【文献】
A.R. Bushroa,Lateral epitaxial overgrowth and reduction in defect density of 3C-SiC on patterned Si substrates,Journal of Crystal Growth,米国,2004年10月15日,Volume 271, Issues 1-2,第200頁−第206頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の工程において、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記応力緩和膜を形成することを特徴とする請求項4に記載の半導体基板の製造方法。
前記応力緩和膜の形成材料は、酸化珪素、窒化珪素、ポリシリコン、アモルファスシリコンのうちいずれかを含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単結晶炭化シリコン膜が厚膜化されて、単結晶炭化シリコン膜が基板の全面に形成された場合、格子定数及び熱膨張係数の差に起因する基板の応力は顕著なものとなり、ウエハの反りが生じてしまう。
【0007】
本発明の一態様は、結晶欠陥の少ない高品質な単結晶炭化シリコン膜を形成するとともにウエハの反りを抑制することが可能な半導体基板及び半導体基板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるひとつの半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜と、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に形成された、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜と、を含み、前記単結晶炭化シリコン膜の前記シリコン基板の側の部分には、前記単結晶炭化シリコン膜と前記シリコン基板との間の界面に沿って複数の空隙が存在し、前記空隙の幅が、前記空隙の上部の前記単結晶炭化シリコン膜の高さの2倍以下であり、前記応力緩和膜は、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜との積層構造となっており、前記第2の応力緩和膜の熱膨張係数は、前記シリコン基板の熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるひとつの半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜と、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に形成された、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜と、を含み、前記単結晶炭化シリコン膜の前記シリコン基板の側の部分には、前記単結晶炭化シリコン膜と前記シリコン基板との間の界面に沿って複数の空隙が存在し、前記空隙の幅が、前記空隙の上部の前記単結晶炭化シリコン膜の高さの2倍以下であり、前記応力緩和膜は、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜との積層構造となっていることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるひとつの半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜と、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に形成された、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜と、を含み、前記単結晶炭化シリコン膜の前記シリコン基板の側の部分には、前記単結晶炭化シリコン膜と前記シリコン基板との間の界面に沿って複数の空隙が存在し、前記空隙の幅が、前記空隙の上部の前記単結晶炭化シリコン膜の高さの2倍以下であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるひとつの半導体基板の製造方法は、シリコン基板の表面にマスク材を形成する第1の工程と、前記マスク材に複数の開口部を形成し、前記シリコン基板の一部を露出させる第2の工程と、露出した前記シリコン基板の表面を基点として単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させ、前記単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を前記マスク材の表面が一部露出した状態で止める第3の工程と、前記マスク材の少なくとも一部を除去する第4の工程と、前記第4の工程の後に前記単結晶炭化シリコンの前記エピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜を形成する第5の工程と、前記第5の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜を形成する第6の工程と、を含み、前記第6の工程は、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に第1の応力緩和膜を形成する工程と、前記第1の応力緩和膜の表面に第2の応力緩和膜を形成する工程と、を含み、前記第3の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記第1の応力緩和膜を形成し、前記第3の工程と前記第5の工程との間に、前記第1の応力緩和膜の表面に前記第2の応力緩和膜を形成することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるひとつの半導体基板の製造方法は、シリコン基板の表面にマスク材を形成する第1の工程と、前記マスク材に複数の開口部を形成し、前記シリコン基板の一部を露出させる第2の工程と、露出した前記シリコン基板の表面を基点として単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させ、前記単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を前記マスク材の表面が一部露出した状態で止める第3の工程と、前記マスク材の少なくとも一部を除去する第4の工程と、前記第4の工程の後に前記単結晶炭化シリコンの前記エピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜を形成する第5の工程と、前記第5の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜を形成する第6の工程と、を含み、前記第3の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記応力緩和膜を形成し、前記第3の工程と前記第5の工程との間に、前記応力緩和膜の膜厚を調整することを特徴とする。
上記の課題を解決するため、本発明の半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜と、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に形成された、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜と、を含み、前記単結晶炭化シリコン膜の前記シリコン基板の側の部分には、前記単結晶炭化シリコン膜と前記シリコン基板との間の界面に沿って複数の空隙が存在していることを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体基板によれば、複数の空隙により、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜の応力を吸収することができる。また、当該シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力も複数の空隙で吸収することができる。さらに、応力緩和膜により、複数の空隙で吸収しきれずに残留したシリコン基板の応力を緩和することができる。具体的には、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることによってシリコン基板の単結晶炭化シリコン膜が形成された面に圧縮応力が作用しても、当該面とは反対側の面(シリコン基板の応力緩和膜が形成された面)に圧縮応力が加わるので、シリコン基板に作用する圧縮応力を相殺することができる。よって、結晶欠陥の少ない高品質な単結晶炭化シリコン膜を形成するとともにウエハの反りを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の半導体基板において、前記応力緩和膜は、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜との積層構造となっていてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜とで互いに異なる種類の膜を構成することができる。例えば、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜とで、それぞれの膜厚、形成材料の種類などの形成条件を適宜変更することができる。これにより、複数の空隙で吸収しきれずに残留したシリコン基板の応力を緩和する度合いを調整することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0012】
また、本発明の半導体基板において、前記応力緩和膜の形成材料は、酸化珪素、窒化珪素、ポリシリコン、アモルファスシリコンのうちいずれかを含んでいてもよい。
【0013】
この構成によれば、シリコン基板の単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えることが可能な応力緩和膜を実現することができる。
【0014】
本発明の半導体基板の製造方法は、シリコン基板の表面にマスク材を形成する第1の工程と、前記マスク材に複数の開口部を形成し、前記シリコン基板の一部を露出させる第2の工程と、露出した前記シリコン基板の表面を基点として単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させ、前記単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を前記マスク材の表面が一部露出した状態で止める第3の工程と、前記マスク材の少なくとも一部を除去する第4の工程と、前記第4の工程の後に前記単結晶炭化シリコンの前記エピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜を形成する第5の工程と、前記第5の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に、前記面に圧縮応力を加えて前記シリコン基板の応力を緩和する応力緩和膜を形成する第6の工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体基板の製造方法によれば、単結晶シリコンと単結晶炭化シリコン膜との界面で発生した面欠陥が、単結晶炭化シリコンの成長に伴って上層に伝播し、マスク材の開口部の側壁に到達して消滅する。また、複数の空隙により、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜の応力を吸収することができる。また、当該シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力も複数の空隙で吸収することができる。さらに、応力緩和膜により、複数の空隙で吸収しきれずに残留したシリコン基板の応力を緩和することができる。具体的には、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることによってシリコン基板の単結晶炭化シリコン膜が形成された面に圧縮応力が作用しても、当該面とは反対側の面(シリコン基板の応力緩和膜が形成された面)に圧縮応力が加わるので、シリコン基板に作用する圧縮応力を相殺することができる。よって、結晶欠陥の少ない高品質な単結晶炭化シリコン膜を形成するとともにウエハの反りを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の半導体基板の製造方法において、前記第6の工程は、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に第1の応力緩和膜を形成する工程と、前記第1の応力緩和膜の表面に第2の応力緩和膜を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0017】
この方法によれば、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜とで互いに異なる種類の応力緩和膜を構成することができる。例えば、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜とで、それぞれの膜厚、形成材料の種類などの形成条件を適宜変更することができる。これにより、複数の空隙で吸収しきれずに残留したシリコン基板の応力を緩和する度合いを調整することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0018】
また、本発明の半導体基板の製造方法において、前記第3の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記第1の応力緩和膜を形成し、前記第3の工程と前記第5の工程との間に、前記第1の応力緩和膜の表面に前記第2の応力緩和膜を形成してもよい。
【0019】
この方法によれば、単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長をマスク材の表面が一部露出した状態で止める過程において、単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させる初期段階で、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力を、第1の応力緩和膜で吸収することができる。また、マスク材の少なくとも一部を除去した後に単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜を形成する過程において、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力を、第1の応力緩和膜と第2の応力緩和膜とで吸収することができる。すなわち、異なるタイミングでシリコン基板に発生する応力を、互いに異なる種類の応力緩和膜で吸収することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0020】
また、本発明の半導体基板の製造方法において、前記第3の工程の前に、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記応力緩和膜を形成し、前記第3の工程と前記第5の工程との間に、前記応力緩和膜の膜厚を調整してもよい。
【0021】
この方法によれば、単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長をマスク材の表面が一部露出した状態で止める過程において、単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させる初期段階で、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力を、応力緩和膜で吸収することができる。また、マスク材の少なくとも一部を除去した後に単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜を形成する過程において、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板の応力を、膜厚が調整された応力緩和膜で吸収することができる。すなわち、異なるタイミングでシリコン基板に発生する応力を、膜厚を異ならせた応力緩和膜で吸収することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0022】
また、本発明の半導体基板の製造方法は、前記第1の工程において、前記シリコン基板の前記単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に前記応力緩和膜を形成してもよい。
【0023】
この方法によれば、応力緩和膜をマスク材の形成工程と同じ工程で形成することができる。よって、応力緩和膜をマスク材の形成工程と異なる工程で形成する場合に比べて、製造工程を簡素化することができる。
【0024】
また、本発明の半導体基板の製造方法において、前記マスク材の形成材料は、酸化珪素、窒化珪素のいずれかを含んでいてもよい。
【0025】
この方法によれば、シリコン基板の表面にマスク材を形成することを簡素な方法で実現することができる。
【0026】
また、本発明の半導体基板の製造方法において、前記応力緩和膜の形成材料は、酸化珪素、窒化珪素、ポリシリコン、アモルファスシリコンのうちいずれかを含んでいてもよい。
【0027】
この方法によれば、シリコン基板の単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えることが可能な応力緩和膜を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体基板1の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、半導体基板1は、シリコン基板11と、シリコン基板11の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜13と、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面(シリコン基板11の裏面)に形成された応力緩和膜15と、を備えている。
【0031】
シリコン基板11は、例えば、CZ法(チョクラルスキー法)により引上げられたシリコン単結晶インゴットをスライス、研磨して形成されている。このシリコン基板11の表面はミラー指数(100)で表される結晶面を成している。また、結晶面の結晶軸が数度傾いたオフセット基板を用いてもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、シリコン基板11としてシリコン単結晶基板を用いるがこれに限らない。例えば、石英、サファイア、ステンレスからなる基板上に単結晶シリコン膜を形成したものでもよい。本願明細書において、シリコン単結晶基板、また例えば、石英、サファイア、ステンレスからなる基板上に単結晶シリコン膜を形成したものをシリコン基板という。
【0033】
また、シリコン基板11の表面はミラー指数(100)で表される結晶面をなすものとされるが、(100)面以外にも、(100)面に対して54.73度傾斜した(111)面であってもよい。このようなシリコン基板11の格子定数は0.543nmである。
【0034】
単結晶炭化シリコン膜13は、シリコン基板11の表面に形成されている。単結晶炭化シリコン膜13は、立方晶炭化珪素(3C‐SiC)がエピタキシャル成長して形成された半導体膜である。3C‐SiCは、バンドギャップ値が2.2eV以上と広く、熱伝導率や絶縁破壊電界が高いため、パワーデバイス用のワイドバンドギャップ半導体として好適である。このような3C−SiCからなる単結晶炭化シリコン膜13の格子定数は0.436nmである。単結晶炭化シリコン膜13のシリコン基板11の側の部分には、当該単結晶炭化シリコン膜13とシリコン基板11との間の界面に沿って複数の空隙14が存在している。
【0035】
図1において、符号t1は空隙14の高さ、符号t2は空隙14の上端から単結晶炭化シリコン膜13の表面までの高さ、符号w1は空隙14の幅、符号w2は単結晶炭化シリコン膜13がシリコン基板11と接している部分の幅(隣り合う2つの空隙14の間の単結晶炭化シリコン膜13の幅)、である。
【0036】
空隙14の高さt1は、単結晶炭化シリコン膜13がシリコン基板11と接している部分の幅w1の√2倍よりも高く(t1>√2×w1)、500nm以上1000nm以下の範囲内の高さであることが望ましい。例えば、空隙14の高さt1が500nmのとき、単結晶炭化シリコン膜13がシリコン基板11と接している部分の幅w1は350nm程度となる。
【0037】
空隙14の幅w1は、単結晶炭化シリコン膜の膜厚により規定される。空隙14の幅w1と当該空隙14の上端から単結晶炭化シリコン膜13の表面までの高さt2との関係は、w1<2×t2となる。
【0038】
応力緩和膜15は、シリコン基板11の裏面に形成されている。応力緩和膜15の形成材料は、例えば、酸化珪素、窒化珪素、ポリシリコン、アモルファスシリコンのうちいずれかを含む。本実施形態では、応力緩和膜15の形成材料としてアモルファスシリコンを用いる。応力緩和膜15は、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜13が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えてシリコン基板11の応力を緩和する。
【0039】
(半導体基板の製造方法)
図2及び
図3は、本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す過程図である。
【0040】
先ず、シリコン基板11を用意し、単結晶シリコンを真空チャンバーに収容し、真空雰囲気下、シリコン基板11の表面を熱処理する(
図2(a)参照)。この熱処理により、シリコン基板11表面は清浄化され、シリコン基板11表面に付着した不純物は除去される。なお、以下の説明においては、シリコン基板の温度を単に「基板温度」いう場合がある。
【0041】
次に、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成する(
図2(b)参照、第1の工程)。マスク材の形成材料としては、例えば、酸化珪素、窒化珪素のいずれかを用いる。ここでは、熱酸化法を用いてシリコン基板11の表面を熱酸化処理することにより、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成する。また、マスク材12の膜厚は、例えば500nm以上1000nm以下の範囲に設定する。
【0042】
次に、マスク材12をパターニングして開口部12hを形成し、シリコン基板11の表面の一部を露出させる(
図2(c)参照、第2の工程)。例えば、マスク材12の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法によりレジストを所望のパターン、例えばラインアンドスペースにパターニングする。このようにパターニングされたレジストをマスクとして、マスク材12にエッチングを施す。これにより、マスク材12は所望のパターン形状にパターンニングされることとなり、このマスク材12の開口部12hではシリコン基板11の表面の一部が露出することとなる。
【0043】
例えば、パターニングされたマスク材12の高さを500nm程度、当該マスク材12の幅を500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅を500nm程度とする。
【0044】
ここで、マスク材12の開口部12hの幅は、350nm以上1000nm以下とする。開口部12hの幅が350nmよりも小さいと、フォトパターニングをする際にi線ステッパーよりも高い精度が必要となり製造コストの増大につながる。また、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜13の応力を空隙14で十分に吸収することができなくなる惧れがある。一方、開口部12hの幅が1000nmよりも大きいと、マスク材12に生じる応力が大きくなり、単結晶炭化シリコン膜13の結晶性に影響をおよぼす惧れがある。
【0045】
なお、マスク材12のエッチングは、開口部12hの側壁の垂直性が必要となるため、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching,RIE)などドライエッチングによる異方性エッチングにより行う。
【0046】
次に、単結晶炭化シリコン膜13の原料ガスをチャンバー内に導入し、基板温度を1000℃程度に設定する。ここで、基板温度が1000℃を超えると、シリコン基板11の表面近傍に導入された炭素原料ガスが熱分解等し易くなり、安定した炭素原料ガスの雰囲気を形成することが困難となるため好ましくない。
【0047】
原料ガスとしては、例えば、エチレン(C
2H
4)ガス及びジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスを用いる。原料ガスの流量としては、例えばエチレン(C
2H
4)ガスの流量を2.5sccm程度、ジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスの流量を10sccm程度とする。
【0048】
これにより、シリコン基板11の開口部12hから露出した部分を基点として、単結晶炭化シリコン13Aをエピタキシャル成長させ、当該単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長をマスク材12の表面が一部露出した状態で止める(
図2(d)参照、第3の工程)。
【0049】
例えば、パターニングされたマスク材12の高さが500nm程度、当該マスク材12の幅が500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅が500nm程度の場合、単結晶炭化シリコンの高さを700nm程度まで形成することで、マスク材12の表面が当該マスク材12の幅方向において100nm程度開いた状態で単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を止めることができる。本実施形態においては、前記条件にて、単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を2時間行うことで、高さが700nm程度の単結晶炭化シリコンを形成する。
【0050】
次に、選択成長された単結晶炭化シリコン13Aの隙間から、マスク材12をエッチングにより除去する(
図3(a)参照、第4の工程)。マスク材12のエッチングは、例えば、希釈HF溶液(DHF溶液)によるウエットエッチングにより行う。DHFによる等方性エッチングにより、マスク材12のみを選択的に除去することができる。
【0051】
次に、シリコン基板11の裏面に、応力緩和膜15を形成する(
図3(b)参照、第6の工程)。応力緩和膜15の形成材料としては、例えば、アモルファスシリコンを用いる。なお、応力緩和膜15の形成材料としては、熱膨張係数がシリコン基板11の熱膨張係数よりも大きい材料を用いることが好ましい。これにより、シリコン基板11の裏面(シリコン基板11の応力緩和膜15が形成された面)に圧縮応力を作用させることができる。
【0052】
応力緩和膜15の形成方法としては、例えば、プラズマCVD法やスパッタ法を用いることができる。この方法を用いる場合は、シリコン基板11を反転し、シリコン基板11の裏面を上面として配置することが好ましい。
【0053】
なお、応力緩和膜15の形成方法としては、熱CVD法を用いることもできる。この方法を用いる場合は、マスク材12を除去する前に、応力緩和膜をシリコン基板11の両面に同時に形成し、その後、シリコン基板11の表面側の応力緩和膜のみを除去し、続けてマスク材12を除去する。これにより、応力緩和膜15をシリコン基板11の裏面のみに形成することができる。シリコン基板11の表面側の応力緩和膜(形成材料としてアモルファスシリコンを用いた応力緩和膜)の除去は、DHF及びオゾン水の混合液によりウエットエッチングが可能である。当該エッチングの後に、DHFによりマスク材12をエッチングする。
【0054】
次いで、エピタキシャル成長が止められた単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させ、空隙14を覆う単結晶炭化シリコン膜13を形成する(
図3(c)参照、第5の工程)。単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させる条件は、前記選択成長(第3の工程)と同じ条件にて行う。空隙14は、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン膜13との間に残存した状態で封止される。複数の空隙14により、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜13の応力が吸収される。
【0055】
なお、単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させる際に、単結晶炭化シリコンの高さを750nm程度まで形成することで、空隙14を埋めることもできる。さらに、単結晶炭化シリコンの高さを750以上の高さに形成することで、単結晶炭化シリコン膜13の表面を平坦化させることもできる。
【0056】
以上の工程により、本実施形態の半導体基板1を製造することができる。
【0057】
図4は、本実施形態に係る半導体基板の製造過程においてウエハの反りが抑制される様子を示す図である。なお、ここでいう「ウエハ」は、シリコン基板、半導体基板、シリコン基板から半導体基板を製造する過程において各種膜が形成されたシリコン基板全体を含むこととする。
【0058】
シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因してシリコン基板11には応力が発生することにより、ウエハに反りが生じる。
【0059】
図4(a)は、シリコン基板の表面に単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させた場合(基板温度をエピタキシャル成長温度まで上昇させた場合)のウエハの反りのようすを示す図である。
シリコン基板の格子定数は0.543nm、単結晶炭化シリコンの格子定数は0.436nmであり約20%の差がある。この格子定数の差に起因して、シリコン基板の表面に圧縮応力が作用し、ウエハは上反りとなる。
【0060】
図4(b)は、シリコン基板の表面に単結晶炭化シリコンをエピタキシャル成長させた後(基板温度が室温の場合)のウエハの反りのようすを示す図である。
この場合も、格子定数の差に起因した内部応力が残存し、シリコン基板の表面に圧縮応力が作用し、ウエハは上反りとなる。しかしながら、シリコン基板の熱膨張係数は2.55×10
−6K
−1、単結晶炭化シリコンの熱膨張係数2.77×10
−6K
−1であり約8%の差がある。シリコン基板の熱膨張係数よりも単結晶炭化シリコンの熱膨張係数のほうが大きいことから、エピタキシャル成長温度から室温へ基板温度を下げると、熱膨張係数の差により、ウエハの反りの度合いは
図4(a)に示すウエハの反りの度合いよりも大きい。
【0061】
図4(c)は、シリコン基板の表面に単結晶炭化シリコンを選択的にエピタキシャル成長させた後(第3の工程の後)のウエハの反りのようすを示す図である。
本実施形態においては、複数の空隙により、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜の応力、シリコン基板の応力が吸収される。よって、ウエハの反りの度合いは
図4(b)に示すウエハの反りの度合いよりも小さくなる。
【0062】
図4(d)は、単結晶炭化シリコンのエピタキシャル成長を再開させて単結晶炭化シリコン膜を形成した後、室温に維持されたとき(最終製品)のウエハの反りのようすを示す図である。
本実施形態においては、応力緩和膜により、複数の空隙で吸収しきれずに残留したシリコン基板の応力が緩和される。具体的には、シリコン基板と単結晶炭化シリコンとで格子定数及び熱膨張係数が異なることによってシリコン基板の表面に圧縮応力が作用しても、当該面とは反対側の面(シリコン基板の裏面)に圧縮応力が加わるので、シリコン基板に作用する圧縮応力が相殺される。よって、ウエハの反りは抑制される。
【0063】
本実施形態の半導体基板1、半導体基板の製造方法によれば、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン膜13との界面で発生した面欠陥が、単結晶炭化シリコン13Aの成長に伴って上層に伝播し、マスク材12の開口部12hの側壁に到達して消滅する。また、複数の空隙14により、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜13の応力を吸収することができる。また、当該シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板11の応力も複数の空隙14で吸収することができる。さらに、応力緩和膜15により、複数の空隙14で吸収しきれずに残留したシリコン基板11の応力を緩和することができる。具体的には、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることによってシリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜13が形成された面に圧縮応力が作用しても、当該面とは反対側の面(シリコン基板11の応力緩和膜15が形成された面)に圧縮応力が加わるので、シリコン基板11に作用する圧縮応力を相殺することができる。よって、結晶欠陥の少ない高品質な単結晶炭化シリコン膜13を形成するとともにウエハの反りを抑制することができる。
【0064】
また、応力緩和膜15の形成材料がアモルファスシリコンを含んでいるので、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜13が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えることが可能な応力緩和膜15を実現することができる。
【0065】
また、マスク材12の形成材料が酸化珪素を含んでいるので、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成することを簡素な方法で実現することができる。
【0066】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体基板2の概略構成を示す模式図である。
図5に示すように、本実施形態に係る半導体基板2は、応力緩和膜が第1の応力緩和膜21と第2の応力緩和膜22との積層構造となっている点が第1実施形態に係る半導体基板1と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様の構成であるため、同じ符号を付し、その照射な説明は省略する。
【0067】
図5に示すように、半導体基板2は、シリコン基板11と、シリコン基板11の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜13と、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面(シリコン基板11の裏面)に形成された第1の応力緩和膜21と、第1の応力緩和膜21の表面(第1の応力緩和膜21のシリコン基板11とは反対側の面)に形成された第2の応力緩和膜22と、を備えている。
【0068】
本実施形態では、第1の応力緩和膜21の形成材料としては、酸化珪素を用いる。第2の応力緩和膜22の形成材料としては、アモルファスシリコンを用いる。第1の応力緩和膜21及び第2の応力緩和膜22は、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜13が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えてシリコン基板11の応力を緩和する。
【0069】
(半導体基板の製造方法)
図6は、本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す過程図である。なお、本実施形態に係る半導体基板の製造方法においてシリコン基板11表面を清浄化するための熱処理工程は、上述した第1実施形態に係る半導体基板の製造方法の熱処理工程(
図2(a))と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0070】
本実施形態においては、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成するとともにシリコン基板11の裏面に第1の応力緩和膜21を形成する(
図6(a)参照、第1の工程)。ここでは、熱酸化法を用いてシリコン基板11の表面及び裏面を熱酸化処理することにより、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成するとともにシリコン基板11の裏面に第1の応力緩和膜21を形成する。また、マスク材12の膜厚及び第1の応力緩和膜21の膜厚は、例えば500nmに設定する。
【0071】
なお、シリコン基板11の裏面に対して適切な圧縮応力を加えるために、第1の応力緩和膜21の膜厚を調整することもできる。エッチャントとしては、例えば、HFにNH
4Fを混ぜたBHF溶液を用いることができる。このとき、シリコン基板11の表面のマスク材12がエッチングされないように、シリコン基板11の表面をレジスト膜により保護する。レジスト膜は、シリコン基板11の裏面の第1の応力緩和膜21のエッチングが終了した後、除去する。
【0072】
次に、マスク材12をパターニングして開口部12hを形成し、シリコン基板11の表面の一部を露出させる(第2の工程)。例えば、パターニングされたマスク材12の高さを500nm程度、当該マスク材12の幅を500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅を500nm程度とする。
【0073】
なお、マスク材12のエッチングは、開口部12hの側壁の垂直性が必要となるため、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching,RIE)などドライエッチングによる異方性エッチングにより行う。
【0074】
次に、単結晶炭化シリコン膜13の原料ガスをチャンバー内に導入し、基板温度を1000℃程度に設定する。原料ガスとしては、例えば、エチレン(C
2H
4)ガス及びジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスを用いる。原料ガスの流量としては、例えばエチレン(C
2H
4)ガスの流量を2.5sccm程度、ジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスの流量を10sccm程度とする。
【0075】
これにより、シリコン基板11の開口部12hから露出した部分を基点として、単結晶炭化シリコン13Aをエピタキシャル成長させ、当該単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長をマスク材12の表面が一部露出した状態で止める(
図6(b)参照、第3の工程)。
【0076】
例えば、パターニングされたマスク材12の高さが500nm程度、当該マスク材12の幅が500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅が500nm程度の場合、単結晶炭化シリコンの高さを700nm程度まで形成することで、マスク材12の表面が当該マスク材12の幅方向において100nm程度開いた状態で単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を止めることができる。本実施形態においては、前記条件にて、単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を2時間行うことで、高さが700nm程度の単結晶炭化シリコンを形成する。
【0077】
次に、選択成長された単結晶炭化シリコン13Aの隙間から、マスク材12をエッチングにより除去する(
図6(c)参照、第4の工程)。このとき、シリコン基板11の裏面の第1の応力緩和膜21をレジスト膜により保護し、エッチングされないようにする。マスク材12のエッチングは、例えば、HFにNH
4Fを混ぜたBHF溶液によるウエットエッチングにより行う。BHFによる等方性エッチングにより、マスク材12のみを選択的に除去することができる。第1の応力緩和膜21を保護するレジスト膜は、マスク材12のエッチングが終了した後、除去する。
【0078】
次に、第1の応力緩和膜21の表面に、第2の応力緩和膜22を形成する(
図6(d)参照、第6の工程)。第2の応力緩和膜22の形成材料としては、例えば、アモルファスシリコンを用いる。なお、第2の応力緩和膜22の形成材料としては、熱膨張係数がシリコン基板11の熱膨張係数よりも大きい材料を用いることが好ましい。これにより、シリコン基板11の裏面(シリコン基板11の第1の応力緩和膜21が形成された面)に圧縮応力を作用させることができる。
【0079】
第2の応力緩和膜22の形成方法としては、例えば、プラズマCVD法やスパッタ法を用いることができる。この方法を用いる場合は、シリコン基板11を反転し、シリコン基板11の裏面を上面として配置することが好ましい。
【0080】
なお、第2の応力緩和膜22の形成方法としては、熱CVD法を用いることもできる。この方法を用いる場合は、マスク材12を除去する前に、応力緩和膜をシリコン基板11の両面に同時に形成し、その後、シリコン基板11の表面側の応力緩和膜のみを除去し、続けてマスク材12を除去する。これにより、第2の応力緩和膜22をシリコン基板11の裏面のみに形成することができる。シリコン基板11の表面側の応力緩和膜(形成材料としてアモルファスシリコンを用いた応力緩和膜)の除去は、DHF及びオゾン水の混合液によりウエットエッチングが可能である。当該エッチングの後に、DHFによりマスク材12をエッチングする。
【0081】
次いで、エピタキシャル成長が止められた単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させ、空隙14を覆う単結晶炭化シリコン膜13を形成する(第5の工程)。単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を再開させる条件は、前記選択成長(第3の工程)と同じ条件にて行う。空隙14は、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン膜13との間に残存した状態で封止される。複数の空隙14により、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜13の応力が吸収される。
【0082】
なお、単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させる際に、単結晶炭化シリコンの高さを750nm程度まで形成することで、空隙14を埋めることもできる。さらに、単結晶炭化シリコンの高さを750以上の高さに形成することで、単結晶炭化シリコン膜13の表面を平坦化させることもできる。
【0083】
以上の工程により、本実施形態の半導体基板2を製造することができる。
【0084】
本実施形態の半導体基板2、半導体基板の製造方法によれば、第1の応力緩和膜21と第2の応力緩和膜22とで互いに異なる種類の膜を構成することができる。例えば、第1の応力緩和膜21と第2の応力緩和膜22とで、それぞれの膜厚、形成材料の種類などの形成条件を適宜変更することができる。これにより、複数の空隙14で吸収しきれずに残留したシリコン基板11の応力を緩和する度合いを調整することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0085】
また、単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長をマスク材12の表面が一部露出した状態で止める過程において、単結晶炭化シリコン13Aをエピタキシャル成長させる初期段階で、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板11の応力を、第1の応力緩和膜21で吸収することができる。また、マスク材12を除去した後に単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜13を形成する過程において、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板11の応力を、第1の応力緩和膜21と第2の応力緩和膜22とで吸収することができる。すなわち、異なるタイミングでシリコン基板11に発生する応力を、互いに異なる種類の応力緩和膜21,22で吸収することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0086】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る半導体基板3の概略構成を示す模式図である。
図7に示すように、本実施形態に係る半導体基板3は、応力緩和膜の形成材料として酸化珪素を用いている点が第1実施形態に係る半導体基板1と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様の構成であるため、同じ符号を付し、その照射な説明は省略する。
【0087】
図7に示すように、半導体基板3は、シリコン基板11と、シリコン基板11の表面に形成された単結晶炭化シリコン膜13と、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜が形成された側とは反対側の面(シリコン基板11の裏面)に形成された応力緩和膜31と、を備えている。
【0088】
本実施形態では、応力緩和膜31の形成材料としては、酸化珪素を用いる。応力緩和膜31は、シリコン基板11の単結晶炭化シリコン膜13が形成された側とは反対側の面に圧縮応力を加えてシリコン基板11の応力を緩和する。
【0089】
(半導体基板の製造方法)
図8は、本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す過程図である。なお、本実施形態に係る半導体基板の製造方法においてシリコン基板11表面を清浄化するための熱処理工程は、上述した第1実施形態に係る半導体基板の製造方法の熱処理工程(
図2(a))と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0090】
本実施形態においては、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成するとともにシリコン基板11の裏面に応力緩和膜31を形成する(
図8(a)参照、第1の工程)。ここでは、熱酸化法を用いてシリコン基板11の表面及び裏面を熱酸化処理することにより、シリコン基板11の表面にマスク材12を形成するとともにシリコン基板11の裏面に応力緩和膜31を形成する。また、マスク材12の膜厚及び応力緩和膜31の膜厚は、例えば500nmに設定する。
【0091】
なお、シリコン基板11の裏面に対して適切な圧縮応力を加えるために、応力緩和膜31の膜厚を調整することもできる。エッチャントとしては、例えば、HFにNH
4Fを混ぜたBHF溶液を用いることができる。このとき、シリコン基板11の表面のマスク材12がエッチングされないように、シリコン基板11の表面をレジスト膜により保護する。レジスト膜は、シリコン基板11の裏面の応力緩和膜31のエッチングが終了した後、除去する。
【0092】
次に、マスク材12をパターニングして開口部12hを形成し、シリコン基板11の表面の一部を露出させる(第2の工程)。例えば、パターニングされたマスク材12の高さを500nm程度、当該マスク材12の幅を500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅を500nm程度とする。
【0093】
なお、マスク材12のエッチングは、開口部12hの側壁の垂直性が必要となるため、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching,RIE)などドライエッチングによる異方性エッチングにより行う。
【0094】
次に、単結晶炭化シリコン膜13の原料ガスをチャンバー内に導入し、基板温度を1000℃程度に設定する。原料ガスとしては、例えば、エチレン(C
2H
4)ガス及びジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスを用いる。原料ガスの流量としては、例えばエチレン(C
2H
4)ガスの流量を2.5sccm程度、ジクロルシラン(SiH
2Cl
2)ガスの流量を10sccm程度とする。
【0095】
これにより、シリコン基板11の開口部12hから露出した部分を基点として、単結晶炭化シリコン13Aをエピタキシャル成長させ、当該単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長をマスク材12の表面が一部露出した状態で止める(
図8(b)参照、第3の工程)。
【0096】
例えば、パターニングされたマスク材12の高さが500nm程度、当該マスク材12の幅が500nm程度、マスク材12の開口部12hの幅が500nm程度の場合、単結晶炭化シリコンの高さを700nm程度まで形成することで、マスク材12の表面が当該マスク材12の幅方向において100nm程度開いた状態で単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を止めることができる。本実施形態においては、前記条件にて、単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を2時間行うことで、高さが700nm程度の単結晶炭化シリコンを形成する。
【0097】
次に、選択成長された単結晶炭化シリコン13Aの隙間から、マスク材12をエッチングにより除去する(
図8(c)参照、第4の工程)。このとき、シリコン基板11の裏面の応力緩和膜31をレジスト膜により保護し、エッチングされないようにする。マスク材12のエッチングは、例えば、HFにNH
4Fを混ぜたBHF溶液によるウエットエッチングにより行う。BHFによる等方性エッチングにより、マスク材12のみを選択的に除去することができる。応力緩和膜31を保護するレジスト膜は、マスク材12のエッチングが終了した後、除去する。
【0098】
このとき、シリコン基板11の裏面に対して適切な圧縮応力を加えるために、応力緩和膜31の膜厚を調整することもできる。エッチャントとしては、例えば、希釈HF溶液(DHF溶液)を用いることができる。
【0099】
次いで、エピタキシャル成長が止められた単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させ、空隙14を覆う単結晶炭化シリコン膜13を形成する(第5の工程)。単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を再開させる条件は、前記選択成長(第3の工程)と同じ条件にて行う。空隙14は、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン膜13との間に残存した状態で封止される。複数の空隙14により、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生する単結晶炭化シリコン膜13の応力が吸収される。
【0100】
なお、単結晶炭化シリコン13のエピタキシャル成長を再開させる際に、単結晶炭化シリコンの高さを750nm程度まで形成することで、空隙14を埋めることもできる。さらに、単結晶炭化シリコンの高さを750以上の高さに形成することで、単結晶炭化シリコン膜13の表面を平坦化させることもできる。
【0101】
以上の工程により、本実施形態の半導体基板3を製造することができる。
【0102】
本実施形態の半導体基板3、半導体基板の製造方法によれば、単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長をマスク材12の表面が一部露出した状態で止める過程において、単結晶炭化シリコン13Aをエピタキシャル成長させる初期段階で、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板11の応力を、応力緩和膜で吸収することができる。また、マスク材12を除去した後に単結晶炭化シリコン13Aのエピタキシャル成長を再開させ、単結晶炭化シリコン膜13を形成する過程において、シリコン基板11と単結晶炭化シリコン13Aとで格子定数及び熱膨張係数が異なることに起因して発生するシリコン基板11の応力を、膜厚が調整された応力緩和膜31で吸収することができる。すなわち、異なるタイミングでシリコン基板11に発生する応力を、膜厚を異ならせた応力緩和膜31で吸収することができる。よって、ウエハの反りを抑制しやすくなる。
【0103】
また、応力緩和膜31をマスク材12の形成工程と同じ工程で形成することができる。よって、応力緩和膜31をマスク材12の形成工程と異なる工程で形成する場合に比べて、製造工程を簡素化することができる。