特許第6051210号(P6051210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051210
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/14 20060101AFI20161219BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C07D487/14CSP
   A61K31/519
   A61P25/16
   A61P25/14
   A61P25/28
   A61P25/24
   A61P25/18
   A61P25/20
   A61P25/30
   A61P9/10
   A61P9/00
   A61P9/12
   A61P15/10
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P11/02
   A61P37/08
   A61P37/06
   A61P29/00
   A61P15/08
   A61P15/00
   A61P5/14
   A61P35/00
   A61P27/06
   A61P27/02
   A61K45/00
   A61P19/10
   A61P21/02
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-514930(P2014-514930)
(86)(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公表番号】特表2014-516086(P2014-516086A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】US2012041925
(87)【国際公開番号】WO2012171016
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】61/495,683
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・ハイリン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/065149(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/132127(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0077274(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0298864(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0087450(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0014761(US,A1)
【文献】 特表2008−545783(JP,A)
【文献】 特表2005−509038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の次の化合物
【化1】
のいずれかから選択される、化合物。
【請求項2】
遊離形態または塩形態の
【化2】
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物。
【請求項4】
パーキンソン病、下肢静止不能、振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病、薬剤誘発性運動障害、鬱病、注意欠損障害、注意欠損多動性障害、双極性疾病、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知機能障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱および/または薬物嗜癖、脳血管疾患、卒中、鬱血性心疾患、高血圧、肺高血圧および/または性機能不全;喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、自己免疫性疾患、炎症性疾患;女性性機能不全、運動性無月経、排卵、閉経期、閉経期症状、甲状腺機能低下症、月経前緊張症、早産、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、エストロゲン誘発子宮内膜増殖症または癌、緑内障および高眼圧、精神病、外傷性脳傷害および/またはPDE1発現細胞におけるcAMPおよび/またはcGMP低下(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路阻害)および/またはドーパミンD1受容体シグナル伝達活性低下により特徴付けられるあらゆる疾患または状態;および/またはプロゲステロンシグナル伝達の亢進により軽減され得るあらゆる疾患または状態のいずれかの状態を処置するための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
状態がパーキンソン病である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
状態が認知機能障害である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
状態が統合失調症の認知機能障害である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
状態がナルコレプシーである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
中枢神経系刺激剤、モダフィニル、抗鬱剤およびγ−ヒドロキシ酪酸から選択される1種または複数種と併用することを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
該状態が女性性機能不全である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項11】
エストラジオール、エストリオール、エストラジオールエステル類、プロゲステロンおよびプロゲスチン類からる群から選択される1種または複数種と併用することを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
緑内障または高眼圧の処置のための医薬組成物であって、眼科的に適合性の担体中の遊離形態または薬学的に許容される塩形態の請求項1または2に記載の化合物の治療有効量を局所投与するための、医薬組成物。
【請求項13】
精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害および躁病の処置のための医薬組成物であって、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の請求項1または2に記載の化合物の治療有効量を含む、医薬組成物。
【請求項14】
外傷性脳傷害の処置のための医薬組成物であって、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の請求項1または2に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項15】
プロスタグランジン類似体の有効量と、同時に、一緒にまたは逐次的に投与することを特徴とする、遊離形態または塩形態の請求項1または2に記載の化合物の有効量を含む、睫毛の伸長または成長促進のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年6月10日出願の米国仮出願番号61/495,683に対する優先権を主張し、その内容を引用により本明細書にその全体を包含させる。
【0002】
技術分野
本発明は、下記式IのPDE1阻害化合物、その製造方法、医薬としてのそれらの使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。これらの化合物は、例えば、ドーパミンD1受容体細胞内経路の障害が関連する疾患、例えばパーキンソン病、鬱病、ナルコレプシー、精神病、例えば、統合失調症における認知機能障害またはプロゲステロンシグナル伝達経路亢進を介して改善され得る障害、例えば、女性性機能不全の処置に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ホスホジエステラーゼ類(PDE)の11種のファミリーが同定されているが、ファミリーIにおけるPDEであるCa2+−カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ類(CaM−PDE)のみがカルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えばcAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路の両方を仲介することが示されている。3種の知られたCaM−PDE遺伝子であるPDE1A、PDE1BおよびPDE1Cは全てヒト中枢神経系組織で発現される。PDE1Aは脳で、海馬のCA1〜CA3層および小脳で高レベルに、線条体で低レベルに発現されている。PDE1Bは主に線条体、歯状回、嗅索および前頭前野皮質にドーパミンD1受容体と共局在化して発現される。その発現は一般的にドーパミン作動性神経支配が高レベルである脳領域と相関する。PDE1Bは主に中枢神経系で発現されるが、好中球に存在する。PDE1Cは脳においてより偏在性に発現され、心臓および血管平滑筋で発現される。
【0004】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ類は、細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達を、これらの環状ヌクレオチド類をそのそれぞれの不活性5’−一リン酸類(5’AMPおよび5’GMP)に加水分解することにより減少させる。CaM−PDEは、特に基底核または線条体として知られる脳領域における脳細胞におけるシグナル伝達に、重要な役割を有する。例えば、NMDA型グルタミン酸受容体活性化および/またはドーパミンD2受容体活性化は細胞内カルシウム濃度増加をもたらし、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)およびカルシニューリンのようなエフェクター類の活性化およびCaM−PDEの活性化をもたらし、cAMPおよびcGMP減少に至る。ドーパミンD1受容体活性化は、他方で、アデニレートシクラーゼ類の活性化をもたらし、cAMP増加に至る。この環状ヌクレオチドは、次にタンパク質キナーゼA(PKA;cAMP依存性タンパク質キナーゼ)を活性化させる。cGMPの産生は、高細胞内カルシウムレベルにより誘発される一酸化窒素産生のような種々の刺激を介して認知機能に関与する組織で起こり、その後タンパク質キナーゼG(PKG;cGMP依存性タンパク質キナーゼ)を活性化させることが知られている。PKGおよびPKAはDARPP−32(ドーパミンおよびcAMP調節性ホスホタンパク質)およびcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のような下流シグナル伝達経路要素をリン酸化する。リン酸化DARPP−32は、次に、プロテインホスファターゼ類(protein phosphates)−1(PP−1)の活性化を阻害し、それによりプロゲステロン受容体(PR)のような基質タンパク質のリン酸化状態を高め、生理的応答の誘発に至る。D1受容体シグナル伝達は統合失調症で妨害されており、本疾患の認知機能障害に関与する。認知機能におけるcAMPおよびcGMPの役割は、動物試験においてよく確立されている。齧歯類での試験もまたドーパミンD1またはプロゲステロン受容体活性化を介するcAMPおよびcGMP合成誘発は、ある齧歯類において交配に対する受容性と関連するロードシス応答を含む、種々の生理学的応答と関連するプロゲステロンシグナル伝達を亢進することを示唆する。その内容を本明細書に引用して包含させるMani, et al., Science (2000) 287: 1053参照。
【0005】
CaM−PDEは、それ故に、一酸化窒素、ノルアドレナリン、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタメート(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)、DARPP−32およびエンドルフィン細胞内シグナル伝達経路を含むが、これらに限定されない基底核(線条体)におけるドーパミン調節性および他の細胞内シグナル伝達経路に影響し得る。
【0006】
ホスホジエステラーゼ(PDE)活性、特に、ホスホジエステラーゼ1(PDE1)活性は、脳組織において自発運動活性および学習および記憶として機能する。PDE1は、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、一酸化窒素、ノルアドレナリン、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタメート(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)、エンドルフィン細胞内シグナル伝達経路およびプロゲステロンシグナル伝達経路を含むが、これらに限定されるものでなく、好ましくは神経系における細胞内シグナル伝達経路の制御のための治療標的である。例えば、PDE1Bの阻害は、cGMPおよびcAMPを分解から保護することによりドーパミンD1アゴニストの作用を増強するように作用するはずであり、同様に、細胞内カルシウムのD2受容体仲介増加の結果であるPDE1活性の阻害により、ドーパミンD2受容体シグナル伝達経路を阻害するはずである。細胞内カルシウムレベルの慢性的上昇は、多くの障害、特にアルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病のような神経変性疾患および卒中および心筋梗塞に至る循環器の障害における細胞死と関連する。PDE1阻害剤は、それ故に、ドーパミンD1受容体シグナル伝達活性減少により特徴付けられる疾患、例えばパーキンソン病、下肢静止不能症候群、鬱病、ナルコレプシーおよび統合失調症と関連する認知機能障害のような認知機能障害に有用である可能性がある。PDE1阻害剤はまた女性性機能不全のようなプロゲステロンシグナル伝達亢進により軽減され得る疾患にも有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、PDE1活性を選択的に阻害する化合物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
本発明は、遊離形態または塩形態の式I
【化1】
〔式中、
(i) RはHまたはC1−4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) RはHであり、RおよびRは独立してHまたはC1−6アルキル(例えば、メチル)であるか;または
はHであり、RおよびRは一体となってジ−、トリ−またはテトラメチレン架橋を形成し(例えば、ここで、RおよびRを担持する炭素がそれぞれRおよびS配置であるとき、RおよびRは一体となってcis配置を有する);
(iii) Rは式Iのピラゾロ部分の窒素の一つに結合し、かつ式A
【化2】
の基であり、ここで、
X、YおよびZはCであり;
、R、R11およびR12はHであり;
10は場合により1個以上のハロ(例えば、FまたはCl)で置換されていてよいヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えばピリド−2−イル))であり、例えばR10は非置換ピリジルまたはハロ(例えば、フルオロ)で置換されているピリジルであり、例えばR10はピリジル(例えばピリド−2−イル)、6−フルオロピリド−2−イル、5−フルオロピリド−2−イル、4−フルオロピリド−2−イルおよび3−フルオロピリド−2−イルから成る群から選択され;
(iv) Rはエチルまたはイソプロピルである。〕
の化合物を提供する。
【0009】
本発明は、さらに、次に示す式Iの化合物を遊離形態または塩形態で提供する。
1.1 RがHまたはC1−4アルキル(例えば、メチル)である、式I;
1.2 RがHである、式Iまたは1.1;
1.3 RがC1−4アルキルである、式Iまたは1.1;
1.4 Rがメチルである、式Iまたは1.1;
1.5 RがHであり、RおよびRが独立してHまたはC1−6アルキル(例えば、メチル)である、式Iまたは1.1〜1.4のいずれか;
1.6 RがHであり、RおよびRがいずれもC1−6アルキル(例えば、RおよびRがいずれもメチル)である、式Iまたは1.1〜1.4のいずれか;
1.7 R10が場合により1個以上のハロ(例えば、FまたはCl)で置換されていてよいヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えばピリド−2−イル))である、例えばR10が非置換ピリジルまたはハロ(例えば、フルオロ)で置換されているピリジルである、例えばR10がピリジル(例えばピリド−2−イル)、6−フルオロピリド−2−イル、5−フルオロピリド−2−イル、4−フルオロピリド−2−イルおよび3−フルオロピリド−2−イルから成る群から選択される、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
【0010】
1.8 R10がピリジル(例えば、ピリド−2−イル)である、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
1.9 R10が6−フルオロピリド−2−イルである、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
1.10 R10が5−フルオロピリド−2−イルである、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
1.11 R10が4−フルオロピリド−2−イルである、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
1.12 R10が3−フルオロピリド−2−イルである、式Iまたは1.1〜1.6のいずれか;
1.13 Rがエチルである、式Iまたは1.1〜1.12のいずれか;
1.14 Rがイソプロピルである、式Iまたは1.1〜1.12のいずれか;
1.15 RがHであり、RおよびRがC1−6アルキル(例えば、メチル)であるか;または
がHであり、RおよびRは一体となってジ−、トリ−またはテトラメチレン架橋を形成し(例えば、ここで、RおよびRを担持する炭素がそれぞれRおよびS配置であるとき、RおよびRは一体となってcis配置を有する)である、1.1〜1.14のいずれか;
1.16 RがHであり、RおよびRがいずれもメチルである、1.1〜1.14のいずれか;
1.17 RがHであり、RおよびRが一体となってジ−、トリ−またはテトラメチレン架橋を形成し(例えば、ここで、RおよびRを担持する炭素がそれぞれRおよびS配置であるとき、RおよびRは一体となってcis配置を有する)である、1.1〜1.14のいずれか;
1.18 RがHであり、RおよびRが一体となってトリ−メチレン架橋を形成する(例えば例えば、ここで、RおよびRを担持する炭素がそれぞれRおよびS配置であるとき、RおよびRは一体となってcis配置を有する)である、1.1〜1.14のいずれか;
1.19 Rがエチルである、式Iまたは1.1〜1.18のいずれか;
1.20 Rがイソプロピルである、式Iまたは1.1〜1.18のいずれか;
【0011】
1.21 化合物が
【化3】
から成る群から選択される、1.1〜1.16および1.19〜1.20のいずれか;
1.22 化合物が
【化4】
から成る群から選択される、1.1〜1.15および1.17〜1.20のいずれか;
1.23 化合物が、例えばcGMPのホスホジエステラーゼ仲介(例えば、PDE1仲介)加水分解を、例えば実施例4に記載の固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは10nM未満、より好ましくは5nM以下のIC50で阻害する、前記のいずれか。
【0012】
特定の態様において、本発明は、遊離形態または塩形態の式I(i)
【化5】
(i) RはC1−4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) RはHであり、RおよびRは独立してC1−6アルキル(例えば、メチル)であり;
(iii) Rは式Iのピラゾロ部分の窒素の一つに結合し、かつ式A
【化6】
の基であり、ここで、
X、YおよびZはCであり;
、R、R11およびR12はHであり;
10は1個以上のハロ(例えば、FまたはCl)で置換されているピリジル(例えばピリド−2−イル)であり、例えばR10は非置換ピリジルまたはハロ(例えば、フルオロ)で置換されているピリジルであり、例えばR10はピリジル(例えばピリド−2−イル)、6−フルオロピリド−2−イル、5−フルオロピリド−2−イル、4−フルオロピリド−2−イルおよび3−フルオロピリド−2−イルから成る群から選択され;
(iv) Rはエチルまたはイソプロピルである。〕
の化合物を提供する。
【0013】
他に定義されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、次の用語は次の意味を有する。
(a) ここで使用する“アルキル”は、好ましくは1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の、好ましくは飽和の炭化水素基であって、これは直鎖でも分枝鎖でもよく、場合により、例えば、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで一、二または三置換されていてよい。
【0014】
(b) ここで使用する“アリール”は、場合により、例えば、アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシまたは別のアリールまたはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてよい、単環または二環式芳香族炭化水素、好ましくはフェニルである。
【0015】
(c) ここで使用する“ヘテロアリール”は、芳香環を構成する1個以上の原子が炭素ではなく、硫黄または窒素である芳香族基、例えば、ピリジルまたはチアジアゾリルであり、これは、場合により、例えば、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてよい。
【0016】
本発明の化合物、例えば、式IまたはI(i)の化合物、例えば、1.1〜1.23のいずれかは、遊離形態または塩形態で、例えば、酸付加塩類として存在し得る。本明細書で特に断らない限り、“本発明の化合物”のような用語は、あらゆる形態、例えば遊離または酸付加塩形態または本化合物が酸性置換基を含むとき、塩基付加塩形態の本化合物を包含すると解釈すべきである。本発明の化合物は医薬としての使用が意図され、それ故に薬学的に許容される塩類が好ましい。医薬用途に不適な塩類は、例えば、遊離の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩類の単離または精製に有用であることがあり、それ故にまた包含される。
【0017】
本発明の化合物は、ある場合、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明の化合物に変換される化合物である。例えば、本発明の化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含むとき、これらの置換基は生理学的に加水分解可能なおよび許容されるエステル類を形成させ得る。ここで使用する“生理学的に加水分解可能であり、かつ許容されるエステル”は、生理学的条件下で加水分解可能であり、酸類(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール類(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生じ、これら自体投与される量で生理学的に耐容性である本発明の化合物のエステル類を意味する。それ故に、本発明の化合物がヒドロキシ基を含む、例えば、化合物−OHであるとき、このような化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物−O−C(O)−C1−4アルキルは体内で加水分解されて、一方で生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物−OH)を、そして他方で酸(例えば、HOC(O)−C1−4アルキル)を形成し得る。あるいは、本発明の化合物がカルボン酸、例えば、化合物−C(O)OHであるとき、このような化合物の酸エステルプロドラッグである化合物−C(O)O−C1−4アルキルは加水分解されて、化合物−C(O)OHおよびHO−C1−4アルキルを形成し得る。すなわち、本用語は、それ故に、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0018】
本発明はまた本発明の化合物の製造方法および下に明示する疾患および障害の処置(特にドーパミンD1受容体シグナル伝達活性低下により特徴付けられる疾患、例えばパーキンソン病、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、ADHD、下肢静止不能症候群、鬱病、認知機能障害、例えば、統合失調症の認知機能障害、ナルコレプシーおよびプロゲステロンシグナル伝達亢進により軽減され得る疾患、例えば女性性機能不全または精神病または緑内障のような疾患または障害の処置)のための本発明の化合物の使用方法も提供する。この疾病列挙は網羅的であることを意図せず、下に示す他の疾患および障害を含み得る。
【0019】
他の態様において、本発明はさらに遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明の化合物を薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な記載
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩類は、本明細書に記載し、かつ例示する方法およびそれに準じる方法および化学分野で知られた方法を使用して製造し得る。このような方法は、下記のものを含むが、これらに限定されない。これらの方法のための出発物質は、市販されていないならば、既知化合物の合成に類似するまたはそれに準ずる方法を使用して、化学手法から選択される方法により製造し得る。種々の出発物質、中間体および/または本発明の化合物は、WO2006/133261、WO2009/075784および/またはWO2010/065149に記載する方法または記載する方法に準じる方法を使用して製造し得る。ここで引用する全ての文献は、その全体を引用により本明細書に包含させる。
【0021】
本発明の化合物はそのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形、水和物、溶媒和物および複合体を含む。本発明の範囲内の幾つかの化合物は二重結合を含み得る。本発明における二重結合の記載は、該二重結合のEおよびZ異性体の両者を含むことを意味する。加えて、本発明の範囲内の幾つかの化合物は1個以上の不斉中心を含み得る。本発明は光学的に純粋な立体異性体のいずれかならびに立体異性体の混合物のいずれかの使用を含む。
【0022】
本発明の化合物は、その安定または不安定な同位体が包含されることも意図する。安定な同位体は、同種(すなわち、元素)の豊富にある核種と比較して、1個の付加的中性子を含む非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持されると予測され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態試験にも有用である。例えば、本発明の化合物上のある位置の水素原子を重水素(非放射性である安定な同位体)で置き換え得る。既知の安定な同位体の例は、重水素、13C、15N、18Oを含むが、これらに限定されない。あるいは、同種(すなわち、元素)の豊富にある核種と比較して、複数の付加的中性子を含む放射性同位体である不安定な同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fを、I、CおよびFの対応する豊富にある核種と置き換え得る。本発明の化合物の有用な同位体の他の例は11C同位体である。これらの放射性同位体は、放射性イメージングおよび/または本発明の化合物の薬物動態学的試験に有用である。WO2011/043816(その内容を引用によりその全体を本明細書に包含させる)に開示されたPDE1阻害剤の同位体の製造方法を、本発明の化合物の同位体の製造に使用できる。
【0023】
融点は未補正であり、(dec)は分解を意味する。温度は摂氏(℃)で記載する。特記しない限り、操作は室温または環境温度、すなわち、18〜25℃の範囲の温度で行う。クロマトグラフィーはシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを意味する。薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲルプレート上で行う。NMRデータは、主要構造関連プロトンのデルタ値であり、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で示す。シグナルの形について慣用の略語を使用する。結合定数(J)はHzで示す。マススペクトル(MS)について、最低質量主要イオンを、同位体分節が複数マススペクトルをもたらすときの分子について記載する。溶媒混合物組成は体積パーセントまたは体積比で表す。NMRスペクトルが複雑である場合、構造関連シグナルのみを記載する。
【0024】
用語および略語:
BuLi=n−ブチルリチウム
BuOH=tert−ブチルアルコール、
CAN=硝酸アンモニウムセリウム(IV)、
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン、
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylforamide)、
DMSO=ジメチルスルホキシド、
EtO=ジエチルエーテル、
EtOAc=酢酸エチル、
equiv.=当量、
h=時間、
HPLC=高速液体クロマトグラフィー、
LDA=リチウムジイソプロピルアミド
MeOH=メタノール、
NBS=N−ブロモスクシンイミド
NCS=N−クロロスクシンイミド
NaHCO=重炭酸ナトリウム、
NHOH=水酸化アンモニウム、
Pd(dba)=トリス[ジベンジリデンアセトン]ジパラジウム(0)
PMB=p−メトキシベンジル、
POCl=オキシ塩化リン、
SOCl=塩化チオニル、
TFA=トリフルオロ酢酸、
TFMSA=トリフルオロメタンスルホン酸
THF=テトラヒドロフラン。
【0025】
本発明における合成方法を下に説明する。R基についての意味は、特記しない限り上に式IまたはI(i)または1.1〜1.23のいずれかに明示したとおりである。
【0026】
本発明の一つの面において、式IIaの化合物をジカルボン酸、酢酸無水物および酢酸を混合し、加熱、例えば、約90℃で加熱しながら、約3時間反応させ、次いで冷却することにより、式IIbの中間体化合物を合成できる。
【化7】
〔式中、RはC1−4アルキル、例えば、メチルである。〕
【0027】
例えばIIbの化合物と、例えばPOClのような塩素化化合物を、ある場合には少量の水と共に加熱し、例えば、約80℃で約4時間加熱して反応させ、次いで冷却することにより、中間体IIcを製造できる。
【化8】
【0028】
IIcの化合物と、例えばP−Xを、DMFのような溶媒およびKCOのような塩基と、室温でまたは加熱しながら反応させることにより、中間体IIdを生成させ得る。
【化9】
〔式中、Pは保護基[例えば、p−メトキシベンジル基(PMB)]であり;Xはハロゲン、メシレートまたはトシレートのような脱離基である。〕。好ましくはPはパラメトキシベンジル(PMB)であり、塩基は炭酸カリウムである。
【0029】
中間体IIeを、IIdの化合物と、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物を、メタノールのような溶媒中で、例えば、約4時間、還流して反応させ、次いで冷却することにより製造し得る。
【化10】
【0030】
例えばIIeの化合物とPOClおよびDMFを反応させることにより、中間体IVaを生成させ得る。
【化11】
〔式中、Rは例えばメチル基のような先に式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかにおいて定義した通りである。〕
【0031】
中間体IVbは、IVaの化合物と、例えばR−Xを、DMFのような溶媒およびKCOのような塩基中、室温でまたは加熱しながら反応させることにより生成させ得る(反応1)。
【化12】
【0032】
Vbの化合物から、保護基Pを適当な方法で除去することにより中間体IVcを合成し得る。例えば、PがPMB基であるならば、それはCANまたはTFA/TFMSAを用いて、室温で除去できる(反応2)。
【化13】
がBOCであるとき、本化合物は塩酸またはTFAのような酸を使用して脱保護し得る。
【0033】
中間体IVdは、IVcの化合物と、例えばPOClのような塩素化化合物を、約2日間還流させるかまたは密閉バイアル中150〜200℃にて約10分間マイクロ波装置で加熱して反応させ、次いで冷却することにより製造できる(反応3)。
【化14】
【0034】
IVdの化合物を、アミノアルコールと、DMFのような溶媒中、塩基性条件下、一夜加熱して反応させ、次いで冷却することにより中間体IVeを生成させ得る(反応4A)。
【化15】
【0035】
あるいは、中間体IVeを、IVcの化合物から、アミノアルコールおよびBOPのようなカップリング剤と、DBUのような塩基の存在下で反応させることにより直接合成できる(反応4B)。
【化16】
〔式中、全ての置換基は先に定義したとおりである。〕
【0036】
化合物IVfは、IVeの化合物と例えばSOClのような脱水/ハロゲン化剤を、CHClのような溶媒中、室温で一夜または35℃に加熱して数時間反応させ、次いで冷却することにより生成させ得る(反応5)。あるいは、化合物IVeと4−トルエンスルホニルクロライドおよびピリジンを反応させることにより化合物IVfを製造し得る。
【化17】
【0037】
Xがハロゲン(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード)である化合物IVgは、IVfの化合物を、例えばNCS、NBSまたはIのようなハロゲン化剤およびLDAまたはn−BuLiのような塩基(例えば、LDA存在下のNCS)と、THFのような溶媒中、低温で数時間反応させることにより生成させ得る(反応6)。
【化18】
【0038】
あるいは、IVfの化合物と例えばヘキサクロロエタンのようなハロゲン化剤およびLiHMDSのような塩基を、THFのような溶媒中、低温で数時間反応させることにより化合物IVgを生成させ得る(反応6)。
【化19】
【0039】
式Iの化合物または1.1〜1.23のいずれかは、IVgの化合物とR−SH(式中、Rは式Iにおいて定義したとおりである)を、塩基(例えば、炭酸カリウム)存在下に、加熱、例えば、密閉チューブ中4バールで、例えば、150℃で1時間、マイクロ波リアクター中で撹拌しながら加熱して反応させることにより、化合物IVgを生成させ得る。
【化20】
【0040】
あるいは、IVfの化合物とジスルフィドR−S−S−Rを、リチウム剤(例えばLiHMDS)のような強塩基存在下、例えばTHFのような溶媒中で反応させることにより式Iの化合物を生成させ得る。
【0041】
あるいは、式Iの化合物は、例えば、化合物1−Aと例えばR−Xを、DMFのような溶媒およびKCOのような塩基中、室温でまたは加熱しながら反応させることにより製造し得る。
【化21】
〔全ての置換基は先に定義したとおりであり(例えば、R〜Rは先に式IまたはI(i)または1.1〜1.23のいずれかで定義したとおり);Xはハロゲン、メシレートまたはトシレートのような脱離基である。〕
【0042】
本発明は、それ故に、化合物1−AとR−Xを、室温でまたは加熱しながら反応させることを含む、式Iの化合物の製造方法を提供する。さらなる態様において、この方法はさらにKCOのような塩基を存在させることを含む。
【化22】
【0043】
他の面において、本発明は、IVgの化合物とR−SHを、塩基(例えば、炭酸カリウム)存在下、加熱しながら、例えば、密閉管中4バールで撹拌しながら、マイクロ波リアクター中、、例えば、150℃で1時間反応させることを含む、式IまたはI(i)の化合物の製造方法を提供する。
【化23】
【0044】
本発明の化合物の使用方法
本発明の化合物は、例えば、環状ヌクレオチド合成のインデューサー、例えばドーパミンおよび一酸化窒素(NO)の阻害またはレベル低下によるPDE1発現増加またはcAMPおよびcGMP発現減少が原因の、cAMPおよびcGMP仲介経路の混乱または損傷により特徴付けられる疾患の処置に有用である。PDE1によるcAMPおよびcGMP分解を防止することにより、それによりcAMPおよびcGMPの細胞内レベルを上昇させることにより、本発明の化合物は環状ヌクレオチド合成インデューサーの活性を亢進させる。
【0045】
本発明は、
(i) パーキンソン病、下肢静止不能、振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬剤誘発性運動障害を含む神経変性疾患;
(ii) 鬱病、注意欠損障害、注意欠損多動性障害、双極性疾病、不安、睡眠障害、例えば、ナルコレプシー、認知機能障害、例えば、統合失調症の認知機能障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱および薬物嗜癖を含む精神障害;
(iii) 脳血管疾患、卒中、鬱血性心疾患、高血圧、肺高血圧および性機能不全を含む、循環および心血管障害;
(iv) 喘息、慢性閉塞性肺疾患およびアレルギー性鼻炎、ならびに自己免疫性および炎症性疾患を含む、呼吸器および炎症性障害;
(v) プロゲステロンシグナル伝達亢進により軽減され得る疾患、例えば女性性機能不全;
(vi) 精神病または緑内障のような疾患または障害;
(vii) PDE1発現細胞における低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路阻害)により特徴付けられるあらゆる疾患または状態;および/または
(viii) ドーパミンD1受容体シグナル伝達活性低下により特徴付けられるあらゆる疾患または状態
の状態の一つ以上の処置方法であって、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかの有効量を、それを必要とするヒトまたは動物患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0046】
特に好ましい態様において、本発明は、ナルコレプシーの処置または予防方法を提供する。この態様において、PDE1阻害剤を唯一の治療剤として使用してよいが、他の活性剤と組み合わせてもまたは併用のために使用してもよい。故に、本発明は、さらに、ナルコレプシーの処置方法であって、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態である
(i) PDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかおよび
(ii) 例えば、(a)中枢神経系刺激剤−アンフェタミン類およびアンフェタミン様化合物、例えば、メチルフェニデート、右旋性アンフェタミン、メタンフェタミンおよびペモリン;(b)モダフィニル、(c)抗鬱剤、例えば、三環式系(イミプラミン、デシプラミン、クロミプラミンおよびプロトリプチリンを含む)および選択的セロトニン再取り込み阻害剤(フルオキセチンおよびセルトラリンを含む);および/または(d)γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)から選択される、覚醒状態を亢進するまたは睡眠を調節する化合物
の治療有効量を、処置を必要とするヒトまたは動物患者に一緒に、逐次的にまたは同時に投与することを含む、方法を含む。
【0047】
他の態様において、本発明は、さらに、プロゲステロンシグナル伝達の亢進により軽減され得る状態の処置または予防方法であって、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明の化合物、例えば、式Iの化合物のいずれかまたは1.1〜1.23のいずれかの有効量を、処置を必要とするヒトまたは動物に投与することを含む、方法を提供する。プロゲステロンシグナル伝達の亢進により軽減され得る疾患または状態は、女性性機能不全、続発性無月経(例えば、運動性無月経、排卵、閉経期、閉経期症状、甲状腺機能低下症)、月経前緊張症、早産、不妊症、例えば反復流産による不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、自己免疫疾患、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌および甲状腺機能低下症を含むが、これらに限定されない。例えば、プロゲステロンシグナル伝達の亢進により、PDE1阻害剤は、妊娠に対する免疫応答または低プロゲステロン機能のために流産しやすい女性における子宮の裏層上への作用を介して卵の着床を促すために、そして妊娠の維持を助けるために使用し得る。例えば、ここに記載する、新規PDE1阻害剤は、閉経後女性におけるおよびエストロゲン誘発子宮内膜増殖症および癌における、例えば、エストロゲン/エストラジオール/エストリオールおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチン類と組み合わせて投与するホルモン補充療法の効果を亢進するためにも有用であり得る。本発明の方法はまた、例えば繁殖する非ヒト雌哺乳動物における性受容性および/または発情を誘発するために、動物繁殖においても有用である。
【0048】
この態様において、PDE1阻害剤は、前記処置または予防方法に、唯一の治療剤として使用してよいが、他の活性剤と組み合わせてまたは併用投与のためにも、例えばホルモン補充療法と組み合わせても使用し得る。故に、本発明は、さらに、プロゲステロンシグナル伝達の亢進により軽減され得る障害の処置方法であって、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の
(i) PDE1阻害剤、例えば、式Iのいずれかの化合物または1.1〜1.23のいずれかおよび
(ii) 例えば、エストロゲンおよびエストロゲン類似体(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストラジオールエステル類)およびプロゲステロンおよびプロゲステロン類似体(例えば、プロゲスチン類)から選択されるホルモン
の治療有効量を、処置を必要とするヒトまたは動物患者に一緒に、逐次的にまたは同時に投与することを含む、方法を含む。
【0049】
本発明はまた、細胞または組織内のドーパミンD1細胞内シグナル伝達活性を亢進または増強するための方法であって、該細胞または組織と、PDE1活性を阻害するのに十分な量の本発明の、例えば、式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかを接触させることを含む、方法も提供する。
【0050】
本発明はまた、処置を必要とする患者におけるPDE1関連障害、ドーパミンD1受容体細胞内シグナル伝達経路障害またはプロゲステロンシグナル伝達経路の亢進により軽減され得る障害の処置方法であって、該患者にPDE1を阻害する有効量の本発明の例えば、式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかを投与し、ここで、PDE1活性がDARPP−32および/またはGluR1 AMPA受容体のリン酸化を調節する、方法を提供する。
【0051】
他の面において、本発明はまた緑内障または高眼圧の処置方法であって、眼科的に適合性の担体中の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のホスホジエステラーゼタイプI(PDE1)阻害剤、例えば、式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかの治療有効量を、処置を必要とする患者の眼に局所投与することを含む、方法も提供する。しかしながら、処置は、全身治療であってよくまたは全身治療を含む。全身治療は、例えば、直接血流に届き得る処置または経口投与法を含む。
【0052】
本発明は、さらに、PDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかを含む局所的眼使用のための医薬組成物、例えば、遊離形態または眼科的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかを、眼科的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、眼用の溶液、懸濁液、クリームまたは軟膏を提供する。
【0053】
場合により、PDE1阻害剤は緑内障または高眼圧の処置に有用な第二の薬物と逐次的にまたは同時に投与してよい。2種の活性剤を投与するとき、各薬剤の治療有効量は単剤としての活性に必要な量を下回り得る。従って、閾値以下の量(すなわち、単剤療法として必要なレベルより低い量)が治療的に有効であると見なされ、また有効量とも呼ばれ得る。実際、異なる作用機序および異なる副作用プロファイルの異なる薬剤を投与する利点は、一方または両方の薬剤の投与量減少および副作用軽減、ならびに単剤療法としてのそれらの活性の亢進または増強であり得る。
【0054】
本発明は、故に、緑内障および高眼圧から選択される状態の処置方法であって、処置を必要とする患者に、眼内圧を低下させることが知られている薬剤の有効量、例えば、閾値以下の量を、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかの有効量、例えば、閾値以下の量を、併用した眼内圧を低下させることが知られている薬剤の量およびPDE1阻害剤の量が、該状態を処置するのに有用であるように、同時に、一緒にまたは逐次的に投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
一つの態様において、これらの薬剤の一方または両方を眼に局所投与する。故に、本発明は、眼内圧を低下させることが知られた薬剤の低投与量を、PDE1阻害剤の有効量と同時に、一緒にまたは逐次的に投与することによる、緑内障または高眼圧の処置の副作用を軽減する方法を提供する。しかしながら、局所投与以外の方法、例えば全身治療投与もまた利用し得る。
【0056】
PDE1阻害剤と組み合わせて使用する任意の1種または複数種の付加的薬剤は、例えば、典型的にプロスタグランジン、ピロカルピン、エピネフリンの点眼または、例えばチモロールでの局所β−ブロッカー処置、ならびに炭酸脱水酵素の全身投与阻害剤、例えばアセタゾラミドを含む既存の薬剤から選択され得る。コリンエステラーゼ阻害剤、例えばフィゾスチグミンおよびエコチオパートも用いてよく、ピロカルピンに類似する効果を有する。緑内障処置に現在使用されている薬剤は、例えば、次のものを含む。
1. ブドウ膜強膜路の眼房水を増加させるプロスタグランジン類似体、例えばラタノプロスト(キサラタン)、ビマトプロスト(ルミガン)およびトラボプロスト(トラバタンズ)。ビマトプロストも経線維柱帯房水流出を増加させる。
2. 毛様体による眼房水産生を減少させる、チモロール、レボブノロール(Betagan)およびベタキソロールのような局所β−アドレナリン受容体アンタゴニスト。
3. 房水産生減少およびぶどう膜強膜路増加の二機構により作用する、ブリモニジン(アイファガン)のようなα−アドレナリンアゴニスト。
4. エピネフリンおよびジピベフリン(Propine)のような低選択的交感神経模倣剤は、線維柱帯網およびおそらくブドウ膜強膜路経路を介する眼房水流出を、おそらくβ−受容体アゴニスト作用により増加させる。
5. ピロカルピンのような縮瞳剤(副交感神経刺激剤)は、毛様体筋肉の収縮、線維柱帯網の締め付けおよび眼房水の流出増加により作用する。
6. ドルゾラミド(トルソプト)、ブリンゾラミド(エイゾプト)、アセタゾラミド(ダイアモックス)のような炭酸脱水酵素阻害剤は、毛様体における炭酸脱水酵素阻害により眼房水分泌を低下させる。
7. フィゾスチグミンも、緑内障処置および胃排出遅延に使用される。
【0057】
例えば、本発明は、本発明のPDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかおよび(i)プロスタノイド類であるウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロストまたはビマトプロスト;(ii)ブリモニジン、アプラクロニジンまたはジピベフリンのようなαアドレナリンアゴニストおよび(iii)ピロカルピンのようなムスカリンアゴニストから選択される薬物を含む、医薬組成物を提供する。例えば、本発明は、遊離形態または眼科的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤を、ビマトプロスト、アブリモニジン、ブリモニジン、チモロールまたはこれらの組み合わせと、眼科的に許容される希釈剤または担体を組み合わせてまたは混合して含む、眼用製剤を提供する。組み合わせの選択がどのように行われても、これに加えて、当業者は適当な選択的受容体サブタイプアゴニストまたはアンタゴニストを選択できる。例えば、αアドレナリンアゴニストについて、例えば、α1アドレナリン受容体に選択的なアゴニストまたはブリモニジンのようなαアドレナリン受容体に選択的なアゴニストを選択できる。β−アドレナリン受容体アンタゴニストについて、適切な治療適用によって、βまたはβまたはβのいずれかに選択的なアンタゴニストを選択できる。また特定の受容体サブタイプ、例えばM−Mに選択的なムスカリンアゴニストも選択できる。
【0058】
PDE1阻害剤を、眼用の溶液、クリームまたは軟膏を含む眼用組成物の形態で投与できる。眼用組成物は、さらに、眼圧低下剤を含んでよい。
【0059】
さらに別の例において、開示されたPDE1阻害剤は、ビマトプロスト点眼液、酒石酸ブリモニジン点眼液または酒石酸ブリモニジン/マレイン酸チモロール点眼液であり得る眼圧低下剤の閾値以下の量と組み合わせ得る。
【0060】
上記方法に加えて、PDE1阻害剤が精神病、例えば、精神病性症状、例えば幻覚、妄想性または奇異な妄想または著しく混乱した会話および思考により特徴付けられるあらゆる状態、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病の処置に有用であることも、驚くべきことに判明した。いかなる理論にも縛られることを意図しないが、定型および非定型抗精神病剤、例えばクロザピンは、主にドーパミンD2受容体においてそのアンタゴニスト活性を有すると考えられる。しかしながら、PDE1阻害剤は、主にドーパミンD1受容体でのシグナル伝達亢進に作用する。D1受容体シグナル伝達亢進により、PDE1阻害剤は、種々の脳領域、例えば側坐核ニューロンおよび前頭前野におけるNMDA受容体機能を増加できる。この機能の亢進は、例えばNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体で見ることができ、例えば、キナーゼ群のSrcおよびタンパク質キナーゼAファミリーの活性化を介して起こり得る。
【0061】
それ故に、本発明は、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病の新規処置方法であって、処置を必要とする患者に遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のホスホジエステラーゼ−1(PDE1)阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかの治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0062】
PDE1阻害剤は、前記処置または予防方法に唯一の治療剤として使用してよいが、他の活性剤と組み合わせても併用のために使用してもよい。故に、本発明は、さらに、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害または躁病の処置方法であって、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の
(i) 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤;および
(ii) 抗精神病剤、例えば、
定型抗精神病剤、例えば、
ブチロフェノン類、例えばハロペリドール(Haldol、セレネース)、ドロペリドール(ドロレプタン);
フェノチアジン類、例えば、クロルプロマジン(Thorazine、Largactil)、フルフェナジン(Prolixin)、ペルフェナジン(トリラホン)、プロクロルペラジン(Compazine)、チオリダジン(Mellaril、メレリル)、トリフロペラジン(Stelazine)、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン(Vesprin)、レボメプロマジン(Nozinan)、プロメタジン(フェネルガン)、ピモジド(オーラップ);
チオキサンテン類、例えば、クロルプロチキセン、フルペンチキソール(Depixol、Fluanxol)、チオチキセン(ナーベン)、ズクロペンチキソール(Clopixol、Acuphase);
非定型抗精神病剤、例えば、
クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)、クエチアピン(セロクエル)、ジプラシドン(Geodon)、アミスルプリド(Solian)、パリペリドン(インヴェガ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、Bifeprunox;ノルクロザピン
の治療有効量を、処置を必要とする患者に一緒に、逐次的にまたは同時に投与することを含む、方法を含む。
【0063】
特定の態様において、本発明の化合物は、特に統合失調症の処置または予防に有用である。
【0064】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物は、特にパーキンソン病、統合失調症、ナルコレプシー、緑内障および女性性機能不全の処置に有用である。
【0065】
さらに別の面において、本発明は、睫毛の伸長または成長促進のための方法であって、プロスタグランジン類似体、例えば、ビマトプロストの有効量を、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかの有効量と一緒に、同時にまたは逐次的に処置を必要とする患者の眼に投与することを含む、方法を提供する。
【0066】
さらに別の面において、本発明は、外傷性脳傷害の処置または予防方法であって、処置を必要とする患者に治療有効量の遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明のPDE1阻害剤、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかを投与することを含む、方法を提供する。外傷性脳傷害(TBI)は、限局性脳傷害および汎発性脳傷害の両者を含む、一次性傷害ならびに二次性傷害を包含する。二次性傷害は、最初の(一次性)傷害後の炎症性応答および進行が原因であるまたはそれにより悪化する、種々の細胞内過程(例えば、活性酸素種による毒性、グルタミン酸受容体の過剰刺激、カルシウム過剰流入および炎症性上方制御)に起因する、複数の、並行した相互作用するおよび相互依存的な生物学的反応のカスケードである。
【0067】
本発明はまた
(i) 例えば上に記載したあらゆる疾患または状態のあらゆる方法または処置に使用するための、前記の遊離形態、薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、例えば、式Iまたは1.1〜1.23のいずれか、
(ii) 上に記載したあらゆる疾患または状態の処置のための(医薬の製造における)、遊離形態、薬学的に許容される塩形態の前記の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかの使用、
(iii) 遊離形態、薬学的に許容される塩形態の前記の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかを、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物および
(iv) 上に記載したあらゆる疾患または状態の処置において使用するための、遊離形態、薬学的に許容される塩形態の前記の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかを、薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合して含む、医薬組成物
を提供する。
【0068】
それ故に、本発明は、次のパーキンソン病、下肢静止不能、振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬剤誘発性運動障害;鬱病、注意欠損障害、注意欠損多動性障害、双極性疾病、不安、睡眠障害、ナルコレプシー、認知機能障害、例えば、統合失調症の認知機能障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、覚醒剤離脱、薬物嗜癖、脳血管疾患、卒中、鬱血性心疾患、高血圧、肺高血圧、性機能不全、喘息、慢性閉塞性肺疾患および/またはアレルギー性鼻炎、自己免疫性疾患、炎症性疾患、女性性機能不全、運動性無月経、排卵、閉経期、閉経期症状、甲状腺機能低下症、月経前緊張症、早産、不妊症、不規則な月経周期、異常子宮出血、骨粗鬆症、多発性硬化症、前立腺肥大、前立腺癌、甲状腺機能低下症、エストロゲン誘発子宮内膜増殖症または癌;PDE1発現細胞におけるcAMPおよび/またはcGMP低下(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路阻害)および/またはドーパミンD1受容体シグナル伝達活性低下により特徴付けられるあらゆる疾患または状態;および/またはプロゲステロンシグナル伝達の亢進により軽減され得るあらゆる疾患または状態である疾患の処置または予防的処置のための(医薬の製造における)、医薬組成物形態の、遊離形態、薬学的に許容される塩形態の前記の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかまたは本発明の化合物の使用を提供する。
【0069】
本発明はまた、
a) 緑内障または高眼圧、
b) 精神病、例えば、精神病性症状、例えば幻覚、妄想性または奇異な妄想または著しく混乱した会話および思考により特徴付けられるあらゆる状態、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害および急性躁病エピソードおよび双極性障害におけるような躁病、
c) 外傷性脳傷害
の処置または予防的処置用医薬の製造のための、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物の使用を提供する。
【0070】
句“本発明の化合物”または“本発明のPDE1阻害剤”は、ここに開示するいずれかのおよび全ての、遊離形態または塩形態の化合物、例えば、前記式I、I(i)の化合物または1.1〜1.23のいずれかを包含する。
【0071】
用語“処置”および“処置する”は、従って、疾患の症状の予防および処置または改善ならびに疾患原因の処置を包含すると解釈すべきである。一つの態様において、本発明は、ここに開示する疾患または障害の処置方法を提供する。他の態様において、本発明は、ここに開示する疾患または障害の予防方法を提供する。
【0072】
処置方法に関して、用語“有効量”は、特定の疾患または障害を処置するための治療有効量を包含することを意図する。
【0073】
用語“肺高血圧”は、肺動脈高血圧を包含することを意図する。
【0074】
用語“患者”は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)患者を含む。特定の態様において、本発明はヒトおよび非ヒトのいずれも包含する。他の態様において、本発明は非ヒトを包含する。他の態様において、本用語はヒトを包含する。
【0075】
本明細書で使用する用語“含む”は、開放末端であることを意図し、付加的な、非列記要素または方法工程を除外しない。
【0076】
本発明の化合物は、特にパーキンソン病、ナルコレプシーおよび女性性機能不全の処置に有用である。
【0077】
前記の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物、例えば、式I、I(i)または1.1〜1.23のいずれかは唯一の治療剤として使用してよいが、他の活性剤と組み合わせてもまたは併用のために使用してもよい。例えば、本発明の化合物がD1アゴニスト、例えばドーパミンの活性を亢進するため、例えば、パーキンソン病を有する患者の処置において、慣用のドーパミン作動薬、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO−B阻害剤)、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン剤と一緒に、逐次的にまたは同時に投与し得る。加えて、例えば、ここに記載する新規PDE1阻害剤は、ホルモン補充療法またはエストロゲン誘発子宮内膜増殖症または癌の処置の有効性を高めるために、エストロゲン/エストラジオール/エストリオールおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチン類と組み合わせても投与し得る。
【0078】
本発明の実施に際して用いられる投与量は、例えば処置すべき特定の疾患または状態、使用する特定の本発明の化合物、投与方法および所望の治療により当然変わる。本発明の化合物は、経口、非経腸、経皮または吸入を含む任意の適当な経路で投与し得るが、好ましくは経口的に投与する。一般に、例えば、上記疾患の処置についての満足いく結果が、約0.01〜2.0mg/kgの程度の投与量の経口投与で示される。大型哺乳動物、例えばヒトにおいて、指示される経口投与のための1日投与量は、従って約0.75〜150mgの範囲であり、簡便には1日1回または2〜4分割して、または毎日持続放出形態で投与する。経口投与のための単位投与量形態は、故に、例えば約0.2〜75mgまたは150mg、例えば約0.2または2.0〜50mg、75mgまたは100mgの本発明の化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含み得る。
【0079】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、製剤分野で知られる希釈剤または添加物および技術を使用して製造し得る。故に、経口投与形態は錠剤、カプセル、溶液、懸濁液などを含み得る。
【実施例】
【0080】
種々の本発明の化合物の製造方法を下に示す。本発明の化合物の中間体ならびに本発明の他の化合物(例えば、式1.23の化合物)およびそれらの塩類は、下記方法に準じておよび/または一般的に詳細な説明に記載した方法に準じておよび化学分野で知られた方法、特にWO2006/133261、WO2009/075784およびWO2010/065149(これらの内容を引用によりその全体を本明細書に包含させる)に記載された方法により、製造し得る。
【0081】
実施例1:
3−(エチルチオ)−2−(4−(5−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オン
【化24】
2mL マイクロ波反応バイアルに3−クロロ−2−(4−(5−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オン(160mg、0.36mmol)、KCO(150mg、1.1mmol)、過剰のエタンチオール(0.6mL)およびシクロペンタノール(0.5mL)を仕込む。バイアルを密閉し、マイクロ波リアクター中、4バール、150℃で1時間、撹拌しながら加熱する。LCMSは出発物質が生成物へ変換されたことを示す。反応混合物を冷却し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、濾過し、HPLCで精製して、126mgの生成物をギ酸塩(74%収率)として、95%の純度で得る。MS (ESI) m/z 465.2 [M+H]+
【0082】
実施例2:
3−(エチルチオ)−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オン
【化25】
2mL マイクロ波反応バイアルに3−クロロ−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オン(90mg、0.2mmol)、KCO(100mg、0.73mmol)、過剰のエタンチオール(0.6mL)およびシクロペンタノール(0.5mL)を仕込む。バイアルを密閉し、マイクロ波リアクター中、4バール、150℃で1時間、撹拌しながら加熱する。LCMSは出発物質が生成物の変換されたことを示す。反応混合物を冷却し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、濾過し、HPLCで精製して、14mgの生成物をギ酸塩(13%収率)として>98%の純度で得る。MS (ESI) m/z 465.2 [M+H]+
【0083】
実施例3:
2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−3−(イソプロピルチオ)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オン
【化26】
2mL マイクロ波反応バイアルに3−クロロ−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−5,7,7−トリメチル−7,8−ジヒドロ−2H−イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(5H)−オンs(88mg、0.2mmol)、K2CO(160mg、1.2mmol)、過剰のプロパン−2−チオール(0.5mL)およびシクロペンタノール(0.5mL)を仕込んだ。バイアルを密閉し、マイクロ波リアクター中、4バール、150℃で1時間、撹拌しながら加熱した。LCMSは出発物質が生成物へ変換されたことを示す。反応混合物を冷却し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、濾過し、HPLCで精製して、58mgの生成物をギ酸塩(55%収率)として96.4%の純度で得る。MS (ESI) m/z 479.3 [M+H]+
【0084】
実施例3−A:
(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(エチルチオ)−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン
【化27】
2mL マイクロ波反応バイアルに(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−3−クロロ−5−メチル−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン(45mg、0.1mmol)、KCO(48mg、0.35mmol)、過剰のエタンチオール(0.6mL)およびシクロペンタノール(0.5mL)を仕込む。バイアルを密閉し、マイクロ波リアクター中、150℃で1時間、撹拌しながら加熱する。LCMSは出発物質が生成物の変換されたことを示す。反応混合物を冷却し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、濾過し、HPLCで精製して、32mgの生成物をギ酸塩(61%収率)として>99%の純度で得る。MS (ESI) m/z 477.1 [M+H]
【0085】
実施例3−B:
(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−5−メチル−3−(イソプロピルチオ)−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン
【化28】
2mL マイクロ波反応バイアルに(6aR,9aS)−5,6a,7,8,9,9a−ヘキサヒドロ−3−クロロ−5−メチル−2−(4−(6−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル)−シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2−a]ピラゾロ[4,3−e]ピリミジン−4(2H)−オン(150mg、0.33mmol)、KCO(270mg、1.95mmol)、過剰のプロパン−2−チオール(0.5mL)およびシクロペンタノール(0.5mL)を仕込む。バイアルを密閉し、マイクロ波リアクター中、150℃で1時間、撹拌しながら加熱する。LCMSは出発物質が生成物へ変換されたことを示す。反応混合物を冷却し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を蒸発乾固し、残渣をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、濾過し、HPLCで精製して、122mgの生成物をギ酸塩(69%収率)として98%の純度で得る。MS (ESI) m/z 491.2 [M+H]+
【0086】
実施例4
IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを使用するインビトロでのPDE1B阻害測定
ホスホジエステラーゼ1B(PDE1B)は、環状グアノシンモノホスフェート(cGMP)を5’−グアノシンモノホスフェート(5’−GMP)に変換する、カルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDE1Bはまた修飾cGMP基質、例えば蛍光分子cGMP−フルオレセインを、対応するGMP−フルオレセインに変換できる。cGMP−フルオレセインからのGMP−フルオレセイン産生は、例えば、IMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属親和性粒子試薬を使用して定量できる。
【0087】
簡単に言うと、IMAP試薬は、GMP−フルオレセインに見られ、cGMP−フルオレセインにない遊離5’−ホスフェートと高親和性で結合する。得られたGMP−フルオレセイン−IMAP複合体はcGMP−フルオレセインと比較して大きい。大きく、ゆっくり転回する複合体と密接に関係する小フルオロフォアを、それらが蛍光を発するときに放出する光子が、蛍光の励起に使用した光子と同じ極性を維持しているために、未結合フルオロフォアと区別できる。
【0088】
ホスホジエステラーゼアッセイにおいて、IMAPと結合できず、それ故にほとんど蛍光偏光を維持できないcGMP−フルオレセインを、IMAPに結合したとき、蛍光偏光(Δmp)を大きく増加させるGMP−フルオレセインに変換する。ホスホジエステラーゼ阻害は、それ故に、Δmp減少として測定される。
【0089】
酵素アッセイ
材料:Molecular Devices (Sunnyvale, CA)から入手可能であるIMAP試薬(反応緩衝液、結合緩衝液、FL−GMPおよびIMAPビーズ)以外の全ての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手可能である。
アッセイ:次のホスホジエステラーゼ酵素類を使用し得る:3’,5’−環状−ヌクレオチド−特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)(主にPDE1B)および当業者により、例えばHEKまたはSF9細胞において産生され得る組み換え完全長ヒトPDE1AおよびPDE1B(それぞれr−hPDE1Aおよびr−hPDE1B)。PDE1酵素を、50%グリセロールで2.5U/mlに再構成する。1単位の酵素は、pH7.5で30℃で1分間あたり1.0μmoleの3’,5’−cAMPを5’−AMPに加水分解する。酵素(1部)を反応緩衝液(1999部)(30μM CaCl、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris−HCl pH7.2、10mM MgCl、0.1%BSA、0.05%NaN)に添加して、最終濃度1.25mU/mlとする。99μlの希釈酵素溶液を、平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加し、そこに100%DMSOに溶解した1μlの試験化合物を添加する。化合物を混合し、酵素と10分間、室温でプレインキュベートする。
【0090】
384ウェルマイクロタイタープレート中で、酵素(4部)および基質溶液(1部)と混合した阻害剤(0.225μM)を合わせることにより、FL−GMP変換反応を開始させる。反応物を暗所で、室温で15分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに、結合試薬(60μl)(1:1800希釈の消泡剤を添加した結合緩衝液中のIMAPビーズの1:400希釈)を添加することにより、反応を停止させる。プレートを、室温で1時間インキュベートして、IMAP結合を完了するまで進行させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて、蛍光偏光(Δmp)を測定する。
【0091】
Δmpの減少により測定したGMP濃度低下は、PDE活性阻害の指標である。IC50値を、0.0037nM〜80,000nMの範囲の8〜16濃度の化合物存在下に酵素活性を測定し、非線形回帰ソフトウェア(XLFit; IDBS, Cambridge, MA)を使用してIC50値を推定することを可能とする薬物濃度対ΔmPをプロットする。
【0092】
本発明の化合物を、PDE1阻害活性について、記載したまたは本記載に準じるアッセイを使用して試験する。例示した本発明の化合物(例えば実施例1−3、3−A、3−Bまたは式1.22および1.23の化合物)は、一般的に、下記のとおり、1μM未満、例えば、約10nM未満、約5nM以下のIC50値を有する。
【表1】
*nd=測定せず
【0094】
実施例5
雌ラットにおける性応答に対するPDE1阻害剤効果
雌ラットにおけるロードシス応答に対するPDE1阻害剤の効果を、Mani, et al., Science (2000) 287: 1053に記載のとおり測定し得る。卵巣切除し、カニューレ処置した野生型ラットを、エストロゲン(2μg)で薬物刺激し、24時間後プロゲステロン(2μg)、本発明のPDE1阻害剤(0.1mg、1.0mgまたは2.5mg)またはゴマ油媒体(対照)を脳室内(icv)注射する。ラットを、雄ラットの存在下、ロードシス応答について試験し得る。ロードシス応答は、ロードシス指数(LQ=ロードシスの数/10マウント×100)により定量する。
【0095】
実施例6 − 新規物体認識アッセイ
本発明の化合物の認知効果増強を測定するために、候補化合物を、新規物体認識(NOR)アッセイにおいて評価し得る。このアッセイプロトコールは、Ennaceur et al., Behav. Brain Res. (1988) 31:47-59およびPrickaerts et al., Eur. J. Pharmacol. (1997) 337:125-136(これらの各々の内容を、引用することにより全体を本明細書に包含させる)に詳細に記載されている。このプロトコールにおいて、ラットを時間T1にチャンバーに入れ、2匹の同じ“見慣れた物体”を6分間調べさせる。24時間後、これらをこのチャンバーに再び入れ、見慣れた物体の一方を新規物体と置き換える。見慣れた物体を超える新規物体への接近に費やした時間で測定した“弁別指数”を次いで測定し得る。齧歯類はT1時の最初の経験を4時間以内に忘れるため、24時間間隔のこの試験は、強い効果増強の指標である。
【0096】
このアッセイプロトコールを、記憶の種々の相を評価するために修飾できる。記憶の3つの一般的相、すなわち、獲得、固定および想起がある。この修飾プロトコールにおいて、ラットに候補化合物をT1の2時間前に投与し、追加投与することなく24時間後に試験し得る。これは、獲得過程の試験である。加えて、T1試験後の他の種々の時点での投与を、記憶固定および想起における化合物の効果を理解するために行い得る。具体的に、これらの投与時間は獲得(T1−2時間)、初期固定(T1+0.1時間)、後記固定(T1+3時間)および想起(T2−2時間)を表す。
【0097】
上記のまたは上記に準ずるプロトコールを使用して、実施例1の化合物は、T1の2時間に投与したとき、0.3mg/Kg POの投与量で媒体に対してp<0.01で活性を示す。
【0098】
実施例7 − ハロペリドール誘発誘発カタレプシーモデル
定型および非定型抗精神病剤で処置している統合失調症およびパーキンソン病患者に存在する運動異常に対する有利な効果の可能性を評価するために、本発明の化合物を、動きのこわばりまたはカタレプシーをハロペリドールまたはリスペリドンのような強力なドーパミンD2受容体アンタゴニストにより誘発するカタレプシーモデルの回復において試験し得る。本方法は、マウスの前脚を3mm直径のつり下げた木の棒を握らせるために置く、“棒握り試験”を使用する。“下りるまでの時間”を、マウスが脚を棒から、床に動かすまでの時間として記録することにより測定する。カタレプシーは、マウスが棒から離れるのを妨げる筋肉のこわばりである。本モデルで誘発されるカタレプシーの軽減は、本化合物が錐体外路副作用が頻繁である統合失調症およびパーキンソン病の両者において有利な効果を有することを示す。
【0099】
合計17匹の8週齢、雄、C57BL/6マウス(Jackson Laboratories)を、実施例1または2の化合物の効果を試験する典型的実験に使用する。マウスを、次の媒体のみ、ハロペリドール単独(3mg/kg PO)、実施例1または2の化合物単独(中投与量、PO)、ハロペリドール+実施例1または2の化合物(低投与量、PO)、ハロペリドール+実施例1または2の化合物(中投与量、PO)またはハロペリドール+実施例1または2の化合物(高投与量、PO)の処置を受ける6群(媒体群についてN=2;N=3マウス/薬物書値群)に分ける。カタレプシースコアを各マウスについて、薬物投与後2時間、3時間、4時間および6時間に記録する。カタレプシー測定に使用するチャンバーは、ケージの床から4cm上に水平に固定された3mm直径の木の棒を備えたPlexiglasケージである。各試験セッションについて、マウスの両方の前脚を棒に置き、一方で後脚はPlexiglas床上にある。マウスが両脚を棒から床表面に下げるまでの時間(すなわち、下りるまでの時間)を最大120秒間まで記録する。マウスが直ぐに下りたら(置いた後10秒間未満)、最大10回まで再試験を行う。10回のいずれも10秒間を超えないならば、最長の時間をカタレプシースコアとして記録する。そうでなければ、最初のカタレプシー時間(>10秒間)を、120秒間の試験時間中記録する。下りるまでの平均時間を各処置群について計算する。実施例1または2の化合物の、ハロペリドール処置後の下りるまでの時間に対する効果を、全ての試験した投与量の各時点での分散分析(ANOVA、F,16)、続くニューマン・クールズpost−hoc多重比較用例検定により群間差異を統計学的に比較することにより評価する。
【0100】
本実施例に記載するまたは記載に準じるプロトコールを使用して、本実験は、実施例1および実施例2の化合物は、<0.1mg/Kgの最小投与量で、カタレプシーモデルに活性であることを示す。