特許第6051544号(P6051544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6051544画像処理回路、液晶表示装置、電子機器及び画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051544
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】画像処理回路、液晶表示装置、電子機器及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20161219BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20161219BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 642A
   G02F1/133 505
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-55393(P2012-55393)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-190511(P2013-190511A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】西村 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】若林 淳一
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−104055(JP,A)
【文献】 特開2009−237366(JP,A)
【文献】 特開2009−104053(JP,A)
【文献】 特開2011−170235(JP,A)
【文献】 特開2008−281947(JP,A)
【文献】 特開2011−053390(JP,A)
【文献】 特開2008−046613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G02F 1/133
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画素、前記第1画素の一方の側に配置された第2画素および前記第1画素の他方の側に配置された第3画素が設けられた表示領域と、各々の前記画素で表示する階調を指定する表示データに基づいて各々の前記画素を駆動する駆動回路とを有する液晶表示装置の画像処理回路であって、
前記第1画素に対応する第1の表示データ、前記第2画素に対応する第2の表示データ、及び、前記第3画素に対応する第3の表示データに基づき、前記第1の画素に対応する第1の階調と前記第2の画素に対応する第2の階調との間の第1の階調差と、前記第1の階調と前記第3の画素に対応する第3の階調との間の第2の階調差とを検出する検出部と、
前記検出部により前記第1の階調差と前記第2の階調差とが閾値以上となる場合、前記前記第1の表示データ、前記第2の表示データ、及び、前記第3の表示データを補正する補正部とを備え、
前記補正部は、
前記第1の階調、前記第2の階調、及び、前記第3の階調が、前記第3の階調>前記第1の階調>前記第2の階調の関係、又は、前記第3の階調<前記第1の階調<前記第2の階調の関係となり、且つ、前記第1の階調差が、前記第2の階調差より大きい場合、
前記第1の階調差と前記第2の階調差がそれぞれ小さくなり、且つ、前記第1画素と前記第2画素の間の補正後の階調差が、前記第1画素と前記第3画素の間の補正後の階調差より大きくなるように、前記第1の表示データ、前記第2の表示データ及び第3の表示データを補正すること
を特徴とする画像処理回路。
【請求項2】
前記補正部は、前記第1の階調差と、前記第2の階調差とのうち、値の小さい階調差に基づいて前記第1画素の補正を行うこと
を特徴とする請求項1に記載に画像処理回路。
【請求項3】
前記補正部は、
前記第2の階調差が前記第1の階調差より小さい場合には、前記第2の階調差を用いて前記第1画素と前記第3画素を補正し、且つ、前記第1の階調差を用いて前記第2画素を補正し、
前記第1の階調差が前記第2の階調差より小さい場合には、前記第1の階調差を用いて前記第1画素と前記第2画素を補正し、且つ、前記第2の階調差を用いて前記第3画素を補正すること
を特徴とする請求項2に記載の画像処理回路
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理回路を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
第1画素、前記第1画素の一方の側に配置された第2画素および前記第1画素の他方の側に配置された第3画素が設けられた表示領域と、各々の前記画素で表示する階調を指定する表示データに基づいて各々の前記画素を駆動する駆動回路とを有する液晶表示装置の画像処理方法であって、
前記画像処理方法は、
前記第1画素に対応する第1の表示データ、前記第2画素に対応する第2の表示データ、及び、前記第3画素に対応する第3の表示データに基づき、前記第1の画素に対応する第1の階調と前記第2の画素に対応する第2の階調との間の第1の階調差と、前記第1の階調と前記第3の画素に対応する第3の階調との間の第2の階調差とを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記第1の階調差と前記第2の階調差とが閾値以上となる場合、前記前記第1の表示データ、前記第2の表示データ、及び、前記第3の表示データを補正する補正ステップとを備え、
前記補正ステップは、
前記第1の階調、前記第2の階調、及び、前記第3の階調が、前記第3の階調>前記第1の階調>前記第2の階調の関係、又は、前記第3の階調<前記第1の階調<前記第2の階調の関係となり、且つ、前記第1の階調差が、前記第2の階調差より大きい場合、
前記第1の階調差と前記第2の階調差がそれぞれ小さくなり、且つ、前記第1画素と前記第2画素の間の補正後の階調差が、前記第1画素と前記第3画素の間の補正後の階調差より大きくなるように、前記第1の表示データ、前記第2の表示データ及び第3の表示データを補正すること
を特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリネーションの発生を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルにおいては、隣り合う画素間の電位差に起因して、隣り合う画素電極の方向に向かう横電界が発生し、液晶分子が所期の配向方向とは異なる方向に配向する、所謂、ディスクリネーションが発生することがある。ディスクリネーションの発生は、液晶パネルの表示品位の低下の原因となるため、例えば特許文献1〜5に開示されているように、ディスクリネーションの発生を抑える発明がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25417号公報
【特許文献2】特開2009−104053号公報
【特許文献3】特開2009−104055号公報
【特許文献4】特開2009−237366号公報
【特許文献5】特開2009−237524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、横電界が強くなる画素間の印加電圧の差を小さくするように、これらのうちの一方又は両方の画素の表示データを補正すれば、横電界が弱くなってディスクリネーションの発生を抑えられる。しかしながら、ある画素について、隣接する一方の画素との間で電位差が小さくなるように補正した場合、隣接する他方の画素との間で電位差が大きくなり、ディスクリネーションが悪化する場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、補正をした場合に、隣り合う画素との間で補正前より電位差が大きくならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理回路にあっては、第1画素、前記第1画素の一方の側に配置された第2画素および前記第1画素の他方の側に配置された第3画素が設けられた表示領域と、各々の前記画素で表示する階調を指定する表示データに基づいて各々の前記画素を駆動する駆動回路と、を有する液晶表示装置の画像処理回路であって、前記第1画素に対応する第1の表示データ、前記第2画素に対応する第2の表示データ、及び、前記第3画素に対応する第3の表示データに基づき、前記第1の画素に対応する第1の階調と前記第2の画素に対応する第2の階調との間の第1の階調差と、前記第1の階調と前記第3の画素に対応する第3の階調との間の第2の階調差とを検出する検出部と、前記検出部により前記第1の階調差と前記第2の階調差とが閾値以上となる場合、前記前記第1の表示データ、前記第2の表示データ、及び、前記第3の表示データを補正する補正部とを備え、前記補正部は、前記第1の階調、前記第2の階調、及び、前記第3の階調が、前記第3の階調>前記第1の階調>前記第2の階調の関係、又は、前記第3の階調<前記第1の階調<前記第2の階調の関係となり、且つ、前記第1の階調差が、前記第2の階調差より大きい場合、前記第1の階調差と前記第2の階調差がそれぞれ小さくなり、且つ、前記第1画素と前記第2画素の間の補正後の階調差が、前記第1画素と前記第3画素の間の補正後の階調差より大きくなるように、前記第1の表示データ、前記第2の表示データ及び第3の表示データを補正することを特徴とする。
この構成によれば、補正後の画素間の階調差は、補正前より小さくなるため、隣り合う画素との間で補正前より電位差が大きくならないようにすることができる。

【0007】
本発明においては、前記補正部は、前記第1画素と、前記第1画素を挟んで前記第2画素と反対側にある第3画素との階調差が、補正後のほうが補正前より小さくなるように補正する構成としてもよい。
この構成によれば、階調差が小さくなるように補正されるので、補正後に境界が発生するのを抑えることができる。
【0008】
また、本発明において、前記補正部は、前記第1画素と前記第3画素との間が前記境界である場合、前記第3画素の入力表示データを補正する構成としてもよい。
この構成によれば、画素が隣り合う画素に対して高階調側と低階調側の両方になり得る場合に両隣の画素の階調が補正され、補正前と補正後とで境界の移動を抑えることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記補正部は、前記第1画素の階調、前記第2画素の階調及び前記第3画素の階調の関係が、前記第3画素の階調>前記第1画素の階調>前記第2画素の階調の関係、又は、前記第3画素の階調<前記第1画素の階調<前記第2画素の階調の関係にある場合に前記入力表示データの補正をする構成としてもよい。
この構成によれば、隣り合う画素に対して高階調側と低階調側の両方になり得る画素について、画素の階調が補正され、補正前と補正後とで境界の移動を抑えることができる。
【0010】
また、本発明において、前記補正部は、前記第1画素と前記第3画素との階調差Δ1と、前記第1画素と前記第2画素との階調差Δ2とのうち、値の小さい階調差に基づいて前記第1画素の補正を行う構成としてもよい。
この構成によれば、隣り合う画素との間で補正前より電位差が大きくならないようにすることができ、補正前と補正後とで境界の移動を抑えることができる。
【0011】
また、本発明において、前記補正部は、前記階調差Δ1が前記階調差Δ2より小さい場合には、前記階調差Δ1を用いて前記第1画素と前記第3画素を補正し、且つ、前記階調差Δ2を用いて前記第2画素を補正し、前記階調差Δ2が前記階調差Δ1より小さい場合には、前記階調差Δ2を用いて前記第1画素と前記第2画素を補正し、且つ、前記階調差Δ1を用いて前記第3画素を補正する構成としてもよい。
この構成によれば、隣り合う画素との間で補正前より電位差が大きくならないようにすることができ、補正前と補正後とで境界の移動を抑えることができる。
【0012】
なお、本発明は、画像処理回路のほか、画像処理方法、電気光学装置を含む電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る電気光学装置の構成を示したブロック図。
図2】実施形態に係る液晶パネルの構成を示した図。
図3】実施形態に係る液晶パネルの等価回路を示した図。
図4】ノーマリーブラックモードにおけるV−T特性を示した図。
図5】ディスクリネーション発生領域を説明する図。
図6】実施形態に係る補正処理を説明するための図。
図7】実施形態に係る補正処理を説明するための図。
図8】電子機器の一例を示した図。
図9】変形例に係る補正処理を説明するための図。
図10】変形例に係る補正処理を説明するための図。
図11】変形例に係る補正処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る電気光学装置1の全体構成を示したブロック図である。図1に示すように、電気光学装置1の構成は、タイミング制御回路10と、液晶パネル100と、画像処理回路20とに大別される。
タイミング制御回路10は、図示せぬ外部装置から与えられる同期信号Syncに同期して各種の制御信号を生成し、電気光学装置1の各部を制御する。
画像処理回路20は、電気光学装置1の表示を制御する回路である。画像処理回路20には、同期信号Syncに同期して外部装置から入力表示データDa−inが入力される。入力表示データDa−inは、液晶パネル100が有する複数画素(後述する、表示領域101)の各画素の階調値を指定するデジタルデータである。階調値は、画素の明るさを規定するパラメーターである。ここでは、入力表示データDa−inを8ビットとして、画素で表現すべき階調を、十進値で最も暗い「0」から最も明るい「255」までの「1」刻みで256階調を指定している。入力表示データDa−inは、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号及びドットクロック信号(いずれも図示省略)に従った走査の順番で供給される。画像処理回路20は、入力表示データDa−inを処理して表示データDa−outを液晶パネル100に出力する。
【0015】
液晶パネル100は、例えば、各画素をトランジスターなどのスイッチング素子により駆動するアクティブ・マトリクス型の表示装置(表示部)である。液晶パネル100は、画像処理回路20から供給される表示データDa−outに基づいて画像を表示する。なお、入力表示データDa−inは液晶パネル100の各画素(後述する画素110)の階調値を指定するものであるが、階調値に応じて液晶素子の印加電圧が定まるので、入力表示データDa−inは液晶素子の印加電圧を指定するものといって差し支えない。
【0016】
図2は、液晶パネル100の構成を示す図である。図2に示すように、液晶パネル100のうち画像が表示される表示領域101では、1、2、3、・・・、m行の走査線112が、一方向(図中横方向)に延在するように設けられる。また、表示領域101では、1、2、3、・・・、n列のデータ線114が、走査線112に直交する方向(図中縦方向)に延在するように設けられる。各データ線114と各走査線112とは互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。そして、これらm行の走査線112とn列のデータ線114との交点のそれぞれに対応して、画素110がそれぞれ設けられる。したがって、この実施形態では、表示領域101において、画素110が縦m行×横n列でマトリクス状に配列される。
【0017】
表示領域101の周辺には、走査線駆動回路130とデータ線駆動回路140とが配置される。
走査線駆動回路130は、タイミング制御回路10から供給される選択信号Yctrによって指定される走査線112を選択する。走査線駆動回路130は、選択した走査線112に対する走査信号を選択電圧に相当するH(High)レベルとする一方、他の走査線112に対する走査信号を非選択電圧に相当するL(Low)レベルとする。図2においては、1、2、3、・・・、m行目の走査線112に供給される走査信号をそれぞれG1、G2、G3、・・・、Gmと表記している。
データ線駆動回路140は、表示データDa−outに基づいて、いわゆる電圧変調方式で画素110を駆動するものである。具体的には、データ線駆動回路140は、タイミング制御回路10から供給される選択信号Xctrに従って1〜n列目のデータ線114に、それぞれ表示データDa−outに応じた大きさの電圧のデータ信号を供給する。
画素110は、画素電極とコモン電極とで液晶を挟持した液晶素子を有し、走査線112が選択されたときに、データ線114に供給されたデータ信号が画素電極に印加されるものである。
以上の構成を有する走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路140の協働により、電気光学装置1における駆動回路が実現される。
【0018】
図3は、液晶パネル100の等価回路を示した図である。図3に示すように、液晶パネル100は、走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素電極118とコモン電極108とで液晶105を挟持した液晶素子120が配列された構成である。液晶パネル100における等価回路では、液晶素子120に対して並列に補助容量(蓄積容量)125が設けられている。補助容量125は、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線115に共通接続されている。なお、容量線115は時間的に一定の電圧に保たれている。
ここで、走査線112がHレベルになると、その走査線にゲート電極が接続されたTFT(Thin Film Transistor)116がオンとなり、画素電極118がデータ線114に接続される。このため、走査線112がHレベルであるときに、階調に応じた大きさの電圧のデータ信号がデータ線114に供給されると、そのデータ信号は、オンとなったTFT116を介して画素電極118に供給される。走査線112がLレベルになると、TFT116はオフとなるが、画素電極118に印加された電圧は、液晶素子120の容量性及び補助容量125によって保持される。
液晶素子120では、画素電極118及びコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶105の分子配向状態が変化する。このため、液晶素子120は、透過型であれば、印加・保持電圧に応じた透過率となる。液晶パネル100では、液晶素子120ごとに透過率が変化するので、画素110の各々が液晶素子120を有する。なお、本実施形態においては、液晶105をVA(Vertical Alignment)方式として、液晶素子120が電圧無印加時において黒状態となるノーマリーブラックモードとなっている。
【0019】
図4は、ノーマリーブラックモードの液晶素子120における印加電圧と透過率との関係を表した曲線(以下、「V−T特性」という。)を表すグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸が液晶素子120の印加電圧の大きさに対応し、縦軸が液晶素子120の透過率(具体的には、相対透過率)の大きさに対応している。液晶素子120を表示データDa−outで指定された階調値に応じた透過率とさせるには、その階調値に応じた大きさの電圧が液晶素子120に印加されればよい。ノーマリーブラックモードでは、階調値が高い場合ほど、液晶素子120に印加されるべき電圧が大きくなる。
【0020】
なお、液晶105の劣化を防止するため、液晶パネル100においては液晶素子120を交流駆動することが原則であるが、液晶素子120を交流駆動する場合、ある階調を表現するように画素を駆動する際に、振幅中心電圧に対して高位側とする正極性と、振幅中心電圧に対して低位側とする負極性との2種類が必要となる。
なお、実施形態の電圧については、液晶素子120の印加電圧を除き、特に明記しない限り図示省略した接地電位を電圧ゼロの基準とする。液晶素子120の印加電圧は、コモン電極108の電圧LCcomと画素電極118との電位差である。液晶素子120に階調に応じた電圧を保持させる際、書込極性が正極性の場合には、コモン電極108の電圧LCcomよりも画素電極118の電位が高くなり、書込極性が負極性の場合には、コモン電極108の電圧LCcomよりも画素電極118の電位が低くなる。
【0021】
ところで、液晶素子120に対する印加電圧の差が大きい画素が隣り合ったとき、この印加電圧の差に起因して横電界が強くなり、ディスクリネーションが発生することがある。これらの画素のうち、低階調(低電位側)の画素(第1画素)は、最小階調付近の黒状態又は黒状態に近い状態を示す場合もあれば、中間階調付近の比較的明るい状態を示す場合もある。一方、高階調(高電位側)の画素(第2画素)は、中間階調付近の明るさの状態を示す場合もあれば、最大階調付近の白状態又は白状態に近い状態を示す場合もある。このように、ディスクリネーションは隣り合う画素間の電位差に起因して発生するが、その発生領域周辺の明るさは様々である。
【0022】
図5は、ディスクリネーション発生領域を説明する図である。図5の(a)に示したように、白状態の(又は白状態に近い)画素110aに画素110aより黒に近い画素110bが隣り合い、画素110bより黒に近い画素110cが画素110bに隣り合った場合、本来、各画素は均一の透過率となるべきである。しかしながら、画素110aと画素110bとの境界付近及び画素110bと画素110cとの境界付近において、横電界に起因するディスクリネーションが発生すると、実際には、図5の(b)に示すように画素110a〜画素110cは表示される。すなわち、画素110aと画素110bとの間では、高電位側の画素110aのうち、画素110aと画素110bとの境界側の一部の領域が、ディスクリネーション発生領域となり、画素110bと画素110cとの間では、高電位側の画素110bのうち、画素110bと画素110cとの境界側の一部の領域が、ディスクリネーション発生領域となる。
【0023】
ここで、画素110aと画素110bとの間のディスクリネーションの発生を抑えるためには、画素110aと画素110bとの階調差(電位差)を小さくする必要があり、また、画素110bと画素110cとの間のディスクリネーションの発生を抑えるためには、画素110bと画素110cとの階調差(電位差)を小さくする必要がある。そこで、本実施形態に係る電気光学装置1は、画素の両隣にディスクリネーションが発生し得る場合、一方の画素に対してだけでなく、両隣の画素との間で階調差(電位差)が小さくなるように、画素に印加する電圧を補正し、この補正を画像処理回路20にて行う。
【0024】
ここで、画像処理回路20の構成について図1を参照して説明する。画像処理回路20は、フレームメモリー21、境界検出部22、階調差演算部23、補正値演算部24、及び補正部25を備える。
フレームメモリー21は、表示領域101に対応して縦m行×横n列の画素配列に対応した記憶領域を有し、1コマ(1フレーム分)の入力表示データDa−inを記憶する。各記憶領域は、それぞれに対応する画素110の階調値を指定する入力表示データDa−inを記憶する。ここで、フレームとは、液晶パネル100を駆動することによって、画像の1コマ分を表示させるのに要する期間をいう。その期間は、例えば同期信号Syncに含まれる垂直走査信号の周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。
なお、入力表示データDa−inは、外部装置から供給されてフレームメモリー21の記憶領域に書き込まれる。また、フレームメモリー21に対する入力表示データDa−inの書き込み、及びフレームメモリー21からの表示データDa−dの読み出しは、例えば、タイミング制御回路10の制御の下で、液晶パネル100における駆動タイミングに応じて図示せぬメモリーコントローラーにより行われる。入力表示データDa−inと表示データDa−dとは、実質的に同じ表示内容を表すが、これらは、フレームメモリー21に書き込まれるものであるか、フレームメモリー21から読み出されるものであるかという点で区別される。
【0025】
境界検出部22は、フレームメモリー21から読み出された表示データDa−dを解析し、入力表示データDa−inで指定される階調(印加電圧)の差が閾値以上となる、低階調(低電位)側の画素(第2画素)と高階調(高電位)側の画素(第1画素)との境界を検出する(境界検出ステップ)。具体的には、境界検出部22は、表示データDa−dに基づいて、隣り合う第1画素と第2画素の画素間の階調値の差が予め定められた閾値以上となる境界を検出する。境界検出部22は、境界を検出したときは、出力するフラグQの値を「1」とし、それ以外のときは、出力するフラグQの値を「0」とする。なお、各画素に隣り合う画素は、一の画素からみて辺どうしが対向する画素のことである。よって、画像領域端部に位置する画素を除いて、ひとつの画素に4つの画素が隣り合っている。また、ディスクリネーションの発生の条件となる、隣り合う画素間の印加電圧(階調差)に対する閾値については、例えば試験的に算出された値が画像処理回路20に対して設定される。
また、境界検出部22は、複数の境界を検出した場合、検出した境界に隣り合う画素間の階調差が最小となる境界の位置を特定し、注目画素に対する当該境界の位置を信号Dirとして出力する。
【0026】
階調差演算部23は、フレームメモリー21から読み出された表示データDa−dに基づいて、境界検出部22により検出された境界に接する2つの画素の階調差Δを算出する。ここでは、階調差演算部23は、高階調(高電位)側の画素の階調値から、低階調(低電位)側の画素の階調値を減じて階調差Δを算出する。なお、階調差Δは、画素間の印加電圧の差に対応している。よって、階調差Δが大きいほど、画素間の液晶素子120に対する印加電圧の差も大きいことになる。
【0027】
補正値演算部24は、第1補正係数α及び第2補正係数βを記憶するメモリーを有し、階調差演算部23により算出された階調差Δに補正係数を作用させて、補正値ΔRE1,ΔRE2を算出する。なお、本実施形態においては、各補正係数は、0≦第1補正係数α≦0.5、0≦第2補正係数β≦0.5という関係を満たし、α=0.5、β=0.25である。補正値演算部24は、階調差演算部23で算出された階調差Δに(1−第1補正係数α)を乗じて、補正値ΔRE1を算出する。例えば、階調差Δが「40」であれば、補正値ΔRE1=40×(1−0.5)=20である。また、補正値演算部24は、階調差Δに第2補正係数βを乗じて補正値ΔRE2を算出する。例えば、階調差Δが「40」であれば、補正値ΔRE2=40×0.25=10である。
【0028】
補正部25は、画素の表示データDa−dに補正処理を施し、表示データDa−outを液晶パネル100に出力するものである(補正ステップ)。補正部25は、境界検出部22から出力されたフラグQの値が「1」であり、以下の(1)と(2)の条件に合致した場合、表示データDa−dを補正する。
(1)高階調側の階調値−低階調側の階調値≧最低階調差ΔN(高階調側の電圧−低階調側の電圧≧最低電圧差ΔVmin)
(2)注目画素の右側に境界がある。
なお、最低階調差ΔNは、設計により予め設定された値である。
補正部25は、高階調側の画素については、高階調側の画素の階調値から補正値ΔRE1を減算した結果を補正後の階調値とする。また、補正部25は、低階調側の画素については、低階調側の画素の階調値に補正値ΔRE2を加算した結果を補正後の階調値とする。
【0029】
続いて、補正部25による補正処理の具体例について説明する。図6,7は、補正処理の具体例を説明する図である。図6,7は、走査線112が伸びた方向に並んだ画素110a〜110cの階調値と、各画素に印加される印加電圧との対応関係を示した図であり、図6,7の(a)は、補正前の関係を示し、図6,7の(b)は、補正後の関係を示している。図6,7のV11は、補正前の画素110aの階調(250)にするために画素に印加する電圧を示したものであり、V31は、補正前の画素110cの階調(150)にするために画素に印加する電圧を示したものである。また、図6のV21は、補正前の画素110bの階調(190)にするために画素に印加する電圧を示したものであり、図7のV41は、補正前の画素bの階調(210)にするために画素に印加する電圧を示したものである。また、V12とV13は、補正後の画素110aの階調に基づいて画素に印加される電圧を示し、V32とV33は、補正後の画素110cの階調に基づいて画素に印加される電圧を示し、V22とV42は、補正後の画素110bの階調に基づいて画素に印加される電圧を示している。
また、図6,7においては、画素110aの階調値が画素110bの階調値より大きく、画素110cの階調値が画素110bの階調値より小さくなっている。なお、図6においては、補正前の画素110aと画素110bとの間の階調差Δ1が、補正前の画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2より大きくなっている。また、図7においては、補正前の画素110aと画素110bとの間の階調差Δ1が、補正前の画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2より小さくなっている。
【0030】
補正前の状態が図6の(a)の状態の場合、まず、画像処理回路20は、注目画素を画素110aとする。注目画素を画素110aとすると、画素110aと、画素110aに隣り合う画素の表示データDa−dがフレームメモリー21から読み出される。境界検出部22は、画素110aの表示データDa−dが指定する階調値(250)と、画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(190)とを取得する。
【0031】
ここで、高階調側の画素110a(第1画素)の階調値と低階調側の画素110b(第2画素)の階調値との階調差Δ1が、最低階調差ΔN以上である場合、境界検出部22は、ディスクリネーションが発生する境界があると判断し、フラグQの値を「1」として出力する。また、境界検出部22は、階調差が最小となる境界の位置を特定し、注目画素に対する当該境界の位置を信号Dirとして出力する。ここでは、境界の位置は注目画素である画素110aの右側になるため、信号Dirの内容は、右側を表す内容となる。
【0032】
一方、階調差演算部23は、注目画素である画素110aの表示データDa−dが指定する階調値(250)と、注目画素の右隣りの画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(190)とを取得し、両画素間の階調差Δ1を算出する。階調差演算部23は、算出した階調差を補正値演算部24へ出力する。
【0033】
補正値演算部24は、境界検出部22から出力されたフラグQの値が1であるため、階調差演算部23から得られた階調差を基に補正値ΔRE1,ΔRE2を演算する。ここで、階調差Δ1は「60」であるため、補正値ΔRE1=60×(1−0.5)=30となり、補正値ΔRE2=60×0.25=15となる。補正値演算部24は、算出したΔRE1,ΔRE2を補正部25へ出力する。
【0034】
次に、補正部25は、フラグQの値が1であり、上記の(1)と(2)の条件に合致した場合、表示データDa−dを補正する。階調差Δ1が、最低階調差ΔN以上であり、境界が注目画素の右側にある場合、境界検出部22は、画素110aと画素110bの表示データDa−dを補正する。
なお、ここで信号Dirの内容は右側となっているため、注目画素に対して階調差が最小となる境界は、注目画素の右側(画素110b側)である。補正部25は、注目画素に対して階調差が最小となる境界が右側にある場合、境界を挟んで高階調側の画素の階調値については、高階調側の画素の階調値−ΔRE1とする。ここでは、高階調側の画素110aの階調値が250であり、ΔRE1が30であるため、補正後の画素110aの階調値は、220(印加電圧がV12)となる。また、境界を挟んで低階調側の画素の階調値については、低階調側の画素の階調値+ΔRE2とする。ここでは、低階調側の画素110bの階調値が190であり、ΔRE2が15であるため、補正後の画素110bの階調値は、205となる。
【0035】
次に画像処理回路20は、注目画素を画素110bとする。注目画素を画素110bとすると、注目画素である画素110bの表示データDa−dと、画素110bに隣り合う画素110a,110cの表示データDa−dがフレームメモリー21から読み出される。境界検出部22は、画素110a〜110cの表示データDa−dが指定する階調値を取得し、各画素間が、ディスクリネーションが発生する境界であるか判断する。ここで、画素110aと画素110bとの間は、上述したように境界であると判断される。また、画素110bと画素110cとの間についても、階調差Δ2が最低階調差ΔN以上である場合、境界検出部22は、画素110bと画素110cとの間が境界であると判断する。境界検出部22は、注目画素に対して境界があると判断したため、フラグQの値を「1」として出力する。
【0036】
また、境界検出部22は、ディスクリネーションの発生し得る境界のうち、階調差が最小となる境界の位置を特定し、注目画素に対する当該境界の位置を信号Dirとして出力する。ここでは、画素110aと画素110bとの階調差Δ1が60、画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2が40であり、階調差が最小である境界の位置は注目画素である画素110bの右側になるため、信号Dirの内容は、右側を表す内容となる。
【0037】
一方、階調差演算部23は、注目画素である画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(190)と、注目画素の右隣りの画素110cの表示データDa−dが指定する階調値(150)とを取得し、両画素間の階調差Δ(Δ2=40)を算出する。階調差演算部23は、算出した階調差を補正値演算部24へ出力する。
【0038】
補正値演算部24は、境界検出部22から出力されたフラグQの値が1であるため、階調差演算部23から出力された階調差に基づいて補正値ΔRE1,ΔRE2を演算する。ここでは、画素110bと画素110cとの間の階調差に基づいて補正値ΔRE1,ΔRE2が算出され、補正値ΔRE1=40×(1−0.5)=20、補正値ΔRE2=40×0.25=10となる。
【0039】
次に、補正部25は、フラグQの値が1であり、上記の(1)と(2)の条件に合致した場合、表示データDa−dを補正する。なお、ここで信号Dirの内容は右側となっているため、注目画素に対して階調差が最小となる境界は、注目画素の右側(画素110c側)である。
補正部25は、注目画素に対して階調差が最小となる境界が右側にある場合、境界を挟んで高階調側の画素の階調値については、高階調側の画素の階調値−ΔRE1とする。ここでは、高階調側の画素110bの階調値が190であり、ΔRE1が20であるため、補正後の画素110bの階調値は、170(印加電圧がV22)となる。また、境界を挟んで低階調側の画素の階調値については、低階調側の画素の階調値+ΔRE2とする。ここでは、低階調側の画素110cの階調値が150であり、ΔRE2が10であるため、補正後の画素110cの階調値は160(印加電圧がV32)となる。
つまり、図6の場合、境界に対して低階調側と高階調側の両方になる画素110bにおいては、階調差Δ2が階調差Δ1より小さいため、階調差Δ2を用いて求めた補正値であるΔRE1を使用して補正がなされ、階調差Δ1を用いて算出されたΔRE2を使用しない補正がなされる。
【0040】
このような補正処理がなされると、補正後の画素110aと画素110bとの間の階調差Δ1aは50である。補正前の階調差Δ1は60であったため、補正前より階調差が小さい、即ち、画素間の階調差が小さくなっている。また、補正後の画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2aは10である。補正前の階調差Δ2は40であったため、補正前より階調差が小さく、即ち、画素間の階調差が小さくなっている。
本実施形態で画素の階調(電圧)の補正を行うと、補正前と比較して画素間の電位差が小さくなるように補正されるため、ディスクリネーションの発生を抑えることができる。
【0041】
ところで、Δ1>Δ2の場合、階調差Δ1の補正後の階調差Δ1aは、Δ1a=Δ1−Δ1×(1−α)+Δ2×(1−α)である。よって、Δ1−Δ1a=Δ1×(1−α)−Δ2×(1−α)=(Δ1−Δ2)×(1−α)となる。図6の(a)の場合、Δ1>Δ2であるため、Δ1−Δ1a>0、つまり、Δ1a<Δ1となる。また、図6の例の場合、Δ2a=Δ2−Δ2×(1−α)−Δ2×βである。よって、Δ2−Δ2a=Δ2×(1−α)+Δ2×βとなる。ここで、α及びβは、0以上、且つ、0.5以下の値であるため、Δ2−Δ2a>0、つまり、Δ2a<Δ2となる。即ち、Δ1>Δ2の場合、補正後の階調差は補正前の階調差より小さくなる。
【0042】
ここで、β=0の場合、Δ1a=Δ1−Δ1×(1−α)+Δ2×(1−α)=Δ1×α+Δ2×(1−α)であり、Δ2a=Δ2−Δ2×(1−α)=Δ2×αである。Δ1>Δ2であるため、Δ1×α>Δ2×αとなり、Δ1a>Δ2aが成立する。次にβが0以外である場合、Δ2aは、Δ2×βの分だけさらに小さくなるため、常にΔ1a>Δ2aが成立することとなる。つまり、補正後においても、画素110bに対して左側の画素との階調差が大きいという関係が維持されることとなる。
【0043】
次に、補正前の状態が図7の(a)の状態の場合の補正処理例について説明する。まず、画像処理回路20は、注目画素を画素110aとする。注目画素を画素110aとすると、画素110aと、画素110aに隣り合う画素の表示データDa−dがフレームメモリー21から読み出される。境界検出部22は、画素110aの表示データDa−dが指定する階調値(250)と、画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(210)とを取得する。
【0044】
ここで、高階調側の画素110aの階調値と低階調側の画素110bの階調値との階調差Δ1が、最低階調差ΔN以上である場合、境界検出部22は、ディスクリネーションが発生する境界があると判断し、フラグQの値を「1」として出力する。また、境界検出部22は、階調差が最小となる境界の位置を特定し、注目画素に対する当該境界の位置を信号Dirとして出力する。ここでは、境界の位置は注目画素である画素110aの右側になるため、信号Dirの内容は、右側を表す内容となる。
【0045】
一方、階調差演算部23は、注目画素である画素110aの表示データDa−dが指定する階調値(250)と、注目画素の右隣りの画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(210)とを取得し、両画素間の階調差Δ(Δ1)を算出する。階調差演算部23は、算出した階調差を補正値演算部24へ出力する。
【0046】
補正値演算部24は、境界検出部22から出力されたフラグQの値が1であるため、階調差演算部23から得られた階調レベル差を基に補正値ΔRE1,ΔRE2を演算する。ここで、階調差Δ1は「40」であるため、補正値ΔRE1=40×(1−0.5)=20となり、補正値ΔRE2=40×0.25=10となる。補正値演算部24は、算出したΔRE1,ΔRE2を補正部25へ出力する。
【0047】
次に、補正部25は、フラグQの値が1であり、上記の(1)と(2)の条件に合致した場合、表示データDa−dを補正する。階調差Δ1が、最低階調差ΔN以上である場合、境界検出部22は、画素110aと画素110bの表示データDa−dを補正する。
なお、ここで信号Dirの内容は右側となっているため、注目画素に対して階調差が最小となる境界は、注目画素の右側(画素110b側)である。補正部25は、注目画素に対して階調差が最小となる境界が右側にある場合、境界を挟んで高階調側の画素の階調値については、高階調側の画素の階調値−ΔRE1とする。ここでは、高階調側の画素110aの階調値が250であり、ΔRE1が20であるため、補正後の画素110aの階調値は230(印加電圧がV13)となる。また、境界を挟んで低階調側の画素の階調値については、低階調側の画素の階調値+ΔRE2とする。ここでは、低階調側の画素110bの階調値が210であり、ΔRE2が10であるため、補正後の画素110bの階調値は220となる。
【0048】
次に画像処理回路20は、注目画素を画素110bとする。注目画素を画素110bとすると、注目画素である画素110bの表示データDa−dと、画素110bに隣り合う画素110a,110cの表示データDa−dがフレームメモリー21から読み出される。境界検出部22は、画素110a〜110cの表示データDa−dが指定する階調値を取得し、各画素間が、ディスクリネーションが発生する境界であるか判断する。ここで、画素110aと画素110bとの間は、上述したように境界であると判断される。また、画素110bと画素110cとの間についても、階調差Δ2が最低階調差ΔN以上である場合、境界検出部22は、画素110bと画素110cとの間が境界であると判断する。境界検出部22は、注目画素に対して境界があると判断したため、フラグQの値を「1」として出力する。
【0049】
また、境界検出部22は、ディスクリネーションの発生し得る境界のうち、階調差が最小となる境界の位置を特定し、注目画素に対する当該境界の位置を信号Dirとして出力する。ここでは、画素110aと画素110bとの階調差Δ1が40、画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2が60であり、階調差が最小である境界の位置は注目画素である画素110bの左側になるため、信号Dirの内容は、左側を表す内容となる。
【0050】
一方、階調差演算部23は、注目画素である画素110bの表示データDa−dが指定する階調値(210)と、注目画素の右隣りの画素110cの表示データDa−dが指定する階調値(150)とを取得し、両画素間の階調差Δ(Δ2=60)を算出する。階調差演算部23は、算出した階調差を補正値演算部24へ出力する。
【0051】
補正値演算部24は、境界検出部22から出力されたフラグQの値が1であるため、階調差演算部23から出力された階調差に基づいて補正値ΔRE1,ΔRE2を演算する。ここでは、画素110bと画素110cとの間の階調差に基づいて補正値ΔRE1,ΔRE2を算出し、補正値ΔRE1=60×(1−0.5)=30、補正値ΔRE2=60×0.25=15となる。
【0052】
次に、補正部25は、フラグQの値が1であり、上記の(1)と(2)の条件に合致した場合、表示データDa−dを補正する。なお、ここで信号Dirの内容は左側となっているため、注目画素に対して階調差が最小となる境界は、注目画素の左側(画素110a側)である。
補正部25は、注目画素に対して階調差が最小となる境界が左側にある場合、注目画素である画素110bについては補正せず、注目画素に隣り合う画素110cについては、補正値ΔRE2を用いて補正する。具体的には、画素110bの階調値は、上記の補正により220となっているため、階調値を220のまま(印加電圧をV42)とする。また、注目画素に対して低階調側の画素110cの階調値が150であり、ΔRE2が15であるため、補正後の画素110cの階調値は165(印加電圧がV33)となる。
つまり、図7の場合、境界に対して低階調側と高階調側の両方になる画素110bにおいては、階調差Δ1が階調差Δ2より小さいため、階調差Δ1を用いて求めた補正値であるΔRE2を使用し、Δ2に基づいて算出したΔRE2を使用しない補正がなされる。
【0053】
このような補正処理がなされると、補正後の画素110aと画素110bとの間の階調差Δ1aは10である。補正前の階調差Δ1は40であったため、補正前より階調差が小さい、即ち、画素間の階調差が小さくなっている。また、補正後の画素110bと画素110cとの間の階調差Δ2aは55である。補正前の階調差Δ2は60であったため、補正前より階調差が小さく、即ち、画素間の階調差が小さくなっている。
本実施形態で画素の階調(電圧)の補正を行うと、補正前と比較して画素間の電位差が小さくなるように補正されるため、ディスクリネーションの発生を抑えることができる。
【0054】
ところで、Δ1<Δ2の場合、階調差Δ2の補正後の階調差Δ2aは、Δ2a=Δ2−Δ2×β+Δ1×βである。よって、Δ2−Δ2a=Δ2×β−Δ1×β=(Δ2−Δ1)×βとなる。図7の(a)の場合、Δ2>Δ1であるため、Δ2−Δ2a>0、つまり、Δ2a<Δ2となる。また、図7の例の場合、Δ1a=Δ1−Δ1×(1−α)−Δ1×βである。よって、Δ1−Δ1a=Δ1×(1−α)+Δ1×βとなる。ここで、α及びβは、0以上、且つ、0.5以下の値であるため、Δ1−Δ1a>0、つまり、Δ1a<Δ1となる。即ち、Δ2>Δ1の場合でも、補正後の階調差は補正前の階調差より小さくなる。
【0055】
ここで、α=0の場合、Δ1a=Δ1−Δ1×β=Δ1×(1−β)であり、Δ2a=Δ2−Δ2×β+Δ1×β=Δ2×(1−β)+Δ1×βである。Δ1<Δ2であるため、Δ2×(1−β)>Δ1×(1−β)となり、Δ2a>Δ1aが成立する。次にαが0以外である場合、Δ1aは、Δ1×(1−α)の分だけさらに小さくなるため、常にΔ2a>Δ1aが成立することとなり、補正後においても、画素110bに対して右側の画素との階調差が大きいという関係が維持されることとなる。
【0056】
[電子機器]
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置1を用いた電子機器の例について説明する。図8は、上述した電気光学装置1の液晶パネル100をライトバルブとして用いた3板式プロジェクターの構成を示す平面図である。プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源を備えたランプユニット2102が設けられている。このプロジェクター2100において、ランプユニット2102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0057】
ここで、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した実施形態における液晶パネル100と同様であり、外部装置(図示省略)から供給されるR、G、Bの各色に対応する表示データDa−outでそれぞれ駆動されるものである。ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、レンズユニット2114によって正転拡大投影されるので、スクリーン2120には、カラー画像が表示されることとなる。
【0058】
ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、ライトバルブ100Gにより形成される画像とは左右反転の関係にある。
【0059】
なお、電子機器としては、プロジェクターの他にも、リアプロジェクション型のテレビジョンや、直視型、例えば携帯電話や、パーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS(Point Of Sales)端末、ディジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種の電子機器に対しても、本発明に係る電気光学装置が適用することができる。
【0060】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、液晶パネル100はノーマリーブラックのパネルとなっているが、ノーマリーホワイトのパネルであってもよい。ノーマリーホワイトの表示パネルの場合、液晶素子120に印加する電圧の関係が、ノーマリーブラックのパネルの場合とは逆となり、階調値が低い場合ほど、液晶素子120に印加されるべき電圧が大きくなる。
【0062】
上述した実施形態において、注目画素と注目画素の左側の画素との階調差Δ1と、注目画素と注目画素の右側の画素との階調差Δ2とが同じであった場合、階調差Δ2>階調差Δ1の場合と同様に補正処理を行うようにしてもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、注目画素と、注目画素に対して走査線112が伸びる方向に隣り合う画素との階調差に基づいて、注目画素に対して走査線112が伸びる方向に隣り合う画素及び注目画素の階調値の補正を行なっているが、補正を行う画素は、これらの画素に限定されるものではなく、例えば、データ線114が伸びる方向に隣り合う画素についても、階調値を補正するようにしてもよい。また、注目画素に対して走査線112が伸びる方向に隣り合う画素についての階調値の補正処理と、注目画素に対してデータ線114が伸びる方向に隣り合う画素についての階調値の補正処理とを組み合わせてもよい。
例えば、α=0.5、β=0.2であり、画素の階調値が図9の(a)に示した状態であって、(1)の画素を注目画素とした場合、(1)と(2)の画素との階調差と、(1)と(4)の画素との階調差を演算し、階調値の補正を行う。ここでは、(1)と(2)の画素とは階調値が同じであり、(1)と(4)の画素とは階調差が最低階調差ΔN以上の場合、(1)と(4)の画素との階調差に基づいて補正が行われる。具体的には、階調差Δ=250−130=120であるため、ΔRE1=60、ΔRE2=24となる。低階調側の(1)の画素の補正後の階調は、(1)の画素の画素値+ΔRE2であるため、(1)の補正後の画素値は、130+24=154となる。
【0064】
また、注目画素を(4)の画素とした場合、(4)と(1)の画素との階調差は120であり、(4)と(5)の画素との階調差は70である。このため、ΔRE1=70×(1−0.5)=35となり、高階調側の(4)の画素の補正後の階調は、(4)の画素の画素値−ΔRE1であるため215となる。
また、注目画素を(5)の画素とした場合、(5)と(2)の画素との階調差は50であり、(5)と(6)の画素との階調差は50であり、(5)と(8)の画素との階調差は70である。このため、ΔRE1=50×(1−0.5)=25、ΔRE2=50×0.2=10となる。高階調側の(5)の画素の補正後の階調は、(5)の画素の画素値−ΔRE1=155となり、低階調側の(6)の画素の補正後の階調は、(6)の画素値+ΔRE2=140となる。
【0065】
上述した実施形態においては、注目画素と、注目画素の右隣りの画素について階調値の補正を行なっているが、例えば、液晶の明視方向が上述の実施形態と反対方向である場合、注目画素と、注目画素の左隣りの画素について階調値の補正を行うようにしてもよい。
【0066】
上記の動作説明においては、画素110aの階調>画素110bの階調>画素110cとなっているが、補正がなされるのは、この場合に限定されるものではない。例えば、補正前の画素110a〜画素110cの階調の関係が、図10の(a)に示したように、画素110bの階調>画素110aの階調>画素110cの階調、という関係にあり、画素110aと画素110bとの間の階調差が画素110bと画素110cとの間の階調差より小さい場合でも、各画素の階調の補正をするようにしてもよい。この場合、補正後の各画素の階調は、図10の(b)に示したようになる。ここで、補正後においても、画素110bの階調>画素110aの階調>画素110cの階調となり、画素110aと画素110bとの間の階調差が画素110bと画素110cとの間の階調差より小さいという関係が保たれる。
また、補正前の画素110a〜画素110cの階調の関係が、図11の(a)に示したように、画素110bの階調>画素110cの階調>画素110aの階調、という関係にあり、画素110bと画素110cとの間の階調差が画素110aと画素110bとの間の階調差より小さい場合でも、各画素の階調の補正をするようにしてもよい。この場合、補正後の各画素の階調は、図11の(b)に示したようになる。ここで、補正後においても、画素110bの階調>画素110cの階調>画素110bの階調となり、画素110bと画素110cとの間の階調差が画素110aと画素110bとの間の階調差より小さいという関係が保たれる。
また、補正前の画素110a〜画素110cの階調の関係が、画素110aの階調<画素110bの階調<画素110cの階調、という関係にある場合にも画素の階調の補正を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…電気光学装置、10…タイミング制御回路、20…画像処理回路、21…フレームメモリー、22…境界検出部、23…階調差演算部、24…補正値演算部、25…補正部、100…液晶パネル、105…液晶、108…コモン電極、110…画素、112…走査線、114…データ線、115…容量線、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、125…補助容量、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、2100…プロジェクター、2102…ランプユニット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイックプリズム、2114…レンズユニット、2120…スクリーン、2121…リレーレンズ系、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ
図1
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図11