【実施例】
【0029】
[実施例1]
一実施態様に係る心臓弁リーフレットを、延伸フルオロポリマー膜とエラストマー材料とを含む複合材料から形成し、金属製バルーン拡張型ステントに接合した。その方法を以下に記載する。
【0030】
1)1つのePTFE層を折り曲げて合計で4つの層にすることにより、ツール用の厚い犠牲クッション・パッドまたは層を形成した。ePTFE層は、幅が約5cm(2インチ)、厚みが約0.5mm(0.02インチ)であり、圧縮性が大きいため、クッション・パッドを形成する。
図1及び
図2を参照すると、次に、クッション・パッド200を、全体を100で示したリーフレットツールの上で引き伸ばした(
図2)。リーフレットツール100は、リーフレット部102と、本体部104と、底端部106とを備えている。リーフレットツール100のリーフレット部102は、ほぼアーチ形凸状端部面103である。リーフレットツール100を矢印で示した方向に押し付けることにより(
図2A)、クッション・パッド200をリーフレットツール100のリーフレット部102の端面103の上で引き伸ばして滑らかにした。クッション・パッド200の周縁部202をリーフレットツール100の底端部106の上まで引き伸ばし、捩ってクッション・パッド200を所定の位置に保持した(
図2B)。
【0031】
2)
図2Bを参照すると、次に、前のステップにおいてクッション・パッド200で覆ったリーフレットツール100のリーフレット部102の上に剥離層204を引き伸ばした。一実施態様において、剥離層204は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)の層を外面または外側に沿って配置した実質的に非多孔性のePTFEから作製した。FEP層がクッション・パッド200の方を向くとともに、実質的に非多孔性のePTFEがクッション・パッド200の外側を向くように、すなわち、クッション・パッド200から離れるように、リーフレットツール100の上で剥離層204を引き伸ばした。剥離層204は、厚みが約25μmであり、十分な長さ及び幅を有するため、リーフレットツール100の底端部106の上まで引っ張ることができた。前のステップにおけるクッション・パッド200と同様、剥離層204の周縁部206をリーフレットツール100の底端部106に向かって引っ張った後、捩ってリーフレットツール100の底端部106に取り付け、剥離層204を所定の位置に保持した。次に、必要に応じ、剥離層204のFEP層を点状に溶融させ、ハンダごてを用いてクッション・パッド200に固定した。
【0032】
3)ステップ1)及びステップ2)の操作を繰り返し、それぞれ剥離層で覆われたクッション・パッドを有する3つの独立したリーフレットツールを用意した。
【0033】
4)フルオロエラストマーを吸収させたePTFE膜を含む複合材料から、一実施態様に係るリーフレット材料を形成した。円形マンドレルを、幅が約10cmの複合材料のシートで包み、チューブを形成した。複合材料は、3つの層、すなわち、2つのePTFE製外側層と、その間に挟まれたフルオロエラストマー製内側層とで構成した。ePTFE膜は、米国特許第7,306,729号に記載されている一般的な教示内容に従って製造した。フルオロエラストマーは、米国特許第7,462,675号に記載されている一般的な教示内容に従って製造した。付加的なフルオロエラストマーが適切である可能性もあり、それらは米国特許出願公開第2004/0024448号に記載されている。
【0034】
ePTFE膜は、以下の特性を有していた:厚み=約15μm;最大強度の方向のMTS=約400MPa;直交する方向のMTS強度=約250MPa;密度=約0.34g/cm
3;IBP=約660KPa。
【0035】
コポリマーは、実質的に、約65〜70重量%のペルフルオロメチルビニルエーテルと、それと相補的な約35〜30重量%のテトラフルオロエチレンからなる。
【0036】
ePTFEに対するフルオロエラストマーの重量%は約53%であった。
【0037】
多層複合体は、以下の特性を有していた:厚み約40μm;密度約1.2g/cm
3;破断させるための力/最大強度の方向の幅=約0.953kg/cm;最大強度の方向の引張強度=約23.5MPa(3,400psi);破断させるための力/直交する方向の幅=約0.87kg/cm;直交する方向の引張強度=約21.4MPa(3,100psi);約12.3MPaを超えるIPA泡立ち点;約1,800秒を超えるガーレー数;質量/面積=約14g/m
2。
【0038】
以下の試験法を利用してePTFE層及び多層複合体の特徴を調べた。
【0039】
厚みは、日本で製造されたミツトヨ社の挟みゲージAbsolute、直径12.7mm(0.50インチ)、モデルID−C112E、シリアル番号10299を用いて測定した。密度は、化学天秤MettlerPM400(ニュージャージー州、米国)を用いて重量/体積を計算することによって求めた。破断させる力及び引張強度は、平坦な向かい合った顎部を有するInstron社のモデル5500R(ノーウッド、マサチューセッツ州)を用い、負荷セル50kg、ゲージ長=25.4cm、クロスヘッドの速度=25mm/分(歪み速度=100%/分)で測定した。IPA泡立ち点は、圧力勾配の速度を1.38KPA/秒(0.2psi/秒)、試験面積を3.14cm
2にして、IPA泡立ち点試験機であるPressure Regulator Industrial Data Systems社のモデルLG−APOK(ソールト・レイク・シティ、ユタ州、米国)によって測定した。ガーレー数は、ガーレー試験機モデル4110(トロイ、ニューヨーク州、米国)を用い、124mmの水圧下で100cm
3の空気が6.45cm
2のサンプルを通過する時間(秒)として求めた。
【0040】
特に断わらない限り、これらの試験法を利用して以下の実施例のデータを得た。
【0041】
膜の強度の大きい方向がマンドレルの軸方向を向くように、直径約28mm(1.1インチ)のマンドレルを複合材料層で包んだ。それぞれの複合材料層は、2つのePTFE製外側層と、その間に配置されたフルオロエラストマー製内側層とを備える。一実施態様において、マンドレルのほぼ外周を螺旋状にせずに、4つの複合材料層で包んだ。複合材料はわずかに粘着性を有していたため、自己接着が可能であった。同様にマンドレルの表面において、マンドレルの長軸にほぼ沿って複合材料に長手方向に切り込みを入れ、約10cm(4インチ)×約90mm(3.5インチ)のシートを形成した。
【0042】
5)その結果得られたリーフレット材料(すなわちステップ4からの複合材料)のシートを切断し、剥離層204で覆われたクッション・パッド200を有するリーフレットツール100を包んだ。より詳細には、
図3A〜
図3Cに示されるように、リーフレット材料300を平坦な切断面の上に置いた。次に、図示されるように、クッション・パッド200及び剥離層204を有するリーフレットツール100をリーフレット材料300の上にほぼ揃えた。次に、カミソリの刃を用いてリーフレット材料300に4つのスリット302,304,306,308を形成した。一対のスリット302,304は、リーフレットツール100の一方の側から延びて、リーフレット材料300の一端300aで終わっている。他方の一対のスリット306,308は、リーフレットツール100の反対側から延びて、リーフレット材料300の反対側の端300bで終わっている。スリット302,304,306,308は、リーフレットツール100のリーフレット部102から離れていた。スリット302,304,306,308は、リーフレットツール100の下方で突起していなかった。個々のスリットの幅は実際の縮尺では示されていないことに注意されたい。リーフレット材料300のスリット302,304,306,308により、折り曲げ部310と、一対の帯状部312,314と、リーフレット材料315の過剰材料部とが形成された。次に、折り曲げ部310を全体として
図3の矢印316で示される方向に折り曲げ、これまでのステップにおいてクッション・パッド200及び剥離層204で覆われたリーフレットツール100の上で滑らかにした。
【0043】
6)次に、リーフレット材料315をリーフレット部102の上、特にリーフレットツール100の端面103の上に引き伸ばし、滑らかにした。ステップ4)及び5)を繰り返し、3つの独立なリーフレット組立体を形成した。次に、これら3つのリーフレット組立体402,404,406をまとめて固定し、
図4に示される三リーフレット組立体400を形成した。図示されるように、3つの独立なリーフレット組立体402,404,406は、それぞれが、三リーフレット組立体400の周辺部を超えてほぼ径方向に延びるリーフレット材料315の過剰材料部を有する。
【0044】
7)次に、三リーフレット組立体のリーフレットツールの端面と係合するキャビティを有するとともに、過剰なリーフレット領域を切除して3つのリーフレットが形成された基部ツールを用意した。
図5Aを参照すると、基部ツールは全体を500で示してあり、端部501と反対側の底端部503の間を長手方向に延びている。3つの凹状キャビティ502,504,506が基部ツール500の端部501に形成されている。それぞれの凹状キャビティ502,504,506は、3つのリーフレット組立体402,404,406のうちの1つの端面103にフィットするようにまたは収容されるように形成される。径方向に延びる3つの要素508,510,512が、基部ツール500のその端部から外側に延びている。それぞれの要素508,510,512は、隣り合ったペアの凹状キャビティ502,504,506の間に配置されている。
【0045】
次に、ステップ1及び2でリーフレットツールを用意したのと同様の方法で、圧縮パッド及び剥離層(図示せず)を有する基部ツール500を用意した。それぞれのリーフレットツールに関してステップ1及び2で説明したように、圧縮パッド及び剥離層を同様にして引き伸ばして基部ツール500に固定し、基部ツール組立体を形成した。
【0046】
8)
図5Bを参照すると、次に、基部ツール組立体(便宜上、基部ツール500として示し、クッション・パッド及び剥離層は示さない)と三リーフレット組立体(全体を400で示す)とをほぼ軸方向で揃えて各リーフレットツール100の端面(図示せず)を基部ツール(全体を500で示す)の端部501の凹状キャビティ(図示せず)のうちの1つの中に収容し、組み合わされたツール組立体を形成した。
【0047】
9)次に、金属製バルーン拡張型ステントを製造した。壁の厚みが約0.5mm(0.020インチ)で直径が約2.5cm(1.0インチ)のステンレス鋼製チューブ316をレーザーで切断した。このチューブにパターンを刻み、環状に切断したステント・フレームまたは支持構造を形成した。
図6aに示される平坦にした状態の平面図において、その全体は600で表される。支持構造600は、複数の小さな閉鎖セル602と、複数の大きな閉鎖セル604と、複数のリーフレット閉鎖セル606とを備えている。
図6Aでは、平坦にした状態の平面図であるという理由で、複数のリーフレット閉鎖セル606のうちの1つが開放セルのように見えることに注意されたい。セル602,604,606は、ほぼ列に沿って配置され、支持構造600の環状形を形成する。
【0048】
10)次に、レーザーで切断したフレームにポリマー材料を付着させた。最初に、直径が約2.5cm(1.0インチ)のマンドレル(図示せず)をePTFE膜の犠牲用圧縮層で重複がないようにして包んだ。ePTFE膜の犠牲用圧縮層は、厚みが約0.5mm(0.02インチ)、幅が約10cm(4インチ)であり、柔軟な犠牲用圧縮層を提供する柔軟性及び圧縮性を有していた。
【0049】
11)次に、実質的に非多孔性のePTFEフィルムからなる4つの層で、圧縮層膜の上からマンドレルを包んだ。実質的に非多孔性のePTFEフィルムは、厚みが約25μm(0.001インチ)、幅が約10cm(4インチ)であり、一方の側にFEP層を備えていた。実質的に非多孔性のePTFEフィルムを、FEPがマンドレルとは逆の方向を向くようにして包んだ。実質的に非多孔性のePTFEフィルムは、ステップ2)ですでに説明した剥離層の特性を有していた。
【0050】
12)溶融押し出し及び引き伸ばしを利用してタイプ1(ASTM D3368)FEPからなる薄いフィルムを構成した。ステップ10では圧縮層の膜で包み、ステップ11では実質的に非多孔性のePTFEフィルムからなる4つの層で包んだマンドレルに、このタイプ1(ASTM D3368)FEPからなる薄いフィルムをさらに10層追加した。タイプ1(ASTM D3368)FEPフィルムは、厚みが約40μm(0.0016インチ)、幅が約7.7cm(3インチ)であった。
【0051】
13)次に、この包まれた状態のマンドレルを、空気対流炉中、約320℃で約5分間にわたって熱処理した後、冷却した。
【0052】
14)次に、支持構造(
図6Aでは600で示す)を、包まれた状態で熱処理したマンドレルの上に配置した。次に、包まれた状態のマンドレルの上に配置してある支持構造を、(ステップ12で用意した)タイプ1(ASTM D3368)FEPフィルムからなる2つの追加層で包んだ。
【0053】
15)次に、包まれた状態のマンドレルとその上に支持されている支持構造とを、空気対流炉中、約320℃で約10分間にわたって熱処理した後、冷却することにより、ポリマーで被覆された支持構造を形成した。
【0054】
16)次に、ポリマーで被覆された支持構造を外科用メスで切り出し、切り出されたステント・フレームを形成した。平坦にした状態の平面図を示す
図6Bにおいて、このステント・フレームは、その全体が700で表される。より詳細には、1つのやり方では、支持構造の縁部から約2mm(0.08インチ)はみ出した状態でポリマーコーティングを切り出し、縁部の輪郭708をさまざまな形態にした。別のやり方では、ポリマーコーティングをすべてのセルに広げ、各セルの中にウェブを形成した。どちらの場合にも、支持構造600がポリマーコーティング702の中に完全に封止された状態で、切り出したステント・フレーム700が形成された。切り出したステント・フレーム700は、複数のリーフレット閉鎖セル606(
図6A)と数だけでなく、ほぼ形状が対応する複数のリーフレット開口部704を備えている。さらに、
図6Bに示されるように、小さな閉鎖セルのポリマーコーティング702のそれぞれにスリット706が形成されている。詳細には、各スリット706は直線状であり、環状筋構造600の長手方向の中心軸(図示せず)とほぼ平行である。
【0055】
17)次に、切り出したステント・フレームを、ステップ8からの組み合わされたツール組立体の上に配置した。リーフレットツールのリーフレット部(102)を、切り出したステント・フレームのリーフレット開口部(
図6Bでは704)に揃えた。3つの過剰なリーフレット材料領域(
図4では315)をステント・フレームのリーフレット開口部を通じて引き出した。3対の帯状部(
図3Aでは312,314)のそれぞれをスリット(
図6Bでは706)の1つを通じて引き出し、切り出したステント・フレームの周囲に巻いた。帯状部の各ペアは、互いに反対側の向きに巻いた。次に、ハンダごてを用い、6つの帯状部を、切り出したステント・フレームに熱融着させた。
【0056】
18)次に、組み合わされたツール組立体(ステップ8)と、巻いて熱融着させた帯状部を有する切り出したステント・フレームとを、回転チャック機構に取り付けた。次に、この回転チャック機構を調節して軽い長手方向の圧縮負荷をかけた。次に、ハンダごてを用い、過剰なリーフレット材料領域(
図4では315)を基部ツール(
図5では500)に付着させた。
【0057】
19)次に、ステップ18の組み合わされたツールを、(ステップ12からの)タイプ1(ASTM D3368)FEPフィルムからなる2つの追加層で包んだ。次に、複合体(ステップ4)からなる3つの追加層で上から包み、切り出したステント・フレームに付着させた。
【0058】
20)最終熱処理の準備として、圧縮テープ及び圧縮繊維からなる剥離層及び犠牲層を、ステップ19からの組立体の周辺部と長手方向の両方に付着させた。その後の熱処理の間、圧縮テープ/繊維が周辺部と長手方向の両方から組立体と接触してその組立体を圧縮する。圧縮テープからなる犠牲層をステップ19からの組立体の周囲に螺旋状に巻いた。この圧縮テープは、前にステップ10で記載したePTFEからなる犠牲圧縮層の特性を有していた。次に、ePTFE圧縮繊維を圧縮テープの上からきつく巻いた。外周に圧縮繊維を密な間隔で螺旋状に約100回巻いた。ePTFE圧縮繊維は、直径が約1mm(0.04インチ)であり、十分に加熱すると長手方向に収縮する構造であった。次に、固定された組立体を回転チャック機構から外した。次に、犠牲圧縮テープからなる3つの層を組立体のまわりに長手方向に巻いた。次に、長手方向の圧縮テープの上から圧縮繊維を約20回長手方向に巻いた。
【0059】
21)次に、ステップ20からの組立体を、空気対流炉中、約280℃で約90分間にわたって熱処理した後、室温の水で急冷した。この熱処理ステップにより、ステップ4に記載したリーフレット材料の製造に使用されるePTFE膜の細孔の中に熱可塑性フルオロエラストマーが流入しやすくなる。
【0060】
22)次に、犠牲用圧縮テープ/繊維を除去した。ポリマー材料を切除してリーフレットと基部ツールとを分離した。次に、ステントのポリマー層を切除し、リーフレットが付着したステント・フレームを取り出した。次に、リーフレットを切除し、
図8において全体が800で示される弁組立体が得られた。
【0061】
得られた弁組立体800は、一実施態様によれば、複数の細孔と実質的にすべての細孔の中に存在するエラストマーとを有する少なくとも1つのフルオロポリマー層を含む複合材料から形成されたリーフレット802を備えている。それぞれのリーフレット802は、血液が弁組立体を通って流れることを阻止する
図9Aに示される閉鎖状態と、血液が弁組立体を通って流れることが可能な
図9Bにされる開放状態との間を移動することができる。したがって、弁組立体800のリーフレット802は、閉鎖状態と開放状態との間を繰り返して移動して、一般にヒト患者の血流の方向を調節する。
【0062】
弁を横断する典型的な解剖学的圧力及び流れをリアル-タイム脈拍再現装置で測定して特定の弁組立体に関する初期データ・セット、すなわち“ゼロ疲労”データ・セットを生成させることにより、それぞれの弁組立体のリーフレットの性能を特徴づけた。次に、弁組立体を高速疲労試験機に移し、約2.07億回のサイクルに供した。約1億回からなる各ブロックが終了した後、弁をリアル−タイム脈拍再現装置に戻し、性能パラメータを再度測定した。
【0063】
流れ性能は以下の方法で特徴づけた。
【0064】
1)弁組立体をシリコーン製環状リング(支持構造)に嵌め込み、リアル-タイム脈拍再現装置で弁組立体を評価した。嵌め込みは、脈拍再現装置の製造者(ViVitro Laboratories社、ヴィクトリアBC、カナダ国)の指示に従って実施した。
【0065】
2)次に、嵌め込んだ弁組立体をリアル−タイム左心臓血流拍動再現システムの中に配置した。この血流拍動再現システムは、VSI ViVitro Systems社(ヴィクトリアBC、カナダ国)から供給された以下の部品を備えていた:スーパー・ポンプ、サーボ・パワー増幅器、部品番号SPA3891;スーパー・ポンプ・ヘッド、部品番号SPH5891B、シリンダの面積38.320cm
2;弁ステーション/固定部;波形発生装置、TriPack、部品番号TP2001;センサー・インターフェイス、部品番号VB2004;センサー増幅部品、部品番号AM9991;矩形波電磁流メータ(Carolina Medical Electronics社、イースト・ベンド、ノースカロライナ州、アメリカ合衆国)。
【0066】
一般に、血流拍動再現装置では固定変位ピストン・ポンプを利用して試験中の弁を通過する所望の流体流を発生させる。
【0067】
3)心臓血流拍動再現装置を調節し、所望の流れ、平均圧力、シミュレーションした脈拍数を生成させた。次に、試験中の弁を約5〜20分間にわたって繰り返して動作させた。
【0068】
4)試験期間中に圧力及び流れのデータを測定して回収した。データには、心室圧、大動脈圧、流速、ポンプのピストン位置が含まれている。
図10は、心臓血流拍動再現システムからの典型的なデータ出力のグラフである。
【0069】
5)弁を特徴づけるために、そして、疲労試験後の弁と比較するために用いたパラメータは、前進流の圧力がプラスである間に開放状態の弁を横断する圧力低下、オリフィスの有効面積、及び逆流率である。
【0070】
特徴づけの後、弁組立体を血流拍動再現システムから外し、高速疲労試験機の中に配置した。Dynatek(ガレーナ、ミズーリ州、アメリカ合衆国)から供給された6位置心臓弁耐久性試験機、部品番号M6を、Dynatek Dalta DC7000制御装置で駆動した。この高速疲労試験機は、約780回/分という典型的な繰り返し速度で流体に弁組立体を通過させる。試験中、チューニングしたストロボ光を用いて弁組立体を目視で調べることができる。
図11A及び
図11Bに示されるように、閉鎖状態の弁を横断する圧力低下もモニタすることができる。
図11A及び
図11Bには、高速疲労試験機が一定の圧力波形を生成し続けていたことを確認できる典型的なデータ・セットが示されている。
【0071】
弁組立体を連続的に反復動作させ、目視での変化と圧力低下の変化を定期的にモニタした。約2億回のサイクルの後、弁組立体を高速疲労試験機から外し、リアル−タイム脈拍再現装置に戻した。圧力及び流れのデータを回収し、回収してある元のデータと比較した。
【0072】
図12Aには、リアル−タイム心臓血流拍動再現システムからの典型的な測定データ出力を示すスクリーン・ショットが示される。ここには、心室圧、大動脈圧及び流速が示されている。特定の弁の初期データ、すなわち“ゼロ疲労”データは
図12Aに示される。特定の同じ弁で同じ測定を実施し、2.07億回のサイクル後にデータを回収した。その特定の弁での2.07億回のサイクル後のデータを
図12Bに示す。両方の測定値のセットは、5リットル/分の流速及び70回/分の速度で採取した。
図12A及び12Bを比較することにより、波形が実質的に同じであることが容易に理解される。これは、約2.07億回のサイクル後にリーフレットの性能が実質的に変化しなかったことを示している。サイクルが0回及び2.07億回の時点で測定した圧力低下、オリフィス有効面積(EOA)及び逆流率は、以下の表1に要約されている。
【0073】
【表1】
【0074】
一般に、本明細書に記載した実施態様に従って構成したリーフレットは、2.07億回のサイクル後に、破れ、穴、永続的な歪みなどの物理的または機械的な劣化を示さなかった。その結果として、2.07億回のサイクル後でさえ、リーフレットの閉鎖状態及び開放状態において観察できる変化または劣化もなかった。
【0075】
[実施例2]
堅固な金属製フレームに接合したポリマー製リーフレットを備える心臓弁を以下のようにして構成した。
【0076】
図14に示される形状のPTFEからマンドレル900を加工した。マンドレル900は、第1の端部902と、その反対側の第2の端部904を有しており、その両端部の間を長手方向に延びている。マンドレル900は、3つのほぼアーチ形凸状葉部912(そのうち2つが図示されている)を有する外面910を有する。それぞれの葉部は、一般に、完成した弁組立体(図示せず)のリーフレット(図示せず)を形成する。外面910には、弁フレーム(
図15では930)の表面にリーフレットを形成する前に弁フレームを凸状葉部912に対して位置決めするためのフレーム着座領域920も含まれている。
【0077】
外径が約25.4mm、壁の厚みが約0.5mmである、ある長さの316ステンレス鋼製チューブから、
図15に示される形状の弁フレーム930をレーザーで切断した。図示した実施態様において、弁フレーム930は、底端部932と、反対側の上端との間を軸方向に延びている。反対側の上端は、目的の完成後の弁組立体(図示せず)のリーフレットの数に対応する、軸方向に延びるほぼ尖塔形の複数の柱934によって規定される。図示した具体的な実施態様では、弁フレーム930に3つの柱934が形成されている。
【0078】
厚み約4μmのFEPフィルム(図示せず)からなる2つの層で弁フレーム930のまわりを包み、炉の中で約270℃にて約30分間にわたって焼成した後、冷却した。次に、得られた被覆された弁フレーム(見やすくするため、被覆されていない状態を930で示してある)を滑らせてマンドレル900の表面に取り付けた。そのとき、弁フレーム930とマンドレル900との間で相補的な凹凸が互いに嵌まるようにした。その状態が
図16に示される。
【0079】
次に、フルオロエラストマーを吸収させたePTFEからなる膜層を有するリーフレット材料を用意した。より詳細には、ePTFEからなる膜層は、米国第7,306,729号に記載されている一般的な教示内容に従って製造した。ePTFE膜は、付録に記載した方法に従って試験した。ePTFE膜は、単位面積あたりの質量が約0.57g/m
2、細孔率が約90.4%、厚みが約2.5μm、泡立ち点が約458KPa、マトリックス引張強度が長手方向で約339MPa、横断方向で約257MPaであった。この膜には、実施例1に記載したのと同じフルオロエラストマーを吸収させた。フルオロエラストマーは、Novec HFE7500(3M社、セント・ポール、ミネソタ州、米国)に約2.5%の濃度で溶かした。(ポリプロピレン製離型フィルムで支持しながら)メイヤー棒を用いてこの溶液でePTFE膜を被覆し、約145℃に設定した対流炉の中で約30秒間乾燥させた。2つの被覆ステップの後、得られたePTFE/フルオロエラストマー複合材料は、単位面積あたりの質量が約3.6g/m
2であった。
【0080】
次に、この複合材料(図示せず)を、組み立てたマンドレル900及び弁フレーム930のまわりに巻いた。一実施態様では、合計で20層のePTFE/フルオロエラストマー複合体を使用した。マンドレル900を超えて延びた過剰な複合材料があれば、捩ってマンドレル900の端部902,904に軽く押し付けた。
【0081】
次に、複合材料を巻いたマンドレルを圧力容器の中に入れ、マンドレル900の基部または第2の端部904にある通気ポート906(
図14)が鉛直に大気に通じる状態にした。通気ポート906は、第2の端部904からマンドレル900を通って軸方向に延び、ほぼ直交して延びる通気ポート908に通じている。通気ポート908は、マンドレル900の外面910を貫通して延びている。通気ポート906,908は、必要に応じてマンドレルに設けられた他の通気ポート(図示せず)とともに、成形プロセスの間に複合材料とマンドレルとの間に捕えられた空気を逃がすことができる。
【0082】
約690KPa(100psi)の窒素圧を圧力容器に印加し、ePTFE/フルオロエラストマー複合体をマンドレル900及び弁フレーム930に押し付けた。約3時間後に圧力容器内の温度が約300℃に達するまで、熱を加えた。加熱装置をオフにし、一晩かけて圧力容器を室温まで冷却した。このプロセスによってePTFE/フルオロエラストマー複合体の層が互いに接合されるとともに、弁フレーム930にFEPコーティングが接合された。圧力を解放し、マンドレルを圧力容器から取り出した。
【0083】
ePTFE/フルオロエラストマー複合体を外周に沿って2箇所で切除した。第1の箇所は、弁フレーム930の底端部932の位置であり、第2の箇所は、弁フレーム930の上端に近く、それぞれの柱934の中点付近でほぼ交差する円に沿った位置である。弁フレーム930と、切除された複合材料とからなる得られた弁組立体940を、マンドレルから分離し、マンドレルから滑らせて離した。
図17に示される成形された弁組立体940は、弁フレーム930と、切除された複合材料とから形成された複数のリーフレット950を備えている。一実施態様において、弁組立体940は、3つのリーフレットを備えていた。別の一実施態様において、弁組立体940のそれぞれのリーフレット950は、厚みがほぼ40μmであった。
【0084】
弁の開き具合を制御しやすくするため、それぞれの柱の近くにある隣り合ったリーフレットを互いに接合した。
図18に示されるように、隣り合ったリーフレット950a,950bで柱934の周囲を包み、互いに接合して継ぎ目954を形成した。継ぎ目954は、柱934から少なくとも約2mmまでの深さ956で延びていた。隣り合ったリーフレット950a,950bの間の接合をサポートするため、付着部材952を隣り合ったリーフレット950a,950bの内面に固定し、継ぎ目954が隣り合ったリーフレット950a及び950bにまたがるようにした。
図18に示されるように、付着部材952は、ほぼ長方形であった。但し、付着部材を別の形にしてもよいことに注意されたい。付着部材952は、リーフレット950の形成に用いたのと同じタイプの複合材料から形成した。付着部材952は、すでに説明したフルオロエラストマー溶液を用いて隣り合ったリーフレット950a,950bの内面に固定した。これらのステップを弁組立体の隣り合ったリーフレットの別のペアで繰り返した。
【0085】
この実施例のリーフレットの性能及び耐久性は、実施例1に記載したのと同じ方法で分析した。最初に、実施例1に記載したのと同じリアル−タイム脈拍再現装置で弁を横断する典型的な解剖学的圧力及び流れを測定して特定の弁組立体に関する初期データ・セット、すなわち“ゼロ疲労”データ・セットを生成させることにより、弁組立体を特徴づけた。次に、弁に対して実施例1のような加速試験を実施した。約0.79億回のサイクル後、弁を高速疲労試験機から外し、流体力学的性能を実施例1のようにして再び特徴づけた。弁は、最終的に約1.98億回のサイクル後に外した。約0.79億回のサイクル及び約1.98億回のサイクルの時点で測定した圧力低下、EOA及び逆流率は、以下の表2に要約されている。
【0086】
図13A及び
図13Bは、同様の弁に関する同様の結果を示している。
図13Aは、約0.79億回のサイクル後に心臓流脈拍再現システムで測定した出力データのグラフである。同様の弁で約1.98億回のサイクル後に同じ測定を実施した。そのグラフは
図13Bに示されている。どちらの測定値のセットも、約4リットル/分の流速及び約70サイクル/分の速度で取得した。
図13A及び
図13Bを比較することにより、波形が有意に似ていることに再度気づくはずである。これは、約1.98億回のサイクル後にリーフレットの性能が実質的に変化していないことを示している。サイクルが0回、約0.79億回及び約1.98億回の時点で測定した圧力低下、オリフィス有効面積(EOA)及び逆流率は、以下の表2に要約されている。これらのデータは、約1.98億回のサイクル後にリーフレットの性能が実質的に変化していないことを示している。
【0087】
【表2】
【0088】
[実施例3]
堅固な金属製フレームに接合したポリマー製リーフレットを有する心臓弁を以下の方法に従って構成した。
【0089】
外径が約25.4mm、壁の厚みが約0.5mmである、ある長さの316ステンレス鋼製チューブから、
図19に示される形状の弁支持構造またはフレーム960をレーザーで切断した。図示した実施態様において、フレーム960は、底端部962と、反対側の上端との間を軸方向に延びている。反対側の上端は、目的の完成後の弁組立体(図示せず)のリーフレットの数に対応する、軸方向に延びるほぼ尖塔形の複数の柱964によって規定される。放物線形の上縁968が、隣り合った柱964の間を延びている。図示した具体的な実施態様では、3つの柱964及び3つの上縁968が、フレーム960の上端を形成している。リーフレット材料と接触する可能性のあるフレームのコーナーは、回転式紙ヤスリ機及び手作業での研磨によって丸くした。フレームを水で洗浄した後、PT2000Pプラズマ処理システム(Tri-Star Technologies社、エル・セグンド、カリフォルニア州、米国)を用いてプラズマでクリーンにした。
【0090】
一実施態様では、クッション部材をフレームの少なくとも一部と、リーフレットの少なくとも一部との間に設置し、フレームとリーフレットとが直接接触することに付随する応力を最小にする。最初にePTFE膜にシリコーンMED−6215(NuSil社、カーピンテリア、カリフォルニア州、米国)を吸収させ、それを幅約25mmに広げ、巻いて実質的に丸い繊維にすることにより、ePTFE及びシリコーンの複合繊維を作製した。この繊維で使用するePTFEは、付録に記載した方法に従って試験した。ePTFE膜は、泡立ち点が約217KPa、厚みが約10μm、単位面積あたりの質量が約5.2g/m
2、細孔率が約78%、一方向のマトリックス引張強度が約96MPa、直交方向のマトリックス引張強度が約55MPaであった。この複合繊維966を、
図20に示されるように、フレーム960のそれぞれの柱964に巻いた。
【0091】
次に、光造形法を利用して
図21に示される形状のマンドレル970を形成した。マンドレル970は、第1の端部972と、その反対側の第2の端部974とを有しており、その両端部の間を長手方向に延びている。マンドレル970は、3つのほぼアーチ形凸状葉部982(そのうち2つが図示されている)を有する外面980を有する。それぞれの葉部は、一般に、完成した弁組立体(図示せず)のリーフレット(図示せず)を形成する。外面980には、弁フレーム(
図19では960)の表面にリーフレットを形成する前に弁フレームを凸状葉部982に対して位置決めするためのフレーム着座領域984も含まれている。
【0092】
次に、マンドレル970にePTFE成形剥離剤をスプレーで被覆した。この実施例では、前に記載したePTFE膜の4つの層でマンドレルを包んだ。MED−6215をePTFEの表面に塗布してePTFEの細孔の中を湿らせることにより、細孔を実質的に満たした。過剰なMED−6215を除去し、複合繊維966を巻いた柱964を備えるフレーム960を、
図22に示されるように、フレーム封止領域984に沿ってマンドレル970の上に配置した。シリコーンMED−4720(NuSil社、カーピンテリア、カリフォルニア州、米国)をフレーム960の上縁968及びフレーム960の柱964に沿って配置し、リーフレットの中に応力緩和部(図示せず)を設けた。ePTFEからなる8つの追加層でフレーム960及びマンドレル970を包んだ。追加のMED−6215をePTFEに塗布してePTFEの細孔の中を湿らせることにより、細孔を実質的に満たした。ePTFEからなる別の8つの層でフレーム960及びマンドレル970を包んだ。これらの層が、成形中に過剰なすべてのシリコーンを吸収する吸収部を形成する。これらの層は、シリコーンが硬化した後に除去した。
【0093】
1つの面がマンドレルの表面を反転させた形状と正確に一致するように成形したシリコーン・ゴム成形体(図示せず)を、三リーフレットを形成する突起部のそれぞれのためにあらかじめ製造した。これらの成形体を離型用PTFEとともにスプレーして被覆した後、マンドレルの合致する突起部に一致させた。ePTFE繊維(図示せず)をシリコーン成形体のまわりに約50回巻くことによってほぼ径方向の圧力を弁に加え、マンドレルに押し付けた。
【0094】
次に、この組立体を約100℃の炉の中に約1時間入れてシリコーンを硬化させた。冷却後、繊維とシリコーンの成形体を取り出し、吸収部であるePTFEの8つの層を剥がして廃棄した。得られた弁(図示せず)をマンドレルから滑らせて外した。ワイヤ・カッターを用いて柱を切除し、リーフレット材料の過剰な長さ及びフレームの基部位置の材料の過剰な長さをハサミで注意深く切除し、完成した弁組立体を形成した。その全体が990として
図23に示される。したがって、一実施態様では、弁組立体990として、フレームまたは支持構造960と;開放状態と閉鎖状態との間を移動して弁組立体990を通過する血流を調節することができる、支持構造960に支持された複数のリーフレット992と;支持構造960の少なくとも一部と各リーフレット992の少なくとも一部との間に位置し、リーフレットの支持構造への連結(coupling)及び近接(proximity)に起因してリーフレットにおける応力を最小にする、複合繊維966で巻まれた柱964とを備える弁組立体が形成された。別の一実施態様では、上記のように、複数の細孔と、実質的にすべての細孔に存在するエラストマーとを有する少なくとも1つのフルオロポリマー層を備える複合材料からクッション部材を形成する。
【0095】
図面に具体的に示したのとは異なる支持構造を使用してもよいことに注意されたい。さらに、クッション部材は、支持構造にリーフレットが接続されていること、および/またはリーフレットが支持構造の近くにあることに起因するリーフレットでの応力を最小にするため、必要に応じて支持構造に沿ったどの位置で使用してもよい。例えばクッション部材は、放物線形の上縁に沿って支持構造に接続することができる。
【0096】
クッション部材は、シートとして形成して支持構造に沿った所望の位置に巻いてもよいし、さまざまな断面形状とサイズの繊維から形成してもよいことにも注意されたい。
【0097】
クッション部材は、チューブとして形成して支持構造の端部の上を滑らせてもよいし、長手方向に切り込みを入れ、支持構造に沿った所望の位置のまわりに位置させてもよいことにも注意されたい。
【0098】
完成した弁組立体のリーフレットを測定し、各リーフレットの中心における平均の厚みが約120μmであることを確認した。
【0099】
次に、実施例1のようにして弁組立体の流れ特性を特徴づけ、加速試験を実施した。約0.5億回のサイクルからなる各ブロックが終了した後、弁組立体を高速疲労試験機から外し、実施例1のようにして流体力学的性能を再び特徴づけた。弁組立体は、最終的に約1.5億回のサイクルの時点で外したが、許容可能な性能を示し、穴の形成はなかった。
【0100】
[比較例A]
エラストマーを組み込まなかった点が除き、実施例1と同様にして、6つの弁を構成した。ePTFE材料は、実施例1に記載したものと同じだったが、フルオロエラストマー・コポリマーを吸収させず、その代わりに熱可塑性接着剤として機能するFEPコポリマーの不連続な層で被覆した。弁は実施例1のようにして構成した。それぞれのリーフレットは、膜からなる3つの層を備え、リーフレットの最終的な厚みの平均は約20μmになった。流体力学的特徴づけの後、弁を実施例1で説明したDynatek加速試験機に取り付けた。サイクルが約4千万回になるまでにリーフレットで縁部の剥離及び穴の形成が観察されたため、試験を停止した。
【0101】
[比較例B]
実施例1と同様にして2つの弁を構成したが、本発明のエラストマー部は組み込まなかった。使用した材料は、以下のような特性を有する薄いePTFE膜であった:単位面積あたりの質量が約2.43g/m
2、細孔率が約88%、IBPが約4.8KPa、厚みが約13.8μm、一方向のマトリックス引張強度が約662MPa、直交方向のマトリックス引張強度が約1.2MPa。このePTFE膜を付録に記載した方法に従って試験した。この膜を10層、向きを交互に変えて重ねて配置した後、実施例1に記載したツールの上に配置した。次に、そのツールを対流空気炉の中で約25分間にわたって約350℃に曝した後、取り出し、水浴の中で急冷した。次に、ツールの3つの部品をステント・フレームに挿入し、実施例1のようにFEPを有する弁組立体にリーフレットを接合した。
【0102】
上記のようにして、リアル−タイム心臓血流拍動再現システムを用いてそれぞれの弁で高速疲労試験を実施した。1つの弁では約0.3億回のサイクル後、別の弁では約4千万回のサイクル後、目視での劣化が観察され、測定可能な性能の低下が認められた。目視での劣化及び測定可能な性能の低下に加え、表3には、約4千万回のサイクル後に測定された圧力低下、オリフィス有効面積(EOA)及び逆流率が要約されている。
【0103】
【表3】
【0104】
当業者には、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、さまざまな改変やバリエーションが可能であることが明らかであろう。したがって本発明は、添付の請求項及びその等価物の範囲に入るのであれば、そのような改変やバリエーションを含むことが想定されている。
【0105】
付録
本明細書では、マトリックス引張強度は、特定の条件下における多孔性フルオロポリマーのサンプルの引張強度を意味する。サンプルの細孔率は、引張強度に、サンプルの密度に対するポリマーの密度の比を掛けることによって求まる。
【0106】
本明細書では、“膜”という用語は、多孔性フルオロポリマー製品を意味し、“複合体”は、ある材料を吸収した多孔性フルオロポリマーを意味し、“リーフレット”は、血流の方向を調節するための埋め込み可能な物品の1つの部品を意味する。本発明のリーフレットは、複合体からなる1つ以上の層である。
【0107】
本明細書では、“吸収する”という用語は、細孔の少なくとも一部に第2の材料を満たすのに用いる任意の方法を意味する。
【0108】
細孔が実質的にエラストマーで満たされた多孔性フルオロポリマー製リーフレットでは、所望の特性を測定するため、適切な溶媒を用いてエラストマーを溶解または分解した後、洗浄して除去する。
【0109】
本明細書では、“エラストマー”という用語は、ポリマー、複数のポリマーの混合物、1種類以上のポリマーと非ポリマー成分の混合物のうちで、元の長さの少なくとも1.3倍まで伸ばすことができ、解放時には迅速にほぼ元の長さに戻る能力を有するものと定義される。“エラストマー的”という用語は、ポリマーがエラストマーと同様の引張特性と復元特性を示すが、必ずしも引張および/または復元が同程度である必要はない特性を記述するのに用いる。
【0110】
本明細書では、“熱可塑性”という用語は、熱を加えたときに軟化し、室温まで冷却したときに元の状態に戻るポリマーと定義される。そのようなポリマーは、熱を加えること、または熱と圧力を加えることにより、ポリマーの元の状態を有意に劣化または変化させることなく、軟化させたり、流動させたり、新しい形を取らせたりすることができる。熱可塑性ポリマーとは異なり、“熱硬化性”ポリマーは、ここでは、硬化させたときに不可逆的に固化する、または“固まる”ポリマーと定義される。あるポリマーが本発明の意味で“熱可塑性”ポリマーであるかどうかの判断は、応力下のサンプルの温度をゆっくりと上昇させて変形を観察することによって可能である。そのポリマーの元の化学的状態を有意に劣化または変化させることなく、そのポリマーを軟化させたり、流動させたり、新しい形を取らせたりすることができるのであれば、そのポリマーは熱可塑性であると見なされる。材料をわずかしか入手できない場合には、判断するのに高温顕微鏡を使用する必要があろう。
【0111】
弁の品質の1つの指標は、オリフィスの有効面積(EOA)であり、それは、EOA(cm
2)=Q
rms/(51.6×(ΔP)
1/2)から計算することができる。ただし、Q
rmsは、収縮期/拡張期の流速の二乗平均であり、ΔPは、収縮期/拡張期の圧力低下(mmHg)である。
【0112】
本明細書では、単位質量あたりの表面積(単位はm
2/g)は、ブルナウアー−エメット−テラー(BET)法を利用してCoulter SA3100気体吸着分析器(Beckman Coulter社、フラートン、カリフォルニア州、米国)で測定した。測定を実施するため、延伸フルオロポリマー膜の中心部からサンプルを切り出し、小さなサンプル・チューブの中に配置した。サンプルの質量は約0.1〜0.2gであった。チューブをBeckman Coulter社(フラートン、カリフォルニア州、米国)のCoulter SA−Prep表面領域脱ガス装置(モデルSA-Prep、P/n 5102014)の中に配置し、約110℃にて約2時間にわたってヘリウムでパージした。次にサンプルをSA−Prep脱ガス装置から取り出し、計量した。次に、サンプル・チューブをSA3100気体吸着分析器の中に配置し、装置の使用説明書に従ってBET表面積分析を実施した。そのとき、自由空間を計算するためのヘリウムと、吸着可能なガスとしての窒素とを用いた。
【0113】
泡立ち点と平均流細孔サイズは、Porous Materials社(イサカ、ニューヨーク州、米国)の毛細流ポロメータ(モデルCFP 1500AEXL)を使用し、ASTM F31 6−03の一般的な教示内容に従って測定した。膜のサンプルをサンプル室の中に配置し、表面張力が約20.1ダイン/cmのSilWickシリコーン流体(Porous Materials社から入手できる)で湿らせた。サンプル室の底部クランプは、穴の直径が約2.54cmであった。Capwinソフトウエアのバージョン7.73.012を使用し、以下のパラメータを以下の表に記載したように設定した。
【0114】
【表4】
【0115】
膜厚は、KaferFZ1000/30厚み挟みゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH社、ヴィリンゲン-シュヴェンニンゲン、ドイツ国)の2枚のプレートの間に膜を挟んで測定した。3回の測定の平均値を記録した。
【0116】
細孔の中にエラストマーが存在していることは、当業者に公知のいくつかの方法(例えば表面および/または断面の視覚的分析や、他の分析法)で明らかにすることができる。これらの分析は、リーフレットからエラストマーを除去する前と後に実施できる。
【0117】
膜のサンプルをダイスで切断して約2.54cm×約15.24cmの長方形の切片を形成し、重量(Mettler-Toledo社の化学天秤のモデルAG204を使用)及び厚み(Kafer FZ1000/30挟みゲージを使用)を測定した。これらのデータを用いて密度を以下の式:ρ=m/w×l×tによって計算した(ただしρ=密度(g/cm
3):m=質量(g)、w=幅(cm)、l=長さ(cm)、t=厚み(cm))。3回の測定の平均値を記録した。引っ張り破断負荷は、面が平坦な握りと0.445kNの負荷セルを備えるINSTRON122引っ張り試験機を用いて測定した。ゲージの長さは約5.08cm、クロス−ヘッドの速度は約50.8cm/分であった。サンプルのサイズは約2.54cm×約15.24cmであった。長手方向の測定では、サンプルの長いほうのサイズを最大強度の方向に向けた。直交MTS測定では、サンプルの長いほうのサイズを最大強度に垂直な方向に向けた。Mettler−Toledo社の化学天秤のモデルAG204を使用して各サンプルを計量した後、KaferFZ1000/30挟みゲージを使用して厚みを測定した。次にサンプルを引っ張り試験機で個別に試験した。各サンプルの3つの異なる区画を測定した。3回の最大負荷(すなわちピークの力)測定の平均値を記録した。長手方向及び横断方向の最大引張強度(MTS)を、以下の式:MTS=(最大負荷/断面の面積)×(PTFEのバルク密度)/(多孔性膜の密度)を用いて計算した(ただし、PTFEのバルク密度は約2.2g/cm
3とした)。曲げ剛性は、ASTM D790に記載されている一般的な手続きに従って測定した。大きな試験サンプルが入手できるのでなければ、試験サンプルは小さなものを使用せねばならなかった。試験条件は以下の通りであった。互いに約5.08mm離して水平に配置した尖った柱を使用し、リーフレットサンプルを三点屈曲試験装置で測定した。直径が約1.34mmで重さが約80mgの鋼鉄製の棒を使用してy(下)方向に反らせた。そのときサンプルをx方向に拘束しなかった。この鋼鉄製の棒をゆっくりと膜サンプルの中心点に載せた。約5分間待った後、y方向の反り具合を測定した。上記のように支持した弾性梁の反り具合は、d=F×L
3/48×EIで表わすことができる。ただし、F(単位はニュートン)は、梁の長さL(単位はm)の中心に加える負荷であり、したがってLは懸隔用柱の間の距離の半分であり、EIは曲げ剛性(単位はNm)である。この関係式からEIの値を計算することができる。長方形の断面に関しては、I=t
3×w/12である。ただし、I=断面二次モーメント、t=サンプルの厚み(単位はメートル)、w=サンプルの幅(単位はメートル)である。この関係式を用い、曲げ変形の測定範囲全体での平均弾性率を計算することができる。