特許第6051734号(P6051734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051734
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】アレルゲン性能の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20161219BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G01N33/53 Q
   G01N33/543 545A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-213176(P2012-213176)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-66645(P2014-66645A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(72)【発明者】
【氏名】洞ヶ瀬 朝達
(72)【発明者】
【氏名】小林 武
(72)【発明者】
【氏名】大木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 陽子
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144635(JP,A)
【文献】 特開2011−047778(JP,A)
【文献】 特開2001−214367(JP,A)
【文献】 特開2014−066643(JP,A)
【文献】 特開2014−066644(JP,A)
【文献】 特開2014−066646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験製品の抗アレルゲン性能を測定する方法であって、
アレルゲンを含有する試験液を、被験製品の被測定面に供給する第1工程、
前記試験液を供給した被験製品の被測定面を無機ガラス部材(但し、抗アレルゲン剤を含む塗料が塗布されたものを除く)で覆い、試験液に含まれるアレルゲンを被測定面に一定時間接触させる第2工程、及び
前記接触後の試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定する第3工程、
を含むことを特徴とする、抗アレルゲン性能の測定方法。
【請求項2】
前記第3工程におけるアレルゲンの抗原性の測定が酵素免疫法により行われる、請求項1に記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【請求項3】
前記無機ガラス部材が、厚さ0.3〜2.0mmのシート状である、請求項1又は2に記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【請求項4】
前記被験製品が建材、又はプラスチック、ゴム、及びセラミックスよりなる群から選択される少なくとも1種を構成素材として含む板状部材である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【請求項5】
前記被験製品が、その表面の少なくとも一部に抗アレルゲン剤を含有している、請求項1〜4のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【請求項6】
前記被験製品が、少なくとも基材層と表面層を含み、当該表面層が抗アレルゲン剤及び樹脂を含む樹脂組成物により形成されている積層体である、請求項1〜5のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験製品のアレルゲン性能を測定する方法に関する。より詳細には、本発明は、高い精度をもって被験製品の抗アレルゲン性能を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー疾患に罹患する人が増加傾向にあり、アレルギー疾患の発症防止のために、アレルギー疾患の原因となるダニや花粉等のアレルゲンを室内空間から除去又は不活化することが求められている。そこで、建築物の床材、壁材等の内装用建材、衣服、寝具等の繊維製品等の様々な分野で、抗アレルゲン剤を配合した抗アレルゲン加工製品が開発されている。そこのような抗アレルゲン剤を配合した製品の性能評価の上では、抗アレルゲン性能を測定することが不可欠である。
【0003】
従来、抗アレルゲン加工製品の抗アレルゲン性能の測定方法として、抗アレルゲン加工製品の被測定面にアレルゲンを含有する試験液を供給し、試験液を供給した抗アレルゲン加工製品の被測定面に被覆フィルムを被せ、被覆フィルムと被測定面との間に試験液を広げた状態で抗アレルゲン剤を反応させた後の試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの濃度を測定する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の方法では、使用する被覆フィルムの特性によって、測定中に試験液のアレルゲン濃度が変動することがあり、測定誤差が大きく精密な測定ができないという欠点がある。より具体的に説明すると、次の通りである。即ち、特許文献1の方法において、被覆フィルムとして疎水性のものを使用すると、被覆フィルムが試験液をはじき、それによって測定中に試験液が蒸発して試験液中のアレルゲン濃度が変化することがあり、また、被覆フィルムとして親水性のものを使用すると、被覆フィルムが試験液を吸収してアレルゲン濃度が変化することもあり、特許文献1の方法では、測定中に試験液中のアレルゲン濃度を安定に維持できず、これが測定誤差を生じる一因にもなっている。
【0004】
このように、従来の抗アレルゲン性能の測定方法では、測定値にバラツキが生じやすい測定法であるため、実際の抗アレルゲン性能を正確に評価できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−47778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い精度をもって被験製品の抗アレルゲン性能を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(1)アレルゲンを含有する試験液を、被験製品の被測定面に供給する工程、(2)前記試験液を供給した被験製品の被測定面を無機ガラス部材で覆い、試験液に含まれるアレルゲンを被測定面に一定時間接触させる工程、(3)前記接触後の試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定する工程を順次実施することにより、高い精度をもって被験製品の抗アレルゲン性能を測定できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の測定方法を提供する。
項1. 被験製品の抗アレルゲン性能を測定する方法であって、
アレルゲンを含有する試験液を、被験製品の被測定面に供給する第1工程、
前記試験液を供給した被験製品の被測定面を無機ガラス部材で覆い、試験液に含まれるアレルゲンを被測定面に一定時間接触させる第2工程、及び
前記接触後の試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定する第3工程
を含むことを特徴とする、抗アレルゲン性能の測定方法。
項2. 前記第3工程におけるアレルゲンの抗原性の測定が酵素免疫法により行われる、
項1に記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
項3. 前記無機ガラス部材が、厚さ0.3〜2.0mmのシート状である、項1又は2に記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
項4. 前記被験製品が建材、又はプラスチック、ゴム、及びセラミックスよりなる群から選択される少なくとも1種を構成素材として含む板状部材である、項1〜3のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
項5. 前記被験製品が、その表面の少なくとも一部に抗アレルゲン剤を含有している、項1〜4のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
項6. 前記被験製品が、少なくとも基材層と表面層を含み、当該表面層が抗アレルゲン剤及び樹脂を含む樹脂組成物により形成されている積層体である、項1〜5のいずれかに記載の抗アレルゲン性能の測定方法。
【発明の効果】
【0009】
また、本発明の測定方法によれば、被覆部材として無機ガラス部材を用いて被測定面の被覆を行った状態で抗アレルゲン反応を進行させているので、測定中にアレルゲンを含有する試験液が蒸発したり、被覆部材に吸収されることがないため、被験製品の抗アレルゲン性能を高精度で測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の測定方法は、被験製品の抗アレルゲン性能を測定する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする:
(1)アレルゲンを含有する試験液を、被験製品の被測定面に供給する第1工程、
(2)前記試験液を供給した被験製品の被測定面を無機ガラス部材で覆い、試験液に含まれるアレルゲンを被測定面に一定時間接触させる第2工程、及び
(3)前記接触後の試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定する第3工程。
以下、本発明の測定方法について詳述する。
【0011】
被験製品
被験製品とは、本発明の測定方法において抗アレルゲン性能の測定対象となる製品である。本発明の測定方法は、抗アレルゲンの添加の有無に拘わらず、被験製品の抗アレルゲン性能を評価できるので、本発明の測定方法に適用される被験製品は、抗アレルゲン剤を含有している製品(以下、抗アレルゲン剤含有製品と表記することもある)、抗アレルゲン剤を含有していない製品、又は抗アレルゲン剤の含有の有無が不明な製品のいずれであってもよい。抗アレルゲン剤含有製品を被験製品とする場合には、当該製品の抗アレルゲン性能の優劣を定性的又は定量的に測定することができる。また、抗アレルゲン剤が添加されていない製品又は抗アレルゲン剤の添加の有無が不明な製品を被験製品とする場合には、当該製品の抗アレルゲン性能の有無ないし優劣を定性的又は定量的に測定することができる。
【0012】
本発明の測定方法において、被験製品の好適な例としては、抗アレルゲン剤含有製品が挙げられる。また、本発明の測定方法では、被験製品の表面において発揮される抗アレルゲン性能を測定するので、抗アレルゲン剤含有製品の中でも、とりわけ、製品の表面の少なくとも一部に抗アレルゲン剤を含有しているものが、被験製品として好適に使用される。
【0013】
被験製品に含有される抗アレルゲン剤としては、アレルゲンを不活化又は分解し得るものであればよく、その種類については特に制限されないが、例えば、水酸基を含有する化合物(即ち、水酸基含有化合物)、好ましくはフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。抗アレルゲン剤として使用可能なフェノール性水酸基を有する化合物としては、具体的には、分子内に複数のフェノール性水酸基、即ちベンゼン環やナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を有する化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物として、より具体的には、ポリパラビニルフェノール;ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル);エピカテキン、ガロタンニン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキン等の低分子量ポリフェノール;タンニン酸等の高分子量のポリフェノール等が挙げられる。
【0014】
被験製品の形状については、特に制限されないが、測定簡易性の観点から、フィルム状、シート状、板状等の平面を形成できるものが挙げられる。なお、被験製品が折り曲げ部や円弧部を有するものである場合には、当該被験製品から平面を形成できる部分を選び、必要に応じて切り取って、本発明の測定方法に適用される。
【0015】
被験製品としては、具体的には、壁紙、壁材、床紙、床材、木質シート、樹脂シート等の建材;プラスチック、ゴム、及びセラミックスの少なくとも1種を構成素材とする板状部材等が挙げられる。また、これらの被験製品は、抗アレルゲン剤を含む樹脂組成物からなる層が表面層として形成されているもの、抗アレルゲン剤を混合した樹脂組成物から成形したもの、抗アレルゲン剤を担持させたもの等であってもよい。
【0016】
本発明の測定方法に適用される被験製品の好適な一例として、少なくとも基材層と表面層を含み、当該表面層が抗アレルゲン剤及び樹脂を含む樹脂組成物により形成されている積層体が挙げられる。当該表面層の形成に使用される樹脂は、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれであってもよい。また。このような積層体からなる被験製品の好適な具体例としては、壁紙、壁材、床紙、床材等の内装用建材が挙げられる。
【0017】
第1工程
第1工程では、アレルゲンを含有する試験液を、被験製品の被測定面に供給する。
【0018】
前記試験液に含まれるアレルゲンの種類については、被験製品の用途等に応じて適宜設定されるが、例えば、ダニ、花粉、虫、カビ、ペット等に由来するアレルゲンが挙げられる。より具体的には、チリダニ(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ等)排泄物由来アレルゲン(Der1)、チリダニ虫体由来アレルゲン(Der2)、コナヒョウヒダニの排泄物由来アレルゲン(Derf1)、コナヒョウヒダニ虫体由来アレルゲン(Derf2)、ヤケヒョウヒダニの排泄物由来アレルゲン(Der p1)、ヤケヒョウヒダニ虫体由来アレルゲン(Der p2)、スギ花粉由来のアレルゲン(Cryj1、Cryj2等)、ペット由来アレルゲン(Can f1、Can f2、Fel d1、Fel d2等)、カビ由来アレルゲン(Alta1、Asp f1等)等が挙げられる。これらのアレルゲンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
また、前記試験液には、アレルゲンの精製品又は粗精製品を含有させてもよく、また、ハウスダストのようにアレルゲンを精製してない状態で含有させてもよい。
【0020】
前記試験液に使用される溶媒は、アレルゲンを失活又は変性させないものであればよく、例えば、リン酸緩衝液等の各種緩衝液、精製水、イオン交換水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは緩衝液、更に好ましくはリン酸緩衝液が挙げられる。
【0021】
前記試験液に含まれるアレルゲン含量については、特に制限されないが、例えば、0.5〜1000ng/ml、好ましくは1〜200ng/mlが挙げられる。
【0022】
また、前記試験液を供給する被験製品の被測定面については、特に制限されないが、測定精度をより一層高めるという観点から、通常4〜200cm2、好ましくは4〜25cm2に設定すればよい。
【0023】
被験製品の被測定面に対して前記試験液を供給する量については、測定対象となる被験製品の使用環境中のアレルゲン存在量、試験液に含まれるアレルゲン量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、被験製品の被測定面1cm2当たり、アレルゲン量が0.05〜50ng、好ましくは0.08〜20ngとなるように設定すればよい。
【0024】
被験製品の被測定面に、前記試験液を供給する方法については、特に制限されず、例えば、被験製品の被測定面に前記試験液を滴下又は噴霧すればよい。また、被験製品の被測定面に前記試験液を滴下又は噴霧した後に、必要に応じて、被験製品に軽い振動を与えたりすることにより、前記試験液を被測定面でより均一になるように広げてもよい。
【0025】
第2工程
第2工程では、前記試験液を供給した被験製品の被測定面を無機ガラス部材で覆い、試験液に含まれるアレルゲンを被測定面に一定時間接触させる。斯して、被測定面を無機ガラス部材で覆うことにより、前記試験液に含まれるアレルゲンが被測定面と安定的に接触して抗アレルゲン反応を受ける。
【0026】
被覆部材としてプラスチックフィルムを使用すると、測定中に被覆部材が前記試験液の溶媒を吸収したり、被覆部材が前記試験液をはじいて試験液が被測定面と被覆部材の間で安定の維持されずに蒸発して、試験液が被測定面と被覆部材の間で安定の維持できないという問題点があったが、本発明の測定方法では、被覆部材として無機ガラス部材を採用することにより、このような問題点が解消されている。それ故、本発明の測定方法では、被覆部材として無機ガラス部材を使用することによって、被験製品の抗アレルゲン性能を高精度に測定することが可能になっている。
【0027】
被覆部材として使用される無機ガラス部材の種類については、特に制限されないが、例えば、フロートガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、磨きガラス、網入りガラス、線入りガラス等が挙げられる。
【0028】
また、これらの無機ガラス部材は、必要に応じて、アレルゲンが吸着し難くなるように表面処理が施されていてもよい。このような表面処理としては、表面親水化処理が挙げられ、より具体的には、ポリエチレングリコール、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマー、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸n−ブチルのコポリマー等の親水性ポリマーを表面コートする方法が挙げられる。
【0029】
また、無機ガラス部材の形状については、被測定面を覆うことができることを限度として、特に制限されないが、例えば、シート状、凹部を形成している蓋状等が挙げられ、好ましくはシート状が挙げられる。シート状の無機ガラス部材は、被測定面上の前記試験液を直接接触した状態で覆うことができ、被測定面上の前記試験液の不均一な分布を解消して均一に広げることができるので、被験製品の抗アレルゲン性能をより一層高精度に測定することが可能になる。
【0030】
無機ガラス部材の大きさについては、被測定面の上の試験液を覆うことができることを限度として特に制限されない。
【0031】
また、無機ガラス部材がシート状である場合、その厚さについては、特に制限されないが、0.3〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.4mmが挙げられる。
【0032】
第2工程では、前記試験液を供給した被験製品の被測定面の上に無機ガラス部材を被せることにより試験液に含まれるアレルゲンが被験製品の被測定面と安定に接触させた状態で維持することができ、前記試験液に含まれるアレルゲンに対する抗アレルゲン反応を安定に進行させることができる。
【0033】
シート状の無機ガラス部材を使用する場合には、被測定面上の前記試験液と無機ガラス部材が直接接触した状態、即ち被測定面と無機ガラス部材により試験液が挟持された状態になる。
【0034】
また、凹部を形成している蓋状の無機ガラス部材を使用する場合には、被測定面の対向面に凹部が配置されるように、無機ガラス部材を被せればよい。凹部を形成している蓋状の無機ガラス部材を使用する場合、被測定面の上の試験液が無機ガラス部材の凹部の表面の全て接触した状態(即ち、被測定面と凹部により形成される空間に試験液が満たされている状態)にしてもよく、また被測定面の上の試験液が無機ガラス部材の凹部の表面の少なくとも一部とは接触していない状態(即ち、被測定面と凹部により形成される空間に試験液が満たされていない状態)にしてもよい。
【0035】
また、無機ガラス部材によって、被験製品の被測定面を被覆した状態を安定に維持するために、必要に応じて、無機ガラス部材の上に錘を置いてもよい。
【0036】
第2工程において、アレルゲンを被測定面に接触させる時間(即ち、前記試験液に含まれるアレルゲンが抗アレルゲン反応を受ける時間)については、特に制限されないが、例えば3分〜24時間、好ましくは1〜12時間が挙げられる。
【0037】
第3工程
第3工程では、試験液を回収し、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定する。
【0038】
試験液の回収方法については、被測定面と被覆部材との間に挟持されている試験液を回収できる方法である限り、特に制限されないが、例えば、溶液洗浄法、吸引回収法、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
【0039】
溶液洗浄法とは、アレルゲンを変性させない溶液で、被験製品の被測定面と被覆部材の表面を洗い流して、アレルゲンを含む溶液を回収する方法である。アレルゲンを変性させない溶液としては、例えば、リン酸緩衝液等の各種緩衝液、精製水、イオン交換水、水道水、生理食塩水等が挙げられるが、前記試験液の溶媒と同じ組成の溶媒を使用することが望ましい。
【0040】
また、吸引回収法とは、ピペット等を使用して吸引により試験液を回収する方法である。
【0041】
これらの回収法の中でも、再現性をより高めるという観点から、好ましくは吸引回収法が挙げられる。
【0042】
回収された試験液中のアレルゲンの抗原性の測定方法については、特に制限されないが、例えば、酵素免疫法(ELISA;Enzyme-linked immunosorbent assay)、イムノクロマト法等が挙げられる。これらの測定方法の中でも、アレルゲンの抗原性を高精度に定量するという観点から、好ましくは酵素免疫法が挙げられる。なお、使用するアレルゲンに応じてELISAキットやイムノクロマトキットが市販されており、これらの市販品を使用して、アレルゲンの抗原性を測定することができる。
【0043】
斯して、試験液中のアレルゲンの抗原性を測定し、残存しているアレルゲン量に応じて、被験製品が備える抗アレルゲン性能が判定される。即ち、残存しているアレルゲン量が少ない程、被験製品が備える抗アレルゲン性能が高いと判定され、残存しているアレルゲン量が多い程、被験製品が備える抗アレルゲン性能が低いと判定される。また、使用した試験液中のアレルゲン量に対して試験後に減少したアレルゲン量の割合と不活化率(%)として算出することにより、被験製品が備える抗アレルゲン性能を客観的に数値化することもできる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
1.実験材料
被験製品
[被験製品1]
被験製品1として、基材層/プライマー層/抗アレルゲン剤を含む表面保護層が順に積層された積層シート(9cm×4cmの四角形)を、常法に従って製造したものを使用した。なお、当該被験製品1における基材層は、厚さ60μmの透明ポリプロピレンフィルムに対して、厚さ80μmの着色ポリエチレンを押し出して形成した複層シート(厚さ140μm)を用いた。また、当該被験製品1におけるプライマー層は、「EBRプライマー」(昭和インク工業株式会社製)で塗工量1.5g/m2として形成した。更に、当該被験製品1における表面保護層は、数平均分子量1200の4官能ウレタンアクリレートオリゴマー100質量部、ポリフェノール化合物がジルコニウム化合物に担持された抗アレルゲン剤(「アレリムーブ」、東亞合成株式会社製)10質量部、及び平均粒径5μmの不定形シリカ16質量部を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、塗工量15g/m2として形成後、電子線(加速電圧165kV、照射量30kGy)を照射することで硬化させることにより形成した。
[被験製品2]
被験製品2として、基材層/プライマー層/抗アレルゲン剤を含まない表面保護層が順に積層された積層シートを、常法に従って製造したものを使用した。当該被験製品2の各層の組成、厚さ、形状、大きさ等については、表面保護層に抗アレルゲン剤を含まないこと以外は、上記被験製品1と同様である。
【0045】
被覆部材
[被覆部材1]
被覆部材1として、スライドガラス(「スーパーフロストホワイト」、松浪ガラス工業株式会社製、寸法76mm×26mm、厚さ900μm)を使用した。
[被覆部材2]
被覆部材2として、ポリエチレンフィルム(厚さ130μm、76mm×26mmの四角形)を使用した。
【0046】
試験液
アレルゲン含有試験液として、精製ダニ抗原Derf1(株式会社シバヤギ社製)をアレルゲン濃度が10ng/mLとなるようにリン酸緩衝液(「Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8537」、シグマアルドリッチジャパン株式会社製)に溶解した試験液を使用した。
【0047】
2.実験方法
[実施例1]
抗アレルゲン剤含有被験製品の抗アレルゲン性能の測定
被験製品1及び被覆部材1を使用して、抗アレルゲン性能を測定した。具体的には、以下の方法で抗アレルゲン性能を測定した。
被験製品1の表面保護層の上に試験液0.3mlを滴下した。その上に、被覆部材1を被せて、被覆部材1の全面に液状試料が均一に広がる状態にして、被験製品1の表面保護層と被覆部材1との間に液状試料を挟持させた。この状態で、20℃、相対湿度90%で3時間静置し、抗アレルゲン反応を進行させた。次いで、ピペットを用いて試験液を回収し、Derf1 ELISAキット(ニチニチ製薬株式会社製)を用いてアレルゲンDerf1量を定量した(N=2)。
【0048】
前記条件での実験を、3回繰り返して実施し(測定回数(N数)を3回)、試験後の試験液中のアレルゲンの量の測定誤差σ(標準偏差)を下記式に従って算出した。
【0049】
【数1】
【0050】
抗アレルゲン剤不含有被験製品の抗アレルゲン性能の測定
被験製品2及び被覆部材1を使用して、抗アレルゲン性能を測定した。具体的には、被験製品1の代わりに、被験製品2を使用したこと以外は、上記抗アレルゲン剤含有被験製品の場合と同様条件で抗アレルゲン性能の測定を行った。
【0051】
[比較例1]
抗アレルゲン剤含有被験製品の抗アレルゲン性能の測定
被験製品1及び被覆部材2を使用して、抗アレルゲン性能を測定した。具体的には、被覆部材1の代わりに、被覆部材2を使用したこと以外は、上記実施例1の抗アレルゲン剤含有被験製品の場合と同様条件で抗アレルゲン性能の測定を行った。
【0052】
抗アレルゲン剤不含有被験製品の抗アレルゲン性能の測定
被験製品2及び被覆部材2を使用して、抗アレルゲン性能を測定した。具体的には、被験製品1及び被覆部材1の代わりに、被験製品2及び被覆部材2を使用したこと以外は、上記実施例1の抗アレルゲン剤含有被験製品の場合と同様条件で抗アレルゲン性能の測定を行った。
【0053】
2.実験結果
得られた結果を表1に示す。この結果から、被覆部材として無機ガラス製の部材を使用した場合には、測定値のバラツキが少なく、被験製品の抗アレルゲン性能を高精度に測定できることが明らかとなった(実施例1)。一方、被覆部材としてプラスチックフィルムを使用した場合(比較例1)では、測定値のバラツキが大きくなり、被験製品の抗アレルゲン性能を正確に測定できていなかった。
【0054】
【表1】