特許第6051405号(P6051405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051405
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】塗装ミスト処理装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/04 20060101AFI20161219BHJP
   B05B 15/12 20060101ALI20161219BHJP
   B01D 41/04 20060101ALI20161219BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20161219BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20161219BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B05B15/04 104
   B05B15/12
   B01D41/04
   B01D39/20 A
   B01D39/20 D
   B01D46/10 C
   B01D46/10 E
   B01D46/42 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-252960(P2012-252960)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-100640(P2014-100640A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】田代 義和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 務
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−115841(JP,A)
【文献】 特開2007−296501(JP,A)
【文献】 特開平03−135408(JP,A)
【文献】 特開平07−236845(JP,A)
【文献】 実開昭61−022519(JP,U)
【文献】 特開昭47−018935(JP,A)
【文献】 特開昭60−156578(JP,A)
【文献】 特開昭51−047931(JP,A)
【文献】 特開平07−100413(JP,A)
【文献】 特表2008−536661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B15/00−15/12
B09D39/00−41/04
B01D46/00−46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属もしくはセラミックスからなり、板状の多孔質フィルタを通風方向に対して複数枚積層し、塗装ブースで発生する塗装ミストを多孔質フィルタに捕集させながら、多孔質フィルタを1枚ごと横に引き出して通風経路の外に設けた高圧洗浄ノズルから噴き出される高圧洗浄水で洗浄再生する塗装ミスト処理装置であって、複数枚積層した多孔質フィルタは、一枚を横に引き出しても捕集効率が確保できるように、通風方向の風上から風下にかけて厚さ5〜15mmを有する孔径3〜4mmの多孔質フィルタA、厚さ5〜15mmを有する孔径2〜3mmの多孔質フィルタB、厚さ5〜15mmを有する孔径1〜2mmの多孔質フィルタC、厚さ5〜15mmを有する孔径1〜2mmの多孔質フィルタDで構成した塗装ミスト処理装置
【請求項2】
多孔質フィルタC、Dの洗浄再生周期を多孔質フィルタA、Bの2倍にすることを特徴とする請求項記載の塗装ミスト処理装置。
【請求項3】
高圧洗浄水ノズルの、多孔質フィルタの引き出し方向下流側に、高圧エアーを噴き出す高圧エアーノズルを設けることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装ミスト処理装置。
【請求項4】
多孔質フィルタの、塗装ミストを吸い込む側から高圧洗浄水を当てて洗浄することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の塗装ミスト処理装置。
【請求項5】
多孔質フィルタの内部を含む表面全体に剥離性膜を設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の塗装ミスト処理装置。
【請求項6】
塗装ミストを捕集して清浄化した空気の少なくとも一部を塗装ブースに戻すことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の塗装ミスト処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブースで発生する塗装ミストを捕集して空気を清浄化する塗装ミスト処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の塗装ブースの空気を清浄化して外に排気する装置として、図8に示すような水滴を噴霧して塗装ミストを取り込み、その水滴を仕切り板で空気から分離する湿式処理装置が知られている。
【0003】
以下、その湿式処理装置について図8を参照しながら説明する。
【0004】
図8に示すように塗装ブース101では塗装ロボット102から例えば有機溶剤を溶媒とした塗料がスプレーされているため、有機溶剤を含む塗装ミスト103が充満している。対象物104への塗装品質を確保するために塗装ミスト103を含む空気は排気ファン105によって外に排出されるが、そのまま排出すると外の環境が塗装ミスト103よって大きく汚染されてしまうため、塗装ブース101と排気ファン105の間に湿式処理装置106が設置されている。
【0005】
湿式処理装置106は水滴噴霧器107によって水滴108を接触室109に散布して水滴108に塗装ミスト103を取り込み、接触室109の風下に設けられた仕切り板110によって水滴107を空気から分離する。このような原理で空気中の塗装ミスト103を捕集する。捕集された塗装ミスト103を含む水滴107は仕切り板110から滴り落ちて水受け槽111に回収される。水受け槽111の中には泥状のスラッジ112が溜まる。これは有機溶剤を含む半液体状の塗装ミスト103が水の中でくっつきあうためである。スラッジは脱水処理され、残ったスラッジ塊は焼却処理される。
【0006】
このような従来の湿式処理装置は塗装ミストの捕集に使う水によって処理空気の湿度が上がってしまう。塗装品質は湿度に大きく影響するため処理した空気は全て外へ排気しなくてはならず、塗装ブースの空調コストが大きく嵩むという課題を有する。
【0007】
この課題を解決するため、湿式処理を別室で行う図9に示すような塗装ミスト処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
以下、その塗装ミスト処理装置について図9を参照しながら説明する。
【0009】
図9に示すように塗装ミスト処理装置113は塗装ブース101と排気ファン105の間に設置され、ベンチュリー部114に樹脂繊維からなる多孔質フィルタ115を設けた構造を有する。
【0010】
塗装ミスト103はベンチュリー部114を通過する際に多孔質フィルタ115によって捕集される。この多孔質フィルタ115は可撓性を有し、スプロケット116によってベルトコンベアのように回転する。そしてセッティング室117に設けられた苛性処理槽118に浸漬され、捕集した塗料が多孔質フィルタ115の表面から浮くように少し剥れる。その後多孔質フィルタ115はスラッジ受け槽119の上で高圧ジェットノズル120から噴き出される高圧洗浄水を当てられ、捕集した塗料が剥がされてスラッジ受け槽119に設けられた濾布121の上に落とされる。濾布121によって洗浄水は塗料分と水に分離される。再生後に多孔質フィルタ115はスプロケット116の回転によって再度ベンチュリー部114に自動的に搬送され、空気中の塗装ミスト103を再度捕集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−236845号公報(第5頁、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1による塗装ミスト処理装置においては回転式ベルトコンベア状にして自動再生できるように多孔質フィルタを柔らかく撓むものにする必要があり、撓ませるためには多孔質フィルタを厚くすることは困難であり、高い塗装ミスト捕集効率を得ることが困難であるという課題があった。また、高圧洗浄水を当てた時に撓んでしまって塗料をしっかり剥がせない、すなわち、洗浄効率が悪いという課題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、高い塗装ミスト捕集効率を得られるとともに、塗装ブースで発生する塗装ミストを多孔質フィルタに捕集させながら洗浄再生をしても所定の洗浄効率を維持することができる塗装ミスト処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、この目的を達成するために、本発明の塗装ミスト処理装置は、金属もしくはセラミックスからなり、板状の多孔質フィルタを通風方向に対して複数枚積層し、塗装ブースで発生する塗装ミストを多孔質フィルタに捕集させながら、多孔質フィルタを1枚ごと横に引き出して通風経路の外に設けた高圧洗浄ノズルから噴き出される高圧洗浄水で洗浄再生する塗装ミスト処理装置であって、複数枚積層した多孔質フィルタは、一枚を横に引き出しても捕集効率が確保できるように、通風方向の風上から風下にかけて厚さ5〜15mmを有する孔径3〜4mmの多孔質フィルタA、厚さ5〜15mmを有する孔径2〜3mmの多孔質フィルタB、厚さ5〜15mmを有する孔径1〜2mmの多孔質フィルタC、厚さ5〜15mmを有する孔径1〜2mmの多孔質フィルタDで構成したことにより初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗装ミスト処理装置は、多孔質フィルタが金属もしくはセラミックスで硬く撓まないため高圧洗浄水を当てることで多孔質フィルタから捕集された塗料を剥がすことができ、洗浄効率を向上することができる。
【0016】
また、板状の多孔質フィルタを任意の枚数分積層することで所定のミスト捕集性能を自由に得ることができる。また、板状の多孔質フィルタを複数枚積層するため、それぞれの多孔質フィルタを任意のタイミングで引き出して洗浄再生することができる。また、多孔質フィルタに捕集した塗装ミストをまとめて高圧洗浄水で剥がすため、必要な水の量を小さくできる。
【0017】
さらに、塗装ミストは多孔質フィルタに捕集された後、洗浄再生するまで処理空気にさらされ続けるため溶剤を含まない乾いた状態になる。洗浄再生後の洗浄水は塗料の固形分が浮くだけでスラッジ化しないため簡単に処理できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1の塗装ミスト処理装置を示す構成図
図2】同通風方向から見た多孔質フィルタの顕微鏡写真
図3】同多孔質フィルタAが引き出されて再生される具体例を示す図
図4】同多孔質フィルタAのみが引き出されて再生される図
図5】同多孔質フィルタBのみが引き出されて再生される図
図6】同多孔質フィルタCのみが引き出されて再生される図
図7】同多孔質フィルタDのみが引き出されて再生される図
図8】従来の湿式処理装置を示す構成図
図9】従来の塗装ミスト処理装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態)
塗装ブースおよび塗装ブースで発生する塗装ミストを処理する塗装ミスト処理装置を図1に、通風方向から見た多孔質フィルタの構成を図2に、多孔質フィルタAが横に引き出されて再生される具体例を図3に、多孔質フィルタを一枚ごと引き出して洗浄再生するにおいて、多孔質フィルタAのみが引き出されて再生される様子を図4に、多孔質フィルタBのみが引き出されて再生される様子を図5に、多孔質フィルタCのみが引き出されて再生される様子を図6に、多孔質フィルタDのみが引き出されて再生される様子を図7に示す。
【0021】
図1に示すとおり塗装ロボット1が塗装作業を行っている塗装ブース2の下には4枚の多孔質フィルタが積層された塗装ミスト処理装置3が設けられており、下流側に循環ファン4が接続されている。また、循環ファン4の吹出し口は塗装ブース2の上部とつながっており、その途中にはバッグフィルタ5、その下流側に空調機6が設けられている。
【0022】
バッグフィルタ5は塗装ブース2内の清浄度を例えばクラス10万(粒子径0.3μmの粉塵個数濃度が10万個/m3以下)にまで上げるために、また、空調機6は塗装ブース2内の温湿度を例えば25±1℃、60%RH以下に保つためにそれぞれ設けられており、このような空気質を作り出すことで塗装ブース2内での塗装品質を確保している。
【0023】
このとき、塗装ブース2で発生した塗装ミスト7を全てバッグフィルタ5に捕集させるとすぐに目詰まりして使えなくなってしまうため、80%以上の塗装ミスト7を捕集する塗装ミスト処理装置3をバッグフィルタ5の上流側に設けることは必須である。
【0024】
空気は循環ファン4によってバッグフィルタ5、空調機6、塗装ブース2、塗装ミスト処理装置3の順で通風方向8で示す矢印方向に循環しながら搬送されている。また、空調機6の内部には熱交換気ユニット9、排気ファン10および給気ファン11で構成される換気装置12が設けられており、これによって一部の室内空気が外気と交換されている。これは塗料に含まれる有機溶剤が揮発した有機ガスの室内濃度を一定値以下にして引火を防ぐためである。
【0025】
塗装ブース2では塗装ロボット1が塗料を対象物13に吹き付けて塗装作業をしており、その際に塗装ミスト7が塗装ブース2内全体に浮遊する。次の塗装作業を行うためには浮遊する塗装ミスト7を塗装ブース2内から速やかになくす必要があり、そのために塗装ブース2の下に設けられた塗装ミスト処理装置3に塗装ブース2内の空気を移動させ、塗装ミスト処理装置3内に設けられた各多孔質フィルタに塗装ミスト7を捕集させる。
【0026】
図2に示すように多孔質フィルタは無数の孔を有する、例えばスポンジ状の通気性物体であり、材質は金属やセラミックスである。これらは金属のものであればスポンジ状の発泡樹脂にニッケルやクロムをめっきした後に焼結することで得られ、また、セラミックスのものであれば酸化アルミニウムや酸化ケイ素、酸化チタンの単独もしくは混合スラリー液に発泡樹脂を浸漬乾燥した後に焼結して得ることができる。このような構成により、硬く撓まない多孔質フィルタを得ることができる。
【0027】
また、内部を含む多孔質フィルタの表面全体に剥離性膜を設けると、後述する洗浄再生の際に高圧洗浄水によって塗装ミストを容易に剥がすことができる。剥離性膜は例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂からなる表面エネルギーの低い膜などがある。フッ素樹脂膜を多孔質フィルタに設ける方法はおおよそ以下のとおりである。
【0028】
最初に多孔質フィルタを空焼きして脱脂した後にプライマー塗料に浸漬し、エアーで塗料の余剰を吹き飛ばした後に150℃、20分の条件で乾燥してプライマー層を設ける。プライマー塗料はフッ素樹脂、ポリイミドやポリアミドイミドからなるバインダー樹脂および溶媒として有機溶剤を含んでいる。
【0029】
その後フッ素樹脂、充填剤、有機溶剤からなるトップコート塗料にプライマー塗料と同様に浸漬後余剰液を吹き飛ばし、150℃、20分の条件で乾燥してトップコート層を設ける。その後350〜400℃、10分の条件で焼成を行う。焼成によってプライマー層のバインダー樹脂と多孔質フィルタとが強固に密着し、プライマー層中のフッ素樹脂はトップコート層との界面へと浮き上がってトップコート層中のフッ素樹脂と溶融結合する。
【0030】
このような工程で多孔質フィルタの表面全体に密着強度の高いフッ素樹脂膜が設けられる。フッ素樹脂は炭素原子とフッ素原子からなる樹脂で、炭素原子とのみ強く結合したフッ素原子が表面に現れることによって剥離性、撥水性、撥油性を発揮する。したがって塗装ミスト7が剥離性膜の表面に付着しても高圧洗浄水を当てることで容易に剥がすことができる。
【0031】
塗装ミスト処理装置3は図1に示すとおり上流側から順に積層された多孔質フィルタA14、多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17および、通風経路の外に設けられた高圧洗浄水ノズル18、高圧エアーノズル19、塗装ミストを剥がした高圧洗浄水を受ける洗浄水受け槽20で構成されている。
【0032】
そして塗装作業を続けるうちに各多孔質フィルタには捕集された塗装ミスト7が蓄積され、目が詰まる。そうなると空気が多孔質フィルタを通過できなくなり、塗装ブース2内に充満する塗装ミスト7を他に移動させることができなくなる。そうなる前に多孔質フィルタを横に引き出し、通風経路外に移動させながら高圧洗浄水ノズル18から噴き出される高圧洗浄水を当てて捕集した塗装ミスト7を剥がす。これを洗浄再生と呼ぶ。
【0033】
ここで多孔質フィルタA14を洗浄再生する方法の一例を図3に示す。なお、わかりやすくするために図3には通風経路内に残っている多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16および多孔質フィルタD17をあえて記載していない。
【0034】
塗装ミスト7を多く捕集した多孔質フィルタA14は図3のように引き出しガイド21に設けられた電動ローラー22によって横に引き出され、通風経路の中から外に移される。そして横に引き出される際に高圧洗浄水ノズル18から例えば圧力8.5MPa、流量6L/minで噴き出される高圧洗浄水によって、捕集された塗装ミスト7が多孔質フィルタA14から剥がされる。
【0035】
また、塗装ミスト7は捕集される際に、多孔質フィルタを構成する網状繊維体の上流側を向いた部分へとより多く堆積する。そのため多孔質フィルタの、塗装ミストを吸い込む側から高圧洗浄水を当てて洗浄することで塗装ミスト7を短時間でより多く剥がすことができる。
【0036】
その後に高圧エアーノズル19から例えば1MPaの圧力で噴き出される高圧エアーによって多孔質フィルタA14に残った洗浄水が吹き飛ばされる。電動ローラー22による引き出し動作は洗浄再生作業が十分行えるように比較的ゆっくりしたスピードで行われる。
【0037】
その際、高圧洗浄水ノズル18は前後に移動して多孔質フィルタA14全体を洗浄再生する。高圧洗浄水を噴き出すためには高いエネルギーが必要であり、前後に何本も設けると一度に必要な電力が嵩むため、ここでは1本だけ設けて前後に移動するようにしている。
【0038】
多孔質フィルタA14は材質が金属もしくはセラミックスのため硬くて強度が高い。他の多孔質フィルタも同様である。そのため8MPa以上の高い圧力を有する水を当ててもフィルタが撓んだり破れたりせず、多孔質フィルタA14に捕集された塗装ミスト7をしっかり剥がすことができ、洗浄効率を向上することができる。
【0039】
なお、図3に示した洗浄再生に関する構造および洗浄再生方法は多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17に対しても同様に適用される。
【0040】
ここで洗浄再生時も含めて80%以上の塗装ミスト捕集効率を常に得られる多孔質フィルタの構成について説明する。
【0041】
塗装ミスト7は最上流側がもっとも濃度が高く、各多孔質フィルタによって捕集されるに従って濃度が低くなる。そのため最上流側に設けた多孔質フィルタが最も目詰まりしやすい。したがって最上流側には平均孔径3〜4mm、厚さ5〜15mmの多孔質フィルタA14を設ける。多孔質フィルタA14は通過するうちの40%以上の塗装ミスト7を捕集する。多孔質フィルタA14の孔径はこれ以上小さいとすぐに目詰まりを起こし、これ以上大きいとほとんどの塗装ミスト7が捕集されずにすり抜けてしまう。
【0042】
また、多孔質フィルタA14の厚さはこれ以上小さいと塗装ミスト7が捕集されなくなり、これ以上大きいと捕集した塗装ミスト7を高圧洗浄水で剥がしきるのが困難になる。上記の理由から、最上流側に設ける多孔質フィルタA14の平均孔径を3〜4mmに、厚さを5〜15mmにすることで長時間目詰まりせずに40%以上の塗装ミスト7を捕集することができる。
【0043】
そして塗装ミスト7の捕集効率が40%では低いため、その下流側に平均孔径2〜3mm、厚さ5〜15mmの多孔質フィルタB15を、更にその下流側に平均孔径1〜2mm、厚さ5〜15mmの多孔質フィルタC16および多孔質フィルタC16と同じ平均孔径と厚さを有する多孔質フィルタD17を順に設ける。
【0044】
多孔質フィルタB15を通る塗装ミスト7は多孔質フィルタA14によって全体の60%に低減されているため、多孔質フィルタB15は長時間目詰まりを起こさない。そして多孔質フィルタB15は通過するうちの50%以上の塗装ミスト7を捕集する。したがってその下流側に位置する多孔質フィルタC16を通る塗装ミスト7は全体の30%に低減されており、多孔質フィルタC16は目が細かくても長時間目詰まりを起こさない。
【0045】
そして多孔質フィルタC16は通過するうちの60%以上の塗装ミスト7を捕集する。したがってその下流側に位置する多孔質フィルタD17を通る塗装ミスト7は全体の12%に低減されており、多孔質フィルタD17は目が細かくても長時間目詰まりを起こさない。
【0046】
そして多孔質フィルタD17は通過するうちの60%以上の塗装ミスト7を捕集するため、多孔質フィルタD17を通過した後の塗装ミストは全体の5%に低減されている。したがって多孔質フィルタA14、B15、C16、D17の順に空気が通過することによって塗装ミスト7は全体の95%が多孔質フィルタに捕集され、空気中から取り除かれる。
【0047】
ここで高圧洗浄水による洗浄再生を行う際に、多孔質フィルタA14、多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17全てを同時に横に引き出すと、その間は塗装ミスト7を全く捕集できなくなる。また、全てを同時に引き出すと多孔質フィルタの厚さが合計で40〜60mmと大きくなってしまうため、後ろまで高圧洗浄水が届かずに捕集した塗装ミスト7を剥がしきれなくなる。
【0048】
したがって多孔質フィルタA14、多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17は同時ではなく一枚ずつ引き出して高圧洗浄水を当て、洗浄再生を行う。図4、5、6、7を用いてその様子を説明する。
【0049】
多孔質フィルタA14を引き出して洗浄再生するときは図4のように多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17が通風経路内に残り、そのとき塗装ミスト7はあわせて92%が捕集される。多孔質フィルタB15を引き出して洗浄再生するときは図5のように多孔質フィルタA14、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17が通風経路内に残り、そのとき塗装ミスト7はあわせて90%が捕集される。多孔質フィルタC16、もしくは多孔質フィルタD17のどちらかを引き出して洗浄再生するときはそれぞれ図6および図7のように多孔質フィルタA14、多孔質フィルタB15と、多孔質フィルタC16もしくは多孔質フィルタD17のどちらかが通風経路内に残り、そのとき塗装ミスト7はあわせて88%が捕集される。
【0050】
塗装ミストを含む使用済みの高圧洗浄水は洗浄水受け槽に回収される。多孔質フィルタに捕集された塗装ミストは処理空気と接触し続けるうちに乾燥する。したがって使用済みの高圧洗浄水に含まれる塗装ミストは固形化しており使用済みの高圧洗浄水はヘドロ状にならない。そのため塗装ミストは使用済みの高圧洗浄水から容易に分離でき、分離した後に得られた水は高圧洗浄水ノズル18に送って高圧洗浄水として再度使用できる。
【0051】
このように多孔質フィルタA14、多孔質フィルタB15、多孔質フィルタC16、多孔質フィルタD17を上流側から順に積層し、それぞれの多孔質フィルタを一枚ずつ引き出して洗浄再生することで、長時間目詰まりせず、常に80%以上の塗装ミスト7を捕集でき、各多孔質フィルタの厚さが10〜15mmのため高圧洗浄水が内部まで行き届くことから、捕集した塗装ミスト7を高圧洗浄水によってそれぞれの多孔質フィルタから確実に剥がすことができる塗装ミスト処理装置3が得られる。
【0052】
ここで多孔質フィルタA14は高濃度の塗装ミスト7を有する空気と最初に接触するため、塗装ミスト7が多孔質フィルタA14の上流側の面上に膜を形成して目詰まりを起こさせる可能性が高い。そして多孔質フィルタA14が洗浄再生するために横に引き出されたときに塗装ミスト7と最初に接触することになる多孔質フィルタB15も同様に目詰まりを起こす可能性が高い。
【0053】
そのため塗装ミスト7の濃度によるが例えば1時間に1回洗浄再生を行う。それに比べて多孔質フィルタC16およびD17は塗装ミスト7と最初に接触するフィルタに常時ならないため、塗装ミスト7が多孔質フィルタC16もしくは多孔質フィルタD17の上流側の面上に膜を形成して目を詰まらせる可能性が著しく低い。
【0054】
そこで多孔質フィルタC16および多孔質フィルタD17は再生周期を多孔質フィルタA14およびB15の2倍となる2時間に1回とすることが可能である。このように無駄な洗浄再生を省くことによって、高圧洗浄水や高圧エアーを供給するときに必要なコンプレッサーの動作電力など洗浄再生にかかるエネルギーを省くことができる。
【0055】
塗装ミスト処理装置3によって80%以上の塗装ミスト7が捕集された後の空気はバッグフィルタ5によってクラス10万レベルの清浄度を有するまで更に清浄化され、そして空調機6によって一部外気と交換されながら温湿度を25±1℃、60%RH以下に調節される。
【0056】
清浄かつ温湿度を制御された空気はその後再び塗装ブース2へと搬送され、塗装ブース2内は高い塗装品質を維持できる環境に保たれる。本発明の塗装ミスト処理装置3は通風経路外で各多孔質フィルタを洗浄再生するため従来装置のように処理空気の湿度を上げない。すなわち温湿度が調節された空気から塗装ミスト7のみを捕集して清浄にした処理空気を塗装ブース2へ戻すことができる。したがって空調にかかるエネルギーを大幅に削減しながら高い塗装品質を有する塗装ブース内環境を提供することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、多孔質フィルタが4枚の構成を説明したが、捕集効率に応じてその枚数は変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる塗装ミスト処理装置は、高い塗装ミスト捕集効率が得られ、また、捕集した塗装ミストを簡単に剥がすことを可能とするものであるので、自動車や家電製品などの塗装工程で使用される塗装ブース内の塗装品質維持装置および塗装ブース外の環境保全装置等として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 塗装ロボット
2 塗装ブース
3 塗装ミスト処理装置
4 循環ファン
5 バッグフィルタ
6 空調機
7 塗装ミスト
8 通風方向
9 熱交換気ユニット
10 排気ファン
11 給気ファン
12 換気装置
13 対象物
14 多孔質フィルタA
15 多孔質フィルタB
16 多孔質フィルタC
17 多孔質フィルタD
18 高圧洗浄水ノズル
19 高圧エアーノズル
20 洗浄水受け槽
21 引き出しガイド
22 電動ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9