【実施例1】
【0015】
図1は,本発明である列車制御システムの構成図である。
【0016】
地上制御装置201は、列車001を含む制御範囲内の複数の列車から地上アンテナ221〜223及び地上無線局211〜213を介して受信した位置情報を管理し、その位置情報および信号機、転てつ器などの状態に基づき、各列車への制御情報を編集する装置である。地上制御装置201は、編集した制御情報を沿線に配置された地上無線局211〜213に伝送し、地上無線局211〜213は地上アンテナ221〜223を介して、制御情報を各列車001に送信する。制御情報は、車上に配置された車上アンテナ031、032、車上無線局021、022を介して、車上制御装置011、012に伝送される。
【0017】
一方、車上制御装置011、012は、自列車の走行位置を算出し、当該走行位置と地上制御装置201から受信した制御情報に基づき列車の速度・停止制御を行う装置である。車上制御装置011、012は、自列車001の走行位置を位置情報として編集し、編集した位置情報を車上無線局021、022に伝送する。車上無線局021、022は車上アンテナ031、032を介して、位置情報を地上装置に送信する。位置情報は、沿線上に配置された地上アンテナ221〜223、地上無線局211〜213を介して、地上制御装置201に伝送される。
【0018】
車上制御装置011、012および車上無線局021、022、車上アンテナ031、032は、装置の故障や外乱により無線通信で不能となった場合においても制御を継続するため、2重系の冗長構成をとる。車上アンテナ031、032および車上無線局021、022は、列車の先頭および後尾に配置され、1列車での運行時は、各先頭の車上アンテナ031と車上無線局021および後尾の車上アンテナ032と車上無線局022で、地上装置との無線通信を行う。
【0019】
図2は、2つの列車が併合した場合の通信状態を示す図である。2つの列車001、101が併合した場合、車上制御装置111、012はモード情報を取得することにより、列車001の後尾側と列車101の先頭側が併合したことを検知する。そして、併合車101の先頭車上無線局121および被併合車001の後尾車上無線局022は、併合したことを示すモード情報を車上制御装置111、012から受信することで、無線通信チャンネル(周波数)を地上装置との通信用の無線通信チャンネルとは異なる値である列車間通信用の無線通信チャンネル(周波数)切り換える。これにより、併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置間012での無線通信を可能とする。
【0020】
また、併合車101の後尾の車上無線局122および被併合車001の先頭の車上無線局021は、地上装置との無線通信を継続する。
【0021】
なお、モード情報は、地上装置からの制御情報に含まれる場合、あるいは運転台のスイッチ操作により提供される場合、あるいは車上制御装置で併合状態を自動検知することにより生成される場合が想定される。
【0022】
併合車101、被併合車001の車上制御装置111、112、011、012は、列車制御に必要となる列車識別情報(列車長、列車ID、ブレーキ特性など)を、併合車101の先頭の車上無線局121と被併合車001の後尾の車上無線局022を介した車上制御装置111、012間の無線通信により交換することで、併合車101及び被併合車001を1つの列車としてブレーキや加速などの駆動制御を実施する。また、併合車101、被併合車001の車上制御装置111、112、011、012は、併合車101の後尾の車上無線局122および被併合車001の先頭の車上無線局021が地上制御装置から受信した制御情報を、列車内の各車上制御装置の間で有線通信を介して交換し、さらに併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置012の間の無線通信を介して交換することで、各車上制御装置111、112、011、012は、共通の制御情報により列車制御を行うことが可能となる。
【0023】
このように併合した場合に、被併合車001の先頭の車上無線局021と、併合車101の後尾の車上無線局122とが、地上装置との無線通信を行うことで、無線通信の冗長性を損なうこととはない。また、併合車101と被併合車001の連結部に面する併合車101の先頭の車上無線局121と被併合車001の後尾の車上無線局022は、地上装置との無線通信を行わないため、車上アンテナ131、032の正面に列車が存在しても無線通信が干渉されることは無く、車上アンテナ131、032を列車上部などに配置する必要はない。
【0024】
図3は,本列車制御システムを適用した場合の各車上装置の動作モードの例を示す。
【0025】
2つの列車が併合した場合、併合車101の先頭の車上制御装置111および被併合車001の後尾の車上制御装置012は、併合モードに遷移し、車上制御装置111、012間の無線通信を制御する。また、進行方向前方の被併合車001の先頭の車上制御装置011を主系、併合車101の後尾の車上制御装置112を従系とする。
【0026】
被併合車001の先頭の車上制御装置011で保有している車両識別情報と、併合車101の後尾の車上制御装置112で保有している制御モード(主系モード、または従系モード、または併合モード)や故障情報を含む制御装置管理情報を、被併合車001の車両内の各車両制御装置011,012間の通信と、併合車101の車両内の各車両制御装置111、112間の通信と、併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置012の間の無線通信を介して交換することで、車上制御装置の冗長化構成を確保する。通常は、主系である被併合車001の先頭の車上制御装置011で列車制御を行い、被併合車001の先頭の車上制御装置011に故障が発生したことを意図する故障情報を後尾の車上制御装置112が受信した場合は、併合車101の後尾の車上制御装置112が主系に切換り、列車制御を継続する。
【0027】
図4は,地上無線局と車上無線局の間の無線通信シーケンスの例を示す。また、
図5は、車上無線局の間の無線通信シーケンスの例を示している。
図4に示す地上無線局および車上無線局間の無線通信シーケンスにおいては、地上無線局からの周期的なポーリングに対して、車上無線局はアンサーを返信する。
【0028】
本無線通信シーケンスの例示においては、
図5に示す併合時の車上制御装置間の無線通信を行う各列車の車上無線局において、一方の車上無線局が地上無線局モードとなり、周期的なポーリングを行うことで、他方の車上無線局はアンサーを返信する。
【0029】
これにより、地上無線局との通信用の通信チャンネルから車上無線局同士の通信用の通信チャンネルへ無線通信チャンネル(周波数)を切り換えるだけで、一方の車上無線局は、地上無線局と同様の通信シーケンスで処理を行い、他方の車上無線局は通信シーケンスの変更を無くすことで無線通信処理の共通化を図ることが可能となる。
【0030】
本実施例では、2つの列車の先頭と後尾にそれぞれ車上アンテナを備えた列車が互いに連結する例を示したが、本発明は、列車の先頭と後尾に車上アンテナが配置されている列車に限らず、2つ以上の車上アンテナと車上無線局を搭載している列車であれば適用可能である。つまり、2つの列車が併合した場合に、列車内の2つ以上の車上アンテナの内、一方で地上無線局との通信を行い、他方で連結した他列車の車上無線局との通信を行うことにより、車両併合時に車両間を有線の伝送ケーブルで接続するという作業を実施する必要がなくなるという本発明の効果を達成できる。
【0031】
また、本発明の目的は、必ずしも併合時のケーブル接続作業を完全に無くすことではなく、列車間で複数のケーブルを接続する必要がある場合などに、少なくとも一部の情報を車両間で無線通信することで、併合時のケーブル接続作業を軽減することも含むものである。