特許第6051346号(P6051346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6051346
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ソレノイド弁の取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20161219BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F16K31/06 305C
   F16H61/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-552647(P2016-552647)
(86)(22)【出願日】2016年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2016055091
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-37085(P2015-37085)
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100142158
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 啓
(72)【発明者】
【氏名】向 智昭
(72)【発明者】
【氏名】望月 哲也
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−185310(JP,A)
【文献】 特開平9−306558(JP,A)
【文献】 特開平10−78154(JP,A)
【文献】 特開平10−318402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ボディにソレノイド弁を取り付けるためのソレノイド弁の取付構造であって、
前記ソレノイド弁は、電磁コイルを内蔵する本体部と、前記電磁コイルで駆動される弁機能を有し前記本体部と同軸状に連なる軸状の弁部とからなり、
前記制御ボディには、前記弁部を挿入させるための挿入孔が形成されており、
前記電磁コイルのグランド端子と接続されて前記本体部の外周面から突出する弾性を有する係止片と、前記制御ボディの上面に設けた被係合部とからなる係止機構を備え、
前記弁部を前記挿入孔に挿入することで前記係止片が前記被係合部に弾性係合して前記ソレノイド弁の係止がなされると共に、前記係止片と前記被係合部との接触により前記ソレノイド弁のアース接続がなされる
ことを特徴とするソレノイド弁の取付構造。
【請求項2】
前記係止片は、前記電磁コイルを囲むヨークの一部であるか、又は前記ヨークと一体に接合された弾性金属片である
ことを特徴とする請求項1に記載のソレノイド弁の取付構造。
【請求項3】
前記被係合部は、前記制御ボディの上面を窪ませてなる凹部であり、
前記制御ボディの上面において前記被係合部から前記挿入部と反対側に向かって延在する溝部を備え、
前記溝部の幅は、前記係止片及び前記被係合部の幅よりも狭く形成されており、
前記溝部を介して前記被係合部に挿入した工具で前記係止片を撓ませることで、該係止片を前記被係合部に対する係合位置から退避させるように構成した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のソレノイド弁の取付構造。
【請求項4】
前記被係合部は、前記制御ボディの上面から下面に貫通する貫通孔であり、
前記制御ボディの下面側から前記被係合部を介して前記被係合部に挿入した工具で前記係止片を撓ませることで、該係止片を前記被係合部に対する係合位置から退避させるように構成した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のソレノイド弁の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機などが備える変速制御機構の作動制御に用いるソレノイド弁(電磁弁)を制御ボディに取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機には、変速制御用のライン圧や変速時のクラッチ圧を制御するためのソレノイド弁(電磁弁)が使用されている。ソレノイド弁は、自動変速機が備える油圧制御回路を内蔵した制御ボディに取り付けられている。従来、ソレノイド弁を制御ボディに取り付ける方式として、特許文献1に示すように、櫛歯型(いわゆるギロチン状)の固定片(ブラケット)でソレノイド弁を固定する方式と、特許文献2に示すように、ソレノイド弁に差し込んだピンで固定する方式とがある。櫛歯型の固定片で固定する方式は、ソレノイド弁の外周の三面に設けたスリット状の切込溝に対して、固定片に形成したコ字状の凹部を嵌め込むようになっている。一方、ピンで固定する方式は、ソレノイド弁の外周の一面に設けた直線状の挿入溝と制御ボディの挿入孔との位置を合わせ、挿入溝に差し込んだピンをボディの挿入孔に固定するようになっている。
【0003】
特許文献1に示す櫛歯型の固定片で固定する方式では、固定片を設置する際、ソレノイド弁の切込溝と固定片の凹部との位置合わせ(向き合わせ)を行う必要がある。この位置合わせは、制御ボディの装着穴に挿入したソレノイド弁を回転させて行う。そしてこの場合、一の固定片で複数のソレノイド弁を取り付ける際、全てのソレノイド弁の位置合わせを一度に行う必要がある。そのため、ソレノイド弁の取り付けに手間と時間がかかる要因となる。特に、一の固定片で取り付けるソレノイド弁の数が増えると、上記の位置合わせの作業が煩雑になり、ソレノイド弁の組み付けに要する手間と時間が大幅に増加する。
【0004】
また、特許文献2に示すソレノイド弁をピンで固定する方式では、複数のソレノイド弁を取り付ける場合、各ソレノイド弁に対応するピンと、ピン抜止用のステイと、該ステイを固定するボルトが必要となる。そのため、取付構造に必要な部品点数が多くなり、構造が煩雑になる。また、各ソレノイド弁に対して、ピンを差し込む作業と、ピンの抜け止めステイをセットする作業と、ボルト締めを行う作業とが必要であるため、ソレノイド弁の取り付けに必要な工数が多い。また、ボルトの座面加工や、ボルト穴(タップ)の加工、ピン穴の加工など、必要な部品加工が多い。
【0005】
また、上記の櫛歯型の固定片で固定する方式と、ピンで固定する方式とに共通の問題として、部品の固定・抜止専用のボルトが必要となり、部品点数が多くなるという点がある。また、ボルト穴加工、ボス部の加工など、部品加工の工程が多くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−156063号公報
【特許文献2】特開2007−187292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を少なく抑えた簡単な構造で、取付作業の効率化を図ることができると共に、装置の軽量化及びコンパクト化を図ることができ、かつソレノイド弁のアース接続を簡単に行うことができる取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、制御ボディ(10)にソレノイド弁(20)を取り付けるためのソレノイド弁の取付構造であって、ソレノイド弁(20)は、電磁コイル(32)を内蔵する本体部(30)と、電磁コイル(32)で駆動される弁機能を有し本体部(30)と同軸状に連なる軸状の弁部(25)とからなり、制御ボディ(10)には、弁部(25)を挿入させるための挿入孔(12)が形成されており、電磁コイル(32)のグランド端子と接続されて本体部(30)の外周面(30a)から突出する弾性を有する係止片(40)と、制御ボディ(10)の上面(10a)に設けた被係合部(16)とからなる係止機構(50)を備え、弁部(25)を挿入孔(12)に挿入することで係止片(40)が被係合部(16)に弾性係合してソレノイド弁(20)の係止がなされると共に、係止片(40)と被係合部(16)との接触によりソレノイド弁(20)のアース接続がなされることを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明にかかるソレノイド弁の取付構造では、電磁コイルを内蔵する本体部の側面から突出させてなる係止片を備えたソレノイド弁を制御ボディに取り付ける際に、ソレノイド弁の弁部を制御ボディの挿入部に挿入することで、係止片が制御ボディの被係合部に係合してソレノイド弁が係止されるように構成した。またその際に、グランド端子と接続されている係止片が制御ボディに当接することで、ソレノイド弁が制御ボディを介してアースされるようになっている。
【0010】
本発明にかかるソレノイド弁の取付構造によれば、ソレノイド弁の弁部を制御ボディの挿入孔に挿入することで、係止機構の係止片が制御ボディの被係合部に弾性係合して制御ボディに対するソレノイド弁の係止(固定)がなされる。これにより、制御ボディに対するソレノイド弁の固定を簡単な作業で行えるようになる。したがって、ソレノイド弁の取付作業の効率化を図ることができる。また、ソレノイド弁に設けた係止片と制御ボディに設けた被係合部とが弾性係合するように構成したので、ソレノイド弁の固定に工具を必要とせず、制御ボディに対するソレノイド弁の取り付けを手作業で行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる取付構造の係止機構は、ソレノイド弁に設けた係止片が制御ボディに設けた被係合部に弾性係合するように構成したことで、特許文献1、2に開示された従来構造に必要なステイやボルトなど取付構造に用いる別部品が不要となる。これにより、部品点数を少なく抑えた簡単な構造を実現している。
【0012】
また、本発明にかかる取付構造では、ソレノイド弁(電磁コイル部)のグランド端子と接続された係止片が制御ボディの被係合部に接触することによって、ソレノイド弁のアース接続を確保することができる。したがって、ソレノイド弁を制御ボディに取り付けるだけでアース接続が可能となるので、その点においてもソレノイド弁の取付作業の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
また、このソレノイド弁の取付構造では、係止片(40)は、電磁コイル(32)を囲むヨーク(39)の一部であるか、又はヨーク(39)と一体に接合された弾性金属片であってよい。この構成によれば、従来からソレノイド弁が備えているヨークを用いて係止機構の係止片を構成したことで、ソレノイド弁及びその取付構造の部品点数をより少なく抑えて構成の簡素化を図ることができる。また、ヨークを用いて係止片を構成したことで、係止機構によるソレノイド弁のアース接続をより確実に行うことが可能となる。
【0014】
また、このソレノイド弁の取付構造では、被係合部(16)は、制御ボディ(10)の上面(10a)を窪ませてなる凹部であり、制御ボディ(10)の上面(10a)において被係合部(16)から挿入部(12)と反対側に向かって延在する溝部(17)を備え、溝部(17)の幅は、係止片(40)及び被係合部(16)の幅よりも狭く形成されており、溝部(17)を介して被係合部(16)に挿入した工具(60)で係止片(40)を撓ませることで、該係止片(40)を被係合部(16)に対する係合位置から退避させるように構成してもよい。
【0015】
この構成によれば、溝部を介して被係合部に工具を挿入することで、該工具で係合片の係合を簡単かつ確実に解除することが可能となる。また、この構成によれば、被係合部に工具を挿入するための溝部を制御ボディの上面に形成したことで、制御ボディ(アッセンブリ)を分解せずに該制御ボディからソレノイド弁を取り外すことが可能となるため、組立性及びメンテナンス性に優れた取付構造となる。また、制御ボディにおけるソレノイド弁の下側に作動油が流通する油路を形成することが可能となるので、制御ボディ内の油路のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0016】
あるいは、被係合部(16)は、制御ボディ(10)の上面(10a)から下面(10c)に貫通する貫通孔(18)であり、制御ボディ(10)の下面(10c)側から被係合部(16)を介して被係合部(16)に挿入した工具(60)で係止片(40)を撓ませることで、該係止片(40)を被係合部(16)に対する係合位置から退避させるように構成してもよい。
【0017】
この構成によれば、貫通孔を介して被係合部に工具を挿入することで、該工具で係合片の係合を簡単かつ確実に解除することが可能となる。また、この構成によれば、制御ボディの形状の簡素化が可能となる。これにより、制御ボディの加工工程の容易化を図ることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるソレノイド弁の取付構造によれば、部品点数を少なく抑えた簡単な構造で、ソレノイド弁の取り付け及び取り外し作業の効率化を図ることができると共に、装置の軽量化及びコンパクト化を図ることができ、かつソレノイド弁のアース接続を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁を取り付けた制御ボディの平面図、(b)は、(a)のX−X矢視に対応する図である。
図2】ソレノイド弁を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、背面図、(c)は、下面図、(d)は、本体部の内部構造を示す側断面図である。
図3】ソレノイド弁の取付手順を説明するための図で、(a)は、ソレノイド弁の弁部が制御ボディの挿入部に挿入される前の状態を示す図、(b)は、係止機構の係止片が凹部に係合する前の状態を示す図、(c)は、係止片が凹部に係合してソレノイド弁が係止された状態を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁を取り付けた制御ボディの平面図、(b)は、(a)のY−Y矢視図(一部断面図)である。
図5】本発明の第3実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁を取り付けた制御ボディの平面図、(b)は、(a)のZ−Z矢視図(一部断面図)である。
図6】本発明の第4実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁を取り付けた制御ボディの平面図、(b)は、(a)のW−W矢視図(一部断面図)である。
図7】本発明の第5実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造にかかるソレノイド弁の本体部を示す側断面図である。
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、制御ボディ及びソレノイド弁の平面図、(b)は、(a)のX−X矢視図(一部断面図)である。また、図2は、ソレノイド弁を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、背面図、(c)は、下面図、(d)は、本体部の内部構造を示す側断面図である。本実施形態のソレノイド弁の取付構造は、車両用の自動変速機が備える油圧制御回路を有する制御ボディ10にソレノイド弁20を取り付けるための取付構造である。
【0021】
ソレノイド弁20は、互いに同軸上に設けた弁部25と本体部(電磁コイル部)30とを備えて構成されている。弁部25は、略円形の断面を有する軸状に形成されており、本体部30は、弁部25の軸方向の端部に連接された弁部25よりも大きい径寸法の円柱状に形成されている。なお、以下の説明では、単に軸方向というときは、制御ボディ10に取り付けたソレノイド弁20の軸方向を示すものとする。また、上下、横、水平というときは、各図に示す状態での上下、横、水平向きを示すものとする。
【0022】
ソレノイド弁20の本体部30は、通電により磁力を発生する電磁コイル32と、軸方向へ移動可能に支持されるプランジャ33と、電磁コイル32の発生する磁力によりプランジャ33を軸方向へ磁気吸引する磁気吸引コア34を有するステータ38と、磁気吸引コア34に挿入配置されてプランジャ33の軸力を外部に伝えるシャフト35と、電磁コイル32の外周を覆うヨーク39と、磁気受渡コア46の外周に嵌め合わされるリング形状の磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)からなるリングコア45とを備えて構成されている。
【0023】
電磁コイル32は、通電による磁力で弁部25に内蔵された弁体(図示せず)を軸方向に駆動するものである。ヨーク39は、電磁コイル32の周囲を覆って磁束を流す磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、電磁コイル32の外周を覆う略カップ形状に形成されている。
【0024】
また、ヨーク39は先端側の一部が本体部30の径方向の外側に向かって折り曲げられており、その先端が本体部30の外周面30aから突出する係止片40として構成されている。係止片40の詳細構成については後述する。また、詳細な図示は省略するが、ヨーク39は、ソレノイド弁20(電磁コイル部32)のグランド端子(アース端子)に接続されている。
【0025】
制御ボディ10は、変速制御用の油圧制御回路を内蔵したハウジングであり、全体形状の図示は省略するが、アルミニウムなどの金属製でその外形が薄型の直方体状などの箱型に形成されている。制御ボディ10の上面10aにおける軸方向の一端側には、上方に突出する略直方体状の突出部11が設けられており、該突出部11の一方の側面11aには、ソレノイド弁20の弁部25を挿入させるための挿入孔(挿入部)12が開口している。挿入孔12は、側面11aに複数個が並べて形成されている。各挿入孔12は、その軸方向が互いに平行に延びる円筒状の貫通穴として形成されており、ソレノイド弁20の弁部25を軸方向に差し込んで挿入するようになっている。また、制御ボディ10の突出部11に隣接する位置の上面10aは、突出部11よりも一段低くなっている平面状の取付面15になっている。図1に示すように、ソレノイド弁20は、弁部25が挿入孔12に挿入されると共に取付面15上に本体部30が載置された状態で制御ボディ10に取り付けられる。
【0026】
ソレノイド弁20と制御ボディ10には、制御ボディ10に取り付けたソレノイド弁20を係止するための係止機構50が設置されている。係止機構50は、ソレノイド弁20に設けた係止片40と、制御ボディ10に設けた凹部(被係合部)16とで構成されている。係止片40は、ソレノイド弁20の本体部30の外周面(下面側の外周面)30aに形成した突起状の爪片で、弾性(可撓性)を有する金属製の薄板状の細片である。この係止片40は、本体部30の外周面(下面)30aから径方向の外側に突出して、その先が本体部30の外周面(下面)30aに沿って軸方向の後側に向かって延伸しており、先端部40aが軸方向の後側を向いて配置されている。一方、凹部16は、制御ボディ10の取付面15(上面10a)に形成した略矩形状の窪みからなる。凹部16は、係止片40を没入させることが可能な寸法及び形状、詳細には、係止片40の長さ寸法(軸方向の長さ寸法)及び幅寸法(軸方向に対する幅寸法)よりも大きな長さ寸法と幅寸法を有して形成されている。またこの凹部16は、制御ボディ10の取付面15(上面10a)における挿入孔12への弁部25の挿入方向、且つ前挿入孔12の中心から所定の高さ分だけ下方向にずれた位置に配置されている。そして、凹部16と係止片40は、ソレノイド弁20の弁部25を制御ボディ10の挿入孔12に奥まで差し込んだ状態(本体部30の端面30cが突出部11の側面11aに当接するよりも手前の位置)で、係止片40が凹部16に対向する位置に配置されるように形成されている。
【0027】
次に、上記構成の取付構造でソレノイド弁20を制御ボディ10に取り付ける手順を説明する。図3は、ソレノイド弁20の取付手順を説明するための図で、(a)は、ソレノイド弁20の弁部25が制御ボディ10の挿入孔12に挿入される前の状態を示す図、(b)は、係止機構50の係止片40が凹部16に係合する前の状態を示す図、(c)は、係止片40が凹部16に係合してソレノイド弁20が係止された状態を示す図である。
【0028】
ソレノイド弁20を制御ボディ10に取り付けるには、まず、図3(a)に示すように、ソレノイド弁20を取付面15の上方で該取付面15に沿って軸方向に移動させる。これにより、同図(b)に示すように、ソレノイド弁20の弁部25を突出部11の側面11aの挿入孔12に差し込む。弁部25が挿入孔12に差し込まれた状態で、ソレノイド弁20を軸方向に沿ってさらに左側に移動させることで、弁部25を挿入孔12に深く挿入してゆく。このとき、ソレノイド弁20が弁部25の軸方向に沿って移動することで、ソレノイド弁20の係止片40が制御ボディ10の取付面15に当接する。その状態でさらにソレノイド弁20を軸方向に移動させると、係止片40が弾性変形する(撓む)。こうして、図3(b)及び図3(c)に示すように、係止片40が凹部16の手前側の取付面15を乗り越えて凹部16に弾性係合(スナップイン係合)する。すなわち、ソレノイド弁20の本体部30の端面(弁部25側の端面)30cが制御ボディ10の突出部11の側面11aに当接するよりも手前側の位置で係止片40が凹部16に没入する。これにより、ソレノイド弁20の軸方向の移動が規制された状態(ソレノイド弁20が制御ボディ10から外れない状態)となる。以上により、制御ボディ10に対するソレノイド弁20の取り付けが完了する。
【0029】
そして、上記の取り付けにおいて係止片40が凹部16に係合することで、グランド端子と接続されたヨーク39の一部で構成された係止片40とアルミニウム製の制御ボディ10の凹部16との接触により、ソレノイド弁20(電磁コイル部32)のグランド接続(アース接続)を確保することができる。
【0030】
このように、本実施形態の取付構造では、電磁コイル32を内蔵する本体部30の外周面30aから突出させてなる係止片40を備えたソレノイド弁20を制御ボディ10に取り付ける際に、ソレノイド弁20の弁部25を制御ボディ10の挿入孔12に挿入することで、係止片40が制御ボディ10の凹部16に係合してソレノイド弁20が係止されるように構成した。またその際に、グランド端子と接続されている係止片40が制御ボディ10に当接することで、ソレノイド弁20が制御ボディ10を介してアースされるようになっている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の取付構造では、ソレノイド弁20の弁部25を制御ボディ10の挿入孔12に挿入することで、係止機構50の係止片40が凹部16に弾性係合してソレノイド弁20の係止(固定)がなされる。したがって、制御ボディ10に対するソレノイド弁20の固定を簡単な作業で行えるようになる。これにより、ソレノイド弁20の取付作業の効率化を図ることができる。また、ソレノイド弁20の係止片40が制御ボディ10の凹部16に弾性係合する構成を採用したことで、ソレノイド弁20の固定に工具が不要となるので、ソレノイド弁20の取り付けを手作業で行うことが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の取付構造が備える係止機構50は、ソレノイド弁20の係止片40が制御ボディ10の凹部16に弾性係合するように構成したことで、特許文献1、2に開示された従来構造に必要なステイやボルトなど取付構造に用いる別部品が不要となる。これにより、部品点数を少なく抑えた簡単な構造を実現している。
【0033】
また、本実施形態の取付構造では、ソレノイド弁20(電磁コイル部32)のグランド端子と接続された係止片40と制御ボディ10の凹部16との接触によって、ソレノイド弁20のアース接続を確保することができる。したがって、ソレノイド弁20を制御ボディ10に取り付けるだけでアース接続が可能となるので、その点においてもソレノイド弁20の取付作業の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
【0035】
図4は、本発明の第2実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁20を取り付けた制御ボディ10の平面図、(b)は、(a)のY−Y矢視図(一部断面図)である。本実施形態の取付構造は、第1実施形態の取付構造の構成に加えて、制御ボディ10の取付面15上に形成した凹部16に通じる溝部17を備えている。この溝部17は、取付面15の挿入孔12と反対側の端辺15aから軸方向に沿って凹部16まで貫通する直線状の溝部である。溝部17は、その深さが凹部16と同一の深さになっており、その幅(軸方向に対する横幅)は、凹部16の幅及び係止片40の幅よりも狭くなっている。そして、溝部17を介して凹部16に挿入した工具60で係止片40を押圧して撓ませることで、該係止片40を凹部16に対する係合位置から退避させるように構成している。
【0036】
すなわち、本実施形態の取付構造において、制御ボディ10からソレノイド弁20を取り外すには、図4に示すように、溝部17を介して凹部16にドライバーなどの工具60の先端60aを差し込んで、該工具60の先端60aで係止片40の先端を軸方向の奥側及び上方に押圧することで、凹部16に対する係止片40の係合を解除する。
【0037】
本実施形態の取付構造では、上記の溝部17を備えたことで、制御ボディ10に対するソレノイド弁20の固定の解除を簡単な作業で行えるようになる。これにより、ソレノイド弁20の取り外し作業の効率化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態の取付構造によれば、溝部17を制御ボディ10の取付面15(上面10a)に形成したことで、制御ボディ10(アッセンブリ)を分解せずに該制御ボディ10に対してソレノイド弁20を脱着することが可能となる。さらに、溝部17を制御ボディ10の取付面15(上面10a)に形成したことで、制御ボディ10におけるソレノイド弁20の真下位置に作動油が流通する油路(図示せず)を形成することが可能となるので、油路のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5は、本発明の第3実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁20を取り付けた制御ボディ10の平面図、(b)は、(a)のZ−Z矢視図(一部断面図)である。第3実施形態の取付構造は、第1実施形態の取付構造と比較して、制御ボディ10に設けた凹部16の底面(底部)から制御ボディ10の下面10cに貫通する貫通孔18を追加した構成である。すなわち、本実施形態の係止機構50は、係止片40と凹部16と貫通孔18とで構成されている。
【0040】
貫通孔18は、図5(a)に示すように、その平面視の幅寸法(図の上下方向の寸法、以下同じ。)が凹部16の幅寸法よりも小さくかつ係止片40の幅寸法よりも大きな寸法に形成されている。そして、本実施形態においても、図5(b)に示すように、貫通孔18を介して凹部16に挿入した工具60の先端60aで係止片40を押圧して撓ませることで、該係止片40を凹部16に対する係合位置から退避させるように構成している。
【0041】
すなわち、本実施形態の取付構造において、制御ボディ10からソレノイド弁20を取り外すには、図5に示すように、制御ボディ10の下面10c側から貫通孔18にドライバーなどの工具60の先端60aを差し込んで、該工具60の先端60aで係止片40を上方に押圧することで、凹部16に対する係止片40の係合を解除する。
【0042】
本実施形態の取付構造では、上記の貫通孔18を備えたことで、制御ボディ10に対するソレノイド弁20の固定の解除を簡単な作業で行えるようになる。これにより、ソレノイド弁20の取り外し作業の効率化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1実施形態の構成と比較して、凹部16の底面16aから制御ボディ10の下面10cに貫通する貫通孔18を追加しただけである。そのため、ソレノイド弁20の固定の解除を簡単に行えるようにしながらも、制御ボディ10の形状の簡素化が可能となる。これにより、ソレノイド弁20の取り外し作業の効率化を図りながらも、制御ボディ10の加工工程の容易化を図ることができる。
【0044】
なお、本実施形態の取付構造では、貫通孔18の寸法(平面視の幅寸法)を凹部16の寸法よりも小さく形成していることで、凹部16に係合している係止片40が該凹部16の底面16aに面接触状態で当接した状態となる。これにより、係止片40と制御ボディ10との接触によるアース接続を確保することができる。
【0045】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図6は、本発明の第4実施形態にかかるソレノイド弁の取付構造を示す図で、(a)は、ソレノイド弁20を取り付けた制御ボディ10の平面図、(b)は、(a)のW−W矢視図(一部断面図)である。第4実施形態の取付構造は、第3実施形態の取付構造が備える凹部16と貫通孔18に代えて、傾斜面状の底面(接触面)16−2aを有する凹部16−2と、凹部16−2における底面16−2a以外の位置から制御ボディ10の下面10cに貫通する貫通孔18-2とを備えた構成である。
【0046】
凹部16の底面16−2aは、係止片40の根元側から先端側に向かって次第に下降する向きに傾斜する傾斜面であり、この傾斜面は、係止片40の根元側の下面に沿った形状に形成されている。また、この底面16−2aは、凹部16の長さ方向(図の左右方向)の一端から途中位置まで延伸している。そして、係止片40が凹部16-2に係合した状態で、係止片40の根元側の下面が底面16−2aに対して面接触で当接した状態となる。これにより、係止片40と制御ボディ10との接触によるアース接続を確保することができる。
【0047】
また、本実施形態の取付構造においても、制御ボディ10からソレノイド弁20を取り外すには、図6に示すように、制御ボディ10の下面10c側から貫通孔18−2にドライバーなどの工具60の先端60aを差し込んで、該工具60の先端60aで係止片40を上方に押圧することで、凹部16−2に対する係止片40の係合を解除する。
【0048】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図7は、本発明の第5実施形態にかかるソレノイド弁の本体部を示す側断面図である。第1実施形態では、係止片40をヨーク39の一部で構成した場合を示したが、本実施形態では、係止片40をソレノイド弁20(電磁コイル部32)のグランド端子と接続するための構成として、ヨーク39に別体の弾性金属製の支持片(ステイ)40−2を溶接部Lの溶接にて取り付けることで係止片40を構成している。その場合、別体の支持片40−2の導電性を確保するために、当該支持片40−2の表面にはめっき処理(絶縁処理)を施さないようにする。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態に示す係止機構50が備える係止片40と凹部16の具体的な形状や配置はいずれも一例であり、これらは、他の形状や配置であってもよい。
【要約】
部品点数を少なく抑えた簡単な構造で、取付作業の効率化を図ることができると共に、装置の軽量化及びコンパクト化を図ることができ、かつソレノイド弁のアース接続を簡単に行うことができる取付構造を提供する。ソレノイド弁は、電磁コイルを内蔵する本体部と、本体部と同軸状に連なる軸状の弁部とからなり、制御ボディには、弁部を挿入させるための挿入孔が形成されており、電磁コイルのグランド端子と接続されて本体部の外周面から突出する弾性を有する係止片と、制御ボディの上面に設けた凹部とからなる係止機構を備える。弁部を挿入孔に挿入することで係止片が凹部に弾性係合してソレノイド弁の係止がなされると共に、係止片と被係合部との接触によりソレノイド弁のアース接続がなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7