ、上部側面に出口ポート42bが設けられている。冷却槽42の外周面には、断熱材(保温材)43が設けられている。
【0056】
冷却槽42内には、上下方向を仕切る3枚の水平な仕切板58a〜58cが、それぞれの各端部が上下方向で互い違いとなるように配設されている。各仕切版58a〜58cは、入口ポート42aから出口ポート42bまでの間の冷却槽42内を上方に向かって蛇行する流路として画成する。これにより、入口ポート42aから冷却槽42内に流入した冷却液(例えば、冷却水)は、各筒体40の周囲に流通されて該筒体40を冷却しつつ、仕切板58a〜58cによって画成された流路に沿って流れて出口ポート42bから流出される。
【0057】
投入部46は、第1搬送ライン20の第1投入コンベア26から導入される加湿炭化物を冷却部44に投入するためのものであり、冷却槽42の上部に連結された円筒形状のハウジング62と、ハウジング62の内部空間に加湿炭化物を導入するための導入ポート62aと、ハウジング62の内部空間に配設された均し装置54とを備える。導入ポート62aは、第1投入コンベア26の投入口26a(26b,26c)に接続される。
【0058】
均し装置54は、導入ポート62aからハウジング62の内部空間に導入され、天板50の上面に堆積された加湿炭化物を、水平方向に均して各筒体40の入口40aへと均等に充填するための装置である。この均し装置54は、ハウジング62内で回転軸64によって吊り下げられた水平方向の回転バー66と、回転バー66の下面から天板50の上面まで突出した複数の羽体68と、回転軸64を介して回転バー66を回転駆動するための駆動機構70とを備える。
【0059】
羽体68は、鉛直方向に沿った薄い平板であり、
図4に示すように、本実施形態の場合、8枚の羽体68のうち、両端の2枚の羽体68a,68bは、回転バー66の両端側で該回転バー66の軸方向に対して僅かに傾いて取り付けられており、残り6枚の羽体68は、回転バー66の軸方向に対して羽体68a,68bよりも大きな傾きで取り付けられている。
【0060】
駆動機構70は、ハウジング62の上部に配置されており、モータ72と、モータ72からの駆動力を回転軸64に伝達するためのギア機構(減速機構)74と、回転軸64を軸支するための軸受76a、76bとを備える。
【0061】
従って、モータ72が駆動され回転軸64が回転駆動されると、回転バー66もその長手方向中央部を中心として回転駆動される。そうすると、
図4から明らかなように、各羽体68が天板50の上面上に積もった加湿炭化物を均すスクレイパーとして機能し、各羽体68によって均された加湿炭化物は、各筒体40の入口40a内へと均等に且つ迅速に充填される。
【0062】
排出部48は、筒体40内で冷却された加湿炭化物を貯留設備であるホッパ22a(22b、22c)へと排出するためのものであり、冷却槽42の下部に連結された円筒形状のハウジング80と、ハウジング80の内部空間に配設された開閉ダンパ装置56とを備える。
【0063】
ハウジング80の側壁面には、ハウジング80内にエア(空気)を供給して、筒体40及びホッパ22a(22b,22c)の内部をエアパージするためのエア供給口81が設けられている。エア供給口81には図示しないエアコンプレッサ等が接続される。従って、冷却装置16a〜16cでは、筒体40内をエアパージしながら空気雰囲気(酸素雰囲気)で加湿炭化物を冷却することで、炭化物の酸化を促進してその温度を安定化させることができる。さらに、最終的な養生を行うホッパ22bでは、空気雰囲気で加湿炭化物を養生しながら、循環路35による循環処理を行うことにより、炭化物を槽内で均等に掻き混ぜることができ、槽内温度を平均化して蓄熱を防止しつつ、炭化物の酸化を一層促進して温度を一層安定化させることができる。すなわち、これら冷却工程時や循環工程時にエアパージを行うことにより、炭化物の酸化を促進し、製品としての出荷後の酸化反応による温度上昇を可及的に低減することができる。
【0064】
エア供給口81からのエアパージ量は、外気温や冷却装置16a〜16cの冷却容量、ホッパ22a〜22cの貯留容量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、本実施形態では5〜15m
3/h、好ましくは10m
3/h程度に設定される。
【0065】
開閉ダンパ装置56は、全筒体40を4つのブロックに分け、各ブロックの筒体40の出口40bをまとめて開閉する開閉蓋82(
図4参照)と、回動軸84を中心として開閉蓋82を回動させるモータ86とを備える。各開閉蓋82は、回動軸84の軸方向で両端側が互いに連係されており、回動軸84の両端側にそれぞれ配置された2台のモータ86によって4枚の開閉蓋82が一度に開閉される。
【0066】
図3に示すように、排出部48の側部には、例えば底板52に衝撃を与えることで、該底板52に嵌合されている各筒体40に衝撃を与え、これにより筒体40内からの加湿炭化物の排出を促進する追打装置(排出促進装置)88が設けられている。万一、開閉蓋82を開いただけでは筒体40内の冷却後の加湿炭化物が円滑に排出できず、出口40b部分にブリッジ状に詰まっている場合には、この追打装置88を駆動することで、各筒体40の出口40b近傍に衝撃を与え、その排出を円滑化することができる。
【0067】
次に、循環路35を有するホッパ22bの具体的な構成の一例について、
図5を参照して説明する。本実施形態の場合、中央のホッパ22bにのみ循環路35を設けているが、製造システム10の運用方法によっては他のホッパ22a,22cに設けても勿論よい。
【0068】
上記のように、ホッパ22bは、冷却装置16a,16cで冷却された加湿炭化物を出荷直前に貯留・養生するためのものであり、槽内に貯留している加湿炭化物を槽内上下で入替循環するための循環路35を備える。
【0069】
循環路35は、ホッパ22bの下部に接続され、ホッパ22b内の加湿炭化物を搬出する搬出路35aと、ホッパ22bの上部に接続され、搬出路35aからコンベア35bによって上方に引き上げられた加湿炭化物をホッパ22b内へと上部から投入する投入路35cとを備えた循環装置である。本実施形態では、搬出路35aをサークルフィーダ30bに接続し、投入路35cをハウジング80の側面に接続した構成としたが、搬出路35aはホッパ22bの容器の底面や側面に接続してもよく、投入路35cはホッパ22bの容器の側面や上面に接続してもよい。コンベア35bは、公知のフライトコンベア等によって構成するとよい。
【0070】
従って、循環路35では、ホッパ22b内部に貯留している加湿炭化物を底側の搬出路35aから抜き出してコンベア35bによって搬送し、天側の投入路35cから再びホッパ22b内部に投入することにより、ホッパ22b内部で加湿炭化物を上下方向に入替循環することができる。この際、ホッパ22bの槽内には、エア供給口81からエアが供給されているため、ホッパ22b内部の加湿炭化物をエアパージしながら循環することができる。
【0071】
次に、以上のように構成される製造システム10を用いた炭化物の製造方法について説明する。
【0072】
先ず、下水汚泥等の有機性廃棄物の乾燥品を炭化炉12によって所定温度(例えば、600℃)で炭化処理した後(炭化工程)、得られた炭化物を冷却コンベア18を介して加湿機14へと導入する。加湿機14では、炭化物が所定水分量(例えば、12重量%)になるまで加湿し、加湿炭化物を生成する(加湿工程)。
【0073】
続いて、製造システム10の通常運転時には、加湿機14で生成された加湿炭化物が第1搬送ライン20によって迅速に搬送され、第1投入コンベア26から冷却装置16a,16cへと交互に投入されて冷却される。
【0074】
例えば、先ず、第1投入コンベア26の投入口26aから冷却装置16aへと加湿炭化物が投入され、この冷却装置16aでは、均し装置54の駆動作用下に各筒体40内へと加湿炭化物が充填される(充填工程)。この際、筒体40の出口40bは開閉ダンパ装置56の開閉蓋82によって閉じられている。そして、冷却装置16aの筒体40内への加湿炭化物の充填が完了すると、この冷却装置16aの冷却槽42に接続された図示しない循環ポンプや冷却チラーを駆動し、入口ポート42aから出口ポート42bへと冷却液を循環させ、同時に、図示しないエアコンプレッサ等を駆動し、エア供給口81からエアを供給する。これにより、冷却容器である筒体40内の加湿炭化物をエアパージしながら冷却する冷却工程(冷却滞留)が実行され、加湿酸化物の冷却と、酸化による自己発熱の促進とが行われる。この冷却工程は、例えば
図1の実験データに基づき、2〜4時間程度行われる。
【0075】
このような冷却装置16aでの冷却運転(冷却工程)の開始と同時に、投入口26cから冷却装置16cへと加湿炭化物が投入され、均し装置54の駆動作用下に各筒体40内へと加湿炭化物が充填される(充填工程)。すなわち、先に加湿炭化物が充填された冷却装置16aの2〜4時間程度の冷却工程中に、冷却装置16cの筒体40への加湿炭化物の充填工程が行われるため、各装置の運転効率を高めることができる。
【0076】
冷却装置16aでの冷却工程が完了すると、冷却装置16cでの充填工程も完了する。冷却装置16aでは、開閉ダンパ装置56を駆動して開閉蓋82を開き(
図3中に2点鎖線で示す開閉蓋82参照)、場合により追打装置88を駆動して、筒体40内の冷却後の加湿炭化物をホッパ22a内へと排出する(排出工程)。その後、再び第1投入コンベア26から搬送される新たな加湿炭化物を冷却装置16aの筒体40内へと充填する充填工程が実行されると共に、この冷却装置16aでの排出工程や充填工程の間、冷却装置16cでは、冷却工程が実行される。
【0077】
以後、冷却装置16aと冷却装置16cとで、充填工程と冷却工程(及び排出工程)とが交互に実行されることにより、システムの稼動を停止することなく、2台の冷却装置16a,16cを用いた加湿炭化物の冷却工程が連続的に実行され、冷却後の加湿炭化物はそれぞれのホッパ22a,22cへと順次投入される。
【0078】
冷却装置16a,16cでは、2〜4時間かけて冷却工程を行うが、この際、エアパージによる加湿酸化物の酸化反応による温度上昇を冷却減温させることにより、炭化物温度を例えば40〜50℃以下とする。そして、ホッパ22a,22cでは、冷却後の加湿炭化物の温度上昇を監視しながら貯留・養生し、その貯留量が所定量(例えば、6トン)以上になると、サークルフィーダ30a,30cから第2搬送ライン32の第2搬送コンベア36へと加湿炭化物を排出する(
図2中の実線矢印37a,37c参照)。第2搬送コンベア36へと排出された冷却後の加湿炭化物は、第2投入ライン38を経て第2投入口(再投入口)38bから中央の冷却装置16bへと投入される。
【0079】
冷却装置16bに投入された加湿炭化物は、冷却装置16a,16cでの冷却工程によって十分に冷却されているため、冷却装置16bは運転されることなく、ホッパ22bへと排出され、例えば、ホッパ22bには、1日分の出荷量(例えば、12トン)に相当する加湿炭化物が貯留される。
【0080】
ホッパ22bでは、1日分の出荷量(例えば、12トン)に相当する加湿炭化物が集約・貯留されると、その槽内容量(例えば、12トン)で1回分の加湿炭化物が、エア供給口81からのエアパージによって酸化されつつ、循環路35によって入替循環(酸化循環)される(循環工程)。その後、図示しない温度センサでホッパ22b内の蓄熱温度を監視し、所定温度以下であればそのまま養生を続け、この所定温度を超えた場合には、再び循環路35による循環運転を行って蓄熱を防止しながら、例えば8時間の養生(最終養生。養生工程)を行う。
【0081】
そして、出荷のタイミングを考慮し、出荷直前に槽内容量で2回分(例えば、合計24トン分)をエアパージしながら循環路35によって入替循環した後(再循環工程)、所定温度(例えば、45℃)以下に安定した加湿炭化物を、製品Pとして、例えば輸送車34によって出荷する(
図2中の実線矢印39b参照)。
【0082】
勿論、ホッパ22a,22cに貯留した冷却後の加湿炭化物を第2搬送ライン32によって循環させず、当該ホッパ22a,22cから直接的に製品Pとして出荷することも可能である(
図2中の1点鎖線矢印39a,39c及び1点鎖線で示す製品P参照)。
【0083】
なお、当該製造システム10では、このような通常運転以外にも、加湿炭化物の温度や処理量等の条件の違い等に基づき、他の運転パターンを行うこともできる。
【0084】
例えば、3台の冷却装置16a〜16cを全て運転して、加湿炭化物の生産を行う場合には、第1搬送ライン20の第1投入コンベア26の投入口26b(
図2中の1点鎖線矢印26b参照)を使用し、3台の冷却装置16a〜16cでの充填工程及び冷却工程を適宜行うことで、各ホッパ22a〜22cから製品Pを順次出荷することができる。この場合には、ホッパ22bだけでなく、ホッパ22a,22cにも循環路35を設置し、各ホッパ22a〜22cでそれぞれ加湿炭化物の酸化循環や入替循環を行ってもよい。
【0085】
また、
図2中に1点鎖線矢印38a,38cで示す第2投入口(再投入口)38a,38cを用いてもよく、この第2投入口38a,38cは、例えば、サークルフィーダ30a〜30cから第2搬送コンベア36に供給された加湿炭化物の冷却が不足していて温度が高い場合等に使用するとよい。さらに、
図2中に1点鎖線矢印37bで示すように、冷却装置16bから排出される加湿炭化物を第2搬送コンベア36に投入し、各冷却装置16a〜16cに再循環させることもできる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る炭化物の製造方法によれば、有機性廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を加湿し、該加湿された炭化物を製品として出荷する場合において、炭化物の出荷前の最終的な加湿工程を実行した後、該加湿工程によって加湿された炭化物(加湿炭化物)を冷却する冷却工程を実行する。これにより、出荷前の最終的な加湿工程後の炭化物の発熱を効果的に抑制することができ(例えば、
図1中の「冷却(1)」及び「冷却(2)」の各グラフ参照)、当該加湿炭化物を製品として出荷するまでの貯留時間を短縮することができるため、貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる。すなわち、当該製造方法では、製品として出荷される直前に行われる加湿工程後に、加湿炭化物を冷却する冷却工程を速やかに実行することで、当該加湿炭化物の温度を早期に低温にして安定させ、迅速な出荷を可能とすることができる。
【0087】
加湿工程は、上記のように加湿機14による1工程のみを行う以外にも、例えば、炭化物に1段階目の加湿工程を施した後、所定の冷却装置で冷却し、次いで2段階目となる出荷前の最終的な加湿工程によって炭化物中の水分量を適正化した後、上記の冷却工程を実行するようにしてもよい。つまり、加湿工程や冷却工程の実施工程数は限定されるものではないが、少なくとも製品として出荷される前の最終的な加湿工程の後には、冷却工程を実行する必要があり、この冷却工程を実行することにより、加湿炭化物を製品として迅速に出荷することが可能となる。
【0088】
上記の冷却工程では、加湿炭化物を収容した冷却容器である筒体40内にエア供給口81からエアを供給してエアパージを行いながら炭化物を冷却するとよい。すなわち、加湿炭化物を直ぐに冷却し、その後製品として出荷した場合であっても、外気温等によっては当該製品が微発熱を生じる可能性があり、特に出荷先で製品が酸素に触れることにより、製品の利用先で酸化反応による温度上昇する可能性がある。そこで、冷却工程時に、エアパージを行って炭化物の酸化を促進しておくことにより、製品出荷後の酸化反応を抑制し、それによる温度上昇を可及的に回避することができる。この際、エアパージでの酸化反応によって生じた熱は、冷却工程によって迅速に除去することができるため、加湿炭化物の温度が上昇し過ぎることがなく、温度を所望の低温に確実に安定化させることができる。
【0089】
冷却工程の後、冷却された加湿炭化物を第2搬送ライン32を介してホッパ22bへと移し、循環路35を用いてホッパ22bの槽内で加湿炭化物を入替循環させる循環工程を行ってもよい。すなわち、ホッパ22bの槽内で貯留・養生される加湿炭化物は、冷却装置16a,16cにおいて酸化雰囲気中で冷却され、ホッパ22a,22cで一旦貯留・養生されているため、十分に冷却され温度が安定した状態にあるが、ホッパ22b内で多少なりとも発熱・蓄熱し、温度上昇を生じる可能性がある。そこで、冷却工程を経た加湿炭化物をホッパ22b内で貯留・養生する際、例えば、循環路35を用いてその貯留量の1回分が入れ替わる程度の循環工程を行うことにより、ホッパ22b内での加湿炭化物の温度状態を均等化しつつ、さらなる酸化反応を生じさせて、その温度状態を一層安定化させることができる。
【0090】
なお、循環路35を用いた炭化物の循環工程は、第2搬送ライン32を介して導入されるホッパ22b以外で行なってもよく、例えば、冷却装置16a,16cで冷却され、ホッパ22a,22bに導入された炭化物を該ホッパ22a,22b内で図示しない循環路等を用いて入替循環させてもよい。また、炭化物を貯留している槽内で炭化物を循環させる循環路35に代えて、例えば、ホッパ22b内に攪拌羽根等を設置することにより、槽内で炭化物を掻き混ぜる構成としてもよい。すなわち、炭化物をホッパ22b内で十分に掻き混ぜることができれば、循環路35以外の掻き混ぜ装置(例えば、攪拌羽根)を用いることも可能である。
【0091】
さらに、循環工程の後、加湿炭化物をホッパ22b内で冷却工程での冷却時間(例えば、2〜4時間)よりも長い一定時間(例えば8時間)貯留する養生工程を行い、その後、炭化物を製品として出荷する直前に、ホッパ22bの槽内で再び循環路35を用いて循環させる再循環工程を行ってもよい。そうすると、養生工程により、冷却後にホッパ22b内に貯留された加湿炭化物の温度をより低下させ、その状態を一層安定化させることができる。しかも、再循環工程により、出荷直前の加湿炭化物の槽内での温度状態をより均一化させることができ、より安定した状態での製品出荷が可能となり、出荷先での温度上昇もより確実に防止することができる。
【0092】
図1中の「冷却なし」のグラフに示されるように、有機性廃棄物の炭化物を、5〜15重量%程度に加湿した場合には、加湿後約2時間程度は温度上昇を続けることになる。そこで、冷却装置16a〜16cによる冷却工程は、加湿機14による加湿工程の終了後2〜4時間以内に実行すると、より効果的に除熱を行うことができ、より好適には、加湿後すぐに冷却を開始し、該冷却を2〜4時間程度継続すると、加湿直後の発熱を効果的に抑えつつ過剰な冷却を防止することができるため、生産効率を一層向上させることができる。すなわち、炭化物の加湿発熱が2時間程度の反応時間を有するため、冷却が早すぎても後段のホッパ22a〜22cでの貯留時に発熱し、遅すぎても冷却装置16a,16cでの冷却前に発熱するため、加湿工程後2時間以内に冷却工程を実行することで、加湿後の炭化物が再度温度上昇し熱暴走等を生じることを回避することができる。
【0093】
冷却工程は、加湿炭化物を充填した冷却容器である筒体40の周囲に冷却液を流通する間接冷却方式によって行うことで、炭化物に水等を直接的に噴霧する直接冷却方式に比べて、加湿炭化物の水分量や性状に影響を与えることを防止できる。
【0094】
上記のように、冷却装置16a,16cによる冷却工程の後、第2搬送ライン32を経てホッパ22b内に投入された加湿炭化物をホッパ22b内で冷却工程の冷却時間(例えば2時間)よりも長い一定時間(例えば8時間)貯留・養生すると、加湿炭化物の温度をより低温にして安定させることが可能となり好ましいが、当該養生工程は必ずしも必須ではなく、冷却後の加湿炭化物をすぐに出荷することも勿論可能である。逆に言えば、最終的な加湿工程の後、冷却工程を行わない従来方法の場合には、貯留工程(養生工程)の時間が長くなるため、加湿後の迅速な出荷が困難となっている。
【0095】
本実施形態に係る炭化物の製造システム10によれば、有機性廃棄物を炭化処理して炭化物を生成する炭化炉12と、該炭化物を加湿する加湿機14と、該加湿機14で製品Pとして出荷される前の最終的な加湿が行われた炭化物を冷却する冷却装置16a〜16cとを備える。これにより、製品として出荷前の炭化物を加湿後すぐに冷却して温度上昇を抑えることができるため、加湿炭化物を製品として出荷するまでの貯留時間を短縮でき、貯留スペースを低減し、歩留まりを向上させることができる。
【0096】
製造システム10では、冷却装置16a〜16cとホッパ22a〜22cとをそれぞれ連結することで、冷却と貯留を行う冷却貯留設備を3台備え、これら3台の冷却貯留設備は、加湿機14から搬出される炭化物の第1搬送ライン20を構成する第1投入コンベア26に対し、炭化物の搬送方向で加湿機14側から順に接続され、最も下流側の冷却貯留設備(冷却装置16c及びホッパ22c)よりも上流側に接続された冷却貯留設備(冷却装置16b及びホッパ22b)へと冷却後の加湿炭化物を供給可能な第2搬送ライン32を備える。
【0097】
このように、第1投入コンベア26の上流側から下流側に向かう方向で最も下流側とならない位置に最終的な養生工程を行うホッパ22bを設置し、その下流側にホッパ22bより先に炭化物を冷却等する冷却装置16c及びホッパ22cを設置したことにより、第1投入コンベア26で冷却装置16aへの投入口26aに入りきらずにこれを通過した炭化物を、冷却装置16bを通過させて下流側の冷却装置16cへと投入することができる。これにより、冷却前の加湿炭化物が最終的な養生工程を行う出荷用のホッパ22bへと誤って投入されることを防止することができ、製品の温度をより安定化させ、製品品質を向上させることができる。
【0098】
なお、本発明は、上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0099】
例えば、冷却装置16a〜16cの構成は、
図3に示す構成以外であっても勿論よく、要は、加湿後の炭化物を冷却可能な構成であればよい。但し、最終的な加湿工程の後に行われる冷却工程では、水分量が調整された出荷前の加湿炭化物の水分量や性状に影響を与えることを回避する必要があるため、冷却装置には、間接冷却方式の構成を用いることが好ましい。勿論、冷却装置の設置台数は、3台以外、例えば1台、2台又は4台以上であってもよい。
【0100】
図2に示す炭化物の製造システム10では、有機性廃棄物を炭化炉12で炭化処理した後、すぐに加湿機14を導入するシステムを例示したが、炭化物は別のシステムの炭化炉から移送されたものであっても勿論よい。