特許第6051092号(P6051092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051092
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/42 20060101AFI20161219BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20161219BHJP
   B61L 23/14 20060101ALI20161219BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B60L15/42
   B61L3/12 Z
   B61L23/14 Z
   B60L15/40 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-84456(P2013-84456)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-207792(P2014-207792A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】梁 競
(72)【発明者】
【氏名】井上 智己
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−054537(JP,A)
【文献】 特開2006−240490(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065514(WO,A1)
【文献】 特開2009−060740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B61L 1/00−99/00
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載され、地上無線局と通信可能な車上無線局と、
前記地上無線局からの制御情報を前記車上無線を介して受信し、列車の走行を制御する車上制御装置と、をそれぞれ複数備える列車制御システムにおいて、
列車が併合されていない場合に、前記複数の車上無線局は、前記地上無線局との通信を実施し、
2つの列車が併合した場合に、前記複数の車上無線局の一方が、併合した他列車に搭載された前記複数の車上無線局の一方との無線通信に切換わり、
前記複数の車上無線局の他方が前記地上無線局との通信を実施することを特徴とした列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御システムにおいて、
2つの列車が併合した場合に、前記車上無線局間の無線通信を介して、併合した各列車の前記車上制御装置間で列車ID、列車長、ブレーキ特性の少なくともいずれかを含む列車識別情報の通信を行うことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の列車制御システムにおいて、
2つの列車が併合した場合に、一方の列車に搭載されて前記地上無線局との通信を実施する前記車上制御装置が主系として動作し、他方の列車に搭載されて前記地上無線局との通信を実施する前記車上制御装置が従系として動作し、
前記車上無線局間の無線通信を介して、前記車上制御装置の故障情報を含む制御装置管理情報の通信を行い、
前記従系の車上制御装置が前記車上無線局間の無線通信を介して、前記主系の車上制御装置の故障情報を受信した場合に、前記従系の車上制御装置は主系に切り替わることを特徴とする列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,所定の軌道上を走行する移動体、例えば鉄道、モノレールや新交通システムの信号保安システムにおける移動体間の無線通信に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道、モノレールにおける無線通信を用いた移動閉そく方式の信号保安システムにおいては,軌道沿線に地上無線機およびアンテナを配置し、列車に地上無線機と通信を行うための車上アンテナおよび車上無線機を配置し、車上装置は自列車の位置情報を前記無線通信を介して地上装置に送信し、地上装置は、受信した列車位置情報に基づき各列車の位置を管理し、各列車に対して、前記無線通信を介して、停止限界あるいは速度情報を含む制御情報を送信することで、車上装置は制限速度パターンに基づき、列車の速度制御を行う。
【0003】
通常、車上無線機およびアンテナは、列車の先頭と後尾に配置され、一方の無線機が故障あるいは外乱の影響により、通信できない場合、他方で通信を行う冗長性が取られる。
【0004】
一方、2つの列車が併合した場合、併合車と被併合車の連結部分に位置する双方の車上アンテナは、お互いの正面に位置する列車の車体が障害物となり、地上装置との無線通信に干渉するため、無線アンテナは正面の列車が干渉しないように列車の上部などに突き出した形で設置される場合もある。
【0005】
併合時の列車制御に関して、例えば特許文献1に、併合車との通信を停止して、被併合車のみと通信するような方式が提案されている。しかし、このような方式は、地上装置が併合車の列車IDを削除したり、連結された列車が分割した後、併合車の列車IDを復活したり、および一連の列車運行の管理を変更しなければならない。また、被併合車のみと通信することになり冗長性が確保されていないため、被併合車の車上制御装置および車上無線局、車上アンテナは、装置の故障や外乱により無線通信で不能となった場合には、列車制御を継続できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−240490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
併合時の列車制御を行う場合において、併合車、被併合車のそれぞれの車上制御装置で速度制御を行う場合、各列車の位置検知の誤差、あるいはブレーキ性能の差に伴う制限速度パターンの相違に伴い、ブレーキタイミングのずれが発生するなどの課題がある。
【0008】
そのため、併合車、被併合車の車上制御装置間で制御情報の送受信等の通信を行い、共通の制御を実施する必要があるが、その際、車上制御装置間で制御情報の送受信を行う必要がある。制御情報の送受信においては、列車の連結器部分に伝送ケーブルを設け、併合車、被併合車間で接続するものが一般的である。
【0009】
しかし、伝送ケーブルによる接続においては、連結器部分に伝送ケーブルの設置が必要となり、機構が複雑となる、また、列車併合時に人によるケーブルの接続、および確認が必要になり、列車併合に時間を要するなどの課題がある。
【0010】
この発明の目的は,併合時に、併合車と被併合車の間で伝送ケーブルを接続する作業に掛かる時間を省くまたは減少さえることにより設備コストの低減および運用性の向上を可能とする列車制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため,この発明による列車制御システムにおいては、通常の1列車での走行時に、地上装置との通信に使用する列車の先頭および後尾の列車アンテナおよび車上無線機の一方を、2列車が併合した場合、併合車と被併合車の車上制御装置間の通信に使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による列車制御システムによれば,連結器部分の伝送ケーブル等の設備を増加することなく,併合時の併合車と被併合車の車上制御装置間のデータ通信を実現することで設備コストが低減でき,人によるケーブルの接続および確認作業に掛かる時間を減少させることで運用性に優れた列車制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】列車制御システムの構成図である。
図2】列車併合時の通信状態を示す図である。
図3】車上制御装置の動作モードの例である。
図4】地上無線局と車上無線局の間の通信シーケンスを示す図である。
図5】併合時の車上無線局間の通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,添付した図面を参照して,この発明による列車制御システムの実施形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は,本発明である列車制御システムの構成図である。
【0016】
地上制御装置201は、列車001を含む制御範囲内の複数の列車から地上アンテナ221〜223及び地上無線局211〜213を介して受信した位置情報を管理し、その位置情報および信号機、転てつ器などの状態に基づき、各列車への制御情報を編集する装置である。地上制御装置201は、編集した制御情報を沿線に配置された地上無線局211〜213に伝送し、地上無線局211〜213は地上アンテナ221〜223を介して、制御情報を各列車001に送信する。制御情報は、車上に配置された車上アンテナ031、032、車上無線局021、022を介して、車上制御装置011、012に伝送される。
【0017】
一方、車上制御装置011、012は、自列車の走行位置を算出し、当該走行位置と地上制御装置201から受信した制御情報に基づき列車の速度・停止制御を行う装置である。車上制御装置011、012は、自列車001の走行位置を位置情報として編集し、編集した位置情報を車上無線局021、022に伝送する。車上無線局021、022は車上アンテナ031、032を介して、位置情報を地上装置に送信する。位置情報は、沿線上に配置された地上アンテナ221〜223、地上無線局211〜213を介して、地上制御装置201に伝送される。
【0018】
車上制御装置011、012および車上無線局021、022、車上アンテナ031、032は、装置の故障や外乱により無線通信で不能となった場合においても制御を継続するため、2重系の冗長構成をとる。車上アンテナ031、032および車上無線局021、022は、列車の先頭および後尾に配置され、1列車での運行時は、各先頭の車上アンテナ031と車上無線局021および後尾の車上アンテナ032と車上無線局022で、地上装置との無線通信を行う。
【0019】
図2は、2つの列車が併合した場合の通信状態を示す図である。2つの列車001、101が併合した場合、車上制御装置111、012はモード情報を取得することにより、列車001の後尾側と列車101の先頭側が併合したことを検知する。そして、併合車101の先頭車上無線局121および被併合車001の後尾車上無線局022は、併合したことを示すモード情報を車上制御装置111、012から受信することで、無線通信チャンネル(周波数)を地上装置との通信用の無線通信チャンネルとは異なる値である列車間通信用の無線通信チャンネル(周波数)切り換える。これにより、併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置間012での無線通信を可能とする。
【0020】
また、併合車101の後尾の車上無線局122および被併合車001の先頭の車上無線局021は、地上装置との無線通信を継続する。
【0021】
なお、モード情報は、地上装置からの制御情報に含まれる場合、あるいは運転台のスイッチ操作により提供される場合、あるいは車上制御装置で併合状態を自動検知することにより生成される場合が想定される。
【0022】
併合車101、被併合車001の車上制御装置111、112、011、012は、列車制御に必要となる列車識別情報(列車長、列車ID、ブレーキ特性など)を、併合車101の先頭の車上無線局121と被併合車001の後尾の車上無線局022を介した車上制御装置111、012間の無線通信により交換することで、併合車101及び被併合車001を1つの列車としてブレーキや加速などの駆動制御を実施する。また、併合車101、被併合車001の車上制御装置111、112、011、012は、併合車101の後尾の車上無線局122および被併合車001の先頭の車上無線局021が地上制御装置から受信した制御情報を、列車内の各車上制御装置の間で有線通信を介して交換し、さらに併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置012の間の無線通信を介して交換することで、各車上制御装置111、112、011、012は、共通の制御情報により列車制御を行うことが可能となる。
【0023】
このように併合した場合に、被併合車001の先頭の車上無線局021と、併合車101の後尾の車上無線局122とが、地上装置との無線通信を行うことで、無線通信の冗長性を損なうこととはない。また、併合車101と被併合車001の連結部に面する併合車101の先頭の車上無線局121と被併合車001の後尾の車上無線局022は、地上装置との無線通信を行わないため、車上アンテナ131、032の正面に列車が存在しても無線通信が干渉されることは無く、車上アンテナ131、032を列車上部などに配置する必要はない。
【0024】
図3は,本列車制御システムを適用した場合の各車上装置の動作モードの例を示す。
【0025】
2つの列車が併合した場合、併合車101の先頭の車上制御装置111および被併合車001の後尾の車上制御装置012は、併合モードに遷移し、車上制御装置111、012間の無線通信を制御する。また、進行方向前方の被併合車001の先頭の車上制御装置011を主系、併合車101の後尾の車上制御装置112を従系とする。
【0026】
被併合車001の先頭の車上制御装置011で保有している車両識別情報と、併合車101の後尾の車上制御装置112で保有している制御モード(主系モード、または従系モード、または併合モード)や故障情報を含む制御装置管理情報を、被併合車001の車両内の各車両制御装置011,012間の通信と、併合車101の車両内の各車両制御装置111、112間の通信と、併合車101の車上制御装置111と被併合車001の車上制御装置012の間の無線通信を介して交換することで、車上制御装置の冗長化構成を確保する。通常は、主系である被併合車001の先頭の車上制御装置011で列車制御を行い、被併合車001の先頭の車上制御装置011に故障が発生したことを意図する故障情報を後尾の車上制御装置112が受信した場合は、併合車101の後尾の車上制御装置112が主系に切換り、列車制御を継続する。
【0027】
図4は,地上無線局と車上無線局の間の無線通信シーケンスの例を示す。また、図5は、車上無線局の間の無線通信シーケンスの例を示している。図4に示す地上無線局および車上無線局間の無線通信シーケンスにおいては、地上無線局からの周期的なポーリングに対して、車上無線局はアンサーを返信する。
【0028】
本無線通信シーケンスの例示においては、図5に示す併合時の車上制御装置間の無線通信を行う各列車の車上無線局において、一方の車上無線局が地上無線局モードとなり、周期的なポーリングを行うことで、他方の車上無線局はアンサーを返信する。
【0029】
これにより、地上無線局との通信用の通信チャンネルから車上無線局同士の通信用の通信チャンネルへ無線通信チャンネル(周波数)を切り換えるだけで、一方の車上無線局は、地上無線局と同様の通信シーケンスで処理を行い、他方の車上無線局は通信シーケンスの変更を無くすことで無線通信処理の共通化を図ることが可能となる。
【0030】
本実施例では、2つの列車の先頭と後尾にそれぞれ車上アンテナを備えた列車が互いに連結する例を示したが、本発明は、列車の先頭と後尾に車上アンテナが配置されている列車に限らず、2つ以上の車上アンテナと車上無線局を搭載している列車であれば適用可能である。つまり、2つの列車が併合した場合に、列車内の2つ以上の車上アンテナの内、一方で地上無線局との通信を行い、他方で連結した他列車の車上無線局との通信を行うことにより、車両併合時に車両間を有線の伝送ケーブルで接続するという作業を実施する必要がなくなるという本発明の効果を達成できる。
【0031】
また、本発明の目的は、必ずしも併合時のケーブル接続作業を完全に無くすことではなく、列車間で複数のケーブルを接続する必要がある場合などに、少なくとも一部の情報を車両間で無線通信することで、併合時のケーブル接続作業を軽減することも含むものである。
【符号の説明】
【0032】
001,101 列車(移動体)
011,012,111,112 車上制御装置
021,022,121,122 車上無線局
031,032,131,132 車上アンテナ
201 地上制御装置
211〜213 地上無線局
221〜223 地上アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5