特許第6051036号(P6051036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051036
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】循環冷却加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-281844(P2012-281844)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-127534(P2014-127534A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−141831(JP,A)
【文献】 特開2002−168551(JP,A)
【文献】 特開2002−022300(JP,A)
【文献】 特開平07−029967(JP,A)
【文献】 特開2001−194040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302、21/3065、21/461、
F25D 17/00−17/02、
F28D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマエッチング装置のチャンバーに対して供給される循環流体を冷却、加熱する循環冷却加熱装置において、
循環流体を貯留するタンクと、
循環流体を前記タンクおよび前記チャンバーの間で循環させるポンプと、
循環流体と冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記タンク内の循環流体を加熱する加熱手段とを備え、
前記熱交換器は、前記タンク内の循環流体に浸漬され
前記熱交換器には、循環流体を流入させる流入路が接続され、
前記流入路は、当該流入路を流れる循環流体を前記タンク内に流出可能に設けられている
ことを特徴とする循環冷却加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の循環冷却加熱装置において、
前記タンクは、有底箱状のタンク本体と、タンク本体の上部を塞ぐ蓋体とを備え、
前記熱交換器および前記加熱手段は、前記蓋体に取り付けられる
ことを特徴とする循環冷却加熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の循環冷却加熱装置において、
前記蓋体には、前記タンク内の循環流体に浮かぶフロートを有した液面センサが取り付けられる
ことを特徴とする循環冷却加熱装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の循環冷却加熱装置において、
前記タンクには、循環流体で満たされている部分以外の空間により空気室が形成されるとともに、前記空気室と前記タンクの外部とを連通させるブリーザが設けられる
ことを特徴とする循環冷却加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環冷却加熱装置に係り、特にプラズマエッチング装置に用いられる循環冷却加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマエッチング装置などの半導体処理装置として、その装置の側部に温度制御機を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。温度制御機は、半導体処理装置に設けられたチャンバーに対して、所定の温度に調整された循環流体を循環供給し、チャンバーの温度が目標温度となるように制御する。従って、温度制御機には、循環流体を冷却したりあるいは加熱したりするための循環冷却加熱装置が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の循環冷却加熱装置では、外管、外管の内部に配置された内管、および内管の内部に配置されたガラス管を有する三重管構造のものが採用されている。外管に対しては冷却水が流出入し、内管に対しては循環流体が流出入する。そして、ガラス管内にはヒーティングランプが収容されている。
【0004】
つまり、内管に流入した循環流体は、外側にある外管内の冷却水との熱交換によって冷却され、また、内側のヒーティングランプからの照射により加熱され、所定の温度に温調される。温調された循環流体は、内管からポンプによってチャンバーへと圧送され、チャンバーの温度制御に用いられた後、再び循環冷却加熱装置へと戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−280756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で示された三重管構造の循環冷却加熱装置では、循環流体が内管の管壁を介してしか冷却水にて冷却されないため、内管の管に沿って流れる循環流体は良好に冷却されるが、内管の中央側では、循環流体が良好に冷却されない可能性がある。従って、循環流体の循環流量を変えずに、内管の中央側でも循環流体を確実に冷却するために従来では、外管の径寸法を大きくし、大量の冷却水を流入させて循環流体を冷却しなければならず、装置全体が大型化するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、循環流体を効率的に冷却でき、かつ装置全体を小型化できる循環冷却加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る循環冷却加熱装置は、プラズマエッチング装置のチャンバーに対して供給される循環流体を冷却、加熱する循環冷却加熱装置において、循環流体を貯留するタンクと、循環流体を前記タンクおよび前記チャンバーの間で循環させるポンプと、循環流体と冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、前記タンク内の循環流体を加熱する加熱手段とを備え、前記熱交換器は、前記タンク内の循環流体に浸漬されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る循環冷却加熱装置では、前記タンクは、有底箱状のタンク本体と、タンク本体の上部を塞ぐ蓋体とを備え、前記熱交換器および前記加熱手段は、前記蓋体に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る循環冷却加熱装置では、前記蓋体には、前記タンク内の循環流体に浮かぶフロートを有した液面センサが取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る循環冷却加熱装置では、前記タンクには、循環流体で満たされている部分以外の空間により空気室が形成されているとともに、前記空気室と前記タンクの外部とを連通させるブリーザが設けられていることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る循環冷却加熱装置では、前記熱交換器には、循環流体を流入させる流入路が接続され、前記流入路には、当該流入路を流れる循環流体を前記タンク内に逃がすリリーフ弁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明の循環冷却加熱装置によれば、循環流体を冷却水にて冷却するための熱交換器を有することで、従来と同等の冷却効率で循環流体を冷却できるうえ、その熱交換器をタンク内の循環流体に浸漬させておくため、放熱するだけであった熱交換器の表面を介しても、その熱交換器内の循環流体を冷却でき、冷却効率をより向上させることができる。しかも、そのような熱交換器は、タンク内に収容されるので、熱交換器を配置するためのスペースをタンク外に確保する必要がなく、循環冷却加熱装置全体を小型化できる。
【0014】
第2発明の循環冷却加熱装置によれば、熱交換器および加熱手段を蓋体に取り付けるので、それらのメンテナンス時には、タンク本体から蓋体を外すだけで、それらをも容易に取り出すことができる。また、外した蓋体に熱交換器および加熱手段が取り付けられているから、循環冷却加熱装置に組み込まれた状態で作業しなくともよく、外段取りにて作業を容易にできる。
【0015】
第3発明の循環冷却加熱装置によれば、液面センサを設けることにより、タンク内の循環流体の貯留量を検出でき、循環流体の補給等を的確に行える。また、液面センサを蓋体に取り付けるので、第2発明同様、液面センサのメンテナンスをも容易にできる。
【0016】
第4発明の循環冷却加熱装置によれば、タンク内に空気室が形成されるので、循環流体の循環流路の途中に所定容量の空間を確保するための部材やアキュムレータ等を設けたりしなくとも、循環流体の熱膨張に確実に対応でき、この点でも、装置の小型化を促進できる。
【0017】
第5発明の循環冷却加熱装置によれば、熱交換器に接続される循環流体の流入路にリリーフ弁を設けるため、熱交換器内で循環流体の流入に支障を来す事態が生じても、循環流体をリリーフさせてタンク内に逃がすことができ、熱交換器や循環させるための配管の損傷、あるいはポンプへの影響を抑制できる。また、リリーフ弁をタンク内に配置するため、リリーフされた循環流体をタンク内に即座に逃がすことができ、逃がすための流路を長く形成する必要がなくて構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る循環冷却加熱装置が採用されたプラズマエッチング装置示す斜視図。
図2】プラズマエッチング装置に設けられたチャンバーおよび温度制御装置を示す模式図。
図3】温度制御装置を示す全体斜視図。
図4】温度制御装置に設けられた循環冷却加熱装置の概略構成および流体回路を示す図。
図5】温度制御装置の内部を示す平面図。
図6】循環冷却加熱装置の液体タンクを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマエッチング装置1を示す斜視図である。図2は、プラズマエッチング装置1に設けられたチャンバー2および温度制御装置3を示す模式図である。
【0020】
[プラズマエッチング装置全体の概略説明]
図1図2において、プラズマエッチング装置1は、プラズマを用いたドライプロセスにより半導体ウェハWにエッチング処理を施す装置であり、内部に複数のチャンバー2を備える(図2に1つのみを図示)。これらのチャンバー2は、温度制御装置3から供給される温調された循環流体により所定の目標温度に制御される。本実施形態の温度制御装置3は、複数のチャンバー2毎に設けられ、プラズマエッチング装置1の側方に設けられたオペレータ用のステップ4内に収容される。
【0021】
エッチング処理時には、チャンバー2内は真空引きされており、所定の低圧に維持される。この状態で、チャンバー2内にエッチングガス(プロセスガス)を導入する。導入したエッチングガスをプラズマ化し、半導体ウェハWをエッチング処理する。このような処理を行う際に、温度制御装置3からの循環流体によってチャンバー2の温度が目標温度に制御される。
【0022】
ここで、本実施形態でのチャンバー2としては、半導体ウェハWが載置される下部電極2Aとその上方に配置される上部電極2Bとを有するとともに、これらの電極2A,2Bの内部流路に循環流体を流通させることで温度制御される構成である。このようなチャンバー2では、電極2A,2B間に印加されるRF(Radio Frequency)電界を用いて容量結合型プラズマが生成される。ただし、チャンバーの構造としては、容量結合型プラズマを生成するものの他、電子サイクロトロン共鳴プラズマ、ヘリコン波励起プラズマ、誘導結合型プラズマ、あるいはマイクロ波励起表面波プラズマ等を生成するものであってもよい。
【0023】
[温度制御装置の説明]
図3には、温度制御装置3全体の内部を後方側から見た斜視図が示されている。図4には、温度制御装置3に設けられた循環冷却加熱部5の概略構成および流体回路が示されている。
【0024】
図3図4において、温度制御装置3は、循環流体を冷却、加熱するとともに、チャンバー2との間で循環流体を循環させる循環冷却加熱装置としての循環冷却加熱部5と、循環冷却加熱部5から出力される各種パラメータに基づいて循環流体の温度を調整し、よってチャンバー2の温度を目標温度に制御する制御部6と、循環冷却加熱部5および制御部6が収容される筐体7とを備える。
【0025】
温度制御装置3において、循環冷却加熱部5および制御部6の詳細については後述するが、これらは同一平面上に前後の位置関係で配置されている。このため、循環冷却加熱部5や制御部6のメンテナンスを行う場合には、温度制御装置3の筐体7の一部を上方側に外すことで、それらを広い範囲で露出させることができ、循環冷却加熱部5および制御部6に対するメンテナンスを上方から容易に行える。さらに、メンテナンスにあたっては、温度制御装置3をステップ4の収容箇所からより広いエリアに引き出して作業を行う必要がないから、そのようなエリアをも考慮した大きな配置スペースを確保する必要がない。
【0026】
なお、本実施形態の温度制御装置3では、循環冷却加熱部5にチラー8が接続されている。チラー8は、循環冷却加熱部5に対して一定温度の冷却水を供給、循環させる。冷却水は、循環冷却加熱部5にて循環流体を冷却するために用いられる。循環流体としては、ガルデン(アウジモンド社の登録商標)やフロリナート(3M社の登録商標)等のフッ素系冷媒が用いられる。
【0027】
[循環冷却加熱部の説明]
循環冷却加熱部5は、温度制御装置3の後方側を占める領域に設けられている。循環冷却加熱部5が後方側に位置することで、循環流体用の配管や冷却水用の配管が循環冷却加熱部5から後方側に向けて延出され、プラズマエッチング装置1本体の下方を通ってチャンバー2やチラー8に接続される。従って、それらの配管は、プラズマエッチング装置1の外部に露出することがなく、プラズマエッチング装置1の配置スペースの他に配管専用のスペースを別途設ける必要がない。
【0028】
また、循環冷却加熱部5とチャンバー2等が近い位置関係にあるので、配管の長さも短くてよく、循環流体の使用量が少なくて済む。このため、循環流体を貯留する後述のタンク10や熱交換器14の容量すなわち大きさを小さくでき、循環冷却加熱部5、ひいては温度制御装置3を格段に小型化できて、温度制御装置3がステップ4のような狭い配置スペースに確実に収容可能である。
【0029】
具体的に、循環冷却加熱部5は、循環流体が貯留されるタンク10を備える。タンク10には、循環流体の流入部11Aを有する流入路11と、流出部12Aを有する流出路12とが接続されている。タンク10内には循環流体が貯留されるが、循環流体の上方には循環流体で満たされていない隙間空間が生じており、図3にタンク10を一部断面して示すように、その隙間空間によって空気室10Aが形成されている。
【0030】
循環流体が冷却、加熱されて収縮、膨張した場合には、この空気室10Aの容積変化により対応することが可能である。また、空気室10Aの容積変化に基づく過度の圧力変動を防止するため、タンク10の側面にはブリーザ13が設けられている。ブリーザ13は、空気室10Aの圧力に応じて空気室10Aと外部との間で空気の出し入れを行い、空気室10Aの圧力を所定の範囲内に維持する。
【0031】
タンク10内には、循環流体に常に浸漬された状態で熱交換器14が収容されている。循環流体の流入路11の先端は、タンク10内で熱交換器14に接続される。熱交換器14には、循環流体をタンク10内に流出させる出口部14Aが設けられている。熱交換器14は、循環流体と冷却水との間で熱交換を行い、循環流体を冷却する。このため、熱交換器14には、冷却水の流入部15Aを有する流入路15と、流出部16Aを有する流出路16とが接続されている。
【0032】
熱交換器14が循環流体に浸漬されていることで、熱交換器14に流入した循環流体は、冷却後の循環流体によっても熱交換器14の外部からも冷却されることになる。また、タンク10内に熱交換器14が収容されることにより、タンク10のサイズが多少大きくなるが、タンク10の外に熱交換器14の配置スペースを確保する必要がないから、タンク10自身の大きさが多少大きくなる分を考慮しても、循環冷却加熱部5全体としては確実に小型化できる。
【0033】
さらに、タンク10内には、3つのシーズヒーターで構成された加熱手段17が収容されている。各ヒータの端子17Aがタンク10上部に露出しており、これらの端子17Aを介して電力が供給され、ヒータが発熱する。発熱したヒータにより、循環流体が加熱される。
【0034】
ここで、タンク10内において、循環流体の流入路11には、リリーフ弁18が設けられている。何らかの理由で熱交換器14内への循環流体の流入が制限される事態が生じた場合には、熱交換器14内の循環流体の圧力が所定圧を越えた時点でリリーフ弁18が開放し、循環流体をタンク10内に逃がす。
【0035】
タンク10外において、循環流体の流出路12にはモーター19によって駆動されるポンプ20が設けられ、その下流には温度センサ21および圧力計22が設けられている。ポンプ20を駆動することで、循環流体が循環冷却加熱部5とチャンバー2との間で循環する。なお、流出路12の基端側は、熱交換器14や加熱手段17の実際の配置等を勘案し、タンク10内の適宜な位置に開口している。
【0036】
同様にタンク10外において、冷却水の流入路15には、流入部15A近傍に圧力計23が設けられ、その下流に比例弁24が設けられている。流出路16には、流出部16A近傍に圧力計25が設けられ、その上流に定流量弁26が設けられている。また、流入路15の比例弁24の流側と流出路16の定流量弁26の流側とがバイパス路27で連通している。バイパス路27には、比例弁28が設けられている。各比例弁24,28の絞り機構の開度を変更し、熱交換器14を流通する冷却水の流量を調整することで、熱交換器14での冷却性能を調整可能である。冷却水の循環は、チラー8(図2)側の図示しないポンプによって行われる。
【0037】
循環流体用のポンプ20は、前方の制御部6と後方のタンク10との間に配置されている。循環流体用の圧力計22は、タンク10の上方に配置されている。比例弁24,28、定流量弁26、および冷却水用の圧力計23,25は、タンク10の側方に集約されて配置されている。
【0038】
[制御部の説明]
制御部6は、ポンプ20の駆動、比例弁24,28の開度変更、および加熱手段17のオンオフの切り換え等を、温度センサ21での検出温度、その他の各種パラメータに基づいて制御する。このような制御部6は、図3に示すように、温度制御装置3の前方側を占める領域に設けられている。
【0039】
制御部6は、加熱手段17のオンオフを切り換える切換手段としてのSSR(Solid State Relay)30(図5)や、ポンプ20用の駆動回路が設けられたインバータ31を備える。制御部6にはその他、電源コネクタ32、種々のインターフェースケーブル接続用のコネクタ、電源スイッチボックス33、電源基板34、インバータ31を冷却する冷却ファン35、CPU(Central Processing Unit)基板36、および操作パネル37等が設けられている。
【0040】
ところで、従来においては、チャンバーの各電極にヒータが内蔵され、これらのヒータのオンオフを温度制御装置にて制御していた。これは従来、循環冷却加熱装置からの長い配管途中で循環流体の温度が奪われる等の理由から、電極にヒータを内蔵して循環流体をさらに加熱する必要があったからである。しかし、このような構成でも、循環流体の高温側への温度調整としては90℃程度が限界であった。また、従来の温度制御装置では、電極に内蔵されたヒータがノイズ源となり、ノイズ対策用の高価なフィルタを必要としていた。
【0041】
これに対して本実施形態では、前述したように、循環用の配管が短く、循環流体の使用量も少ないため、小型の加熱手段17でも循環流体を150℃程度まで温度調整可能である。このことから、チャンバー2の各電極2A,2Bにヒータを内蔵させる必要がなく、温度制御装置3のコストを確実に削減可能である。
【0042】
[筐体の説明]
図3において、筐体7は、循環冷却加熱部5および制御部6が搭載される底部パネル41と、それらの上方および側方を覆う上部カバー42(図3中に2点鎖線で図示)と、底部パネル41および上部カバー42に固定されて前方側を覆う前部カバー43と、同様に後方側を覆う後部カバー44(図3中に2点鎖線で図示)と、温度制御装置3内を前後に仕切る仕切パネル45とを備える。仕切パネル45の後方側は、循環冷却加熱部5が設けられる循環室46とされ、前方側は、制御部6が設けられる制御室47となっている。つまり、各室46,47が同一平面上に存在している。
【0043】
底部パネル41には、循環室46に対応した部分の周囲に沿って立上部41Aが設けられている。立上部41Aの高さH1は、制御室47の外周に沿って設けられた立上部41Bの高さH2よりも高い。つまり、底部パネル41は、循環室46の底側の周囲が立上部41Aで囲まれたパン48を有する。パン48の底面には、循環流体を検出する液漏れセンサ49が設けられている。
【0044】
循環室46では、循環流体および冷却水が流出入することから、万一循環室46内で循環流体や冷却水が漏れ出しても、それらがパン48で受けられる。従って、循環流体および冷却水が制御室47に流れ出て電子部品等に影響を及ぼしたり、外部に漏れ出したりするのを防止できる。また、パン48に漏れ出た循環流体や冷却水は、液漏れセンサ49で検出され、この状況が操作パネル37あるいはプラズマエッチング装置1に設けられた表示装置などに表示される。
【0045】
上部カバー42は、上面部51および左右の側面部52,52を有した形状であり、底部パネル41、前部カバー43、および後部カバー44との固定を解除したうえで、左右の把手を利用して上方に外すことが可能である。上部カバー42の上面部51には、制御室47にあって、前述の操作パネル37が取り付けられる。図示を省略するが、上部カバー42の上面部51および側面部52において、循環冷却加熱部5の圧力計22,25に対応した位置には開口が設けられ、上部カバー42を取り付けた状態でも、それらの圧力計22,25を読み取ることが可能である。
【0046】
前部カバー43には、電源コネクタ32、信号送受信用のコネクタ、電源スイッチボックス33などがプレート38を介して取り付けられる。前部カバー43には、制御部6を構成する電気、電子部品からの熱を逃がすための多数のスリット39…が設けられている。このようなスリット39は、上部カバー42の側面部52および後部カバー44にも設けられる。
【0047】
後部カバー44には、循環流体の流入部11A、流出部12A、冷却水の流入部15A、流出部16Aとの干渉を避けるための複数の開口や、流入路15上の圧力計23を視認するための開口が設けられる。
【0048】
仕切パネル45は、第1面状部45Aおよび第2面状部45Bを有することで、平面視にてクランク状に形成されている。制御室47内のSSR30、インバータ31、電源スイッチボックス33、電源基板34、冷却ファン35、および操作パネル37等は、制御室47のうち、第1面状部45Aで区画された広い方の配置スペースに配置されている。一方で、第2面状部45Bで区画された制御室47の狭い配置スペース側には、CPU基板36等が配置される。
【0049】
また、制御室47の広い配置スペースの後方側は、循環室46の中でも、第1面状部45Aで区画された狭い方の配置スペースとされ、この配置スペースには、比例弁24,28、定流量弁26、および冷却水用の圧力計23,25等が配置されている。反対に、制御室47の狭い配置スペースの後方側は、循環室46にあって、第2面状部45Bで区画された広い方の配置スペースとされ、この配置スペースには、タンク10、ポンプ20、温度センサ21、および圧力計22等が配置されている。
【0050】
仕切パネル45の左右両端側には、第1、第2面状部45A,45Bに対して折曲した四角形状の取付片53,54が一体に設けられている。循環室46の狭い方の配置スペースには、取付片53に取り付けられた吸込ファン55が配置されている。循環室46の広い方の配置スペースには、取付片54に取り付けられた吐出ファン56が配置されている。上部カバー42の各側面部52において、これらのファン55,56に対応した位置には、冷却空気が流出入する開口が設けられる。
【0051】
[循環室内での冷却風の流れの説明]
図5には、温度制御装置3の内部の平面図が示されている。この図5には、循環室46内を流れる冷却空気の様子が網掛けされた矢印で描かれている。
【0052】
図5において、温度制御装置3の外部から右側の吸込ファン55によって吸引された冷却空気は先ず、仕切パネル45を構成する第1面状部45Aの背面に沿って左側へ流れる。第1面状部45Aの前面には、SSR30やインバータ31等の発熱部品が取り付けられており、第1面状部45Aの背面は、それら発熱された熱の放熱面になっている。従って、このような背面に沿って冷却空気が流れることにより、第1面状部45Aを通して放熱された熱を即座に筐体7外に逃がすことができ、循環室46内にこもるのを抑制できる。
【0053】
その後に冷却空気は、循環室46の広い方の配置スペースに移り、第2面状部45Bとタンク10との間に流れ込む。この結果、冷却空気は、モーター19およびこれによって駆動されるポンプ20を冷却する。冷却空気はこの後、左側の吐出ファン56を通して温度制御装置3の外部に吐き出される。
【0054】
[タンクの詳細説明]
図6には、タンク10の分解斜視図が示されている。図6に基づき、タンク10をより詳細に説明する。
【0055】
図6において、タンク10は、有底箱状のタンク本体61と、タンク本体61の上部を塞ぐプレート状の蓋体62とを備える。タンク本体61の上部には、外周縁に沿った内フランジ61Aが設けられている。蓋体62は、内フランジ61Aに対して、スクリュー等の適宜な締結手段で固定される。この際、内フランジ61Aと蓋体62の裏面との間には、適宜シール材が介装される。
【0056】
タンク本体61の側面には、前述したブリーザ13の他、内部に貯留される循環流体の量を確認するためのレベラー63、および循環流体を排出するドレン管64が設けられている。タンク本体61の背面には、循環流体を補充するための補給ポート65が設けられている。タンク本体61の前面内側には、流出路12の基端側を構成する吸出管66が設けられている。タンク10内の循環流体は、吸出管66からポンプ20によって吸い出される。
【0057】
これに対して蓋体62には、前述した熱交換器14および加熱手段17が蓋体の裏面から垂下した状態で取り付けられている。蓋体62には同様に、一対の液面センサ67,67が取り付けられている。各液面センサ67は、循環流体に浮かぶフロート67Aを有する。液面センサ67から出力されるフロート67Aの位置により、循環流体の液面(貯留量)が下限レベルおよび上限レベルに達したか否かを検出可能である。循環流体の貯留量が各限界レベルを超えた場合には、操作パネル37等にその状況が表示される。
【0058】
このようなタンク10では、熱交換器14および加熱手段17が蓋体62に設けられているので、それらのメンテナンスの際には、タンク本体61から蓋体62を外し、流入路11,15および流出路12,16を継ぎ手部分から分割することにより、蓋体62ごと取り出して外段取りで容易に行える。また、蓋体62を外すことで、熱交換器14および加熱手段17も外れるから、タンク本体61の上方を大きく開放でき、タンク本体61内のメンテナンスも簡単にできる。
【0059】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、循環流体をタンク10に逃がすためのリリーフ弁18がタンク10内に設けられていたが、このようなリリーフ弁18は、タンク10外において、例えばポンプ20の直ぐ下流側に設け、リリーフした循環流体を逃がし流路を通してタンク10内に戻す構成としてもよい。
【0060】
前記実施形態では、タンク10内に空気室10Aを設けるとともに、タンク10にブリーザ13を設けたが、空気室10Aやブリーザ13を設ける代わりに、循環流路にアキュムレータ等を設けてもよい。しかし、アキュムレータは所定の大きさの配置スペースを要することから、装置の小型化には向いておらず、この意味で前記実施形態のように、タンク10に空気室10Aおよびブリーザ13を設けることが好ましい。
【0061】
前記実施形態では、熱交換器14、加熱手段17、および液面センサ67が蓋体62に取り付けられていたが、タンク本体61に取り付けた場合でも、本発明に含まれる。しかし、蓋体62にそれらを取り付けることで、メンテナンスを容易にできるという効果が得られるため、前記実施形態のようにすることが好ましい。
【0062】
前記実施形態では、温度制御装置3の筐体7に制御部6と共に組み込まれた循環冷却加熱部5について説明したが、本発明の循環冷却加熱装置としては、制御部6とは別の筐体を有した装置として構築してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、プラズマエッチング装置用の循環冷却加熱装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1…プラズマエッチング装置、2…チャンバー、5…循環冷却加熱装置である循環冷却加熱部、10…タンク、10A…空気室、11…流入路、13…ブリーザ、14…熱交換器、17…加熱手段、18…リリーフ弁、20…ポンプ、61…タンク本体、62…蓋体、67…液面センサ、67A…フロート。
図1
図2
図3
図4
図6
図5