特許第6051204号(P6051204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051204
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】穿刺装置及び薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20161219BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61M5/158 500Z
   A61M25/06 500
   A61M25/06 512
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-506038(P2014-506038)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2013001870
(87)【国際公開番号】WO2013140790
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-65271(P2012-65271)
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(72)【発明者】
【氏名】内山 城司
(72)【発明者】
【氏名】河野 弘昌
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510499(JP,A)
【文献】 特開2010−46204(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0217105(US,A1)
【文献】 実開昭62−9448(JP,U)
【文献】 特開2011−147551(JP,A)
【文献】 特表2010−501281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の外針と当該外針内に挿入される樹脂製の内針との二重構造でなる穿刺針と、
前記穿刺針を収納する筐体部と、
前記筐体部内に設けられ、前記外針内に前記内針が挿入されている状態の前記穿刺針を前記筐体部から突出させて使用者の体内に穿刺した後、当該穿刺針の内針は体内に留置させたまま、当該穿刺針の外針のみを前記筐体部内に引き戻す穿刺機構と
を有し、
さらに前記穿刺機構は、
前記筐体部に対して押込可能な押込部と、
前記筐体部内をスライド可能で、前記外針を有する外針スライド部と、
前記押込部と前記外針スライド部とを固定すると共に、前記外針内に挿入された内針を前記外針スライド部に固定するストッパと、
一端が前記筐体部に固定されると共に他端が前記外針スライド部に固定される弾性部材と、
前記ストッパによる前記押込部と前記外針スライド部との固定、及び前記外針スライド部と前記内針との固定を解除する固定解除部と
を有し、
前記ストッパにより前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針とを固定した状態で前記押込部が押し込まれると、前記外針スライド部がスライドすることで、前記内針が挿入されている外針が前記筐体部から突出して使用者の体内に穿刺され、
さらに前記外針スライド部が所定位置までスライドすると、前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針との固定が解除され、前記弾性部材により前記外針スライド部が他方向にスライドすることで、前記内針を体内に留置させたまま、前記外針のみを前記筐体部内に引き戻す
ことを特徴とする穿刺装置。
【請求項2】
前記固定解除部が、前記ストッパと当接することで前記ストッパによる前記押込部と前記外針スライド部との固定、及び前記外針スライド部と前記内針との固定を解除する
ことを特徴とする請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項3】
前記外針スライド部が所定位置までスライドすると、前記ストッパが前記固定解除部に当接して、前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針との固定が解除され、前記弾性部材により前記外針スライド部が他方向にスライドすることで、前記内針を体内に留置させたまま、前記外針のみを前記筐体部内に引き戻す
ことを特徴とする請求項2に記載の穿刺装置。
【請求項4】
前記押込部が押し込まれると、当該押込部の先端部が前記筐体部の蓋となることにより、前記筐体部を密閉して防水構造となる
請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項5】
前記穿刺針の内針の先端に取り付けられたセンサと、
前記内針を介して前記センサと接続され、当該センサからの生体情報を取得する制御部と
を有し、
前記穿刺機構は、
前記外針内に前記センサが取り付けられた内針が挿入されている状態の前記穿刺針を前記筐体部から突出させて使用者の体内に穿刺した後、当該穿刺針の外針のみを前記筐体部内に引き戻すことで、前記センサを体内に留置する
請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項6】
金属製の外針と当該外針内に挿入される樹脂製の内針との二重構造でなる穿刺針と、
前記穿刺針を収納する筐体部と、
前記筐体部内に設けられ、前記外針内に前記内針が挿入されている状態の前記穿刺針を前記筐体部から突出させて使用者の体内に穿刺した後、当該穿刺針の内針は体内に留置させたまま、当該穿刺針の外針のみを前記筐体部内に引き戻す穿刺機構と
薬液を貯蔵する薬液貯蔵部と、
前記薬液貯蔵部に貯蔵された薬液を体内に留置させた前記内針を介して体内に送出する送出部と
を有し、
さらに前記穿刺機構は、
前記筐体部に対して押込可能な押込部と、
前記筐体部内をスライド可能で、前記外針を有する外針スライド部と、
前記押込部と前記外針スライド部とを固定すると共に、前記外針内に挿入された内針を前記外針スライド部に固定するストッパと、
一端が前記筐体部に固定されると共に他端が前記外針スライド部に固定される弾性部材と、
前記ストッパによる前記押込部と前記外針スライド部との固定、及び前記外針スライド部と前記内針との固定を解除する固定解除部と
を有し、
前記ストッパにより前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針とを固定した状態で前記押込部が押し込まれると、前記外針スライド部がスライドすることで、前記内針が挿入されている外針が前記筐体部から突出して使用者の体内に穿刺され、
さらに前記外針スライド部が所定位置までスライドすると、前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針との固定が解除され、前記弾性部材により前記外針スライド部が他方向にスライドすることで、前記内針を体内に留置させたまま、前記外針のみを前記筐体部内に引き戻す
ことを特徴とする薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺装置及び薬液投与装置に関し、例えばインスリンを体内に投与する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液(インスリン)を投与する装置として、使用者の皮膚に付着させて用いられる携帯型の装置であって、外筒内に充填された薬液をプランジャーを介して押し出すことにより体内に投与する、所謂シリンジポンプ型の薬液投与装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また薬液投与装置では、使用者の体内に穿刺した穿刺針を介して薬液を投与するようになっており、この穿刺針の構造として、従来、金属製の内針とプラスチック製の外針とでなる二重構造の穿刺針が提案されている(例えば特許文献2参照)
【0004】
この二重構造でなる穿刺針は、金属製の内針をプラスチック製の外針の先端から突出させた状態で使用者の体内に穿刺された後、金属製の内針がプラスチック製の外針から抜き取られ、外針のみを使用者の体内に留置させた状態で、この外針を介して薬液を投与するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−501283号公報
【特許文献2】特開2002−58747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の二重構造の穿刺針では、外針を使用者の体内に留置する留置針として機能させるようになっている。
【0007】
この留置針の径を小さくすれば、使用者の痛みを軽減することができるが、従来の穿刺針の場合、留置針としての外針の内側に金属製の内針を挿入する構造のため、留置針としての外針の内径を金属製の内針の外径より大きくしなければならず、留置針の径を小さくすることが難しかった。
【0008】
ここで、二重構造の穿刺針において、留置針の径を小さくできれば、使用者への負担を一段と軽減できるものと考えられる。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、使用者への負担を一段と軽減できる穿刺装置及び薬液投与装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の穿刺装置においては、金属製の外針と当該外針内に挿入される樹脂製の内針との二重構造でなる穿刺針と、前記穿刺針を収納する筐体部と、前記筐体部内に設けられ、前記外針内に前記内針が挿入されている状態の前記穿刺針を前記筐体部から突出させて使用者の体内に穿刺した後、当該穿刺針の内針は体内に留置させたまま、当該穿刺針の外針のみを前記筐体部内に引き戻す穿刺機構とを有し、さらに前記穿刺機構は、前記筐体部に対して押込可能な押込部と、前記筐体部内をスライド可能で、前記外針を有する外針スライド部と、前記押込部と前記外針スライド部とを固定すると共に、前記外針内に挿入された内針を前記外針スライド部に固定するストッパと、一端が前記筐体部に固定されると共に他端が前記外針スライド部に固定される弾性部材と、前記ストッパによる前記押込部と前記外針スライド部との固定、及び前記外針スライド部と前記内針との固定を解除する固定解除部とを有し、前記ストッパにより前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針とを固定した状態で前記押込部が押し込まれると、前記外針スライド部がスライドすることで、前記内針が挿入されている外針が前記筐体部から突出して使用者の体内に穿刺され、さらに前記外針スライド部が所定位置までスライドすると、前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針との固定が解除され、前記弾性部材により前記外針スライド部が他方向にスライドすることで、前記内針を体内に留置させたまま、前記外針のみを前記筐体部内に引き戻すようにした。
【0011】
また本発明の薬液投与装置においては、金属製の外針と当該外針内に挿入される樹脂製の内針との二重構造でなる穿刺針と、前記穿刺針を収納する筐体部と、前記筐体部内に設けられ、前記外針内に前記内針が挿入されている状態の前記穿刺針を前記筐体部から突出させて使用者の体内に穿刺した後、当該穿刺針の内針は体内に留置させたまま、当該穿刺針の外針のみを前記筐体部内に引き戻す穿刺機構と、薬液を貯蔵する薬液貯蔵部と、前記薬液貯蔵部に貯蔵された薬液を体内に留置させた前記内針を介して体内に送出する送出部とを有し、さらに前記穿刺機構は、前記筐体部に対して押込可能な押込部と、前記筐体部内をスライド可能で、前記外針を有する外針スライド部と、前記押込部と前記外針スライド部とを固定すると共に、前記外針内に挿入された内針を前記外針スライド部に固定するストッパと、一端が前記筐体部に固定されると共に他端が前記外針スライド部に固定される弾性部材と、前記ストッパによる前記押込部と前記外針スライド部との固定、及び前記外針スライド部と前記内針との固定を解除する固定解除部とを有し、前記ストッパにより前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針とを固定した状態で前記押込部が押し込まれると、前記外針スライド部がスライドすることで、前記内針が挿入されている外針が前記筐体部から突出して使用者の体内に穿刺され、さらに前記外針スライド部が所定位置までスライドすると、前記押込部と前記外針スライド部、及び前記外針スライド部と前記内針との固定が解除され、前記弾性部材により前記外針スライド部が他方向にスライドすることで、前記内針を体内に留置させたまま、前記外針のみを前記筐体部内に引き戻すようにした。
【0012】
このように、外針と内針の二重構造でなる穿刺針の内針を留置針とすることで、外針を留置針とする従来の穿刺針と比して、留置針の径を容易に小さくすることができ、また押込部に対する押し込み操作のみで、穿刺針の穿刺から外針の引き戻しまでを1度に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外針と内針の二重構造でなる穿刺針の内針を留置針とすることで、外針を留置針とする従来の穿刺針と比して、留置針の径を容易に小さくすることができ、また押込部に対する押し込み操作のみで、穿刺針の穿刺から外針の引き戻しまでを1度に行うことができる。かくして、使用者の負担を一段と軽減できる穿刺装置及び薬液投与装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】薬液投与装置の構成を示す略線図である。
図2】薬液投与装置の分解斜視図である。
図3】薬液貯蔵部の構成を示す略線図である。
図4】送出部の構成を示す略線図である。
図5】押切位置に移動されたピストンの様子を示す略線図である。
図6】駆動部の構成を示す略線図である。
図7】駆動部の構成を示す略線図である。
図8】フィルムを含む送出部及び駆動部の構成を示す略線図である。
図9】穿刺機構の構成を示す略線図である。
図10】穿刺機構の構成((A)左側面、(B)正面、(C)右側面、(D)背面、(E)上面、(F)下面)を示す略線図である。
図11】穿刺機構の構成を示す略線図である。
図12】中心部の構成を示す略線図である。
図13】ストッパレバーが閉じた状態の中心部を示す略線図である。
図14】内針固定・解除部とストッパレバーによる内針の固定(A)及び解除(B)の様子を示す略線図である。
図15】穿刺機構の動作の説明にともなう略線図である。
図16】コイルバネによる外針の引き戻しの説明にともなう略線図である。
図17】穿刺針(外針+内針)の構成を示す略線図である。
図18】薬液投与装置の電気的構成を示す略線図である。
図19】他の実施の形態におけるセンサ装置の構成を示す略線図である。
図20】他の実施の形態における穿刺針の構成を示す略線図である。
図21】他の実施の形態における穿刺機構の構成を示す略線図である。
図22】他の実施の形態における中心部の構成を示す略線図である。
図23】他の実施の形態における内針の固定(A)及び解除(B)の様子を示す略線図である。
図24】他の実施の形態における穿刺機構の動作の説明にともなう略線図である。
図25】他の実施の形態における穿刺機構の構成を示す略線図である。
図26】他の実施の形態における中心部の構成を示す略線図である。
図27】他の実施の形態における穿刺機構の動作の説明にともなう略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0016】
〔1.薬液投与装置の全体構成〕
図1及び図2に示すように、薬液投与装置1は、使用者の皮膚に貼り付けることにより保持されて使用される携帯型の装置であり、上側が開口し内部に空間が設けられた下筐体部2と該下筐体部2の開口に嵌合する上筐体部3により扁平な略直方体形状に形成される。
【0017】
薬液投与装置1の大きさは、使用者の皮膚に貼り付けることができる程度にまで小型化されていればよいが、例えば横32mm、縦44mm、高さ11mm略直方体形状が挙げられる。
【0018】
下筐体部2には、両面テープ等でなる貼付部4が底面2Aに設けられる。薬液投与装置1は、貼付部4が使用者の皮膚に貼り付けられることにより該使用者に保持される。
【0019】
薬液投与装置1は、下筐体部2の底面2Aの前端に、内部に充填されたインスリンを使用者の体内へ投与するために該使用者の体内に穿刺される穿刺針(図示せず)を下筐体部2と上筐体部3とで形成される空間内から穿刺機構5により突出させるための穿刺針孔2Bが設けられる。尚、この穿刺針は、詳しくは後述するが、金属製の外針と、樹脂製の内針とでなる二重構造となっている。
【0020】
また薬液投与装置1は、上筐体部3の前端に、押込操作が可能な押込部5Aが設けられている。この押込部5Aは図2に示す穿刺機構5の一部であり、薬液投与装置1は、この押込部5Aが使用者に押し込まれることにより穿刺機構5が動作して、穿刺針孔2Bから穿刺針を突出させて穿刺針を使用者の体内に穿刺するようになっている。
【0021】
さらに薬液投与装置1は、下筐体部2と上筐体部3とで形成される空間に薬液貯蔵部6、流路部7、送出部8、駆動部9、基板部10等が設けられる。
【0022】
薬液貯蔵部6は、詳しくは後述するように、円筒形状をしたシリンジ外筒11内に、薬液が外部から充填される。
【0023】
流路部7は、吸入管7A、送出管7B、送出部8に形成される流路22B、23A、24A及び穿刺機構5の穿刺針の内針を含み、薬液貯蔵部6から体内までの薬液が流れる流路を形成する。吸入管7Aは、薬液貯蔵部6と送出部8に形成される流路23Aとを連通させる。送出管7Bは、送出部8に形成される流路24Aと穿刺機構5の穿刺針の内針とを連通させる。
【0024】
送出部8は、詳しくは後述するように、シリンダ部22(図4)の内部空間22A内をピストン21が摺動することにより、薬液貯蔵部6に貯蔵された薬液を流路部7を介して体内に送出する。
【0025】
駆動部9は、CPU91(図18)の制御に基づいてピストン21を駆動し、該ピストン21をシリンダ部22の内部空間22A内で摺動させる。
【0026】
基板部10は、電源電力を供給する電源部94(図18)やCPU91等の回路などが配される。
【0027】
〔2.薬液貯蔵部の構成〕
薬液貯蔵部6は、図3に示すように、円筒形状に形成される外筒11に、開口した端側からピストン12が挿入される。薬液貯蔵部6は、外筒11とピストン12とにより形成される薬液貯蔵空間13に薬液を貯蔵する。
【0028】
外筒11は、円筒形状の本体部11Aの先端に、該先端を塞ぐ先端部11Bが設けられ、本体部11Aと先端部11Bとが一体成形される。
【0029】
先端部11Bは、本体部11Aの軸に沿った方向(以下、これを筒軸方向とも呼ぶ)に対して直交する方向に沿って薬液貯蔵空間13側に接する面(以下、これを内接面とも呼ぶ)11Cの中央に、外部まで貫通された開口を有する中空の突出部11Dが突設される。
【0030】
また先端部11Bは、突出部11Dと連通して該突出部11Dとは反対の方向に外部ポート11Eが突設され、該外部ポート11Eに吸入管7Aが接続される。
【0031】
本体部11Aは、薬液貯蔵空間13と接する内周面における内接面11Cから突出部11Dの長さよりも長い部分が内側に突出した規制部11Fが設けられる。すなわち本体部11Aは、規制部11Fの内径が本体部11Aにおける規制部11F以外の部分の内径より短くなるように形成される。
【0032】
ピストン12は、先端部11Bとは反対側の末端から外筒11に挿入され、本体部11Aの内側面に周方向に沿って当接し、該本体部11Aの筒軸方向に沿って液密に摺動可能に配される。ピストン12は、直径が規制部11Fの内径よりも大きく形成される。
【0033】
薬液貯蔵部6は、ピストン12が最も先端部11B側に位置して規制部11Fに当接した状態で、所定の注入口(図示せず)からバイアルに貯蔵された薬液が薬液貯蔵空間13に注入される。このとき薬液貯蔵部6では、外筒11の内接面11Cとピストン12との間に規制部11Fにより若干の空間が開けられる。
【0034】
薬液貯蔵部6は、薬液が注入されるに連れてピストン12が末端側に移動され、所定量(例えば2ml)だけ薬液が注入される。このとき薬液貯蔵空間13には、予め存在していた気泡がそのまま残ることになる。
【0035】
薬液貯蔵部6は、送出部8により薬液が体内に送出される際、該送出部8による薬液吸引圧力によりピストン12が先端部11B側に移動しながら突出部11D及び外部ポート11Eを介して吸入管7Aに薬液を送出させる。そして薬液貯蔵部6は、ピストン12が突出部11Dに当接するまで薬液を送出させる。
【0036】
ところで薬液貯蔵部6では、薬液貯蔵空間13内に気泡が存在している場合、該気泡の殆どは壁面に付着される。従って薬液貯蔵部6では、ピストン12が移動して薬液が送出される際に、本体部11Aの側面に付着した気泡がピストン12により押されながら移動し、ピストン12が規制部11Fに当接した際に、該ピストン12と内接面11Cとの間に設けられた空間に気泡が溜まるので、外部に気泡が送出されることを防止できる。
【0037】
また薬液貯蔵部6は、突出部11Dが内接面11Cに対して薬液貯蔵空間13側に突設して設けられているので、薬液が送出される際に本体部11Aの側面に付着した気泡が突出部11Dの開口を通して外部に送出されることを防止できる。
【0038】
〔3.送出部の構成〕
送出部8は、図4(A)に示すように、ピストン21、シリンダ部22、蓋部23、24、一方向弁25、26、Xリング27、Xリング固定部28及び固定部材29を含む構成とされる。
【0039】
ピストン21は、例えば直径が1.03mmでなり、駆動部9により駆動されてシリンダ部22に形成された中空の円柱形状に形成された内部空間22A内で所定のストロークで摺動する。ピストン21の材質としては、例えば、ステンレス鋼、銅合金、アルミ合金、チタン材、ポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0040】
シリンダ部22は、一端からピストン21が挿入されて摺動する内部空間22Aが設けられる。またシリンダ部22は、内部空間22Aの他端に接して該内部空間22Aと直交した流路22Bがシリンダ部22の対向する側面間を貫通するようにして設けられる。
【0041】
シリンダ部22は、内部空間22Aにおけるピストン21が挿入される一端に該ピストン21との間で薬液の漏洩を防止するXリング27及び該Xリング27を固定するXリング固定部28が設けられる。
【0042】
Xリング27は、シリンダ部22における内部空間22Aが設けられた面側からシリンダ部22内に挿入され、Xリング固定部28により押え付けられて固定される。Xリング固定部28は、一部がシリンダ部22内に嵌合され、残りの部分が外部に露出するようにしてXリング27を固定する。
【0043】
流路22Bは、図4(B)に示すように、横幅が内部空間22Aの径と同じ長さで、高さが横幅よりも短い長方形の断面に形成される。内部空間22A及び流路22Bの表面には親水性加工が施される。親水性加工として、例えばプラズマ処理や界面活性剤(ステアリン酸ナトリウム)の塗布等が適応される。なお、ピストン21の先端面(上面)にも親水性加工が施されていてもよい。
【0044】
シリンダ部22では、内部空間22Aの径と流路22Bの横幅が同一長さに形成され、内部空間22Aの軸の中心位置と流路22Bの横幅の中心位置が一致するように形成される。
【0045】
シリンダ部22は、流路22Bが形成された側面にそれぞれ蓋部23及び24が固定部材29を介して接続される。蓋部23及び24は、シリンダ部22の流路22Bと対向する位置に、該流路22Bに沿って貫通した流路23A及び24Aが設けられる。
【0046】
蓋部23は、流路23Aの一端がシリンダ部22の流路22Bに接続され、流路23Aの他端が吸入管7Aに接続され、吸入管7Aと流路22Bとを連通させる。
【0047】
蓋部24は、流路24Aの一端がシリンダ部22の流路22Bに接続され、流路24Aの他端が送出管7Bに接続され、流路22Bと送出管7Bとを連通させる。
【0048】
送出部8は、蓋部23の流路23Aとシリンダ部22の流路22Bとの間に一方向弁25が設けられ、シリンダ部22の流路22Bと蓋部24の流路24Aとの間に一方向弁26が設けられる。
【0049】
一方向弁25は、蓋部23の流路23Aからシリンダ部22の流路22Bへ流れる薬液を通過させ、シリンダ部22の流路22Bから蓋部23の流路23Aへは薬液を通過させないものであり、例えばアンブレラ弁が適応される。
【0050】
一方向弁26は、シリンダ部22の流路22Bから蓋部24の流路24ABへ流れる薬液を通過させ、シリンダ部22の流路22Bから蓋部24の流路24Aへは薬液を通過させないものであり、例えばアンブレラ弁が適応される。
【0051】
送出部8は、薬液貯蔵部6から生体内に薬液を送出する際、ピストン21が最も押し込まれる位置(以下、押切位置とも呼ぶ)から最も引き戻される位置(以下、これを引戻位置とも呼ぶ)まで内部空間22A内で駆動部9により移動され、薬液貯蔵部6に貯蔵された薬液を内部空間22A内に吸い出す。
【0052】
そして送出部8は、ピストン21が引戻位置から押切位置に駆動部9により移動されことにより、内部空間22Aに吸い出された薬液を生体内へ送出する。
【0053】
送出部8は、ピストン21を一往復させる動作で約1〜2μLの薬液を使用者の体内に投与でき、この動作を設定された周期及び間隔で繰り返し行うことにより、所望の投与速度及び投与量で薬液を使用者に投与できる。
【0054】
ところで押切位置は、ピストン21の先端が流路22Bの底面(内部空間22Aが接続される面)と同一平面上となる位置又は該位置よりも流路22B内の位置に設定される。すなわち駆動部9は、図5に示すように、ピストン21を押切位置に移動させる際、該ピストン21の先端が流路22Bの底面と同一平面上となる位置又は該位置よりも流路22B内の位置まで移動させる。
【0055】
これにより送出部8は、内部空間22Aに気泡が存在した場合、ピストン21が押切位置に移動する際に内部空間22Aに存在する気泡を該ピストン21の先端面(上面)で流路22B内に押し出すことができるので、その後にピストン21が引戻位置に移動される際に気泡を再び内部空間22A内に引戻す可能性を大幅に減少させることができる。
【0056】
これに対してピストンの先端を流路内まで移動させない装置では、例えば内部空間に接するシリンダ部の側面やピストンの先端面に気泡が付着して内部空間内に存在する気泡がピストンの摺動の際に流路に押し出されないことが起こり得る。
【0057】
この場合、ピストンの移動に応じて変化する内部圧力の変化により気泡が膨張及び収縮を繰り返し、これにより、内部空間に吸い込まれる薬液量が変化してしまい、設定された薬液量を生体内に送出することができなくなる。従ってこのような装置では、精度よく薬液を投与できなくなる恐れがある。
【0058】
これに対して薬液投与装置1は、送出部8においてピストン21が押切位置に移動する際に内部空間22Aに存在する気泡を流路22B内に押し出すので、その後にピストン21が引戻位置に移動される際には内部空間22A内に薬液だけを吸い込むことができる。かくして薬液投与装置1は、精度よく薬液を投与することができる。
【0059】
また薬液投与装置1では、ピストン21の先端面、内部空間22A及び流路22Bの表面に親水性加工が施されているので、より内部空間22A及び流路22Bに気泡が残ってしまうことを防止することができる。
【0060】
〔4.駆動部の構成〕
駆動部9は、図6に示すように、土台部31、モータ32、モータ支持部34、モータ固定板35、固定板支持部36、軸受部37、カップリング38、軸受支持部39を含む構成とされる。
【0061】
駆動部9は、土台部31の上に各部が配される。モータ32は、モータ支持部34と固定板支持部36に支持されるモータ固定板35とにより挟持されて土台部31に固定される。
【0062】
モータ32は、モータ固定板35側の側面から突出するモータ軸33が設けられる。モータ軸33の側面にはネジ溝33Aが形成される。
【0063】
軸受部37は、モータ32の軸方向に沿って細長い略直方体状で内部が中空に形成される。軸受部37は、略直方体状の短辺に相当する側面中央に、モータ32のモータ軸33が貫通して配されてネジ溝33Aと螺合するネジ孔37Aが設けられる。
【0064】
軸受部37は、略直方体状の短辺に相当してネジ孔37Aが設けられた側面と対向する側面にカップリング38を介してピストン21がモータ軸33と同軸上に接続される。また、軸受部37は、軸受支持部39に支持される。なお、カップリング38は、例えば、モータ軸33とピストン21との軸方向のずれを緩衝するものが適応される。
【0065】
駆動部9は、図6及び図7に示すように、モータ32が駆動されることによりモータ軸33が回転し、該回転に応じてモータ軸33に螺合された軸受部37が軸方向に移動してピストン21を軸方向に往復動させる。これにより駆動部9は、ピストン21をシリンダ部22の内部空間22A内で摺動させる。なお図6(A)及び(B)においてはピストン21が引戻位置にあり、図7においてはピストン21が押切位置にある。
【0066】
このように駆動部9は、モータ32のモータ軸33がピストン21と同軸上に配されているので、モータ軸33が回転することにより軸受部37に加えられる力と、該力によりピストン21に加えられる力とが同一方向となり、ピストン21の推力の損失がなくなる。
【0067】
従って駆動部9は、ピストン21をシリンダ部22の内部空間22A内で安定したストローク距離で摺動させることができる。また駆動部9は、ピストン21の推力の損失がなくなることにより、より小さい力でピストン21を駆動することができるので、モータ32やバッテリ等を小さくすることができ、装置全体を小型化することができる。なお、ピストン21の側面には摺動抵抗を減らすためにダイヤモンドライクカーボンがコーティングされていてもよい。
【0068】
一方、ピストンとモータの軸部とが同軸上に配されていない装置では、軸部が回転することにより軸受部に加えられる力と、該力によりピストンに加えられる力とがオフセットすることにより、ピストンの推力の損失が増大すると共に、力のオフセットにより軸受部やピストンの摺動抵抗が増加することになり、ピストンのストロークが安定しないだけでなく、装置全体が大型化してしまう。
【0069】
ところで薬液投与装置1では、図8に示すように、Xリング固定部28とカップリング38との間がチューブ状の柔軟性を有するフィルム40で覆われる。フィルム40の材質としては、例えばポリエチレン等が適応される。
【0070】
フィルム40は、両端が例えばOリングでなるフィルム固定部41及び42によりXリング固定部28及びカップリング38に対してそれぞれ周方向にわたって隙間なく固定される。
【0071】
フィルム40は、柔軟性を有しているので、図8(A)に示すピストン21が引戻位置にある状態から、図8(B)に示すピストン21が押切位置にある状態にわたって常にピストン21を覆った状態を維持することができる。
【0072】
従って薬液投与装置1では、ピストン21をフィルム40外の空気に触れることなくシリンダ部22の内部空間22A内で摺動させることができる。これにより薬液投与装置1は、内部空間22A内に入り込むピストン21の清潔性をより保持することができる。
【0073】
〔5.穿刺機構の構成〕
次に、穿刺機構5の構成について詳しく説明する。穿刺機構5は、図9図11に示すように、主として、押込部5Aと、下筐体部2の底面2Aの前端側内部に固定される固定板部5Bと、この固定板部5Bに突設されるベース5Cと、押込部5Aに対する押込操作に応じてベース5Cの内側を上下方向にスライド可能な中心部5Dとを有している。
【0074】
尚、図9に示す内針用溝62、内針68、内針ガイド部84については後述する。
【0075】
図11に示すように、固定板部5Bは、略正方形の板状でなり、その中央に、下筐体部2の底面2Aに設けられる穿刺針孔2Bと連通する連通孔50が設けられ、さらにこの連通孔50の左右に所定の間隔を隔てて2つの突起部51A及び51Bが突設されている。
【0076】
さらに、2つの突起部51A及び51Bより外側の所定位置に、ベース5Cの取付位置となるネジ孔52A及び52Bが設けられている。
【0077】
ベース5Cは、左右と後側の3つの壁部53A、53B、53Cを有する断面コの字型の形状でなり、左側壁部53A及び右側壁部53Bのそれぞれの外側面には、その下端に、外側に突する下側凸部54A及び54Bが設けられている。
【0078】
この下側凸部54A及び54Bには、それぞれ上下方向に貫通する貫通孔55A及び55Bが設けられている。
【0079】
ベース5Cは、これら2つの貫通孔55A及び55Bを、固定板部5Bのネジ孔52A及び52Bの真上に位置させ、ネジ(図示せず)をこれら2つの貫通孔55A及び55Bを通して固定板部5Bのネジ孔52A及び52Bに嵌合させることで、固定板部5Bの所定位置に固定される。
【0080】
また左側壁部53A及び右側壁部53Bのそれぞれの外側面には、その上端にも、外側に突する上側凸部56A及び56Bが設けられている。これら上側凸部56A及び56Bにも、それぞれ貫通孔57A及び57Bが設けられている。貫通孔57A及び57Bは、ベース5Cを上筐体部3の所定位置にネジで固定するときに利用される孔である。
【0081】
さらに左側壁部53A及び右側壁部53Bのそれぞれの内側面には、後方寄りの位置に、下端から上端まで延在する溝58A及び溝58Bが設けられている。この溝58A及び58Bは、中心部5Dがベース5Cの内壁に沿ってスライドするときのガイドとなる溝であり、以下、これらをガイド溝58A及び58Bと呼ぶ。
【0082】
さらに左側壁部53A及び右側壁部53Bのそれぞれの内側面には、前方寄りの下端に凹部59A及び59Bが設けられている。これら凹部59A及び59Bの役割については、後述する。
【0083】
さらに後側壁部53Cの内側面には、左寄りの下端に、コイルバネ(後述する)の一端を固定するためのバネ固定部60が突設されている。
【0084】
さらに後側壁部53Cの内側面には、中央の上方寄りの位置に、バネ固定部60に一端が固定されたコイルバネ(図示せず)の他端側を折り返すためのバネ折返部61が突設されている。尚、コイルバネについては、詳しくは後述するが、金属製の外針と樹脂製の内針とでなる穿刺針を使用者の体内に穿刺した後、外針のみを薬液投与装置1内に引き戻すためのものである。
【0085】
さらに後側壁部53Cの上面中央には、内針を通すための内針用溝62が形成されている。
【0086】
中心部5Dは、その一部が押込部5Aの軸63の下端に固定されていて、押込部5Aに対する押し込み操作によりベース5Cの内側をスライドする。尚、押込部5Aは、軸63の上端に、指で押し込み易い形状(例えば指の腹と同サイズの略円板状)のボタン64が設けられている。
【0087】
ここで、中心部5Dについてより詳しく説明する。図12に示すように、中心部5Dは、主として、穿刺針の外針65を有する外針スライド部66と、押込部5Aの軸63に固定され、外針スライド部66を固定又は解除するスライド固定・解除部67と、穿刺針の内針68を固定又は解除する1対の内針固定・解除部69A及び69Bとを有している。
【0088】
スライド固定・解除部67は、前側が略T字型、後側が後方に開口する略コの字型の板状でなり、前端中央に押込部5Aの軸63が取り付けられている。
【0089】
またこのスライド固定・解除部67は、左右両側面の前方寄りの位置に凹部70A及び70Bが形成され、左右両側面の後方寄りの位置に凸部71A及び71Bが形成されている。
【0090】
左右の凸部71A及び71Bのそれぞれは、ベース5Cのガイド溝58A及び58Bに嵌合される部分であり、これにより、スライド固定・解除部67は、ベース5Cのガイド溝58A及び58Bに沿って上下方向にスライドできるようになっている。
【0091】
また左右の凹部70A及び70Bのそれぞれには、断面コの字型のストッパレバー72A及び72Bが開口部を対向させるようにして回転自在に枢支されている。
【0092】
具体的に、ストッパレバー72A及び72Bのそれぞれは、下側爪部73A及び73Bが、前後方向の回転軸(図示せず)を介して凹部70A及び70Bのそれぞれに枢支されている。
【0093】
これにより、ストッパレバー72A及び72Bは、下側爪部73A及び73Bを軸に、上側爪部74A及び74Bを近づける方向及び遠ざける方向に回転することができる。
【0094】
尚、ここでは、上側爪部74A及び74Bを近づける方向に回転することを、ストッパレバー72A及び72Bが閉じるとし、遠ざける方向に回転することを、ストッパレバー72A及び72Bが開くとする。
【0095】
ストッパレバー72A及び72Bは、閉じたときに、上側爪部74A及び74Bが、スライド固定・解除部67の上面より所定長だけ上方に位置するようになっている。
【0096】
またストッパレバー72A及び72Bは、閉じたときに、スライド固定・解除部67に対して、スライド固定・解除部67の左右両側面と段差無く収まるようになっている。すなわち、ストッパレバー72A及び72Bが閉じたとき、スライド固定・解除部67は、左右両側面から凸部71A及び71Bのみが突する状態となる。
【0097】
さらにこのスライド固定・解除部67には、中央部分に外針65を通すための上下方向に貫通する貫通孔75が設けられている。
【0098】
外針スライド部66は、スライド固定・解除部67の上に重ねることができるようになっていて、前側が略T字型、後側が後方に開口する略コの字型でなり、前側の略T字型の部分が板状でなり、後側の左右両側面部分がそれぞれ上方に延びた形状となっている。
【0099】
外針スライド部66は、左右両側面の前方寄りの位置に凹部76A及び76Bが形成され、さらに左右両側面の後方寄りの位置に凸部77A及び77Bが形成されている。
【0100】
凸部77A及び77Bのそれぞれは、ベース5Cのガイド溝58A及び58Bに嵌合される部分であり、これにより外針スライド部66は、ベース5Cのガイド溝58A及び58Bに沿って上下方向にスライドできるようになっている。
【0101】
また外針スライド部66は、スライド固定・解除部67の上に重ねられたときに、押込部5Aの軸63と干渉しないよう、前端中央部に凹部78が設けられている。
【0102】
さらに外針スライド部66には、底面中央部分に、金属製の外針65が下方に向かって突設されている。この外針65は中空の管状針となっていて、例えば、長さ8mm、外径0.4mm、内径0.2mmのサイズである。
【0103】
さらにこの外針スライド部66の上面中央部分には凹部79が設けられ、この凹部79の中央に、底面の外針65と連通する連通孔80が設けられている。そしてこの連通孔80に、外針65の内径以下の外径を有する内針68を挿通することで、内針68が外針65内に挿入される。
【0104】
さらに外針スライド部66の前面には、凹部78を挟んで左右両側に、凹部78より浅い凹部81A及び81Bが設けられている。
【0105】
この外針スライド部66は、底面の外形が、前端の凹部78、81A及び81Bを除いてスライド固定・解除部67の上面とほぼ同形状同サイズとなっている。
【0106】
これにより、外針スライド部66は、外針65をスライド固定・解除部67の貫通孔75に挿通させるようにしてスライド固定・解除部67の上に重ねられると、左右両側面に設けられた凸部77A及び77Bが、スライド固定・解除部67の左右両側面に設けられた凸部71A及び71Bと段差無く連結されるようになっている。
【0107】
内針固定・解除部69A及び69Bは弾性部材でなり、左右対称で且つそれぞれの前部82A及び82Bが外側に突すると共に、後部83A及び83Bが内側に突する略Z字型の形状をなしている。
【0108】
また内針固定・解除部69A及び69Bのそれぞれの前部82A及び82Bは下方に突するようになっていて、それぞれの後部83A及び83Bも下方に突するようになっている。
【0109】
そしてこの内針固定・解除部69A及び69Bは、それぞれの前部82A及び82Bが、外針スライド部66の前面に設けられた左右の凹部81A及び81Bに嵌合されると共に、それぞれの後部83A及び83Bが、外針スライド部66の上面中央部分に設けられた凹部79に挿入されることで、外針スライド部66上に対向して保持される。
【0110】
またこのとき内針固定・解除部69A及び69Bは、それぞれの後部83A及び83Bが、内針68の外径以上の間隔を隔てて対向するようになっていて、後部83Aと83BBとの間に、外針スライド部66の外針65に挿入される内針68が位置するようになっている。
【0111】
ここで、図13に示すように、スライド固定・解除部67の上に外針スライド部66を重ね、外針スライド部66の外針65に内針68を挿入し、外針スライド部66の上に内針固定・解除部69A及び69Bを配置した状態で、スライド固定・解除部67の左右のストッパレバー72A及び72B閉じたとする。
【0112】
すると、左右のストッパレバー72A及び72Bの上側爪部74A及び74Bとスライド固定・解除部67の上面との間に、外針スライド部66が挟み込まれることで、スライド固定・解除部67に、外針スライド部66が固定される。
【0113】
またこのとき、左右のストッパレバー72A及び72Bの上側爪部74A及び74Bが、それぞれ左右の内針固定・解除部69A及び69Bの外側面を内側に押圧することになる。
【0114】
すると、内針固定・解除部69A及び69Bは、図14(A)に示すように、それぞれの後部83A及び83Bの間隔を近づけるように変形する。この結果、内針固定・解除部69A及び69Bの後部83A及び83Bの間に位置している内針68が、これら後部83A及び83Bに左右両側から押さえ込まれて、内針固定・解除部69A及び69Bに固定される。
【0115】
ここで、内針固定・解除部69A及び69Bは外針スライド部66に保持されていることから、内針68が、内針固定・解除部69A及び69Bに固定されると言うことは、内針68が外針スライド部66に固定されることを意味する。
【0116】
一方で、この状態から、左右のストッパレバー72A及び72Bが開いたとする。すると、スライド固定・解除部67に対する外針スライド部66の固定が解除される。さらにこのとき内針固定・解除部69A及び69Bが、図14(B)に示すように、それぞれの後部83A及び83Bの間隔を元の間隔に戻すように変形することで、内針固定・解除部69A及び69Bに対する内針68の固定も解除される。
【0117】
このような構成でなる中心部5Dは、スライド固定・解除部67の上に外針スライド部66を重ね、外針スライド部66の外針65に内針68を挿入し、外針スライド部66の上に内針固定・解除部69A及び69Bを配置した状態で、ベース5Cの内側のガイド溝58A及び58Bに、スライド固定・解除部67の凸部71A及び71Bと外針スライド部66の凸部77A及び77Bとを嵌合させることで、ベース5Cの内側にスライド自在に嵌入される。
【0118】
尚、内針68は、図9に示すように、穿刺機構5の後方から、ベース5Cの後側壁部53Cの上面中央に形成された内針用溝62を通り、後側壁部53Cの内側上端部に固定された内針ガイド部84により下方に折り曲げられて、外針スライド部66の外針65内に挿入されるようになっている。
【0119】
中心部5Dは、図15(A)に示すように、初期位置としてベース5Cの内側上部に配置され、このとき外針65の全体が薬液投与装置1内に収納される一方で、押込部5Aの薬液投与装置1からの突出量は最大となる。
【0120】
またこのとき中心部5Dは、ベース5Cの左側壁部53A及び右側壁部53Bによって左右のストッパレバー72A及び72Bが内側に押圧されることにより、ストッパレバー72A及び72Bが閉じた状態となる。
【0121】
すなわち、このとき中心部5Dは、スライド固定・解除部67に外針スライド部66を固定して、且つ内針固定・解除部69A及び69Bにより内針68を外針スライド部66に固定する。
【0122】
さらにこの初期位置に在るとき、中心部5Dは、図15(A)の下図に示すように、ベース5Cの後側壁部53Cの中央上方寄りの位置に設けられたバネ折返部61の前方に位置するようになっている。
【0123】
ここで、図16(A)に示すように、ベース5Cの後側壁部53Cの左寄りの下端に設けられたバネ固定部60に一端を固定されたコイルバネ85は、他端側がバネ折返部61により下方に折り曲げられJ字型となった状態で、他端を外針スライド部66の後部右寄りの所定位置に固定されるようになっている。尚、図16は、説明の都合上、穿刺機構5の一部を省略すると共に、外針スライド部66の形状をデフォルメしたものである。
【0124】
このときのコイルバネ85は、伸縮していない自然長の状態である。そして、この状態から、使用者が押込部5Aを薬液投与装置1内に押し込んでいくと、図16(B)に示すように、中心部5Dがベース5Cの内側を下方にスライドしていくと共に、このとき中心部5Dの外針スライド部66が下方にスライドしていくことにともなって、J字型からU字型へと変形するようにしてコイルバネ85全体が伸びていく。
【0125】
〔6.穿刺機構の動作〕
ここで、実際に、穿刺針である外針65と内針68を使用者の体内に穿刺するときの穿刺機構5の動作について詳しく説明する。
【0126】
穿刺機構5は、まず図15(A)に示したように、中心部5Dが初期位置にセットされていて、外針65の全体が薬液投与装置1内に収納されていると共に、押込部5Aの薬液投与装置1からの突出量が最大となっている。
【0127】
このとき、中心部5Dは、上述したように、左右のストッパレバー72A及び72Bが閉じていて、スライド固定・解除部67に外針スライド部66を固定すると共に、内針固定・解除部69A及び69Bにより内針68を外針スライド部66に固定する。
【0128】
このとき、内針68は、図17(A)に示すように、その先端が外針65の先端とほぼ同位置で且つ外針65の先端から突出しない位置を保つようにして外針65の内側に保持される。
【0129】
ここで、使用者が薬液投与装置1を身体の所定位置に貼り付けた後、押込部5Aを薬液投与装置1内に押し込んでいく。
【0130】
すると、図15(B)及び図16(B)に示すように、穿刺機構5の中心部5Dがベース5Cの内側を下方にスライドしていくと共に、中心部5Dの外針スライド部66に他端が固定されたコイルバネ85が伸びていく。
【0131】
このとき、中心部5Dの外針65は、内針68を内側に保持したまま、下方にスライドして、固定板部5Bの連通孔50を通り穿刺針孔2Bから突出することで、内針68と共に使用者の体内に穿刺される。
【0132】
さらに押込部5Aが押し込まれて、図15(C)及び図16(C)に示すように、押込部5Aの軸63全体が薬液投与装置1内に収納されると、このとき押込部5Aは、薬液投与装置1から突出している部分がボタン64のみとなり突出量が最小となる。
【0133】
このようにして押込部5Aが最後まで押し込まれると、このとき中心部5Dは、ベース5Cの下端に到達する。このとき、穿刺針である外針65と内針68は、図17(B)に示すように、使用者の体内に最も深く穿刺される。尚、薬液投与装置1では、使用者の体内に穿刺される部分の長さが例えば7mmとなるように設計されている。
【0134】
またこのとき、中心部5Dのストッパレバー72A及び72Bの外側に、左側壁部53A及び53Bの下端に設けられた凹部59A及び59Bが位置する。これにより、ストッパレバー72A及び72Bは、内側に押圧されなくなり、開くことができる状態となる。
【0135】
そしてこのとき、固定板部5Bに設けられた2つの突起部51A及び51Bが、ストッパレバー72A及び72Bのそれぞれの下側爪部73A及び73Bの先端部に当接して下側爪部73A及び73Bの先端部を押し上げることにより、ストッパレバー72A及び72Bが外側に回転して開く。
【0136】
この結果、中心部5Dでは、スライド固定・解除部67と外針スライド部66の固定が解除されると共に、内針固定・解除部69A及び69Bによる外針スライド部66と内針68の固定も解除される。
【0137】
つまり、固定板部5Bの2つの突起部51A及び51Bは、ストッパレバー72A及び72Bと当接することで、ストッパレバー72A及び72Bによるスライド固定・解除部67と外針スライド部66の固定、及び外針スライド部66と内針68の固定を解除する解除部として機能する。
【0138】
このようにして固定が解除されると、外針スライド部66は、コイルバネ85の復元力により、図15(D)及び図16(D)に示すように、内針固定・解除部69A及び69Bと共に上方にスライドして元の位置に戻る。
【0139】
これにより、外針65の全体が使用者の体内から引き抜かれて薬液投与装置1内に収納される。このとき、内針68については、内針固定・解除部69A及び69Bによる固定が解除され、外針スライド部66には固定されていないので、図17(C)に示すように、そのまま使用者の体内に留置する。
【0140】
このように穿刺機構5は、押込部5Aの押し込み操作に応じて、使用者の体内に外針65と共に内針68を穿刺し、中心部5Dがベース5Cの下端に到達するまで押込部5Aが押し込まれると、すなわち押込部5Aが最後まで押し込まれると、内針68を体内に留置させたまま、外針65のみを引き戻すようになっている。
【0141】
尚、薬液投与装置1は、押込部5Aが最後まで押し込まれたときに押込部5Aのボタン64が上筐体部3の蓋となり、且つ押込部5Aの軸63周りにパッキン(図示せず)が設けられていることにより、内部に水が入らない防水構造となっている。
【0142】
ここまで説明したように、薬液投与装置1は、使用者により押込部5Aが押し込まれると、穿刺機構5の中心部5Dが下方にスライドすることにより、内側に内針68が挿入された外針65を、使用者の体内に穿刺する。
【0143】
そして、薬液投与装置1は、押込部5Aが最後まで押し込まれると、中心部5Dのストッパレバー72A及び72Bが開き、中心部5Dの外針スライド部66のみをコイルバネ85の復元力により元の位置に戻すことで、内針68を使用者の体内に留置させたまま、外針65のみを薬液投与装置1内に引き戻す。
【0144】
その後、薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6に貯蔵されている薬液を、送出部8により、内針68を介して使用者の体内に投与する。
【0145】
このように、薬液投与装置1は、二重構造でなる穿刺針の内針68を留置針とすることで、外針65を留置針とする従来の穿刺針と比して、留置針の径を容易に小さくすることができる。
【0146】
すなわち、薬液投与装置1は、使用者の体内に留置する部分である留置針としての内針68を細くでき、これにより使用者に対する負担を軽減することができる。
【0147】
因みに、樹脂材料でなる内針68は、肉薄管での製造が可能であり、同じ外径の金属針と比較して内径を大きくすることができる。
【0148】
また薬液投与装置1は、押込部5Aに対する押し込み操作のみで、穿刺針(外針65+内針68)の穿刺から外針65の引き戻しまでを一度に行うことができる。
【0149】
さらに薬液投与装置1の穿刺機構5は、使用者の押し込み操作のみで動作するので、モータなどの駆動部を必要とせず、容易に小型化することができ、結果として、薬液投与装置1内の穿刺機構5が占有するスペースを小さくできる。
【0150】
さらに薬液投与装置1は、押込部5Aが最後まで押し込まれると、全体として突起部分の少ないコンパクトなサイズとなり、携帯時の利便性を向上させるようにもなっている。
【0151】
〔7.薬液投与装置の電気的構成〕
薬液投与装置1は、図18に示すように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、電源部94、インターフェース部(I/F部)95、報知部96及び駆動部9がバス97を介して接続される。
【0152】
CPU91、ROM92、RAM93、電源部94及び報知部96は、基板部10上に配される。電源部94は電池が適応される。報知部96はスピーカが適応される。
【0153】
インターフェース部95は、上筐体部3又は下筐体部2に配されユーザの入力命令を受け付けるボタン(図示せず)が適応される。
【0154】
CPU91は、ROM92に格納された基本プログラムをRAM93に読み出して実行することより全体を統括制御すると共に、ROM92に記憶された各種アプリケーションプログラムをRAM93に読み出して実行することにより各種処理を実行する。
【0155】
CPU91は、薬液を使用者に投与する際、薬液投与プログラムをRAM93に読み出して薬液投与処理を実行し、薬液が外部から薬液貯蔵部6に充填され、貼付部4が使用者の皮膚に貼り付けられると共に穿刺機構5により穿刺針が使用者の皮膚に穿刺された後、インターフェース部95を介して入力された投与量、投与速度などのパラメータを設定する。
【0156】
そしてCPU91は、設定されたパラメータに基づいて駆動部9を制御して薬液の投与を開始する。
【0157】
〔8.他の実施の形態〕
〔8−1.他の実施の形態1〕
上述した実施の形態では、使用者の体内に薬液を投与する薬液投与装置1に本発明を適用する場合について説明した。これに限らず、外針と内針とでなる二重構造の穿刺針を穿刺する穿刺装置であれば、薬液投与装置1以外の装置に適用するようにしてもよい。
【0158】
例えば、使用者の体内に各種センサを挿入して生体情報を取得するセンサ装置に適用するようにしてもよい。
【0159】
図19に、このセンサ装置100を示す。このセンサ装置100は、薬液投与装置1と同様の穿刺機構5を有している一方で、薬液貯蔵部6や、送出部8、駆動部9が無く、代わりにセンサからの生体情報を取得する制御部101と、この生体情報を外部に無線送信する送信部102とを有している。
【0160】
図20に示すように、このセンサ装置100の内針68の先端にはセンサ103が取り付けられていて、さらにこの内針68内には、センサ103と制御部101とを電気的に接続する信号線104が挿入されている。
【0161】
そしてこのセンサ装置100では、穿刺機構5により、先端部にセンサ103が取り付けられた内針68が挿入された外針65を、使用者の体内に穿刺する。
【0162】
そして、このセンサ装置100は、センサ103を使用者の体内に留置させたまま、外針65のみをセンサ装置100内に引き戻す。
【0163】
その後、センサ装置100の制御部101は、センサ103から得られる生体情報を取得し、送信部102を介して外部に無線送信する。
【0164】
〔8−2.他の実施の形態2〕
上述した実施の形態では、図9図12に示した穿刺機構5により、穿刺針(外針65と内針68)を使用者の体内に穿刺して、外針65のみを引き戻すようにしたが、図9図12に示した穿刺機構5以外の穿刺機構により、穿刺針の穿刺と外針の引き戻しを行うようにしてもよい。
【0165】
例えば、図21に示すような穿刺機構110であってもよい。この穿刺機構110は、主として、固定板部110Aと、この固定板部110Aに対して突設されるベース110Bと、このベース110Bの内側を上下方向にスライド可能な中心部110Cとを有している。尚、穿刺機構110は、穿刺機構5と同様の押込部5Aを有しているが図21では省略している。
【0166】
固定板部110Aは、その中央に、下筐体部2の底面2Aに設けられる穿刺針孔2Bと連通する連通孔111が設けられ、さらにこの連通孔111の左右に所定の間隔を隔てて上方に延びる2つの突起部112A及び112Bが突設されている。
【0167】
ベース110Bは、上述した穿刺機構5のベース5Cから、凹部59A及び59Bを除いた形状となっている。
【0168】
中心部110Cは、図22に示すように、外針65を有する外針スライド部113と、押込部5Aの軸63(図中省略)に固定され、外針スライド部113を固定又は解除するスライド固定・解除部114(図注斜線で示す部分)と、穿刺針の内針68を固定又は解除する内針固定・解除部115とを有している。
【0169】
スライド固定・解除部114は、弾性部材でなり、前部に、左右方向に所定の間隔を隔てて、固定板部110Aの突起部112A及び112Bを通すための貫通孔116A及び116Bが設けられ、さらに左右の貫通孔116A及び116Bの間の中央部117に、外針スライド部113の外針を通すための貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0170】
さらにスライド固定・解除部114は、左右の貫通孔116A及び116Bの外側の縁からそれぞれ上方に延びる八の字型の1対の爪状ストッパ118A及び118Bが設けられている。
【0171】
外針スライド部113は、図22にくわえて図23に示すように、前端部に、左右方向に所定の間隔を隔てて、スライド固定・解除部114の左右の爪状ストッパ118A及び118Bを通すための貫通孔119A及び119Bが設けられ、さらに左右の貫通孔119A及び119Bの間の中央部120に、内針68を通すための貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0172】
さらに外針スライド部113は、中央部120の底面に、貫通孔と連通する金属製の外針65が下方に向かって突設されている。
【0173】
尚、図示していないが、この外針スライド部113も、上述した穿刺機構5の外針スライド部66と同様、コイルバネ85の他端が固定されている
【0174】
内針固定・解除部115は、弾性部材でなり、図23の下図に示すように、中心に内針を通すための貫通孔121が設けられた円柱形状の先端部122と、この先端部122の下端左端及び右端からそれぞれ所定の間隔を隔てて下方に延びる爪部123A及び123Bとでなり、左右の爪部123A及び123Bは、上端側より下端側が外側に開いた八の字形状となっている。
【0175】
この内針固定・解除部115は、外針スライド部113の中央部120上に配置される。内針68は、この内針固定・解除部115の貫通孔121を通り、さらに左右の爪部123A及び123Bの間を通り、外針スライド部113の貫通孔(図示せず)から外針65内に挿入されるようになっている。
【0176】
さらにこの内針固定・解除部115には、外針スライド部113の中央部120とほぼ同形の板状ストッパ124が嵌合されている。
【0177】
この板状ストッパ124は、中央に、内針固定・解除部115の先端部122の外径とほぼ同径の貫通孔125が設けられていて、この貫通孔125に内針固定・解除部115が挿入されることで内針固定・解除部115と嵌合されている。
【0178】
さらにこの板状ストッパ124と、外針スライド部113の中央部120との間には、内針固定・解除部115の外周を囲うようにコイルバネ126が嵌入され、これにより、板状ストッパ124は、内針固定・解除部115の先端部122側に位置するように上方に付勢される。
【0179】
ここで、内針68を内針固定・解除部115を通して外針スライド部113の外針65内に挿入し、スライド固定・解除部114の上に外針スライド部113を配置したとする。
【0180】
すると、図22に示したように、スライド固定・解除部114の左右の爪状ストッパ118A及び118Bの先端部分と中央部117との間に、外針スライド部113の中央部120と板状ストッパ124が挟み込まれることで、スライド固定・解除部114に外針スライド部113と板状ストッパ124が固定される。
【0181】
またこのとき、板状ストッパ124が内針固定・解除部115の下方に押し込まれることで、図23(A)に示したように、内針固定・解除部115は、左右の爪部123A及び123Bが板状ストッパ124により内側に押圧され、左右の爪部123A及び123Bの間隔を狭くするように変形する。
【0182】
この結果、内針68が、左右の爪部123A及び123Bに左右両側から押さえ込まれて、内針固定・解除部115に固定され、結果として、内針68が外針スライド部113と固定される。
【0183】
この中心部110Cは、図24(A)に示すように、スライド固定・解除部114に、外針スライド部113を固定すると共に、外針スライド部113に内針68を固定した状態で、ベース110Bの上部に配置される。
【0184】
ここで、使用者により押込部5A(図示せず)が押し込まれると、中心部110Cがベース110Bの内側を下方にスライドしていく。
【0185】
このとき、中心部110Cの外針65は、内針68を内側に保持したまま、下方にスライドして、固定板部110Aの連通孔111を通り穿刺針孔2Bから突出することで、内針68と共に使用者の体内に穿刺される。
【0186】
そして図24(B)に示すように、押込部5Aが最後まで押し込まれて、中心部110Cが、ベース110Bの下端に到達すると、このとき、固定板部110Aの左右の突起部112A及び112Bが、スライド固定・解除部114の左右の貫通孔116A及び116Bに挿入される。
【0187】
さらに、固定板部110Aの左右の突起部112A及び112Bは、スライド固定・解除部114の左右の爪状ストッパ118A及び118Bの内側面に当接して、これらを押し上げる。この結果、左右の爪状ストッパ118A及び118Bが外側に開く。すると、スライド固定・解除部114と外針スライド部113との固定が解除される。
【0188】
またこのとき、左右の爪状ストッパ118A及び118Bが外側に開くことにより下方への押さえ付けがなくなった板状ストッパ124は、図23(B)に示したように、コイルバネ126の付勢により、内針固定・解除部115の先端側に移動する。
【0189】
すると、内針固定・解除部115は、左右の爪部123A及び123Bが元の形状に戻るように変形することで、左右の爪部123A及び123Bの間隔が広くなる。この結果、左右の爪部123A及び123Bの間に挟まれて固定されていた内針68の固定が解除される。
【0190】
このように、穿刺機構110では、押込部5Aが最後まで押し込まれると、スライド固定・解除部114と外針スライド部113の固定が解除されると共に、外針スライド部113と内針68の固定も解除される。
【0191】
つまり、固定板部110Aの左右の突起部112A及び112Bは、スライド固定・解除部114の左右の爪状ストッパ118A及び118Bに当接することで、スライド固定・解除部114と外針スライド部113の固定、及び外針スライド部113と内針68の固定を解除する解除部とし機能する。
【0192】
そして図24(C)に示すように、外針スライド部113が、コイルバネ85の復元力により、内針固定・解除部115と共に上方にスライドして元の位置に戻る。
【0193】
これにより、内針68が使用者の体内に留置されたまま、外針65の全体が使用者の体内から引き抜かれて薬液投与装置1内に収納される。
【0194】
さらに、このような穿刺機構110に限らず、例えば、図25に示すような穿刺機構130であってもよい。この穿刺機構130は、主として、固定板部130Aと、この固定板部130Aに突設されるベース130Bと、このベース130Bの内側を上下方向にスライド可能な中心部130Cと、押込部5Aとを有している。
【0195】
固定板部130Aは、その中央に、下筐体部2の底面2Aに設けられる穿刺針孔2Bと連通する連通孔131が設けられている。
【0196】
ベース130Bは、上述した穿刺機構5のベース5Cから、凹部59A及び59Bを除いた形状となっている。
【0197】
中心部130Cは、図26に示すように、外針65を有する外針スライド部132と、押込部5Aの軸63を支え、外針スライド部132を固定又は解除すると共に、内針68を固定又は解除する固定・解除部133(図中斜線で示す部分)を有している。
【0198】
外針スライド部132は、所定の厚さを有する直方体形状でなり、底面中央部分に、外針65が下方に向かって突設されている。
【0199】
尚、図示していないが、この外針スライド部132も、上述した穿刺機構5の外針スライド部66と同様、コイルバネ85に取り付けられている。
【0200】
また外針スライド部132は、上面中央部分に内針68の外径より広い間隔の切欠部134が形成され、この切欠部134の底に内針68を通すための貫通孔(図示せず)が外針65と連通して設けられている。内針68は、この切欠部134の間を通り、貫通孔から外針65内に挿入されるようになっている。
【0201】
さらに外針スライド部132は、前面中央部分の上端から下端に架けて、押込部5Aの軸63を通すための溝(これを軸用溝と呼ぶ)135が設けられている。
【0202】
さらに外針スライド部132の前面には、この軸用溝135より外側(例えば右側)の上端から下端に架けて、ストッパ136が嵌合される溝(これをストッパ用溝と呼ぶ)137が設けられている。
【0203】
このストッパ用溝137には、このストッパ用溝137より長い棒状のストッパ136が上下方向にスライド自在に嵌合される。このストッパ136は、上端部に、後方に突する爪部138が設けられている。
【0204】
さらに外針スライド部132には、その内部に、断面L字型の固定・解除部133が左右方向にスライド自在に嵌合されている。
【0205】
この固定・解除部133は、上端部が外針スライド部132の上面から露出した状態でスライドするようになっていて、上端部に、ストッパ136の爪部138と嵌合する凹部139が設けられている。
【0206】
この固定・解除部133は、図26(A)及び(B)に示すように、ストッパ136に近い側(右側)に位置するときに、前端部が外針スライド部132の軸用溝135内に入り込んで軸用溝135を塞ぐようになっている。またこのとき固定・解除部133は、一部が外針スライド部132の切欠部134の側面に近接することで、切欠部134の間に位置する内針68を、切欠部134の側面と挟み込んで固定するようになっている。
【0207】
一方で、図26(C)に示すように、逆側(左側)に位置するときには、固定・解除部133は、前端部が軸用溝135から外れて軸用溝135を塞がないようになっていると共に、切欠部134の側面から離れて内針68を固定しないようになっている。
【0208】
さらにこの固定・解除部133は、外針スライド部132内に設けられた圧縮バネ(図示せず)により、ストッパ用溝137から遠い側(左側)に付勢されている。
【0209】
ストッパ136は、固定・解除部133を右側に固定保持するようになっていて、具体的には、固定・解除部133が右側に押し込まれた状態で、固定・解除部133の凹部139に対して、その上方から爪部138を嵌合させることで、固定・解除部133を右側に固定保持する。
【0210】
尚、このようにして、固定・解除部133を固定保持したとき、ストッパ136は、その下端部が、外針スライド部132の底面より下方に突出する。
【0211】
中心部130Cは、このように、固定・解除部133を、外針スライド部132内の右側に固定保持すると共に、外針スライド部132に内針68を固定した状態で、図27(A)に示すように、ベース130Bの上部に配置される。
【0212】
このとき、押込部5Aの軸63の下端は、外針スライド部132の軸用溝135を塞いでいる固定・解除部133の前端部上面に当接している。
【0213】
ここで、使用者により押込部5Aが押し込まれると、固定・解除部133の前端部上面が押込部5Aの軸63により下方に押し込まれることで、中心部130C全体が下方に押し込まれてベース130Bの内側を下方にスライドしていく。
【0214】
このとき、中心部130Cの外針65は、内針68を内側に保持したまま、下方にスライドして、固定板部130Aの連通孔131を通り穿刺針孔2Bから突出することで、内針68と共に使用者の体内に穿刺される。
【0215】
そして図27(B)に示すように、押込部5Aが最後まで押し込まれると、このとき中心部130Cは、ベース130Bの下端に到達する。
【0216】
このとき、外針スライド部132の底面より下方に突出しているストッパ136の下端が、外針スライド部132の底面よりも先に固定板部130Aに当接することにより、ストッパ136の下端が当接した以降、停止しているストッパ136に対して外針スライド部132がスライドすることになる。
【0217】
すると、図26(B)に示したように、固定・解除部133の凹部139に嵌合されていたストッパ136の爪部138が、凹部139の上方に外れることにより、固定・解除部133の右側への固定が解除される。
【0218】
この結果、固定・解除部133は、図26(C)に示したように、圧縮バネの作用により、外針スライド部132内を左側へスライドする。
【0219】
すると、固定・解除部133の前端部が軸用溝135から外れて軸63と当接しなくなることにより、中心部130Cに対する下方への押さえ込みが解除される。またこのとき、固定・解除部133の一部が、外針スライド部132の切欠部134の側面から離れることにより、これらの間に挟まれていた内針68の固定も解除される。
【0220】
このように、穿刺機構130では、押込部5Aが最後まで押し込まれると、中心部130Cと押込部5Aの軸63との固定が解除されると共に、中心部130Cと内針68との固定も解除される。
【0221】
つまり、この穿刺機構130の場合、固定板部130Aが、中心部130Cのストッパ136に当接することで、中心部130Cと軸63との固定、及び中心部130Cと内針68との固定を解除する解除部として機能する。
【0222】
すると中心部130Cは、図27(C)に示すように、コイルバネ85の復元力により、軸用溝135に押込部5Aの軸63を滑らせながら、上方にスライドして元の位置に戻る。
【0223】
これにより、内針68は使用者の体内に留置したまま、外針65の全体が使用者の体内から引き抜かれて薬液投与装置1内に収納される。
【0224】
尚、ここでは、上述したような2つの穿刺機構110及び130を説明したが、これに限らず、押込部5Aに対する押込操作により、穿刺針の穿刺と外針の引き戻しを行うことができる穿刺機構であれば、他の機構を用いるようにしてもよい。
【0225】
〔8−3.他の実施の形態3〕
また、上述した実施の形態では、金属製の外針65と樹脂製の内針68とでなる穿刺針を使用者の体内に穿刺した後、外針65のみを薬液投与装置1内に引き戻すための弾性部材としてコイルバネ85を用いるようにしたが、これに限らず、コイルバネ85と同様に機能する弾性部材であれば、コイルバネ85以外の弾性部材を用いようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、例えば医療分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0227】
1……薬液投与装置、2……下筐体部、3……上筐体部、4……貼付部、5、110、130……穿刺機構、5A……押込部、5B、110A、130A……固定板部、5C、110B、130B……ベース、5D、110D、130D……中心部、6……薬液貯蔵部、7……流路部、8……送出部、9……駆動部、10……基板部、65……外針、66、113、132……外針スライド部、67、114……スライド固定・解除部、68……内針、69A、69B、115……内針固定・解除部、72A、72B……ストッパレバー、85、126……コイルバネ、100……センサ装置、101……制御部、102……送信部、103……センサ、104……信号線、118A、118B……爪状ストッパ、124……板状ストッパ、133……固定・解除部、136……ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18
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図20
図21
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