【実施例】
【0128】
以下に、本発明を、実施例を示して具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において使用した評価方法は、以下のとおりであり、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、また、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
【0129】
(I)各種評価(測定)方法
(i)MFR:
JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。FR(フローレイト比)は、190℃・10kg荷重の条件で同様に測定したMFRであるMFR10kgとMFRとの比(=MFR10kg/MFR)から算出した。
【0130】
(ii)密度:
密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
(iii)融点:
融点の測定方法
DSC(デュポン社製のTA2000型、又はセイコー・インスツルメンツ社製のDSC6200型)を使用し、10℃/分で20〜170℃までの昇降温を1回行った後、10℃/分で2回目の昇温時の測定値により求めた。
【0131】
(iv)伸長粘度の歪硬化度(λmax):
レオメータを用いて、上記本明細書記載の方法で測定した。なお、試験片の作成に先立ち、以下の手順で重合体の溶解・再沈殿処理を実施した。冷却管を付けた500mlの二口フラスコにキシレン300mlを導入し、室温で窒素バブリングを30分間行った。重合体6.0グラムと2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BTH)1.0グラムを導入した。窒素雰囲気下、125℃で30分間撹拌し、重合体をキシレンに完全に溶解させた。重合体が溶解したキシレン溶液をエタノール2.5Lに注ぎ、重合体を析出させた。ろ過により回収した重合体を80℃の真空乾燥機で乾燥した。
【0132】
(v)末端二重結合数の測定:
末端二重結合の定量は、プレスフィルムを作製し、赤外吸収スペクトル(IR)を島津製作所製FTIR−8300の装置を用いて、一置換アルケンの面外変角振動の吸収である910cm−1のピークの吸光度より次式から算出される。
末端二重結合の数(個/1000炭素当り)=1.14×ΔA/d/t
ここで、ΔAは910cm−1のピークの吸光度、dはフィルム密度(g/cm3)、tはフィルム厚(mm)である。
【0133】
(vi)分子量分布の測定:
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
【0134】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図3に例示されるように行う。
【0135】
(vii)GPC−VISによる分岐構造解析
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
【0136】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4. Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
【0137】
[分岐指数(gc’)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量100万以上の成分の、RIで測定される全成分量に対する含有比率(%)を、分子量100万以上の成分の含有量(Wc)として算出し、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量100万における上記g’を、gc’として算出する。
図4に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。
図4の左は、MALLSから得られる分子量(M)とRIから得られる濃度を元に測定された分子量分布曲線を、
図4の右は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0138】
(viii)可溶分量の測定:
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、−15℃で溶出する成分量を−15℃可溶分量、すなわちW
−15(単位wt%)とした。
【0139】
装置
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0140】
(II)使用材料
[メタロセン化合物の合成]
(i)メタロセン化合物A:ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(1−1)4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの合成
500mlフラスコに、4−トリメチルシリルフェニルボロン酸10.0g(51.5mmol)とジメトキシエタン200mlを加え溶液とした後、リン酸カリウム27.3g(128mmol)、水100ml、4−ブロモインデン8.37g(43.0mmol)、トリフェニルホスフィン0.22g(0.86mmol)、PdCl
2(PPh
3)
2 0.300g(0.430mmol)を順に加え、12時間攪拌還流した。室温まで冷却し水100mlを加えた。有機相を分離した後、水相を酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの黄色液体9.0g(収率79%)を得た。
【0141】
(1−2)(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
200mlフラスコに、4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデン16.2g(61.2mmol)とTHF100mlを加え溶液とした後、−78℃に冷却してn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)29.4ml(173.5mmol)を加え、室温に戻して4時間攪拌した。別途用意した300mlフラスコにジメチルジクロロシラン14.8ml(122mmol)とTHF20mlを加え溶液とし、−78℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して12時間攪拌した。揮発物を減圧留去で除くことで黄色溶液21.8gが得られた。この黄色溶液にTHF80mlを加えて溶液とし、−30℃でCpNa/THF溶液(2M)36.7ml(73.5mmol)を加えた。室温に戻して1時間攪拌し、氷水100mlを加えた。酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの黄色液体12.0g(収率51%)を得た。
【0142】
(1−3)ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
300mlフラスコに、(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシラン1.20g(3.00mmol)、ジエチルエーテル20mlを加え、−70℃まで冷却した。ここに2.5mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液2.60ml(6.60mmol)を滴下した。滴下後、室温に戻し2時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、ジクロロメタン30mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ジルコニウム0.770g(3.30mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。反応液をろ過して得られたろ液から溶媒を減圧で留去することで、黄色粉末がえら得た。この粉末をトルエン10mlで再結晶し、ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶として0.500g(収率31%)得た。
【0143】
1H−NMR値(CDCl3):δ0.21(s,3H),δ0.23(s,9H),δ0.43(s,3H),δ5.48(m,1H),δ5.51(m,1H),δ5.81(d,1H),δ6.60(m,1H),δ6.66(m,1H),δ6.95(dd,1H),δ7.13(s,1H),δ7.39(dd,2H),δ7.57(d,2H),δ7.95(d,2H)。
【0144】
(ii)メタロセン化合物B:ジメチルシリレン(4−(4−クロロ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(2−1)4−(4−クロロ−フェニル)−インデンの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの合成で4−トリメチルシリルフェニルボロン酸の代わりに4−クロロフェニルボロン酸を用い、メタロセン化合物A(1−1)と同様の手順で合成を行ない、4−(4−クロロ−フェニル)−インデンの白色固体を収率69%で得た。
【0145】
(2−2)(4−(4−クロロ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの代わりに4−(4−クロロ−フェニル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−2)と同様の手順で合成を行ない、(4−(4−クロロ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの淡黄色固体を収率52%で得た。
【0146】
(2−3)ジメチルシリレン(4−(4−クロロ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(4−(4−クロロフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(4−(4−クロロ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶として得た。
【0147】
1H−NMR値(CDCl3):δ0.87(s,3H),δ1.08(s,3H),δ5.89(m,1H),δ5.94(m,1H),δ6.24(d,1H),δ6.78(m,1H),δ6.84(m,1H),δ7.12(d,1H),δ7.19(dd,1H),δ7.39(d,1H), δ7.44(m,3H),δ7.61(d,2H)。
【0148】
(iii)メタロセン化合物C:ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(3−1)4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの合成
500mlフラスコに、2−メチルフラン2.52g(30.7mmol)とTHF30mlを加え溶液とした後、−78℃に冷却してn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)14.7ml(36.9mmol)を加え、室温に戻して4時間攪拌した。別途用意した300mlフラスコに塩化亜鉛4.18g(30.7mmol)とTHF10mlを加え懸濁液とし、0℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して1時間攪拌した。さらに別途用意したmlフラスコにヨウ化銅(I)0.35g(1.84mmol)、Pd(dppf)Cl
20.690g(0.932mmol)、4−ブロモインデン3.00g(15.3mmol)とDMA5mlを加え懸濁液とし、先の反応溶液を加えて15時間攪拌還流した。室温まで冷却し水50mlを加えた。有機相を分離した後、水相を酢酸エチル50mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して水50mlで2回洗浄、食塩水50mlで1回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの黄色液2.10g(収率70%)を得た。
【0149】
(3−2)(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの代わりに4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−2)と同様の手順で合成を行ない、(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの淡黄色固体を収率38%で得た。
【0150】
(3−3)ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶(収率25%)として得た。
【0151】
1H−NMR値(CDCl3):δ0.00(s,3H),δ0.18(s,3H),δ1.79(s,3H),δ5.22(m,1H),δ5.32(m,1H),δ5.64(m,1H),δ5.72(d,1H),δ6.33(m,1H),δ6.35(m,1H),δ6.70(m,2H),δ6.82(d,1H),δ7.43(d,1H),δ7.60(d,1H)。
【0152】
(iv)メタロセン化合物D:ジメチルシリレン(4−(4−メトキシ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−1)4−(4−メトキシ−フェニル)−インデンの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの合成で4−トリメチルシリルフェニルボロン酸の代わりに4−メトキシフェニルボロン酸を用い、メタロセン化合物A(1−1)と同様の手順で合成を行ない、4−(4−メトキシ−フェニル)−インデンの黄色液体を収率89%で得た。
【0153】
(4−2)(4−(4−メトキシ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの代わりに4−(4−メトキシ−フェニル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−2)と同様の手順で合成を行ない、(4−(4−メトキシ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの黄色液体を収率35%で得た。
【0154】
(4−3)ジメチルシリレン(4−(4−メトキシ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(4−(4−メトキシフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(4−(4−メトキシ−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶(収率54%)として得た。
【0155】
1H−NMR値(CDCl3):δ0.86(s,3H),δ1.07(s,3H),δ3.86(s,3H),δ5.88(m,1H),δ5.92(m,1H),δ6.22(d,1H),δ6.77(m,1H),δ6.84(m,1H),δ7.00(d,2H),δ7.18(m,2H),δ7.40(t,2H), δ7.61(d,2H)。
【0156】
(v)メタロセン化合物E:ジメチルシリレン(4−フェニルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(4−フェニルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(4−フェニルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶として得た。
【0157】
(vi)メタロセン化合物F:ジメチルシリレン(3−メチルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(3−メチルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(3−メチルインデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶として得た。
【0158】
(vii)メタロセン化合物G:ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成は、Macromolecules 1995,28,3771−3778に記載の手順に従って行なった。
【0159】
(viii)メタロセン化合物H:ジメチルシリレン(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(8−1)2−ブロモフェニル−2−クロロエチルケトンの合成
100mlフラスコに、2−ブロモ安息香酸(5.30g、26.4mmol)と塩化チオニル25mlを加え、2時間還流した。反応後、過剰の塩化チオニルを減圧留去し得られた酸クロリド体5.50gを精製することなく次の反応に用いた。
100mlフラスコに酸クロリド体(5.00g、22.7mmol)とジクロロメタン50mlを加え溶液とした後、さらに塩化アルミニウム(3.02g、22.7mmol)を加え、20℃でエチレンを4時間吹き込んだ。反応を4Nの塩酸でクエンチし、有機相と水相を分離した後、水相をメチル−t−ブチルエーテル50mlで3回洗浄し、有機相を集め水50mlで3回、飽和炭酸水素ナトリウム水100ml、続いて飽和食塩水100mlで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することで化合物3を4.80g(収率85%)得た。さらなる精製は行なわず次の反応に用いた。
【0160】
(8−2)7−ブロモ−1−インダノンの合成
100mlフラスコに塩化アルミニウム(7.40g、55.6mmol)と塩化ナトリウム(2.15g、37.1mmol)を加え、130℃に加熱した後、2−ブロモフェニル−2−クロロエチルケトン(4.60g、18.5mmol)をゆっくりと加え、混合物を160℃で1時間攪拌した。反応後、30℃に冷却し、氷水でクエンチした。濃塩酸でpH=5に調整した後、有機相と水相を分離し、水相をジクロロメタン100mlで3回洗浄し、有機相を集め水100ml、飽和食塩水100mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル=30/1)で精製し7−ブロモ−1−インダノン1.60g(収率33%)を得た。
【0161】
(8−3)7−(2−(5−メチル)−フリル)−1−インダノンの合成
100mlフラスコに2−メチルフラン(0.933g、11.4mmol)とTHF10mlを加え溶液とした後、−30℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、4.70ml、11.4mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。別に準備した100mlフラスコに塩化亜鉛(1.55g、11.4mmol)とTHF10mlを加え、続いて0℃で上記反応溶液を加え、室温で1時間攪拌した。さらに別に準備した100mlフラスコにヨウ化銅(I)(90mg、0.473mmol)、Pd(dppf)Cl
2(177mg、0.236mmol)、7−ブロモ−1−インダノン(2.00g、9.45mmol)とDMA10mlを加えた懸濁液に、上記反応物を加え、還流を15時間行なった。室温まで冷却し、水50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出を行なった。有機相を集め、水50mlで2回、飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル=20/1)で精製し7−(2−(5−メチル)−フリル)−1−インダノン0.70g(収率35%)を得た。
【0162】
(8−4)1−メチル−7−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの合成
100mlフラスコに7−(2−(5−メチル)−フリル)−1−インダノン(1.40g、6.59mmol)とTHF20mlを加え溶液とした後、−78℃でメチルリチウム/ジエチルエーテル溶液(1.6M、7.5ml、11.9mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液20mlでクエンチし、揮発成分を減圧留去した。残った溶液を酢酸エチル50mlで2回抽出し、有機相を集めて飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらなる精製は行なわず次の反応に用いた。
100mlフラスコに上記粗生成物とトルエン30mlを加え溶液とした後、p−トルエンスルホン酸(62.0mg、0.330mmol)を加え、130℃で2時間攪拌した。攪拌中はディーンスタークトラップを用いて生成する水を除いた。室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlを加え、有機相を分離した。水相を酢酸エチル50mlで3回抽出した後、有機相を集め飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し1−メチル−7−(2−(5−メチル)−フリル)−インデン0.850g(収率61%)を得た。
【0163】
(8−5)ジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)シランの合成
100mlフラスコに1−メチル−7−(2−(5−メチル)−フリル)−インデン(4.80g、22.8mmol)とTHF60mlを加え溶液とした後、−78℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、11.0ml、27.4mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。別に準備した200mlフラスコにジメチルジクロロシラン(5.89g、45.8mmol)とTHF10mlを加え溶液とした後、上記反応物を−78℃で滴下し、室温で12時間攪拌した。揮発成分を減圧留去し、再びTHF20mlを加えて溶液とした後、ソジウムシクロペンタジエニリド/THF溶液(2M、12.0ml、24.0mmol)を−20℃でゆっくりと滴下し、室温で1時間攪拌した。揮発成分を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製しジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)シラン4.20g(収率55%)を得た。
【0164】
(8−6)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
200mlフラスコにジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)シラン(2.00g、6.00mmol)とジエチルエーテル40mlを加え溶液とした後、−78℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、5.1ml、12.6mmol)を加え、室温で2時間、さらに50℃で1時間攪拌した。揮発成分を減圧留去し、続いてジクロロメタン160mlを加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.53g、6.60mmol)を加えた後、室温で12時間攪拌した。反応混合物をろ過し、得られたろ液を濃縮することでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロリド2.1g(収率70%)を得た。
【0165】
1H−NMR値(CDCl3):δ0.80(s,3H),δ1.04(s,3H),δ2.25(s,3H),δ2.36(s,3H),δ5.75(m,1H),δ5.77(s,1H),δ5.87(m,1H),δ6.07(m,1H),δ6.40(d,1H),δ6.81(m,1H),δ6.85(m,1H),δ7.06(dd,1H),δ7.40(m,2H)。
【0166】
(ix)メタロセン化合物I:ジメチルシリレン(3−メチル−4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(9−1)7−(4−トリメチルシリルフェニル)−1−インダノンの合成
400mlフラスコにp−トリメチルシリルフェニルボロン酸(11.2g、59.6mmol)とDME80mlを加え、溶液とした後、さらにリン酸カリウム(20.4g、96.0mmol)、水20ml、7−ブロモ−1−インダノン(10.0g、48.0mmol)、トリフェニルホスフィン(246mg、0.960mmol)、PdCl
2(PPh
3)
2(335mg、0.480mmol)を加え、12時間還流攪拌した。室温まで冷却した後、水200mlを加え、水相を酢酸エチル200mlで2回抽出した。有機相を集めて硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し7−(4−トリメチルシリルフェニル)−1−インダノン12.0g(収率90%)を得た。
【0167】
(9−2)1−メチル−7−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデンの合成
7−(2−(5−メチル)−フリル)−1−インダノンの代わりに7−(4−トリメチルシリルフェニル)−1−インダノンを用い、メタロセン化合物H(8−4)と同様の手順で合成を行ない、1−メチル−7−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデンの無色液体を収率21%で得た。
【0168】
(9−3)ジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)シランの合成
1−メチル−7−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの代わりに1−メチル−7−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデンを用い、メタロセン化合物H(8−5)と同様の手順で合成を行ない、ジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)シランの黄色液体を収率45%で得た。
【0169】
(9−4)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
ジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)シランの代わりにジメチル(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)シランを用い、メタロセン化合物H(8−5)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶(収率71%)として得た。
【0170】
1H−NMR値(CDCl
3):δ0.29(s,9H),δ0.80(s,3H),δ1.06(s,3H),δ1.94(s,3H),δ5.71(s,1H),δ5.72(m,1H),δ5.90(m,1H),δ6.84(m,1H),δ6.88(m,1H),δ7.08(dd,1H),δ7.20(d,1H),δ7.39(d,2H),δ7.52(d,3H)。
【0171】
(x)メタロセン化合物J:ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
200mlフラスコにジメチル(4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)シラン(4.00g、10.7mmol)とジエチルエーテル40mlを加え溶液とした後、−78℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、9.4ml、23.5mmol)を加え、室温で2時間、さらに50℃で1時間攪拌した。揮発成分を減圧留去し、続いてジクロロメタン100mlを加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(2.50g、10.7mmol)を加えた後、室温で12時間攪拌した。反応混合物をろ過し、得られたろ液を濃縮することで異性体混合物である粗錯体を得た。粗錯体をジエチルエーテル20mlで3回洗浄することでジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1.2g(収率21%)を得た。
【0172】
1H−NMR値(CDCl
3):δ0.80(s,3H),δ1.04(s,3H),δ1.31(s,9H),δ2.40(s,3H),δ5.82(m,1H),δ5.90(m,1H),δ6.13(d,1H),δ6.25(d,1H),δ6.62(m,1H),δ6.77(d,1H),δ7.13(t,1H),δ7.38(d,1H),δ7.43(d,1H),δ7.69(d,1H)。
【0173】
(実施例1)
(1)固体触媒の調製
窒素雰囲気下、200ml二口フラスコに600℃で5時間焼成したシリカ5gを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した100ml二口フラスコに窒素雰囲気下でメタロセン化合物A68mgを入れ、脱水トルエン13.4mlで溶解した。室温でメタロセン化合物Aのトルエン溶液にアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液8.6mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った200ml二口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、メタロセン化合物Aとメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで固体触媒を得た。
【0174】
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
上記(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒を用いてエチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。
すなわち、誘導撹拌装置付き2Lオートクレーブに1−ヘキセン30ml、トリエチルアルミニウム0.20mmol、水素200ml、イソブタン800mLを加え、75℃に昇温し、エチレンを導入してエチレン分圧を1.4MPaに保った。次いで、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒123mgを窒素で圧入し、エチレン分圧1.4MPa、温度75℃を保って60分間重合を継続した。なお、重合反応中、エチレン消費速度に比例した供給速度にて1−ヘキセンの追加供給を実施した。追加供給した1−ヘキセン量は16.5mLであった。重合はエタノールを加えて停止させた。こうして得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体は130.3gであった。重合結果を表2にまとめた。
【0175】
(実施例2)
実施例1で得られた固体触媒202mgを用い、1−ヘキセン40ml、水素150mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が9.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、55.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0176】
(実施例3)
実施例1で得られた固体触媒206mgを用い、追加供給した1−ヘキセン量が9.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、82.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0177】
(実施例4)
実施例1で得られた固体触媒217mgを用い、水素500mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が6.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、54.8gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0178】
(実施例5)
実施例1で得られた固体触媒204mgを用い、水素640mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が5.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、45.5gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0179】
(比較例1)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物E59mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒123mgの代わりに、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒222mgを用い、1−ヘキセン40mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が13.5mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、111.8gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2(C1)にまとめた。
【0180】
(比較例2)
比較例1で得られた固体触媒218mgを用い、1−ヘキセン70ml、水素20mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が1.5mLであった以外は、比較例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、24.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2(C2)にまとめた。
【0181】
(比較例3)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物F52mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒123mgの代わりに、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒236mgを用い、1−ヘキセン70ml、水素20mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が18.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、146.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2(C3)にまとめた。
【0182】
(比較例4)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物G50mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒123mgの代わりに、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒160mgを用い、1−ヘキセン40ml、水素100mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が7.2mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、31.4gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2(C4)にまとめた。
【0183】
(実施例6)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物B64mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒123mgの代わりに、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒233mgを用い、1−ヘキセン40ml、水素100mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が2.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、29.2gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0184】
(実施例7)
実施例6で得られた固体触媒270mgを用い、1−ヘキセン70ml、水素20mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が2.5mLであった以外は、実施例6と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、28.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0185】
(実施例8)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物D63mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒123mgの代わりに、上記(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒180mgを用い、1−ヘキセン40ml、水素100mlとし、追加供給した1−ヘキセン量が9.0mLであった以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、41.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表2にまとめた。
【0186】
(実施例9)
上記実施例1の(1)固体触媒の調製で得た固体触媒を用いてエチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
すなわち、攪拌および温度制御装置を有する内容積1リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分脱水および脱酸素したポリエチレン製のペレットを80g、トリエチルアルミニウムを33mg導入し撹拌しながら90℃へ昇温した。1−ブテン10重量%を含むエチレンを分圧が2.0MPaになるまで導入した後、上記固体触媒53mgをアルゴンガスで圧入し、エチレン分圧2.0MPa、温度90℃を保って60分間重合を継続した。
その結果、14.6gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは26.2、密度は0.918g/cm
3であった。重合結果を表3にまとめた。
【0187】
(実施例10)
実施例1で得られた固体触媒54mgを用い、重合開始前に水素102mlを添加した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、10.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは13.3、密度は0.930g/cm
3で、末端二重結合は0.40個/1000炭素であった。重合結果を表3にまとめた。
【0188】
(実施例11)
実施例1で得られた固体触媒104mgを用い、重合開始前に水素272mlを添加し、1−ブテン10重量%を含むエチレンの代わりに1−ブテン5重量%を含むエチレンを導入し、56分間重合した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、25.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは9.6であった。重合結果を表3にまとめた。
【0189】
(実施例12)
実施例1で得られた固体触媒58mgを用い、重合開始前に水素51mlを添加した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、11.1gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは25.7であった。重合結果を表3にまとめた。
【0190】
(実施例13)
実施例1で得られた固体触媒55mgを用い、重合開始前に水素153mlを添加した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、10.4gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。重合結果を表3にまとめた。
【0191】
(比較例5)
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに、比較例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒60mgを用いた以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、13.2gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.935g/cm
3で、末端二重結合は0.30個/1000炭素であった。重合結果を表3(C5)にまとめた。
【0192】
(実施例14)
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに実施例6で得られた固体触媒205mgを用い、重合開始前に水素34mlを添加した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、29.1gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cm
3で、末端二重結合は0.40個/1000炭素であった。重合結果を表3にまとめた。
【0193】
(実施例15)
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに実施例6で得られた固体触媒208mgを用い、重合開始前に水素17mlを添加した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、25.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cm
3で、末端二重結合は0.40個/1000炭素であった。重合結果を表3にまとめた。
【0194】
(実施例16)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物C60mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに、上記(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒203mgを用い、47分間重合した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、29.5gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは9.4であった。重合結果を表3にまとめた。
【0195】
(実施例17)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物H62mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに、上記(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒50mgを用い、重合開始前に水素68mlを添加し、70℃で重合した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、7.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cm
3で、末端二重結合は0.46個/1000炭素であった。重合結果を表4にまとめた。
【0196】
(実施例18)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒52mgを用い、重合開始前に水素17mlを添加した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、16.1gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.929g/cm
3で、FRは16.9であった。重合結果を表4にまとめた。
【0197】
(実施例19)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒49mgを用い、重合開始前に水素51mlを添加した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、10.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.933g/cm
3で、FRは11.4であった。重合結果を表4にまとめた。
【0198】
(実施例20)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒53mgを用い、重合開始前に水素を添加せず、90℃で重合した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、22.0gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cm
3で、FRは13.3であった。重合結果を表4にまとめた。
【0199】
(実施例21)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒51mgを用い、重合開始前に水素34mlを添加し、90℃で重合した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、17.5gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.938g/cm
3で、FRは9.7であった。重合結果を表4にまとめた。
【0200】
(実施例22)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物I70mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに、上記(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒51mgを用い、重合開始前に水素34mlを添加し、70℃で重合した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、10.4gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.934g/cm
3で、FRは21.9であった。重合結果を表4にまとめた。
【0201】
(実施例23)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒201mgを用い、重合開始前に水素119mlを添加した以外は、実施例22と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、14.0gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.952g/cm
3で、FRは9.4で、末端二重結合は0.31個/1000炭素であった。重合結果を表4にまとめた。
【0202】
(実施例24)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒51mgを用い、水素を添加せず、90℃で重合した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、3.7gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは35.6であった。重合結果を表4にまとめた。
【0203】
(実施例25)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A68mgの代わりに、メタロセン化合物J67mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
実施例1で得られた固体触媒53mgの代わりに、上記(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒27mgを用い、水素を添加せず、70℃で50分間重合した以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、27.9gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.923g/cm
3で、FRは25.8で、末端二重結合は0.23個/1000炭素であった。重合結果を表4にまとめた。
【0204】
(実施例26)
実施例25の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒20mgを用い、重合開始前に水素34mlを添加し、70℃で重合した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、20.7gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.934g/cm
3で、FRは9.0で、末端二重結合は0.31個/1000炭素であった。重合結果を表4にまとめた。
【0205】
(実施例27)
実施例25の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒23mgを用い、重合開始前に水素17mlを添加し、70℃で重合した以外は、実施例17と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、13.5gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.947g/cm
3で、FRは9.2で、末端二重結合は0.27個/1000炭素であった。重合結果を表4にまとめた。
【0206】
(実施例28)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒を用いてエチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。
すなわち、誘導撹拌装置付き2Lオートクレーブに1−ヘキセン44ml、トリエチルアルミニウム0.20mmol、ヘキサン950mLを加え、65℃に昇温し、水素を0.0012MPa加えた後、エチレンを導入してエチレン分圧を0.7MPaに保った。次いで、実施例17の(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒213mgを窒素で圧入し、エチレン分圧0.7MPa、温度65℃を保って60分間重合を継続した。60分経過後、エチレンをパージし、窒素置換を3回行い、重合を停止させた。こうして得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体は87.6gであった。得られた共重合体の密度は0.924g/cm
3で、FRは30.0であった。重合結果を表5にまとめた。
【0207】
(実施例29)
実施例17の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒194mgを用い、水素0.0091MPaとした以外は、実施例28と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、76.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.930g/cm
3で、FRは16.6であった。重合結果を表5にまとめた。
【0208】
(実施例30)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒223mgを用い、1−ヘキセン20ml、とした以外は、実施例29と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、10.8gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.962g/cm
3であった。重合結果を表5にまとめた。
【0209】
(実施例31)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒205mgを用い、1−ヘキセン50ml、とした以外は、実施例29と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、9.7gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.948g/cm
3であった。重合結果を表5にまとめた。
【0210】
(実施例32)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒206mgを用い、1−ヘキセン85ml、ヘキサン850mLとした以外は、実施例29と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、9.6gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cm
3であった。重合結果を表5にまとめた。
【0211】
(実施例33)
実施例22の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒209mgを用い、ヘキサン700mL、水素0.0021MPaとした以外は、実施例28と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、14.0gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.922g/cm
3で、FRは28.0であった。重合結果を表5にまとめた。
【0212】
(実施例34)
実施例25の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒40mgを用い、水素0.0009MPaとした以外は、実施例28と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、33.8gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.922g/cm
3で、FRは13.1であった。重合結果を表5にまとめた。
【0213】
(実施例35)
実施例25の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒42mgを用いた以外は、実施例34と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、39.9gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.919g/cm
3で、FRは13.9であった。重合結果を表5にまとめた。
【0214】
【表2】
【0215】
【表3】
【0216】
【表4】
【0217】
【表5】
【0218】
3.評価
以上のとおり、表2に示す結果から、実施例1と比較例1とを対比すると、本発明のメタロセン化合物の要件を満たさない触媒で得られた比較例1では、コモノマーである1−ヘキセンの使用量が多いにもかかわらず、エチレン系重合体の密度は低下していないことから、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒は活性に優れ、かつ、共重合性に優れていることが明らかである。更に、同じく比較例1では、重合の連鎖移動剤である水素の使用量が少ないにも関わらず、エチレン系重合体のMFRは低下しておらず、分子量は向上していないことから、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒は低MFR(高分子量)のエチレン系重合体を生成する能力に優れていることも明らかである。更に、生成するエチレン系重合体の成形性を向上させる長鎖分岐の特性を示す特性値である[λmax(2.0)]
B、[λmax(2.0)]
B/[λmax(0.1)]
B、g
C’、W
Cのいずれもが、実施例1は比較例1に劣ることが無いのに加えて、−15℃可溶分量(W
−15)が小さいことから、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含むオレフィン重合用触媒は、特許文献4で知られていたメタロセン化合物Eを使用して比較例1で得られたエチレン系重合体よりも、成形性と機械的特性等に優れることが明らかである。
【0219】
また、実施例1よりも更に密度を低下したエチレン系重合体を製造するための実験を行なった場合、本発明のメタロセン化合物の優位性はより明白になることを示すのが、実施例2および比較例2の結果である。すなわち、本発明のメタロセン化合物の要件を満たさない触媒による比較例2では、コモノマーである1−ヘキセンの増加による活性の低下、g
C’の増加(すなわち長鎖分岐度の減少)、低温可溶分量の増加が顕著であるのに対して、同様の実験を行なった実施例2では活性低下は認められるものの低下幅は比較例2よりも大きく抑えられており、かつ、長鎖分岐特性値はいずれも劣化しておらず、低温溶出量の増加も観察されていない。すわなち、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒が、活性等の重合特性、エチレン系重合体の長鎖分岐特性や低温溶出成分量における優位性が顕著なものであったことは表2を見れば明らかである。
【0220】
同様に特許文献5で知られていたメタロセン化合物F、Gを使用した比較例3、比較例4の結果と実施例1〜5の比べても、重合活性、共重合性、高分子量化性能、長鎖分岐特性、低温溶出成分量の全てを鑑みた総合性能において、本発明のメタロセン化合物がオレフィン重合用触媒成分として優れることは明らかである。
【0221】
また、表2の実施例6〜8には、実施例1とは異なる本発明のメタロセン化合物として、メタロセン化合物B、メタロセン化合物Dの重合例を記載した。これら本発明のメタロセン化合物は実施例1等のメタロセン化合物Aよりはその効果は小さいものの、高い重合活性を示し、更に、大きなλmax(2)値とλmax(2)/λmax(0.1)、小さなg
C’値、大きなW
C値に代表される優れた長鎖分岐特性を示し、更にW
−15が小さいことから優れた製品特性が期待されることから、有意義であることが確認された。
【0222】
表2と異なる重合プロセスである気相重合においても本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒の有用性を示したのが、表3である。すなわち、実施例9〜13と比較例5とを対比すると、本発明のメタロセン化合物の要件を満たさない触媒で得られた比較例5では、コモノマーである1−ブテンの使用量が同じにもかかわらず、エチレン系重合体の密度は高くなっていることから、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒は活性に優れ、かつ、共重合性に優れていることが明らかである。更に、同じく比較例5では、重合の連鎖移動剤である水素の使用量が同等にも関わらず、実施例10に対してエチレン系重合体のMFRは低下しておらず、分子量は向上していないことから、本発明のメタロセン化合物を触媒成分として含む触媒は低MFR(高分子量)のエチレン系重合体を生成する能力に優れていることも明らかである。更に、生成するエチレン系重合体の成形性を向上させる長鎖分岐特性値である[λmax(2.0)]
B、[λmax(2.0)]
B/[λmax(0.1)]
B、g
C’、W
Cのいずれもが、実施例9〜13は比較例5に劣ることが無かった。
【0223】
また、表3の実施例14〜16には、実施例9〜13とは異なる本発明のメタロセン化合物として、メタロセン化合物B、メタロセン化合物Cの重合例を記載した。これら本発明のメタロセン化合物も、実施例10等のメタロセン化合物Aに匹敵する高い重合活性を示し、更に、大きなλmax(2)値、λmax(2)/λmax(0.1)、小さなg
C’値、大きなW
C値のいずれかを示し、成形性に優れた製品特性が期待されることから、有意義であることが確認された。
【0224】
表4の実施例17〜27には、表3と異なる本発明のメタロセン化合物として、メタロセン化合物H、メタロセン化合物I、メタロセン化合物Jの重合例を記載した。これら本発明のメタロセン化合物のうち、メタロセン化合物Hを用いた実施例20と実施例21は表3の比較例5と同じ重合温度において、同等のgc’を示すエチレン/1−ブテン共重合体を、より高い重合活性で生成することを示しており、長鎖分岐を有するエチレン系共重合体を生産性良く製造可能であることが確認された。またメタロセン化合物Jを用いた実施例25〜27では、重合温度が70℃と比較例5より20℃低いにもかかわらず、さらに高い重合活性を示しており、抜群の生産性を発揮することが確認された。
【0225】
表5の実施例28〜35には、本発明のメタロセン化合物として、メタロセン化合物H、メタロセン化合物I、メタロセン化合物Jを用い、表2と同じスラリー重合プロセスで、重合温度とエチレン分圧を低下させた実施例を記載した。この重合条件においても本発明のメタロセン化合物Hは、重合温度とエチレン分圧がより高い表2の重合条件における比較例1に劣らない重合活性を示すこと、さらに本発明のメタロセン化合物Jにおいては比較例1よりも高い重合活性を示すことが確認された。