(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定はされない。初めに、本発明の負極を用いたリチウムイオン二次電池の全体の構成を説明する。
【0012】
[二次電池]
図1は、双極型のリチウムイオン二次電池(双極型電池)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。リチウムイオン二次電池の構造および形態は、双極型積層電池、双極型でない積層型電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0013】
図1に示す本実施形態の双極型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートシートを電池の外装として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素21を収納し密封した構成を有している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の双極型電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、前記集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極を有する。ここで、双極型電池10の場合には、集電体11およびその一面に形成された負極活物質層15を負極と称し、集電体11の他の面にさらに正極活物質層が形成されたものを双極型電極と称する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0015】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部31が配置されている。該シール部31を設けることで、隣接する集電体11間を絶縁し、隣接する電極間の接触による短絡を防止することもできる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層13が形成されてもよい。
【0016】
さらに、
図1に示す双極型電池10では、正極側最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートシート29から導出している。
【0017】
図2は、双極型でない積層型のリチウムイオン二次電池(積層型電池)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池10’は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
【0018】
発電要素21は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された正極と、電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。ここで、非双極型リチウムイオン二次電池の場合は、負極集電体12と、その両面に形成された負極活物質層15とを負極と称する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、正極、電解質層および負極がこの順に積層されている。
【0019】
これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層12が配置されている。なお、
図2とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面のみに負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0020】
正極集電体11および負極集電体12には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられている。そして、これらの集電板(25、27)はそれぞれ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出されている。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0021】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は自動車積載用に適しており、モーター駆動用に高出力を得るため、双極型であっても非双極型であっても、多数を平板の面を重ねるように並べて積載し、使用することができる。例えば、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、好ましくは10以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上、最も好ましくは200以上を積層して使用することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、サイクル特性が向上するのみならず、負極の膨張収縮時の膨れを抑制できるため、個々の電池のセル膨れを抑制できる。これにより、多数の電池を積層しても、全体として電池の変形を抑制できる。このような個々のわずかなセル膨れの影響は電池の積層数が増加するほど顕著であり、本実施形態のリチウムイオン二次電池を用いれば、200以上の積層によっても自動車積載用として好適である。
【0022】
以下、上述した電池を構成する構成要素について説明するが、下記の形態のみには限定されない。
【0023】
[集電体]
集電体11(正極集電体11および負極集電体12)は、正極活物質層13または負極活物質層15と外部とを電気的に接続するための部材であって、導電性の材料から構成される。集電体の具体的な形態について特に制限はない。導電性を有する限り、その材料、構造などは特に限定されず、一般的なリチウムイオン電池に用いられている従来公知の形態が採用されうる。集電体2の構成材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属が用いられ、銅が特に好ましい。また、集電体の構造も、多孔質状、箔状、不織布状、多孔質状などの構造でありうる。場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。集電体の厚さは、特に限定されず、5〜50μm程度であればよい。集電体の大きさは、自動車搭載用に適した平板積層型電池として用途に応じて決定される。
【0024】
[負極活物質層]
負極活物質層15は後述する特定の負極活物質を含み、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電性材料、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などをさらに含みうる。以下、負極活物質層の構成材料について説明する。
【0025】
(負極活物質)
本実施形態では、負極活物質は、真密度が2.18以上であり、XRD測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(110)の比I(110)/I(004)が0.6以上である黒鉛粒子を使用する。さらに、負極活物質層を水銀圧入法で細孔径分布測定を行った際に得られる細孔径ピークが、黒鉛粒子をレーザー回折法で粒度分布測定を行った際に得られる平均粒径の、3〜50%の範囲でサブピークを有さないメインピークを有することが特徴である。
【0026】
上記の比I(110)/I(004)は、黒鉛結晶の配向性を反映している。I(110)/I(004)の値が大きいほど配向性が低く、値が小さいほど配向性が高いことを示している。黒鉛結晶をリチウムイオン二次電池の負極に使用した場合、充電時には炭素粉末の粒の間にリチウムイオンが入ることにより膨張し、放電時にはリチウムイオンが離脱することにより収縮が起こる。このような負極活物質層中の炭素粉末の膨張収縮により、黒鉛粒子表面に亀裂が入り、新生面を形成することになる。すると、新生面となった部分が電解液と反応してサイクル特性を低下させると考えられる。その際、黒鉛粒子の配向性がより高ければ、粒子の膨張収縮が、揃った結晶面で生じるために一方向で起こりやすく、その方向での亀裂が生じやすい。しかし、配向性がより低ければ、黒鉛炭素の粒の膨張収縮は等方的となり、亀裂の発生が抑制され、新生面の形成は抑制される。したがって、本実施形態では、I(110)/I(004)が0.6以上である黒鉛粒子を負極に使用する。I(110)/I(004)がこの範囲であれば、二次電池の充放電を繰り返し行っても、サイクル特性の低下を防止することができる。さらに、亀裂が抑制されることにより、平板積層型電池の場合には、充放電の繰り返しによる電池の膨れも効果的に防止することができる。I(110)/I(004)の上限値は、特に制限はないが、好ましくは1.4である。I(110)/I(004)の比率は、より好ましくは0.65〜0.8である。XRD測定(X線回折測定)は、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
【0027】
I(110)/I(004)の比が0.6以上の黒鉛粒子を得るには、特に制限はないが、例えば以下のような方法で製造することができる。すなわち、高結晶性の一定の粒径の炭素質粒子に一定量の炭素材料を均一に含浸、複合させた後に、炭素材料を高温で炭化させる。これにより、粒子の表面から中心部分までほぼ均一な構造を有し、加圧による変形・配向が少なく、上記のI(110)/I(004)の比率を有する炭素粉末が製造できる。
【0028】
好ましくは芯材となる炭素質粒子に、炭素材料となる有機化合物またはその溶液を付着及び/または浸透させる工程、更に該有機化合物を炭化及び/または黒鉛化する工程により作成される。また、核となる炭素質粒子に有機化合物またはその溶液を付着及び/または浸透させる工程、前記有機化合物を熱処理する工程、及び炭化及び/または黒鉛化する工程により行うことも好ましい。有機化合物またはその溶液を付着およびまたは浸透させた後、炭化及び/または黒鉛化工程の前に、有機化合物を熱処理することにより、有機化合物が重合等により炭素質粒子にしっかり密着するためである。
【0029】
炭素質粒子は、負極活物質としての炭素粉末の芯材となるが、その種類はリチウムイオンが挿入放出可能であれば特に限定されない。リチウムイオン挿入放出量ができるだけ大きい方が好ましく、そのような観点から、天然黒鉛のような高結晶性黒鉛が好ましい。また、炭素質粒子としては、後工程の1800〜3300℃での加熱処理により黒鉛化する易黒鉛化炭素材料(ソフトカーボン)からなる粒子も使用できる。具体的には、石油系ピッチコークス、石炭系ピッチコークスなどのコークス類からなる粒子等が挙げられる。芯材として好ましく使用される炭素質粒子の形状は、塊状、鱗片状、球状、繊維状等の形状を有するものでよいが、好ましくは球状、塊状のものである。
【0030】
次いで、芯材としての炭素質粒子に炭素材料が複合される。炭素材料は特に限定されず、ピッチ熱処理品、コークス、有機化合物熱処理物等が挙げられる。また、複合される炭素材料として、芯材粒子に付着及び/または浸透される有機化合物は、芯材粒子に接着性を有する重合体であることが好ましい。例えば、重合体としては、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がよい。好ましくは、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。
【0031】
また、芯材となる炭素質粒子に付着及び/または浸透させる有機化合物としては、重合体の原料も好ましい。原料の方が低分子量/低粘性であり、炭素質粒子の内部まで均一に浸透するためである。上述したように重合体としてはフェノール樹脂が好ましく、したがって重合体原料としてはホルマリン、フェノール誘導体などのフェノール樹脂原料が好ましい。また、有機化合物は溶液として使用する方が低粘度となり、核となる炭素質粒子の内部まで均一に浸透するため好ましい。
【0032】
炭素材料の複合量は特に制限されないが、芯材の炭素質粒子100質量部に対して、好ましくは2〜200質量部、さらに好ましくは4〜100質量部、特に好ましくは10〜25質量部である。
【0033】
上記重合体原料と芯材の炭素質粒子との複合化は、原料を、触媒の存在下で、芯材粒子と混合しつつ反応させることにより行う方法が好ましい。重合の温度は100〜500℃で行うことができる。
【0034】
芯材として用いることのできる黒鉛粉体はすでに結晶性が高いため、高温での熱処理は特に必要ないが、複合化した炭素層の結晶性を発達させるためある程度の熱処理が必要である。具体的な熱処理温度は、1800〜3300℃であり、好ましくは2300℃以上、より好ましくは2500℃以上、さらに好ましくは2800℃以上、もっとも好ましくは3000℃以上である。
【0035】
また、本実施形態では、真密度が2.18以上の黒鉛粒子を使用する。真密度がこの範囲であれば、黒鉛粒子内の細孔の割合が十分低いため、電池の充放電により負極が膨張収縮する際、黒鉛粒子内の細孔内で電解液と黒鉛との反応が生じにくい。真密度の上限値は特に制限はないが、好ましくは2.3である。真密度は、より好ましくは、2.19〜2.27である。真密度が2.18以上である黒鉛粒子を得るには、特に制限はないが、天然黒鉛のほか、コークスや熱分解炭素の熱処理などの方法が挙げられる。
【0036】
また、黒鉛粒子は、その表面を非晶質炭素で被覆したものが好ましい。その際、消失炭素は黒鉛粒子の全表面を被覆していることがより好ましいが、一部の表面のみの被覆であってもよい。黒鉛粒子の表面が非晶質炭素で被覆されていることにより、電池の充放電時の負極の膨張収縮の際、黒鉛粒子に亀裂が生じ、黒鉛と電解液とが反応することをより確実に防止できる。黒鉛粒子の表面に非晶質炭素を被覆する方法としては、特に制限はない。例えば、非晶質炭素を溶媒に溶解、または分散させた混合溶液に核となる黒鉛粒子(粉末)を分散・混合した後、溶媒を除去する湿式方式が挙げられる。他にも、黒鉛粒子と非晶質炭素を固体同士で混合し、その混合物に力学エネルギーを加え非晶質炭素を被覆する乾式方式、CVD法などの気相法等が挙げられる。黒鉛粒子が非晶質炭素で被覆されていることは、レーザー分光法などの方法により確認することができる。
【0037】
また、黒鉛粒子は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定で得られる平均粒径が、5〜30μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmであり、さらに好ましくは20〜29μmである。この範囲であれば、黒鉛と電解液との反応をより効果的に防止でき、サイクル特性の低下防止および電池の膨れ防止の効果をより確実に得られる。粒度分布は、レーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置により計測されたものを採用する。粒度分布は、例えば、堀場製作所製の粒度分布分析装置(型式LA−920)を用いて測定することができる。
【0038】
負極活物質層15の全量100質量%に対する負極活物質の含有量は、通常40〜100質量%程度であり、好ましくは50〜95質量%であり、さらに好ましくは70〜90質量%である。
【0039】
上記の黒鉛粒子に加えて、従来公知の負極活物質を混合して用いてもよい。例えば、リチウム金属等の金属材料、リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:Li
4Ti
5O
12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物、およびその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。
【0040】
(導電助剤)
導電助剤は、負極活物質層3の導電性を向上させることを目的として配合される。本実施形態において用いられうる導電助剤は特に制限されず、従来公知の形態が適宜参照されうる。例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素繊維;グラファイトなどの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電性材料を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、本実施形態の負極から構成される電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0041】
負極活物質層15の全量100質量%に対する導電助剤の含有量は、通常0〜30質量%程度であり、好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜7質量%である。
【0042】
(バインダ)
負極活物質層15は、黒鉛粒子の他にバインダを含むことが好ましい。バインダとしては、以下に制限されることはないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、およびアクリル樹脂(例えば、リキッドシリコーンラバー(LSR)などの熱可塑性樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにスチレン−ブタジエンゴム(SBR)などのゴム系材料が挙げられる。
【0043】
負極活物質層15の全量100質量%に対するバインダの含有量は、通常0〜50質量%程度であり、好ましくは5〜45質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%であある。
【0044】
(電解質・支持塩)
電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、それらの共重合体などのリチウム塩を含むイオン伝導性ポリマー(固体高分子電解質)などが挙げられるが、これらに制限されることはない。
【0045】
支持塩(リチウム塩)としては、以下に制限されないが、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiTaF
6、LiAlCl
4、Li
2B
10Cl
10等の無機酸陰イオン塩;LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N等の有機酸陰イオン塩が挙げられる。これらの支持塩は、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、水銀圧入法で細孔径分布測定を行った際に得られる負極活物質層の細孔径ピークが、サブピークを有さないメインピークを有する。さらに、このメインピークは、後述する特定の黒鉛粒子をレーザー回折法で粒度分布測定を行った際に得られる平均粒径の、3〜50%の範囲、より好ましくは5〜15%の範囲に存在する。このような範囲の細孔径分布を有する負極であれば、電池の充放電により負極が膨張収縮しても、黒鉛粒子内の細孔内で電解液と黒鉛との反応が生じにくく、その結果電池のサイクル特性が向上する。上記のような細孔径分布を有する負極を得るには、特に制限はないが、例えば、負極を形成する際のプレス条件を調整することで細孔径分布を制御し、上記の細孔径分布を有する負極を得ることができる。プレスの方法としては、加熱ロールプレスが好ましい。その際のプレス条件としては、好ましくは50〜300kgf/cm
2、より好ましくは150〜600kgf/cm
2であり、温度は、好ましくは25〜250℃、より好ましくは25〜150℃である。
【0047】
また、負極の電極密度は1.3〜1.9g/ccであることが好ましく、より好ましくは1.3〜1.6g/ccである。電極密度が上記の範囲であると、二次電池のサイクル特性の低下防止、および電極の膨れ抑制の効果がより確実に得られる。
【0048】
負極活物質層15中に含まれる成分の配合比は特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。また、活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、負極活物質層15の厚さは、2〜100μm程度である。
【0049】
[正極(正極活物質層)]
正極活物質層13は正極活物質を含み、必要に応じて他の添加剤を含みうる。正極活物質層13の構成要素のうち、正極活物質以外は、負極活物質層15について上述したのと同様の形態が採用されうるため、ここでは説明を省略する。正極活物質層13に含まれる成分の配合比および正極活物質層の厚さについても特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。正極活物質層13の厚さは、2〜100μm程度である。
【0050】
(正極活物質)
正極活物質層13に含まれる正極活物質としては、特に制限されず、例えば、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiO
2など)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO
2など)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeO
2など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.2O
2など)、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePO
4など)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(Li
xFe
2(SO
4)
3)などが挙げられる。
【0051】
正極活物質の比表面積は、特に制限されないが、0.1〜30m
2/gであることが好ましく、0.2〜20m
2/gであることがより好ましい。比表面積が上記範囲にあれば、十分な出力が得られうることから好ましい。
【0052】
正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点から、1〜100μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲にあれば、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。
【0053】
[電解質層]
電解質層17は、正極活物質層と負極活物質層との間の空間的な隔壁(スペーサ)として機能する。また、これと併せて、充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である電解質を保持する機能をも有する。
【0054】
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質などのポリマー電解質が適宜用いられうる。
【0055】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)やプロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が挙げられる。これらは単独でも二種以上を併用してもよく、好ましくは、ECとDECと混合溶媒である。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiSO
3CF
3などの電極の活物質層に添加されうる化合物を同様に用いることができる。
【0056】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。
【0057】
ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体などが挙げられる。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0058】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。
【0059】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0060】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれていてもよい。
【0061】
[シール部]
シール部31は、双極型電池に特有の部材であり、電解質層17の漏れを防止する目的で単電池層19の外周部に配置されている。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。
図1に示す形態において、シール部31は、隣接する2つの単電池層19を構成するそれぞれの集電体11で挟持され、電解質層17の基材であるセパレータの外周縁部を貫通するように、単電池層19の外周部に配置されている。シール部31の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0062】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。また、最外層集電体(11a、11b)を延長することにより集電板としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0063】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0064】
[外装]
外装としては、
図1や
図2に示すようなラミネートシート29が用いられうる。ラミネートシートは、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造として構成されうる。なお、場合によっては、従来公知の金属缶ケースもまた、外装として用いられうる。
【0065】
本実施形態の双極型電池10や積層型電池10’は、上述した負極を用いている。すなわち、上記した負極と、正極と、負極と前記正極との間に配置された電解質層と、を有する二次電池が提供される。よって、本実施形態では、電池の充放電時の膨張収縮に伴う黒鉛粒子の亀裂や細孔と電解液との反応を防止することにより、サイクル耐久性に優れる平板積層型二次電池が提供されうる。さらに、本実施形態の二次電池は、セル膨れの発生も緩和される。
【0066】
[製造方法]
本実施形態の二次電池の製造方法は特に制限されず、従来公知の知見を適宜参照することにより製造されうる。以下、本実施形態の電池の製造方法を簡単に説明する。
【0067】
電池用電極は、例えば、活物質、結着剤および溶媒を含む活物質スラリーを調製し、当
該活物質スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させた後プレスすることで作製されうる。
【0068】
はじめに、所望の活物質、上述した所定のバインダ、および必要に応じて他の成分(例えば導電助剤、支持塩など)を、溶媒中で混合して、活物質スラリーを調製する。バインダは、活物質などの固形分と粉末状態で混合してから溶媒を加えて混合する方法で活物質スラリー中に混合してもよく、あらかじめ少量の溶媒に溶解させてから活物質および溶媒を含む混合物に添加する方法で活物質スラリー中に混合してもよい。なお、正極を作製するにはスラリー中に正極活物質を添加し、負極を作製するにはスラリー中に負極活物質を添加する。
【0069】
溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが用いられうる。
【0070】
続いて、活物質層を形成するための集電体を準備し、調製した活物質スラリーを、集電体の表面に塗布し、塗膜を形成する。活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、自走型コータなどの一般的に用いられている手段が採用されうる。ただし、塗布手段として、インクジェット方式、ドクターブレード方式、またはこれらの組み合わせを用いると、薄い層が形成されうる。
【0071】
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。
【0072】
その後、前記で準備した塗膜をプレスする。プレス手段については、特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、加熱ロール、カレンダーロール、平板プレスなどが挙げられる。このうち、特に加熱ロールが好ましい。
【0073】
上記で作製した正極及び負極と、セパレータ(電解質層)とを積層して、発電要素を作製する。電解質層の作製方法も特に制限されず、従来公知の手法により作製が可能である。電解質層がゲルを含む場合には、予めセパレータにこれらの電解質を塗布、更には乾燥・加熱するなどして電解質層を形成することもできる。
【0074】
絶縁層については、例えば、電極形成部の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂(前駆体溶液)等に浸漬または樹脂を注入ないし含浸する。いずれの場合にも、事前に電極端子板や電極リードや電極タブ、あるいはこれらを接続する必要のある集電体部分等を離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておく。その後エポキシ樹脂を硬化させて、絶縁部を形成し、その後、マスキング材を剥がせばよい。
【0075】
続いて、得られた発電要素の各集電体にそれぞれリードを接合し、これらの正極ないし負極リードを、まとめて正極ないし負極タブに接合する。次いで、正極及び負極タブが電池外部に露出するように、発電要素をラミネートシート中に入れ、真空に封止する。電解質層は、ラミネートシートの封止前に、注液機により電解液を注液して形成する。これにより空隙部に電解質が満たされる。電解液に添加剤を加えるには、添加剤、炭化水素系溶媒および支持塩を適宜混合して使用すればよい。このようにして、本実施形態のリチウムイオン電池が構成される。
【0076】
本実施形態の二次電池の構造としては、
図1および
図2に示される平板な構造のものを積層して得られる平板積層型電池であり、これは自動車積載用に好適である。また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型電池および双極型電池のいずれにも適用し得るものである。
【0077】
[組電池]
上述した実施形態の双極型電池や積層型電池を、複数個接続して組電池を構成してもよい。詳しくは、少なくとも2つの電池が、直列化あるいは並列化あるいはその両方で接続されることにより、組電池が構成されうる。この際、直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0078】
本実施形態の組電池を構成する二次電池の数および接続の仕方は、電池に求める出力および容量に応じて決定されうる。本実施形態によれば、信頼性の高い組電池が提供されうる。また、本実施形態の組電池を構成することにより、組電池を構成する1つの単電池層(単セル)の劣化による組電池全体への影響を低減することもできる。
【0079】
組電池としては、上述した実施形態の電池(10、10’)が複数、直列および/または並列に接続されて装脱着可能な小型の組電池が構成される。そして、この装脱着可能な小型の組電池がさらに複数、直列および/または並列に接続され、より大型の組電池とされる。これにより、組電池は、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池とされる。作製した装脱着可能な小型の組電池は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続され、この組電池は接続治具を用いて複数段積層される。何個の平板積層型二次電池を接続して組電池を作成するか、また、何段の組電池を積層して大型組電池を作成するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0080】
[車両]
上述した実施形態の二次電池や組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。これらの二次電池または組電池は、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いられうる。これにより、高寿命で信頼性の高い自動車が提供されうる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両であれば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0081】
組電池を電気自動車のような車両に搭載するには、電気自動車の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームに搭載してもよい。以上のような組電池を用いた電気自動車は優れた耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【実施例】
【0082】
<実施例1>
1.負極の作製
負極活物質として、表1に示す炭素材料Bの黒鉛粒子(非晶質炭素被覆されたもの)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%およびバインダとしてPVdF10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるNMPを適量添加して、負極スラリーを作製した。次に、負極スラリーを、集電体である銅箔(15μm)の片側に塗布し乾燥させた。加熱ロールプレス(プレス圧200kgf/cm
2、温度100℃)を行い負極とした。なお、黒鉛粒子の被覆は、CVD法により行った。
【0083】
2.正極の作製
正極活物質としてLiMn
2O
4(平均粒子径:15μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、およびバインダとしてPVdF10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(20μm)の片側に塗布し乾燥させた。加熱ロールプレスを行い正極とした。
【0084】
3.電解液の作製
エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:70(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF
6を支持塩とした。さらに、上記溶媒と上記支持塩との合計100質量%に対して、添加剤としてVCを1.0質量%の濃度で添加して、電解液を作製した。なお、「1.0MのLiPF
6」とは、当該混合溶媒および支持塩の混合物における支持塩(LiPF
6)濃度が1.0Mであるという意味である。
【0085】
4.単電池の完成工程
正極および負極のそれぞれに加熱ロールプレスを行った。その後、これらを90×90mmの正方形状に切断し、正極と負極を95×95mmのセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜、厚さ20μm)を介して貼り合せた。これらの正極と負極それぞれにタブを溶接し、アルミラミネートフィルムからなる外装中に本実施例の電解液とともに密封して単電池を完成させた。
【0086】
5.電池の評価
上記のようにして作製したリチウムイオン二次電池(単電池)を充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験は、55℃に保持した恒温槽において、電池温度を55℃とした後、性能試験を行った。充電は1Cの電流レートで4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、あわせて3時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとし、充放電試験を実施した。初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率とし、また、電極膨れ率をセル解体前後の電極厚みおよび断面SEM写真(1,000倍)より算出した。評価結果は後掲の表1及び
図3〜7に示す。
【0087】
6.粉体物性評価法
炭素材料Aの物性を、以下の方法で測定した。結果は後掲の表1及び
図3〜7に示す。
【0088】
(真密度)
He置換法により求めた。
【0089】
(平均粒子径)
レーザー散乱式粒度分布測定により求め、体積基準の平均直径を粒子径とした。測定装置としては、堀場製作所製の粒度分布分析装置(型式LA−920)を用いた。
【0090】
(I(110)/I(004))
広角X線回折により得られた黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比とした。XRD測定装置としては、リガク社製X線回折装置(SmartLab 9kW)、電圧・電流:45kW・200mA、X線波長:CuKαを使用した。
【0091】
7.負極物性評価法
(細孔径分布)
水銀圧入法により求めた。表1中、細孔径分布ピークの数値が一つであるものは、メインピークの数値であり、サブピークを有していないことを示す。また、実施例1でのメインピークは、炭素材料Aの平均粒径26μmの3〜50%にあたる0.78〜13μmの範囲に存在していた。
【0092】
<実施例2>
負極活物質として、下記表1に示した炭素材料A(非晶質炭素被覆されたもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして、二次電池を完成させた。また、実施例1と同様の評価を行った。結果は後掲の表1及び
図3〜7に示す。
【0093】
<比較例1>
負極活物質として、炭素材料Aを用い、プレス圧を400kgf/cm
2に変えた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果は表1に示す。なお、比較例1で負極の細孔径分布のメインピークがサブピークを有していたのは電極プレスにより電極表面にクラックが入ったこと、非晶質炭素被覆がはがれ、中の黒鉛が露出したことなどが原因として考えられる。
【0094】
<比較例2〜4>
負極活物質として、それぞれ下記表1に示した炭素材料C〜E(Cは非晶質炭素被覆されたもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして、二次電池を完成させた。また、実施例1と同様の評価を行った。結果は後掲の表1及び
図3〜7に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、実施例1および2の電池は、比較例1〜4と比較して、膨れ率が小さく、容量維持率が高くなっている。そのため、充放電の繰り返しに伴う負極の膨れが抑制され、かつ、サイクル特性が向上していることが分かる。