特許第6051702号(P6051702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6051702希土類金属特異的ペプチド、希土類金属分離回収材、希土類金属の分離回収方法、及び、希土類金属の相互分離回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051702
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】希土類金属特異的ペプチド、希土類金属分離回収材、希土類金属の分離回収方法、及び、希土類金属の相互分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20161219BHJP
   C22B 59/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C07K14/00ZNA
   C22B59/00
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-196470(P2012-196470)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51449(P2014-51449A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】榎原 真二
(72)【発明者】
【氏名】伊勢崎 由佳
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/115273(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0228622(US,A1)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,2011年,Vol.133,p.808-819
【文献】 ChemBioChem,2003年,Vol.4,p.272-276
【文献】 Analytical Biochemistry,2012年,Vol.422,p.52-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(イ)又は(ロ)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(イ)配列番号21又は22の配列番号のアミノ酸配列
(ロ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
【請求項2】
請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材。
【請求項3】
請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる接触工程と、
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を回収する回収工程を有する希土類金属の分離回収方法。
【請求項4】
前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている請求項に記載の希土類金属の分離回収方法。
【請求項5】
前記酸が、酢酸又は硝酸である請求項3又は4に記載の希土類金属の分離回収方法。
【請求項6】
前記酸の濃度が、10〜1000mMである請求項3〜5の何れか一項に記載の希土類金属の分離回収方法。
【請求項7】
請求項1に記載の希土類金属特異的ペプチドと複数種の希土類金属元素を含有する検体とを接触させる接触工程と、
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を結合親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を元素ごとに回収する回収工程を有する希土類金属の相互分離回収方法。
【請求項8】
前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている請求項に記載の希土類金属の相互分離回収方法。
【請求項9】
前記有機酸の濃度が、10〜1000mMである請求項7又は8の何れか一項に記載の希土類金属の相互分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属特異的ペプチド、希土類金属分離回収材、希土類金属の分離回収方法、及び、希土類金属の相互分離回収方法に関するものである。詳細には、希土類金属に特異的に結合することが可能な希土類金属特異的ペプチド、当該希土類金属特異的ペプチドを固定化した希土類金属分離回収材、及び当該希土類金属特異的ペプチド及び希土類金属分離回収材を利用した希土類金属の分離回収方法、及び希土類金属の相互分離回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
希土類金属(以下、「レアアース」と称する場合がある)は、ランタン(原子番号57)からルテチウム(原子番号71)までの15元素のランタノイド、及びスカンジウム(原子番号21)、イットリウム(原子番号39)を加えた17元素の総称である。希土類金属の多くは優れた物理的性質等を有しており、永久磁石、二次電池、自動車の排気ガス浄化用触媒、コンピュータをはじめとする情報通信機器等の工業生産品の材料として、あるいはエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料として、幅広く使用されている。現状では希土類金属はその産出地域が限られている等の資源の偏在性より、安定した資源確保が重要な課題となっている。仮に希土類金属の調達環境が悪化すれば、前記工業生産品の製造に大きな支障を来たすことが予想される。そのため、例えば永久磁石の加工時に発生する磁石粉末や情報通信機器などの廃棄物から希土類金属を回収してリサイクルする技術の確立が強く要望されている。
【0003】
希土類金属の回収や精製対象となる廃棄物資源には、カルシウム、マグネシウム、シリコン、ニッケル、コバルト等の非希土類金属が含まれることがある。これらの共存金属を除去するため、一般には沈殿剤を用いた分別や有機溶媒を用いた液液抽出が行われてきた。沈殿剤としては、従来、炭酸やシュウ酸が汎用されてきた。例えば、硫酸で希土類金属を溶解浸出し、得られた浸出液からシュウ酸塩沈殿法を用いて回収する方法(例えば、非特許文献1)が知られている。また、液液抽出を用いる方法としては、ニッケル水素電池からの希土類金属の分離回収方法が報告されている(例えば、特許文献1)。この方法は、ニッケル水素電池の正極活性物質及び負極活性物質を酸性水溶液での洗浄後、洗浄残渣を還元工程、硫酸水溶液による浸出工程、硫酸アルカリ又は水酸化アルカリによる複塩化工程、及び酸化中和工程の複数の工程を経て得られた希土類金属とコバルト、マンガン及び亜鉛の混合溶液を、リン酸系抽出剤を用いた液液抽出で分離するものである。
【0004】
しかしながら、非特許文献1等のように沈殿剤を用いる方法では、カルシウムやマグネシウムが共存する場合に溶解度積の関係から、これらの共存金属が希土類金属と共沈してしまうという問題点があった。また、特許文献1等のように液液抽出を用いる方法では、液液抽出に用いられるリン酸系抽出剤は多くの金属と錯体又は塩を形成するため、分離操作に時間がかかる上、有機溶媒を大量に使用することから環境負荷が大きいという問題点があった。これらの問題点は、従来の希土類金属の分離回収技術の実用化に際して、大きな障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−21484号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高橋徹他著「廃蛍光管からの希土類元素の分離回収(第1報)」北海道道立工業試験場報告 No.293 1994年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上記従来技術の問題点を解消した実用化可能な希土類金属の分離回収技術の提供を目的とする。つまり、煩雑な工程を経ることなく、容易に希土類金属のみを選択的に分離回収でき、かつ、環境負荷が小さく安全性の高い希土類金属の分離回収技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。詳細には、細胞内カルシムの結合に関与することが公知のタンパク質の構造単位の1つであるEFハンドより、カルシウムとの結合の中心部位となるαへリックスに挟まれたカルシウム結合ループ領域を切り出した。そして、かかるペプチドのうち一部の配列は、カルシウムに対する結合性を消失若しくは著しく低下するが、希土類金属に対する結合性を発揮し得る。そこで、このペプチドをβシート構造で挟むことにより希土類金属に対する特異的結合性が向上することを見出した。かかる知見に基づき、希土類金属特異的ペプチドを構築し、これを利用することにより、複数の金属塩混合溶液から非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収できることを見出した。さらに、鋭意研究を重ねた結果、希土類金属を元素ごとに相互に分離して回収できることをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、以下の〔1〕〜〔11〕に示す発明を提供する。
〔1〕タンパク質の立体構造単位EFハンドのカルシウム結合ループ領域の配列であって配列番号1のモチーフ配列を含む希土類金属結合配列と、前記希土類金属結合配列を挟んでβシート構造を形成するβシート構造形成配列を含み、希土類金属に特異的に結合する希土類金属特異的ペプチド。
〔2〕前記希土類金属結合配列が、以下の(i)〜(iii)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(i)配列番号2〜20の何れかの配列番号のアミノ酸配列
(ii)上記(i)のアミノ酸配列のうち、第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iii)上記(i)又は(ii)のアミノ酸配列の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列
〔3〕前記希土類金属結合配列が、以下の(イ)〜(ハ)の何れかのアミノ酸配列からなる希土類金属特異的ペプチド。
(イ)配列番号21又は22の配列番号のアミノ酸配列
(ロ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン及びグルタミン酸の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ハ)配列番号21又は22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列
【0010】
上記〔1〕の構成によれば、希土類金属のみに特異的に結合し、非希土類金属等の他の物質とは結合しないという性質を有する希土類金属特異的ペプチドを提供することができる。特に、βシート構造形成配列を付加して、βシート構造により希土類金属結合配列を挟み込んだことから、その結合特異性が向上している。そして、当該希土類金属特異的ペプチドの性質を利用することにより、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質から希土類金属のみを選択的に、容易かつ簡便に分離することができる。また、当該希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合は酸によって解離する可逆的な結合であることから、酸を用いることにより希土類金属のみを効率よく回収することができる。したがって、当該希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属の分離回収技術に応用可能な極めて実用性の高いペプチドである。
上記〔2〕〜〔3〕の構成によれば、希土類金属に対して高い特異的結合性を示す、実用性が特に高い希土類金属特異的ペプチドを提供することができる。
【0011】
〔4〕上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材。
【0012】
上記〔4〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材を提供することができる。当該希土類金属分離回収材は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、そして、この希土類金属との結合は酸により解離可能であるという性質を有する上記希土類金属特異的ペプチドを担持する。したがって、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質から希土類金属のみを効率よく、容易かつ簡便に分離回収するために使用することができる。そして、固相担体に固定化したことにより、特に希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、実用性が極めて高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
【0013】
〔5〕上記希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる接触工程と、前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を酸により解離させる工程と、前記解離工程で解離した前記希土類金属を回収する回収工程とを有する希土類金属の分離回収方法。
〔6〕前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている。
〔7〕前記酸が、酢酸又は硝酸である。
〔8〕前記酸の濃度が、10〜1000mMである。
【0014】
上記〔5〕〜〔8〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属の分離回収方法を提供することができる。当該希土類金属の分離回収方法は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、そして、この希土類金属との結合は酸により解離可能であるという性質を有する上記希土類金属特異的ペプチドを利用する。したがって、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質から希土類金属のみを効率よく、容易かつ簡便に分離回収することができる。つまり、金属塩混合溶液からの分離回収に好適に利用でき、しかも、煩雑な工程を必要としない。また、有機溶媒などの環境負荷の高い試薬を用いず環境に配慮した安全性の高い技術でもあり、また高価な試薬をも使用しないコストパフォーマンスにも優れた技術である。したがって、上記希土類金属特異的ペプチドを利用した当該希土類金属の分離回収方法は、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術である。
特に、上記〔6〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材を利用した希土類金属の分離回収方法を提供することができる。固相担体に固定化したことにより、特に非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、更に実用性の高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
【0015】
〔9〕上記希土類金属特異的ペプチドと複数種の希土類金属元素を含有する検体とを接触させる接触工程と、
前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属を結合させる結合工程と、
前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を結合親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程と、
前記解離工程で解離した前記希土類金属を元素ごとに回収する回収工程を有する希土類金属の相互分離回収方法。
〔10〕前記希土類金属特異的ペプチドが、固相担体に固定化されている。
〔11〕前記有機酸の濃度が、10〜1000mMである。
【0016】
上記〔9〕〜〔11〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属の相互分離回収方法を提供することができる。当該希土類金属の相互分離回収方法は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、そして、この希土類金属との結合が有機酸と競合するという性質を有する上記希土類金属特異的ペプチドを利用する。これにより、非希土類金属等の共存物質から希土類金属のみを効率よく、容易かつ簡便に分離回収することができると共に、希土類金属を元素ごとに相互分離して回収することができる。したがって、金属塩混合溶液からの元素ごとの希土類金属の分離回収に好適に利用でき、しかも、煩雑な工程を必要としない。つまり、上記希土類金属特異的ペプチドを利用した当該希土類金属の相互分離回収方法は、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術である。希土類金属を元素ごとに相互に分離回収できることから、特に希土類金属の再資源化を図る上で極めて実用価値の高い重要な技術となる。
特に、上記〔10〕の構成によれば、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化した希土類金属分離回収材を利用した希土類金属の相互分離回収方法を提供することができる。固相担体に固定化したことにより、特に非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、かつ、希土類金属の元素ごとの相互分離も容易かつ簡便となり、更に実用性の高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
【0017】
ここで、「希土類金属」としては、ランタノイドがある。ランタノイドは、元素周期表の原子番号57から71までの15種類の元素の総称であり、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)である。これらは、化学的性質が互いによく似ていることが知られている。そして、希土類金属としては、ランタノイドと同じ第3族に属する遷移元素のスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)をも含む。そして、ランタン(La)〜ネオジム(Nd)の原子量の小さい元素を軽希土類と、ユウロピウム(Eu)〜テルビウム(Tb)を中希土類、ジスプロシウム(Dy)〜ルテチウム(Lu)の原子量の大きな元素を重希土類と分類することもできる。特に、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ジスプロシウム及びネオジム等は、永久磁石の材料として重要である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、希土類金属特異的ペプチドSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)固定化カラムを用いて、単一金属溶液から希土類金属を分離回収可能であることを検討した結果を示すクロマトグラムであり、カラムに吸着した希土類金属の溶出は酢酸により行った(実施例2−B)。
図2図2は、希土類金属特異的ペプチドSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)固定化カラムを用いて、単一金属溶液から希土類金属を分離回収可能であることを検討した結果を示すクロマトグラムであり、カラムに吸着した希土類金属の溶出は硝酸により行った(実施例2−C)。
図3図3は、希土類金属特異的ペプチドSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)固定化カラムを用いて、希土類金属及び非土類金属の混合溶液から希土類金属のみを分離回収可能であることを検討した結果を示すクロマトグラムであり、カラムに吸着した希土類金属の溶出は酢酸により行った(実施例2−D)。
図4図4は、希土類金属特異的ペプチド固定化カラムを用いて、希土類金属の元素ごとの相互分離回収が可能であることを検討した結果を示すクロマトグラムであり、カラムに吸着した希土類金属の溶出は有機酸である酢酸により行った(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に詳細に説明する。
(本発明の希土類金属特異的ペプチド)
本発明の「希土類金属特異的ペプチド」は、希土類金属と特異的に結合する希土類金属結合配列を少なくとも1つ含んで構成される。希土類金属結合配列としては、EFハンドと称されるタンパク質の立体構造単位中のカルシウム結合ループ領域の配列を好適に利用することができる。ここで、EFハンドとは、カルシウム結合タンパク質に存在するタンパク質の立体構造単位であり、細胞内カルシムの結合に関与することが公知である。一般には、へリックス−ループ−へリックス構造からなり、詳細にはαへリックスとその間に挟まれたカルシウム結合ループ領域とからなる。そして、カルシウム結合ループ領域は、カルシウム結合に関与する12アミノ酸前後の配列からなり、その配列には一定の規則性があることが知られている。EFハンドからカルシウム結合ループ領域を切り出すとその立体構造を保てなくなり、カルシウムに対する結合性は失われるか、若しくは著しく低下する。一方で、一部の配列は、希土類金属への特異的結合性を示すようになることが知られていた。
【0020】
しかしながら、Marsden BJ.他著、“1H-NMR studies of synthetic peptide analogues of calcium-binding site III of rabbit skeletal troponin C: effect on the lanthanum affinity of the interchange of aspartic acid and asparagine residues at the metal ion coordinating positions.(ウサギ骨格筋カルシウム結合タンパク質トロポニンCのカルシム結合部位IIIの合成ペプチドアナログの1H−NMR研究:金属イオン配位部位におけるアスパラギン酸及びアスパラギン残基の互換のランタニウムアフィニティーに対する作用)”に記載される通り、EFハンドのカルシウム結合ループ領域だけでは解離定数が10-2 〜10-5 M程度と低いことも知られていた。そのため希土類金属への親和性を向上させるための手段が求められていた。そこで、本発明者らは、EFハンドから切り出したカルシウム結合ループ領域をβシート構造により挟むことにより、希土類金属への特異的結合性が向上するとの知見に基づき、本発明の希土類金属特異的ペプチドを構築したものである。
【0021】
希土類金属結合配列は、カルシウム結合ループ領域の配列を利用することができ、その配列情報は、既存のデータベースを利用することにより取得することができる。具体的には、ZXZXZXXXZXXZ(Z=アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、X=何れのアミノ酸でもよい:配列番号1)として示すモチーフ配列を有することが好ましい。つまり、上記モチーフ上の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸は、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(E)、又はグルタミン酸(Q)で構成され、その他の位置のアミノ酸は任意のアミノ酸から選択できることを意味している。また、カルシウム結合ループ領域は、上記モチーフの第6番目のアミノ酸がグリシン(G)、第8番目のアミノ酸にイソロイシン(I)がくることが多いことが知られているため、本発明の希土類金属結合配列もそのように構成することも好ましい。また、上記モチーフ配列としては、希土類金属への結合特性が低下若しくは消失しない限り、特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するものであってもよい。例えば、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加したものも含まれる。そして、アミノ酸の欠失、置換、又は付加は、上記モチーフ上の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸以外のアミノ酸に生じていることが好ましい。当業者はアミノ酸配列の改変に際して本発明のペプチドを保持する改変を容易に予測することができる。具体的には、例えばアミノ酸置換の場合には、その構造保持の観点から極性、電荷、親水性、若しくは疎水性等の点で置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。このような類似した性質のアミノ酸への置換は保守的置換として当業者には周知であり、ペプチドの機能が維持されるとして許容される。ただし、第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸においても、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(E)、又はグルタミン酸(Q)の中での他のアミノ酸への置換は許容される。そして、上記希土類金属結合配列は、10〜15のアミノ酸、特には12又は13のアミノ酸から構成されることが好ましい。
【0022】
ここで、好適な希土類金属結合配列を表1に示すが、これに限定するものではない。
【0023】
【表1】
【0024】
上記表1に示した希土類金属結合配列は、第1番目のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)である。第2番目のアミノ酸が、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、トレオニン(T)又はプロリン(P)である。第3番目のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)又はアスパラギン(N)である。第4番目のアミノ酸がアラニン(A)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)又はアスパラギン(N)である。第5番目のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)又はアスパラギン(N)である。第6番目のアミノ酸が、アラニン(A)又はグリシン(G)である。第7番目のアミノ酸が、トリプトファンである。第8番目のアミノ酸が、アスパラギン酸(D)、イソロイシン(I)又はプロリン(P)である。第9番目のアミノ酸が、グルタミン酸(E)である。第10番目のアミノ酸が、アラニン(A)又はグリシン(G)である。第11番目のアミノ酸は、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)又はアスパラギン(N)である。第12番目のアミノ酸は、グルタミン酸(E)である。このうち、第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸を、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(E)、又はグルタミン酸(Q)の何れかの他のアミノ酸に置換したものも本発明の範囲に含まれる。つまり、配列番号2のアミノ酸配列を例にとって説明すると、このアミノ酸配列の1番目のアミノ酸はアスパラギン酸(D)であるが、これをアスパラギン(N)、グルタミン(E)、又はグルタミン酸(Q)の何れかに置換することができる。また、希土類金属への特異的結合特性が低下若しくは消失しない限り、第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目以外のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するものも本発明の範囲に含まれる。上記でアミノ酸位置とアミノ酸残基の関係を列挙しているが、その関係を満たすように置換することが好ましいが、この限りではない。
【0025】
本発明の希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属結合配列の末端にβシート構造を形成可能なβシート構造形成配列を含む。βシート構造により希土類金属結合配列を挟むことにより、希土類金属結合配列の希土類金属への特異的結合性が向上する。
【0026】
このとき、βシート構造形成配列は、希土類金属結合配列の両端に形成されることが好ましい。これにより、両端に形成されたβシート構造形成配列同士が水素結合によりβシート構造を形成することができる。このように、希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属結合配列によるループ部分と、βシート構造形成配列によるβシート構造部分を有し、所謂βヘアピン構造をとることが好ましい。つまり、一次構造上で隣り合った2つのβシート構造形成配列が逆平行に配列し、希土類金属結合配列のループで繋がったものが例示される。また、希土類金属結合配列を2以上の複数個含む場合には、その間にβシート構造形成配列が位置するように連結することが好ましい。また、βシート構造形成配列は、それぞれ2以上のアミノ酸、2〜10のアミノ酸、特には4〜8のアミノ酸で構成することが好ましい。
【0027】
ここで、βシート構造とは、タンパク質の代表的な二次構造の1つである。平行または逆平行に配置された2本以上のポリペプチド鎖が、水素結合によって隣り合ったポリペプチド鎖同士で結びつき、安定した平面構造を形成したものである。多くのタンパク質の骨組みを構成していることが知られている。ポリペプチド鎖の方向が互いに同じものを平行βシート構造、反対方向のものを逆平行βシート構造と呼び、本発明においては、いずれの構造を形成する配列をも利用することができる。特には、逆平行βシート構造が好ましい。X線解析等の立体構造解析によりβシート構造は同定され、さらにアミノ酸残基の種類とβシート構造の相関関係についても明らかになっている。したがって、既存のデータベースを利用することにより、βシート構造を形成し得る配列の情報を得ることができる。
【0028】
具体的には、β炭素で分枝しているアミノ酸残基(例えば、バリン、イソロイシン、トレオニン)、芳香族アミノ酸残基(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)等を含むことが好ましい。一方、βシート構造を壊しやすいアミノ酸残基として知られている側鎖に電荷をもつアミノ酸残基(例えば、グルタミン酸、アルパラギン酸)、アミド型のアミノ酸残基(例えば、アスパラギン、グルタミン、リジン)、プロリン等を含まないか、含んでいてもβシート構造を壊さないように含めることが好ましい。例えば「SLAI・・・FAIN」、「VAAT・・・DVFI」を利用することができる。なお、「SLAI・・・FAIN」は、シュードモナス アルカリプロテアーゼ(PDBID:1KAP、442番〜445番と455番〜458番)に由来し、「VAAT・・・DVFI」は、ヒト インテグリン2αVβ3(PDBID:1JV2、280番〜283番と292番〜295番)に由来する配列である。
【0029】
ここで、好適な希土類金属特異的ペプチドを表2に示すが、これに限定するものではない。なお、表2中、二重下線部のアミノ酸配列(第8〜19番目のアミノ酸)は希土類金属結合配列に相当し、一重下線部のアミノ酸配列(第1〜4番目、及び第21〜24番目のアミノ酸)はβシート構造形成配列に相当し、その他のアミノ酸残基(第5〜7番目、及び第20番目のアミノ酸)はリンカーとして付加したアミノ酸残基に相当する。
【0030】
【表2】
【0031】
上述の希土類金属結合配列と同様、表2に示す希土類金属結合配列を含む希土類金属特異的ペプチドのβシート構造形成配列は、当該希土類金属結合配列の持つ希土類金属への特異的結合性を低下若しくは消失させない限り、特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。したがって、上記した希土類金属結合配列の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸に相当するアミノ酸以外に改変が生じている改変部位を有するものも本発明の範囲に含まれる。例えば、配列番号21、22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列をもつものが挙げられる。希土類金属結合配列及びβシート構造形成配列以外のリンカー部位のアミノ酸残基の改変は特に許容される。
【0032】
ただし、希土類金属結合配列であっても上記配列の第1番目、第3番目、第5番目、第9番目、第12番目のアミノ酸に相当するアミノ酸を、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(E)、又はグルタミン酸(Q)の何れかの他のアミノ酸に置換したものは許容される。例えば、配列番号21、22のアミノ酸配列のうち、第8番目、第10番目、第12番目、第16番目、第19番目の1若しくは数個のアミノ酸が、アスパラギン(D)、アスパラギン酸(N)、グルタミン(E)及びグルタミン酸(Q)の何れかの他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有するものも本発明の範囲に含まれる。
【0033】
また、本発明の希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属結合配列とβシート構造形成配列の間を適当なリンカーにより連結したものであってもよい。また、その後の固相担体への固定化等の便宜のため、当該ペプチドのアミノ酸配列のN末端、C末端、又は両端にタグ等を付加したものも好適に例示される。リンカー及びタグとしては、本発明の希土類金属特異的ペプチドの希土類金属への特異的結合性を低下若しくは消失させない限り、特に制限はない。例えば、1若しくは数個のアミノ酸からなるペプチドリンカーやタグペプチドが好ましい。更に、本発明の希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属との特異的結合性を低下若しくは消失させない限りにおいて、非天然型アミノ酸を含んで構成してもよい。例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質付加、酸化、メチル化、シスチニル化、スルホン化およびアセチル化によって生じた形態を含んでよい。さらに、希土類金属との特異的結合性を低下若しくは消失させない限りにおいて、当該希土類金属特異的ペプチドを適当な塩形態としてよい。
【0034】
本発明の希土類金属特異的ペプチドは、そのアミノ酸配列が開示されたことから、公知のペプチド合成技術を利用して合成することができる。例えば、液相合成法や固相合成法等の化学合成技術を利用することができる。例えば、適当に保護したアミノ酸を、各種縮合方法等により所望のアミノ酸配列を順次担体上で結合させていくことにより行うことができる。一般には、C末端からN末端に向かって合成され、C末端になるアミノ酸のαアミノ基以外のすべての官能基を保護したアミノ酸に、カルボキシ基以外のすべての官能基を保護したアミノ酸を縮合させペプチド結合を形成させる。次に、アミノ基を脱保護し、カルボキシル基以外のすべての官能基を保護したアミノ酸を縮合させ、N末端のアミノ酸に達するまで縮合反応を繰り返すことにより行うことができる。アミノ酸の保護は公知の技術により行うことができ、例えば、アミノ基の保護にはtert-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基を、カルボキシル基の保護にはメチルやエチル等の短鎖アルキル基、4−ニトロベンジル基を利用することができ、市販の各種保護アミノ酸を利用することもできる。縮合反応は、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド法、ジイソププロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類を好ましく使用できる。また、市販のペプチド自動合成装置等を利用することができる。また、天然に存在するポリペプチドから適当なぺプチダーゼを利用して切り出したペプチド断片を用いてもよい。例えば、カルシウム結合性を有するポリペプチドから、EFハンドのカルシウム結合ループ領域のペプチド断片を得てもよい。得られたペプチド断片同士を適当なリンカー等を用いて連結することによって、本発明の希土類金属特異的ペプチドを構築してもよい。
【0035】
以上のように構成される本発明の希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属のみに特異的に結合するという性質を有する。特に、βシート構造形成配列を付加して、βシート構造により希土類金属結合配列を挟み込んだことから、その結合特異性が向上している。したがって、非希土類金属等の他の物質とは結合しない。当該希土類金属特異的ペプチドの性質を利用することにより、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質から希土類金属のみを容易かつ簡便に分離することができる。また、この希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合は酸によって解離することができる可逆的な結合であることから、酸を用いることにより希土類金属を回収することができる。したがって、当該希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属の分離回収技術に応用可能な極めて実用性の高いペプチドである。
【0036】
(希土類金属分離回収材)
上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドは、固相担体に固定化して「希土類金属分離回収材」として構成することが好ましく、かかる「希土類金属分離回収材」も本発明の一部を成す。このように構成することにより、希土類金属の分離回収技術における利便性を向上させることができる。固相担体としては、任意の不溶性材料を利用でき、例えば、ガラス、シリカ、ベンナイト等の無機物質、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子物質、アガロース、デキストラン、セルロース、ポリサッカライド等の不溶性多糖、また、これらの組み合わせ等が例示されるが、これらに限定されるものではない。また、固相担体の形状についても、特に制限はなく、あらゆる形状のものを利用することができる。例えば、中空管状、球状、粒子状、棒状、シート状、板状、箱状等であってよい。したがって、カラム、磁気ビーズ、ナノビーズ、メンブラン、マクロプレート等の公知のいずれの形態をも利用することができる。特には、セルロース、セルロース誘導体やシリカ等の適当なクロマトグラフィー担体に固定化して、クロマトグラフィーカラムとすることが好ましい。
【0037】
ペプチドの固相担体への固定化の方法は、希土類金属特異的ペプチドの希土類金属に対する特異的結合性に影響を与えない限り、公知の何れの方法をも利用することができる。例えば、共有結合、物理的吸着、イオン結合を介して固定化する担体結合法を利用することができる。共有結合法としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法、カルボニル基とアミノ基の直接縮合法、ジスルフィド結合法等が例示できるが、これに限定されるものではない。そして、反応官能基としては、例えば、アミノ基とN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、イソチオシアン基、アルデヒド基との結合、スルフヒドリル基とマレイミド基、ブロモアセトアミド基、スルフヒドリル基との結合、アルデヒド基とヒドラジド基との結合が挙げられる。希土類金属特異的ペプチド分子内のアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、イミダゾール基等の反応性官能基を希土類金属に対する結合性に影響を与えない限りにおいて利用してもよい。また、適当な鎖長のリンカーを介してもよく、希土類金属特異的ペプチドに、分士内に反応性官能基を有する分子を付加してもよい。例えば、アミノ基を反応性官能基として利用するため希土類金属との結合には関与しないアミノ酸を付加してこれを固定化に利用してもよい。固相担体に関しても、固相担体を構成する分子が有する反応性官能基を用いても、また公知の技術を用いて担体に供与された反応性官能基を用いてもよい。また、2価以上の官能基を有する多官能性の架橋試薬で架橋固定する架橋法をも利用できる。架橋試薬としては、例えばグルタルアルデヒド、ジイソシアナート化合物、ビスジアゾベンジジン等が利用できる。そして、ビオチン−アビジン結合、抗原抗体反応等の生体分子の相互作用を利用することができる。さらに、アルギン酸,カラギーナン等の多糖類、導電性ポリマー、酸化還元ポリマー、光架橋性ポリマー等の網目構造をもつポリマー、透析膜等の半透性膜内に封入して固定化する包括法等をも利用することができる。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の希土類金属分離回収材において、希土類金属特異的ペプチドは固相担体に対して、1〜1000μmol/g程度固定化することが好ましい。
【0039】
以上のように構成される本発明の希土類金属分離回収材は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、また、この希土類金属との結合は酸により解離可能であるという性質を有する上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを担持する。したがって、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質から希土類金属のみを選択的、容易かつ簡便に分離回収するために使用することができる。そして、希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化したことにより、洗浄等の汎用手段により非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が、容易かつ簡便となり、利便性が向上する。したがって、実用性の特に高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
【0040】
(希土類金属の分離回収方法)
本発明の「希土類金属の分離回収方法」は、「本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる接触工程」と、「希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる結合工程」と、「結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を酸により解離させる解離工程」と、「解離工程で解離した希土類金属を回収する回収工程」を有して構成される。
【0041】
即ち、上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる。これにより、希土類金属と希土類金属特異的ペプチドが特異的に結合し、ペプチド−希土類金属複合体を形成する。本発明の希土類金属特異的ペプチドは、上記の通り、希土類金属以外の物質とは結合せず、希土類金属のみと特異的に結合することから、適当な手段により当該複合体以外の非結合物質を除去することにより、希土類金属のみを選択的に分離することができる。したがって、マグネシウム、カルシウム、クロム、ニッケル、コバルト等の非希土類金属からも選択的に分離することができる。ひいては、様々な金属の混合物からも希土類金属のみを選択的に分離することができる。続いて、結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を酸により解離させる。これにより、解離した希土類金属を回収することにより、希土類金属のみを選択的に分離回収することができるというものである。このように構成することにより、希土類金属を選択的かつ効率的に回収でき、そして煩雑な工程を経ることなく簡便かつ容易に回収することができる。
【0042】
本発明の希土類金属の分離回収方法が適用対象となる希土類金属を含有する検体は、希土類金属を含有する可能性のある試料であれば、特に制限ない。ここで、希土類金属が含有する可能性のある試料とは、希土類金属が含有していることが予め判明しているか、希土類金属が含有していると考えられる試料のことである。例えば、永久磁石の加工時に発生する磁石粉末、情報通信機器などの廃棄物などから集められた試料が挙げられる。そして、当該検体の態様は限定されるものではないが、好ましくは液体状の試料を使用する。そして、検体に含まれる希土類金属量についても特に制限はなく、様々な濃度で希土類金属が存在する検体にも適用することができる。また、固体状の試料に適用する場合には下記で説明する緩衝液等に必要に応じて溶解してもよい。
【0043】
希土類金属を含有する検体と希土類金属特異的ペプチドを接触させる接触工程、及び、それに続く希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる結合工程は、通常、室温で行われ、好ましくは10〜40℃で行う。また、ペプチドは加熱によっても変性することはないので、室温以上の温度であってもよい。また、接触及び結合時間も特に制限はなく、希土類金属を含有する検体及び希土類金属特異的ペプチドの量や種類に応じて適宜設定することができる。好ましくは、30秒〜1分程度である。しかしながら、希土類金属特異的ペプチドは、希土類金属と接触直後から結合するため短時間であっても結合率、及びその後の回収率が低下することはない。ただし、接触時間が長くしても、それにより希土類金属が解離する等の好ましくない状況は招かないため、厳密に時間を設定する必要性は特にない。
【0044】
希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の接触及び結合は、緩衝液等の溶液中で行うことが好ましい。緩衝液としては、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との結合に競合しない限り、適当な緩衝成分を含んで調製されたものを使用できる。好適な緩衝成分としては、MOPS、トリス酢酸、トリス塩酸等の汎用の緩衝成分を利用できる。ただし、リン酸塩のように多くの金属と錯体や塩を形成するものは緩衝成分として好ましくない。そして、緩衝液のpHは、好ましくは、pH5〜9、若しくpH5〜8の範囲に設定することが好ましく、pH7前後の中性領域が特に好ましい。また、緩衝成分の最終濃度についても、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を阻害しない限り、特に制限はない。更に、必要に応じて、各種添加物を添加してもよい。
【0045】
希土類金属と希土類金属特異的ペプチドの結合後、公知の手段を用いて、試料に含まれた非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質である非結合物質を除去する。例えば、非結合物質の除去は、希土類金属特異的ペプチドが適当な固相担体に固定化されている場合には、洗浄等によって簡便に行うことができる。このとき、固相担体への固定化は、上述希土類金属分離回収材の項で説明した方法で行うことができる。そして、固定化のタイミングは、上述の本発明の希土類金属分離回収材のように検体との接触に先立って行ってもよいし、また、希土類金属との結合後に行っても良い。
【0046】
上記の結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を酸により解離させる解離工程と、及び、それに続く、解離した希土類金属を回収する工程は、通常、室温で行われる。好ましくは10〜40℃で行い、室温以上の温度であってもよい。また、酸との接触時間も特に制限はなく、希土類金属を含有する検体及び希土類金属特異的ペプチドの量及び種類、酸の量、濃度及び種類に応じて適宜設定することができる。
【0047】
酸は無機酸及び有機酸の何れを使用することができるが、金属等と沈殿性の塩や錯体を形成しないものが好ましい。例えば、無機酸としては、硝酸、塩酸、臭化水素酸等を利用することができ、有機酸としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸等を利用することができる。有機酸としては、好ましくは、カルボン酸であるが、これに限定するものではない。特には、炭素数1〜4程度の短鎖モノ−又はジ−カルボン酸が好ましく、不飽和、飽和、直鎖、分枝の別は問わない。特には、汎用試薬で安価な、酢酸、硝酸、塩酸の利用が好ましい。
【0048】
そして、上記希土類金属が結合した希土類金属特異的ペプチドから希土類金属の酸による解離及び回収は、緩衝液等の溶液中で行ってもよいが、必須の成分ではない。緩衝液を使用する場合、緩衝液としては、酸による希土類金属特異的ペプチドからの希土類金属の解離を阻害せず、かつ上記酸と沈殿性の塩や錯体を形成しない限り、適当な緩衝成分を含んで調製されたものを使用できる。例えば、好適な緩衝成分としては、MOPS、トリス酢酸、トリス塩酸等の汎用の緩衝成分を利用できる。ここでも多くの金属と錯体や塩を形成するリン酸塩の使用は好ましくない。緩衝成分の最終濃度についても、酸による希土類金属特異的ペプチドからの希土類金属の解離を阻害せず、かつ上記酸と沈殿性の塩や錯体を形成しない限り、特に制限はない。必要に応じて、各種添加物を添加してもよい。そして、緩衝液のpHは、解離及び回収のための酸として無機酸を使用する場合には、酸との接触がpH4以下の酸性領域で行えるように設定することが好ましい。つまり、無機酸を利用する場合には酸性領域へのpHの調製は、解離において重要な要件となる。一方、解離及び回収のための酸として有機酸を使用する場合、特には下記で説明する希土類金属の相互分離回収を実施する場合には、酸との接触がpH4以上、特には中性領域で行えるように設定することが好ましい。また、酸の濃度は、酸の濃度は、10mM以上であることが好ましく、10〜1000mMの範囲に調整する。特には、100〜500mMの範囲に調整することが好ましい。
【0049】
そして、本発明の希土類金属の分離回収方法によれば、希土類金属はイオン形態で回収することもでき、容易に安定な塩形態に変換可能である。
【0050】
以上のように、本発明の希土類金属の分離回収方法は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、そして、この希土類金属との結合は酸により解離可能であるという性質を有する上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを利用することから、非希土類金属等の共存物質から希土類金属のみを効率よく、容易かつ簡便に分離回収することができる。したがって、金属塩混合溶液からの分離回収に好適に利用でき、しかも、煩雑な工程を必要としない。つまり、上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを利用した本発明の希土類金属の分離回収方法は、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術である。また、有機溶媒などの環境負荷の高い試薬を用いず環境に配慮した安全性の高い技術でもあり、また高価な試薬をも使用せずコストパフォーマンスの面からも優れた技術である。
【0051】
(希土類金属分離回収材を用いた希土類金属の分離回収方法)
好適な実施形態として、固相担体に上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを固定化した形態について説明する。希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との接触が、上述の本発明の希土類金属分離回収材と希土類金属を含有する検体を接触させることにより行なわれる点を除いては、上述の本発明の希土類金属の分離回収方法に準じて行うことができる。
【0052】
固相担体としては、適当なクロマトグラフィーカラムに充填した適当なクロマトグラフィー担体を使用することが好ましい。つまり、適当なクロマトグラフィー担体に本発明の希土類金属特異的ペプチドを固定化し、希土類金属分離回収材とすることができる。このとき、希土類金属特異的ペプチドはクロマトグラフィー担体に対して、1〜1000μmol/g程度固定化することが好ましい。そして、希土類金属分離回収材に希土類金属を含む可能性のある検体を接触させ、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる。これにより希土類金属がカラムに吸着する。続いて、カラムを適当な緩衝液で洗浄することにより、非結合物質を十分に洗い流す。次に、酸を添加して希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との結合を解離させることによりカラムに吸着した希土類金属を溶出させることができる。なお、カラムクロマトグラフィーを実施する際の移動相、洗浄溶液、溶出溶液及び送液条件等は、上記した希土類金属の分離回収方法の条件に適合する限り適宜設定することができ、下記の実施例の手順に従って行うこともできる。そして、クロマトグラフィーカラムの容量も適宜設定され、工業スケールの大容量のカラムを使用することができ、溶出後のカラムは再度希土類金属の分離回収に利用することができる。
【0053】
以上のように、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化したことにより金属塩混合溶液であっても非希土類金属等の共存物質からの分離が更に容易かつ簡便となり、希土類金属の分離回収技術の実用性を更に向上させることができる。
【0054】
(希土類金属の相互分離回収方法)
本発明の「希土類金属の相互分離回収方法」は、「本発明の希土類金属特異的ペプチドと複数種の希土類金属元素を含有する検体とを接触させる接触工程」と、「希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を結合させる結合工程」と、「結合工程で形成された希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を親和性の相違に従って順に有機酸により解離させる解離工程」と、「解離工程で解離した希土類金属を元素ごとに回収する回収工程」を有して構成される。このように構成することにより、本発明の希土類金属特異的ペプチドに対する結合親和性の相違に従って希土類金属を元素ごとに相互に分離して回収することができる。
【0055】
本発明の希土類金属の相互分離回収方法は、上述の本発明の希土類金属の分離回収方法と同様に、まず、上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属を含有する検体とを接触させる。これにより、希土類金属と希土類金属特異的ペプチドが特異的に結合し、ペプチド−希土類金属複合体を形成し、希土類金属のみを選択的に分離することができる。このとき、本発明の希土類金属の相互分離回収方法の適用対象となる希土類金属を含有する検体は、複数の希土類金属元素を含有する検体であり、複数種の希土類金属元素を含有する可能性のある試料である。そして、この限りにおいて、上述の希土類金属の分離回収方法にて説明した検体を適用することができる。また、接触工程、及び、それに続く結合工程の詳細条件についても、上述の希土類金属の分離回収方法に準じることができる。
【0056】
続いて、前記結合工程で形成された前記希土類金属特異的ペプチドと前記希土類金属の結合を有機酸により解離させる。有機酸は希土類金属イオンと錯体を形成するようになり、希土類金属は希土類金属特異的ペプチドから解離する。このとき希土類金属特異的ペプチドと有機酸との間で希土類金属イオンを奪い合う。そのため、解離速度には希土類金属元素ごとの希土類金属特異的ペプチドに対する親和性が反映され、希土類金属特異的ペプチドとの親和性が低い希土類金属元素は速く、一方、親和性の高い希土類金属元素は解離が遅くなる。このとき、有機酸の濃度は、希土類金属への結合に対して希土類金属特異的ペプチドと競合し得る濃度である限り特に制限はなく、またペプチドの内部配列に依存して設定される。概して、10〜1000mMに設定することが好ましく、特には、100mM以上であり、100〜500mMの範囲に設定することが好ましい。この範囲に設定することにより、軽希土類元素、重希土類元素、中希土類元素の順に解離する傾向が認められる。続いて、解離してきた希土類金属を順に回収することにより、希土類金属元素ごとに選択的に相互分離回収することができるというものである。
【0057】
なお、有機酸の使用に限定される点を除いては、解離工程、及び、それに続く回収工程の詳細条件は、上述の「希土類金属の分離回収方法」に準じることができる。
【0058】
ここで、本発明の希土類金属の相互分離回収方法においては、解離工程での無機酸の使用は好ましくない。上述の本発明の希土類金属の分離回収方法においては、無機酸の添加によっても希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の間の結合を解離することができる。しかしながら、かかる解離は、pH変化によるペプチドからの希土類金属イオンの脱離に基づくものである。具体的には、pHを4以下にすることで、希土類金属イオンと結合している希土類金属特異的ペプチドのカルボキシル基が負電荷を持たなくなり、プラスイオンである希土類金属イオンが脱離する。つまり、pHを変化させて希土類金属を回収する場合には、希土類金属特異的ペプチドがpH変化により希土類金属と結合する性質を失う。そのため、解離に希土類金属の元素ごとの希土類金属特異的ペプチドに対する親和性が反映され難いため、無機酸を希土類金属の元素ごとの相互分離のために使用することは好ましくない。
【0059】
以上のように、本発明の希土類金属の相互分離回収方法は、希土類金属に対する特異的結合性が向上し、そして、この希土類金属との結合が有機酸と競合するという性質を有する上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを利用する。これにより、非希土類金属等の共存物質から希土類金属のみを効率よく、容易かつ簡便に分離回収することができると共に、容易かつ簡便に希土類金属を元素ごとに相互分離して回収することができる。したがって、金属塩混合溶液からの元素ごとの希土類金属の分離回収に好適に利用でき、しかも、煩雑な工程を必要としない。つまり、上述の本発明の希土類金属特異的ペプチドを利用した本発明の希土類金属の相互分離回収方法は、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術である。なぜならば、希土類金属は化学的性質が非常に類似していることから、その元素ごとの相互分離は従来において非常に困難であり、また煩雑な工程を要していた。特に、希土類金属を元素ごとに相互に分離回収できる技術により、高純度の希土類金属を提供でき、廃棄物資源等からの希土類金属の再資源化を図る上で極めて実用価値の高い重要な技術となる。また、有機溶媒などの環境負荷の高い試薬を用いず環境に配慮した安全性の高い技術でもあり、また高価な試薬をも使用せずコストパフォーマンスの面からも優れた技術である。
【0060】
(希土類金属回収材を用いた希土類金属の相互分離回収方法)
好適な実施形態として、固相担体に希土類金属特異的ペプチドを固定化した形態について説明する。希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との接触が、上述の本発明の希土類金属分離回収材と希土類金属を含有する検体を接触させることにより行なわれる点を除いては、上述の希土類金属の相互分離回収方法に準じて行うことができる。固相担体としては、適当なクロマトグラフィーカラムに充填した適当なクロマトグラフィー担体を使用することが好ましい。クロマトグラフィー担体等の固相担体の種類や希土類金属特異的ペプチドの固定化密度、クロマトグラフィー条件等は、上述の「希土類金属分離回収材を用いた希土類金属の分離回収方法」に準じて設定することができる。
【0061】
このように構成することにより、クロマトグラフィー担体等の固相担体からの溶出速度の差によって容易かつ簡便に希土類金属を元素ごとに分離することができる。希土類金属特異的ペプチドと親和性の高い希土類金属元素は速く溶出される一方、希土類金属特異的ペプチドと親和性の高い希土類元素の溶出は遅くなる。したがって、希土類金属特異的ペプチドに対する結合親和性の差異に従って、希土類金属はカラムから順に脱離して溶出する。こうして希土類金属は元素ごとに相互分離する。そして、相互に分離した希土類金属元素ごとの画分を採取することにより、希土類金属を元素ごとに相互に分離して回収することができる。
【0062】
以上のように、上記希土類金属特異的ペプチドを固相担体に固定化したことにより、金属塩混合溶液であっても、非希土類金属等の希土類金属以外の共存物質からの分離が容易かつ簡便となり、かつ、希土類金属の元素ごとの相互分離も容易かつ簡便に行うことができる。このように、更に実用性の高い希土類金属の分離回収技術を提供することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは明確に理解されるべきである。
【0064】
(実施例1)希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属と非希土類金属の分離−1
本実施例において、希土類金属特異的ペプチドを利用することにより、希土類金属と非希土類金属の分離できるか否かを評価するに当たって、まず、希土類金属特異的ペプチドの各種希土類金属及び非希土類金属に対する結合性を検討した。なお、希土類金属特異的ペプチドとしてVAATAGIDTDNDGWIEGDEGDVFI(配列番号21)を用いた。このペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列からなる希土類金属結合配列とβシート構造形成配列を含んで構成されている。
【0065】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、評価の対象とした金属としては、希土類金属として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)であり、非希土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)である。そして、これらを1nM〜100μM濃度に調製した希土類金属溶液として用いた。
【0066】
1−2.希土類金属特異的ペプチド(VAATAGIDTDNDGWIEGDEGDVFI:配列番号21)の各金属に対する結合性の確認
上記ペプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を求めた。具体的には、各金属に対するペプチドのKd値は、まずテルビウムに対するKd値をテルビウムの蛍光を基に測定し、その後テルビウムとその他金属の競合試験によりその他の金属のKd値を求めた。テルビウムに対するKd値は、0.05μM〜0.1μMのペプチド存在下、テルビウム濃度を0.001μM〜100μMで共存させ、280nmの励起光照射時の543nmの蛍光強度を測定し、蛍光強度とテルビウム濃度の関係から算出した。次に、ペプチドおよびテルビウムを一定濃度(0.1μM〜2μM)存在下、各金属を0.001μM〜100μMで共存させ、280nmの励起光照射時の543nmの蛍光強度を測定し、蛍光強度と各金属濃度の関係から各金属のKd値を算出した。溶液の調製には、100 mM NaClを含む10 mM MOPS(pH7.0)を用いた。各金属溶液の調製には、各金属の塩化物を用いた。
【0067】
2.結果
結果を表3に示す。表3は、希土類金属特異的ペプチド(VAATAGIDTDNDGWIEGDEGDVFI:配列番号21)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。この結果から、上記ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、非希土類金属に対する結合性は示さなかった。上記ペプチドは、非希土類金属に対しては、その構築の基礎としたEFハンドに結合するカルシウムに対する結合性もが消失している。つまり、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることを確認した。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例1の結果から、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることが確認されたことから、上記ペプチドを利用することにより希土類金属のみを分離回収することができることが理解できる。そして、非希土類金属とは結合しないことから、非希土類金属を含む金属塩混合液からであっても、容易に非希土類金属と区別して希土類金属のみを分離回収するために上記ペプチドを利用することができることが判明した。
【0070】
(実施例2)
希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属と非希土類金属の分離−2。
本実施例においては、希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について評価した。なお、希土類金属特異的ペプチドとして、SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用いた。このペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列からなる希土類金属結合配列とβシート構造形成配列を含んで構成されている。
【0071】
(実施例2−A)
まず、ここでは、希土類金属特異的ペプチドを利用することにより、希土類金属と非希土類金属の分離できるか否かを評価するに当たって、まず、希土類金属特異的ペプチドの各種希土類金属及び非希土類金属に対する結合性を検討した。
【0072】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において評価の対象とした金属は実施例1と同じであり、希土類金属として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)であり、非希土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)である。実施例1と同様にして、金属塩溶液を調製した。
【0073】
1−2.希土類金属特異的ペプチドSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)の各金属に対する結合性の確認
実施例1と同様にして、上記ぺプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を算出した。
【0074】
2.結果
結果を表4に示す。表4は、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。実施例1と同様に、上記ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、非希土類金属に対する結合性は示さなかった。一方、上記ペプチドは、非希土類金属に対しては、その構築の基礎としたEFハンドに結合するカルシウムに対する結合性もが消失している。つまり、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることを確認した。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例1と同様、上記ペプチドは希土類金属に特異的に結合できる性質を有していることが確認されたことから、上記ペプチドを利用することにより希土類金属のみを分離回収することができることが理解できる。非希土類金属とは結合しないことから、非希土類金属を含む金属塩混合液からであっても、容易に非希土類金属と区別して希土類金属のみを分離回収するために上記ペプチドを利用することができることが判明した。上記ペプチドについて、以下の実施例において、実際の希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について評価した。
【0077】
(実施例2−B)
実施例2−Aにおいて、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)が希土類金属と特異的に結合することが確認されたことに続いて、ここでは、希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について、希土類金属と非希土類金属の単一金属溶液を調製し、希土類金属特異的な分離回収が可能か否かを評価した。
【0078】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象とした金属塩溶液としては、希土類金属溶液として、塩化ネオジム(NdCl3)、塩化プラセオジム(PrCl3)、塩化セリウム(CeCl3)水溶液を夫々調製し、また、非希土類金属塩溶液として、塩化コバルト(CoCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化クロム(CrCl3)水溶液を夫々調製した。
【0079】
1−2.希土類金属分離回収材の作製
希土類金属分離回収材として、希土類金属特異的ペプチドを固定化したカラムを作製した。ここでは、上記した通り、希土類金属特異的ペプチドとして、(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用いた。そして、カラム樹脂への固定化のため、上記ペプチドのC末端にリジン残基を付加したペプチドを化学合成により調製した。カラムに充填する樹脂としては、N−ヒドロキシスクシンイミド基を持つアガロース担体を利用し、上記ペプチドを固定化した。最終的には、1ml容量のカラムに5mgのペプチドを固定化した。樹脂当たりのペプチド濃度は、33μmol/gであった。
なお、比較として、上記ペプチドを固定化せずに不活性化した1ml容量のカラムを、未修飾カラムとして作製した(比較例)。
【0080】
1−3.希土類金属分離回収評価
上記1−2で作製したカラムをHPLCポンプに接続し、移動相として100mMのNaClを含む10mMのMOPS緩衝液(pH7.0)を流速1ml/minで送液した。続いて、上記1−1で調製した20mMの各種金属塩溶液を20μlずつ注入した。上記ペプチドに結合できない金属はカラムを素通りしていく。金属塩溶液の注入の3分後から移動相中の酢酸濃度を上昇させることにより、上記ペプチドに結合しカラムに吸着した金属を溶出した。各金属の検出は、吸光分光光度計により、各金属の極大吸収波長付近の吸光度を測定することにより行った。詳細には、コバルトは490nm、ニッケルは390nm、ネオジムは572nm、プラセオジムは440nm、セリウムは260nm、塩化クロムは430nmでの吸光度を測定することにより検出した。そして、カラムから流出する各金属の濃度変化を記録した。
【0081】
2.結果
結果を図1に示す。図1は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。この結果から、非希土類金属であるコバルト、ニッケルは、カラムに吸着することなく素通りした。一方、希土類金属であるネオジム、プラセオジム、セリウムはカラムに吸着した。そして、移動相中の酢酸濃度を500mMまで上昇させることによって、これらの希土類金属は溶出し、回収することができることを確認した。以上の結果から、上記ペプチドカラムは希土類金属のみを特異的に吸着すると共に、酢酸によって上記ペプチドカラムから希土類金属を溶出でき、これを利用することにより、希土類金属のみ選択的に分離回収できることが理解できる。
【0082】
(実施例2−C)
実施例2−Bの溶出に際して、酢酸に代えて金属塩溶液の注入の5分後に硝酸濃度を500mMに上昇させて検討を行った。塩化クロムについてはここで検討を行い、一方、塩化セリウムについては検討を行わなかった。結果を図2に示す。図2は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。この結果より、硝酸によっても、上記ペプチドカラムから希土類金属を回収することができることを確認した。なお、移動相のみの場合には、いずれの位置にもピークは認められなかったことから、本実施例で確認されたピークはいずれも金属塩溶液由来のピークであることが判明した。
【0083】
(実施例2−D)
上記実施例2−B、2−Cの評価に続き、ここでは、希土類金属と非希土類金属の混合液から、希土類金属特異的な分離回収が可能か否かを評価した。
【0084】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
ここで、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象として金属塩溶液としては、希土類金属として塩化ネオジム、そして、非希土類金属として、塩化コバルト、塩化ニッケルを等濃度に含む金属塩混合水溶液を調製した。
【0085】
1−2.希土類金属分離回収材の作製及び希土類金属分離回収評価
上記実施例2−Bと同様にして、希土類金属分離回収材の作製及び希土類金属分離回収評価を行った。なお、金属塩混合溶液のカラムへの注入は、夫々の金属塩が最終濃度20mMとなるように行った。
【0086】
2.結果
結果を図3に示す。図3は、カラムからの流出液の各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。非希土類金属であるコバルト(490nm)、ニッケル(390nm)は、カラムに吸着することなく素通りすることを確認した。一方、希土類金属であるネオジム(572nm)は、実施例2−Bと同様に、カラムに吸着し、移動相中の酢酸濃度を500mMにすることにより回収することができることを確認した。なお、572nmでの測定のクロマトグラムにおいて、金属塩混合水溶液注入直後に低いピークが認められるが、実施例1−Cと同様、ネオジムではなくコバルト由来のピークであると理解できる。以上の結果より、非希土類金属と希土類金属が共存する混合溶液中であっても、上記ペプチドカラムを利用することにより、希土類金属のみを選択的に分離回収できることが理解できる。
【0087】
上記実施例2−B、2−C、2−Dの結果から、上記ペプチドを固定化したカラムは、金属混合希土類金属のみが特異的に結合し吸着することから希土類金属のみを選択的に分離できることが判明した。また、酸により希土類金属を容易に回収できることも判明した。したがって、上記ペプチドを利用した分離回収方法は、非希土類金属を含む金属塩混合溶液からであっても、容易かつ簡便に非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収可能であることが結論付けられる。
【0088】
(実施例3)希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属の相互分離
実施例2において、本発明の希土類金属特異的ペプチドの希土類金属の分離回収能について評価し、本発明の希土類金属特異的ペプチドが、非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収可能であることが判明した。本実施例では、希土類金属特異的ペプチドを利用した希土類金属の元素ごとの相互分離回収について検討を行った。
【0089】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において、希土類金属の特異的分離回収能の評価対象とした金属塩溶液としては、塩化セリウム(CeCl3)、塩化テルビウム(TbCl3)を水溶液を調製した。
【0090】
1−2.希土類金属の相互分離回収評価
上記実施例2の方法に準じて、希土類金属分離回収材を作成した。続いて、カラムをHPLCポンプに接続し、移動相として400mM酢酸及び100mMのNaClを含む10mMのMOPS緩衝液(pH7.0)を流速2ml/minで送液しているところに、1−1で調整した金属塩溶液を各金属塩の最終濃度が1mMとなるよう注入した。セリウムとテルビウムはカラムに吸着すると共に、有機酸である酢酸により溶出される。溶出したセリウムの検出は、吸光分光光度計により極大吸収波長付近の吸光度を測定することにより行った。詳細には、260nmでの吸光度を測定することにより検出した。一方、テルビウムの検出は、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry :ICP-MS)により行った。そして、カラムから流出する各金属の濃度変化を記録した
【0091】
2.結果
結果を図4に示す。図4は、カラムからの各流出液について、対応する各金属の濃度変化を記録したクロマトグラムである。セリウムは1.8分に、テルビウムは5.8分にピークを持つ溶出を確認した。両者の溶出速度には差異があることから、これを利用することにより両者を相互に分離して回収できることが理解できる。
【0092】
実施例3の結果から、本発明の希土類金属特異的ペプチドを利用することにより希土類金属のみを選択的に分離できることのみならず、希土類金属を元素ごとに相互分離できることが判明した。つまり、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属の結合を解離させるために有機酸を用いると、有機酸は希土類金属イオンと錯体を形成することによって希土類金属は希土類金属特異的ペプチドから解離する。このとき希土類金属特異的ペプチドと有機酸との間で希土類金属イオンを奪い合う。そのため、解離速度には希土類金属元素ごとの希土類金属特異的ペプチドに対する親和性が反映され、希土類金属特異的ペプチドとの親和性が低い希土類金属元素は速く、一方、親和性の高い希土類金属元素の解離は遅くなる。このようにして、非希土類金属や希土類金属元素を複数種含む金属混合溶液からであっても、容易かつ簡便に非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収できると共に、希土類金属をも元素ごとに相互に分離して回収できることが判明した。
【0093】
実施例1〜3の結果より、本発明の希土類金属特異的ペプチドを用いた分離回収方法は、希土類金属のみを選択的に分離回収でき、非希土類金属等の他の物質と容易に分離することができることが結論付けられる。特に、本発明の希土類金属特異的ペプチドは、その構築の基礎としたEFハンドに結合するカルシウムにも結合性を消失していることは注目に値する。このことからも、本発明の希土類金属特異的ペプチドは希土類金属に対して選択的かつ特異的に結合する性質を有するものであることが理解でき、当該希土類金属特異的ペプチドの性質を利用することにより、非希土類金属等が共存する金属塩混合液から希土類金属のみを容易かつ簡便に分離することができる。そして、本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との結合は酸によって解離することができる可逆的な結合であることも判明したことから、酸を用いることにより効率よく希土類金属を回収することができ、煩雑な工程を必要としない。
また、本発明の希土類金属特異的ペプチドと希土類金属との結合の解離に際して、有機酸を用いると、希土類金属の元素ごとの希土類金属特異的ペプチドに対する親和性を反映した結合解離が行われることが判明した。そのため、希土類金属特異的ペプチドとの親和性が低い希土類金属元素は速く、一方、親和性の高い希土類金属元素は解離が遅くなる。つまり、本発明の希土類金属特異的ペプチドに対する親和性の相違に従って希土類金属を元素ごとに分別して回収することができる。そして、非希土類金属や希土類金属元素を複数種含む金属混合溶液からであっても、容易に非希土類金属と区別して希土類金属のみを選択的に分離回収できると共に、希土類金属をも元素ごとに相互に分離して回収できる。したがって、当該希土類金属特異的ペプチドを利用した本発明の希土類金属の分離回収方法は、容易、簡便、かつ効率よく希土類金属を回収でき、極めて実用性の高い希土類金属の分離回収技術であると結論付けることができる。また、有機溶媒などの環境負荷の高い試薬を用いず環境に配慮した安全性の高い技術でもあり、また高価な試薬をも使用せずコストパフォーマンスの面からも優れた技術である。
【0094】
(実施例4)希土類金属特異的ペプチドの希土類金属への結合特性の検討
本実施例においては、希土類金属特異的ペプチドと希土類金属結合配列のみからなるペプチドについて、希土類金属への結合性を比較した。なお、希土類金属特異的ペプチドとしてSLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN(配列番号22)を用い、希土類金属結合配列のみからなるペプチドとしてDTNNDGWIEGDE(配列番号2)を用いた。
【0095】
1.方法
1−1.評価対象の金属塩溶液の調製
本実施例において評価の対象とした金属は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ルテチウム(Lu)である。実施例1、2と同様にして、金属塩溶液を調製した。
【0096】
1−2.各金属に対する結合性の比較
実施例1、2と同様にして、上記ぺプチドの各金属に対する結合性(Kd[μM])を算出した。
【0097】
2.結果
結果を表5に示す。表5は、希土類金属特異的ペプチド(SLAIAAIDTNNDGWIEGDEAFAIN:配列番号22)、及び希土類金属結合配列からなるペプチド(DTNNDGWIEGDE:配列番号2)の各金属に対する結合性(Kd〔μM〕)を要約したものである。希土類金属特異的ペプチドは希土類金属と強く結合する一方、βシート構造形成配列を含まない希土類金属結合配列のみでは希土類金属とは弱くしか結合しなかった。つまり、希土類金属結合配列にβシート構造配列を付加することにより、希土類金属への結合性の大幅な向上が認められた。
【0098】
【表5】
【0099】
実施例1、2において、本発明の希土類金属ペプチドを利用することにより希土類金属のみを特異的に分離回収することができることが判明したが、本実施例により、この特性は、EFハンドを切り出したのみの希土類金属結合配列のみでは成し得ず、βシート構造形成配列を付加することによって初めて成し得るものであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、希土類金属を含有する検体から希土類金属を回収する技術に利用できる。そして、当該技術の利用が要求される全ての分野で利用可能であり、特に、環境分野、電気化学、医療、食品分野等、種々の産業分野において利用可能である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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