特許第6051508号(P6051508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6051508ディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051508
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 15/04 20060101AFI20161219BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 15/00 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F02D15/04 H
   F02D13/02 H
   F02D19/02 E
   F02D13/02 L
   F02D15/00 B
   F02D45/00 312B
   F02D45/00 301M
   F02D45/00 345A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-237257(P2011-237257)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-96248(P2013-96248A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年9月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】原 崇
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−115866(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030471(WO,A1)
【文献】 特開2002−295347(JP,A)
【文献】 特開昭59−162337(JP,A)
【文献】 特開2004−124791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00−28/00
F02D 43/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの気筒に設置された噴射ノズルから燃焼室内への燃料リークに起因する異常燃焼を防止するディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムであって、
前記燃焼室に配管を通じて連通する貯留容器と、前記配管を開閉する逃がし弁と、前記逃がし弁を操作する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段と、ディーゼルエンジンの吸気管に配置される酸素濃度センサの検出値と排気管に配置される酸素濃度センサの検出値を比較することにより燃料リークを検知する燃料リーク手段とを備え、
前記制御手段は、前記ディーゼルエンジンの始動要求を受けると、前記始動要求から燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知するまで前記開閉手段により前記逃がし弁を閉弁させた状態スタータでクランク軸を回転駆動させるとともに、
前記燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知した場合に、前記気筒が少なくとも圧縮行程にあるときに前記開閉手段により前記逃がし弁を開弁する制御を行い、
前記燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知しない場合に、前記開閉手段により前記逃がし弁を開弁する制御を行うことを特徴とするディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記気筒が前記圧縮行程に続く膨張行程にあるときにも前記開閉手段により前記逃がし弁を開弁し、その後の排気行程にあるときには前記逃がし弁を閉弁する請求項1に記載のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記逃がし弁を前記気筒の2〜3サイクル後に常時閉弁する請求項1又は2に記載のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム。
【請求項4】
前記貯留容器の容積を、前記圧縮行程において前記逃がし弁を開弁した際に、前記気筒内の気体の圧縮比が9以下となる大きさにした請求項1〜のいずれかに記載のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムを搭載したことを特徴とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムに関し、更に詳しくは、液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンにおける燃焼室内への燃料リークによるエンジン始動時の異常燃焼の発生を、低コストで防止することができるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガスによる大気汚染の対策として、従来からの燃料である軽油の代わりに、ジメチルエーテル(DME)などの液化ガスを使用することが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この液化ガスは、燃焼室内に燃料を噴射する噴射ノズルのシート部からガス状となって外部へリークしやすいという性質がある。更に、液化ガスは軽油よりも粘度が低いので、噴射ノズルのシート部が摩耗しやすくなるため、外部へのリークが助長されることになる。
【0004】
特に、エンジン停止時においては、噴射ノズル内に残留した液化ガスが、圧力の低下により気化することで、シート部から燃焼室内へのリークが発生する。このようにエンジン停止時に液化ガスの燃料リークが発生すると、エンジン始動時に初爆で異常燃焼を起こして、最悪の場合にはシリンダライナやピストンリングが破損するおそれがある。このことは、高圧で燃料を噴射するコモンレール式の噴射装置を用いた場合に一層顕著になる。
【0005】
このような問題を解決するためには、エンジン始動時に吸排気バルブを開閉させて燃焼室内に滞留する液化ガスを掃気することが考えられるが、可変動弁機構の追加やそれを制御する制御ロジックが必要となるため、エンジンの構成が複雑となってコストが大幅に増加することになる。
【0006】
そのため、液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンについて、エンジン始動時の異常燃焼の発生を、低コストで防止することができるシステムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−239651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンにおけるエンジン始動時の異常燃焼の発生を、低コストで防止することができるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムは、液化ガスを燃料とするディーゼルエンジンの気筒に設置された噴射ノズルから燃焼室内への燃料リークに起因する異常燃焼を防止するディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムであって、前記燃焼室に配管を通じて連通する貯留容器と、前記配管を開閉する逃がし弁と、前記逃がし弁を操作する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段と、ディーゼルエンジンの吸気管に配置される酸素濃度センサの検出値と排気管に配置される酸素濃度センサの検出値を比較することにより燃料リークを検知する燃料リーク手段とを備え、前記制御手段は、前記ディーセルエンジンの始動要求を受けると、前記始動要求から燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知するまで前記開閉手段により前記逃がし弁を閉弁させた状態スタータでクランク軸を回転駆動させるとともに、前記燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知した場合に、前記気筒が少なくとも圧縮行程にあるときに前記開閉手段により前記逃がし弁を開弁する制御を行い、前記燃料リーク検知手段が前記液化ガスの燃料リークを検知しない場合に、前記開閉手段により前記逃がし弁を開弁する制御を行うことを特徴とするものである。
【0012】
また、制御手段は、逃がし弁を気筒の2〜3サイクル後に常時閉弁することで、燃料リークにより燃焼室内に貯留する液化ガスの予混合気を完全に掃気できるとともに、始動後のディーゼルエンジンの運転に影響を与えないようにすることができる。
【0013】
更に、貯留容器の容積を、圧縮行程において逃がし弁を開弁した際に、気筒内の気体の圧縮比が9以下となる大きさにすることで、確実に異常燃焼の発生を防止することができる。
【0014】
本発明のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムは、液化ガスを燃料とする一般の内燃機関に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムによれば、エンジン始動時において、気筒が少なくとも圧縮行程にあるときに、燃焼室を貯留容器に連通させるようにしたので、シリンダ内の圧縮比が一時的に低下して、燃料リークにより貯留している液化ガスの予混合気の圧縮着火が抑制されるので、異常燃焼の発生を防止することができる。また、異常燃焼防止システムの構成及び機能が簡易であるため、コストの増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態からなるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムの構成図である。
図2図1に示すX部の拡大図である。
図3】第1の実施形態における制御手段の機能を示すフロー図である。
図4】圧縮行程におけるX部の状態を示す拡大図である。
図5】本発明の第2の実施形態からなるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムの構成図である。
図6】第2の実施形態における制御手段の機能を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1、2は、本発明の第1の実施形態からなるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムを示す。
【0019】
このディーゼルエンジンの異常燃焼防止システム(以下、「異常燃焼防止システム」という。)が装備されるディーゼルエンジン1では、ジメチルエーテル(DME)などの液化ガス2が、高圧ポンプ(図示せず)によりコモンレール3内で蓄圧され、ECU(エンジンコントロールユニット)4により制御された噴射ノズル5を通じて気筒6の燃焼室7内の圧縮空気中に噴射されて燃焼・膨張することで、シリンダ8内のピストン9を往復動させるようになっている。燃焼後のガスは、排気弁10の開放時に燃焼室7から排気管11へ送られて大気中へ放出される。その一方で、吸気弁12の開放時に吸気管13から燃焼室7内へ空気が導入されてピストン9により圧縮される。
【0020】
エンジン始動時においては、スタータ14のセルモータ15により回転駆動されたピニオン16が、リングギア17に向けて伸長して嵌合することで、クランク軸18を回転させてクランキングを行うようになっている。
【0021】
異常燃焼防止システムは、シリンダ8のヘッド部に配管19を通じて接続する貯留容器20と、その配管19に取り付けられて開閉手段21により操作される逃がし弁22と、制御手段23とから構成される。
【0022】
逃がし弁22の開閉手段21としては、油圧又は空圧を利用したアクチュエータやモータなどが例示される。
【0023】
制御手段23は、記憶部を備えたCPU(中央演算処理装置)から構成され、開閉手段21、スタータ14、気筒6の行程状態を検知する回転位置センサー24及びECU4のそれぞれに信号線25a〜25dを通じて接続している。なお、図1の構成では、制御手段23とECU4とを別体としているが、ECU4に制御手段23の機能を持たせて一体化するようにしてもよい。
【0024】
このような構成を有する異常燃焼防止システムの機能を、図3に示すフロー図を基に以下に説明する。
【0025】
制御手段23は、停止状態にあるディーゼルエンジン1に対して始動要求が発せられたことをECU4から入力されると(S10)、スタータ14のセルモータ15でピニオン16を回転駆動するとともに、そのピニオン16をリングギア17へ向けて伸長して嵌合させることでクランク軸18を回転させる(S20)。なお、このとき逃がし弁22は閉弁している。
【0026】
そして、各気筒6の行程を回転位置センサー24から検知し(S30)、気筒6が圧縮行程にあるときに、図4に示すように、開閉手段21により逃がし弁22を開弁する(S40)。これにより、エンジン停止時に噴射ノズル5から燃焼室7内に液化ガス2の燃料リークがあった場合には、燃焼室7内に滞留する液化ガス2の予混合気の少なくとも一部が、一時的に貯留容器20内に待避される。最後に、所定の期間後に逃がし弁22を常時閉弁した状態にする(S50)。
【0027】
このように、エンジン始動時の少なくとも圧縮行程において逃がし弁22を開弁して貯留容器20を燃焼室7に連通させるようにしたので、シリンダ8内の圧縮比が一時的に低下して、燃料リークにより貯留している液化ガス2の予混合気の圧縮着火が抑制されるので、異常燃焼の発生を防止することができる。また、異常燃焼防止システムの構成及び機能が簡易であるため、コストの増加を抑えることができる。
【0028】
特に、エンジン始動時の全ての行程において逃がし弁22を開弁する場合には、開閉手段21の制御を簡単な機構で容易に行うことが可能になる。
【0029】
なお、貯留容器20内に一時的に待避された液化ガス2の予混合気は、上記ステップS40〜S50の間に、逃がし弁22を圧縮行程以外の行程においても適宜開閉弁することで処理される。例えば、圧縮行程に続く膨張行程でも逃がし弁22を開弁し、その後の排気行程では閉弁する。それにより、液化ガス2の予混合気が、貯留容器20から燃焼室7及び排気管11を通じてシリンダ9外へ排出されるので、貯留容器20内に待避された液化ガス2の予混合気を効率的に処理して、次回のエンジン始動時における異常燃焼防止システムの機能を妨げないようにすることができる。
【0030】
逃がし弁22を常時閉弁するまでの所定の期間は、エンジン始動開始から気筒6の2〜3サイクルとすることが望ましい。そのようにすることで、燃料リークにより燃焼室7内に貯留する液化ガス2の予混合気を完全に掃気できるとともに、ディーゼルエンジン1の運転に影響を与えないようにすることができる。
【0031】
また、確実に異常燃焼の発生を防止するためには、貯留容器20の容積は、圧縮行程において逃がし弁22が開弁した際に、燃料リークにより貯留している液化ガス2の予混合気の温度が、圧縮着火を引き起こす温度よりも低い温度となるような大きさにする必要がある。具体的には、圧縮行程において逃がし弁22が開弁した際の圧縮比が9以下、好ましくは5以下となるような大きさにするのがよい。
【0032】
図5は、本発明の第2の実施形態からなるディーゼルエンジンの異常燃焼防止システムを示す。
【0033】
この異常燃焼防止システムは、図1に示す実施形態について、各気筒6に連通する吸気管13及び排気管11のそれぞれに燃料リーク検知手段である酸素センサー26を取り付けて、制御手段23と信号線25eで接続したものである。
【0034】
このような構成を有する異常燃焼防止システムの機能を、図6に示すフロー図を基に以下に説明する。
【0035】
制御手段23は、停止状態にあるディーゼルエンジンに対して始動要求が発せられたことをECU4から入力されると(S10)、スタータ14のセルモータ15でピニオン16を回転駆動するとともに、リングギア17へ向けてピニオン16を伸長して嵌合させることでクランク軸18を回転させる(S20)。なお、このとき逃がし弁22は閉弁している。
【0036】
そして、吸気管13及び排気管11に取り付けられた酸素センサー26の測定値を比較し(S22)、その差が所定の値以上である場合には(S24)、エンジン停止中に燃焼室7内への液化ガス2の燃料リークがあったものと判断し、気筒6が圧縮行程にあるときに逃がし弁22を開弁する(S30〜S40)。一方、その差が所定の値未満である場合には(S24)、燃料リークがなかったものと判断し、逃がし弁22を常時閉弁したままにする(S50)。
【0037】
このようにすることで、噴射ノズル5からの液化ガス2の燃料リークがなかった場合には、エンジン始動時の初爆が通常の圧縮比で正常に行われるため、ディーゼルエンジン1の始動が遅れる(もたつく)のを防ぐことができる。
【0038】
酸素センサー26の吸気管13及び排気管11における取付位置は特に限定するものではなく、例えば、各気筒6から延びる吸気管13及び排気管11がそれぞれ1本に収束する太径部であってもよい。
【0039】
本発明の異常燃焼防止システムの用途は、上述したような自動車用のディーゼルエンジン1に限るものではなく、液化ガス2を燃料とするその他の内燃機関にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ディーゼルエンジン
2 液化ガス
3 コモンレール
4 ECU
5 噴射ノズル
6 気筒
7 燃焼室
8 シリンダ
9 ピストン
10 排気弁
11 排気管
12 吸気弁
13 吸気管
14 スタータ
15 セルモータ
16 ピニオン
17 リングギア
18 クランク軸
19 配管
20 貯留容器
21 開閉手段
22 逃がし弁
23 制御手段
24 回転位置センサー
25a〜25e 信号線
26 酸素センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6