(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複合材料からなる部品、特に、耐火マトリックス材(例えば、炭素および/またはセラミック製)によって緻密化された耐火繊維プリフォーム(例えば、炭素繊維またはセラミック繊維を用いている)により構成された熱構造複合材料からなる部品を製造するためには、化学気相浸透法を用いるのが一般的である。そのような部品の例としては、炭素‐炭素(C‐C)複合材料からなる推進ノズル、C‐C複合材料からなる、特に航空機ブレーキ用のブレーキディスク、またはセラミックマトリックス複合材料(CMC)からなるブレードが挙げられる。
【0003】
化学気相浸透を用いた多孔質基体の緻密化は、化学気相浸透設備の反応チャンバに支持具を用いて基体を配置することと、基体を緻密化するために基体の内部に蒸着させる材料の前駆体である1つまたは複数の成分を含む反応ガスを反応チャンバ内に導入することとから成る。基体の内部の到達可能な空孔内にガスを分散させてガスの成分の分解またはガスの複数の成分間で起こる反応により所望の材料を基体の内部に蒸着できるように、浸透条件、特に反応ガスの組成および流量と反応チャンバ内の温度および圧力とが選択される。反応ガスは、反応チャンバに配置されかつ反応ガス入口が開口している予熱領域に通されることによって予熱されるのが一般的である。その方法は自由流れでの化学気相浸透法に相当する。
【0004】
化学気相浸透用の工業設備では、緻密化法の処理量を向上させ、その結果として反応チャンバの負荷率を向上させるために、緻密化対象である複数の基体またはプリフォームを反応チャンバに同時に装填するのが一般的である。
【0005】
環状の多孔質基体を化学気相浸透により緻密化するための方法および設備が、特に、文献US2004/237898およびUS5904957に記載されている。しかし、それらの方法は実質的に、積層された環状の基体の緻密化に関しており、軸対称ではない形状を呈する基体の緻密化には適しない。
【0006】
文献US2008/0152803には、装填器具であって、第1、第2プレートの間に配置されかつその周囲に緻密化対象である薄いプレート状の基体が放射状に配置される筒状のダクトを備える装填器具を用いることが記載されている。このように装填された器具を、上記筒状のダクトに接続される反応ガス導入口を有する浸透炉の反応チャンバ内に設置して反応ガスをダクト内に導入できるようにして、ガスを基体の主面に沿って実質的に放射状の流れ方向に分配させる。
【0007】
しかし、その装填器具は、薄い矩形のプレートなどの薄くて形状が単純な基体の定方向流れでの緻密化に限られており、その器具では、ブレード用繊維プリフォームなどの複雑な三次元形状をした基体の均一な緻密化を達成できない。複雑な三次元形状をした基体上のガス流れを制御するのはより困難である。緻密化対象である基体群上の反応ガスの流れが制御できないと、基体に緻密化の勾配が発生する。基体の緻密化の均一性は、結果として得られる部品の機械的性能を左右する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多孔質基体、特に主として長手方向に延びる三次元形状をした薄い基体を高い装填容量で緻密化できるようにする装填手段を提供するとともに、基体における緻密化の勾配を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、
少なくとも1つの環状装填台であって、互いに同心円状に配置されかつ緻密化対象である多孔質基体のための環状装填空間を互いの間に画定する第1環状垂直壁と第2環状垂直壁とによって形成される環状装填台と、
上記環状装填空間の下部および上部をそれぞれ覆う第1プレートおよび第2プレートと、を備え、
上記第1環状垂直壁および上記第2環状垂直壁のそれぞれは、上記環状装填空間に配置された複数の支持要素を備え、上記第1環状垂直壁の上記支持要素と上記第2環状垂直壁の上記支持要素とは、緻密化対象である各基体をそれぞれ受けるための単位装填セルが互いの間に画定されるように径方向に並んで配置され、
少なくとも1つのガス供給オリフィスと少なくとも1つのガス排出オリフィスとを各単位装填セルの近傍にさらに備える装填装置、によって達成される。
【0010】
本発明の装填装置によれば、所定の設備で同時に緻密化できる基体の数を最適化すると同時に、各基体を均一に緻密化するように各基体における反応ガスの流れ方向を制御することが可能になる。このような多数の基体の緻密化は、流れが方向づけられていない場合のように基体同士が近接していると達成できない。
【0011】
従って、本発明の方法によれば、薄い多孔質基体の緻密化が可能になるとともに、得られる部品の品質を向上させかつ反応チャンバの装填容積を増大させることが可能になる。
【0012】
本発明の装填装置が反応チャンバに設置されると、装填装置は、ガスの流れが制御された小型反応器として作動する。この装置を用いれば、基体を装填したものを緻密化設備とは別にあらかじめ準備でき、リスクを伴わずに反応チャンバへ容易に搬送できる。これにより、チャンバの装填・脱装に要する時間が低減される。
【0013】
本発明の装置の1つの実施形態において、各装填台の上記第1環状垂直壁は、少なくとも1つのガス供給オリフィスを各単位装填セルの近傍に備え、一方、各装填台の上記第2環状垂直壁は、少なくとも1つのガス排出オリフィスを各単位装填セルの近傍に備える。
【0014】
本発明の1つの側面において、上記装填装置は、互いに積層されかつ上記第1、第2プレートの間に配置された複数の環状装填台を備える。
【0015】
本発明の装置の別の実施形態において、上記第1プレートは、各単位装填セルに対応する位置にガス供給オリフィスを有し、一方、上記第2プレートは、各単位装填セルに対応する位置にガス排出オリフィスを有する。
【0016】
本発明の1つの側面において、上記装填装置は、互いに積層されかつ上記第1、第2プレートの間に配置された複数の環状装填台を備える。
【0017】
本発明の別の側面において、上記装填装置は、径寸法がそれぞれ異なる複数の環状装填台をさらに備え、該装填台が互いに同心円状に配置されている。
【0018】
本発明はまた、主として長手方向に延びる三次元形状をした多孔質基体を化学気相浸透により緻密化するための設備であって、反応チャンバと、上記チャンバの第1の端部に位置する反応ガス導入管と、上記チャンバの上記第1の端部とは反対側の第2の端部の近傍に位置する排出管と、を備え、上記チャンバは主として長手方向に延びる三次元形状をした複数の多孔質基体を収容し、該基体は複数の装填台を備える本発明の装填装置に配置され、該装置の1つまたは複数の上記ガス供給オリフィスに、上記チャンバの上記反応ガス導入管を介して反応ガスが供給されることを特徴とする設備を提供する。
【0019】
本発明はまた、主として長手方向に延びる三次元形状をした多孔質基体を化学気相浸透により緻密化するための設備であって、反応チャンバと、上記チャンバの第1の端部に位置する複数の反応ガス導入管と、上記チャンバの上記第1の端部とは反対側の第2の端部の近傍に位置する少なくとも1つの排出管と、を備え、上記チャンバは主として長手方向に延びる三次元形状をした複数の多孔質基体を収容し、該基体は1つまたは複数の装填装置に配置され、各装置は、複数の環状装填台であって、互いに積層されおよび/または同心円状に配置されかつそのガス供給オリフィスおよびガス排出オリフィスがそれぞれ上記第1プレートおよび第2プレートに形成されている複数の環状装填台を備え、各装置の1つまたは複数の上記ガス供給オリフィスに、上記チャンバの上記反応ガス導入管を介して反応ガスが供給されることを特徴とする設備を提供する。
【0020】
特に、上記複数の装填装置は、同じ直径を有する装填装置であって、上記反応チャンバに並置されてもよく、または順に直径が減少する装填装置であって、ピラミッド構造になるように互いに積層されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図3は、装填装置または器具10を示しており、この装填装置10は、緻密化対象である基体が装填されると、化学気相浸透用の工業設備の反応チャンバに挿入される。ここで説明する例では、器具10は航空機エンジンブレード用の繊維プリフォーム20を収容するように設計されている。
【0023】
各プリフォーム20は、両端部21、22の間を長手方向に延び、翼形部120と根元部130とを備え、根元部130は、例えば球状の断面を有する厚みの大きい部分により形成され、タング132により延長されている(
図3)。翼形部120は、根元部130と先端部121との間を長手方向に延び、その断面において、翼形部120の吸引側および圧力側にそれぞれ対応する2つの面122、123を画定する可変厚の湾曲した外形を呈する。ここで説明する例では、翼形部120はまた、内側ブレードプラットフォーム140と外側ブレードプラットフォーム160とを有する。
【0024】
ここで説明する装填装置10は、第1内側環状垂直壁110と第2外側環状垂直壁111とから構成される環状装填台11(
図2)を備える。壁110、111は、互いの間にプリフォーム20を装填するための環状空間13が画定されるように、間隔保持部材12によって互いに同心円状に保持される。各垂直壁には、ブレードプリフォーム20の両端部21、22の一方を受けるための支持要素が設けられている。より正確に言えば、内側環状垂直壁110は、壁110の外周に均等に配置された切り欠き1100を有する。切り欠き1100は、プリフォーム20の端部21を受けるように設計されている。外側環状垂直壁111は、間隔保持材12の下部に固定されるリング1110を有する。リング1110は、プリフォーム20の端部22を支持するためのものである。ここで説明する例では、リング1110はまた、隣り合うブレードの端部22同士を隔離するための複数対の仕切り部材1111を備える。仕切り部材1111の各対は、プリフォーム20を受けるための単位装填セル14(
図2)が画定されるように、切り欠き1100と径方向に並んで配置される。プリフォーム20が装填装置10に配置されると、プリフォーム20は壁110、111の間を径方向に延び、これにより器具の装填容量が最適化される。さらに、環状垂直壁において支持手段を用いることにより、装填装置と緻密化対象である基体との接触面積を最小限に抑えることができ、その結果反応ガスによる浸透が可能な面積を最適化できる。
【0025】
本発明の第1実施形態によれば、壁110、111のそれぞれが複数のガス通気オリフィスを有する。より正確に言えば、内側環状垂直壁110は、2つの隣り合う単位装填セル14に同時にガスが供給されるように2つの隣り合う切り欠きの間にそれぞれ配置されたオリフィス1102を有する。外側環状垂直壁111は、それぞれ単位装填セルに対応する位置に配置されたオリフィス1112を有する。
【0026】
壁110、111の間に画定される環状装填空間13は、その下部が第1プレート112によって閉じられ、その上部が第2プレート113によって閉じられる。第2プレート113は、反応ガスがオリフィス1102に供給されるように、緻密化設備または炉の反応チャンバへ反応ガスを供給するための配管に接続するための中央開口1130を有する。環状装填空間13の良好な密閉を確保するために、内側環状垂直壁110は、その下端と上端とにそれぞれ配置された2つの環状シール部材1103、1104を有し、外側環状垂直壁111は、同様に、その下端と上端とにそれぞれ配置された2つの環状シール部材1113、1114を有する。
【0027】
図3は、緻密化時の構成における装填装置10、すなわち、プリフォーム20が装填され、プレート112、113が壁110、111の下端と上端とにそれぞれ装着された状態の装填装置10を示している。後にさらに詳述するように、装填装置10は、反応ガス流Fgが導入される化学気相浸透設備または炉の反応チャンバに配置される。反応ガス流Fgは、内側環状垂直壁110のオリフィス1102を介して、環状装填空間13に導入される。残留ガスは、外側環状垂直壁111のオリフィス1112を介して排出される。プリフォーム20が装填装置10に放射状に配置されるとともに、ガス通気オリフィス1102、1112が各単位装填セルに対応する位置に存在しているので、緻密化対象であるプリフォーム20の全長にわたって可能な限りプリフォーム20の近くに反応ガス流を導くことができ、これによりプリフォームの均一な緻密化を達成できる。
【0028】
図4および
図5は、装填装置30を示しており、この装填装置30は、反応ガス流を環状装填空間に通すためのオリフィスが装填空間を閉じるための環状プレートに設けられている点で上述した装置10とは異なる。
【0029】
図1および
図2に示した装置10と同様に、装填装置30は、互いの間にプリフォーム20を装填するための環状空間33が画定されるように間隔保持部材32によって互いに同心円状に保持された第1内側環状垂直壁310と第2外側環状垂直壁311とによって形成された環状装填台31を備える。内側環状垂直壁310は切り欠き3100を有し、一方外側環状垂直壁311は、間隔保持部材32の下部に固定されかつ複数対の仕切り部材3111が設けられたリング3110を有する。仕切り部材3111の各対とそれに対向する切り欠き3100との間に存在する空間が、プリフォーム20のための単位装填セル34を形成する。プリフォーム20は、単位装填セル34に配置され、壁310、311の間を径方向に延びる。
【0030】
壁310、311の間に画定される環状装填空間33は、その下部が第1環状プレート312によって閉じられ、その上部が第2環状プレート313によって閉じられ、環状シール部材3103、3104、3113、3114によってプレート312、313と壁310、311との間が良好に密閉される。
【0031】
ここで説明する実施形態では、プレート312、313のそれぞれは、反応ガスを環状装填空間33に通すためのオリフィスを有する。より正確に言えば、環状プレート312、313のそれぞれは、オリフィス3120、3132からなる複数の一連なりのオリフィス群であってそれぞれ各単位装填セル34の下方または上方を径方向に延びるオリフィス群を有する。ここで説明する例では、下部環状プレート312は各単位装填セル34の下方に一連なりの9つのオリフィスを有する。同様に、上部環状プレート313は、各単位装填セル34の上方に一連なりの9つのオリフィスを有する。
【0032】
装填装置30では、反応ガス流Fgが、オリフィス3120または3132から環状装填空間に導入され、その残留分はオリフィス3132または3120を介して排出される(
図5)。これにより、各単位装填セル34において、当該装填セルに沿って均等に配分された複数の反応ガス流路が生じ、それによってプリフォーム全体にガスを浴びせることができ、プリフォームの均一な緻密化を達成できる。
【0033】
上述した装填装置は、単一の装填台、すなわち単一の環状装填空間を備える。しかし、本発明の装填装置は、浸透設備内の占有率に関して最適な相対関係で配置された複数の装填台を有してもよい。
【0034】
本発明の第1の側面において、装填装置は、互いに積層された複数の環状装填台を有する。
【0035】
図6および
図7は、互いに積層された複数の環状装填台210、220、230、240、250を備える装填装置200を示しており、互いに積層された複数の環状装填台210、220、230、240、250は、それぞれ内側環状垂直壁2100、2200、2300、2400、2500と外側環状垂直壁2101、2201、2301、2401、2501とによって形成され、両壁の間にそれぞれ環状装填空間2102、2202、2302、2402、2502を画定している。装填台210、220、230、240、250のそれぞれは、
図1および
図2を参照して上述した装填台11の構造と同様の構造を有しており、簡略のためそれについて再度詳述はしない。
【0036】
環状装填台210、220、230、240、250の間を密閉するために、環状シール部材260が各内側環状垂直壁2200、2300、2400、2500の上端に配置され、環状シール部材261が各外側環状垂直壁2201、2301、2401、2501の上端に配置されている。
【0037】
環状装填台250によって構成される装填装置200の下部は、第1環状プレート270によって、その環状プレート270と装填台250の内側外側環状垂直壁2500、2501の下端との間に2つの環状シール部材262、263を介在させた状態で閉じられ、一方、環状装填台210によって構成される装填装置200の上部は、第2環状プレート271によって、その環状プレート271と装填台210の内側外側環状垂直壁2100、2101の上端との間に2つの環状シール部材264、265を介在させた状態で閉じられる。
【0038】
装填台210、220、230、240、250にブレード繊維プリフォーム40が装填されると、装填装置200によって構成される積層体の中心に反応ガスが供給され、それにより、反応ガス流Fgが、装填台210、220、230、240、250のそれぞれの環状装填空間2102、2202、2302、2402、2502に、内側環状垂直壁2100、2200、2300、2400、2500のオリフィス2110、2210、2310、2410、2510を介して入り込む。環状装填空間2102、2202、2302、2402、2502を通過後、反応ガスの残留分は外側環状垂直壁2101、2201、2301、2401、2501のオリフィス2111、2211、2311、2411、2511を介して抜き出される。
【0039】
図8および
図9は、互いに積層されかつそれぞれ環状装填空間4102、4202、4302、4402、4502を画定する複数の環状装填台410、420、430、440、450を備える装填装置400を示している。ブレード繊維プリフォーム50が、これら環状装填空間のそれぞれに上述したように配置される。装填台410、420、430、440、450のそれぞれは、
図4を参照して説明した装填台31の構造と同様の構造を有しており、簡略のためそれについて再度詳述はしない。
【0040】
環状装填台410、420、430、440、450の間を密閉するために、環状シール部材460が各内側環状垂直壁4200、4300、4400、4500の上端に配置され、環状シール部材461が各外側環状垂直壁4201、4301、4401、4501の上端に配置されている。
【0041】
環状装填台450によって構成される装填装置400の下部は、第1環状プレート470によって、その環状プレート470と装填台410の内側外側環状垂直壁4500、4501の下端との間に2つの環状シール部材462、463を介在させた状態で閉じられ、一方、環状装填台410によって構成される装填装置400の上部は、第2環状プレート471によって、その環状プレート472と装填台410の内側外側環状垂直壁4100、4101の上端との間に2つの環状シール部材464、465を介在させた状態で閉じられる。
【0042】
各プレート470、471は、それぞれオリフィス4701、4711からなる複数の一連なりのオリフィス群であって当該プレートに沿って径方向に延びる複数の一連なりのオリフィス群を有する。装填装置400における繊維プリフォーム50の緻密化時には、反応ガス流Fgが、例えばオリフィス4711から導入され、環状装填空間4102、4202、4302、4402、4502を順に通過する。このような場合には、反応ガス残留分は、オリフィス4701を介して装填装置400から排出される。当然ながら、反応ガスは、装置内を逆方向に流通させてもよい。すなわち、反応ガスをオリフィス4701を介して装置に導入し、オリフィス4711を介して排出してもよい。
【0043】
装填装置400のように、密閉プレートのオリフィスを介して反応ガスが供給される複数の環状装填台を備える装填装置を用いてブレード繊維プリフォームを緻密化する場合について、出願人は、ブレードプリフォームの翼部が2つの隣り合う装填台間で異なる方向を向いているとより良好な反応ガス流が得られることを確認した。より正確に言えば、
図9に示すように、環状装填台410、430、450に存在するブレードプリフォーム50が、それらの翼部520の吸引側の面522が対応する環状装填空間において時計回り方向を向くように配置され、一方、装填台420、440に存在するブレードプリフォーム50が、それらの翼部520の吸引側の面522が対応する環状装填空間において反時計回り方向を向くように配置される。積層体におけるひとつの装填台と別の装填台との間で、ブレードプリフォームの圧力側(または吸引側)の面が時計回り方向と反時計回り方向とを交互に向くようにすることで、装填装置への反応ガス入口の最も近くに位置しているプリフォームと当該入口から最も遠くに位置しているプリフォームとの間でガスがより良好に配分され、その結果、装填装置においてより均一なプリフォームの緻密化を達成できる。
【0044】
本発明の第2の側面において、装填装置は、互いに同心円状に配置された複数の環状装填台を備える。
【0045】
図10は、異なる直径を有しかつ互いに同心円状に配置された複数の環状装填台510、520、530を備える装填装置500を示している。装填台510、520、530のそれぞれは、
図4を参照して上述した装填台31の構造と同様の構造を有しており、簡略のためそれについて再度詳述はしない。ここで説明する例では、装填装置は、順に直径が減少する4つの環状垂直壁5100、5200、5300、5301を有する。装填台510は、環状垂直壁5100、5200によって画定される環状装填空間513を備える。装填台520は、環状垂直壁5200、5300によって画定される環状装填空間523を備える。最後に、装填台530は、環状垂直壁5300、5301によって画定される環状装填空間533を備える。ブレード繊維プリフォーム60は、各装填台510、520、530の環状装填空間513、523、533のそれぞれに装填される。
【0046】
装填装置500の下部は第1プレート502によって閉じられ、一方、装填装置500の上部は環状の第2プレート503によって閉じられる。
図4の装填装置30について上述したように、プレート502、503のそれぞれは、反応ガスを環状装填空間に通すためのオリフィスを有する。
【0047】
より正確に言えば、
図10に示すように、プレート503は、装填台510の環状装填空間513の全周にわたって配置された、オリフィス5030からなる複数の一連なりの第1オリフィス群を有し、各オリフィス群は各単位装填セル514の上方を径方向に延びている。同様に、プレート503は、装填台520の環状装填空間523の全周にわたって配置された、オリフィス5031からなる複数の一連なりの第2オリフィス群を有し、各オリフィス群は各単位装填セル524の上方を径方向に延びている。最後に、プレート503は、装填台520の環状装填空間523の全周にわたって配置された、オリフィス5032からなる複数の一連なりの第3オリフィス群を有し、各オリフィス群は各単位装填セル534の上方を径方向に延びている。第1、第2、第3のガス流通オリフィス群は、プレート502(
図10には図示せず)においても同様の仕方で形成されている。
【0048】
装填装置500の場合、反応ガスは、プレート502またはプレート503に形成されたガス流通オリフィスを介して環状装填空間513、523、533に導入され、その残留分は、プレート503またはプレート502に形成されたガス流通オリフィスを介して排出される。
【0049】
異なる実施形態では、装填装置は、
図10に示すように異なる直径を有しかつ互いに同心円状に配置された複数の環状装填台であって、それぞれが
図2を参照して上述した装填台11の構造と同様の構造を有する複数の同心円状の環状装填台を備える。このような場合には、2つの隣り合う装填台に共通する環状垂直壁のガス流通オリフィスが、2つの隣り合う装填台の単位装填セルに開口するように配置される。このような場合には、第1装填台に導入される反応ガスの量が増し、それにより、反応ガスが流れるべき他の同心円状の装填台の全てに対して十分な量のガスが残存する。
【0050】
本発明の装填装置はまた、複数の環状装填台であって、
図11に示すようにそのうちのいくつかが互いに同心円状に配置されその他が互いに積層された複数の環状装填台を備えてもよく、
図11は、
図10の装填装置500と同様の、すなわちそれぞれが少なくとも3つの互いに同心円状に配置された装填台によって構成された5つのサブ装填装置610、620、630、640、650を備える装填装置600を示している。5つのサブ装填装置610、620、630、640、650も互いに積層され、装填台650によって構成される積層体の下部がプレート602によって閉じられ、プレート602は、それぞれガス流通オリフィス6020、6021、6022からなる3種の一連なりのオリフィス群であって装填台650の環状装填空間の全周にわたって配置されたオリフィス群を有し、各オリフィス群は各単位装填セルの上方を径方向に延びている。同様に、装填台610によって構成される積層体の上部はプレート603によって閉じられ、プレート603は、それぞれガス流通オリフィス6030、6031、6032からなる3種の一連なりのオリフィス群であって装填台610の環状装填空間の全周にわたって配置されたオリフィス群を有し、各オリフィス群は各単位装填セルの上方を径方向に延びている。
【0051】
本発明の装填装置は、1つの環状装填台を有するか、互いに積層されたまたは互いに同心円状に配置された複数の環状装填台を有するかに関わらず、収容した基体を独立して緻密化できる小型反応器として機能する。従って、緻密化炉または設備の反応チャンバの容量が許す場合には、複数の装置を単一のチャンバに配置してもよい。それゆえ、多数の装填構成を構想できる。
【0052】
図12は、緻密化対象である基体が装填された、化学気相浸透設備または炉の反応チャンバ70を示す概略図である。チャンバ70は、概ね円筒形状である。
【0053】
基体を緻密化するために、蒸着すべきマトリックス材料の前駆体を1つまたは複数含む反応ガスがチャンバ70に導入される。例えば、その材料が炭素である場合には、気体状の炭化水素化合物、典型的にはプロパン、メタン、または双方の混合物が使用される。材料が、例えば炭化ケイ素(SiC)などのセラミックである場合には、公知の方法でメチルトリクロロシラン(MTS)をSiCの前駆体として使用できる。
【0054】
公知の方法で、多孔質基体の内部にマトリックス材料を蒸着することによって多孔質基体を緻密化するが、この材料は、多孔質基体の到達可能な内部空孔に分散する反応ガスに含まれている前駆体が分解して生成する。様々なマトリックス蒸着物を化学気相浸透によって得るために必要な温度圧力条件は公知である。
【0055】
図示した例では、チャンバの上部に通じている導入管71によって反応ガスが送られる。残留ガスは、吸引手段(図示せず)に接続された排出管72を介してチャンバの下部から抜き出される。
【0056】
誘導コイル(図示せず)に電磁気的に結合した二次回路を形成している黒鉛サセプタ73によって、チャンバの内部が加熱される。サセプタ73は、管71が貫通している蓋70aと管72が貫通している底部70bとともに、チャンバの内部容積74を画定している。底部と蓋も同様に黒鉛製である。
【0057】
例えばブレード繊維プリフォームなどの多孔質基体を緻密化するために、下部プレート752と上部プレート753との間に配置された複数の装填台751からなる装填装置75を用いて、チャンバ70の内部容積74にプリフォームを装填する。装填装置75の構造および機能は
図6および
図7を参照して説明した装置200の構造および機能と同様である。装置75の装填台751に当該装填台の内壁7510に存在するガス供給オリフィス7511を介してガスが供給されるように、上部プレート753の中央開口7530が反応ガス導入管71に接続される。装置75の装填台751の外壁7512に存在する排出オリフィス7513を介して排出される残留ガスは、排出管72を介してチャンバから抜き出される。装填装置75での反応ガス流の流通は
図7に示す通りである。
【0058】
図13は、化学気相浸透設備または炉の反応チャンバ80の概略図であり、反応チャンバ80の内部容積84は、サセプタ83と、複数の反応ガス供給管81が貫通している蓋80aと、排出管82が貫通している底部80bとによって画定されている。例えばブレード繊維プリフォームなどの多孔質基体が、下部プレート852と上部プレート853との間に配置された複数の装填台851からなる装填装置85を用いて、チャンバ80内に装填される。装填装置85の構造および機能は
図8および
図9を参照して説明した装置400の構造および機能と同様である。装置85の装填台851にガスを供給するために、上部プレート853の供給オリフィスが反応ガス導入管81に接続される。下部プレート852に存在する排出オリフィス(
図13には図示せず)を介して排出される残留ガスは、排出管82を介してチャンバから抜き出される。装填装置85での反応ガス流の流通は
図9に示す通りに行われる。
【0059】
反応チャンバ80には、例えばブレード繊維プリフォームなどの多孔質基体を、
図11のものと同様の装填装置を用いることによっても装填できる。
【0060】
図14は、ピラミッド構造を用いた、別の可能な装填構成を示している。この構成は、化学気相浸透設備または炉の反応チャンバ90に、複数の装填装置、この例では直径が順に減少する3つの装填装置91、92、93を積層してなる。装填装置91、92、93の構造および機能は
図8および
図9を参照して説明した装置400の構造および機能と同様である。反応ガスが装填装置91、92、93に、各導入管95a、96a、97aを介して導入される。装填装置91、92、93に生じる残留ガスは、各排出管95b、96b、97bを介して排出される。
【0061】
図15に示すようなさらに別の可能な装填構成では、化学気相浸透設備または炉の反応チャンバ800に、複数の装填装置、この例では同じ直径の4つの装填装置801〜804が積層される。装填装置801〜804の構造および機能は
図8および
図9を参照して説明した装置400の構造および機能と同様である。反応ガスが装填装置801〜804に、各導入管805a、806a、807a、808aを介して導入される。装填装置801〜804に生じる残留ガスは、各排出管805b、806b、807b、808bを介して排出される。
【0062】
例えば、本発明の装填装置の全ての構成要素(壁、プレート、基体支持要素など)は、黒鉛製であってもよく、膨張黒鉛製であってもよく、またはC/C複合材料製であってもよい。
【0063】
それぞれ複数の装填台を備えうる複数の装填装置により構成される多重装填の場合、緻密化設備の調整は、1つ1つの装置により構成される各小型反応器に反応ガスを供給するようにするだけである。反応ガス流量は、供給対象である装置の数と装置1つあたりの装填台の数だけ単に倍増される。さらに、本発明の装填装置を用いることによって、大きなサイズの反応チャンバにおいて自由流れによる方法を用いる際に生じるようなデッドゾーンの流れの問題が解消される。
【0064】
本発明の装填装置はまた、従来自由流れと併用される通常の器具とは対照的に、あらかじめ、すなわち浸透炉の技術的前提に関わりなく装填しておくことを可能にするとともに、緻密化対象である基体をより低いリスクで反応チャンバへ搬送できるという利点を有する。これにより、化学気相浸透炉の装填・脱装に要する時間が短縮され、取扱いがより容易になる。