(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6051372
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】芝生清掃車のブラシ高さ調整装置
(51)【国際特許分類】
E01H 1/04 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
E01H1/04
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-177165(P2015-177165)
(22)【出願日】2015年9月9日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000247904
【氏名又は名称】有限会社河島農具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】河島 隆則
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4332540(JP,B2)
【文献】
特開2015−151832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に操縦席を具備し後方の荷台部分にホッパーを具備する車体の中央部の下方の横方向に設けられたブラシケース内で回転駆動するブラシによって掻き上げられた地面の芝生面上の芝やホコリなどの塵埃を風洞を通じて前記ホッパー内に収集する芝生清掃車において、
前記車体のブラシケースの両側方の上側の車体側方に固定する側板とこの側板に直角に固定した水平板を具備する取付枠と、前記水平板に形成した貫通口の下方に固定したガイド筒と、該ガイド筒の内部に上下動自在に収納したサポートロッドと、該サポートロッドの前記ガイド筒よりも下方へ突出した部位に設けられた前記ブラシケースに固定したストップローラーを載せる載台と、前記サポートロッドの水平板よりも上方へ突出している突出部分に必要枚数だけ外嵌する所定の厚みを有する円環状のスペーサーと、前記サポートロッドに設けてあるピン孔に差し込むロックピンと、を具備することを特徴とする芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項2】
前記円環状のスペーサーの上方の前記サポートロッドに外嵌するピン孔を形成したストッパーカラーを有することを特徴とする請求項1に記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項3】
前記ストッパーカラーに前記側板と係合する回り止め板を固定したことを特徴とする請求項2に記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項4】
前記水平板の上方に前記円環状のスペーサーを外嵌する予備ロッドを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項5】
前記ロックピンと前記予備ロッドの上方のピン孔に差し込んで前記円環状のスペーサの抜け防止するリンチピンとが、一端を前記ロックピンに固定され他端に穴を有する係止具を具備するワイヤーによって連結されていることを特徴とする請求項4に記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項6】
前記ロックピンがボールロックピンであることであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【請求項7】
前記載台は前記サポートロッドの下方に設けたねじ形成部位にその上下をナットで挟まれるようにして上下方向に固定位置を変更可能に設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフ場や芝生養成場などの芝生面を清掃する芝生清掃車のブラシ高さ調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ゴルフ場や芝生養生場あるいは公園などにおいて、芝刈機で刈られた余分な芝やホコリなどの塵埃を、芝生清掃車が本機下方のブラシケース内で横方向に長いブラシを軸を中心に回転させながら風圧等で芝やホコリを掻き上げて風洞を通ってホッパーの中に溜めて、所定量が溜まって一杯になると捨場で排出するようにしている。
【0003】
このような芝生清掃車において、掻き上げる芝やホコリなどの塵埃とブラシとの間隔距離が短すぎると地面に生えている芝を傷つけ、逆に間隔距離が長い時には掻き上げ難くなり十分な清掃が行うことが出来なくなる。
このような地面とブラシとの間隔距離の調整は、例えばゴルフ場においては芝が短く刈り取られているフェアウエイから芝がある程度伸びているラフへの移動、逆にラフからフェアウエイへの移動の場合にその都度調整しなければならない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1においては、ブラシと芝が生えている地面との間隔距離を保持するガイド車輪を設け、このガイド車輪を揺動自在にアームに取付け、このアームの上端部にガイド車輪の取付角度を調整する調整装置を設けて、ガイド車輪の取付角度を変えることにより、ブラシと芝が生えている地面との間隔距離の調整を頻繁に行えるようにしたブラシ高さ調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4332540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によると、芝が生えている地面を走行するガイド車輪が必要であるために、構造が複雑になり、しかもガイド車輪の径が小さいために溝や窪みに落ち込み易く走行がスムーズに行き難いという問題点がある。そこで、この発明は構造が簡単で、しかもガイド車輪が必要でない芝生清掃車のブラシ高さ調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、この発明は、前方に操縦席を具備し後方の荷台部分にホッパーを具備する車体の中央部の下方の横方向に設けられたブラシケース内で回転駆動するブラシによって掻き上げられた地面の芝生面上の芝やホコリなどの塵埃を風洞を通じて前記ホッパー内に収集する芝生清掃車において、前記車体のブラシケースの両側方の上側の車体側方に固定する側板とこの側板に直角に固定した水平板を具備する取付枠と、前記水平板に形成した貫通口の下方に固定したガイド筒と、該ガイド筒の内部に上下動自在に収納したサポートロッドと、該サポートロッドの前記ガイド筒よりも下方へ突出した部位に設けられた前記ブラシケースに固定したストップローラーを載せる載台と、前記サポートロッドの水平板よりも上方へ突出している突出部分に必要枚数だけ外嵌する所定の厚みを有する円環状のスペーサーと、前記サポートロッドに設けてあるピン孔に差し込むロックピンと、を具備することである。
【0008】
又、この発明は、前記円環状のスペーサーの上方の前記サポートロッドに外嵌するピン孔を形成したストッパーカラーを有することである。
【0009】
更に又、この発明は、前記ストッパーカラーに前記側板と係合する回り止め板を固定したことである。
【0010】
更に、この発明は、前記水平板の上方に前記円環状のスペーサーを外嵌する予備ロッドを設けたことである。
【0011】
更に、この発明は、前記ロックピンと前記予備ロッドの上方のピン孔に差し込んで前記円環状のスペーサの抜け防止するリンチピンとが、一端を前記ロックピンに固定され他端に穴を有する係止具を具備するワイヤーによって連結されていることである。
【0012】
又、この発明は、前記ロックピンがボールロックピンであることである。
【0013】
更に又、この発明は、前記載台は前記サポートロッドの下方に設けたねじ形成部位にその上下をナットで挟まれるようにして上下方向に固定位置を変更可能に設けたことである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成からなるこの発明の芝生清掃車のブラシ高さ調整装置によると、ブラシと地面との間隔距離の調整を、ブラシケースに固定しているストップローラを載台に載置するだけでブラシケースを支持できるので、ガイド車輪は必要ではなくなり、その結果、構造が簡単になる。又、載台の高さの調整、即ち地面とブラシとの間隔距離の調整は、ガイド筒内で上下動可能なサポートロッドの水平板よりの突出部分の突出度合いによって定まるが、この突出度合いは所定の厚みを有するスペーサーを水平板とロックピンの間のサポートロッドに外嵌する枚数によるので、ロックピンを外してスペーサーの枚数の増減だけで良い。従って、載台の上下移動も簡単であるので、ゴルフ場のラフとフェアウエイを行き来する場合のように、頻繁に間隔距離を変更する場合であっても作業は短時間で且つ楽に行える利点がある。
【0015】
又、スペーサーの上方にサポートロッドに外嵌するストッパーカラーを設け、ロックピンによってスペーサー上で固定した場合には、スペーサーが数枚に亘って積み重ねられている場合にも安定して保持される。
【0016】
このストッパーカラーに回り止め板を設けた場合には、この回り止め板が側板に当って回転しないことから、サポートロッドの回転が抑制されて、常時同じ方向に位置するので、より安定してスペーサーをロックピンで係止できる。又、サポートロッドとストッパーカラーのピン孔合わせが容易になるので、ロックピンを挿入し易い。
【0017】
予備ロッドを水平板に設けた場合には、間隔距離が短くてスペーサーが余る場合には、この予備ロッドに外嵌しておくことで保持でき、必要になった際には直ぐに引き出してサポートロッドへ移動する場合にも容易に行える。
【0018】
前記ロックピンと予備ロッドのスペーサーの抜け防止のリンチピントがワイヤーによって連結可能とされているので、ピン止めの忘れ及び紛失防止に有効である。
【0019】
前記ロックピンがボールロックピンである場合には、ピン孔にロックピンを差し込むだけで芝生清掃車の振動による抜け防止を図ることが可能であり、引き抜く際にも少しの力を加えるだけで引き抜けるので操作も容易である。
【0020】
前記載台のサポートロッドへの上下方向の取付固定位置をナットの締付け緩めによって容易に調整できるので、前記スペーサーと併せて前記間隔距離の調整がより適確に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】高さ調節装置を具備した芝生清掃車の全体側面図
【
図2】
図1の高さ位置調整装置の部分拡大側面図でストップーローラーが載台から離れた状態図
【
図3】
図1の高さ位置調整装置の部分拡大側面図でストップーローラーが載台に載った状態図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の最良の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、芝生清掃車1は、前車輪2と後車輪3によって走行可能に支持された車体4の前方上方にハンドルやクラッチ機構等を備えた操縦席5を具備し、後方上方の荷台部分にはホッパー6を具備している。そして、車体4の中央部の下方で芝生清掃車1の進行方向と直角方向である横方向には、回転駆動するブラシ7を支持し周囲を包囲するブラシケース8が設けられていて、ブラシ7が回転して地面の芝やホコリ等の塵埃を掻き上げて図外の風洞を通って前記ホッパー6内へ溜められる。前記ブラシケース8は、操縦席に設けられた図外のレバーによりブラシ7と共に上下動可能な構造になっている。そして、ブラシケース8の両側には、固定板9を介してストップローラー10が突出するようにして固定されている。
【0023】
前記車体4のブラシケース8上方の両側には、それぞれブラシ高さ調整装置11が固定されている。該ブラシ高さ調整装置11は、地面とブラシ7の間隔距離を調整するためのもので、
図2〜6に示すように、前記ブラシケース8の両側方の上側にある車体4の側方に固定する側板12とこの側板12の長手方向に直角に固定された水平板13を具備する取付枠14を有している。前記側板12には、取付枠14をねじで車体4に固定するためのねじ孔15が形成されている。又、前記水平板13の一端側には、貫通口16が形成されると共にこの貫通口16の下方にはガイド筒17が水平板13の裏面に固定されており、この貫通口16及びガイド筒17内にサポートロッド18が上下動自在に挿入されている。
【0024】
そして、このサポートロッド18の水平板13よりも上方に突出した突出部分には、所定の厚みを有する円環状のスペーサー19が上方から取外し自在に外嵌出来るようになっている。外嵌するスぺーサー19の枚数は求める間隔距離を得るためのもので、通常は厚さが6mm程度であるので、最大6cm程度の前記間隔距離の幅を持たせたい場合には、10枚のスぺーサー19を用意しておけば良いことになる。サポートロッド18の下方側には外周にねじ切りしたねじ形成部位20があり、このねじ形成部位20に載台21が上下をワッシャ22を介してナット23で締め付けられて嵌め込まれているので、両ナット23の締付け緩めによって載台21の位置を上下動させて固定することが出来る。
【0025】
又、サポートロッド18の上方にはピン孔24が形成されており、このピン孔24にロックピン25を差し込むことで、芝生清掃車1が上下に振動した場合であってもスペーサー19が抜け出ないようにしている。このロックピン25がボールロックピンであれば、ピン孔24から抜け出に難くなり又引っ張ると簡単に脱け出るので好ましく使用できる。更に、最上のスペーサー19の上方にピン孔24を形成したストッパーカラー26をサポートロッド18に外嵌して被せてサポートロッド18との2つのピン孔24にロックピン25を差し込んで固定した場合には、より安定的にスペーサー19をサポートロッド18に固定できる。又、このストッパーカラー26に前記側板12と係合する回り止め板27を設けた時には、サポートロッド18が回転しないのでよりロックピン25によるスペーサー19の係止がより安定する。
【0026】
前記水平板13の貫通口16を形成した反対側の端部には、使用しない余分なスペーサー19を外嵌して保持する予備ロッド28が立てられている。そして、芝生清掃車1の振動によってスペーサー19が抜け出さないようにするためのリンチピン29の係止棒30を差し込むためのピン孔24が形成されている。前記ロックピン25とリンチピン29とは、
図4によく現れているように、ワイヤー32によって連結しておくことによって紛失防止を図れる。この場合、ワイヤー32の一端をロックピン25に固定し他端にピン孔を設けた連結端子33を設ければ、このピン孔24に前記係止棒30に挿入してから予備ロッド28のピン孔24に差し込むことによりワイヤー32をリンチピン29と容易に連結出来る。尚、前記取付板12と水平板13とはそれらの角部に設けた補強板31によって補強されている。
【0027】
側板12に形成したねじ孔15は、ねじで取付枠14を車体4に固定するためのものであるが、車体4に直接にサポートロッド18、ガイド筒17や予備ロッド28を等を取り付ける場合には取付枠14は不要である。この発明はこのように取付枠14と実質同一の作用効果を有するものの範囲まで及ぶものである。
【0028】
上記構成からなるこの発明の使用について説明する。まず、地面とブラシ7との間隔距離の調整をする場合には、
図2に示すように、操縦席5等にあるレバーを操作してブラシケース8を持ち上げて、ストップローラー10を載台21の上方へ移動させる。そして、ロックピン25を抜いてストッパーカラー26を外し、サポートロッド18に必要な枚数のスペーサー19を外嵌させる。例えば一枚のスペーサー19の厚さは6mmと決めておけば必要な間隔距離に見合った枚数のスペーサー19を外嵌させる。不足の場合には予備ロッド28から移動させ、余った場合には予備ロッド28に外嵌させて保持しておく。その後、回り止め板27を側板12側に向けてストッパーカラー26を上方からサポートロッド18に差し込んでロックピン25でサポートロッド18とストッパーカラー26を係止する。この時、ワイヤー32の端部にある連結端子33のピン孔にリンチピン29の係止棒30を差し込んでから、係止棒30を予備ロッド28のピン孔24に差し込みリングを予備ロッド28上方から反対側に回転させて引掛けて係止棒30の抜けを防止することで、予備ロッド28からのスペーサー19の抜けを防止する。なお、サポートロッド18及び予備ロッド28の双方共に単独にロックピン25を用いて係止してもよいのは勿論である。ワイヤー32は、長尺な紐状、棒状、鎖状のものであれば材質は問われない。
【0029】
このような準備が整えば、サポートロッド18は自重によってガイド筒17内を下方へ落下するが、スペーサー19の合計厚さ分の距離分だけは落下を阻止されるので、それによって間隔距離が調整される。そして、ブラシケース8に固定しているストップローラー10をレバー等の操作によって下降させて、サポートロッド18の下方に設けた載台21に載せて下降を停止させる。これによって、ブラシケース8を機械的に支持しなくとも間隔距離を保持したままの状態を維持できるので、構造が簡単になり、しかも地面の凹凸によってブラシケース8が持ち上がった場合にも載台21からストップローラー10が上方へ離反するだけで緩衝出来る利点がある。このようにして、地面の状況に応じてスペーサー19のサポートロッド18へ外嵌する枚数を調整して、間隔距離を調整することが出来るのである。
【0030】
以上説明したようにこの発明のブラシ高さ調整装置11によれば、ガイド車輪をなくしてブラシ高さの調整を可能にしたので、芝生清掃車1の構造が簡略化される利点がある。その他の種々の効果は、前記発明の効果の欄や実施形態の説明の欄で記載した通りであるので、その説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の芝生清掃車のブラシ高さ調節装置は、新車は勿論のこと使用中の芝生清掃車にも後付けでも利用出来るので、その利用範囲は広く有用なものである。
【符号の説明】
【0032】
1 芝生清掃車
2 前車輪
3 後車輪
4 車体
5 操縦席
6 ホッパー
7 ブラシ
8 ブラシケース
10 ストップローラー
11 ブラシ高さ調節装置
12 側板
13 水平板
14 取付枠
17 ガイド筒
18 サポートロッド
19 円環状のスペーサー
21 載台
25 ロックピン
26 ストッパーカラー
27 回り止め板
28 予備ロッド
29 リンチピン
32 ワイヤー
【要約】 (修正有)
【課題】地面上の芝やホコリ等の塵埃をブラシで掻き上げてホッパーに収集する芝生清掃車におけるブラシと地面との間隔距離を簡単な構成で且つ容易に調整できる芝生清掃車のブラシ高さ調節装置を提供する。
【解決手段】芝生清掃車の車体のブラシケースの両側方に固定する側板12とこの側板12に直角に固定した水平板13を具備する取付枠14と、前記水平板13に形成した貫通口の下方に固定したガイド筒17と、該ガイド筒17の内部に上下動自在に収納したサポートロッド18と、該サポートロッド18の前記ガイド筒17よりも下方へ突出した部位に設けられた前記ブラシケースに固定したストップローラー10を載せる載台21と、前記サポートロッド18の水平板13よりも上方へ突出している突出部分に必要枚数だけ外嵌する所定の厚みを有する円環状のスペーサー19と、前記サポートロッド18に設けてあるピン孔に差し込むロックピン25とを具備する。
【選択図】
図4