特許第6051302号(P6051302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6051302半導体ウエハ保護用フィルム及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051302
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】半導体ウエハ保護用フィルム及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161219BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20161219BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161219BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/304 622J
   H01L21/78 Q
   C09J7/02 Z
   C09J133/00
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-519819(P2015-519819)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2014063577
(87)【国際公開番号】WO2014192630
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113448(P2013-113448)
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲光
(72)【発明者】
【氏名】片岡 真
(72)【発明者】
【氏名】福本 英樹
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−177033(JP,A)
【文献】 特開2004−043760(JP,A)
【文献】 特開2003−338475(JP,A)
【文献】 特開2011−195840(JP,A)
【文献】 特開2005−053998(JP,A)
【文献】 特開2011−228502(JP,A)
【文献】 特開2013−098408(JP,A)
【文献】 特開2010−258426(JP,A)
【文献】 特開平05−032946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
C09J 133/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)と、
前記基材層(A)上に形成された粘着層(C)と、を有し、
前記基材層(A)がポリマーを含み、前記ポリマーのvan Krevelen法により求めた溶解パラメーターが9以上である、半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項2】
前記ポリマーが共重合体成分として拡張性付与成分を含み、前記拡張性付与成分単体の融点が40℃以下である、請求項1に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項3】
前記拡張性付与成分が、グリコールを含む、請求項1または2に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項4】
前記基材層(A)と前記粘着層(C)との間にさらに吸収層(B)を有し、
前記吸収層(B)がアクリル系ポリマーを含み、ゲル分率が30〜90重量%である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項5】
前記吸収層(B)の25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gbが0.01MPa以上1MPa以下である、請求項4に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項6】
前記基材層(A)と前記吸収層(B)との少なくとも一部が接している、請求項4または5に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項7】
前記粘着層(C)がアクリル系ポリマーを含み、ゲル分率が30〜90重量%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項8】
前記粘着層(C)の25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gcが0.01MPa以上10MPa以下である、請求項1乃至7いずれか一項に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項9】
前記基材層(A)が、前記溶解パラメーターが9以上のポリマーのみで構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体ウエハ保護用フィルム。
【請求項10】
半導体ウエハに、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体ウエハ保護用フィルムの粘着層(C)を介して貼り付ける第一工程、と
前記半導体ウエハを前記半導体ウエハ保護用フィルムとともに溶剤で洗浄する第二工程、と
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体ウエハ保護用フィルムが貼り付けられる側の前記半導体ウエハの表面に、5μm〜200μmの段差が設けられている、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
第二工程の後に、
前記半導体ウエハを前記半導体ウエハ保護用フィルムとともにダイシングして、半導体チップを得る第三工程、と
前記半導体ウエハ保護用フィルムを水平方向に拡張し、前記半導体ウエハ保護用フィルムから前記半導体チップをピックアップする第四工程、と
をさらに含む、請求項10または11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第一工程において、
前記半導体ウエハ保護用シートを前記半導体ウエハの表面に、温度20〜80℃、圧力0.3〜0.5MPaで貼り付ける、請求項10乃至12いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ保護用フィルム及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを用いた半導体装置の製造方法において、半導体ウエハは、半導体回路面に接着層を介して支持体が接合され、半導体回路面が保護された状態で他方の面から研削される。その後、半導体ウエハの研削された面には、ダイシングテープが貼り付けられ、支持体が除去され、ダイシングが行われる。
【0003】
研削時に半導体回路面を保護する方法としては支持体の代わりに保護テープが使われる場合があるが、特に貫通電極と呼ばれる、半導体ウエハの上下方向に電気的接続部を形成する工程を含む半導体ウエハの場合、半導体ウエハが薄厚で且つ工程に加熱工程を含むため、より耐熱性、半導体ウエハの支持性に優れた支持体を耐熱性がある接着層と共に使用するのが一般的である。
【0004】
このような支持体を除去する方法としては、半導体ウエハと支持体を加熱しながら、水平反対の方向にスライドさせる方法、半導体ウエハまたは支持体の一方を固定し他方を角度を付けて引きはがす方法、接着層を溶剤で溶かす方法などがある(特許文献1)。
【0005】
接着層を溶剤で溶かす方法を利用した技術として、例えば、特許文献2記載のものがある。
【0006】
特許文献2には、予め貫通孔と溝を形成したサポートプレートを用い、接着剤層を介して半導体ウエハに張り合わせて薄板化した後、ダイシングテープを貼り付けることが記載されている。そして、サポートプレートの貫通孔と溝を利用して溶剤を供給して接着剤層を溶解し、サポートプレートと半導体ウエハとを剥離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−144616号公報
【特許文献2】特開2007−158124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2記載の技術は、接着剤層を溶解する際に用いられる溶剤に対するダイシングテープの耐性に着目したものではなかった。そのため、溶剤により、ダイシングテープの接着性、拡張性、形状追従性等の特性が低下するといった問題が生じた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面が平滑な半導体ウエハを用いたときの耐溶剤性が良好な半導体ウエハ保護用フィルムおよびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような半導体装置の製造工程、特にダイシング工程において用いられる半導体ウエハ保護用フィルムの耐溶剤性に初めて着目し、鋭意検討を行った結果、基材層に含まれるポリマーのvan Krevelen法により求めた溶解度パラメーターがよい指標になるという新たな知見を見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
基材層(A)と、
前記基材層(A)上に形成された粘着層(C)と、を有し、
前記基材層(A)がポリマーを含み、前記ポリマーのvan Krevelen法により求めた溶解パラメーターが9以上である、半導体ウエハ保護用フィルムを提供する。
【0012】
また、本発明は、
半導体ウエハに、上記の半導体ウエハ保護用フィルムの粘着層(C)を介して貼り付ける第一工程、と
前記半導体ウエハを前記半導体ウエハ保護用フィルムとともに溶剤で洗浄する第二工程、と
を含む、半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面が平滑な半導体ウエハを用いたときの耐溶剤性が良好な半導体ウエハ保護用フィルムおよびこれを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0015】
図1】実施の形態に係る半導体ウエハ保護用フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図2】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。
図3】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。
図4】(a)本発明における半導体ウエハ保護用フィルムの試験方法を模式的に示す平面図、及び(b)その断面図である。
図5】本発明における半導体ウエハ保護用フィルムの試験方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
(半導体ウエハ保護用フィルム)
図1に示すように、半導体ウエハ保護用フィルム10は、基材層1、吸収層2、粘着層3がこの順で積層している。
【0018】
(基材層1)
基材層1としては、合成樹脂をフィルム状に成形加工したものを用いる。基材層1は単層体であっても、又、二層以上の積層体であってもよい。又、基材層1は熱可塑性樹脂を成形加工したものであっても、熱硬化性樹脂を製膜後、硬化したものであってもよい。
【0019】
基材層1は、基材層に含まれるポリマーのvan Krevelen法により求めた溶解度パラメーター(以下「SP値」とも示す)が9以上である。SP値を9以上にすることで、半導体装置の製造工程で用いられる溶剤(通常は有機溶剤)との親和性を低下させ、溶剤が基材層1に接触することで基材層1が膨張等の変形をするのをある程度、防ぐことができる。これにより、基材層1と基材層1と接する層間、具体的には、基材層1と粘着層3の間や基材層1と吸収層2との間などに溶剤が進入するのを効果的に抑制できる。その結果、半導体ウエハ保護用フィルム10の耐溶剤性を良好にできる。
また、基材層1の、25℃、周波数1Hzにおける引張弾性率Eaが0.1GPa以上であることが好ましい。引張弾性率Eaを一定以上にすることで、基材層1の変形をさらに抑制することができる。これらパラメーターを組み合わせることにより、耐溶剤性をより一層良好にできる。
従来知られている、ダイシング工程などに用いることができる拡張性を有する半導体ウエハ保護用フィルムには、本発明のように耐溶剤性が必要となる工程にも用いるという思想がなく、そのため、基材層には耐溶剤性が低いもの、具体的にはSP値が9未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)、ポリエチレンなどが用いられている。これに対し、本発明の半導体ウエハ保護用フィルム10は、基材層1に含まれるポリマーのSP値を9以上とすることにより、溶剤の進入を抑制し、耐溶剤性を良好にできるものである。
【0020】
基材層1の、25℃、周波数1Hzにおける引張弾性率Eaは、0.05GPa以上が好ましく、0.1GPa以上がより好ましい。これにより、さらに半導体ウエハ保護用フィルム10の強度を維持できる。一方、耐溶剤を維持しつつ、半導体ウエハ保護用フィルム10の形状追従性を良好にできる観点から、引張弾性率Eaは、5GPa以下が好ましく、1GPa以下がより好ましい。
【0021】
基材層1は、SP値が9以上のポリマーのみで構成されていることがさらに好ましい。これにより、耐溶剤性をより良好にできる。
【0022】
基材層1に用いられる原料ポリマーとしては、例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ブタジェン系エラストマー、スチレン−イソプレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。
【0023】
基材層1に用いられる上記ポリマーは、共重合体成分として拡張性付与成分を含むことが好ましい。これにより、耐溶剤性を維持しつつ良好な拡張性を得ることができる。また、拡張性付与成分を含むことで、従来知られている拡張性を有する半導体ウエハ保護用フィルムに対し、耐溶剤性と拡張性を両立できる新たなフィルムが得られる。
拡張性付与成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸などのオキシカルボン酸があげられる。また、グリコールを含むことが好ましく、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコールポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等のグリコール等が挙げられ、ポリマーとの相溶性の観点から、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。これらは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
拡張性付与成分単体の融点は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。これにより、半導体ウエハ保護用フィルム10を拡張する温度の近傍で、拡張性付与成分が柔軟になるため、耐溶剤性を維持しつつ良好な拡張性を得ることができる。
【0025】
これら基材層1に用いられるポリマーをフィルム状に成形加工する際には、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤、可塑剤、粘着付与剤、柔軟剤等を添加してもよい。基材層1を成型加工する際に安定剤等の各種添加剤を添加した場合、添加剤が粘着層3に移行して、粘着層3の特性を変化させたり、半導体ウエハ表面を汚染することがある。このような場合には、基材層1と粘着層3との間に、各種添加剤の粘着層3への移行を防止する目的でバリヤー層を設けることが好ましい。
【0026】
基材層1の厚みは2〜500μmが好ましい。より好ましくは5〜500μmである。下限値以上とすることにより、半導体ウエハ保護用フィルム10の形態を維持できる。一方、上限値以下とすることにより、半導体ウエハ保護用フィルム10の生産性を良好にできる。
【0027】
基材層1の粘着層3が設けられる側の面には、基材層1と粘着層3との接着力を向上させるため、予め、コロナ放電処理又は化学処理を施すことが好ましい。又は、同様の目的で、基材層1と粘着層3との間に下塗剤層を形成してもよい。基材層1は、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法、キャスト法等、公知の技術により製造されるものの中から、生産性、得られるフィルムの厚み精度等を考慮して適宜選択することができる。
【0028】
(粘着層3)
粘着層3は、半導体ウエハの表面に直接する面である。これにより、半導体ウエハ保護用フィルム10が半導体ウエハに密着し、半導体ウエハ表面を保護できる。
【0029】
粘着層3の主成分であるポリマーの種類としては、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーンゴム系、アクリル系等、様々な種類の公知のポリマーの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でも、物性の制御、再現性等を考慮すると、アクリル系のポリマーを主成分とすることが好ましい。
【0030】
粘着層3の主成分であるポリマーがアクリル系である場合、当該ポリマーを構成する主モノマーとしては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれらの混合物を含むものが好ましい。アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。主モノマーの使用量は、ポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、60〜99重量%の範囲で含まれていることが好ましい。かかる組成のモノマー混合物を用いることにより、ほぼ同組成のアクリル酸アルキルエステル単位、メタクリル酸アルキルエステル単位、又はこれらの混合単位を含むポリマーが得られる。
【0031】
粘着層3の主成分であるポリマーは、架橋剤と反応し得る官能基を有していてもよい。架橋剤と反応し得る官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。粘着剤ポリマー中にこれらの架橋剤と反応しうる官能基を導入する方法としては、ポリマーを重合する際にこれらの官能基を有するコモノマーを共重合させる方法が一般に用いられる。
【0032】
上記官能基を有するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
これらのコモノマーの内の1種を上記主モノマーと共重合させてもよいし、又は2種以上を共重合させてもよい。上記の架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの使用量(共重合量)は、粘着層3のポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、1〜40重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。かかる組成のモノマー混合物を用いることにより、ほぼ同組成のコモノマー単位を含むポリマーが得られる。
【0034】
本実施形態においては、上記粘着層3の主成分であるポリマーを構成する主モノマー及び架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの他に、界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、「重合性界面活性剤」とも称する)を共重合してもよい。重合性界面活性剤は、主モノマー及びコモノマーと共重合する性質を有すると共に乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。重合性界面活性剤を用いて乳化重合したポリマーを用いた場合には、通常、界面活性剤による半導体ウエハ表面に対する汚染が生じない。また、粘着層3に起因する僅かな汚染が生じた場合においても、半導体ウエハ表面を水洗することにより容易に除去することが可能となる。
【0035】
このような重合性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬株式会社製;商品名:アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等〕、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬株式会社製;商品名:アクアロンHS−10、同HS−20等〕、及び分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系のもの〔花王株式会社製;商品名:ラテムルS−120A、同S−180A等〕等が挙げられる。
【0036】
さらに必要に応じて、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルアクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート等の自己架橋性の官能基を持ったモノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性二重結合を持ったモノマー、ジビニルベンゼン、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の多官能性のモノマー等を共重合してもよい。
【0037】
粘着層3の主成分であるポリマーの重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。ポリマーの製造コスト、モノマーの官能基の影響及び半導体ウエハ表面へのイオンの影響等を等慮すれば、ラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0038】
また、粘着層3の主成分であるポリマーをラジカル重合反応によって重合する場合、ポリマーの分子量を調整する等の目的で、必要に応じて連鎖移動剤を添加してよい。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ターシャル−ドデシルメルカプタン、ノルマル−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類等が例示できる。連鎖移動剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部程度である。
【0039】
粘着層3の主成分であるポリマーの重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等の公知の重合法の中から適宜選択して用いることができる。特に、粘着層3を構成するポリマーについては、粘着層3が半導体ウエハ表面に直接接触することを考慮すれば、ウエハに対する汚染防止の観点から、高分子量のポリマーが得られる乳化重合法を採用することが好ましい。
【0040】
粘着層3の主成分であるポリマーを乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の水溶性の無機過酸化物、同じく4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持った水溶性のアゾ化合物が好ましい。半導体ウエハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウムや、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物がさらに好ましい。4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が特に好ましい。
【0041】
さらに、粘着層3を形成するポリマーには、1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤を添加してもよい。1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤を添加することにより、架橋剤が有する架橋反応性官能基と、ポリマーが有する官能基とを反応させて、架橋密度、粘着力及び凝集力を調整することができる。
【0042】
架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系架橋剤、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、粘着層3の主成分であるポリマーが、水溶液、水を媒体とするエマルション等の水系である場合には、イソシアネート系架橋剤は水との副反応による失活速度が速いため、ポリマーとの架橋反応が十分に進行しない場合がある。従って、この場合には上記の架橋剤の中でアジリジン系もしくはエポキシ系の架橋剤を用いることが好ましい。
【0044】
本実施形態における1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤の含有量は、粘着層3の主成分であるポリマー100重量部に対し架橋剤0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.1〜25重量部である。架橋剤が下限値以上であることにより、粘着層3の凝集力が十分となり、半導体ウエハ表面の汚染の発生を抑制できる。一方、上限値以下とすることにより、粘着層3と半導体ウエハ表面との高い密着力を維持し、研削加工中に水や研削屑が浸入することによる半導体ウエハの破損や、研削屑による半導体ウエハ表面の汚染の発生を抑制できる。
【0045】
粘着層3を構成するポリマーには、上記の1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤の他に、粘着特性を調整するために、ロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を適宜含有してもよい。又、ポリマーがエマルション液である場合は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜含有してよい。
【0046】
粘着層3は、粘着剤ポリマーとエネルギー線により反応する架橋剤とを用い、エネルギー線照射により架橋させてなる架橋ポリマーを含んでいてもよい。この場合、上記粘着剤ポリマーは、エネルギー線照射によりラジカル重合によって架橋剤と反応し得る官能基を有している。当該官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等の炭素−炭素二重結合(ラジカル重合性二重結合)が挙げられる。架橋剤と架橋した際の結合強度が高く、分解反応が生じ難く、効果的に特性の経時劣化を抑制できる点から、炭素−炭素二重結合(ラジカル重合性二重結合)であることが好ましい。
【0047】
上記官能基を粘着剤ポリマー(アクリル系樹脂)に導入する方法としては、重合する際に官能基を有するコモノマーを共重合させる方法、もしくは、水酸基、グリシジル基といった官能基を有した粘着力ポリマーを重合後、該官能基にメタクリル酸、アクリル酸といった炭素−炭素二重結合を有するモノマーを反応させて導入する方法が一般に用いられる。架橋剤と反応しうる官能基を有するコモノマーの使用量(共重合量)は、粘着剤ポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、1〜40重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。かかる組成のモノマー混合物を用いることにより、ほぼ同組成のコモノマー単位を含むポリマーが得られる。
【0048】
また、粘着層3のゲル分率は、耐溶剤性と形状追従性を両立する観点から、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。一方、取扱性の観点から、ゲル分率は、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
また、粘着層3は、ゲル分率30重量%以上90重量%以下のアクリル系ポリマーを用いることがさらに好ましい。
【0049】
ゲル分率は、重量が約1g(W1)の粘着層をトルエンと酢酸エチルの混合溶剤(1:1)100g中に温度25℃で168時間浸漬させた後、ろ過を行い、ろ物を乾燥した後の重量(W2)を求め、下記数式(1)により求めることができる。
{(W1/W2)/W1}×100% (1)
【0050】
粘着層3は、25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gcが0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。これにより、耐溶剤を維持しつつ、フィルムの良好な強度が得られる。一方、25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gcが10MPa以下であることが好ましく、1MPa以下がより好ましい。これにより、耐溶剤を維持しつつ、フィルムの形状追従性を良好にできる。
【0051】
(吸収層2)
吸収層2は、半導体ウエハ表面の凹凸吸収性を有する層である。後述するように、吸収層2は、例えば、基材層1と粘着層3との間に設けられてもよく、また粘着層3の機能を兼ね備える層としてもよい。吸収層2は、一層でもよく、2層以上が積層したものでもよい。また基材層1と吸収層2の間や吸収層2と粘着層3の間に、他の層を設けてもよい。凹凸吸収性の観点から吸収層2と粘着層3の間に設けられうる層は、柔軟性が高い材料からなる層や厚さが薄い層であることが好ましく、吸収層2と粘着層3は少なくとも一部が接しているのがより好ましい。さらに、基材層1と吸収層2の間や吸収層2と粘着層3の間に設けられうる他の層についても、耐溶剤性という観点から、基材層1と同様にSP値が9以上であることが好ましい。
【0052】
基材層1と吸収層2は、少なくとも一部が接していてもよい。これにより、形状追従性をさらに良好にできる。より詳細には、半導体ウエハ保護用フィルム10で保護する半導体ウエハ表面に凹凸がある場合、凹凸がない又は小さい場合に比べて、上記凹凸と半導体ウエハ保護用フィルム10との間に溶剤が入り込みやすいため、半導体ウエハと半導体ウエハ保護用フィルム10とが剥がれやすくなる。このため、従来、半導体ウエハ表面に凹凸がある場合の半導体表面保護フィルムを、溶剤を用いる工程にも用いるという思想はなく、半導体表面保護フィルムの基材層の耐溶剤性を向上させるという思想がなかった。これに対し、本発明の半導体ウエハ保護用フィルム10は、半導体ウエハ表面の凹凸を吸収する吸収層2を粘着層3と基材層1との間に配置するものである。これにより、表面に凹凸がある半導体ウエハを用いた場合であっても、良好な耐溶剤性が得られる。
なお、半導体ウエハ表面の凹凸とは、半導体ウエハの表面に、高さが10〜200μmであるバンプ電極、不良回路識別マーク等の突起状物がピッチ50〜1000μmで形成されたものをいう。言い換えると、表面な平滑な半導体ウエハとは、これらバンプ電極、突起状物が形成されていないものをいう。また、半導体ウエハ表面の段差とは、半導体ウエハのこれらバンプ電極、突起状物が形成されていない領域の表面から、これらバンプ電極、突起状物が形成されている領域の高さの最大値をいう。
【0053】
吸収層2を構成するポリマーは、上記のとおり粘着層3と同じものを用いることができ、粘着層3と同じであってもよく、また異なっていてもよい。吸収層2を構成するポリマーとしては、耐溶剤を維持しつつ、フィルムの形状追従性を良好にできる観点から、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0054】
また、吸収層2のゲル分率は、耐溶剤性と形状追従性を両立する観点から、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。一方、取扱性の観点から、ゲル分率は、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
また、吸収層2は、ゲル分率30重量%以上90重量%以下のアクリル系ポリマーを用いることがさらに好ましい。
なお、吸収層2のゲル分率は、粘着層3と同様にして調整できる。
【0055】
吸収層2は、25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gbが0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましい。これにより、耐溶剤を維持しつつ、フィルムの良好な強度が得られる。一方、25℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率Gbは1MPa以下が好ましく、0.5MPa以下がより好ましい。これにより、耐溶剤を維持しつつ、フィルムの形状追従性を良好にできる。
【0056】
吸収層2の25℃における貯蔵弾性率Gbは、半導体ウエハの表面に対する密着性に影響を及ぼす。該貯蔵弾性率が高いと、吸収層2が硬くなり密着性が低下する。例えば、半導体ウエハの回路形成面に、高さが10〜200μmであるバンプ電極、不良回路識別マーク等の突起状物がピッチ50〜1000μmで形成された半導体ウエハに用いる場合は、その傾向が特に顕著である。逆に低すぎると、密着性は向上するが、流動性が増し吸収層2としての形状を保つことが困難となり、貼付けや剥離の際の取り扱い性が悪化する。かかる観点から、吸収層2の内の少なくとも1層(吸収層(X))については、25℃における貯蔵弾性率が0.001MPa以上、0.07MPa未満であることが好ましい。この特性を有する吸収層(X)は、1層でも良いし、2層以上形成しても差し支えない。
【0057】
取り扱い性、吸収層2の各層間の接着力や、吸収層2と基材層1との間の接着力などを向上させたい場合、本発明の目的を損なわない範囲であれば、25℃における貯蔵弾性率が上記範囲外である吸収層2を形成してもよい。その場合、ウエハ表面に対する密着性を考慮し、該貯蔵弾性率が上記範囲外である吸収層2の合計厚みは、上記貯蔵弾性率を有する吸収層(X)の合計厚み(tx)の25%以下であることが好ましい。
【0058】
本発明の半導体ウエハ保護用フィルム10は、回路形成面に高さが10〜200μmであるバンプ電極、不良回路識別マーク、又はこれらの混在物等の突起状物を有する半導体ウエハの表面保護用として好適に使用することができる。その場合、上記貯蔵弾性率を有する吸収層(X)の合計厚み(tx、単位:μm)と突起状物(A)の高さ(ha、単位:μm)が下記数式(2)の関係を満たすことが好ましい。
tx≧ha (2)
【0059】
吸収層2の厚みは、通常3〜300μm、より好ましくは5〜250μmの範囲内で適宜選択される。上限値以下とすることにより、半導体ウエハ保護用フィルム10の製造が困難となるのを抑制でき、また生産性が良好となる。一方、下限値以上とすることにより、ウエハ表面に対する密着性が良好となる。かかる点を考慮すると、吸収層2の厚みは10〜400μmが好ましく、10〜300μmがより好ましい。また、粘着層3と吸収層2との総厚みは、11〜550μmであることが好ましい。
【0060】
(貯蔵弾性率)
次に、粘着層3の貯蔵弾性率Gc、及び吸収層2の貯蔵弾性率Gbの制御方法について説明する。貯蔵弾性率は、(イ)ポリマーを構成する主モノマーの種類及び使用量、(ロ)架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの種類及び使用量(共重合量)、(ハ)ポリマーの重合方法、(ニ)架橋剤の添加量、などの因子によって左右される。これらの因子が貯蔵弾性率に及ぼす影響について説明する。
【0061】
まず、(イ)ポリマーを構成する主モノマーの種類及び使用量については、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして用いる場合、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルのようなアルキル基の炭素数が4以下のアクリル酸アルキルエステル類、及び、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類を選択した場合には、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。一方、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等のアルキル基の炭素数が5〜8のアクリル酸アルキルエステル類を選択すると、貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。どちらの場合にも、これらの主モノマーの使用量が多くなればなるほど、貯蔵弾性率の値により大きな影響を及ぼす。従って、通常、粘着層3を形成する場合は、主としてアルキル基の炭素数が4以下のアクリル酸アルキルエステル類、及び、メタクリル酸アルキルエステル類を用いることが好ましい。又、吸収層2を形成する場合は、主としてアルキル基の炭素数が5〜8のアクリル酸アルキルエステル類を用いることが好ましい。
【0062】
(ロ)架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの種類及び使用量(共重合量)については、コモノマーとして通常用いられるものの中では、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、といったカルボキシル基を有するもの、及び、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、といったアミド基を有するもの、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸エステル類を用いた場合には、一般に貯蔵弾性率が高くなる傾向があり、使用量(共重合量)が多いほどその傾向が大きくなる。従って、通常、粘着層3を形成する場合は、上記した貯蔵弾性率が高くなる傾向があるコモノマーの添加量を上記範囲内において比較的多くし、吸収層2を形成する場合は、コモノマーの添加量を上記範囲内において比較的少なくすることが好ましい。
【0063】
(ハ)ポリマーの重合方法については、特に乳化重合法や、重合を高モノマー濃度で行うなど、高分子量のポリマーが得られる重合法を用いた場合に、他の重合法を採用した場合と比較して、貯蔵弾性率が高くなるとともに、貯蔵弾性率の温度による低下の傾向が小さくなり、貯蔵弾性率比が小さくなる傾向がある。一方、連鎖移動剤を添加して重合を行ったり、連鎖移動効果を有するトルエンなどの溶剤が比較的多く存在する系で溶液重合を行うなど、分子量が高くなりにくい重合法を用いた場合には、他の重合法を採用した場合と比較して、貯蔵弾性率が低くなる傾向があるとともに、貯蔵弾性率比が大きくなる傾向がある。従って、通常、粘着層3を形成する場合は、上記した高分子量のポリマーが得られる重合法を採用することが好ましい。吸収層2を形成する場合は、上記したポリマーの分子量が高くなりにくい重合法を採用することが好ましい。
【0064】
(ニ)架橋剤の添加量については、架橋剤の添加量が多いと、貯蔵弾性率が高く、貯蔵弾性率比が小さくなり、逆に、架橋剤の添加量が少ないと貯蔵弾性率が低く、貯蔵弾性率比が大きくなる傾向がある。ただし、架橋剤の添加量が、前述した架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの種類及び使用量(共重合量)と対応するある一定の量を超えて必要以上に多く添加されると、未反応のまま残存した架橋剤の影響により、逆に貯蔵弾性率が低下し、貯蔵弾性率比が大きくなる場合もある。従って、通常、粘着層3を形成する場合は、架橋剤の使用量を上記範囲内で比較的多くし、吸収層2を形成する場合は、架橋剤の使用量を上記範囲内で比較的少なくすることが好ましい。
【0065】
なお、上記実施形態では、半導体ウエハ保護用フィルム10は、吸収層2を有している例について説明したが、半導体ウエハ保護用フィルム10は、少なくとも基材層1及び粘着層3を有していればよく、吸収層2を有している例に限られない。
【0066】
(半導体ウエハ保護用フィルム10の製造方法)
半導体ウエハ保護用フィルム10の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造できる。
【0067】
まず、基材層1の片表面に吸収層2、及び粘着層3を順に形成する方法が挙げられる。具体的には、吸収層2又は粘着層3の原料となる上記ポリマーを溶液又はエマルション液(以下、これらを総称して塗布液と称する)として、ロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の公知の方法に従って、基材層1上に順次塗布、乾燥して形成する方法を用いることができる。この際、塗布した吸収層2又は粘着層3を環境に起因する汚染等から保護するために、塗布した層の表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0068】
また他の方法として、剥離フィルムの片表面に、公知の方法に従って塗布液を塗布、乾燥して粘着層3及び吸収層2を形成した後、ドライラミネート法等の慣用の方法を用いて該層を基材層1に転写させる方法(以下、転写法という)が挙げられる。転写法により複数の層を積層する際には、1層ずつ剥離フィルムの片表面に塗布、乾燥して層を形成した後、基材層1の片表面へ逐次転写する工程を複数回繰り返してもよいし、予め粘着層3及び吸収層2を剥離フィルムの片表面に、順次形成した後に、これらの層を一度に基材層1の片表面に転写させてもよい。
【0069】
塗布液を乾燥する際の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜300℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80〜200℃の温度範囲において15秒〜8分間乾燥する。本発明においては、架橋剤とポリマーとの架橋反応を十分に促進させるために、また、積層された粘着層3及び吸収層2の各層間の十分な密着性を達成するために、塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウエハ保護用フィルム10を40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0070】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の工程を含む。
図2(a)に示すように、半導体ウエハ101を用意し、図2(b)に示すように、半導体ウエハ101の主面とは反対側に、接着層103付き支持基板102を貼り付ける。
【0071】
次に、図2(c)に示すように、半導体ウエハ101の主面を研削し、半導体ウエハ101を薄くする。
【0072】
半導体ウエハの主面には、5μm〜200μmの段差が設けられていてもよい。
【0073】
半導体ウエハは、研削前の厚みが、通常、500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常、100〜600μm程度まで、時には、50μm程度まで研削される。研削する前の半導体ウエハの厚みは、半導体ウエハの口径、種類等により適宜決められ、研削後の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類、等により適宜決められる。
【0074】
半導体ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。研削の際には、半導体ウエハと砥石に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する研削機としては、例えば、株式会社ディスコ製、形式:DFG−860、株式会社岡本工作機械製作所製、形式:SVG−502MKII8、株式会社東京精密製、形式:ポリッシュグラインダPG200等が挙げられる。
【0075】
つづいて、図2(d)に示すように、薄くなった半導体ウエハ101の主面に半導体ウエハ保護用フィルム10の粘着層3を介して貼り付ける。貼り付け条件は、温度20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましく、圧力0.3〜0.5MPaが好ましく、0.35〜0.45MPaがより好ましい。
【0076】
半導体ウエハ保護用フィルム10の貼り付け操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行われる。この様な自動貼り機として、例えば、タカトリ株式会社製、形式:DTM−812W、同ATM−12000DR、株式会社ディスコ製、型式:DFM2700、同DFM2800,日東精機株式会社製、形式:MA−3000、リンテック株式会社、型式:RAD−2500等が挙げられる。
【0077】
支持基板除去後のウエハ支持のため、半導体ウエハ保護用フィルム10をウエハと、その周辺に配置されるリングフレームと呼ばれる枠状の冶具と共に貼り付ける形態がとられてもよい。尚、半導体ウエハ保護用フィルム10は通常ロールの形態を有しているが、リングフレームと同等の形に型抜きされたシートが巻き取られた形態をとってもよい。これは通常プリカットロールと呼ばれる。
【0078】
半導体ウエハ保護用フィルム10を貼り付ける際の温度としては、温度20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。上記した自動貼り機に、半導体ウエハ保護用フィルム10貼り付け工程に先だって半導体ウエハ101を昇温する手段が備わっている場合には、該加熱手段により半導体ウエハ101を適当な温度まで昇温した状態で粘着フィルムを貼り付けてもよい。
【0079】
つづいて、溶剤を使用して接着層103を溶解させた後、図2(e)に示すようにして、支持基板102を半導体ウエハ101から剥離する。この時、半導体ウエハ101上の接着層103は溶剤により洗浄除去される。
【0080】
溶剤としては、公知のものが用いられ、例えば、テルペン、リモネン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メシチレン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤が挙げられる。上記溶剤の他、半導体ウエハ101上の最終洗浄のためアセトン、メチルエチルケトン、IPA、エタノール、メタノール等別の溶剤、および水を使用してもよい。
【0081】
その後、図3(a)に示すように、ダイシングブレード201を用いて、半導体ウエハ101を半導体ウエハ保護用フィルム10とともにダイシングして、半導体チップ111を得る。
【0082】
半導体ウエハ101をダイシングする方法としては特に制限はなく、ブレード方式、レーザーアブレーション方式、ステルスレーザー方式等、公知のダイシング方式を用いることができる。ダイシング装置としては、例えば、株式会社ディスコ製、形式:DFD6362、同DFL7160,同DFL7360,株式会社東京精密製、形式:AD3000T/S,同ML300等が挙げられる。また、半導体ウエハ保護用フィルム10の貼り付けの前にダイシングを行い、半導体ウエハ保護用フィルム10の貼り付け後に支持基板102、接着層103を除去する形をとってもよい。
【0083】
つづけて、図3(b)に示すように、半導体ウエハ保護用フィルム10を水平方向に拡張し、ピックアップ器具202を用いて、半導体ウエハ保護用フィルム10から半導体チップ111をピックアップする。半導体チップ111をピックアップする方法としては特に制限はなく、公知のピックアップ方式を用いることができる。ピックアップ装置としては例えば、パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社製、型式:FCB3、芝浦メカトロニクス株式会社製、型式:TFC−6000,東レエンジニアリング株式会社製、型式:FC3000などが挙げられる。尚、半導体ウエハ保護用フィルム10にエネルギー線により架橋するポリマーを使用している場合、ピックアップの前にエネルギー線を照射し、粘着剤中の架橋反応を進行させ、ピックアップを容易にすることができる。
得られた半導体チップ111を用いて、半導体装置を製造する。
【0084】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0085】
実施例および比較例の各項目については、以下の測定方法及び評価方法にしたがって測定及び評価をおこない、その結果を表1に示した。
【0086】
(測定方法)
・弾性率
(1)引張弾性率Ea(GPa)
基材フィルムを25mm×150mmに切り出し、TA−インスツルメンツ製 RSA3を用いて、周波数1Hzにて、25〜100℃の温度範囲で引張弾性率を測定した。
(2)貯蔵弾性率Gb、Gc(MPa)
実施例、比較例の各粘着層又は吸収層を作製するときと同等の塗工条件(厚み、乾燥温度、乾燥時間等)で、片表面にシリコーン処理が施されたPETフィルム(剥離フィルム)の離型処理面側に、塗布液を塗布、乾燥し、PETフィルムの離型処理面上に粘着層又は吸収層を形成する。粘着層又は吸収層を形成した後、実施例、比較例に記載の各粘着層、吸収層と同等の熱履歴を与えるため、粘着層又は吸収層を単層のまま、60℃において48時間加熱する。得られた層を順次重ね合わせ、厚み約1mmの粘着層又は吸収層のフィルム状シートを作成する。このフィルム状シートから、直径約8mm、厚み約1mm程度の円盤型形状の試料を採取する。この試料を、動的粘弾性測定装置[レオメトリックス社製、形式;RMS−800、直径8mmのパラレルプレート(平行円盤)型アタッチメントを使用]を用いて、周波数1Hzにて、25〜100℃の温度範囲で貯蔵弾性率を測定する。具体的には、サンプルを25℃にて上記パラレルプレート型アタッチメントを介して動的粘弾性測定装置にセットし、25℃から100℃まで、3℃/分の昇温速度で昇温しながら貯蔵弾性率を測定する。測定終了後、得られた25℃〜100℃における貯蔵弾性率−温度曲線の中から、必要に応じて、50〜100℃における貯蔵弾性率(G'、MPa)の最小値(G'min、MPa)、もしくは60℃における貯蔵弾性率(G'、MPa)、25℃における貯蔵弾性率(G'25℃、MPa)を採用する。
【0087】
・ゲル分率
ゲル分率は、重量が約1g(W1)の粘着層または吸収層をトルエンと酢酸エチルの混合溶剤(1:1)100g中に温度25℃で168時間浸漬させた後、ろ過を行い、ろ物を乾燥した後の重量(W2)を求め、下記数式(1)により求めた。
{(W1/W2)/W1}×100(%) (1)
【0088】
(評価方法)
・耐溶剤性1(ウエハ貼り付け面に凹凸なし)
まず、表面が鏡面状の8インチウエハとリングフレームを用意した。次に、ウエハとリングフレームの裏面に、作成したフィルムを貼り付け、ウエハとリングフレームの表面から、溶剤をフィルム全体に行き渡るように滴下した。滴下後、30分後に溶剤を除去し、溶剤滴下前後のフィルムの外観上の変化、およびウエハ及びフィルム間への溶剤のしみこみを確認した。
○:フィルムの外観が変化せず、溶剤のしみ込みがなかった
×:フィルムの外観が大きく変化し、溶剤のしみ込みがあった
【0089】
・耐溶剤性2(ウエハ貼り付け面に凹凸あり)
まず、80μmの高さ、200μmピッチの半田バンプが表面に配置された8インチウエハとリングフレームを用意した。次に、ウエハとリングフレームの裏面に、作成したフィルムを貼り付け、ウエハとリングフレームの表面から、溶剤をフィルム全体に行き渡るように滴下した。滴下後、30分後に溶剤を除去し、溶剤滴下前後のフィルムの外観上の変化、およびウエハ及びフィルム間への溶剤のしみこみを確認した。
○:フィルムの外観が変化せず、溶剤のしみ込みがなかった
×:フィルムの外観が大きく変化し、溶剤のしみ込みがあった
【0090】
・拡張性
図4(a)に示すように、6インチ用SUSリングフレーム44に、作成したフィルム40の粘着層側をゴムロールで密着させた。
フィルム40の表面に、図4(a)に示すようなマークa、b、A、B、a'、b'、A'、B'を記入した。拡張前の長さは、それぞれ、a−a'60mm、b−b'60mm、A−A'120mm、B−B'120mmである。
次いで、図4(b)に示されるように、フィルム40の基材層表面が拡張機のステージ43に接触するように、リングフレーム44を拡張機に固定した。そして、図5に示されるように、引き上げ速度5mm/min、引き上げ量を10mmとして、拡張機のステージ43を上昇させて、フィルム40を拡張し、a−a'、b−b'、A−A'、B−B'の長さをそれぞれ測定した。
拡張機は、ヒューグルエレクトロニクス社製 HS−1800を用いた。
a−a'、b−b'、A−A'、B−B'の拡張前の長さに対する拡張後の長さの割合を拡張率(%)とした。
○:1%以上
×:1%未満もしくはリングフレームからのテープ外れが発生
【0091】
<実施例1>
(吸収層・粘着剤主剤の作成)
アクリル酸エチル30重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル40重量部、アクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸グリシジル20重量部のモノマー混合物を、ベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤〔日本油脂株式会社製、ナイパーBMT−K40〕0.8重量部(開始剤として0.32重量部)を用いて、トルエン65重量部、酢酸エチル50重量部中で80℃、10時間反応させた。反応終了後、冷却し、これにキシレン100重量部、アクリル酸10重量部とテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド〔日本油脂株式会社製、カチオンM2−100〕0.3重量部加え、空気を吹き込みながら85℃で50時間反応させ、アクリル系粘着剤ポリマーの溶液(吸収層・粘着剤主剤)を得た。
(吸収層用の塗布液の調製)
得られた吸収層・粘着剤主剤に熱架橋剤としてイソシアナート系架橋剤〔三井東圧化学株式会社製、オレスターP49−75−S〕を0.02重量部添加し、吸収層用の塗布液を得た。
(粘着剤用の塗布液の調製)
得られた粘着剤主剤にアクリル系粘着剤ポリマー固形分100重量部に対して、分子内結合開裂型光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール〔日本チバガイギー株式会社、イルガキュアー651〕を2重量部、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートの混合物〔東亜合成化学工業株式会社製、アロニックスM−400〕を0.3重量部添加し、さらに、熱架橋剤としてイソシアナート系架橋剤〔三井東圧化学株式会社製、オレスターP49−75−S〕を1.35重量部(熱架橋剤として1重量部)添加し、粘着剤用の塗布液を得た。
(吸収層付基材フィルムの作製)
上記吸収層用の塗布液をリップコーターを用いてシリコーン離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム、厚み:40μm)の離型処理面に塗布し、120℃で2分間乾燥して、厚さ100μmの吸収層を設けた。その後、基材フィルムとして準備した表1に示すポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ押圧して、吸収層を転写させ、吸収層付基材フィルムを作製した。
(半導体ウエハ保護用フィルムの作製)
上記で得られた粘着層用の塗布液を同様にリップコーターを用いてシリコーン離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム、厚み:40μm)の離型処理面に塗布し、120℃で2分間乾燥し厚さ10μmの粘着層を設けた。その後、粘着層と、上記で得られた吸収層付基材フィルムの吸収層側とを貼りあわせ、60℃において24時間加熱した後、室温まで冷却することにより半導体ウエハ保護用粘着フィルムを作製した。
【0092】
<実施例2>
基材フィルムを以下のようにして作製した以外は、実施例1と同様にして、半導体ウエハ保護用フィルムを作製した。
(基材フィルムの作製)
ポリテトラメチレングリコールを20%含有したポリブチレンテレフタレートをT−ダイ押出機を用いて、厚さ50μmのポリブチレンテレフタレートフィルムを形成した。この際、吸収層を貼り合わせる側の面にコロナ処理を施した。得られたポリブチレンテレフタレートフィルムの厚みバラツキは±1.5%以内であった。
【0093】
<実施例3>
実施例1で得た粘着剤用の塗布液をリップコーターを用いてシリコーン離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム、厚み:40μm)の離型処理面に塗布し、120℃で2分間乾燥して、厚さ10μmの粘着層を設けた。その後、基材フィルムとして準備した表1に示すポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ押圧して、半導体ウエハ保護用フィルムを作製した。
【0094】
<実施例4>
実施例1で得た粘着剤用の塗布液をリップコーターを用いてシリコーン離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム、厚み:40μm)の離型処理面に塗布し、120℃で2分間乾燥して、厚さ10μmの粘着層を設けた。その後、実施例2で作製した基材フィルムのコロナ処理面を貼り合わせ押圧して、半導体ウエハ保護用フィルムを作製した。
【0095】
<比較例1>
上記実施例1で用いた基材フィルムとして、表1に記載された基材フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウエハ保護用フィルムを作製した。
【0096】
<比較例2>
上記実施例3で用いた基材フィルムとして、表1に記載された基材フィルムを用いた以外は、実施例3と同様にして、半導体ウエハ保護用フィルムを作製した。
【0097】
【表1】
【0098】
この出願は、2013年5月29日に出願された日本出願特願2013−113448を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5