特許第6051602号(P6051602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000007
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000008
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000009
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000010
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000011
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000012
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000013
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000014
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000015
  • 特許6051602-空気入りタイヤ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051602
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   B60C11/12 A
   B60C11/12 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-128351(P2012-128351)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-252750(P2013-252750A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平間 充
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−314758(JP,A)
【文献】 特開2012−025380(JP,A)
【文献】 特開2011−255878(JP,A)
【文献】 特許第4894968(JP,B2)
【文献】 特開平05−058118(JP,A)
【文献】 特開平11−151915(JP,A)
【文献】 特開平10−052824(JP,A)
【文献】 特開2012−041035(JP,A)
【文献】 特開2005−153870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により複数のブロックを区画し、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、各サイプ内で対面する一対の壁面の一方に凸部を形成し、該一対の壁面の他方に前記凸部と噛み合う凹部を形成すると共に、少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%未満となる踏面側領域に含まれるように配置し、かつ前記踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置し、前記少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%以上となる底側領域に含まれるように配置し、かつ前記底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記凸部の最大高さを0.5mm〜2.5mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凸部の最大高さを前記サイプの溝幅よりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
各ブロックにおいて前記踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
各ブロックにおいて前記底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凸部及び前記凹部を有するサイプを前記周方向溝に対して連通させたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記凸部及び前記凹部を有するサイプを前記ブロックの幅方向中央側に位置する本体部分と前記周方向溝に連通する連通部分とから構成し、前記凸部及び前記凹部を前記連通部分に局所的に配置すると共に、前記本体部分はサイプ長さ方向に沿って振幅を持つ2次元形状をなしてサイプ深さ方向にもタイヤ径方向に対する傾斜方向が変化する3次元構造を有し、前記連通部分は前記凸部及び前記凹部を除いた領域においてサイプ長さ方向に沿って直線状をなしてサイプ深さ方向に沿って直線状をなす平面構造を有することを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に多数のサイプを設けた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、氷上性能をより効果的に改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤに代表される冬用の空気入りタイヤにおいては、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とが形成され、これら周方向溝及び横溝により複数のブロックが区画され、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプが形成されている。このようにトレッド部に多数のサイプを配することにより、氷表面の水膜を除去し、氷上性能を向上する手法が知られている。一般に、氷上性能を更に向上するためにサイプ本数を増やしてサイプ密度を高めると、ブロック剛性が低下してドライ路面での操縦安定性が低下する傾向がある。
【0003】
これに対して、各サイプ内で対面する一対の壁面の一方に凸部を形成し、該一対の壁面の他方に凸部と噛み合う凹部を形成し、これら凸部と凹部との噛み合いによりブロックの倒れ込みを規制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述のように各サイプ内で対面する一対の壁面に凸部と凹部を設けるようにしても、ブロックの倒れ込みを必ずしも十分に抑えることができず、ブロックの倒れ込みに起因する接地面積の大幅な減少により氷上での制動性能や駆動性能を十分に確保することができないのが現状である。そのため、ブロックの倒れ込みを効果的に防止して氷上性能を更に改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−58118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、氷上性能をより効果的に改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により複数のブロックを区画し、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、各サイプ内で対面する一対の壁面の一方に凸部を形成し、該一対の壁面の他方に前記凸部と噛み合う凹部を形成すると共に、少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%未満となる踏面側領域に含まれるように配置し、かつ前記踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置し、前記少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%以上となる底側領域に含まれるように配置し、かつ前記底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、サイプ内の一対の壁面に互いに噛み合う凸部及び凹部を設けた構造について鋭意研究を重ねた結果、ブロックの周方向端部に位置するサイプの踏面側領域に凸部を配置し、その踏面側領域に配置された凸部をブロック外側に向かって突き出すように配置した場合、制動時及び駆動時に路面から加えられる外力に対してブロックが倒れ込みを生じ難くなり、接地面積を十分に確保することが可能であることを知見し、本発明に至ったのである。
【0009】
即ち、本発明では、各サイプ内で対面する一対の壁面の一方に凸部を形成し、該一対の壁面の他方に凸部と噛み合う凹部を形成すると共に、少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%未満となる踏面側領域に含まれるように配置し、かつ踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置することにより、ブロックの倒れ込みを効果的に抑えて接地面積を十分に確保し、その結果として、氷上性能をより効果的に改善することができる。
【0010】
本発明において、凸部の最大高さは0.5mm〜2.5mmとすることが好ましい。これにより、離型性を損なうことなく氷上性能を改善することができる。特に、凸部の最大高さをサイプの溝幅よりも大きくすることが好ましい。これにより、凸部と凹部との噛み合いを促進し、氷上性能の改善効果を高めることができる。
【0011】
各ブロックにおいて踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置することが好ましい。つまり、ブロックの周方向端部に位置するサイプのみならずブロック全体において踏面側領域に配置された凸部の70%以上をブロック外側に向かって突き出すように配置することにより、氷上性能の改善効果を高めることができる。
【0012】
また、少なくともブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて、少なくとも一部の凸部をその最大高さ位置がサイプ最大深さの50%以上となる底側領域に含まれるように配置し、かつ底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置することが好ましい。サイプの底側領域に配置された凸部及び凹部も氷上性能の向上に寄与するが、摩耗時にはブロック剛性が高くなる傾向があるため、サイプの底側領域に配置された凸部をブロック内側に向かって突き出すように配置することにより、摩耗時におけるブロック剛性の過度の増大を抑えることができる。これにより、摩耗時の氷上性能を改善することができる。
【0013】
各ブロックにおいて底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置することが好ましい。つまり、ブロックの周方向端部に位置するサイプのみならずブロック全体において底側領域に配置された凸部の70%以上をブロック内側に向かって突き出すように配置することにより、摩耗時の氷上性能の改善効果を高めることができる。
【0014】
凸部及び凹部を有するサイプは周方向溝に対して連通させることが好ましい。これにより、周方向溝とサイプとの間の水の流れが良好になり、水膜の除去効果が改善されるので、良好な氷上性能と良好なウエット性能を発揮することが可能になる。しかも、サイプが凸部及び凹部を有しているので、そのサイプを周方向溝に対して連通させてもブロックに倒れ込みを生じ難いという利点がある。
【0015】
また、凸部及び凹部を有するサイプをブロックの幅方向中央側に位置する本体部分と周方向溝に連通する連通部分とから構成し、凸部及び凹部を連通部分に局所的に配置すると共に、本体部分はサイプ長さ方向に沿って振幅を持つ2次元形状をなしてサイプ深さ方向にもタイヤ径方向に対する傾斜方向が変化する3次元構造を有し、連通部分は凸部及び凹部を除いた領域においてサイプ長さ方向に沿って直線状をなしてサイプ深さ方向に沿って直線状をなす平面構造を有することが好ましい。これにより、サイプの本体部分に基づいて高いブロック剛性を維持すると同時に、サイプの連通部分においては良好な排水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの一例を示す展開図である。
図3】本発明の空気入りタイヤにおける代表的なブロックを示す平面図である。
図4図3のブロックの側面図である。
図5図3のV−V矢視断面図である。
図6図3のVI−VI矢視断面図である。
図7】従来の空気入りタイヤにおけるブロックの挙動を示し、(a)はブロックにタイヤ周方向の外力Fが掛かった状態を示す側面図であり、(b)はその際の接地領域を示す平面図である。
図8】本発明の空気入りタイヤにおけるブロックの挙動を示し、(a)はブロックにタイヤ周方向の外力Fが掛かった状態を示す側面図であり、(b)はその際の接地領域を示す平面図である。
図9】本発明の空気入りタイヤにおけるブロックの変形例を示す平面図である。
図10図9のブロックの側面図である。
図11図9のXI−XI矢視断面図である。
図12図9のXII −XII 矢視断面図である。
図13図11のXIII−XIII矢視断面図である。
図14図11のXIV −XIV 矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0019】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層4の補強コードとしては、一般には有機繊維コードが使用されるが、スチールコードを使用しても良い。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0020】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8を配置されている。ベルトカバー層8は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層8はベルト層7の幅方向の全域を覆うように配置しても良く、或いは、ベルト層7の幅方向外側のエッジ部のみを覆うように配置しても良い。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0021】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0022】
図2に示すように、トレッド部1にはタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝11,12及びタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝13,14が形成されている。これら周方向溝11,12及び横溝13,14によりトレッド部1には複数のブロック15が区画されている。そして、ブロック15の各々にはタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ20が形成されている。
【0023】
ここで、周方向溝11は溝幅が相対的に広い主溝であるが、周方向溝12は周方向溝11よりも溝幅が狭い補助溝である。周方向溝11,12の踏面での溝幅は任意に選択することが可能であるが、排水性と操縦安定性を確保するために2mm〜20mmの範囲、より好ましくは、5mm〜15mmの範囲に設定すると良い。周方向溝11,12の溝幅が狭過ぎると排水性が不十分になり、逆に広過ぎると操縦安定性が不十分になる。一方、横溝13はショルダー端からタイヤ赤道に向かって延長し、最もタイヤ赤道寄りの周方向溝11を超えてトレッド部1の中央に位置するブロック15の内部で終端するものと、最もタイヤ赤道寄りの周方向溝11の手前で終端するものとがタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。また、横溝14はトレッド部1の中央に位置するブロック15を区画するものである。
【0024】
図3及び図4は本発明の空気入りタイヤにおける代表的なブロックを示すものであり、図5及び図6はそのブロックに形成されたサイプを示すものである。なお、図3及び図4において、Cはタイヤ周方向を示す。
【0025】
図3図6に示すように、各サイプ20内で対面する一対の壁面21,22の一方には凸部23が形成され、該一対の壁面21,22の他方には凸部23と噛み合う凹部24が形成されている。凸部23及び凹部24の形状は特に限定されるものではないが、例えば、半球形状にすることが好ましい。サイプ20の最大深さdは周方向溝11の深さDの50%以上、より好ましくは、50%〜100%の範囲に設定されている。そして、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、少なくとも一部の凸部23はその最大高さ位置(例えば、頂点位置)がサイプ20の最大深さdの50%未満となる踏面側領域Aに含まれるように配置されている。図5においては、サイプ20の深さ方向に沿って複数の凸部23が配置され、そのうちの踏面側に位置する凸部23が上記の如く規定された踏面側領域Aに配置されている。しかも、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、踏面側領域Aに配置された凸部23の70%以上がブロック15の外側に向かって突き出すように配置されている。ここで、凸部23がブロック15の外側に向かって突き出すとは、凸部23がブロック15の周方向中央側とは反対方向に向かって突き出した状態を意味する。
【0026】
上述のように構成される空気入りタイヤでは、各サイプ20内で対面する一対の壁面21,22の一方に凸部23を形成し、該一対の壁面21,22の他方に凸部23と噛み合う凹部24を形成するにあたって、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、少なくとも一部の凸部23をその最大高さ位置がサイプ最大深さdの50%未満となる踏面側領域Aに含まれるように配置し、かつ踏面側領域Aに配置された凸部23の70%以上をブロック15の外側に向かって突き出すように配置しているので、ブロック15の倒れ込みを効果的に抑えて接地面積を十分に確保し、その結果として、氷上性能をより効果的に改善することができる。
【0027】
図7は従来の空気入りタイヤにおけるブロックの挙動を示し、図8は本発明の空気入りタイヤにおけるブロックの挙動を示すものである。図7(a)に示すように、サイプ20の壁面に凸部23及び凹部24が形成されていない場合、制動時又は駆動時においてブロック15にタイヤ周方向の外力Fが掛かったとき、図7(b)に示すように、ブロック15が倒れ込んで接地領域X(斜線部)の面積が大幅に減少する。これに対して、図8(a)に示すように、サイプ20の壁面に凸部23及び凹部24を設け、踏面側領域Aに含まれる凸部23をブロック15の外側に向かって突き出すように配置した場合、制動時又は駆動時においてブロック15にタイヤ周方向の外力Fが掛かったとき、図8(b)に示すように、ブロック15の倒れ込みを抑えて接地領域X(斜線部)の面積を十分に確保することができる。なお、踏面側領域Aに含まれる凸部23をブロック15の内側に向かって突き出すように配置した場合もブロック15の倒れ込みを抑制する効果が得られるが、踏面側領域Aに含まれる凸部23をブロック15の外側に向かって突き出すように配置した場合よりもブロック15の倒れ込み抑制する効果が小さくなる。
【0028】
上記空気入りタイヤでは、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、踏面側領域Aに配置される全ての凸部23がブロック15の外側に向かって突き出すように配置されることが望ましいが、その逆向きとなるものを30%未満の割合で許容することができる。逆向きとなる凸部23が30%以上になると氷上性能の改善効果が低下する。
【0029】
また、上記空気入りタイヤでは、各ブロック15において踏面側領域Aに配置された凸部23の70%以上がブロック15の外側に向かって突き出すように配置されている。このようにブロック15の周方向端部に位置するサイプ20のみならずブロック15に形成された全てのサイプ20において踏面側領域Aに配置された凸部の70%以上をブロック15の外側に向かって突き出すように配置することにより、氷上性能の改善効果を高めることができる。
【0030】
更に、上記空気入りタイヤでは、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、少なくとも一部の凸部23はその最大高さ位置がサイプ20の最大深さdの50%以上となる底側領域Bに含まれるように配置されている。図5においては、サイプ20の深さ方向に沿って複数の凸部23が配置され、そのうちの底側に位置する凸部23が上記の如く規定された底側領域Bに配置されている。しかも、少なくともブロック15の周方向端部に位置するサイプ20において、底側領域Bに配置された凸部23の70%以上はブロック15の内側に向かって突き出すように配置されている。ここで、凸部23がブロック15の内側に向かって突き出すとは、凸部23がブロック15の周方向中央側に向かって突き出した状態を意味する。
【0031】
サイプ20の底側領域Bに配置された凸部23及び凹部24も氷上性能の向上に寄与するが、摩耗時にはブロック15の剛性が高くなる傾向があるため、サイプ20の底側領域Bに配置された凸部23をブロック15の内側に向かって突き出すように配置することにより、摩耗時にブロック15の剛性が過度に増大するのを抑えることができる。これにより、摩耗時の氷上性能を改善することができる。
【0032】
また、上記空気入りタイヤでは、各ブロック15において底側領域Bに配置された凸部23の70%以上がブロック15の内側に向かって突き出すように配置されている。このようにブロック15の周方向端部に位置するサイプ20のみならずブロック15に形成された全てのサイプ20において底側領域Bに配置された凸部23の70%以上をブロック15の内側に向かって突き出すように配置することにより、摩耗時の氷上性能の改善効果を高めることができる。
【0033】
上記空気入りタイヤにおいて、凸部23の最大高さhは0.5mm〜2.5mmの範囲、より好ましくは、0.5mm〜1.5mmの範囲に設定されている。これにより、離型性を損なうことなく氷上性能を改善することができる。凸部23の最大高さhが0.5mm未満であると氷上性能の改善効果が低下し、逆に2.5mmを超えると離型性が阻害される。特に、凸部23の最大高さhはサイプ20の溝幅gよりも大きくするのが良い。これにより、凸部23と凹部24との噛み合いを促進し、氷上性能の改善効果を高めることができる。なお、サイプ20の溝幅gはエッジ効果を有効に働かせるために0.3mm〜1.5mmとするのが良い。
【0034】
上記空気入りタイヤにおいては、凸部23及び凹部24を有するサイプ20は周方向溝11に対して連通させているので、周方向溝11とサイプ20との間の水の流れが良好になり、水膜の除去効果を改善し、良好な氷上性能と良好なウエット性能を発揮することができる。しかも、サイプ20が凸部23及び凹部24を有しているので、そのサイプ20を周方向溝11に対して連通させてもブロック15に倒れ込みを生じ難い。なお、サイプ20には必要に応じて底上げ部を設けることが可能である。
【0035】
図9及び図10は本発明の空気入りタイヤにおけるブロックの変形例を示すものであり、図11図14はそのブロックに形成されたサイプを示すものである。なお、図9図14において、図1図6と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0036】
図9図14において、凸部23及び凹部24を有するサイプ20はブロック15の幅方向中央側に位置する本体部分20Aと周方向溝11に連通する連通部分20Bとから構成されている。そして、凸部23及び凹部24は連通部分20Bに局所的に配置されている。また、本体部分20Aはサイプ長さ方向に沿って振幅を持つ2次元形状をなしてサイプ深さ方向にもタイヤ径方向に対する傾斜方向が変化する3次元構造を有している。一方、連通部分20Bは凸部23及び凹部24を除いた領域ではサイプ長さ方向に沿って直線状をなしてサイプ深さ方向に沿って直線状をなす平面構造を有している。この場合、サイプ20の本体部分20Aに基づいて高いブロック剛性を維持すると同時に、サイプ20の連通部分20Bにおいては良好な排水性を確保することができる。
【0037】
上述のように3次元構造を有する本体部分20Aと平面構造を有する連通部分20Bとからなるサイプ20を備えた空気入りタイヤにおいても、前述した実施形態と同様に、凸部23及び凹部24の配向形態に基づいて氷上性能をより効果的に改善することが可能である。
【実施例】
【0038】
タイヤサイズ195/65R15で、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により複数のブロックを区画すると共に、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、各サイプ内で対面する一対の壁面の一方に複数の凸部を形成し、該一対の壁面の他方に凸部と噛み合う複数の凹部を形成し、凸部をサイプ最大深さの50%未満となる踏面側領域A又はサイプ最大深さの50%以上となる底側領域Bに配置し、これら凸部の向きを表1のように設定した参考例1〜3、実施例1,2及び比較例1,2のタイヤを製作した。
【0039】
比較例1のタイヤは、凸部を底側領域Bのみに配置したものである。比較例2及び参考例1,2のタイヤは、凸部を踏面側領域Aのみに配置したものである。参考例3及び実施例1,2のタイヤは、凸部を踏面側領域A及び底側領域Bの両方に配置したものである。
【0040】
凸部の向きについては、ブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて踏面側領域A内の凸部がブロック外側に向かって突き出すように配置される比率(端部サイプの踏面側領域Aでの外向き比率)と、ブロックの周方向端部に位置するサイプにおいて底側領域B内の凸部がブロック内側に向かって突き出すように配置される比率(端部サイプの底側領域Bでの内向き比率)と、ブロックの全サイプにおいて踏面側領域A内の凸部がブロック外側に向かって突き出すように配置される比率(全サイプの踏面側領域Aでの外向き比率)と、ブロックの全サイプにおいて底側領域B内の凸部がブロック内側に向かって突き出すように配置される比率(全サイプの底側領域Bでの内向き比率)とを規定した。
【0041】
比較のため、サイプの壁面に凸部及び凹部を設けていない従来例のタイヤを用意した。従来例、参考例1〜3、実施例1,2及び比較例1,2において、周方向溝の深さを8.9mmとする一方で、サイプの最大深さは7mmとした。また、サイプの溝幅を0.4mmとする一方で、凸部の最大高さは1mmとした。
【0042】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、新品時及び50%摩耗時における氷上制動性能を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0043】
氷上制動性能:
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧210kPaの条件にて、氷上において速度40km/hの走行状態からブレーキを掛けて完全に停止するまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど氷上制動性能が優れていることを意味する。このような評価を試験タイヤの新品時及び50%摩耗時においてそれぞれ実施した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から判るように、参考例1〜3、実施例1,2のタイヤは、従来例との対比において、新品時における氷上制動性能が大幅に改善されていた。特に、実施例1,2のタイヤでは新品時のみならず50%摩耗時における氷上制動性能も大幅に改善されていた。一方、比較例1のタイヤは、凸部が底側領域Bだけに配置されているため、新品時における氷上制動性能を改善する効果が不十分であった。比較例2のタイヤは、凸部が踏面側領域Aに配置されているものの、これら凸部の外向き配向が不十分であるため、新品時における氷上制動性能を改善する効果が不十分であった。
【符号の説明】
【0046】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
11,12 周方向溝
13,14 横溝
15 ブロック
20 サイプ
20A 本体部分
20B 連通部分
21,22 壁面
23 凸部
24 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14